特許第5976983号(P5976983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5976983
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】血管内測定のための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0215 20060101AFI20160817BHJP
【FI】
   A61B5/02 610F
【請求項の数】25
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-524335(P2016-524335)
(86)(22)【出願日】2014年7月1日
(86)【国際出願番号】US2014045171
(87)【国際公開番号】WO2015003024
(87)【国際公開日】20150108
【審査請求日】2016年4月21日
(31)【優先権主張番号】61/841,517
(32)【優先日】2013年7月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/985,858
(32)【優先日】2014年4月29日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516002831
【氏名又は名称】ズーリック・メディカル・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】ZURICH MEDICAL CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125874
【弁理士】
【氏名又は名称】川端 純市
(74)【代理人】
【識別番号】100189544
【弁理士】
【氏名又は名称】柏原 啓伸
(72)【発明者】
【氏名】キン−ジョー・シャム
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ・ブイ・ドナディオ・ザ・サード
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・シー・エイチ・チャン
(72)【発明者】
【氏名】ポール・マイケル・マクシェリー
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ジェイ・ギャム
【審査官】 伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第8391956(US,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0135864(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0268038(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0096566(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0023190(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0152721(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0078352(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0234698(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0289808(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0072880(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/173697(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02 − 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内診断のための携帯装置において、
コアワイヤと、前記コアワイヤの遠位領域に配置したセンサとを含むモニタガイドワイヤと、
所定回数の使用の後または所定期間の使用の後に処分されるように構成されたディスプレーユニットであって、プロセッサと、表示画面と、所定期間の使用にわたり前記ディスプレーユニットに電力を供給するように構成された1つまたは複数の電池とを含むディスプレーユニットと
を含み、
前記ディスプレーユニットは、前記1つまたは複数の電池が消耗した後に処分されるように構成されており、
前記ディスプレーユニットは前記モニタガイドワイヤから通信を受信可能であり、前記ディスプレーユニットは前記モニタガイドワイヤから受信した通信に基づいて前記プロセッサを使用して算出を実行するように構成され、かつ、前記ディスプレーユニットは前記算出に基づいて前記表示画面に情報を表示するように構成されている、ことを特徴とする携帯装置。
【請求項2】
前記1つまたは複数の電池は再充電不能である、ことを特徴とする請求項1に記載の携帯装置。
