特許第5976927号(P5976927)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976927
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】ブテン−1重合用触媒成分
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/654 20060101AFI20160817BHJP
   C08F 10/08 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   C08F4/654
   C08F10/08
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-513226(P2015-513226)
(86)(22)【出願日】2013年5月30日
(65)【公表番号】特表2015-517604(P2015-517604A)
(43)【公表日】2015年6月22日
(86)【国際出願番号】EP2013061158
(87)【国際公開番号】WO2013182474
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2014年11月19日
(31)【優先権主張番号】12171236.8
(32)【優先日】2012年6月8日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/657,058
(32)【優先日】2012年6月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513076604
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ・ミニョーニャ
(72)【発明者】
【氏名】シモナ・エスポジト
(72)【発明者】
【氏名】シモナ・グイドッティ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンピエロ・モリーニ
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム・ティー・エム・ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ファブリジオ・ピエモンテージ
(72)【発明者】
【氏名】ジアンニ・ヴィタール
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−117509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F4/60−4/70
C08F10/08
C08F110/08
C08F210/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒の存在下で行うブテン−1を重合するための方法において、
前記触媒は、
(a)Mg、Ti、及び下記式(I):
【化1】
(ここで、互いに同一あるいは異なるR基はC−C15炭化水素基であり、互いに同一あるいは異なるR−R基は、水素、ハロゲン、またはC−C15炭化水素基であり、必要に応じて、ハロゲン、P、S、N、及びSiから選択されるヘテロ原子を含有し、n及びmは0〜3の整数であり、そのうち少なくとも一方は0でない)
で表される電子供与体化合物を含む固体触媒成分と、
(b)アルミニウムアルキル共触媒と、
(c)外部電子供与体と
を含む、方法
【請求項2】
R基はC−C直鎖アルキル基から選択される、請求項1に記載の方法
【請求項3】
nとmの合計は2である、請求項1に記載の方法
【請求項4】
nとmは共に1である、請求項3に記載の方法
【請求項5】
及びRは水素及びC−Cアルキル基から選択される、請求項1に記載の方法
【請求項6】
及びRは共にアルキル基であってはならない、請求項1に記載の方法
【請求項7】
及びRは水素である、請求項6に記載の方法
【請求項8】
成分(b)の前記アルミニウムアルキル共触媒は、トリアルキルアルミニウム化合物の中から選択される、請求項1に記載の方法
【請求項9】
