特許第5976907号(P5976907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5976907
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】バドミントン用シャトル
(51)【国際特許分類】
   A63B 67/19 20160101AFI20160817BHJP
【FI】
   A63B67/19
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-160419(P2015-160419)
(22)【出願日】2015年8月17日
【審査請求日】2015年9月25日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506429259
【氏名又は名称】株式会社コスモ精機
(74)【代理人】
【識別番号】100121773
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 正
(72)【発明者】
【氏名】松原 正幸
【審査官】 槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0040331(KR,A)
【文献】 中国実用新案第2790531(CN,Y)
【文献】 特表2015−501687(JP,A)
【文献】 特開平11−267259(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3175765(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0121046(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第0045825(EP,A1)
【文献】 英国特許出願公開第2096473(GB,A)
【文献】 仏国特許出願公開第2646356(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 67/00−67/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側から順に連結された、台と、羽軸部と、羽根部と、を備えるバドミントン用シャトルにおいて、
前記羽軸部は、合成樹脂から一体成型された、先端側が前記台に連結された複数の羽軸と、前記羽軸に直交する方向に延在して複数の前記羽軸を連結する羽軸連結リングと、を備え、全体として後端側に向けて広がる円錐台形状をしており、
前記羽根部は、合成樹脂から一体成型された、前記羽軸の後端部分が挿入される挿入穴が形成された羽根芯と、羽弁と、を備える羽根を複数備え、
前記羽軸の前記挿入穴に挿入される挿入部分には係止突起が形成され、前記羽根の前記挿入穴の内部には、前記係止突起が嵌まる係止凹部であって、前記挿入穴の壁を貫通する係止凹部が形成されると共に、
前記羽根は前記羽軸に対して着脱可能に連結されている、ことを特徴とするバドミントン用シャトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バドミントン用のシャトルに関する。
【背景技術】
【0002】
バドミントンに使用されるシャトル(シャトルコック)は、一般に水鳥等から採った天然の羽根16枚を、表面にゴム製のカバーが貼られたコルクやウレタン製の台に挿し込んで接着剤で固定し、羽根同士を糸で連結したものが主流となっている。
【0003】
しかし、天然の羽根は、高価であり、一本ずつ接着剤で固定したり、糸で結び付けたりしなければならず、製造工程も複雑になるためコストがかかる。また、天然の羽根は天然であるために品質にバラつきがあり、完成品であるシャトルにも個体差が出てしまう。
【0004】
これに対して、特許文献1には、ナイロン樹脂から射出成形された人工羽根であって、内部に発泡構造を有することによって、天然の羽根に近い特性を持たせた人工羽根が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、天然の羽根の羽軸を切り落として長さを揃えた羽根ユニットの組を、樹脂製の羽根植付部材の組に挿し込んで連結させたシャトルコックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−073782号公報