【請求項3】
前記ディスプレーユニットは、2回以上である所定回数の使用の後に動作不能となるように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の携帯装置。
【請求項4】
前記1つまたは複数の電池は、前記ディスプレーユニットの電源および前記ディスプレーユニットの外部の電源の少なくとも1つによって再充電可能である、ことを特徴とする請求項1に記載の携帯装置。
【請求項5】
血管内診断のための携帯装置において、
コアワイヤと、前記コアワイヤの遠位領域に配置したセンサとを含むモニタガイドワイヤであって、1回の使用の後に処分されるように構成されているモニタガイドワイヤと、
2回以上である所定回数の使用の後に動作不能となるように、または所定期間の使用の後に処分されるように、構成されたディスプレーユニットであって、プロセッサと、表示画面とを含むディスプレーユニットと
を含み、
前記ディスプレーユニットは前記モニタガイドワイヤから通信を受信可能であり、前記ディスプレーユニットは前記モニタガイドワイヤから受信した通信に基づいて前記プロセッサを使用して算出を実行するように構成され、かつ、前記ディスプレーユニットは前記算出に基づいて前記表示画面に情報を表示するように構成されている、ことを特徴とする携帯装置。
【請求項6】
前記ディスプレーユニットは1回の使用の後に動作不能となるように構成されている、ことを特徴とする請求項1又は5に記載の携帯装置。
【請求項7】
前記ディスプレーユニットと前記モニタガイドワイヤは無線で通信する、ことを特徴とする請求項1又は5に記載の携帯装置。
【請求項8】
前記ディスプレーユニットは、前記モニタガイドワイヤと通信可能接続を確立するように構成されたコネクタをさらに含む、ことを特徴とする請求項1又は5に記載の携帯装置。
【請求項9】
前記コネクタは、血管系内で前記モニタガイドワイヤを制御するために前記モニタガイドワイヤとの機械的接続を確立するようにさらに構成されている、ことを特徴とする請求項8に記載の携帯装置。
【請求項10】
血管系内で前記モニタガイドワイヤを制御するために前記モニタガイドワイヤを係合するように構成されたトルカをさらに含むことを特徴とする請求項1又は5に記載の携帯装置。
【請求項11】
前記モニタガイドワイヤは前記センサを取り囲む筐体であって、柔軟性を与えるためにレーザーエッチングされている筐体をさらに含む、ことを特徴とする請求項1又は5に記載の携帯装置。
【請求項12】
前記モニタガイドワイヤは前記センサを取り囲む柔軟なコイルであって、前記センサを覆って緩んだ部分を有するコイルをさらに含む、ことを特徴とする請求項1又は5に記載の携帯装置。
【請求項13】
血管内診断のための携帯装置において、
コアワイヤと、前記コアワイヤの遠位領域に配置したセンサとを含むモニタガイドワイヤであって、前記センサは圧力センサである、モニタガイドワイヤと、
所定回数の使用の後または所定期間の使用の後に処分されるように構成されたディスプレーユニットであって、プロセッサと、表示画面とを含むディスプレーユニットと
を含み、
前記プロセッサは、前記圧力センサのみからの圧力測定値に基づいて血流予備量比を算出可能であり、
前記ディスプレーユニットは前記モニタガイドワイヤから通信を受信可能であり、前記通信は前記圧力センサからの測定値を含み、前記ディスプレーユニットは前記モニタガイドワイヤから受信した通信に基づいて前記プロセッサを使用して算出を実行するように構成され、かつ、前記ディスプレーユニットは前記算出に基づいて前記表示画面に情報を表示するように構成され、
前方押圧血流予備量比は
FFR=(Psensor−Pra)/(Psaved−Pra
として算出され、ここで、
savedは第1の狭窄に近位の記録した圧力測定値の経時移動平均値であり、
sensorは前記第1の狭窄に遠位かつ第2の狭窄に近位の実時間の圧力測定値の経時移動平均値であり、
raは定数である、ことを特徴とする携帯装置。
【請求項14】
savedは前記第1の狭窄に近位かつ第2の狭窄に近位の記録した圧力測定値の経時移動平均値であり、
sensorは前記第1の狭窄に遠位かつ前記第2の狭窄に遠位の実時間の圧力測定値の経時移動平均値である、ことを特徴とする請求項13に記載の携帯装置。
【請求項15】
血管内診断のための携帯装置において、
コアワイヤと、前記コアワイヤの遠位領域に配置したセンサとを含むモニタガイドワイヤであって、前記センサは圧力センサである、モニタガイドワイヤと、
所定回数の使用の後または所定期間の使用の後に処分されるように構成されたディスプレーユニットであって、プロセッサと、表示画面とを含むディスプレーユニットと
を含み、
前記プロセッサは、前記コアワイヤの前記遠位領域に配置した前記圧力センサのみからの圧力測定値に基づいて血流予備量比を算出可能であり、
前記ディスプレーユニットは前記モニタガイドワイヤから通信を受信可能であり、前記通信は前記圧力センサからの測定値を含み、前記ディスプレーユニットは前記モニタガイドワイヤから受信した通信に基づいて前記プロセッサを使用して算出を実行するように構成され、かつ、前記ディスプレーユニットは前記算出に基づいて前記表示画面に情報を表示するように構成され、
引き戻し血流予備量比は
FFR=(Psaved−Pra)/(Psensor−Pra
