【実施例】
【0048】
以下に本発明の試験例等を説明するが、本発明は、これらの試験例等に何ら限定されるものではない。
【0049】
(製造例1:二本鎖核酸分子(siRNA)の作製)
TACC2遺伝子及び14−3−3ζ遺伝子の少なくともいずれかの発現を抑制するための本発明の二本鎖核酸分子(siRNA)を、以下のようにして準備した。
TACC2遺伝子に対する本発明のsiRNA(siTACC2 #1〜#10)と、14−3−3ζ遺伝子に対する本発明のsiRNA(si14−3−3 zeta #1〜#8)は、それぞれのsiRNAのターゲットとする遺伝子配列(以下に記載)とその相補的な配列を、3’末端が2塩基オーバーハングするようなRNAの二本鎖として合成した(Sigma−Aldrich社製)。これらは、センス鎖由来のオフターゲット効果を防ぐことができるものである。
また、ネガティブコントロールとして、全既知遺伝子へのオフターゲット効果がないsiRNA(siControl #1(RNAi社製)、siControl #2(Ambion社製、4390843))を用意した。
また、TACC2遺伝子に対するsiRNAのポジティブコントロールとして、siTACC2 #0(Invitrogen社製、HSS116289)を用意した。
【0050】
それぞれのsiRNAのターゲットとする遺伝子配列、及び作製したsiRNAの配列を以下に示す。
<siTACC2 #1>
−ターゲットとする遺伝子配列−
5’−GTACCCTTAAGCGAACTAAAA−3’(配列番号:1)
−siRNAの配列−
−−センス鎖−−
5’−GUACCCUUAAGCGAACUAAAA−3’(配列番号:21)
−−アンチセンス鎖−−
5’−UUAGUUCGCUUAAGGGUACUA−3’(配列番号:22)
なお、前記siRNAの配列は、NM_006997.2における932番目から954番目に対応する。
<siTACC2 #2>
−ターゲットとする遺伝子配列−
5’−CTTAACTGTTGCGTGCAATAT−3’(配列番号:2)
−siRNAの配列−
−−センス鎖−−
5’−CUUAACUGUUGCGUGCAAUAU−3’(配列番号:23)
−−アンチセンス鎖−−
5’−AUUGCACGCAACAGUUAAGUC−3’(配列番号:24)
なお、前記siRNAの配列は、NM_006997.2における3436番目から3458番目に対応する。
<siTACC2 #3>
−ターゲットとする遺伝子配列−
5’−CGTGCCTCAGACGCTAAGAAT−3’(配列番号:3)
−siRNAの配列−
−−センス鎖−−
5’−CGUGCCUCAGACGCUAAGAAU−3’(配列番号:25)
−−アンチセンス鎖−−
5’−UCUUAGCGUCUGAGGCACGAG−3’(配列番号:26)
なお、前記siRNAの配列は、NM_006997.2における730番目から752番目に対応する。
<siTACC2 #4>
−ターゲットとする遺伝子配列−
5’−CCATTGCTAAAGGTACTTACA−3’(配列番号:4)
−siRNAの配列−
−−センス鎖−−
5’−CCAUUGCUAAAGGUACUUACA−3’(配列番号:27)
−−アンチセンス鎖−−
5’−UAAGUACCUUUAGCAAUGGGG−3’(配列番号:28)
なお、前記siRNAの配列は、NM_006997.2における1553番目から1575番目に対応する。
<siTACC2 #5>
−ターゲットとする遺伝子配列−
5’−CGGAGGAAGTCCACGGATTCC−3’(配列番号:5)
−siRNAの配列−
−−センス鎖−−
5’−CGGAGGAAGUCCACGGAUUCC−3’(配列番号:29)
−−アンチセンス鎖−−
5’−AAUCCGUGGACUUCCUCCGUG−3’(配列番号:30)
なお、前記siRNAの配列は、NM_006997.2における772番目から794番目に対応する。
<siTACC2 #6>
−ターゲットとする遺伝子配列−
5’−GTGGTGCACTTGACTATCTGG−3’(配列番号:6)
−siRNAの配列−
−−センス鎖−−
5’−GUGGUGCACUUGACUAUCUGG−3’(配列番号:31)
−−アンチセンス鎖−−
5’−AGAUAGUCAAGUGCACCACAG−3’(配列番号:32)
なお、前記siRNAの配列は、NM_006997.2における2534番目から2556番目に対応する。
<siTACC2 #7>
−ターゲットとする遺伝子配列−
5’−CGAGAAACTTGACAACACTCC−3’(配列番号:7)
−siRNAの配列−
−−センス鎖−−
5’−CGAGAAACUUGACAACACUCC−3’(配列番号:33)
−−アンチセンス鎖−−
5’−AGUGUUGUCAAGUUUCUCGGG−3’(配列番号:34)
なお、前記siRNAの配列は、NM_006997.2における1491番目から1513番目に対応する。
<siTACC2 #8>
−ターゲットとする遺伝子配列−
5’−GGACCTGTCCACCTTTGTAAA−3’(配列番号:8)
−siRNAの配列−
−−センス鎖−−
5’−GGACCUGUCCACCUUUGUAAA−3’(配列番号:35)
−−アンチセンス鎖−−
5’−UACAAAGGUGGACAGGUCCGA−3’(配列番号:36)
なお、前記siRNAの配列は、NM_006997.2における2064番目から2086番目に対応する。
<siTACC2 #9>
−ターゲットとする遺伝子配列−
5’−GCCTTAAGGAGTGTAAACTTG−3’(配列番号:9)
−siRNAの配列−
−−センス鎖−−
5’−GCCUUAAGGAGUGUAAACUUG−3’(配列番号:37)
−−アンチセンス鎖−−
5’−AGUUUACACUCCUUAAGGCAA−3’(配列番号:38)
