(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態を具体的に説明する。
本発明の第一の態様の内燃機関排気ガス浄化用触媒のための担体は、CeO
2−ZrO
2の固溶体からなるコア材の表面にCeO
2が担持された内燃機関排気ガス浄化用触媒のための担体であって、該コア材中のCeO
2の量が該担体の質量の5〜35質量%、好ましくは5〜30質量%であり、該コア材の表面に担持されたCeO
2の量が該担体の質量の5〜17質量%、好ましくは5〜15質量%であり、より好ましくは該コア材中のCeO
2の量と該コア材の表面に担持されたCeO
2の量との合計が該担体の質量の10〜40質量%である担体である。該コア材中のCeO
2の量が該担体の質量の5質量%未満である場合には担体のOSCは不十分となり、該コア材中のCeO
2の量が該担体の質量の35質量%よりも多い場合には担体の有効CeO
2率が不十分となる。また、該コア材の表面に担持されたCeO
2の量が該担体の質量の5質量%未満である場合には担体のOSCは不十分となり、該コア材の表面に担持されたCeO
2の量が該担体の質量の17質量%よりも多い場合には担体のOSCは不十分となり、有効CeO
2率が不十分となる。この有効CeO
2率とは担体に含まれているCeO
2の内OSCに寄与しているCeO
2の割合を意味する。なお、本発明の内燃機関排気ガス浄化用触媒のための担体のCeO
2−ZrO
2の固溶体からなるコア材は本発明の効果を損なわない範囲において他の成分、例えば、Nd、Ba、Sr等の酸化物を含むことが許容される。
【0012】
本発明の第二の態様の内燃機関排気ガス浄化用触媒のための担体は、CeO
2−ZrO
2−La
2O
3の固溶体からなるコア材の表面にCeO
2が担持された内燃機関排気ガス浄化用触媒のための担体であって、該コア材中のCeO
2の量が該担体の質量の5〜35質量%、好ましくは5〜30質量%であり、該コア材中のLa
2O
3の量が該担体の質量の1〜10質量%、好ましくは2〜8質量%であり、該コア材の表面に担持されたCeO
2の量が該担体の質量の5〜17質量%、好ましくは5〜15質量%であり、より好ましくは該コア材中のCeO
2の量と該コア材の表面に担持されたCeO
2の量との合計が該担体の質量の10〜40質量%である担体である。該コア材中のCeO
2の量の限定理由及び該コア材の表面に担持されたCeO
2の量の限定理由は上記の第一の態様で説明した通りである。コア材がLa
2O
3を含むことにより、担体の耐熱性が良くなり、担体のOSCが改善され、耐久性能が向上する。この効果が達成されるためには、La
2O
3量が該担体の質量の1質量%以上であることが必須である。しかし、La
2O
3量が10質量%を超える場合には、それに応じてCeO
2及びZrO
2の相対量が低下し、担体の特性が低下する傾向がある。
【0013】
本発明の担体はCeO
2−ZrO
2の固溶体からなるコア材の表面にCeO
2が担持されたか、又はCeO
2−ZrO
2−La
2O
3の固溶体からなるコア材の表面にCeO
2が担持されたものである。これらのコア材は焼成によりCeO
2に変化し得るCe化合物及び焼成によりZrO
2に変化し得るZr化合物を含有する水溶液、又は焼成によりCeO
2に変化し得るCe化合物、焼成によりZrO
2に変化し得るZr化合物及び焼成によりLa
2O
3に変化し得るLa化合物を含有する水溶液を炭酸アンモニウム、水酸化ナトリウム等でpHを6.0〜8.0程度に調整し、得られた沈殿物をろ過し、洗浄し、十分に乾燥させ、その後600℃〜1000℃で焼成することにより、例えば1000℃で3時間焼成することにより得ることができる。
【0014】
本発明の担体は、上記のようにして製造した固溶体からなるコア材を水中に懸濁させ、その懸濁液中に焼成によりCeO
2に変化し得るCe化合物、例えば硝酸セリウム、硫酸セリウム又は酢酸セリウムを溶解させ、沈澱剤(アルカリ溶液、炭酸塩、シュウ酸塩等)を加えて沈澱させ、得られた沈殿物をろ過し、洗浄し、十分に乾燥させ、その後、600℃〜1000℃で焼成することにより得ることができる。
【0015】
以下に、実施例及び比較例に基づいて本発明を説明する。
実施例1〜7及び比較例1〜11
比較例1〜8の担体の製造原料、並びに実施例1〜7及び比較例9〜11の担体のコア材の製造原料として硝酸セリウム及び硝酸ジルコニウムを第1表に示す組成(質量比)となる量比で用いるか、又は硝酸セリウム、硝酸ジルコニウム及び硝酸ランタンを第1表に示す組成(質量比)となる量比で用い、それらを含有する水溶液に沈澱剤として炭酸アンモニウムをpHが7.0となる量で添加し、得られた沈殿物をろ過し、洗浄し、十分に乾燥させ、その後1000℃で3時間焼成することにより比較例1〜8の固溶体からなる担体、並びに実施例1〜7及び比較例9〜11の担体の固溶体からなるコア材を得た。比較例1〜8の固溶体からなる担体の組成(質量比)を第1表に示す。
【0016】
上記のようにして製造した実施例1〜7及び比較例9〜11の担体の固溶体からなるコア材を水中に懸濁させ、その懸濁液中に硝酸セリウムを第1表に示す組成(質量比)となる量比で溶解させ、沈澱剤として炭酸アンモニウムをpHが7.0となる量で添加し、得られた沈殿物をろ過し、洗浄し、十分に乾燥させ、その後1000℃で3時間焼成することによりコア材の表面にCeO
2が担持された実施例1〜7及び比較例9〜11の担体を得た。実施例1〜7及び比較例9〜11の担体の組成(質量比)を第1表に示す。これらの担体において括弧内はコア材の組成(質量比)であり、括弧の前のCeO
2はコア材の表面に担持されたCeO
2である。
【0018】
<評価>
各担体についてのOSCの評価はCOパルス法によって行ない、表面積(BET)の評価はN
2吸着法によって行った。なお、以下の各表中のFreshの欄はエイジングする前の担体の評価であり、Agedの欄は空気中、1000℃で25時間エイジングした担体の評価である。
【0019】
比較例1、比較例5、実施例1、実施例3、実施例7及び比較例11のそれぞれの担体のBETの測定結果を第2表に示す。
【0021】
実施例1〜7及び比較例1〜11のそれぞれの担体のOSCの測定結果を第3〜6表に示す。
【0026】
第2表に示してある比較例1、比較例5、実施例1及び実施例3のそれぞれの担体のBETの測定結果について、比較例5の担体と実施例3の担体とを比較すると、Fresh及びAgedの両方のBETについて大差は見られないが、実施例3の担体の方がわずかに優れている。従って、CeO
2をコア材の表面に担持させてもBETや耐熱性が低下することはないことが分かる。また、比較例5の担体及び実施例3の担体はそれぞれ比較例1の担体及び実施例1の担体の組成にそれぞれLa
2O
3を添加した担体であるが、Fresh及びAgedの両方のBETが大きくなっており、La
2O
3を添加することにより耐熱性が改善されている。
【0027】
第3表に示してある比較例1、比較例5、実施例1及び実施例3のそれぞれの担体のOSCの測定結果から明らかなように、La
2O
3を添加することで、耐熱性が上がり、それに伴いOSCも高くなっていることがわかる。また、CeO
2を表面にコートするとLa
2O
3を添加している場合も添加していない場合もOSCが高くなっている。従って、CeO
2を表面にコートすることによる効果はLa
2O
3の添加に左右されるものではないことは明らかである。
【0028】
