特許第5976871号(P5976871)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5976871
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】無線伝送システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/00 20060101AFI20160817BHJP
【FI】
   B66B3/00 U
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-69196(P2015-69196)
(22)【出願日】2015年3月30日
【審査請求日】2015年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】文屋 雅弘
【審査官】 葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−227766(JP,A)
【文献】 特開2012−065118(JP,A)
【文献】 特開2003−300677(JP,A)
【文献】 特開2015−013742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00
H04B 7/24−7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の周波数帯にて動作し、エレベータを制御するために用いられる制御信号を出力する当該エレベータの複数の構成要素の各々に対応する複数の第1の無線装置と、
前記第1の周波数帯より高い周波数帯である第2の周波数帯にて動作し、前記制御信号を出力する前記エレベータの複数の構成要素の各々に対応する複数の第2の無線装置と
を具備し、
前記複数の構成要素は、少なくとも乗りかごの昇降動作を制御するエレベータ制御装置を含み、
前記エレベータ制御装置は、
前記エレベータの現在の運転状態を検出する検出手段と、
前記検出された現在の運転状態に応じて、前記制御信号を出力するのに好適な周波数帯を選択する周波数帯選択手段と、
前記選択された周波数帯にて動作する無線装置に対して、当該周波数帯にて動作する無線装置間で前記制御信号の送受信が可能となるコネクションの確立を試みるよう指示する指示信号を出力する第1の出力手段と
を備え、
前記検出手段は、
前記エレベータの現在の運転状態が保守点検中、走行中、停止中のいずれかであることを検出することを特徴とする無線伝送システム。
【請求項2】
前記各第1の無線装置及び前記各第2の無線装置は、
前記出力された指示信号の入力が有った場合に、自身と同じ周波数帯にて動作する他の無線装置に対して、前記コネクションの確立を要求する旨の要求信号を出力する第2の出力手段を
具備することを特徴とする請求項1に記載の無線伝送システム。
【請求項3】
前記周波数帯選択手段は、
前記検出された現在の運転状態が走行中を示す場合、前記好適な周波数帯として前記第1の周波数帯を選択し、
前記第1の出力手段は、
前記選択された第1の周波数帯にて動作する前記各第1の無線装置のうちの少なくとも1つに対して、当該第1の周波数帯にて動作する複数の第1の無線装置間でのコネクションの確立を試みるよう指示する前記指示信号を出力することを特徴とする請求項に記載の無線伝送システム。
【請求項4】
前記周波数帯選択手段は、
前記検出された現在の運転状態が停止中または保守点検中を示す場合、前記好適な周波数帯として前記第2の周波数帯を選択し、
前記第1の出力手段は、
前記選択された第2の周波数帯にて動作する前記各第2の無線装置のうちの少なくとも1つに対して、当該第2の周波数帯にて動作する複数の第2の無線装置間でのコネクションの確立を試みるよう指示する前記指示信号を出力することを特徴とする請求項に記載の無線伝送システム。
【請求項5】
前記検出手段は、
保守点検時に保守員によって切り替えられる点検スイッチがオンになっているときに発せられる信号の入力が有った場合、前記エレベータの現在の運転状態が保守点検中であることを検出し、
前記点検スイッチがオンになっているときに発せられる信号の入力が無い状態で、前記エレベータを駆動させるための駆動信号が出力されている場合、前記エレベータの現在の運転状態が走行中であることを検出し、
