(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976865
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】ニット生地、ニット生地を製造する方法及びたて編機
(51)【国際特許分類】
D04B 21/14 20060101AFI20160817BHJP
D04B 23/02 20060101ALI20160817BHJP
D04B 23/08 20060101ALI20160817BHJP
D04B 27/24 20060101ALI20160817BHJP
D04B 27/32 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
D04B21/14 Z
D04B23/02
D04B23/08
D04B27/24
D04B27/32
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-35762(P2015-35762)
(22)【出願日】2015年2月25日
(65)【公開番号】特開2016-8370(P2016-8370A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2015年2月25日
(31)【優先権主張番号】10 2014 108 987.1
(32)【優先日】2014年6月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591008465
【氏名又は名称】カール マイヤー テクスティルマシーネンファブリーク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフツング
【氏名又は名称原語表記】KARL MAYER TEXTILMASCHINENFABRIK GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダウベ, ヴェラ
(72)【発明者】
【氏名】ケンパー, ライナー
(72)【発明者】
【氏名】キーレン, ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー, マシューズ
【審査官】
平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第04140826(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B1/00〜39/08
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニット生地であって、
第一のカバー層と、
第二のカバー層と、
前記第一のカバー層と前記第二のカバー層との間にスペーサスレッドとして形成されるパイルスレッドの構造とを備えており、
各カバー層が、順に配置される複数のステッチ列を有しており、
前記スペーサスレッドが異なる長さを有し、各ステッチ列に編み込まれるスペーサスレッドが等しい長さを有しており、
第一の幅領域内のスペーサスレッドは、第二の幅領域内のスペーサスレッドとは異なる長さを有しており、
少なくとも2つの隣接するステッチ列については、前記第一の幅領域において、1つのステッチ列が第一の長さのスペーサスレッドにのみに接続され、前記第二の幅領域において、1つのステッチ列が第二の長さのスペーサスレッドにのみに接続されてなる、ニット生地。
【請求項2】
前記第一の長さのスペーサスレッドを有するステッチ列と、前記第二の長さのスペーサスレッドを有するステッチ列とは交互に配置されてなる、請求項1に記載のニット生地。
【請求項3】
前記第一の幅領域と前記第二の幅領域との間に配置されるスペーサスレッドのない移行領域をさらに備えてなる、請求項1に記載のニット生地。
【請求項4】
前記第一の幅領域と前記第二の幅領域との間に配置され、異なる長さのうちの大きい方の長さを持つスペーサスレッドを有する移行領域をさらに備えてなる、請求項1に記載のニット生地。
【請求項5】
前記パイルスレッドが前記第一のカバー層と前記第二のカバー層とを接続していない領域内の前記第一のカバー層及び前記第二のカバー層のうちの一方に前記パイルスレッドが編みこまれるように構成されてなる、請求項1に記載のニット生地。
【請求項6】
前記ニット生地の少なくとも1つの前もって決められた長さのセクション内では、各ステッチ列がスペーサスレッドのない幅セクションを有してなる、請求項1に記載のニット生地。
【請求項7】
ニット生地を製造するための方法であって、
製造方向に向けて順に配置される一連の第一のステッチ列を有する第一のカバー層と、前記製造方向に向けて順に配置される一連の第二のステッチ列を有する第二のカバー層とを製造することと、