第4表に示してある比較例2、比較例9及び実施例5のそれぞれの担体のOSCの測定結果から明らかなように、15質量%のCeO
2を担体中に均一に分散させた比較例2の担体と、15質量%のCeO
2を表面のみに選択析出させた比較例9の担体とを比較すると、低温の400℃でのOSCは表面のみに選択析出させた比較例9の担体の方が良好な性能を示した。一方、高温側では担体中に均一に分散させた比較例2の担体の方が高いOSCを示した。このことより、初めに機能し始める表面にCeO
2を選択的に担持させることは低温でのOSCの向上には有効であるが、格子内拡散が十分に働く高温ではCeO
2が担体中に均一に分散している方が有利であると考えられる。この結果から、低温から高温領域まで高いOSCを発現させるためには、低温側のOSCには表面のCeO
2が寄与し、高温側のOSCには担体中に均一に分散したCeO
2が寄与することが有効であると考えられる。全CeO
2量を15質量%として、5質量%のCeO
2を表面コートとし、残りの10質量%のCeO
2をコア材中に均一に分散させた担体が実施例5の担体である。この実施例5の担体は、低温から高温にかけて、15質量%のCeO
2を表面のみに選択析出させた比較例9の担体と15質量%のCeO
2を担体中に均一に分散させた比較例2の担体の両方の特性を示した。以上の結果より、低温でのOSCを向上させるためにはCeO
2をコア材の表面に選択的にコートすることが有効であることが分かった。
【0029】
第5表に示してある比較例4〜7、実施例2〜4及び比較例10は、表面CeO
2のコート量を変化させた場合の担体のOSCの変化を示している。表面CeO
2をコートした実施例2〜4の担体及び比較例10の担体と表面CeO
2をコートしていない比較例4〜7の担体とを比較すると、表面CeO
2のコート量が15質量%までは、表面CeO
2をコートした担体の方が明らかにOSCが高くなっているが、表面CeO
2のコート量を20質量%まで増やした比較例10の担体の場合には逆にOSCが低くなる傾向が見られた。従って、第5表に示すデータから、表面コートの効果が認められる表面CeO
2のコート量の上限は15質量%と20質量%との間の17質量%程度と判断され、表面CeO
2のコート量は好ましくは5〜15質量%である。また、表面コート量が10質量%の実施例3の担体と15質量%の実施例4の担体とを比較すると、15質量%の実施例4の担体のOSCがやや低いため、表面コート量の最適量は10質量%程度と思われる。
【0030】
第6表に示してある比較例2、3、5、7、8及び11並びに実施例3、5、6及び7はコア材中のCeO
2量を変化させた場合の担体のOSCの変化を示している。比較例2、3、5、7及び8の担体は表面CeO
2のコートがない場合であり、実施例3、5、6及び7並びに比較例11の担体は表面コート量を10質量%に固定した場合である。コア材中のCeO
2量が30質量%まで増加してもCeO
2表面コートの優位性が見られるが、コア材中のCeO
2量を40質量%まで増やすとCeO
2表面コートの優位性がなくなることがわかる。これは、第2表の実施例7及び比較例11のBETの結果に示されているようにコア材中CeO
2量と表面のCeO
2量との合計が多いと耐熱性が落ちることによるものと思われる。従って、第6表に示すデータから、コア材中のCeO
2量の上限は30質量%と40質量%との間の35質量%程度と判断され、好ましくはコア材中のCeO
2量が5〜30質量%程度であることが妥当と考えられ、また、コア材中のCeO
2の量とコア材の表面に担持されたCeO
2の量との合計が担体の質量の10〜40質量%であることが好ましい。
【0031】
尚、参考に実施例5の担体の製造に用いたコア材の走査型電子顕微鏡写真を
図1に示し、実施例5で調製した担体の走査型電子顕微鏡写真を
図2に示す。