として算出され、ここで、
savedは第1の狭窄に遠位の記録した圧力測定値の経時移動平均値であり、
sensorは前記第1の狭窄に近位かつ第2の狭窄に遠位の実時間の圧力測定値の経時移動平均値であり、
raは定数である、ことを特徴とする携帯装置。
【請求項16】
savedは前記第1の狭窄に遠位かつ第2の狭窄に対して遠位の記録した圧力測定値の経時移動平均値であり、
sensorは前記第1の狭窄に近位かつ前記第2の狭窄に近位の実時間の圧力測定値の経時移動平均値である、ことを特徴とする請求項15に記載の携帯装置。
【請求項17】
前記ディスプレーユニットは前記血流予備量比を前記表示画面に表示する、ことを特徴とする請求項13又は15に記載の携帯装置。
【請求項18】
前記ディスプレーユニットは前記圧力測定値のグラフを表示する、ことを特徴とする請求項13又は15に記載の携帯装置。
【請求項19】
前記ディスプレーユニットは圧力測定値を含む通信を受信するように構成された通信ポートをさらに含む、ことを特徴とする請求項1又は5に記載の携帯装置。
【請求項20】
血管内診断のための携帯装置において、
コアワイヤと、前記コアワイヤの遠位領域に配置したセンサとを含むモニタガイドワイヤと、
所定回数の使用の後または所定期間の使用の後に処分されるように構成されたディスプレーユニットと
を含み、
前記ディスプレーユニットは、
圧力測定値を含む通信を受信するように構成された通信ポートと、
プロセッサと、
表示画面と、を含み、
前記プロセッサは同時血流予備量比を
FFR=(Psensor−Pra)/(Pport−Pra
として算出するように構成され、ここで、
portは前記通信ポートにおいて受信した実時間の圧力測定値の経時移動平均値であり、
sensorは前記コアワイヤの前記遠位領域に配置した圧力センサからの実時間の圧力測定値の経時移動平均値であり、
raは定数であり、
前記ディスプレーユニットは前記モニタガイドワイヤから通信を受信可能であり、前記ディスプレーユニットは前記モニタガイドワイヤから受信した通信に基づいて前記プロセッサを使用して算出を実行するように構成され、かつ、前記ディスプレーユニットは前記算出に基づいて前記表示画面に情報を表示するように構成されている、ことを特徴とする携帯装置。
【請求項21】
前記ディスプレーユニットは、前記コアワイヤの前記遠位領域に配置した圧力センサのみからの圧力測定値に基づいた血流予備量比の算出、および、前記圧力センサからの圧力測定値に基づき、かつ、前記通信ポートにおいて受信した圧力測定値に基づいた血流予備量比の算出を含む少なくとも2つの方法で血流予備量比を算出する能力を備えて構成されている、ことを特徴とする請求項20に記載の携帯装置。
【請求項22】
前記ディスプレーユニットは血流予備量比を算出する前記少なくとも2つの方法の1つを自動的に使用するように構成されている、ことを特徴とする請求項21に記載の携帯装置。
【請求項23】
前記ディスプレーユニットは、条件が存在する場合に血流予備量比を算出する前記少なくとも2つの方法の一方を自動的に選択し、かつ、前記条件が存在しない場合に血流予備量比を算出する前記少なくとも2つの方法の他方を自動的に選択する、ように構成されている、ことを特徴とする請求項21に記載の携帯装置。
【請求項24】
前記ディスプレーユニットは血流予備量比を算出する前記少なくとも2つの方法の一方を使用者が手作業で選択することを許容するように構成されている、ことを特徴とする請求項21に記載の携帯装置。
【請求項25】
血管内診断のための携帯装置において、
コアワイヤと、前記コアワイヤの遠位領域に配置したセンサとを含むモニタガイドワイヤと、
所定回数の使用の後または所定期間の使用の後に処分されるように構成されたディスプレーユニットと
を含み、
前記ディスプレーユニットは1回の使用の後に動作不能となるように構成され、
前記ディスプレーユニットは、プロセッサと、表示画面と、を含み、
前記ディスプレーユニットは前記モニタガイドワイヤから通信を受信可能であり、前記ディスプレーユニットは前記モニタガイドワイヤから受信した通信に基づいて前記プロセッサを使用して算出を実行するように構成され、かつ、前記ディスプレーユニットは前記算出に基づいて前記表示画面に情報を表示するように構成されている、ことを特徴とする携帯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2014年4月29日に出願の米国特許仮出願第61/985858号明細書および2013年7月1日に出願の米国特許仮出願第61/841517号明細書に基づく優先権を主張する。それぞれの優先権主張出願の内容の全体は参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
開示した技術は血管内診断に関する。より詳細には、開示した技術は患者の血管系における狭窄の重症度の診断に関する。
【背景技術】
【0003】
血管のアテローム硬化性閉塞による血流量の低下は血管疾患の主要な原因となっている。病変の性質決定および治療法の選択には、治療前の動脈内、特に冠状動脈内での圧力測定値が使用されている。より詳細には、病変部にわたる圧力の勾配が病変の重症度の指標として臨床で使用されている。治療中および治療後に得た測定値は、治療の有効性の評価を可能にしている。血管内測定値をモニタするための既存の設備は、多数の個別の部品および多くのかさ張るモニタを有している。そのため、改良されたモニタ設備に対して、引き続き関心が持たれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