前記外部電子供与体は、式(R(RSi(ORで表されるケイ素化合物から選択され、ここで、a及びbは0〜2の整数であり、cは1〜4の整数であり、合計(a+b+c)は4であり、
、R、及びRは、炭素数1−18のアルキル、シクロアルキルまたはアリールラジカル(aryl radical)であり、必要に応じてヘテロ原子を含有する、請求項1に記載の方法
【請求項10】
及びRのうち少なくとも一方は炭素数3−10の分枝アルキル(branch alkyl)またはシクロアルキルから選択され、
はC−C10アルキル基である、請求項9に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Ti原子と特定の群から選択された少なくとも1つの電子供与体を担持するマグネシウム二ハロゲン化物(Mg dihalide)系支持体を含む、オレフィン、特にプロピレン重合用の特定のチーグラー・ナッタ(Ziegler−Natta)触媒成分を用いて、高活性と立体規則性を有するポリブテン−1を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリブテン−1(共)重合体(PB−1)は当該分野において広く知られている。耐圧強度、クリープ抵抗(creep resistance)、衝撃強度などの性質が非常に優れており、主に金属パイプの交換作業用のパイプの製造に用いられる。一般的に、ポリブテン−1(共)重合体は、チーグラー・ナッタ系触媒の存在下でブテン−1を重合して製造する。しかし、全てのZN触媒が産業開発分野において活用可能な要求水準の活性、立体特異性、分子量、及び分子量分布を満たすポリブテン−1を生成することができるわけではない。通常、PB−1の工業生産に適した触媒は、(A)Ti化合物と、MgClに担持された電子供与体化合物としてフタレート(phthalate)を含む固体成分、(B)アルキルアルミニウム化合物、及び(C)アルキルアルコキシシラン類から選択された外部電子供与体化合物からなる。
【0003】
上記のような触媒で生成されたポリブテン−1は、EP−A−172961、WO99/45043、及びWO03/099883の実施例に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、最近、フタレートの使用は、潜在的な毒性を付与するということが明らかになり、それによって重合性能と重合体生成物の質の二つの面でフタレートを代替可能な供与体を見つけるための研究が活発に行われている。
【0005】
PB−1の生産において、フタレートに代わり得る適切な代替物の発見において直面する問題は、ZN触媒のプロピレン重合性能度でブテン−1重合性能度を予測することは殆ど不可能であるということである。実際に、一部のジエステル群、例えば、US7,388,061及びWO2010/078494に開示された物質は、プロピレン重合で優れた性能を発揮する可能性を示すにもかかわらず、ブテン−1重合では驚くほど性能が悪く、プロピレン重合データに基づいて予測を行おうとする試みは全て無為に終わった。そのため、本発明のジエステル群がイソタクチック度の高いPB−1の生産に有効であるという事実を明らかにしたことは非常に驚くべきことである。本物質は、US4,725,656に具体的な例示なくプロピレンの生成に有用であるとのみ記載されている。一方、US4,522,930は、本発明のジエステル群を記述してはいないが、そのうちの1つであるジイソブチルo−フェニレンジアセテートを電子供与体として含む触媒の特定のプロピレン重合テストについて報告している。問題の供与体による活性と立体特異性が非常に低いため、当該プロピレン重合の結果は特に優れたものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明の目的は、触媒の存在下に行うブテン−1の重合方法であり、前記触媒は、(a)Mg、Ti、及び下記式(I):
【化1】
(ここで、互いに同一あるいは異なるR基はC−C15炭化水素基であり、互いに同一あるいは異なるR−R基は、水素、ハロゲン、またはC−C15炭化水素基であり、必要に応じて、ハロゲン、P、S、N、及びSiから選択されるヘテロ原子を含有し、n及びmは0〜3の整数であり、そのうち少なくとも一方は0でない)