これら2つのカバー層の間に配置されるパイルスレッドをスペーサスレッドとしてこれら2つのカバー層に編みこむこととを含んでおり、
前記2つのカバー層の間の距離が一定ではなく、異なる長さのスペーサスレッドを有する領域が製造され、
前記スペーサスレッドが前記2つのカバー層の間の第一の幅領域に第一の距離で編みこまれ、前記スペーサスレッドが前記2つのカバー層の間の第二の幅領域に第二の距離で編みこまれ、
少なくとも2つの隣接するステッチ列については、前記第一の幅領域において、1つのステッチ列が第一の長さのスペーサスレッドにのみに接続され、前記第二の幅領域において、1つのステッチ列が第二の長さのスペーサスレッドにのみに接続されてなる、方法。
【請求項8】
前記第一の距離と前記第二の距離とが交互になっている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ニット生地の少なくとも前もって決められた長さのセクションでは、新たなステッチ列毎に、前記2つのカバー層の間の距離が異なって設定される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも前もって決められた長さのセクションでは、スペーサスレッドのない1つの幅セクションが各ステッチ列に形成される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
幅セクション内でスペーサスレッドとして用いられないパイルスレッドはカバー層内で坦持される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
たて編機であって、
それぞれ対応する第一のカバー層と第二のカバー層を製造するように構成及び配置される2つの編み領域と、
前記2つの編み領域の間の距離を調節するように構成及び配置される駆動ドライブと、
ガイドニードルを有し、該ガイドニードルと共に前記2つの編み領域の間で前後に移動可能な少なくとも1つのパイルガイド棒と、
前記2つの編み領域の間の距離に応じて前記ガイドニードルを調節するように構成及び配置されるコントロールデバイスと
を備えてなり、
前記第一のカバー層と前記第二のカバー層との間には、スペーサスレッドとして形成されるパイルスレッドの構造が備えられ、
各カバー層は、順に配置される複数のステッチ列を有しており、
前記スペーサスレッドが異なる長さを有し、各ステッチ列に編み込まれるスペーサスレッドが等しい長さを有しており、
第一の幅領域内のスペーサスレッドは、第二の幅領域内のスペーサスレッドとは異なる長さを有しており、
前記コントロールデバイスは、少なくとも2つの隣接するステッチ列については、前記第一の幅領域において、1つのステッチ列が第一の長さのスペーサスレッドにのみに接続され、前記第二の幅領域において、1つのステッチ列が第二の長さのスペーサスレッドにのみに接続されてなるように前記ガイドニードルを調節する、たて編機。
【請求項13】
前記少なくとも1つのパイルガイド棒がジャカードガイド棒として形成され、該ジャカードガイド棒の前記ガイドニードルが動作位置と休止位置との間で調整可能に構成されてなる、請求項12に記載のたて編機。
【請求項14】
前記コントロールデバイスが前記駆動ドライブを制御するようにさらに構成されてなる、請求項12に記載のたて編機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、米国特許法第119条の下で、2014年6月26日に出願された独国特許出願第10 2014 108 987.1号の優先権を主張するものであり、本明細書で引用することにより、この出願の開示内容の全てを援用するものとする。
【0002】
発明の背景
本発明の実施形態は、第一のカバー層と、第二のカバー層と、第一のカバー層と第二のカバー層との間のスペーサスレッドとして具象化されるパイルスレッドの構造とを有するニット生地に関するものである。各カバー層は順に配置される複数のステッチ列を有し、スペーサスレッドは異なる長さを有し、各ステッチ列には等しい長さを有するスペーサスレッドが編み込まれる。
【0003】
本発明のさらなる実施形態は、ニット生地を製造する方法に関するものであり、かかる方法では、順に配置される一連の第一のステッチ列を有する第一のカバー層が生産方向に生産され、順に配置される一連の第二のステッチ列を有する第二のカバー層が生産方向に生産され、パイルスレッドがスペーサスレッドとして2つのカバー層の間に配置されて2つのカバー層に編み込まれる。2つのカバー層の間の距離は同じではなく、異なる長さのスペーサスレッドを有する領域が製造される。
【0004】