なお、前記siRNAの配列は、NM_006997.2における3783番目から3805番目に対応する。
<siTACC2 #10>
−ターゲットとする遺伝子配列−
5’−CTGCCGTCTTCGATGAAGACA−3’(配列番号:10)
−siRNAの配列−
−−センス鎖−−
5’−CUGCCGUCUUCGAUGAAGACA−3’(配列番号:39)
−−アンチセンス鎖−−
5’−UCUUCAUCGAAGACGGCAGAG−3’(配列番号:40)
なお、前記siRNAの配列は、NM_006997.2における629番目から651番目に対応する。
【0051】
<si14−3−3 zeta #1>
−ターゲットとする遺伝子配列−
5’−GTGGACATCGGATACCCAAGG−3’(配列番号:11)
−siRNAの配列−
−−センス鎖−−
5’−GUGGACAUCGGAUACCCAAGG−3’(配列番号:41)
−−アンチセンス鎖−−
5’−UUGGGUAUCCGAUGUCCACAA−3’(配列番号:42)
なお、前記siRNAの配列は、NM_001135699.1における834番目から856番目に対応する。
<si14−3−3 zeta #2>
−ターゲットとする遺伝子配列−
5’−CAGCACGCTAATAATGCAATT−3’(配列番号:12)
−siRNAの配列−
−−センス鎖−−
5’−CAGCACGCUAAUAAUGCAAUU−3’(配列番号:43)
−−アンチセンス鎖−−
5’−UUGCAUUAUUAGCGUGCUGUC−3’(配列番号:44)
なお、前記siRNAの配列は、NM_001135699.1における792番目から814番目に対応する。
<si14−3−3 zeta #3>
−ターゲットとする遺伝子配列−
5’−CCGTTACTTGGCTGAGGTTGC−3’(配列番号:13)
−siRNAの配列−
−−センス鎖−−
5’−CCGUUACUUGGCUGAGGUUGC−3’(配列番号:45)
−−アンチセンス鎖−−
5’−AACCUCAGCCAAGUAACGGUA−3’(配列番号:46)
なお、前記siRNAの配列は、NM_001135699.1における531番目から553番目に対応する。
<si14−3−3 zeta #4>
−ターゲットとする遺伝子配列−
5’−GTTATAAGTGTTTGGCATAGT−3’(配列番号:14)
−siRNAの配列−
−−センス鎖−−
5’−GUUAUAAGUGUUUGGCAUAGU−3’(配列番号:47)
−−アンチセンス鎖−−
5’−UAUGCCAAACACUUAUAACUU−3’(配列番号:48)
なお、前記siRNAの配列は、NM_001135699.1における1139番目から1161番目に対応する。
<si14−3−3 zeta #5>
−ターゲットとする遺伝子配列−
5’−GTAGCATTAACTGTAAGTTTT−3’(配列番号:15)
−siRNAの配列−
−−センス鎖−−
5’−GUAGCAUUAACUGUAAGUUUU−3’(配列番号:49)
−−アンチセンス鎖−−
5’−AACUUACAGUUAAUGCUACCC−3’(配列番号:50)
なお、前記siRNAの配列は、NM_001135699.1における2242番目から2264番目に対応する。
<si14−3−3 zeta #6>
−ターゲットとする遺伝子配列−
5’−GCACGCTAATAATGCAATTAC−3’(配列番号:16)
−siRNAの配列−
−−センス鎖−−
5’−GCACGCUAAUAAUGCAAUUAC−3’(配列番号:51)
−−アンチセンス鎖−−
5’−AAUUGCAUUAUUAGCGUGCUG−3’(配列番号:52)
なお、前記siRNAの配列は、NM_001135699.1における794番目から816番目に対応する。
<si14−3−3 zeta #7>
−ターゲットとする遺伝子配列−
5’−CCTACCTATCCTGAATGGTCT−3’(配列番号:17)
−siRNAの配列−
−−センス鎖−−
5’−CCUACCUAUCCUGAAUGGUCU−3’(配列番号:53)
−−アンチセンス鎖−−
5’−ACCAUUCAGGAUAGGUAGGGU−3’(配列番号:54)
なお、前記siRNAの配列は、NM_001135699.1における2578番目から2600番目に対応する。
<si14−3−3 zeta #8>
−ターゲットとする遺伝子配列−
5’−GTAGTAATTGTGGGTACTTTA−3’(配列番号:18)
−siRNAの配列−
−−センス鎖−−
5’−GUAGUAAUUGUGGGUACUUUA−3’(配列番号:55)
−−アンチセンス鎖−−
5’−AAGUACCCACAAUUACUACAC−3’(配列番号:56)
なお、前記siRNAの配列は、NM_001135699.1における1288番目から1310番目に対応する。
【0052】
ネガティブコントロールに用いたsiControl #1の配列を以下に示す。
<siControl #1>
−センス鎖−
5’−GUACCGCACGUCAUUCGUAUC−3’(配列番号:57)
−アンチセンス鎖−
5’−UACGAAUGACGUGCGGUACGU−3’(配列番号:58)
【0053】
(試験例1−1−1:siRNAによるmRNAレベルでの標的遺伝子発現抑制効果の検討)
前記製造例1で得られたsiTACC2 #1〜#10を、前立腺癌細胞にトランスフェクションし、48時間後に全RNAを回収してquantitative real−time PCRを行うことにより、各siRNAの前立腺癌細胞におけるTACC2遺伝子発現に対する抑制効果(ノックダウン効果)を検討した。
なお、コントロールとして、siControl #2及びsiTACC2 #0を用いた。
実験方法の詳細を以下に示す。
【0054】
[細胞]