【特許文献2】特表2015−501687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1においては、従来のシャトルと同様に、人工羽根をコルク台に挿し込んで接着剤で固定する必要があり、製造に手間がかかると共に、接着による品質のばらつきが生じてしまう。また、特許文献2においても天然羽根を用いるため、個体差が出てしまう。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、個体差がなく低コストで製造可能なバドミントン用シャトルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るバドミントン用シャトルは、先端側から順に連結された、台と、羽軸部と、羽根部と、を備えるバドミントン用シャトルにおいて、前記羽軸部は、合成樹脂から一体成型された、先端側が前記台に連結された複数の羽軸と、前記羽軸に直交する方向に延在して複数の前記羽軸を連結する羽軸連結リングと、を備え、全体として後端側に向けて広がる円錐台形状をしており、前記羽根部は、合成樹脂から一体成型された、前記羽軸の後端部分が挿入される挿入穴が形成された羽根芯と、羽弁と、を備える羽根を複数備え、前記羽軸の前記挿入穴に挿入される挿入部分には係止突起が形成され、前記羽根の前記挿入穴の内部には、前記係止突起が嵌まる係止凹部であって、前記挿入穴の壁を貫通する係止凹部が形成されると共に、前記羽根は前記羽軸に対して着脱可能に連結されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るバドミントン用シャトルによれば、個体差がなく飛行特性が安定すると共に、低コストで製造可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施形態に係るシャトルの斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るシャトルの正面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る台及び羽軸部の斜視図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る台及び羽軸部の断面図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る羽軸部の一部拡大正面図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る羽根と羽軸の連結部分の斜視図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る羽根と羽軸の連結部分の断面図である。
図8図8は、本発明の実施形態の変形例に係る台及び羽軸部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係るバドミントン用シャトルについて説明する。図1は、本実施形態に係るシャトルの斜視図である。図2は、本実施形態に係るシャトルの正面図である。図3は、本実施形態に係る台及び羽軸部の斜視図である。図4は、本実施形態に係る台及び羽軸部の断面図である。
【0013】
図5は、本実施形態に係る羽軸部の一部拡大正面図である。図6は、本実施形態に係る羽根と羽軸の連結部分の斜視図である。図7は、本実施形態に係る羽根と羽軸の連結部分の断面図である。
【0014】
シャトル1は、台10と、羽軸部20と、羽根部30とを備える。シャトル1は、飛行時に台10が先端に位置して飛行するように構成されている。よって、本明細書では、シャトル1の台10が位置する側を先端側(図2において左側)、羽根部30が位置する側を後端側(図2において右側)とする。また、シャトル1の中心を先端から後端に向けて延在する軸をシャトル軸とする。
【0015】
台10は、全体として先端側に凸の略半球形状であり、合成樹脂製で中空の略半球形状の樹脂部11と、樹脂部11の表面を覆う同じく略半球形状のゴムカバー13とを備えている。樹脂部11は、先端側の中空半球部分と後端側の円筒部分とが合体した形状である。ゴムカバー13は、ゴム等の弾性材料製のカバーであり、樹脂部11の表面全体を覆っている。ゴムカバー13を設置しておくことで、台10の先端がコートの床やラケットの打撃面と衝突した際の衝撃を吸収することができる。
【0016】
羽軸部20は、全体として、後端に向かって直径が広がる円錐台形状(スカート形状)である。羽軸部20は、16本の羽軸21と、16本の羽軸21をシャトル軸周りに連結する羽軸連結リング24とを備えている。本実施形態では、上述した台10の樹脂部11と、羽軸21及び羽軸連結リング24からなる羽軸部20とが、合成樹脂から射出成形により一体成型されている。
【0017】
16本の羽軸21は、先端が樹脂部11の後端の円形開口縁に周方向に等間隔で連結され、後端側に向けて上記円錐台の側面上においてシャトル軸に対して所定の角度で広がりながら延在している。羽軸連結リング24は、16本の羽軸21に直交する方向に周回して、これらを連結している。