で表される電子供与体化合物を含む固体触媒成分と、(b)アルミニウムアルキル共触媒と、(c)外部電子供与体とを含む、方法を提供することである。
【0007】
R基は、好ましくはC−C10炭化水素基から、より好ましくはC−Cアルキル基、特にメチル、エチル、n−ブチルなどの直鎖アルキルから選択される。R基は、好ましくは直鎖C−Cアルキル基、特に直鎖C−Cアルキル基から選択される。
【0008】
nとmの合計は、好ましくは2であり、より好ましくはnとmが共に1である。
【0009】
本発明の好ましい態様において、R及びRは、水素及びC−Cアルキル基から選択される。R及びRは、好ましくは共にアルキル基であってはならず、より好ましくは共に水素である。
【0010】
構造(I)の例は下記の通りである。ただし、下記の事例に限定されない。
【0011】
ブチル2−(2−(2−エトキシ−2−オキソエチル)フェニル)アセテート、ブチル2−(2−(2−イソブトキシ−2−オキソエチル)フェニル)アセテート、ブチル2−(2−(2−メトキシ−2−オキソエチル)フェニル)アセテート、ブチル2−(2−(2−オキソ−2−プロポキシエチル)フェニル)アセテート、ジブチル2,2’−(1,2−フェニレン)ジアセテート、ジエチル2,2’−(1,2−フェニレン)ジアセテート、ジイソブチル2,2’−(1,2−フェニレン)ジアセテート、ジメチル2,2’−(1,2−フェニレン)ジアセテート、ジプロピル2,2’−(1,2−フェニレン)ジアセテート、エチル2−(2−(2−イソブトキシ−2−オキソエチル)フェニル)アセテート、エチル2−(2−(2−メトキシ−2−オキソエチル)フェニル)アセテート、エチル2−(2−(2−オキソ−2−プロポキシエチル)フェニル)アセテート、イソブチル2−(2−(2−メトキシ−2−オキソエチル)フェニル)アセテート、イソブチル2−(2−(2−オキソ−2−プロポキシエチル)フェニル)アセテート、メチル2−(2−(2−オキソ−2−プロポキシエチル)フェニル)アセテート、ジエチル2,2’−(4−(1−フェニルエチル)−1,2−フェニレン)ジアセテート、ジエチル2,2’−(4−(2−フェニルプロパン−2−イル)−1,2−フェニレン)ジアセテート、ジエチル2,2’−(4−(tert−ブチル)−1,2−フェニレン)ジアセテート、ジエチル2,2’−(4−ブチル−1、2−フェニレン)ジアセテート、ジエチル2,2’−(4−シクロヘキシル−1,2−フェニレン)ジアセテート、ジエチル2,2’−(4−シクロペンチル−1,2−フェニレン)ジアセテート、ジエチル2,2’−(4−エチル−1,2−フェニレン)ジアセテート、ジエチル2,2’−(4−イソブチル−1,2−フェニレン)ジアセテート、ジエチル2,2’−(4−イソプロピル−1,2−フェニレン)ジアセテート、ジエチル2,2’−(4−メチル−1,2−フェニレン)ジアセテート、ジエチル2,2’−(4−プロピル−1,2−フェニレン)ジアセテート、ジエチル2,2’−(4−クロロ−1,2−フェニレン)ジアセテート、ジエチル2,2’−(1,2−フェニレン)ビス(3−メチルブタノエート)、ジエチル2,2’−(1,2−フェニレン)ジプロパノエート、エチル2−(2−(1−エトキシ−1−オキソプロパン−2−イル)フェニル)−3−メチルブタノエート、ジエチル2,2’−(3,4,5,6−テトラメチル−1,2−フェニレン)ジアセテート、ジエチル2,2’−(3,5−ジ−tert−ブチル−1,2−フェニレン)ジアセテート、ジエチル2,2’−(3,5−ジイソプロピル−1,2−フェニレン)ジアセテート、ジエチル2、2’−(3,5−ジメチル−1,2−フェニレン)ジアセテート、ジエチル2,2’−(4,5−ジメチル−1,2−フェニレン)ジアセテート、ジエチル2,2’−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2,3−ジイル)ジアセテート、ジエチル2,2’−(5−(tert−ブチル)−3−メチル−1,2−フェニレン)ジアセテート、ジエチル2,2’−(ナフタレン−2,3−ジイル)ジアセテート、ブチル2−(3−ブトキシ−3−オキソプロピル)ベンゾエート、エチル2−(3−エトキシ−3−オキソプロピル)ベンゾエート、イソブチル2−(3−イソブトキシ−3−オキソプロピル)ベンゾエート、メチル2−(3−メトキシ−3−オキソプロピル)ベンゾエート、エチル2−(2−(エトキシカルボニル)−3,3−ジメチルブチル)ベンゾエート、エチル2−(2−(エトキシカルボニル)−3−メチルブチル)ベンゾエート、エチル2−(2−(エトキシカルボニル)−4−メチルペンチル)ベンゾエート、エチル2−(2−(エトキシカルボニル)ブチル)ベンゾエート、エチル2−(2−(エトキシカルボニル)ヘキシル)ベンゾエート、エチル2−(3−エトキシ−2−メチル−3−オキソプロピル)ベンゾエート、エチル2−(1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−エトキシ−3−オキソプロピル)ベンゾエート、エチル2−(1−(3,4−ジメチルフェニル)−3−エトキシ−3−オキソプロピル)ベンゾエート、エチル2−(1−エトキシ−1−オキソヘプタン−3−イル)ベンゾエート、エチル2−(1−エトキシ−1−オキソペンタン−3−イル)ベンゾエート、エチル2−(1−エトキシ−4,4−ジメチル−1−オキソペンタン−3−イル)ベンゾエート、エチル2−(1−エトキシ−4−メチル−1−オキソペンタン−3−イル)ベンゾエート、エチル2−(1−エトキシ−5−メチル−1−オキソヘキサン−3−イル)ベンゾエート、エチル2−(3−エトキシ−3−オキソ−1−フェニルプロピル)ベンゾエート、エチル2−(4−エトキシ−4−オキソブタン−2−イル)ベンゾエート、エチル2−(3−エトキシ−3−オキソプロピル)−5−エチルベンゾエート、エチル2−(3−エトキシ−3−オキソプロピル)−5−イソブチルベンゾエート、エチル2−(3−エトキシ−3−オキソプロピル)−5−イソプロピルベンゾエート、エチル2−(3−エトキシ−3−オキソプロピル)−5−メチルベンゾエート、エチル5−(tert−ブチル)−2−(3−エトキシ−3−オキソプロピル)ベンゾエート、エチル5−クロロ−2−(3−エトキシ−3−オキソプロピル)ベンゾエート、エチル2−(3−エトキシ−3−オキソプロピル)−4−イソプロピルベンゾエート、エチル2−(3−エトキシ−3−オキソプロピル)−4−メチルベンゾエート、エチル4−(tert−ブチル)−2−(3−エトキシ−3−オキソプロピル)ベンゾエート、エチル4−クロロ−2−(3−エトキシ−3−オキソプロピル)ベンゾエート、エチル2−(2−(エトキシカルボニル)シクロヘキシル)ベンゾエート、エチル3−(3−エトキシ−3−オキソプロピル)−2−ナフトエート。
【0012】
上述したように、本発明の触媒成分(a)は、上記電子供与体の他に、Ti、Mg、及びハロゲンを含む。具体的には、触媒成分は少なくとも1つのTi−ハロゲン結合を有するチタン化合物と、マグネシウムハロゲン化物に担持された上記電子供与体化合物とを含む。マグネシウムハロゲン化物は、チーグラー・ナッタ触媒用支持体として特許文献を通じて広く知られている活性型MgClであることが好ましい。US4,298,718及びUS4,495,338は、チーグラー・ナッタ触媒作用におけるこれらの化合物の使用を記述した最初の文献である。上記の特許においては、オレフィン重合用触媒成分中の支持体または共支持体として用いられる活性型マグネシウム二ハロゲン化物は、不活性型ハロゲン化物のスペクトルで示される最も強い回折線の強度が減少しており、上記回折線がより強い線の最大強度と比較して最大強度がより低い角の方に移されたハロで代替されたX線スペクトルによって特徴づけられることが公知になっている。
【0013】
本発明の触媒成分に用いられる好ましいチタン化合物はTiCl及びTiClであり、式Ti(OR)q−yで表されるTi−ハロアルコラートも使用可能である。ここで、qはチタンの原子価、yは1からq−1の間の数字、Xはハロゲン、Rは炭素数1〜10の炭化水素ラジカルである。
【0014】
固体触媒成分は種々の方法によって製造することができる。
【0015】