前記前立腺癌細胞として、アンドロゲン受容体(AR)陽性のヒト前立腺癌由来LNCaP細胞(入手元:ATCC(American Type Culture Collection)、No.CRL−1740)を用いた。
【0055】
[細胞培養]
LNCaP細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS、Sigma社製)、100μg/mL ストレプトマイシン、100U/mL ペニシリン(Invitrogen社製)を含むRPMI−1640(Sigma社製)を細胞培養液として用い、空気中に5%の炭酸ガスを含む培養器内にて37℃で培養した。
【0056】
[トランスフェクション]
6穴プレートに、LNCaP細胞 1×10
5個/穴をまき、その翌日(細胞数:3×10
5個/穴)に、RNAi MAX(Invitrogen社製)及びOPTI−MEM(Invitrogen社製)を用いてsiRNAをトランスフェクションした。導入したsiRNAの量は、10nMとなるように調整した。
【0057】
[遺伝子発現レベルの測定]
トランスフェクションし48時間培養した後に、ISOGEN(株式会社ニッポンジーン製)を用いて全RNAを細胞より回収した。前記全RNA 500ngを用いて、Prime script RT reagent kit(タカラバイオ株式会社製)により、cDNAを合成した。
前記cDNAを10倍希釈し、そのうちの2μLを用いてquantitative real−time PCRを行った。前記quantitative real−time PCRは、Step one real−time PCR (Applied biosystems社製)、及びKAPA SYBR Fast PCR kit(日本ジェネティクス株式会社製)を用いて行い、TACC2遺伝子及び内部コントロールであるGAPDH遺伝子の発現レベルを測定した。
前記TACC2遺伝子の発現レベルは、前記GAPDH遺伝子に対する発現レベルをCycle数からΔΔCt法を用いて算出した。
【0058】
結果を
図1Aに示した。
図1A中、「Reagent」は、siRNAをトランスフェクションしなかったもの(試薬のみ)の結果を示し、「siControl」は、「siControl #2」をトランスフェクションしたものの結果を示す。
図1Aの結果から、本発明のsiTACC2 #1〜#10は、Reagent、siControlに比べてTACC2遺伝子の発現を抑制した。
【0059】
(試験例1−1−2:siRNAによるmRNAレベルでの標的遺伝子発現抑制効果の検討)
試験例1−1−1において、導入したsiRNAの量を10nMから50nMに変えた以外は、試験例1−1−1と同様にして試験した。
結果を
図1Bに示した。
図1B中、「Reagent」は、siRNAをトランスフェクションしなかったもの(試薬のみ)の結果を示し、「siControl」は、「siControl #2」をトランスフェクションしたものの結果を示す。
図1Bの結果から、本発明のsiTACC2 #1〜#3、#5、#7、及び#8は、siTACC2#0と同等、若しくはそれ以上のノックダウン効果を有することが確認できた。
【0060】
(試験例1−2:siRNAによるmRNAレベルでの標的遺伝子発現抑制効果の検討)
試験例1−1−1において、siRNAをsi14−3−3 zeta #1〜#8とし、コントロールをsiControl #2とし、14−3−3ζ遺伝子の発現レベルを測定した以外は、試験例1−1−1と同様にして試験した。
結果を
図2に示した。
図2中、「Reagent」は、siRNAをトランスフェクションしなかったもの(試薬のみ)の結果を示し、「siControl」は、「siControl #2」をトランスフェクションしたものの結果を示す。
図2の結果から、本発明のsi14−3−3 zeta #1〜#8は、Reagent、siControlに比べてmRNAレベルで14−3−3ζ遺伝子の発現を抑制した。これらの中でも、si14−3−3 zeta #1、#3、#4、#6が特に効果が高かった。
【0061】
(試験例2−1:siRNAによるタンパク質レベルでの標的遺伝子発現抑制効果の検討)
前記製造例1で得られたsiTACC2 #1〜#10を、前立腺癌細胞にトランスフェクションし、48時間後にタンパク質サンプルを回収してウエスタンブロット解析を行うことにより、各siRNAの前立腺癌細胞におけるTACC2遺伝子発現に対する抑制効果(ノックダウン効果)を検討した。
なお、コントロールとして、siControl #2を用いた。
実験方法の詳細を以下に示す。
【0062】
[細胞]
前記前立腺癌細胞として、アンドロゲン受容体(AR)陽性のヒト前立腺癌由来LNCaP細胞(入手元:ATCC(American Type Culture Collection)、No.CRL−1740)を用いた。
【0063】
[細胞培養]
LNCaP細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS、Sigma社製)、100μg/mL ストレプトマイシン、100U/mL ペニシリン(Invitrogen社製)を含むRPMI−1640(Sigma社製)を細胞培養液として用い、空気中に5%の炭酸ガスを含む培養器内にて37℃で培養した。
【0064】
[トランスフェクション]
6穴プレートに、LNCaP細胞 1×10
5個/穴をまき、その翌日(細胞数:3×10
5個/穴)に、RNAi MAX(Invitrogen社製)及びOPTI−MEM(Invitrogen社製)を用いてsiRNAをトランスフェクションした。導入したsiRNAの量は、50nMとなるように調整した。
【0065】
[ウエスタンブロット解析]