さらなる実施形態は、それぞれ1つのカバー層を製造するための2つの編み領域を有するたて編機に関するものである。2つの編み領域の間の距離は、駆動ドライブにより調節可能となっており、少なくとも2つの編み領域間でそのガイドニードルと共に前後に移動可能となっている1つのパイルガイド棒が設けられている。
【背景技術】
【0005】
その間にスペーサスレッドが配置される2つのカバー層を有するニット生地は、「スペーサが編み込まれたニット生地」とも呼ばれる。このようなタイプのスペーサが編み込まれたニット生地は比較的良好な通気性を有しているので、たとえば人体に関連して使用される製品についていえば、湿気を逃がすことが望まれるような製品に使用されことが好ましい。製品の例として、椅子のクッション材、マットレスまたはバックパックのストラップなどが挙げられる。
【0006】
最も単純なケースでは、このようなタイプのスペーサが編み込まれたニット生地は一定の厚みを有している。この場合、ニット生地は、互いに対して不変かつ一定の距離を有している2つのニードルヘッドの助けを借りて製造される。2つのニードルヘッドの間には、2つのカバー層の間にスペーサスレッドとしてパイルスレッドを配置する少なくとも1つのパイルガイド棒が配置されている。
【0007】
ニット生地の設計の際の自由度をより大きくするために、たとえば駆動ドライブを用いて2つのニードルヘッド間の距離を変えることが特許文献1に開示されている。当該距離は、ニット生地の製造時または生産時に変更することもできる。しかしながら、この距離の変更は、ニット生地の幅全体にわたってニット生地の厚みを変更することに常にリンクされている。
特許文献2には同様のアプローチが開示されている。
【0008】
特許文献3には、幅方向に沿って可変的に選択することもできる厚みを有したニット生地が開示されている。しかしながら、この目的のためには、ニットツールを坦持する少なくとも1つの棒または複数の棒を分割することが必要となる。このことは、たて編機の制御、ひいては操作を非常に複雑なものとしてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】ドイツ国特許公開公報第102008047684号
【特許文献2】米国特許第79l3,520号
【特許文献3】ドイツ国特許公開公報第4140826号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明の実施形態は、僅かな努力でニット生地の設計の自由度を増大させることを可能とする。
【0011】
実施形態は、冒頭に記載のタイプのニット生地に関するものであって、第一の幅領域内のスペーサスレッドが第二の幅領域内のスペーサスレッドと異なる長さを有し、少なくとも2つの隣接するステッチ列のうち、1つのステッチ列が第一の幅領域内の第一の長さのスペーサスレッドにのみ接続され、1つのステッチ列が第二の幅領域内の第二の長さのスペーサスレッドにのみ接続されている。
【0012】
このタイプのニット生地は幅方向に沿って異なる厚みを有することができる。ニット生地の厚みはスペーサスレッドの長さにより決まる。第一の幅領域に第二の幅領域よりも短いスレッドが存在する場合、第一の幅領域は第二の幅領域よりも薄く具象化または形成されることになる。もちろん同様に、異なる厚みを有する第三の幅領域や第四の幅領域などを具象化または形成するようにすることも可能である。しかしながら、異なる厚みを有する幅領域内のスペーサスレッドは同一のステッチ列内には配置されない。もっと正確にいえば、第一の幅領域内のスペーサスレッドは第二の幅領域内のスペーサスレッドから生産方向に沿って変位されている。しかしながらこのことは問題ではない。というのは、スペーサスレッドが第二のステッチ列毎、第三のステッチ列毎にしか配置されない場合には、スペーサが編み込まれるニット生地の安定性が十分に担保されるからである。
【0013】
好ましくは、第一の長さを有するスペーサスレッドを備えたステッチ列と、第二の長さを有するスペーサスレッドを備えたステッチ列とは交互になっている。まず、このことにより、異なる長さのスペーサスレッドに接続されているステッチ列が直接交互になっていること(1ステッチ列毎に交互になっていること、directly alternate)を必要とするわけではない。長さの等しいスペーサスレッドに2つまたは3つのステッチ列を連続して接続するようにしてもよい。しかしながら、直接交互になっていることが好ましい。この場合、2つのカバー層は、スペーサスレッドにより相互に支えられることが理想的である。
【0014】
好ましくは、第一の幅領域と第二の幅領域との間にはスペーサスレッドのない移行領域が設けられる。移行領域では厚みが変わる。このことは、移行領域にスペーサスレッドが存在しないため簡単に達成することができる。
【0015】
