(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1に記載した筐体用部材を別の筐体用部材に対して連結固定して筐体を構成する際には、例えば積層板に接合した熱可塑性樹脂部分に雌ねじ部を構成するナットをインサート成形することが行われる。
【0007】
ところが、このような構成では、積層板の外形端面より外側に接合された熱可塑性樹脂部分にナットが配置されているため、筐体に対して衝撃や外力が付与された場合、これら衝撃や外力は2つの筐体用部材間を締結するねじからナットを介して熱可塑性樹脂部分に直接的に伝達される。その結果、高い強度を有する積層板部分よりも強度の劣る熱可塑性樹脂部分或いは該熱可塑性樹脂部分と積層板の接合界面に対する負荷が大きくなる傾向にあり、筐体の強度を一層向上させることのできる筐体用部材が求められている。
【0008】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、高い強度を得ることができる筐体用部材及び該筐体用部材を用いた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る筐体用部材は、一対の繊維強化樹脂板の間に中間層を配設した積層板の外形端面の少なくとも一部に熱可塑性樹脂を接合した筐体用部材であって、前記熱可塑性樹脂が前記積層板の表面まで延在し、該積層板の表面に延在した熱可塑性樹脂に雌ねじ部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、積層板の外形端面から表面まで延在した熱可塑性樹脂に雌ねじ部を設けたことで、熱可塑性樹脂で形成された部分よりも高強度の積層板に雌ねじ部を重ねて配置することができ、高強度の積層板と雌ねじ部とが一体化される。これにより、例えば積層板に折曲方向の外力や衝撃が付与された場合であっても、雌ねじ部が積層板上にあるため、この外力等を積層板で受け止めることができる。その結果、積層板よりも強度の劣る熱可塑性樹脂で形成された部分やこの熱可塑性樹脂の部分と積層板の外形端面との接合界面に対して大きな負荷がかかることを回避でき、高い強度の筐体を得ることができる。
【0011】
前記雌ねじ部は、インサート成形により前記熱可塑性樹脂と一体化されたナットであってもよい。
【0012】
前記積層板は、一方の繊維強化樹脂板の表面を板厚方向に掘り下げた凹部を有し、前記ナットは、その軸方向一端側が前記凹部内に配設された構成であってもよい。そうすると、積層板の表面からのナットの突出高さを低減することができ、当該筐体用部材及びこれを用いた筐体を可及的に薄型化することができる。
【0013】
前記ナットは、その外周面の軸方向一部分から外径方向に突出したフランジ部を有し、該フランジ部は、その裏面が前記一方の繊維強化樹脂板の表面に当接配置されると共に、その表面の少なくとも一部が前記熱可塑性樹脂によって覆われた構成であってもよい。そうすると、凹部をフランジ部で閉塞できるため、凹部内に熱可塑性樹脂が入り込んで中間層等に影響を及ぼすことを防止できる。また、フランジ部の表面が熱可塑性樹脂によって覆われることで、ナットの上方への抜け止めがなされる。
【0014】
前記フランジ部の外周端面には、凹凸形状が設けられた構成であってもよい。そうすると、ナットに対して固定ねじを螺合させる際、凹凸形状に入り込んだ熱可塑性樹脂によりナットの回り止めが図られる。
【0015】
前記積層板は、一方の繊維強化樹脂板の表面を板厚方向に掘り下げた凹部を有し、前記ナットは、少なくともその軸方向一端側が前記凹部内に充填された前記熱可塑性樹脂によって覆われた構成であってもよい。この構成によっても、積層板の表面からのナットの突出高さを低減することができ、当該筐体用部材及びこれを用いた筐体を可及的に薄型化することができる。
【0016】