トランスフェクションし48時間培養した後に、NP40 lysis buffer[50mM Tris−HCl(pH8.0)、150mM NaCl、1% NP−40、Protease inhibitor cocktail(ナカライテスク株式会社製)]を用いて細胞より全細胞抽出液を採取した。
前記全細胞抽出液のタンパク質濃度をBCA assay(Pierce社製)により調製した。
前記タンパク質濃度を調整した全細胞抽出液10μgを、8% SDS−PAGEゲルにて泳動後、Immobilon−P Transfer Membrane(Millipore社製)へブロットした。
その後、1次抗体として、1,000倍希釈したAnti−TACC2抗体(Upstate社製、07−228)を用いて一晩反応させ、次いで、2次抗体として、5,000倍希釈したペルオキシダーゼの結合した抗ラビットIgG抗体(Sigma社製)を1時間反応させた。また、内部コントロールとして、500倍希釈したanti−β−actin(Sigma社製、A5316)を用いて一晩反応させ、次いで、2次抗体として、5,000倍希釈したペルオキシダーゼの結合した抗マウスIgG抗体(GEヘルスケア・ジャパン社製、NA931−100UL)を1時間反応させた。
次いで、抗原抗体複合体を、ImmunoCruz Western blotting detector system(Santa Cruz Biotechnology社製)を用いて反応させ、X線フィルムへ撮影した。
【0066】
結果を
図3に示した。
図3中、「Reagent」は、siRNAをトランスフェクションしなかったもの(試薬のみ)の結果を示し、「siControl」は、「siControl #2」をトランスフェクションしたものの結果を示す。また、上段は、TACC2遺伝子の発現レベルを示し、下段は、内部コントロールであるβ−アクチンの発現レベルを示す。
図3の結果から、siTACC2 #1〜#3、#6、及び#9は、Reagent、siControlよりもタンパク質レベルでTACC2遺伝子の発現を抑制した。これらの中でも、#1が最も効果が高かった。
【0067】
(試験例2−2:siRNAによるタンパク質レベルでの標的遺伝子発現抑制効果の検討)
試験例2−1において、siRNAをsi14−3−3 zeta #1〜#8とし、導入したsiRNAの量を50nMから10nMに変え、1次抗体を1,000倍希釈したanti−14−3−3 zeta抗体(Santa Cruz Biotechnology社製、C−16)とし、anti−β−actin(Sigma社製、A5316)を1,000倍希釈したものに変えた以外は、試験例2−1と同様にして試験した。
結果を
図4に示した。
図4中、「Reagent」は、siRNAをトランスフェクションしなかったもの(試薬のみ)の結果を示し、「siControl」は、「siControl #2」をトランスフェクションしたものの結果を示す。また、上段は、14−3−3ζ遺伝子の発現レベルを示し、下段は、内部コントロールであるβ−アクチンの発現レベルを示す。
図4の結果から、si14−3−3 zeta #1〜#4、及び#6〜#8は、Reagent、siControlよりもタンパク質レベルで14−3−3ζ遺伝子の発現を抑制した。これらの中でも、#3が最も効果が高かった。
【0068】
(試験例3−1−1:siRNAによるin vitroにおける細胞増殖抑制効果の検討)
前記製造例1で得られたsiTACC2 #1〜#10を、前立腺癌細胞にトランスフェクションし、その後の細胞増殖速度を測定することにより、各siRNAの前立腺癌細胞増殖抑制効果(ノックダウン効果)を検討した。
なお、コントロールとして、siControl #2及びsiTACC2 #0を用いた。
実験方法の詳細を以下に示す。
【0069】
[細胞]
前記前立腺癌細胞として、アンドロゲン受容体(AR)陽性のヒト前立腺癌由来LNCaP細胞(入手元:ATCC(American Type Culture Collection)、No.CRL−1740)を用いた。
【0070】
[細胞培養]
LNCaP細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS、Sigma社製)、100μg/mL ストレプトマイシン、100U/mL ペニシリン(Invitrogen社製)を含むRPMI−1640(Sigma社製)を細胞培養液として用い、空気中に5%の炭酸ガスを含む培養器内にて37℃で培養した。
【0071】
[トランスフェクション]
トランスフェクション前日に、96穴プレートに、LNCaP細胞を3×10
3個/穴になるよう継代し、トランスフェクション当日に、RNAi MAX(Invitrogen社製)及びOPTI−MEM(Invitrogen社製)を用いてsiRNAをトランスフェクションした。導入したsiRNAの量は、10nMとなるように調整した。
【0072】
[細胞増殖試験]
細胞増殖試験は、トランスフェクション1日後、3日後、5日後にCell titer 96(Promega社製)を用いて2時間反応させ、マイクロプレートリーダーにて吸光度490nmで細胞増殖能を測定することにより行った。前記試験は、PES(phenazine ethosulfate)を介して、テトラゾリウム塩[MTS;3−(4,5−dimethylthiazol−2−yl)−5−(3−carboxymethoxyphenyl)−2−(4−sulfophenyl)−2H−tetrazolium, inner salt]を発色物質であるホルマザン産物へ変換する還元反応に基づいて、生細胞数を測定するものである。
【0073】
結果を
図5Aに示した。
図5A中、「Reagent」は、siRNAをトランスフェクションしなかったもの(試薬のみ)の結果を示し、「siControl」は、「siControl #2」をトランスフェクションしたものの結果を示す。また、各siRNA等の欄における棒グラフは、左から順に、トランスフェクション1日後、3日後、5日後の結果を示す。