開示した技術は患者の血管系における狭窄の重症度の診断に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
開示した技術の一態様において、血管内診断のための装置は、コアワイヤと、コアワイヤの遠位領域に配置したセンサと、を有するモニタガイドワイヤと、所定回数の使用後または所定期間の使用後に処分されるように構成した携帯ディスプレーユニットと、を含む。この携帯ディスプレーユニットはプロセッサを含むことが可能であり、表示画面は、携帯ディスプレーユニットがモニタガイドワイヤから通信を受信可能である場合に、モニタガイドワイヤから受信した通信に基づいてプロセッサを使用して算出を行うように構成され、かつ、その算出結果に基づいて表示画面に情報を表示するように構成されている。
【0006】
一実施形態において、携帯ディスプレーユニットは携帯ディスプレーユニットに電力を供給するように構成した1つまたは複数の電池を含む。一実施形態において、一つまたは複数の電池は、携帯ディスプレーユニットの電源および/または携帯ディスプレーユニットの外部の電源によって再充電可能である。
【0007】
一実施形態において、携帯ディスプレーユニットは、この1つまたは複数の電池が消耗した後に携帯ディスプレーユニットが処分されるように構成可能となるように、所定期間の使用の間にわたり携帯ディスプレーユニットに電力を供給するように構成した1つまたは複数の電池をさらに含む。一実施形態において、1つまたは複数の電池は再充電不能である。一実施形態において、携帯ディスプレーユニットは、一人の人が使用した後に動作不能となるように構成可能である。
【0008】
開示した技術の一態様において、モニタガイドワイヤは、1回の使用の後に処分されるように構成可能である。
【0009】
一実施形態において、携帯ディスプレーユニットおよびモニタガイドワイヤは無線で通信可能である。一実施形態において、携帯ディスプレーユニットは、モニタガイドワイヤとの通信可能な接続を確立するように構成したコネクタを含む。一実施形態において、このコネクタは、血管系内でガイドワイヤを制御するためのモニタガイドワイヤとの機械的な接続を確立するように構成されている。一実施形態において、トルカは、血管系内でガイドワイヤを制御するためにモニタガイドワイヤと係合するように構成されている。
【0010】
一実施形態において、モニタガイドワイヤはセンサを取り囲む筐体を含み、筐体には、この筐体に柔軟性を与えるためにレーザーエッチングすることが可能である。一実施形態において、モニタガイドワイヤはセンサを取り囲む柔軟なコイルを含み、このコイルはセンサを覆う緩んだ部分を有している。
【0011】
開示した技術の一態様において、センサは圧力センサであり、モニタガイドワイヤからの通信は圧力センサからの測定値を含む。携帯ディスプレーユニットのプロセッサは、コアワイヤの遠位領域における圧力センサのみからの圧力測定値に基づいて血流予備量比を算出可能である。
【0012】
一実施形態において、血流予備量比は、FFR=(Psensor−Pra)/(Psaved−Pra)として算出した前方押圧血流予備量比(「FFR」)であり、ここで、
savedは第1の狭窄に近位の記録した圧力測定値の経時移動平均値であり、
sensorは第1の狭窄に遠位の実時間の圧力測定値の経時移動平均値であり、
raは定数である。
【0013】
一実施形態において、Psavedは第1の狭窄に近位かつ第2の狭窄に近位の記録した圧力測定値の経時移動平均値である。一実施形態において、Psensorは第1の狭窄に遠位かつ第2の狭窄に近位の実時間の圧力測定値の経時移動平均値である。一実施形態において、Psensorは第1の狭窄に遠位かつ第2の狭窄に遠位の実時間の圧力測定値の経時移動平均値である。
【0014】
一実施形態において、血流予備量比は、FFR=(Psaved−Pra)/(Psensor−Pra)として算出した引き戻し血流予備量比であり、ここで、
savedは第1の狭窄に遠位の記録した圧力測定値の経時移動平均値であり、
sensorは第1の狭窄に近位の実時間の圧力測定値の経時移動平均値であり、
raは定数である。
【0015】
一実施形態において、Psensorは第1の狭窄に近位かつ第2の狭窄に遠位の実時間の圧力測定値の経時移動平均値である。一実施形態において、Psavedは第1の狭窄に遠位かつ第2の狭窄に対して遠位の記録した圧力測定値の経時移動平均値である。一実施形態において、Psensorは第1の狭窄に近位かつ第2の狭窄に近位の実時間の圧力測定値の経時移動平均値である。
【0016】
一実施形態において、携帯ディスプレーユニットは血流予備量比を表示画面に表示する。一実施形態において、携帯ディスプレーユニットは圧力測定値のグラフを表示する。
【0017】
一実施形態において、携帯ディスプレーユニットは、圧力測定値を含んだ通信を受信するように構成した通信ポートを含む。
【0018】
一実施形態において、血流予備量比は、FFR=(Psensor−Pra)/(Pport−Pra)として算出した引き戻し血流予備量比であり、ここで、