【0018】
羽軸21は、後述するように羽根31の挿入穴33に後端側が挿入される軸であり、後端に向けて徐々に細くなるように形成される(図4等参照)と共に、その軸方向に垂直な断面は横長の六角形である(図6等参照)。また、羽軸21の挿入穴33に挿入される部分の両側面には、側方に突出する係止突起23が形成されている(図6及び図7参照)。
【0019】
ここで、図5に拡大して示すように、羽軸21は、羽根31の挿入穴33に挿入される挿入部分よりも先端側において、途中に所定の長さの捻り部22を備えており、羽軸21は、捻り部22において、その軸周りに7°捻られている。
【0020】
よって、羽軸21の軸方向に垂直な断面は、捻り部22よりも先端側においては、横長六角形の長軸(横長六角形の最も離れた頂点を結ぶ線)がシャトル軸周りの円の接線に平行となっているのに対して、捻り部22よりも後端側においては、横長六角形の長軸が同接線に対して7°傾いている。
【0021】
羽軸連結リング24は、羽軸21の挿入穴33への挿入部分よりも先端側であって、台10から所定の距離の位置で、シャトル軸周りに周回しながら16本の羽軸21を連結している。このように、16本の羽軸21の所定の部分を一体に連結することで、衝突時の羽軸21の変形を抑え、羽軸部20の構造を補強することができる。
【0022】
羽根部30は、それぞれ羽軸21に連結される16本の羽根31を備えている。羽根31は、軸となる羽根芯32と、羽根芯32の両側に同一面上に位置するように設置された2枚の羽弁35とを備えている。羽根芯32の先端には、上述した羽軸21が挿入される挿入穴33が羽根芯32の軸に沿って所定の深さまで形成されている。
【0023】
挿入穴33の形状は、羽軸21の挿入部分の形状と略同一であり、奥に行くほど徐々に細くなるように形成されると共に、その軸方向に垂直な断面は横長の六角形である。なお、この横長六角形の長軸は、羽弁35と同一面上に位置している。
【0024】
よって、羽根31の挿入穴33に羽軸21の後端が挿入され、羽軸21と羽根31とが連結されると、先細り形状の羽軸21が、同じく先細り形状の挿入穴33内に圧入され、圧入抵抗に対応する引抜抵抗と摩擦により羽軸21と羽根31とが連結固定される。
【0025】
さらに、挿入穴33の内部には、羽軸21が奥まで挿入された状態で、係止突起23と対向する位置に係止突起23が嵌まり込む係止凹部34が形成されている。羽軸21を挿入穴33内に挿入する際には、係止突起23の部分は、係止凹部34に到達するまで、羽根芯32の内壁面にぶつかって変形しながら圧入される。よって、いったん係止突起23が係止凹部34に嵌まり込むと、大きな力で羽軸21を引っ張らないと抜けないように(引抜抵抗)、羽軸21と羽根31とが強固に連結固定される。
【0026】
羽軸21と羽根31とが連結固定されると、羽軸21の軸垂直断面及び挿入穴33の軸垂直断面が横長の六角形であるため、羽根31が羽軸21に対して軸周りに回転することなく固定される。
【0027】
また、上述したように、羽軸21は捻り部22を備えており、羽軸21の後端部分では、羽軸21の軸垂直断面の横長六角形の長軸がシャトル軸周りの円の接線に対して7°傾斜していると共に、羽根31の2枚の羽弁35は、羽根31の挿入穴33の軸垂直断面の長軸と同一平面上に位置する。よって、羽軸21と羽根31との連結時には、羽根31は、羽弁35がシャトル軸周りの円の接線に対して7°傾斜した姿勢で羽軸21に対して固定される。
【0028】
ここで、羽根31の幅は、羽軸21の後端部分の設置間隔よりも長いため、羽軸21に固定された羽根31は、姿勢によっては隣接する羽根31の羽弁35同士が衝突する。本実施形態では、図1に示すように、羽軸21に捻り部22が形成されており、全ての羽根31がシャトル軸周りの円の接線に対して同じ方向に7°傾いて設置されているため、隣接する羽弁35同士が衝突することなく、順次重なり合った状態となっている。もちろん、この傾斜角度は、7°に限らず適宜変更可能である。
【0029】
このように、羽根31の羽弁35をシャトル軸周りの円の接線に対して傾けるために、羽軸21の途中に所定の長さの捻り部22を形成し、徐々に羽軸21を捻ることで、所定の位置で一遍に7°捻る場合に比べて、羽軸21の表面を段差等が形成されることなく滑らかに形成することができる。
【0030】
羽弁35をシャトル軸周りの円の接線に対して傾けるための構成は、捻り部22に限られるものではなく、羽軸21の樹脂部11との接続部分において所定の角度捻って接続するようにしても良いし、羽根31の挿入穴33を羽弁35に対して所定の角度捻って形成するようにしても良い。
【0031】