前記点検スイッチがオンになっているときに発せられる信号の入力が無い状態で、前記駆動信号が出力されていない場合、前記エレベータの現在の運転状態が停止中であることを検出することを特徴とする請求項1に記載の無線伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、無線伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エレベータには、制御盤と称される、当該エレベータ全体の制御を行うための装置(以下、エレベータ制御装置と表記)が備えられている。
【0003】
エレベータ制御装置は、巻上げ機を駆動させて昇降路内における乗りかごの昇降動作を制御するとともに、例えば所定のホール(乗場)に着床した乗りかごのかごドアを開閉制御するための制御信号等を当該乗りかごに伝送する。
【0004】
一方、乗りかご内に設けられた行先階ボタンに対する操作に応じて出力されるかご呼びと称される制御信号は、当該乗りかごからエレベータ制御装置に伝送される。
【0005】
エレベータ制御装置及び乗りかご間の制御信号の伝送は、当該エレベータ制御装置及び乗りかごを接続するテールコードと称される伝送ケーブルを介して行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3755262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
エレベータ(乗りかご)が走行する昇降行程が長距離となる場合、上記したテールコードを長くする必要がある。
【0008】
このようにテールコードを長くした場合、当該テールコードの重量が増加する。テールコードは乗りかごに接続されているため、当該テールコードの重量の増加に伴って、乗りかごを昇降動作させるための巻上げ機の容量を増加させる必要がある。
【0009】
このため、テールコードを用いることなく、エレベータ制御装置及び乗りかご間の制御信号の伝送を無線により安定して行う仕組みが望まれている。
【0010】
本発明の一形態の目的は、エレベータにおける制御信号を無線により安定して伝送可能な無線伝送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態によれば、無線伝送システムは、第1の周波数帯にて動作し、エレベータを制御するために用いられる制御信号を出力する当該エレベータの複数の構成要素の各々に対応する複数の第1の無線装置と、前記第1の周波数帯より高い周波数帯である第2の周波数帯にて動作し、前記制御信号を出力する前記エレベータの複数の構成要素の各々に対応する複数の第2の無線装置とを具備し、前記複数の構成要素は、少なくとも乗りかごの昇降動作を制御するエレベータ制御装置を含み、前記エレベータ制御装置は、前記エレベータの現在の運転状態を検出する検出手段と、前記検出された現在の運転状態に応じて、前記制御信号を出力するのに好適な周波数帯を選択する周波数帯選択手段と、前記選択された周波数帯にて動作する無線装置に対して、当該周波数帯にて動作する無線装置間で前記制御信号の送受信が可能となるコネクションの確立を試みるよう指示する指示信号を出力する第1の出力手段とを備え、前記検出手段は、前記現在の運転状態が保守点検中、走行中、停止中のいずれかであることを検出する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係るエレベータの構成を示す図。
図2】同実施形態に係る無線装置の機能構成を示す図。
図3】同実施形態に係る無線装置の動作の一例を示すフローチャート。
図4】同実施形態に係る周波数選択機能を実現可能なエレベータ制御装置の機能構成を示す図。
図5】同実施形態に係るエレベータ制御装置の動作の一例を示すフローチャート。
図6】同実施形態に係るエレベータ制御装置が周波数選択機能を有している場合の無線装置の動作の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態におけるエレベータの構成を示す図である。図1に示すエレベータ10では、制御盤と称される、当該エレベータ10全体の制御を行うエレベータ制御装置11が昇降路20の上部に備えられている。