portは通信ポートにおいて受信した実時間の圧力測定値の経時移動平均値であり、
sensorはコアワイヤの遠位領域に配置した圧力センサからの実時間の圧力測定値の経時移動平均値であり、
raは定数である。
【0019】
一実施形態において、携帯ディスプレーユニットは、少なくとも2つの方法、すなわち、コアワイヤの遠位領域に配置した圧力センサのみからの圧力測定値に基づいた血流予備量比の算出、および、圧力センサからの圧力測定値に基づき、かつ、通信ポートにおいて受信した圧力測定値に基づいた血流予備量比の算出で、血流予備量比を算出する能力を備えて構成されている。一実施形態において、携帯ディスプレーユニットは、血流予備量比を算出する少なくとも2つの方法の一方を自動的に使用するように構成可能である。一実施形態において、携帯ディスプレーユニットは、条件が存在する場合に血流予備量比を算出する方法の一方を自動的に選択するように構成可能であり、条件が存在しない場合に血流予備量比を算出する少なくとも2つの方法の他方を自動的に選択するように構成可能である。一実施形態において、携帯ディスプレーユニットは、使用者が血流予備量比を算出する少なくとも2つの方法の一方を手作業で選択することを許容するように構成可能である。
【0020】
開示した技術の一態様において、血管内診断のための装置は、コアワイヤと、コアワイヤの遠位領域に配置したセンサと、を有するモニタガイドワイヤと、所定回数の使用後または所定期間の使用後に処分されるように構成した手持ちディスプレーユニットと、を含む。この手持ちディスプレーユニットはプロセッサを含むことが可能であり、表示画面は、手持ちディスプレーユニットがモニタガイドワイヤから通信を受信可能である場合に、モニタガイドワイヤから受信した通信に基づいてプロセッサを使用して算出を行うように構成され、かつ、その算出結果に基づいて表示画面に情報を表示するように構成されている。一実施形態において、手持ちディスプレーユニットは、大きさを30cm×30cm×30cm以下とすることが可能である。
【0021】
開示した技術の一態様において、血管内診断のための装置は、コアワイヤと、コアワイヤの遠位領域に配置したセンサと、を有するモニタガイドワイヤと、モニタガイドワイヤから通信を受信可能な携帯ディスプレーユニットと、を含む。この携帯ディスプレーユニットはプロセッサと、表示画面と、を含み、モニタガイドワイヤから受信した通信に基づいてプロセッサを使用して算出を行うように構成され、かつ、その算出結果に基づいて表示画面に情報を表示するように構成されている。携帯ディスプレーユニットは、表示画面の電源が入れられた後に電源が切れる機能はない。
【0022】
開示した技術のこれらの態様および実施形態は例示であり、かつ、開示した技術の範囲を限定するものではなく、その範囲は添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むと明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】開示した技術による例示的な血管内診断装置のブロック図である。
図2】開示した技術の実施形態のブロック図である。
図3】開示した技術による例示的な装置の図である。
図4】開示した技術による例示液な装置の別の図である。
図5】開示したモニタガイドワイヤの例示的な遠位先端部の図である。
図6】開示したモニタガイドワイヤの遠位先端部の2つの実施形態の図である。
図7】開示したモニタガイドワイヤの血流予備量比を予測するための1つの位置の図である。
図8】開示したモニタガイドワイヤの血流予備量比を予測するための別の位置の図である。
図9】開示した技術の同時血流予備量比を算出するための例示的な動作のフロー図である。
図10】開示した技術の前方押圧血流予備量比を算出するための例示的な動作のフロー図である。
図11】開示した技術の引き戻し血流予備量比を算出するための例示的な動作のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
開示した技術は患者の血管系における狭窄の重症度の診断に関する。開示した技術は血管内腔の重要な定量的測定値を提供するための従来の血管造影検査への補助として使用可能である。
【0025】
図1を参照すると、開示した技術による例示的な血管内診断装置のブロック図である。図示した装置100はモニタガイドワイヤ102と、携帯ディスプレーユニット104と、を含む。一実施形態において、携帯ディスプレーユニットに適用可能であるとして本明細書に説明するいずれの、かつ、すべての態様および実施形態も開示した手持ちディスプレーユニットに適用可能となるように、携帯ディスプレーユニット104は手持ちディスプレーユニットとすることが可能である。一実施形態において、手持ちディスプレーユニットは、大きさを30cm×30cm×30cm以下とすることが可能である。モニタガイドワイヤ102は、運用において、カテーテルなどの当業者に知られている従来の治療介入用設備の支援により患者の血管系内に導入する。携帯ディスプレーユニット104はモニタガイドワイヤ102と通信可能であり、かつ、モニタガイドワイヤ102から受信した通信に基づいた情報を表示可能である。
【0026】