図5Aの結果から、siTACC2 #1〜#4、#7〜#9は、Reagent、siControlよりも細胞増殖が抑えられていた。
【0074】
(試験例3−1−2:siRNAによるin vitroにおける細胞増殖抑制効果の検討)
試験例3−1−1において、導入したsiRNAの量を10nMから50nMに変えた以外は、試験例3−1−1と同様にして試験した。
結果を
図5Bに示した。
図5B中、「Reagent」は、siRNAをトランスフェクションしなかったもの(試薬のみ)の結果を示し、「siControl」は、「siControl #2」をトランスフェクションしたものの結果を示す。また、各siRNA等の欄における棒グラフは、左から順に、トランスフェクション1日後、3日後、5日後の結果を示す。
図5Bの結果から、siTACC2 #1〜#4、及び#7〜#10は、siTACC2 #0と同等、若しくはそれ以上の細胞増殖抑制効果が確認できた。これらの中でも、特にsiTACC2 #2、及び#9において細胞増殖抑制効果が強いことが観察された。
【0075】
(試験例3−2:siRNAによるin vitroにおける細胞増殖抑制効果の検討)
試験例3−1−1において、siRNAをsi14−3−3 zeta #1〜#8とし、コントロールをsiControl #2とし、細胞増殖試験をトランスフェクション1日後、4日後、5日後、及び6日後に行った以外は、試験例3−1−1と同様にして試験した。
結果を
図6に示した。
図6中、「Reagent」は、siRNAをトランスフェクションしなかったもの(試薬のみ)の結果を示し、「siControl」は、「siControl #2」をトランスフェクションしたものの結果を示す。また、各siRNA等の欄における棒グラフは、左から順に、トランスフェクション1日後、4日後、5日後、6日後の結果を示す。
図6の結果から、si14−3−3 zeta #1〜#8は、Reagent、siControl #2よりも有意に細胞増殖を抑制効果した。これらの中でも、特にsi14−3−3 zeta #1〜#3、#5、#6、及び#8は、トランスフェクション4日後以降、細胞の増殖を強く抑制することが認められた。
【0076】
(試験例4−1:siRNAによるin vivoにおける腫瘍増殖抑制効果の検討)
前記製造例1で得られたsiTACC2のうち、前記試験において、mRNAレベルでの発現抑制効果と、細胞増殖抑制効果が共に高かったsiTACC2 #2について、ヌードマウスの皮下に腫瘍細胞を移植し、その腫瘍に対する増殖抑制効果を検討した。
なお、コントロールとして、siControl #1を用いた。
実験方法の詳細を以下に示す。
【0077】
[細胞]
前記腫瘍細胞として、アンドロゲン受容体(AR)陽性のヒト前立腺癌由来LNCaP細胞(入手元:ATCC(American Type Culture Collection)、No.CRL−1740)を用いた。
【0078】
[マウス]
前記マウスとして、日本クレア株式会社より購入したオスの8週齢のヌードマウス(BALB/cAJcl−nu/nu)を用いた。
【0079】
[腫瘍細胞の皮下移植]
前記LNCaP細胞をヌードマウス一匹あたり1×10
7個になるように調整し、PBS 100μLと混合した。前記混合物をマトリゲル(BD bioscience社製)100μLと混合した。前記混合物を、25G注射針を用いてマウスの皮下に注入した。
【0080】
[siRNAの投与]
マウスへ腫瘍細胞を移植後、腫瘍体積が100mm
3に達したところでsiRNAの投与を開始した。
前記siRNAの投与は、siRNAが5μg/匹となるように、RNAi MAX(Invitrogen社製)15μL、phenol red−free OPTI−MEM(85μL)と混合した溶液(100μL)をマウスの腫瘍内へ局注することにより行った。
前記投与は、2回/週を4週間繰り返した。
【0081】
[腫瘍増殖の測定、評価]
マウスの腫瘍の大きさは、週1回計測した。
腫瘍体積は、長径(r1)と、短径(r2,r3)を2か所とを計測し、「{長径(r1)(mm)×短径(r2)(mm)×短径(r3)(mm)}/2〕の式により算出した。
【0082】
結果を
図7A及び7Bに示した。
図7Aは、siRNA投与開始4週間後に、アバチンにて麻酔をかけ、腫瘍の大きさが分かるように撮影した写真である(左側:siControl #1を投与、右側:siTACC2 #2を投与)。
図7Bは、腫瘍体積の変化を表したグラフである。
図7B中、「◇」は、「siControl #1」を投与したマウス(n=7)における結果を示し、「□」は、「siTACC2 #2」を投与したマウス(n=8)における結果を示す。また、同図中、「***」は、p<0.001を表す。
図7A及び7Bの結果から、siTACC2 #2の投与により、マウスにおけるLNCaP細胞の増殖が有意に抑制されることが明らかになった。
【0083】
(試験例4−2:siRNAによるin vivoにおける腫瘍増殖抑制効果の検討)
試験例4−1において、siRNAを上述の試験例において最も抑制効果が高かったsi14−3−3 zeta #3とした以外は、試験例2−1と同様にして試験した。
結果を
図8A及び8Bに示した。
図8Aは、siRNA投与開始4週間後に、アバチンにて麻酔をかけ、腫瘍の大きさが分かるように撮影した写真である(左側:siControl #1を投与、右側:si14−3−3 zeta #3を投与)。
図8Bは、腫瘍体積の変化を表したグラフである。
図8B中、「◇」は、「siControl #1」を投与したマウス(n=7)における結果を示し、「△」は、「si14−3−3 zeta #3」を投与したマウス(n=7)における結果を示す。また、同図中、「**」は、p<0.01を表し、「***」は、p<0.001を表す。