他の実施形態では、第一の幅領域と第二の幅領域との間には移行領域が設けられ、この移行領域では、2つの長さのうち大きい方の長さを有する移行領域のスペーサスレッドが配置されるようになっている。この場合、当該スペーサスレッドが設けられると、2つのカバー層の間の距離が長い方に合わされる。隣接する長さの小さなスペーサスレッドに起因して厚みが減少すると、移行領域内のスペーサスレッドが僅かに圧縮されることになる。
【0016】
好ましくは、パイルスレッドが2つのカバー層を接続していない領域内では、パイルスレッドはカバー層に編みこまれる。そうすると、当該パイルスレッドは、さらなる妨害を引き起こすこともなければ、もはや目障りになることもない。
【0017】
好ましくは、少なくともニット生地の1つの所定長さのセクション内では、各ステッチ列は、スペーサスレッドのない幅セクションを有している。この幅セクションでは、スペーサスレッドは、他のステッチ列内にのみ配置されるので、ニット生地の異なる厚みを決定することができる。
【0018】
本発明の実施形態は、冒頭に記載のタイプの方法に関するものであり、かかる方法では、スペーサスレッドが第一の距離で2つのカバー層の間の第一の幅領域内にのみ編みこまれ、スペーサスレッドが第二の距離で2つのカバー層の間の第二の幅領域内にのみ編みこまれるようになっている。
【0019】
したがって、厚みの異なる幅領域がニット生地の幅方向に沿って生じることになる。スペーサスレッドが編みこまれる時の2つのカバー層の間の距離によりスペーサスレッドの長さが自動的に決まる。幅方向に沿ってニット生地の厚みが変わる場合そのニット生地の全幅にわたってスレッドが編みこまれるわけではないので、2つのカバー層の間の距離が前もって決められている1つのステッチ列では、この距離がその後にも続いて維持されることになっているところにステッチスレッドを編みこむようにすることにより、幅方向に沿って厚みを変えることが容易に可能となる。したがって、その他の幅領域では、ステッチ列にはスペーサスレッドが編みこまれない。これらの位置にスペーサスレッドをさらに設けるために、それらの位置の異なるステッチ列に、スペーサスレッドが編みこまれることになる。スペーサスレッドを形成するために個々のニードルがパイルスレッドを両方のカバー層に編みこむように、または、特定の幅領域にスペーサスレッドのないステッチ列を形成するために個々のニードルが1つのカバー層にのみパイルスレッドを編みこむもしくはまったく編みこまないように、個々のニードルを制御することができることを必要とするだけの連続パイルガイド棒が用いられてもよい。このことは、ガイドニードルを個別に制御することを可能とするジャカード棒を用いて達成することが問題なくできる。
【0020】
好ましくは、第一の距離と第二の距離とが切り換えられる。したがって、たとえば第一の長さを有するスペーサスレッドが設けられた複数のステッチ列を有する長さの小さな領域を第一の幅領域内に設け、それに続く他の幅領域内のステッチ列に第二の長さを有するスペーサスレッドを設けるようにしてもよい。
【0021】
しかしながら、少なくともニット生地の前もって決められている長さのセクションでは、個々の新たなステッチ列に対して2つのカバー層間の距離が異なるように設定されることが好ましい。したがって、スペーサスレッドは、2つのカバー層の間で比較的均一に配置される。
【0022】
好ましくは、少なくとも前もって決められている長さのセクションでは、各ステッチ列内にスペーサスレッドのない1つの幅セクションが具象化または形成される。第一の幅セクション内にスペーサスレッドが形成されていない各ステッチ列では、第二の幅領域にのみにスペーサスレッドが存在する。この第二の幅領域では、ニット生地の厚みはこのステッチ列内のスペーサスレッドによって決まる。また、異なる幅領域内のニット生地の厚みは、異なる幅セクション内のスペーサスレッドの長さによって決まる。
【0023】
好ましくは、幅領域内でスペーサスレッドとして用いられていないパイルスレッドは、カバー層内に坦持される。これらのパイルスレッドは、目障りになることもなく、さらなる混乱を引き起こすこともない。
【0024】
実施形態は、冒頭に記載のタイプのたて編機に関するものであり、パイルガイド棒がジャカードガイド棒として具象化または形成され、ジャカードガイド棒のガイドニードルが動作位置と休止位置との間で調整可能となっている。また、ニット生地の間隔に応じてガイドニードルを調節するコントロールデバイスが設けられている。
【0025】
ジャカードガイド棒はそれ自体知られているものである。ほとんどの場合、ジャカードガイド棒は、ニット生地の製造中に変位方向に、すなわちその長手方向に沿った延び方向に移動させることができる。しかしながら、ガイドニードルは、個々に調節することができ、ジャカードガイド棒の変位に対して反対に移動するため、所定の場所に留まるようになっている。このような場合には、パイルスレッドはカバー層に編みこまれない。