図示したモニタガイドワイヤ102は、コアワイヤ106と、コアワイヤ106の遠位領域に配置した1つまたは複数のセンサ108と、を含んだいくつかの構成部品を含むことが可能である。本明細書で使用するように、「遠位」および「近位」という用語は血管内腔内の身体的な方向を指している。詳細には、患者への機器の挿入箇所に関して、「遠位」という用語は挿入箇所から血管内を中の方へ向かう方向を指し、「近位」という用語は血管の内部から外側に挿入箇所へ向かう方向を指す。本明細書で使用するように、「近位」および「遠位」という用語は器具の異なった各端部も指し、「近位」が血管内腔への挿入箇所に向かった端部であり、「遠位」は挿入箇所から離れた端部である。
【0027】
引き続き図1を参照すると、コアワイヤ106の遠位領域に配置した1つまたは複数のセンサ108は、1つまたは複数の血流力学的圧力センサおよび/または1つまたは複数の温度センサを含むことが可能である。一実施形態において、圧力センサはピエゾ抵抗圧力センサとすることが可能である。図1に示すように、モニタガイドワイヤ102は、センサ108を取り囲む保護構造体110も含むことが可能であり、通信ユニット112を含むことが可能である。モニタガイドワイヤ102の保護構造体110は図5および6を参照して後でさらに詳細に説明する。
【0028】
一実施形態において、通信ユニット112は、ブルートゥース、WiFi(802.11)、または、他のいずれかの無線技術などの無線通信技術の採用が可能である。一実施形態において、通信ユニット112は、電磁信号を通信するための1つまたは複数のワイヤおよび/または光信号を通信するための1つまたは複数の光ファイバを含むことが可能な有線通信ユニットとすることが可能である。モニタガイドワイヤ102は、電源、A/D変換器、特定用途向け集積回路(ASIC)、プロセッサ、メモリ、タイミング回路、および/または、他の電源、アナログ、もしくは、デジタルの回路などの図示しない他の構成部品を含むことが可能である。これらの構成部品は当業者に知られよう。
【0029】
図示の携帯ディスプレーユニット104を参照すると、携帯ディスプレーユニット104は表示画面114と、1つまたは複数の電池116と、メモリおよび/または記憶装置118と、通信ユニット120と、消費電力管理ユニット122と、プロセッサ124と、を含むことが可能である。一実施形態において、プロセッサ124は汎用プロセッサとすることが可能であり、または、特定用途向け集積回路とすることが可能である。一実施形態において、表示画面114は液晶ディスプレー、有機発光ダイオードディスプレー、または、別のタイプのディスプレー技術とすることが可能である。一実施形態において、メモリ/記憶装置118は1つもしくは複数の固体メモリ/記憶装置、磁気ディスク記憶装置、および/または、当業者には知られていよう別のいずれかのタイプのメモリ/記憶装置を含むことが可能である。一実施形態において、メモリ/記憶装置118はプロセッサ124が実行するソフトウェア指示を含むことが可能である。一実施形態において、通信ユニット120は、ブルートゥース、WiFi(802.11)、または、他のいずれかの無線技術などの無線通信技術の採用が可能である。一実施形態において、通信ユニット120は、電磁信号を通信するための1つまたは複数のワイヤおよび/または光信号を通信するための1つまたは複数の光ファイバを含むことが可能な有線通信ユニットとすることが可能である。携帯ディスプレーユニット104は、ユーザインターフェース、オペレーティングシステムソフトウェア、ディスプレードライバ回路、A/D変換器、特定用途向け集積回路(ASIC)、タイミング回路、および/または、他の電源、アナログ、もしくは、デジタルの回路などの図示しない他の構成部品を含むことが可能である。これらの構成部品は当業者に知られよう。
【0030】
図2を参照すると、開示した技術の別の実施形態のシステムブロック図である。モニタガイドワイヤは、遠位端部において圧力センサおよび/または他のセンサを含む。センサからの電気信号はワイヤ接続を介して携帯ディスプレーユニットに送信可能である。携帯ディスプレーユニットは、圧力トランスデューサ/血流力学システム(図示せず)からの大動脈押出し圧力(AOIN)などの外部センサ入力を受信する通信ポートを含むことが可能である。携帯ディスプレーユニットは、外部記憶装置に、別のディスプレーに、プリンタに、および/または、血流力学システム(図示せず)にデータを出力するための出力通信ポートも含むことが可能である。
【0031】
図3を参照すると、開示した血管内診断装置の例示的な実施形態である。一実施形態において、モニタガイドワイヤ302は、長さが約180cmとすることが可能である。一実施形態において、モニタガイドワイヤ302は別の長さとすることが可能である。モニタガイドワイヤ302は、モニタガイドワイヤ302の遠位領域304に1つまたは複数のセンサを有することが可能である。図示した実施形態において、携帯ディスプレーユニット306は、これが手持ちディスプレーユニットとなるように小さな形状係数を有することが可能である。一実施形態において、手持ちディスプレーユニットは、大きさを30cm×30cm×30cm以下とすることが可能である。
【0032】