前記積層板は、前記一対の繊維強化樹脂板及び前記中間層を板厚方向に貫通した貫通孔を有し、前記ナットは、少なくともその軸方向一端側が前記貫通孔内に充填された前記熱可塑性樹脂によって覆われた構成であってもよい。この構成によっても、積層板の表面からのナットの突出高さを低減することができ、当該筐体用部材及びこれを用いた筐体を可及的に薄型化することができる。
【0017】
また、本発明に係る電子機器は、上記構成の筐体用部材を用いた筐体を備えることを特徴とする。
【0018】
この場合、前記筐体とヒンジを介して開閉可能に連結された他の筐体を備え、前記筐体を構成する前記筐体用部材の雌ねじ部に対し、前記ヒンジがねじ止め固定された構成であると、2つの筐体を開閉可能に連結するヒンジの固定強度を確保でき、高い耐久性を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、積層板に折曲方向の外力や衝撃が付与された場合であっても、雌ねじ部が積層板上にあるため、この外力等を積層板で受け止めることができる。その結果、積層板よりも強度の劣る熱可塑性樹脂で形成された部分やこの熱可塑性樹脂の部分と積層板の外形端面との接合界面に対して大きな負荷がかかることを回避でき、高い強度の筐体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る筐体用部材について、この部材を用いた電子機器を例示して好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る筐体用部材10を用いた筐体12を備える電子機器14の斜視図である。本実施形態では、筐体用部材10を用いた筐体12をノート型PCである電子機器14の蓋体16として使用した構成を例示する。
【0023】
図1に示すように、電子機器14は、キーボード装置18を有する機器本体(本体筐体)20と、液晶ディスプレイ等からなるディスプレイ装置22を有する矩形平板状の蓋体16とを備える。電子機器14は、蓋体16を左右のヒンジ24により機器本体20に対して開閉可能に連結したクラムシェル型である。
【0024】
機器本体20は扁平箱状の筐体であり、内部に図示しない基板、演算処理装置、ハードディスク装置及びメモリ等の各種電子部品を収納している。キーボード装置18は、機器本体20の上面に配設されている。
【0025】
蓋体16は、背面カバー12aと正面カバー12bとを重ねて連結した筐体12を備え、ヒンジ24を通過した図示しないケーブルにより機器本体20と電気的に接続されている。背面カバー12aは、蓋体16の側面及び背面を覆うカバー部材であり、本実施形態に係る筐体用部材10によって構成されている。蓋体16は、背面カバー12aにねじ止め固定されたヒンジ24を介して機器本体20と連結されている(
図2も参照)。正面カバー12bは、蓋体16の正面を覆う樹脂製のカバー部材であり、その大部分に例えば液晶ディスプレイからなるディスプレイ装置22を露出させる孔部が設けられている。
【0026】
次に、蓋体16を構成する筐体12の背面カバー12a及びこの背面カバー12aを形成する筐体用部材10の構成について具体的に説明する。
【0027】
先ず、背面カバー12aの全体的な構成を説明する。
図2は、筐体12の背面カバー12aの構成を模式的に示す平面図であり、蓋体16の背面となる背面カバー12aを内面側から見た図である。
【0028】
上記の通り、背面カバー12aは筐体用部材10によって形成されている。
図2に示すように、筐体用部材10は、三層構造で軽量且つ高強度に形成された積層板30と、積層板30の外形端面30aに熱可塑性樹脂を接合することで形成されたフレーム部32とを備える。背面カバー12aは、このような筐体用部材10のフレーム部32によってその周縁部及び4辺の側面となる壁部34が形成され、積層板30によってディスプレイ装置22の背面を支持する板状部分が形成されている。
【0029】
筐体12(蓋体16)では、背面カバー12aの一縁側(
図2では下縁)のフレーム部32に左右一対設けた幅広部32aに対し、複数(