【0014】
エレベータ10においては、昇降路20内に乗りかご12とカウンタウェイト(釣り合い錘)13とが設けられており、それぞれガイドレール(図示せず)に昇降動作可能に支持されている。
【0015】
また、昇降路20の上部には、エレベータ制御装置11と接続される巻上げ機14が設けられている。巻上げ機14には、一端が乗りかご12と接続され、他端がカウンタウェイト13と接続されたメインロープ15が巻き架けられている。
【0016】
エレベータ10においては、エレベータ制御装置11の制御に基づいて巻上げ機14が駆動されることによって、メインロープ15の両端に接続された乗りかご12及びカウンタウェイト13が互いに反対方向に昇降動作する。
【0017】
図1においては省略されているが、乗りかご12の上部には、例えばホール31〜34等に着床した乗りかご12のかごドアを開閉制御するためのかご制御装置が設けられている。
【0018】
更に、乗りかご12内には、行先階ボタンが設けられている。行先階ボタンは、乗りかご12内に乗車した利用者の行先階を登録するためのボタンである。行先階ボタンに対する操作が利用者によって行われた場合、当該利用者によって登録された行先階を表す信号(以下、かご呼びと表記)が出力される。
【0019】
また、乗りかご12が着床する各階のホール31〜34には、ホール呼びボタンが設置されている。ホール呼びボタンは、利用者が乗りかご12に乗車するホールの位置(登録階)を登録するためのボタンである。ホール31〜34においてホール呼びボタンに対する操作が利用者によって行われた場合、利用者によって登録された当該ホールの位置及び行先方向(上方向/下方向)を表す信号(以下、ホール呼びと表記)が出力される。
【0020】
本実施形態において、上記したエレベータ10を制御するために用いられる信号(以下、制御信号と表記)を出力する当該エレベータ10のエレベータ制御装置11及び乗りかご12の近傍には、第1の周波数帯に対応した無線装置と、第2の周波数帯に対応した無線装置とが各々設けられている。第1の周波数帯とは、低い周波数帯であり、具体的には、通信速度は遅いが、制御信号を送受信可能な距離が長い周波数帯(例えば、920MHz(サブギガ帯)等)を示す。一方で、第2の周波数帯とは、上記した第1の周波数帯に比べて高い周波数帯であり、具体的には、通信速度は速いが、制御信号を送受信可能な距離が短い周波数帯(例えば、2.4GHz等)を示す。
【0021】
このように、異なる周波数帯に対応した複数の無線装置がエレベータ制御装置11及び乗りかご12の近傍に各々設けられることで、例えば、第1の周波数帯を利用して、エレベータ制御装置11と乗りかご12との間で制御信号を送受信可能にするコネクションが確立できなかったとしても、第2の周波数帯を利用して、当該コネクションの確立を試行することができる。つまり、上記したコネクションが確立できないといった状況を減らすことができる。これによれば、従来のテールコードに代えて、無線装置を利用したとしても、エレベータ10を正常に運転させることができるようになる。
【0022】
なお、本実施形態におけるエレベータ10を制御するための制御信号には、例えばエレベータ制御装置11から出力されるエレベータ10全体を制御するための各種制御信号や、乗りかご12内に設けられた行先階ボタンに対する操作に応じて出力されるかご呼び等が含まれる。また、本実施形態では、エレベータ10を制御するための制御信号を出力する当該エレベータ10の構成要素が、エレベータ制御装置11及び乗りかご12である場合について説明するが、エレベータ10を制御するために用いられる制御信号を出力するものであれば、これら以外であっても構わない。更に、本実施形態におけるエレベータ10を制御するための制御信号は、当該エレベータ10の構成要素間で送受信される必要がある信号(データ)であればよい。
【0023】
図1では、エレベータ制御装置11の近傍に、第1の周波数帯に対応する無線装置16aと、第2の周波数帯に対応する無線装置16bとが設けられている場合を示す。また、乗りかご12の近傍に、第1の周波数帯に対応する無線装置16cと、第2の周波数帯に対応する無線装置16dとが設けられている場合を示す。なお、本実施形態では、2種類の周波数帯に対応した無線装置が設けられている場合について説明するが、対応する周波数帯の数はこれに限定されるものではない。例えば、第3の周波数帯に対応した無線装置が更に設けられていてもよい。