図8A及び8Bの結果から、si14−3−3 zeta #3の投与により、マウスにおけるLNCaP細胞の増殖が有意に抑制されることが明らかになった。
【0084】
(試験例5−1:siTACC2 #2と、既報のsiRNAとの比較)
前記製造例1で得られたsiTACC2 #2と、「Takayama et al., Mol Endocrinol 26:748−761, 2012」(以下、「既報文献1」と称することがある)に記載のTACC2遺伝子に対するsiRNA(下記参照)とについて、前立腺癌細胞におけるTACC2遺伝子発現に対する抑制効果(ノックダウン効果)を検討した。
なお、コントロールとして、siControl #2及びsiTACC2 #0を用いた。
【0085】
<既報文献1に記載のsiRNA>
(1)siTACC2s20765(既報文献1におけるsiTACC2(ME)#1、lifetechnologies社製)
(2)siTACC2s20767(既報文献1におけるsiTACC2(ME)#2、lifetechnologies社製)
【0086】
実験方法の詳細は、以下の通りである。
[細胞]
前記前立腺癌細胞として、アンドロゲン受容体(AR)陽性のヒト前立腺癌由来LNCaP細胞(入手元:ATCC(American Type Culture Collection)、No.CRL−1740)を用いた。
【0087】
[細胞培養]
LNCaP細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS、Sigma社製)、100μg/mL ストレプトマイシン、100U/mL ペニシリン(Invitrogen社製)を含むRPMI−1640(Sigma社製)を細胞培養液として用い、空気中に5%の炭酸ガスを含む培養器内にて37℃で培養した。
【0088】
[トランスフェクション]
トランスフェクション前日に、6穴プレートに、LNCaP細胞 3×10
5個/穴をまき、トランスフェクション当日に、RNAi MAX(Invitrogen社製)及びOPTI−MEM(Invitrogen社製)を用いてsiRNAをトランスフェクションした。導入したsiRNAの量は、0.05nMとなるように調整した。
【0089】
[遺伝子発現レベルの測定]
トランスフェクションし72時間後に、ISOGEN(株式会社ニッポンジーン製)を用いて全RNAを細胞より回収した。前記全RNA 500ngを用いて、Prime script RT reagent kit(タカラバイオ株式会社製)により、cDNAを合成した。
前記cDNAを10倍希釈し、そのうちの2μLを用いてquantitative real−time PCRを行った。前記quantitative real−time PCRは、Step one real−time PCR (Applied biosystems社製)、及びKAPA SYBR Fast PCR kit(日本ジェネティクス株式会社製)を用いて行い、TACC2遺伝子及び内部コントロールであるGAPDH遺伝子の発現レベルを測定した。
前記TACC2遺伝子の発現レベルは、前記GAPDH遺伝子に対する発現レベルをCycle数からΔΔCt法を用いて算出した。
【0090】
図9に、siControl #2で処理した群におけるTACC2遺伝子の発現レベルに対する、siTACC2s20765、siTACC2s20767、siTACC2 #0、又はsiTACC2 #2で処理した群におけるTACC2遺伝子の発現レベルを算出した結果を示す。
図9中、縦軸は、siControl #2で処理した群に対する割合(%)を示す。
図9における横軸は、「1」がsiTACC2s20765の結果を示し、「2」がsiTACC2s20767の結果を示し、「3」がsiTACC2 #0の結果を示し、「4」がsiTACC2 #2の結果を示す。また、
図9中、「**」は「P<0.01」、「*」は「P<0.05」を示す。
【0091】
図9の結果から、siTACC2 #2は、0.05nMという低濃度において、他のsiRNAよりも高い遺伝子発現抑制効果を示した。したがって、前記siTACC2 #2のノックダウン効果の優位性が確認された。
【0092】
(試験例5−2:si14−3−3 zeta #3と、既報のsiRNAとの比較)
前記製造例1で得られたsi14−3−3 zeta #3と、「Murata et al., Clin Caner Res 18:5617−27, 2012」(以下、「既報文献2」と称することがある)に記載の14−3−3ζ遺伝子に対するsiRNA(下記参照)とについて、前立腺癌細胞における14−3−3ζ遺伝子発現に対する抑制効果(ノックダウン効果)を検討した。
なお、コントロールとして、siControl #2を用いた。
【0093】
<既報文献2に記載のsiRNA>
(1)si14−3−3 zeta(既報文献2、lifetechnologies社製)
【0094】
実験方法の詳細は、以下の通りである。
[細胞]
前記前立腺癌細胞として、アンドロゲン受容体(AR)陽性のヒト前立腺癌由来LNCaP細胞(入手元:ATCC(American Type Culture Collection)、No.CRL−1740)を用いた。
【0095】
[細胞培養]
LNCaP細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS、Sigma社製)、100μg/mL ストレプトマイシン、100U/mL ペニシリン(Invitrogen社製)を含むRPMI−1640(Sigma社製)を細胞培養液として用い、空気中に5%の炭酸ガスを含む培養器内にて37℃で培養した。
【0096】
[トランスフェクション]