これらの方法の一つによると、無水物状態の二塩化マグネシウム、チタン化合物、及び電子供与体化合物を二塩化マグネシウムが活性化する条件下で共に製粉する。その結果として得た生成物を80〜135℃の間の温度で過剰TiClを用いて1回以上処理する。次いで、炭化水素溶媒で塩化イオンがなくなるまで洗浄する。また、他の方法では、無水物状態の塩化マグネシウム、チタン化合物、及び電子供与体化合物を共に製粉して得た生成物を1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化水素で処理する。当該処理を、40℃からハロゲン化水素の沸点までの温度で1〜4時間行う。また、他の方法では、電子供与体化合物の存在下で、80〜120℃の温度でマグネシウムアルコラートまたはクロロアルコラート(具体的には、US4,220,554に基づいて製造したクロロアルコラート)と過剰TiClとを反応させる。
【0016】
好ましい方法によると、式Ti(OR)q−y(qはチタンの原子価、yは1からqの間の数字)のチタン化合物、好ましくはTiClを、式MgCl・pROH(pは0.1から6の間の数字であって好ましくは2から3.5の間、Rは炭素数1−18の炭化水素ラジカル)の付加物(adduct)に由来した塩化マグネシウムと反応させて固体触媒成分を調製する。当該付加物は、付加物に混入されていない不活性炭化水素の存在下でアルコールと塩化マグネシウムとを混合し、付加物の融解温度(100〜130℃)で攪拌条件下で操作することによって球形(spherical form)となるように適切に調製することができる。当該エマルジョンを急速冷却すると、付加物が球形粒子状に固体化する。上記の手順によって調製した球形付加物の例は、US4,399,054及びUS4,469,648に記述されている。得られた付加物をTi化合物と直接反応させるか、または予め熱的制御脱アルコール化(thermal controlled dealcoholation)(80〜130℃)を行ってアルコールのモル数(mole number)が、通常3未満、好ましくは0.1から2.5の間の付加物を得ることができる。付加物(脱アルコール化など)を低温のTiCl(一般的には0℃)に懸濁してTi化合物と反応させることができる。混合物を80〜135℃まで加熱し、当該温度で0.5〜2時間放置する。TiCl処理は1回以上行ってもよい。電子供与体化合物をTiCl処理中に所望の比率で添加する。球形触媒成分の調製は、欧州特許出願EP−A−395083、EP−A−553805、EP−A−553806、EPA601525及びWO98/44001の実施例に記載されている。
【0017】
上述した方法で得た固体触媒成分の表面積(BET法で測定)は、通常20〜500m/gであり、好ましくは50〜400m/gである。全間隙率(total porosity)(BET法で測定)は、通常0.2cm/g以上、好ましくは0.2〜0.6cm/gである。半径が最大10.000Åの空隙に基づく間隙率(Hg法)は、通常0.3〜1.5cm/g、好ましくは0.45〜1cm/gの範囲である。
【0018】
固体触媒成分の平均粒子径は5〜120μmの範囲であり、より好ましくは10〜100μmの範囲である。
【0019】
上述したように、これらの調製方法では、所望の電子供与体化合物を添加し、あるいは逆に、エーテル化、アルキル化、エステル化、エステル交換反応のような周知の化学反応を通じて、当該電子供与体化合物に変換可能な適切な前駆体を用いて現場で直ちに調製することもある。
【0020】
調製方法に関係なく、式(I)の電子供与体化合物の最終含有量は、Ti原子に対するモル比が0.01〜3、好ましくは0.2〜2、より好ましくは0.3〜1.5となる量である。
【0021】
アルキルアルミニウム化合物(b)は、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム化合物の中から選択される。AlEtCl and AlEtClなどのアルキルアルミニウムハロゲン化物、アルキルアルミニウム水素化物、またはアルキルアルミニウムセスキクロリド(sesquichloride)を用いてもよく、上述したトリアルキルアルミニウムと混合して用いてもよい。
【0022】
外部電子供与体化合物(c)の適切な例としては、ケイ素化合物、エーテル、エステル、アミン、複素環式化合物などが挙げられ、具体的には、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン及びケトンが適している。
【0023】