【0024】
図1に示す各無線装置16a〜16dは、エレベータ10における制御信号の無線による伝送を可能とする無線伝送システムを構成する。
【0025】
ここで、図2を参照して、本実施形態に係る無線伝送システムを構成する複数の無線装置16a〜16dの機能構成について説明する。なお、第1の周波数帯に対応した無線装置16a,16cと、第2の周波数帯に対応した無線装置16b,16dとは、利用可能な周波数帯が異なる以外は同様な機能構成を有しているため、以下では、第1の周波数帯に対応した無線装置16aを例にとって、無線装置の機能構成について説明する。
【0026】
図2に示すように、無線装置16aは、送受信部161a及び制御部162aを備えている。
【0027】
送受信部161aは、無線装置16aと同じ周波数帯に対応し、乗りかご12の近傍に設けられる無線装置16cから出力される制御信号を受信する。また、送受信部161aは、無線装置16aと同じ周波数帯に対応し、乗りかご12の近傍に設けられる無線装置16cに対して無線により制御信号を送信する。
【0028】
制御部162aは、無線装置16a全体の制御を行う機能部である。制御部162aは、無線装置16aと同じ周波数帯に対応し、乗りかご12の近傍に設けられる無線装置16cとのコネクションを確立するように動作する。
【0029】
無線装置16aは、制御部162aにより無線装置16cとのコネクションを確立した上で、送受信部161aを用いて制御信号の送受信を行う。
【0030】
なお、詳細な説明は省略するが、無線装置16a〜16dは、ハードウェア構成として、無線通信用のアンテナ、OSI参照モデルにおける物理層の処理を実行するPHY回路、当該OSI参照モデルにおけるデータリンク層の処理(MAC処理)を実行するMCU(マイクロコントロールユニット)、ROM、RAM及び当該無線装置に対応する構成要素との間で制御信号の受け渡しを行うI/O部等を備える。無線装置16a〜16dに備えられる無線通信用のアンテナとしては、例えばダイバーシティアンテナを用いることができる。これによれば、無線装置16a〜16d間の通信品質及び信頼性を向上させることができる。
【0031】
ここで、図3のフローチャートを参照して、無線伝送システムを構成する無線装置の1つである無線装置16cの動作の一例について説明する。但し、ここでは、エレベータ制御装置11の近傍に設置された無線装置16a,16bが親機として機能し、乗りかご12の近傍に設置された無線装置16c,16dが子機として機能するものとして説明する。
【0032】
始めに、第1の周波数帯に対応した無線装置16cは、当該無線装置16cと同じ第1の周波数帯で動作する無線装置16aとのコネクションを確立するために、無線装置16aに対して、コネクションの確立を要求する旨のコネクション要求信号を出力する(換言すると、コネクションの確立をリクエストする)(ステップS1)。
【0033】
続いて、無線装置16cは、予め設定された所定時間内に無線装置16aからの応答信号の入力が有ったかどうかを判定する(ステップS2)。なお、無線装置16aからの応答信号の入力が無い場合(ステップS2のNO)には、上記したステップS1の処理に戻り、再度、無線装置16aに対してコネクション要求信号を出力する(すなわち、リトライする)。
【0034】
無線装置16aからの応答信号の入力が有る場合(ステップS2のYES)には、無線装置16cは、無線装置16aとのコネクションを確立させ(ステップS3)、ここでの処理を終了させる。同じ周波数帯に対応した無線装置間におけるコネクションが確立することで、当該無線装置間での各種制御信号の送受信が可能になる。
【0035】
なお、ここでは、第1の周波数帯に対応した無線装置16a,16c間でのコネクションの確立を例にとって説明したが、第2の周波数帯に対応した無線装置16b,16d間でのコネクションの確立についても同様であるため、ここではその詳しい説明は省略する。このコネクションの確立の試行は、第1の周波数帯に対応した無線装置16a,16cと、第2の周波数帯に対応した無線装置16b,16dとで一斉に行われてもよいし、一方の周波数帯に対応した無線装置間で行って、ここでコネクションが確立できなかった場合にだけ、もう一方の周波数帯に対応した無線装置間で行うとしてもよい。