【0026】
好ましくは、コントロールデバイスは、駆動ドライブをさらに制御するようになっている。したがって、2つの編み領域の間の距離に別個のセンサーは必要ではない。もっと正確にいえば、コントロールデバイスは、個々のステッチ列に対して存在している距離を「分かっている」。したがって、コントロールデバイスは、この距離の関数として対応するジャカードガイドニードルを制御することができる。これらのガイドニードルは、たとえば圧電ドライブを含みうる。
【0027】
本発明の実施形態は、第一のカバー層と、第二のカバー層と、第一のカバー層と第二のカバー層との間にスペーサスレッドとして形成されるパイルスレッドの構造とを有するニット生地に関するものである。各カバー層は順に配置される複数のステッチ列を有している。スペーサスレッドは異なる長さを有しており、各ステッチ列に編みこまれるスペーサスレッドは等しい長さを有している。第一の幅領域内のスペーサスレッドは第二の幅領域内のスペーサスレッドとは異なる長さを有している。少なくとも2つの隣接するステッチ列については、1つのステッチ列が第一の幅領域内の第一の長さのスペーサスレッドに接続され、1つのステッチ列が第二の幅領域内の第二の長さのスペーサスレッドに接続されている。
【0028】
実施形態によっては、少なくとも2つの隣接するステッチ列については、1つのステッチ列が第一の幅領域内の第一の長さのスペーサスレッドにのみ接続され、1つのステッチ列が第二の幅領域内の第二の長さのスペーサスレッドにのみ接続されている。
【0029】
本発明の実施形態によっては、第一の長さを有するスペーサスレッドを備えたステッチ列と、第二の長さを有するスペーサスレッドを備えたステッチ列とは交互になっている場合もある。
【0030】
さらに実施形態によっては、ニット生地は、スペーサスレッドが配置されえない、第一の幅領域と第二の幅領域との間に位置する移行領域を有している場合もある。
【0031】
さらに、ニット生地は、異なる長さのうちの大きい方の長さを有するスペーサスレッドが配置されうる、第一の幅領域と第二の幅領域との間に位置する移行領域を有している場合もある。
【0032】
さらに他の実施形態によれば、パイルスレッドは、2つのカバー層を接続していない領域において、2つのカバー層のうちの1つに編みこまれる場合もある。
【0033】
さらに他の実施形態によれば、少なくともニット生地の1つの前もって決められた長さのセクション内では、各ステッチ列は、スペーサスレッドのない幅セクションを有している。
【0034】
また、本発明の実施形態はニット生地を製造する方法に関するものである。かかる方法は、製造方向に沿って順に配置される一連の第一のステッチ列を備えた第一のカバー層と、製造方向に向けて順に配置される一連の第二のステッチ列を備えた第二のカバー層とを製造することと、2つのカバー層の間に配置されるパイルスレッドをスペーサスレッドとして2つのカバー層に編みこむこととを含んでいる。2つのカバー層の間の距離は同じではなく、異なる長さのスペーサスレッドを有する領域が製造される。2つのカバー層の間の第一の幅領域に第一の距離でスペーサスレッドが編みこまれ、2つのカバー層の間の第二の幅領域に第二の距離でスペーサスレッドが編みこまれる。
【0035】
実施形態によっては、第一の距離で2つのカバー層の間の第一の幅領域にのみスペーサスレッドが編みこまれ、第二の距離で2つのカバー層の間の第二の幅領域にのみスペーサスレッドが編みこまれる場合もある。
【0036】
また実施形態によっては、第一の距離と第二の距離とが交互になっている場合もある。
【0037】
さらに実施形態によっては、少なくともニット生地の前もって決められた長さのセクションでは、個々の新たなステッチ列に対して、2つのカバー層の間の距離が異なって設定される場合もある。
【0038】
さらに実施形態によっては、少なくとも前もって決められた長さのセクション内では、各ステッチ列にスペーサスレッドがない1つの幅セクションが形成される場合もある。
【0039】
さらに実施形態によっては、幅領域内において、スペーサスレッドとして用いられていないパイルスレッドがカバー層内に坦持されるようになっている場合もある。
【0040】
本発明の実施形態は、それぞれ対応するカバー層を製造するように構成及び配置される2つの編み領域と、2つの編み領域の間の距離を調節するように構成及び配置される駆動ドライブと、ガイドニードルを有し、2つの編み領域の間でガイドニードルと共に前後に移動可能な少なくとも1つのパイルガイド棒と、2つの編み領域の間の距離に応じてガイドニードルを調節するように構成及び配置されるコントロールデバイスとを備えているたて編機に関するものである。
【0041】