図4は、開示した血管内診断装置の別の例示的な実施形態を示す図である。図示した実施形態において、モニタガイドワイヤ402は、携帯ディスプレーユニット400のコネクタ406への着脱が可能である。一実施形態において、コネクタ406は、コネクタ406に開口部を開くボタン(図示せず)を含むことが可能である。モニタガイドワイヤ402を着脱するために、使用者は、コネクタ406のボタンを押したまま保持して、モニタガイドワイヤ402をコネクタ406内に完全に挿入するまで開口部内にモニタガイドワイヤ402を挿入可能である。一旦挿入したなら、使用者はボタンを放すことが可能であり、これが、モニタガイドワイヤ402を所定の位置に確保し、モニタガイドワイヤ402とコネクタ406との間の接続をもたらす。別の実施形態において、コネクタ406は、ネジ係合、ねじり係合、スナップ係合、または、締り嵌めによってモニタガイドワイヤ402と係合可能である。記載した各タイプの係合は例示であり、開示した技術の範囲を限定しない。コネクタ406がモニタガイドワイヤ402と係合する他のタイプの方法は、開示した技術の範囲内であると考えられる。
【0033】
一実施形態において、コネクタ接続は、モニタガイドワイヤ402と携帯ディスプレーユニット400との間に通信可能な接続を確立している。モニタガイドワイヤ402およびコネクタ406は、モニタガイドワイヤ402を携帯ディスプレーユニット400に接続し、かつ、モニタガイドワイヤのセンサから携帯ディスプレーユニット400に信号を搬送する電気ワイヤを含むことが可能である。
【0034】
一実施形態において、コネクタ接続は、血管系内でガイドワイヤ402を制御するためのモニタガイドワイヤ402とコネクタ406との間の機械的接続を確立している。図示した実施形態において、コネクタ406は、携帯ディスプレーユニット400の主筐体410に係留されている。一実施形態において、係留索は長さを6インチから12インチとすることが可能であり、使用者に、携帯ディスプレーユニット主筐体410に妨害されずに自由にモニタガイドワイヤ402を操作させることが可能である。一実施形態において、係留索は別の長さとすることが可能である。一実施形態(図示せず)において、コネクタは、携帯ディスプレーユニット主筐体410に一体化された接続ポートとすることが可能である。
【0035】
一実施形態において、コネクタ406は、モニタガイドワイヤ402との通信可能な接続を確立している。一実施形態において、トルカ(図示せず)は、モニタガイドワイヤ402がコネクタ406に機械的かつ/または電気的に接続していない場合に、血管系内でガイドワイヤを制御するためにモニタガイドワイヤ402と係合するように構成可能である。一実施形態において、トルカは、モニタガイドワイヤ402がコネクタ406に機械的かつ/または電気的に接続している場合に、血管系内でガイドワイヤを制御するためにモニタガイドワイヤ402と係合するように構成可能である。一実施形態において、モニタガイドワイヤ402は、患者の血管系内への挿入および血管系内での誘導のためにトルカまたはコネクタ406を必要とせず、この機能をモニタガイドワイヤ402自身で提供している。
【0036】
引き続き図4を参照すると、携帯ディスプレーユニット400は、センサの測定値および/または算出した情報(例えば、血流予備量比)を数値フォーマットおよび/または波形フォーマットで表示可能な表示画面404を含む。携帯ディスプレーユニット400は、使用者が携帯ディスプレーユニット400に入力を行うことを可能にするための1つまたは複数のボタン(図示せず)またはタッチスクリーンを含むことが可能である。一実施形態において、携帯ディスプレーユニットの画面404は、携帯ディスプレーユニット400を配送する際に梱包の大きさを最小化するために、使用前に主筐体410内に折り畳むことが可能である。使用者が携帯ディスプレーユニット400を使用するために梱包から取り出すと、使用者は、画面404を折り畳んだ位置から開いた位置に(図示したように)回転させ、診断手順のための使用者に対する適切な視野角を提供することが可能である。一実施形態において、表示画面404の折り畳んだ位置から開いた位置への回転は、携帯ディスプレーユニットへの電源の供給を可能にするオンスイッチとして作用する。
【0037】
図示した実施形態において、携帯ディスプレーユニット400は通信ポート408も含む。一実施形態において、通信ポート408は使用者が携帯ディスプレーユニット400を外部システム(図示せず)に接続することを可能にする。外部システムは、通信ポート408を介して携帯ディスプレーユニット400にセンサの信号を通信可能である。一実施形態において、通信ポートで受信したセンサの信号は圧力測定値とすることが可能であり、血流予備量比を計算する際に使用可能である。
【0038】
再び図1を参照すると、モニタガイドワイヤ102は、センサ108を取り囲む保護構造体110を含むことが可能である。図5を参照すると、モニタガイドワイヤの遠位領域でセンサ510を取り囲む例示的な保護構造体502の図である。図示した実施形態において、保護構造体502は、センサ510が存在するモニタガイドワイヤの遠位先端部または遠位部分に柔軟性および/またはトルク変換をもたらすために切削した特定のパターンをレーザーエッチングした筐体である。センサ510は、センサ測定値を取るために、血液がセンサ510と接触することを可能にするように、レーザーエッチングした筐体において筐体内の窓504に定置可能である。図示した実施形態において、コアワイヤ508は、柔軟性とトルク変換のバランスを取るための適切な輪郭を与えるように研磨可能である。一実施形態において、モニタガイドワイヤはコアワイヤ508を含む必要がない。むしろ、保護構造体502がモニタガイドワイヤの全体または実質的な部分に沿って延長可能であり、かつ、所望の柔軟性および/またはトルク変換をもたらすためにいくつかの、または、すべての各部分に沿ってレーザーエッチング可能である。