その他の外部供与体化合物の適合群としては、式(R(RSi(ORで表されるケイ素化合物群が挙げられる。ここで、a及びbは0から2の間の整数であり、cは1から4の間の整数であり、a+b+cの合計は4である。R、R、及びRは、炭素数1〜18のアルキル、シクロアルキルまたはアリールラジカルであり、必要に応じて、ヘテロ原子を含有することができる。ポリブテン−1の調製に特に好ましいものとしては、R及びRのうち少なくとも1つが炭素数3〜10の分岐アルキルまたはシクロアルキル基から選択され、RはC−C10アルキル基、具体的には、メチルリンケイ素化合物である。好ましいケイ素化合物の例としては、ジイソプロピルジメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、テキシルトリメトキシシラン、及びジシクロペンチルジメトキシシランが挙げられる。
【0024】
電子供与体化合物(c)の使用量は、有機アルミニウム化合物と電子供与体化合物(iii)のモル比が0.1〜500、好ましくは1〜300、より好ましくは3〜150となる量である。
【0025】
重合方法では、周知の方法、例えば、不活性炭化水素を溶媒または希釈剤として用いる溶液またはスラリー重合、あるいは反応媒質として液状ブテン−1を用いる溶液重合などの方法を採用することができる。併せて、重合方法として、流動床反応器または機械攪拌床反応器を1つ以上用いる気相重合を行うこともできる。液状ブテン−1を反応媒質として用いる重合が最も好ましい。
【0026】
重合は、通常20〜120℃の温度で、好ましくは40〜90℃で行われる。バルク重合の場合、作業圧力は、通常0.1〜6MPa、好ましくは1.0〜4MPaである。重合は、1つ以上の反応器で行ってもよく、当該反応器は分子量調節剤の濃度、単量体の濃度、温度、圧力などの反応条件が同一あるいは異なってもよい。異なる条件下で1つ以上の反応器で作業する場合、2つの反応器で平均分子量が異なるポリブテンを製造することができ、その結果として分子量分布がより広くなり、ときには二峰型(bimodal type)となることもある。さらに、異なる条件下で1つ以上の反応器で作業する場合、各種の重合ステップを適切に調整することで、最終重合体の物性を適切に調整することができるという利点がある。
【0027】
併せて、重合ステップに特に適した触媒を作製するために、予備重合(prepolymerization)ステップで前記触媒を予備重合することも可能である。前記予備重合は液相重合(スラリーまたは溶液)あるいは気相重合のいずれか一つであってもよく、実行温度は通常100℃以下、好ましくは20〜70℃である。予備重合ステップは、重合体を得るのに必要な単量体を少量、すなわち固体触媒成分1g当たり0.5〜2000g、好ましくは5〜500g、より好ましくは10〜100g用いて行う。予備重合で用いられる単量体は、ブテン−1及び/または炭素数2〜10のその他のα−オレフィンである。好ましくは、プロピレンで予備重合を行うのが好適である。この場合、ポリプロピレンの含有量が最終ポリブテン−1の生成物の重量を基準として0.5〜20%、好ましくは1〜15%となるために必要な単量体の量と重合時間を予備重合に適用することが特に好ましい。反応器の混合物(blend)は、重合体が均質であることが好ましいが、本発明のポリブテン−1を最終組成物の0.5〜20重量%の範囲のプロピレン単独重合体または共重合体と混合しても良い結果が得られる。
【0028】
本発明のポリブテンは、ポリブテンが一般的に採用される全ての分野において用いることができる。しかし、定期的なテストでも容易に判定可能なように、本発明の生成物に特定の物性を付与する重合体成分、添加剤(安定剤、抗酸化剤、防食剤、核形成剤、加工補助剤など)、有機または無機充填材を添加することも可能であることは、当該分野の専門家にとっては周知の事実である。
【0029】
下記の実施例は、本発明をより詳しく説明するためのものであり、本発明はこれに限定されない。
【0030】
上述したように、当該触媒は、プロピレン重合において優れた性能を示す一方、ブテン−1の重合においても高収率で立体特異性に優れたポリブテン−1を生成した。
【0031】
下記の実施例は、本発明をより詳しく説明するためのものであり、本発明はこれに限定されない。