実施形態によっては、少なくとも1つのパイルガイド棒がジャカードガイド棒として形成され、ジャカードガイド棒のガイドニードルが作動位置と休止位置との間で調節可能となっている場合もある。
【0042】
さらに本発明の実施形態によっては、コントロールデバイスが駆動ドライブを制御するようにさらに構成されている場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0043】
本開示及び添付の図面を参照することにより本発明の他の例示の実施形態及び利点を理解することができる。
下記の詳細な記載には、本発明の実施形態を例示する目的で記載された複数の図面を参照して、本発明についてさらに述べられている。図面全体にわたって、同様の参照番号は同様の部品を示している。
【
図3】スペーサスレッドの配置を示す概略図である。
【
図4】たて編機を説明するための極めて簡略化された概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本明細書に記載の詳細事項は例示を意図し、本発明の実施形態を分かり易く説明することを目的とし、本発明の原理及び概念を最も有用かつ容易に理解可能だと考える説明を提供しようとする動機で提示されているものである。この点において、本発明の基本的な理解に必要以上には本発明の構造を詳細には示しておらず、本発明の複数の形態を実際どのように具象化されうるのかについては、図面を参照して明細書を読むことにより当業者にとって明白となる。
【0045】
図1に示されているニット生地1は第一のカバー層2と第二のカバー層3とを備えている。スペーサスレッド4、5は2つのカバー層2、3の間に配置されている。スペーサスレッド4、5とは、2つのカバー層2、3を接続するパイルスレッドのことである。したがって、スペーサスレッド4、5は2つのカバー層2、3に編みこまれている。説明のため、製造方向6が矢印により示されている。両方向矢印により示されている幅方向7は、製造方向6に対して横方向になっている。図から分かるように、ニット生地1は、幅方向7に沿って、厚みの小さな第一の幅領域8と、厚みの大きな第二の幅領域9とを有している。ここで説明される例示の実施形態では、第一の幅領域8の厚みは3mmであり、第二の幅領域9の厚みは5mmである。
【0046】
図2は、ニット生地1を示す断面図である。同一の要素には同一の参照数字が付与されている。
【0047】
本発明の実施形態は、最小の努力でこのタイプのニット生地を製造するようになっている。
【0048】
図4には、この目的に用いられるたて編機10を極めて概略したものが示されている。たて編機10は、2つのグラウンドガイド棒GB1、GB2を有する第一の編み領域11を備えている。さらに、詳細には記載されていないが、さらなる要素、具体的にはニットニードル棒及びくし板(comb plate)を設けることができる。
【0049】
さらに、たて編機10は第二の編み領域12を備えており、ここでは2つのグラウンドガイド棒GB3、GB4が示されている。
【0050】
編み領域11はカバー層2を製造する。編み領域12はカバー層3を製造する。
【0051】
さらに、たて編機10の動作中に2つの編み領域11及び12の間の距離を調節することもできる駆動ドライブ13が設けられている。ある時点での2つの編み領域11及び12の間の距離により通常その時点で製造されるニット生地1の厚みが決まる。
【0052】
パイルガイド棒PJB5は、スペーサスレッド4、5としてのパイルスレッド14を2つのカバー層2及び3の間で前後に案内し、必要ならばさらに、パイルスレッド14を2つのカバー層2、3に編みこむ役目をする。このことは以下に説明されている。
【0053】
もちろん、このタイプの複数のパイルスレッド14は、図面(drawing plane)に対して垂直に提供される。
【0054】
パイルガイド棒PJB5は、変位方向、すなわちその長手方向に沿った延び方向(its longitudinal extension)に並行に移動させることができる。パイルガイド棒PJB5は、パイルガイド棒PJB5の変位移動に対抗するように圧電ドライブ16により個々に制御することができるガイドニードル15を有している。パイルガイド棒PJB5の変位移動中に圧電ドライブ16が駆動されると、ガイドニードル15は静止したままである。圧電ドライブ16が駆動されないと、ガイドニードル15も変位方向に移動されるので、ステッチ形成プロセスに加わることができる。ステッチ形成プロセスによってのみ、パイルスレッド14をカバー層2またはカバー層3に編みこむことが可能となる。
【0055】
圧電ドライブ16はコントロールデバイス17により制御されるようになっている。コントロールデバイス17は、さらに駆動ドライブ13を制御して、2つの編み領域11及び12の間の距離を決定する。
【0056】