【0036】
上述では、異なる周波数帯に対応した複数の無線装置をエレベータ10に設けることで、エレベータ10の構成要素間で制御信号を送受信可能にするためのコネクションを確立しやすくした。しかしながら、コネクションの確立の試行を、異なる周波数帯に対応した複数の無線装置間で一斉に行う場合、大きな電力を使用することになる。また、何のあてもなしに、所定の周波数帯に対応した無線装置間でコネクションの確立を試行し、ここでコネクションの確立ができなかった場合にだけ、別の周波数帯に対応した無線装置間でコネクションの確立を試行するとした場合、1度目の試行でコネクションが確立できれば、大きな電力を使用せずにすむ可能性はあるが、そうでない場合、大きな電力を使用する上に、コネクションを確立するまでに時間がかかってしまうという不都合が生じる。
【0037】
そこで、以下では、上記した不都合を解消し得るエレベータ制御装置11の周波数選択機能について説明する。詳細については後述するが、周波数選択機能とは、エレベータ10の運転状態に応じて、コネクションが確立しやすい周波数帯(以下、使用周波数帯と表記)を選択し、当該周波数帯に対応した無線装置間において、始めにコネクションの確立を試行させる機能である。すなわち、周波数選択機能とは、1度目の試行でコネクションが確立できる可能性を高める機能である。
【0038】
図4は、周波数選択機能を実現可能なエレベータ制御装置11の機能構成を示す図である。図4に示すように、エレベータ制御装置11は、運転状態検出部111及び使用周波数選択部112を備えている。
【0039】
運転状態検出部111は、エレベータ10の運転状態を検出する。具体的には、運転状態検出部111は、エレベータ10の運転状態が、「走行中」、「停止中」または「保守点検中」のいずれの状態であるかを検出する。
【0040】
運転状態検出部111は、保守点検時に保守員によって切り替えられる点検スイッチがオンになっているときに発せられる信号(換言すると、点検スイッチがオンになっていることを示唆する信号)の入力が有った場合、エレベータ10の運転状態を「保守点検中」と検出する。また、運転状態検出部111は、上記した点検スイッチがオンになっていることを示唆する信号の入力が無い状態で、エレベータ制御装置11から巻上げ機14に対して当該巻上げ機14を駆動させるための駆動信号が出力されている場合、エレベータ10の運転状態を「走行中」と検出する。更に、運転状態検出部111は、上記した点検スイッチがオンになっていることを示唆する信号の入力が無い状態で、エレベータ制御装置11から巻上げ機14に対して当該巻上げ機14を駆動させるための駆動信号が出力されていない場合、エレベータ10の運転状態を「停止中」と検出する。
【0041】
なお、運転状態検出部111により検出されたエレベータ10の現在の運転状態を示す運転状態情報は、使用周波数選択部112に送られる。
【0042】
使用周波数選択部112は、運転状態検出部111から送出される運転状態情報の入力を受け付けると、当該運転状態情報により示されるエレベータ10の運転状態に応じて、好適な周波数帯(使用周波数帯)を選択し、当該好適な周波数帯に対応した所定の無線装置に対して、当該好適な周波数帯に対応した無線装置間でのコネクションの確立を試行するよう指示する指示信号を出力する。具体的には、エレベータ10の運転状態が走行中である場合、使用周波数選択部112は、通信速度は遅くても、制御信号を送受信可能な距離が長い周波数帯を好適な周波数帯として選択する。また、エレベータ10の運転状態が停止中または保守点検中である場合、使用周波数選択部112は、制御信号を送受信可能な距離は短くても、通信速度が速い周波数帯を好適な周波数帯として選択する。
【0043】
ここで、図5のフローチャートを参照して、以上のように構成されたエレベータ制御装置11の動作の一例について説明する。なお、ここでは、通信速度は遅いが、制御信号を送受信可能な距離が長い周波数帯を第1の周波数帯と称し、当該第1の周波数帯に比べて、通信速度は速いが、制御信号を送受信可能な距離が短い周波数帯を第2の周波数帯と称するものとする。
【0044】