図2では2本)の固定ねじ36を用いてヒンジ24が固定される。また、背面カバー12aの他縁側(
図2では上縁)のフレーム部32には左右方向に亘る帯状部32bが設けられ、この部分に無線通信用のアンテナ38が配設される。
【0030】
次に、背面カバー12aを構成する筐体用部材10の具体的な構成を説明する。
図3は、
図2中のIII−III線に沿う断面形状を模式的に示した断面図であり、筐体用部材10の積層板30及びフレーム部32(幅広部32a)を含む部分での厚み方向の断面図である。また、
図4は、
図3に示す筐体用部材10に固定ねじ36を用いてヒンジ24を固定した状態を示す断面図である。
【0031】
図3に示すように、筐体用部材10は、上下一対の繊維強化樹脂板40,41の間に中間層42を配設した積層板30と、積層板30の外形端面30aに接合されたフレーム部32とを有する。
【0032】
各繊維強化樹脂板40,41は、強化繊維にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグであり、例えば0.3mm程度の板厚を有する。本実施形態では、強化繊維として炭素繊維を用いた炭素繊維強化樹脂(CFRP)を用いている。強化繊維としては、炭素繊維以外であってもよく、ステンレス繊維等の金属繊維やガラス繊維等の無機繊維等、各種材料を用いてもよい。
【0033】
中間層42は、一対の繊維強化樹脂板40,41間に設けられ、これら硬質の繊維強化樹脂板40,41間を離隔させる軟質のスペーサであり、例えば0.6mm程度の板厚を有する。中間層42を設けたことにより、積層板30の板厚方向の断面係数が増大し、軽量且つ高強度な構造となる。中間層42は、例えばポリプロピレン等の発泡シートで構成された発泡層や、圧縮可能な隙間を有して集合された炭素繊維等の繊維層によって構成される。
【0034】
フレーム部32は、このような積層板30の外形端面30aに熱可塑性樹脂を射出成形することで該積層板30に対して接合されている。フレーム部32を形成する熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等を用いるとよく、これらの樹脂にガラス繊維等の強化繊維を含有させた繊維強化樹脂(例えば、GFRP)を用いてもよい。本実施形態の場合、フレーム部32を形成する熱可塑性樹脂を繊維強化樹脂板40,41間に挟まれた中間層42に浸入させるように射出成形することでアンカー効果を生じさせ、高い接合強度を確保している。
【0035】
このようなフレーム部32を接合することで、曲げや切断等の加工の自由度が乏しい積層板30の周縁部に壁部34等の所望の形状加工を施すことができる。また、導電性材料である繊維強化樹脂板40,41から外れた位置で非導電性材料のフレーム部32にアンテナ38を設置する等の設計自由度の向上も可能となる(
図2参照)。
図2ではフレーム部32を積層板30の外形端面30aの全周に設けた構成を例示しているが、フレーム部32は外形端面30aの一部にのみ接合されてもよい。
【0036】
図3及び
図4に示すように、ヒンジ24が固定ねじ36によってねじ止め固定されるフレーム部32の幅広部32aは、積層板30の外形端面30aに接合された熱可塑性樹脂が積層板30の表面(一方の繊維強化樹脂板40の表面)まで延在させることで形成されている。そして、この表面まで延在した熱可塑性樹脂からなる幅広部32aに固定ねじ36を螺合する雌ねじ部となるナット44をインサート成形することで、ヒンジ24をねじ止め固定可能としている。つまり、ナット44は積層板30の表面に配設されている。
【0037】
ナット44は、
図5に示すように、その外周面の軸方向一部分から外径方向に突出したフランジ部44aを有する。フランジ部44aの外周端面は、周方向に沿って凹凸形状44bが形成された波形状とされている。
【0038】
図3に示すように、筐体用部材10では、積層板30の外形端面30aよりも内側となる部分に一方の繊維強化樹脂板40の表面を板厚方向に掘り下げた凹部46を形成し、この凹部46内にナット44の軸方向一端側を配設している。凹部46は、ナット44のフランジ部44aよりも下に突出した円筒部分を収納可能な深さを有する。