【0032】
特性化
Tiの判定
固体触媒成分のTi含有量は、「I.C.P Spectrometer ARL Accuris」を用いて、誘導結合プラズマ分光分析法(inductively coupled plasma emission spectroscopy)で判定することができる。
【0033】
触媒0.1÷0.3gと、メタホウ酸リチウムと四ホウ酸リチウムの1/1混合物3gを「フラクシー(fluxy)」白金炉に分析のために増量してサンプルを作製した。炉を弱いブンゼン炎で焼成し、KI溶液を数滴添加した後、特殊装置「Claisse Fluxy」に挿入して完全に焼成した。残留物を5%v/vのHNO溶液で採集し、368.52nmの波長でICPでチタンを分析した。
【0034】
内部供与体の含有量の判定
固体触媒化合物の内部供与体の含有量はガスクロマトグラフィーで判定した。固体成分を酸性水に溶解した。当該溶液を酢酸エチルで抽出し、内部標準液(internal standard)を添加し、有機相のサンプルをガスクロマトグラフィーで分析して、出発触媒物質に存在する供与体の量を判定した。
【0035】
X.I.の判定
重合体2.5gとo−キシレン250mlを、冷却器と還流凝縮器(reflux condenser)を備えた丸底(round−bottomed)フラスコに入れて窒素下に置いた。結果物として得た混合物を135℃に加熱し、60分間攪拌した。最終溶液を攪拌し続けて0℃まで冷却し、不溶性重合体を0℃で濾過した。濾過水(filtrate)を窒素流(nitrogen flow)で140℃の温度で蒸発させ、恒量(constant weight)に到達した。当該キシレン可溶性分画の含有量は、本来の2.5gの百分率で示した後、X.I.%で示す。
【0036】
13C NMRによるイソタクチック度(mmmm%)の判定
キシレン不溶性分画(上述した「Xの判定」で得た物質)の測定において、CClに溶解した重合体の8重量%溶液を準備し、120℃におけるフーリエ変換方式で160.91MHzで作動し、クリオプローブ(cryoprobe)を備えたBruker AV−600 spectrometerで120℃でスペクトルを記録した。各スペクトルは90°パルスで得て、パルスとComposite Pulse Decoupling(CPD)との間に15秒の遅延をおいて、H−13Cカップリングを除去した。9000Hzの分光窓を用いて64Kデータ点に約512過渡現象(transient)を保存した。
【0037】
分枝メチレン炭素領域内のペンタッド信号(pentad signal)の指定は、文献Carbon−13 NMR Spectral Assignment of Five Polyolefins Determined from the Chemical Shift Calculation and the Polymerization Mechanism,T.Asakura and others,Macromolecules 1991,24 2334−2340に基づいて行った。
【0038】
ポリブテンのイソタクチック度(isotactic index)は、キシレン不溶性分画内のmmmmペンタッドの百分率で評価し、分枝メチレン炭素ペンタッド領域全部を28.15ppmから26.4ppmまで積分して計算した(Itot)。27.7ppmのmmmmピークを内部参照(internal reference)として用いた。mmmmピーク(Immmm)は、13C−13Cカップリングとmmmrピークによる高位mmmm側帯(higher field mmmm side band)との間で積分線をスペクトル線の最小(27.5ppm)で切断して積分した。
mmmm%=100(Immmm)/(Itot
【0039】
固有粘度(IV)の判定
サンプルの加重量(weight amount)をテトラヒドロナフタレン(THN)に135℃の制御温度で溶解した。当該希釈液の流動時間(flow time)を、135℃に恒温化(thermostated)されたUbbelhode変形毛細管粘度計を備えたSematech Cineviscoシステムで測定した。Irganox 1010を抗酸化剤として添加して分子量の劣化現象を最小化した。IVをハギンズ式(Huggins’equation)を応用し、ハギンズ定数を0.35と仮定して計算した。溶媒及び溶液の流動時間は運動エネルギーによる分布を考慮して修正した。室温から135℃までのTHN容積変化を考慮して溶液の濃度を評価した。