始めに、エレベータ制御装置11内の運転状態検出部111は、エレベータ10の現在の運転状態がどのような状態であるかを検出する。具体的には、運転状態検出部111は、エレベータ制御装置11に設けられる点検スイッチからの信号の有無に基づいて、当該点検スイッチがオンになっているかどうかを判定する(ステップS11)。
【0045】
点検スイッチがオンになっていると判定された場合(ステップS11のYES)、運転状態検出部111は、エレベータ10の運転状態は保守点検中であると判定して、当該エレベータ10の運転状態が保守点検中であることを示す運転状態情報を使用周波数選択部112に送出する(ステップS12)。なお、ステップS12の処理が実行されると、後述するステップS18の処理に進む。
【0046】
一方で、点検スイッチがオンになっていない、すなわち、オフであると判定された場合(ステップS11のNO)、運転状態検出部111は、エレベータ制御装置11から巻上げ機14に対して駆動信号が出力されているかどうかを判定する(ステップS13)。
【0047】
駆動信号が出力されていると判定された場合(ステップS13のYES)、運転状態検出部111は、エレベータ10の運転状態は走行中であると判定して、当該エレベータ10の運転状態が走行中であることを示す運転状態情報を使用周波数選択部112に送出する(ステップS14)。
【0048】
続いて、使用周波数選択部112は、ステップS14の処理により出力された運転状態情報の入力を受け付けると、当該運転状態情報により示されるエレベータ10の運転状態(ここでは、走行中)にしたがって、第1の周波数帯を好適な周波数帯(使用周波数帯)として選択する(ステップS15)。
【0049】
次に、使用周波数選択部112は、好適な周波数帯として選択された第1の周波数帯に対応した無線装置16a,16cのうち、乗りかご12の近傍に設けられた無線装置16c(換言すると、子機)に対して、当該第1の周波数帯に対応した無線装置16a,16c間でのコネクションの確立を試行するよう指示する指示信号を出力し(ステップS16)、ここでの処理を終了させる。
【0050】
ステップS13の処理において、駆動信号が出力されていないと判定された場合(ステップS13のNO)、運転状態検出部111は、エレベータ10の運転状態は停止中であると判定して、当該エレベータ10の運転状態が停止中であることを示す運転状態情報を使用周波数選択部112に送出する(ステップS17)。
【0051】
続いて、使用周波数選択部112は、ステップS12の処理またはステップS17の処理により出力された運転状態情報の入力を受け付けると、当該運転状態情報により示されるエレベータ10の運転状態(ここでは、保守点検中または停止中)にしたがって、第2の周波数帯を好適な周波数帯(使用周波数帯)として選択する(ステップS18)。
【0052】
しかる後、使用周波数選択部112は、好適な周波数帯として選択された第2の周波数帯に対応した無線装置16b,16dのうち、乗りかご12の近傍に設けられた無線装置16d(換言すると、子機)に対して、当該第2の周波数帯に対応した無線装置16b,16d間でのコネクションの確立を試行するよう指示する指示信号を出力し(ステップS19)、ここでの処理を終了させる。
【0053】
上記したエレベータ制御装置11の周波数選択機能によれば、エレベータ10の運転状態に応じて、コネクションが確立しやすい周波数帯を使用周波数帯として選択し、当該使用周波数帯に対応した無線装置に制御信号を送受信可能にするためのコネクションの確立を試行するよう指示することができるので、1度目の試行でコネクションが確立できる可能性を高めることができるようになる。
【0054】
次に、図6を参照して、エレベータ制御装置11から出力される指示信号の入力を受け付けた場合の無線装置の動作について説明する。ここでは、乗りかご12の近傍に設置され、第1の周波数帯に対応した無線装置16cが、上記した指示信号の入力を受け付けた場合の動作を例にとって説明する。
【0055】
始めに、無線装置16cは、上記した指示信号の入力を受け付けると、当該指示信号にしたがって、当該無線装置16cと同じ周波数帯で動作する無線装置16aとのコネクションを確立するために、無線装置16aに対して、コネクションの確立を要求する旨のコネクション要求信号を出力する(ステップS21)。