【0039】
具体的には、ナット44の軸方向一端側を凹部46内に挿入すると共に、フランジ部44aの裏面を凹部46の周縁部で積層板30の表面、つまり繊維強化樹脂板40の表面に当接配置した状態で、積層板30の表面及びナット44のねじ部44cの開口部周辺を除く周囲が幅広部32aを形成した熱可塑性樹脂によって覆われている。これにより、凹部46の内周面とナット44の外周面との間の隙間がフランジ部44aによって蓋されるため、積層板30の表面に射出成形されて幅広部32aを形成する熱可塑性樹脂が凹部46内に入り込むことがない。また、ナット44の外周面が積層板30の表面から起立した円筒状のボス部48によって囲われるため、ナット44が幅広部32aを形成する熱可塑性樹脂によって強固に位置決め固定されている。
【0040】
なお、本実施形態では、凹部46を一方の繊維強化樹脂板40を板厚方向に円形状に切抜き、中間層42の一部まで掘り下げた形状としたが、凹部46の深さはナット44の一端側を配設可能であれば適宜変更可能であり、必ずしも一方の繊維強化樹脂板40の板厚全体を切り抜く必要はない。
【0041】
このような筐体用部材10の製造方法の一手順としては、先ず、一対の平面形状の繊維強化樹脂板40,41を準備し、その間に平面形状の中間層42を挟んで全体を積層方向にプレスすることで積層板30を形成する。続いて、積層板30を金型にセットし、溶融した熱可塑性樹脂を金型のキャビティ内に充填することで熱可塑性樹脂を積層板30の外形端面30aに接触するように射出成形し、フレーム部32を形成する。
【0042】
次に、外形端面30aにフレーム部32を接合した積層板30の所定箇所に雌ねじ部を設けるための凹部46を機械加工やレーザ加工によって形成し、凹部46にナット44を配置して別の金型にセットする。そして、溶融した熱可塑性樹脂を金型のキャビティ内に充填することで、熱可塑性樹脂を積層板30(繊維強化樹脂板40)の表面に接触するように射出成形し、ナット44をインサート成形した幅広部32aを形成する。
【0043】
その結果、
図3に示すように、積層板30の外形端面30aに熱可塑性樹脂を接合したフレーム部32と、積層板30の表面に熱可塑性樹脂を接合し、ナット44をインサート成形した幅広部32aとを有する筐体用部材10が形成される。なお、フレーム部32を形成する熱可塑性樹脂と、ナット44を保持する幅広部32aを形成する熱可塑性樹脂とをまとめて1つの金型内で成形してもよい。
【0044】
続いて、このような筐体用部材10にヒンジ24をねじ止めする際は、
図4に示すように、フレーム部32の幅広部32aにヒンジ24を載置して固定ねじ36のねじ部36aをナット44のねじ部44cに対して螺合させる。これにより、ヒンジ24が筐体用部材10にねじ止め固定された背面カバー12aが形成されるため、その上に正面カバー12bを重ねて連結することで筐体12を構築できる。
【0045】
以上のように、本実施形態に係る筐体用部材10では、一対の繊維強化樹脂板40,41の間に中間層42を配設した積層板30の外形端面30aの少なくとも一部に熱可塑性樹脂からなるフレーム部32を接合した構成において、熱可塑性樹脂が積層板30の表面まで延在し、該積層板30の表面に延在した熱可塑性樹脂に雌ねじ部となるナット44が設けられている。
【0046】
このように、積層板30の外形端面30aから表面まで延在した熱可塑性樹脂に雌ねじ部となるナット44を設けたことで、熱可塑性樹脂で形成されたフレーム部32よりも高強度の積層板30にナット44を重ねて配置することができる。つまり、高強度の積層板30とナット44及びボス部48とが一体化される。これにより、