トランスフェクション前日に、6穴プレートに、LNCaP細胞 3×10
5個/穴をまき、トランスフェクション当日に、RNAi MAX(Invitrogen社製)及びOPTI−MEM(Invitrogen社製)を用いてsiRNAをトランスフェクションした。導入したsiRNAの量は、0.05nMとなるように調整した。
【0097】
[遺伝子発現レベルの測定]
トランスフェクションし72時間後に、ISOGEN(株式会社ニッポンジーン製)を用いて全RNAを細胞より回収した。前記全RNA 500ngを用いて、Prime script RT reagent kit(タカラバイオ株式会社製)により、cDNAを合成した。
前記cDNAを10倍希釈し、そのうちの2μLを用いてquantitative real−time PCRを行った。前記quantitative real−time PCRは、Step one real−time PCR (Applied biosystems社製)、及びKAPA SYBR Fast PCR kit(日本ジェネティクス株式会社製)を用いて行い、14−3−3ζ遺伝子及び内部コントロールであるGAPDH遺伝子の発現レベルを測定した。
前記14−3−3ζ遺伝子の発現レベルは、前記GAPDH遺伝子に対する発現レベルをCycle数からΔΔCt法を用いて算出した。
【0098】
図10に、siControl #2で処理した群における14−3−3ζ遺伝子の発現レベルに対する、si14−3−3 zeta(既報文献2)、又はsi14−3−3 zeta #3で処理した群における14−3−3ζ遺伝子の発現レベルを算出した結果を示す。
図10中、縦軸は、siControl #2で処理した群に対する割合(%)を示す。
図10における横軸は、「1」がsi14−3−3 zeta(既報文献2)の結果を示し、「2」がsi14−3−3 zeta #3の結果を示す。また、
図10中、「**」は「P<0.01」を示す。
【0099】
図10の結果から、si14−3−3 zeta #3は、0.05nMという低濃度において、他のsiRNAよりも高い遺伝子発現抑制効果を示した。したがって、前記si14−3−3 zeta #3のノックダウン効果の優位性が確認された。
【0100】
(試験例6−1:ホルモン療法抵抗性前立腺癌細胞に対する細胞増殖抑制効果の検討)
前記製造例1で得られたsiTACC2 #2を、ホルモン療法抵抗性の前立腺癌細胞にトランスフェクションし、その後の細胞増殖を測定することにより、前記siTACC2 #2のホルモン療法抵抗性前立腺癌細胞に対する細胞増殖抑制効果を検討した。
なお、コントロールとして、siControl #1を用いた。
実験方法の詳細を以下に示す。
【0101】
[細胞]
「Takayama K. et al., Molecular Endocrinology 26: 748−761, 2012」に記載の方法にしたがって、アンドロゲン受容体(AR)陽性のヒト前立腺癌由来LNCaP細胞(入手元:ATCC(American Type Culture Collection)、No.CRL−1740)をホルモン枯渇状態の培地で9ヶ月間以上培養し、ホルモン療法抵抗性の前立腺癌細胞(以下、「LTAD細胞」と称することがある)を作製した。
【0102】
[細胞培養]
LTAD細胞は、チャコール吸着した10%ウシ胎児血清(FBS、Sigma社製)、100μg/mL ストレプトマイシン、100U/mL ペニシリン(Invitrogen社製)を含む、フェノールレッド不含RPMI−1640(Sigma社製)を細胞培養液として用い、空気中に5%の炭酸ガスを含む培養器内にて37℃で培養した。
【0103】
[トランスフェクション]
96穴プレートに、LTAD細胞を5,000個/穴になるよう播き、24時間後にRNAi MAX(Invitrogen社製)及びOPTI−MEM(Invitrogen社製)を用いてsiRNAをトランスフェクションした。導入したsiRNAの量は、1nMとなるように調整した。
【0104】
[細胞増殖試験]
トランスフェクション5日後に、生細胞数測定試薬SF(ナカライテスク株式会社製)を用いて細胞増殖試験を行った。
【0105】
結果を
図11に示した。
図11中、縦軸は、490nmの吸光度を示し、「siControl」は、「siControl #1」をトランスフェクションしたものの結果を示す。なお、「**」は、P<0.01を示す。
図11の結果から、siTACC2 #2は、LTAD細胞においても、有意に細胞増殖を抑制することが示された。
【0106】
(試験例6−2:ホルモン療法抵抗性前立腺癌細胞に対する細胞増殖抑制効果の検討)
前記製造例1で得られたsi14−3−3 zeta #3を、ホルモン療法抵抗性の前立腺癌細胞にトランスフェクションし、その後の細胞増殖を測定することにより、前記si14−3−3 zeta #3のホルモン療法抵抗性前立腺癌細胞に対する細胞増殖抑制効果を検討した。
なお、コントロールとして、siControl #1を用いた。
実験方法の詳細を以下に示す。
【0107】
[細胞]
「Takayama K. et al., Molecular Endocrinology 26: 748−761, 2012」に記載の方法にしたがって、アンドロゲン受容体(AR)陽性のヒト前立腺癌由来LNCaP細胞(入手元:ATCC(American Type Culture Collection)、No.CRL−1740)をホルモン枯渇状態の培地で9ヶ月間以上培養し、ホルモン療法抵抗性の前立腺癌細胞(以下、「LTAD細胞」と称することがある)を作製した。
【0108】
[細胞培養]
LTAD細胞は、チャコール吸着した10%ウシ胎児血清(FBS、Sigma社製)、100μg/mL ストレプトマイシン、100U/mL ペニシリン(Invitrogen社製)を含む、フェノールレッド不含RPMI−1640(Sigma社製)を細胞培養液として用い、空気中に5%の炭酸ガスを含む培養器内にて37℃で培養した。