したがって、コントロールデバイス17は、ステッチ形成動作中の2つの編み領域11及び12の間に存在する距離を「分かっている」。したがって、コントロールデバイス17は、パイルスレッド14がスペーサスレッドとして編みこまれる時点における2つのカバー層2及び3の間に存在する距離をさらに「分かっている」ことになる。
【0057】
カバー層2及び3の間の距離を幅方向7に沿って異なるようにするために、
図3に基づいて記載されるようなアプローチが用いられる。
図3には、一連のステッチ列a、b、c、d、e、fが示されている。一連のステッチ列a〜fはたとえばカバー層2を形成している。カバー層2またはカバー層3のステッチ列のすべてのステッチは同時に製造される。
【0058】
ステッチ列a〜fでは、位置が小円により表わされている。これらの位置では、パイルスレッド14が両方のカバー層2、3に編みこまれている。さらにステッチ列a〜fでは、位置がドットにより表わされている。これらの位置では、パイルスレッド14は対応するカバー層2、3に編みこまれていない。
【0059】
図3に基づくと、幅領域8では、パイルスレッド14は、スペーサスレッドとしてカバー層2、3に1ステッチ列おきb、d、fにのみ編みこまれている。それに対して、その他のステッチ列a、c、eにはスペーサスレッド4は編みこまれていない。ステッチ列b、d、fが形成される時点では、たとえば2つの編み領域11、12は、短い距離に相当する3mmを有しているので、スペーサスレッド4も3mmの長さを有している。
【0060】
幅領域9では、ステッチ列a、c、eには、2つのカバー層2、3に編みこまれているスペーサスレッド5が設けられている。しかしながら、ステッチ列b、d、fには、スペーサスレッドが設けられていない。ステッチ列a、c、eが形成される時点では、たとえば2つの編み領域11及び12の間の距離は、長い距離に相当する5mmであるので、スペーサスレッド5も5mmの長さを有している。
【0061】
コントロールデバイス17は、2つの編み領域11及び12の間の距離を調節することができる駆動ドライブ13と、パイルガイド棒PJB5の圧電ドライブ16とを制御するようになっている。したがって、2つの編み領域11、12が短い距離を有しているときに2つのカバー層2、3のステッチ列b、d、fにのみスペーサスレッドを編みこみ、2つのカバー層2、3が長い距離を有しているときに他のステッチ列a、c、eにのみスペーサスレッドを編みこむことが簡単に可能である。
【0062】
もちろん、記載の2つの幅領域8、9よりも多い数の幅領域及び2つの異なる厚みよりも多い数の異なる厚みを達成することも可能である。
【0063】
さらに、製造方向6に沿って厚みをさらに変えることも可能である。
【0064】
幅領域8におけるステッチ列a、c、eに用いられないパイルスレッド14は、2つのカバー層2、3のうちの一方に編みこむようにすることができるし、または、浮遊状態でもしくは外れた状態で2つのカバー層2及び3の間に配置することができる。幅領域9に沿ってカバー層2、3のステッチ列b、d、fに編みこまれないパイルスレッド14も浮遊状態でもしくは外れた状態で2つのカバー層2及び3の間に配置することができる。
【0065】
具体的にいえば、ニット生地1は靴材料が用いられるところに用いることができる。
【0066】
図3では、個々のステッチ列a〜fが長さの異なるスペーサスレッド4、5で交互に編みこまれていることが示されている。このことは、有利なことではあるが、必ずしも必要なことではない。さらに、2つまたは3つのステッチ列に短いパイルスレッドを設け、次いで、2つまたは3つのステッチ列に長いパイルスレッドを設けるようにしてもよい。
【0067】
2つの幅領域8及び9の間には移行領域18が設けられている。この移行領域18にはスペーサスレッドを設けないようにしておくことができる。しかしながら、ここにより長い移行スレッドを配置することも可能である。次いで、これらの移行スレッドはわずかに圧縮されるが、そのことは問題にはならない。
【0068】
先に記載の具体例は説明を目的とするものであって、本発明を制限するものとして解釈されるべきではないことに留意されたい。本発明が例示の実施形態を参照して記載されているが、本明細書で用いられている用語は説明及び例示を意図したものであって、限定を意図したものではないことを理解されたい。本発明の技術範囲及び技術思想から逸脱することなく本願出願時の及び補正後の特許請求の範囲に変更を加えてもよい。本発明は、特定の手段、材料及び実施形態を参照して本明細書に記載されているが、本明細書に開示の詳細事項に限定されることを意図したものではない。もっと正確にいえば、本発明は、すべての機能的に均等な構造、方法及び使用にまで及び、それらもまたは添付の特許請求の範囲内に含まれるものとする。