図4に示すように、例えばナット44に対して固定ねじ36を螺合させてヒンジ24を締結固定した構成において、筐体12を構成する背面カバー12aに外力Fが加えられた場合であっても、ナット44及びこれを保持するボス部48が積層板30上にあるため、この外力Fを積層板30で受け止めることができる。その結果、積層板30よりも強度の劣る熱可塑性樹脂で形成されたフレーム部32やこのフレーム部32と積層板30の外形端面30aとの接合界面に対して大きな負荷がかかることを回避でき、高い強度の筐体12を得ることができ、耐久性も向上する。
【0047】
例えば、本実施形態に係る電子機器14では、ヒンジ24を介して蓋体16を最大開度、例えば蓋体16と機器本体20とが平行する180度位置まで開いた状態からさらに蓋体16に開き方向の外力Fを付与した場合には、蓋体16を構成する筐体12の背面カバー12aと、これにナット44及び固定ねじ36を介して締結固定されたヒンジ24との間に大きな負荷がかかることになる。しかしながら、当該電子機器14では、ヒンジ24の締結部であるナット44が高強度の積層板30に重なるように配置されているため、上記外力Fを高強度の積層板30で受け止めることができ、それよりも低強度の熱可塑性樹脂からなるフレーム部32やフレーム部32と積層板30との接合界面に対して外力Fによる負荷が直接的に付与されることがない。従って、従来構成のようにフレーム部32にナット44をインサート成形等した構成に比べ、フレーム部32やフレーム部32と積層板30との接合界面が破損するまでの耐荷重性を大幅に高めることができる。
【0048】
当該筐体用部材10では、積層板30は一方の繊維強化樹脂板40の表面を板厚方向に掘り下げた凹部46を有し、ナット44はその軸方向一端側が凹部46内に配設されている。これにより、積層板30の表面でのナット44及びボス部48の高さ方向の突出量を抑えることができ、筐体用部材10及びこれを用いた筐体12を可及的に薄型化することができる。
【0049】
ナット44はその外周面の軸方向一部分から外径方向に突出したフランジ部44aを有し、フランジ部44aはその裏面が一方の繊維強化樹脂板40の表面に当接配置されると共に、その表面の少なくとも一部が熱可塑性樹脂によって覆われている。これにより、凹部46をフランジ部44aで閉塞できるため、凹部46内に熱可塑性樹脂が入り込んで中間層42等に影響を及ぼすことを防止できる。また、フランジ部44aの表面がボス部48によって覆われることで、ナット44の上方への抜け止めがなされ、固定ねじ36によるヒンジ24の締結強度が向上する。この際、ナット44のフランジ部44aの外周端面には凹凸形状44bが設けられているため、凹凸形状44bに入り込んだ熱可塑性樹脂により固定ねじ36の締結時にナット44の回り止めが図られる。
【0050】
図6は、第1変形例に係る筐体用部材10Aの積層板30及びフレーム部32(幅広部32a)を含む部分での厚み方向の断面図である。
【0051】
図6に示すように、筐体用部材10Aでは、フランジ部44aを持たない一般的な構造のナット50を積層板30の表面に重ねるようにインサート成形している。すなわち、筐体用部材10Aでは、積層板30の外形端面30aよりも内側に位置した部分で一方の繊維強化樹脂板40の表面を板厚方向に掘り下げた凹部46を形成し、この凹部46と重なる位置にナット50を配設すると共に、凹部46内に充填された熱可塑性樹脂によってナット50の軸方向一端側を覆うように保持している。なお、ナット50に代えてナット44(
図5参照)を用いてもよい。
【0052】
従って、このような筐体用部材10Aにおいても、熱可塑性樹脂で形成されたフレーム部32よりも高強度の積層板30にナット50を重ねて配置することができるため、高い強度を得ることができると共に耐久性も向上する。また、積層板30の表面でのナット50の高さ方向の突出量を抑えることができ、筐体用部材10A及びこれを用いた筐体12を可及的に薄型化することができる。
【0053】
図7は、第2変形例に係る筐体用部材10Bの積層板30及びフレーム部32(幅広部32a)を含む部分での厚み方向の断面図である。
【0054】