【0109】
[トランスフェクション]
96穴プレートに、LTAD細胞を5,000個/穴になるよう播き、24時間後にRNAi MAX(Invitrogen社製)及びOPTI−MEM(Invitrogen社製)を用いてsiRNAをトランスフェクションした。導入したsiRNAの量は、1nMとなるように調整した。
【0110】
[細胞増殖試験]
トランスフェクション5日後に、生細胞数測定試薬SF(ナカライテスク株式会社製)を用いて細胞増殖試験を行った。
【0111】
結果を
図12に示した。
図12中、縦軸は、490nmの吸光度を示し、「siControl」は、「siControl #1」をトランスフェクションしたものの結果を示す。なお、「*」は、P<0.05を示す。
図12の結果から、si14−3−3 zeta #3は、LTAD細胞においても、有意に細胞増殖を抑制することが示された。
【0112】
以上の試験例1〜試験例6により、本発明の二本鎖核酸分子が、癌細胞におけるTACC2遺伝子、14−3−3ζ遺伝子の発現に対して高い抑制効果を有することが示された。更に、これらの二本鎖核酸分子は、in vivoにおいても高い腫瘍増殖抑制効果を有することが示されたことから、癌を予防乃至治療するための医薬の有効成分として好適に利用可能であると考えられる。
また、本発明の二本鎖核酸分子は、従来のAR自体を抑制することにより行われる治療方法と異なり、ARの下流シグナルとして存在するTACC2遺伝子及び14−3−3ζ遺伝子の少なくともいずれかを標的とするものであるため、ホルモン療法不応性となった癌に対しても好適に利用可能であると考えられる。
また、TACC2遺伝子、及び14−3−3ζ遺伝子の発現が、前立腺癌で著明に亢進しているとの臨床データもあるため、本発明の二本鎖核酸分子により、癌の進展抑制にも優れた効果が見込まれる。
【0113】
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> TACC2遺伝子及び14−3−3ζ遺伝子の少なくともいずれかの発現を抑制するための二本鎖核酸分子であって、
(a)配列番号:1〜配列番号:18のいずれかの標的配列に対応するヌクレオチド配列を有するセンス鎖と、
(b)前記(a)のセンス鎖に相補的なヌクレオチド配列を有するアンチセンス鎖と、
を含むことを特徴とする二本鎖核酸分子である。
<2> センス鎖が、配列番号:1〜配列番号:4、配列番号:7〜配列番号:13、配列番号:15、配列番号:16、及び配列番号:18のいずれかの標的配列に対応するヌクレオチド配列を有するセンス鎖である前記<1>に記載の二本鎖核酸分子である。
<3> センス鎖が、配列番号:2、及び配列番号:13のいずれかの標的配列に対応するヌクレオチド配列を有するセンス鎖である前記<1>から<2>のいずれかに記載の二本鎖核酸分子である。
<4> 二本鎖RNA及び二本鎖RNA−DNAキメラの少なくともいずれかである前記<1>から<3>のいずれかに記載の二本鎖核酸分子である。
<5> siRNA及びキメラsiRNAの少なくともいずれかである前記<1>から<4>のいずれかに記載の二本鎖核酸分子である。
<6> siRNAである前記<1>から<5>のいずれかに記載の二本鎖核酸分子である。
<7> 前記<1>から<6>のいずれかに記載の二本鎖核酸分子をコードするヌクレオチド配列を含むことを特徴とするDNAである。
<8> 前記<7>に記載のDNAを含むことを特徴とするベクターである。
<9> 前記<1>から<6>のいずれかに記載の二本鎖核酸分子、前記<7>に記載のDNA、及び前記<8>に記載のベクターの少なくともいずれかを含むことを特徴とする癌細胞増殖抑制剤である。
<10> 配列番号:2の標的配列に対応するヌクレオチド配列を有するセンス鎖と、該センス鎖に相補的なヌクレオチド配列を有するアンチセンス鎖とを含む二本鎖核酸分子、該二本鎖核酸分子をコードするヌクレオチド配列を含むDNA、及び該DNAを含むベクターの少なくともいずれかと、
配列番号:13の標的配列に対応するヌクレオチド配列を有するセンス鎖と、該センス鎖に相補的なヌクレオチド配列を有するアンチセンス鎖とを含む二本鎖核酸分子、該二本鎖核酸分子をコードするヌクレオチド配列を含むDNA、及び該DNAを含むベクターの少なくともいずれかと、
を含む前記<9>に記載の癌細胞増殖抑制剤である。
<11> 癌細胞が、前立腺癌細胞である前記<9>から<10>のいずれかに記載の癌細胞増殖抑制剤である。
<12> 前立腺癌細胞が、ホルモン療法抵抗性の前立腺癌細胞である前記<11>に記載の癌細胞増殖抑制剤である。
<13> 癌細胞に、前記<9>から<12>のいずれかに記載の癌細胞増殖抑制剤を作用させることを特徴とする癌細胞の増殖抑制方法である。
<14> 癌細胞が、前立腺癌細胞である前記<13>に記載の癌細胞の増殖抑制方法である。
<15> 前立腺癌細胞が、ホルモン療法抵抗性の前立腺癌細胞である前記<14>に記載の癌細胞の増殖抑制方法である。
<16> 癌を予防乃至治療するための医薬であって、前記<9>から<12>のいずれかに記載の癌細胞増殖抑制剤を含むことを特徴とする医薬である。
<17> 癌が、前立腺癌である前記<16>に記載の医薬である。
<18> 前立腺癌が、ホルモン療法抵抗性の前立腺癌である前記<17>に記載の医薬である。
<19> 個体に、前記<16>から<18>のいずれかに記載の医薬を投与することを特徴とする癌の予防乃至治療方法である。
<20> 癌が、前立腺癌である前記<19>に記載の癌の予防乃至治療方法である。
<21> 前立腺癌が、ホルモン療法抵抗性の前立腺癌である前記<20>に記載の癌の予防乃至治療方法である。