【0056】
続いて、無線装置16cは、予め設定された所定時間内に無線装置16aからの応答信号の入力が有ったかどうかを判定する(ステップS22)。
【0057】
所定時間内に応答信号の入力が有った場合(ステップS22のYES)、無線装置16cは、無線装置16aとのコネクションを確立し(ステップS23)、ここでの処理を終了させる。
【0058】
一方で、所定時間内に応答信号の入力が無い場合(ステップS22のNO)、無線装置16cは、無線装置16aとのコネクションを確立することができないと判定して、当該無線装置16cの近傍に設置され、異なる周波数帯の第2の周波数帯で動作する無線装置16dに対してコネクションの確立を試行するよう指示する信号を出力し(ステップS24)、ここでの処理を終了させる。
【0059】
なお、無線装置16dは、無線装置16cからの指示を受けると、同じ第2の周波数帯に対応した無線装置16bに対して、上記したステップS21の処理と同様な処理を実行し、無線装置16b,16d間でのコネクションの確立を試行する。
【0060】
なお、上記した処理では、ステップS24の処理を実行して、一連の処理が終了するとしたが、無線装置16cは、例えば、ステップS24の処理の後、再度ステップS21の処理を実行して、無線装置16aとのコネクションの確立を試行してみてもよい。この試行の結果、無線装置16a,16c間でのコネクションが確立した場合、無線装置16cは、当該無線装置16cの近傍に設置された無線装置16dに対して、現在実行している処理を終了させてよい旨を指示する信号を出力する(すなわち、第2の周波数帯で動作する無線装置16b,16d間でのコネクションの確立の試行をキャンセルする)。
【0061】
以上説明した一実施形態によれば、異なる周波数帯の複数の無線装置がエレベータ10に設けられているので、従来のテールコードに代えて無線装置を利用したとしても、無線装置間で制御信号を送受信可能にするためのコネクションが確立できないといった状態、すなわち、エレベータ10が正常に運転できないといった状態を減らすことができる(つまり、エレベータ10における制御信号を無線により安定して伝送することができるようになる)。
【0062】
また、本実施形態に係る無線伝送システムは、エレベータ10の運転状態に応じて、コネクションを確立しやすい周波数を選択する構成を備えているので、1度目の試行でコネクションを確立させる可能性を高めることができる。
【0063】
なお、本実施形態では、異なる周波数帯の複数の無線装置がエレベータ10に設けられる場合について説明したが、例えば、同じ周波数帯であっても、制御方式の異なるプロトコルを併用した複数の無線装置がエレベータ10に設けられていれば、本実施形態に係る無線伝送システムは実現可能である。
【0064】
なお、本実施形態の処理は、コンピュータプログラムによって実現することができるので、このコンピュータプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を通じてこのコンピュータプログラムをコンピュータにインストールして実行するだけで、本実施形態と同様の効果を容易に実現することができる。
【0065】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
10…エレベータ、11…エレベータ制御装置、12…乗りかご、16…無線装置、111…運転状態検出部、112…使用周波数選択部、161…送受信部、162…制御部。
【要約】
【課題】エレベータにおける制御信号を無線により安定して伝送可能にすること。
【解決手段】実施形態によれば、無線伝送システムは、第1の周波数帯にて動作し、エレベータを制御するために用いられる制御信号を出力する当該エレベータの複数の構成要素の各々に対応する複数の第1の無線装置と、第1の周波数帯より高い周波数帯である第2の周波数帯にて動作し、制御信号を出力するエレベータの複数の構成要素の各々に対応する複数の第2の無線装置とを含む。
【選択図】図1
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図2
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図5
図6