図7に示すように、筐体用部材10Bでは、一対の繊維強化樹脂板40,41及び中間層42を板厚方向に貫通した貫通孔52を積層板30に形成し、この貫通孔52と重なる位置にナット50を配設すると共に、貫通孔52内に充填された熱可塑性樹脂によってナット50の軸方向一端側を覆うように保持している。なお、ナット50に代えてナット44(
図5参照)を用いてもよい。
【0055】
従って、このような筐体用部材10Bにおいても、熱可塑性樹脂で形成されたフレーム部32よりも高強度の積層板30にナット50を重ねて配置することができるため、高い強度を得ることができると共に耐久性も向上する。すなわち、ナット50は積層板30の貫通孔52に重なるように配置されているが、積層板30の外形端面30aよりも内側となる位置に配置されているため、
図4に示すような外力Fがナット50に付与された場合、筐体用部材10,10Aの場合と同様にこの外力Fを積層板30で受け止めることができる。また、積層板30の表面でのナット50の高さ方向の突出量を抑えることができ、筐体用部材10B及びこれを用いた筐体12を可及的に薄型化することができる。
【0056】
図8は、第3変形例に係る筐体用部材10Cの積層板30及びフレーム部32(幅広部32a)を含む部分での厚み方向の断面図である。
【0057】
図8に示すように、筐体用部材10Cでは、積層板30に凹部46(
図3及び
図6参照)や貫通孔52(
図7参照)を設けず、その表面にフレーム部32を形成する熱可塑性樹脂を延在させてボス部48を形成すると共に、ナット50をインサート成形している。なお、ナット50に代えてナット44(
図5参照)を用いてもよい。
【0058】
従って、このような筐体用部材10Cにおいても、熱可塑性樹脂で形成されたフレーム部32よりも高強度の積層板30にナット50を重ねて配置することができるため、高い強度を得ることができると共に耐久性も向上する。なお、この筐体用部材10Cでは、積層板30の表面に熱可塑性樹脂を射出成形してナット50(44)をインサート成形しているため、上記した筐体用部材10,10A,10Bに比べて全体の厚みが厚くなるが、凹部46等の施工作業が不要であって製造コストを一層抑えることができるという利点がある。
【0059】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0060】
例えば上記実施形態では、筐体用部材10を電子機器14を構成する蓋体16の筐体12の背面カバー12aとして用いた構成を例示したが、筐体用部材10は正面カバー12bや機器本体20に用いてもよい。また、筐体用部材10はデスクトップ型PC、タブレット型PC、スマートフォン又は携帯電話等、各種の電子機器の筐体用部材として利用可能である。また、筐体用部材10を構成する雌ねじ部(ナット44,50)は、ヒンジ24の締結用以外の用途に利用してもよく、例えば筐体用部材10で構成した背面カバー12aに正面カバー12bを締結する際の雌ねじ部として利用してもよい。
【0061】
上記実施形態では、3層構造の積層板30を用いた筐体用部材10を例示したが、例えば3枚以上の繊維強化樹脂板40,41の各層間にそれぞれ中間層42を挟み込んだ5層以上の積層構造であってもよい。
【0062】
上記実施形態では、ナット44を幅広部32aを構成する熱可塑性樹脂を用いてインサート成形した構成を例示したが、幅広部32aを構成する熱可塑性樹脂に直接的にねじ形成を行うことで雌ねじ部を形成してもよい。
【解決手段】筐体用部材10は、例えば蓋体16と機器本体20とをヒンジ24を介して開閉可能に連結した電子機器14の蓋体16を構成する筐体12に用いられる。筐体用部材10は、一対の繊維強化樹脂板40,41の間に中間層42を配設した積層板30の外形端面30aの少なくとも一部に熱可塑性樹脂からなるフレーム部32を接合した構成において、熱可塑性樹脂が積層板30の表面まで延在し、該積層板30の表面に延在した熱可塑性樹脂に雌ねじ部となるナット44が設けられている。