羽根31の羽根芯32及び羽弁35は、合成樹脂から射出成形により一体成型される。なお、羽軸21及び挿入穴33の軸方向に垂直な断面形状は、両者が軸周りに相対的に回転しないように非円形状であるのが望ましく、四角形や三角形等の多角形状や、楕円形状等であっても良い。
【0032】
また、上述した係止突起23及び係止凹部34により羽軸21と羽根31の相対的な回転が阻止されるのであれば、羽軸21の挿入穴33の断面が円形であっても良い。また、係止突起が羽根31側に形成され、係止凹部が羽軸21側に形成されていてもよい。
【0033】
以上、本実施形態に係るシャトル1について説明したが、本実施形態によれば、羽軸部20及び羽根部30を樹脂成型しており、従来のように天然の羽根を用いることによる個体差や羽根を接着剤で台に固定することによる個体差が生じることなく、飛行特性が安定したバドミントン用シャトルを低コストで量産可能である。
【0034】
また、樹脂材料として軽量且つ高強度の材料を採用することで、シャトル1の強度を高めて耐久性を向上させることができる。
【0035】
また、本実施形態では、16本の羽根31は互いに連結されておらず、16本の羽根31が全て個別に羽軸部20(羽軸21)に対して着脱可能である。よって、シャトル1の使用により羽根31の一部が破損した場合には、その破損した羽根31のみを手軽に交換し、そのシャトル1を使用し続けることができ、ランニングコストを大きく抑えることができる。
【0036】
また、本実施形態においては、羽根部30に挿入穴33を形成し、羽軸部20の羽軸21の後端を羽根部30の挿入穴33に挿入する構造を採用しており、羽軸21に挿入穴を形成する場合と比較して、構造を強固にすることができる。
【0037】
また、16本の羽軸21は羽軸連結リング24によって一体に連結された状態で射出成形されるのに対して、16本の羽根31はそれぞれ別体で射出成形されるため、羽根31であれば射出成形工程が複雑になることなく挿入穴33を形成可能である。
【0038】
続いて、本発明の実施形態の変形例について説明する。図8は、本実施形態の変形例に係る台及び羽軸部の断面図である。本変形例に係るシャトル2は、台10’及び羽軸部20’の構成が上記実施形態と異なるが、その他の構成は上記実施形態と同じであるため、主として異なる構成について説明する。
【0039】
上記実施形態では、台10の樹脂部11と羽軸部20の羽軸21とが樹脂成型により一体に形成されていたが、本変形例では、台10’と羽軸部20’とは別々に形成されてから合体される。具体的には、台10’は、コルク製のコルク台12とゴムカバー13とから構成され、羽軸部20’の先端部分はコルク台12に挿し込まれて固定される。
【0040】
図8に示すように、羽軸部20’の先端側端面には、コルク台12に挿し込まれる突起部である台連結部25が形成されている。台連結部25は、端面の中心軸周りに90°間隔で設置された4本の柱状突起部から構成されている。
【0041】
本変形例によれば、台10’と羽軸部20’とが一体に成型されておらず、台10’のコルク台12に羽軸部20’を挿し込む作業が必要になるため、上記実施形態と比較すると製造工程において手間がかかるが、従来の天然の羽根を用いたシャトルと同じようにコルク台12を採用しているため、従来のシャトルと同じような飛行特性を得ることができる。
【0042】
また、本変形例では、羽軸21と羽根31とが着脱可能であり、上記実施形態と同様の作用効果を奏することもできる。
【0043】
以上、変形例も含めて本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、シャトルを構成する各部材のサイズや形状、個数、素材等は適宜変更可能であり、上記実施形態では、羽軸及び羽根の本数を16本としたが、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0044】
1,2 シャトル
10 台
20 羽軸部
21 羽軸
22 捻り部
23 係止突起
24 羽軸連結リング
30 羽根部
31 羽根
32 羽根芯
33 挿入穴
34 係止凹部
35 羽弁
【要約】
【課題】個体差がなく低コストで製造可能なバドミントン用シャトルを提供する。
【解決手段】バドミントン用シャトル1は、先端側から順に連結された、台10と、羽軸部20と、羽根部30と、を備え、羽軸部20は、先端側が台10に連結された複数の羽軸21と、羽軸21に直交する方向に延在して複数の羽軸21を連結する羽軸連結リング24と、を備え、全体として後端側に向けて広がる円錐台形状をしており、羽根部30は、羽軸21の後端部分が挿入される挿入穴33が形成された羽根芯32と、羽弁35と、を備える羽根31を複数備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8