【0040】
示差走査熱測定法(DSC)による重合体結晶度
重合体の融解点(Tm)を示差走査熱測定法(D.S.C)を応用して事前にインジウムの融解点に矯正したPerkin Elmer DSC−1熱量計で測定した。DSCの炉内に置いた各サンプルの重量は6.0±0.5mgであった。FormIIの融解点を得るために、加重サンプルをアルミニウムパンに封入し、10℃/分の速度で180℃まで加熱した。サンプルを180℃で5分間放置して微小結晶を完全に融解した後、10℃/分の速度で20℃まで冷却した。20℃で2分間放置した後、サンプルを10℃/分の速度で180℃まで再度加熱した。2次加熱のピーク温度をForm IIの融解温度とみなす。
【0041】
実施例
球形付加物の調製の手順
微細楕円形MgCl・2.8COHの初期量をWO98/44009の実施例2に記載された方法に従って、ただし、より大きな規模で調製する。支持体の付加物は、約25ミクロンのP50を有し、エタノールの含有量は約56重量%であった。
【0042】
固体触媒成分の調製の一般的な手順
500mlの4ッ口丸底フラスコを窒素でパージし、TiCl250mlを0℃で導入した。攪拌しながら上述した方法で調製した球形付加物10gを添加した。フラスコを0℃に冷却し、所定のモル比Mg/IDを満たすように指定された内部電子供与体化合物を添加した。温度を指定値まで上昇させ、所定の指定チタン化(titanation)時間の間放置した。攪拌を停止し、固体生成物を沈殿させてから、上層の液体をサイフォンで吸い上げて除去した。
【0043】
初期液面に到達するまで新鮮なTiClを新たに添加した。温度を指定温度に設定し、所定時間の間放置した後、サイフォンで再び吸い上げた。必要に応じて3度目のチタン化ステップを追加する。得られた固体を無水ヘキサン(6×100ml)で60℃で6回洗浄した後、真空で乾燥した。
【0044】
ブテン−1のバルク重合の手順
70℃の窒素流で1時間パージした4リットルのオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム3.5mmolを含有した無水ヘキサン12mlを30℃の窒素流に導入した。液状ブテン−1 1.35kgを供給し、温度を75℃まで昇温させ、水素(表2で指定された量)を添加した。重合を開始するために、無水ヘキサンに懸濁させた触媒懸濁液50mlを注入した。懸濁液は、トリイソブチルアルミニウム3.5mmol、固体触媒成分6mg及び表2で指定したタイプの外部供与体を同表で指定したMg/EDを満たす量で含有した。
【0045】
重合を75℃で2時間行った。残留ブテン−1単量体を引火してポリ−ブテン−1重合体を回収した。重合体を窒素下で一晩の間70℃で乾燥した。特定の重合条件及び結果を表2に示した。
【0046】
実施例1〜4、比較例C1及びC2
上述した一般的な方式で固体触媒成分を調製した。各実施例ではチタン化条件を表1のように変化させた。他の実施例とは異なり、実施例3の固体は、ヘプタンで90℃で2回洗浄し、続いてヘキサンで60℃で4回洗浄した。
【0047】
得られた固体を上述した方法で乾燥し、同じく上述した方法で特性を判定した。特性化の結果を表1に示した。
【0048】
【表1】
DEPDA ジエチル2,2’−(1,2−フェニレン)ジアセテート
PDBPB ペンタン−2,4−ジイルビス(4−プロピルベンゾエート)
TMPDB 5−(tert−ブチル)−3−メチル−1,2−フェニレンジベンゾエート
EEOB エチル2−(3−エトキシ−3−オキソプロピル)ベンゾエート
【0049】
実施例5〜13、比較例C3及びC4
上記固体触媒成分を上述した方法を用いて1−ブテンの単独重合に用いた。重合条件(水素と外部供与体の量、外部供与体の種類)を表2の記述に基づいて変化させた。
【0050】
得られた固体を、上述した一般的な手順を応用して特性化した。特性化の結果を表2に示す。
【0051】
【表2】
T テキシルトリメトキシシラン
n.d.=判定不可