【0039】
図6を参照すると、モニタガイドワイヤの遠位領域においてセンサを取り囲む2つの例示的な保護構造体の図である。実施形態の一方は、図5を参照して説明したレーザーエッチングした筐体である。他方の実施形態は、保護構造体としてセンサを覆ってコイルを設けている。このコイルは、血液がセンサと接触することを可能にするためにセンサが所在する窓をもたらすために緩んでいる。図示した実施形態は例示であり、開示した技術において考えられている保護構造体の範囲を限定しない。他の保護構造体は開示した技術の範囲内であると考えられる。
【0040】
開示した技術の様々な態様および実施形態を説明した。図示および説明は例示に過ぎず、開示した技術の範囲を限定しない。図示はしないが、様々な実施形態は組み合わせ可能であり、開示した技術の範囲内に該当すると考えられる。さらに、特定の機能が特定の位置または装置にあるとして図示したが、この位置および装置は例示に過ぎず、様々な機能が図示とは異なって所在可能でありながら開示した技術の範囲内にあると考えることが可能である。
【0041】
以下の説明には、図1および特に携帯ディスプレーユニット104の電池116および消費電力管理ユニット122を参照する。開示した技術の一態様において、携帯ディスプレーユニット104は、所定期間または所定回数の使用に対して動作し、続いて処分されるように構成可能である。電池116および/または消費電力管理ユニット122はこれらの機能を実施可能であり、それにより、携帯ディスプレーユニット104は特定の期間または特定数の診断手順に対する使用の後に動作不能とすることが可能である。たとえそうであっても、携帯ディスプレーユニット104は、動作不能となる前に、まだ動作可能である間でも処分可能である。
【0042】
一実施形態において、所定の期間は一回の血管内診断手順の時間のおよその長さに相当していることが可能である。一実施形態において、所定の期間は3回の手順などの多数の診断手順の時間のおよその長さに対応していることが可能である。一実施形態において、所定の期間は12時間もしくは24時間または数日間とすることが可能である。開示した技術の一態様において、携帯ディスプレーユニット104は、所望の期間の最後に電池116が実質的に消耗するように、所望の期間に対して携帯ディスプレーユニット104に電力を供給するように構成された1つまたは複数の電池116を含むことが可能である。一実施形態において、1つまたは複数の電池116は再充電不能であり、そのため、携帯ディスプレーユニット104は電池116が消耗した後に処分される。一実施形態において、消費電力管理ユニット122は、表示画面114の電源が入った後に携帯ディスプレーユニット104の電源が切れることを防止することによって、携帯ディスプレーユニット104の動作時間を制御可能である。このような実施形態において、携帯ディスプレーユニット104は、電池116が消耗するか、または、実質的に消耗するまで継続して動作する。携帯ディスプレーユニット104は、携帯ディスプレーユニット104が未だに動作可能である間に、電池116が消耗する前に処分可能である。
【0043】
一実施形態において、携帯ディスプレーユニット104は実行された診断手順の数を追跡可能であり、特定の数の手順が実行された後に動作不能となるように構成可能である。一実施形態において、携帯ディスプレーユニット104は、携帯ディスプレーユニット104の電源が入れられ、および/または、切られた回数によって診断手順が実行された回数を追跡可能である。一実施形態において、携帯ディスプレーユニット104は、一回の診断手順を実行した後に動作不能となるように構成可能である。開示した技術の一態様において、消費電力管理ユニット122は、手順が特定の回数に達した後に携帯ディスプレーユニット104の電源が入れられることを防止可能である。電池116は再充電可能とすることが可能であり、携帯ディスプレーユニット104の電源および/または携帯ディスプレーユニット104の外部の電源によって再充電可能である。電池116が消耗していない場合でも、消費電力管理ユニット122は、電池116が携帯ディスプレーユニット104に電力を供給することを防止することによって携帯ディスプレーユニット104を動作不能にすることが可能である。
【0044】
図1および図7から11を引き続き参照して、血管内診断手順を説明する。患者の血管系内の1つまたは複数の狭窄の重症度の診断は、大動脈押出し圧力と比較した狭窄に遠位の血流力学的圧力の測定値に基づいて研究されている。大動脈押出し圧力に対する狭窄に遠位の圧力の比は、「血流予備量比」または「FFR」として知られている。FFRの値は狭窄の重症度を示し、臨床データはFFRの特定の範囲に対して有効であろう外科的処置のタイプについての指針を与えている。
【0045】
開示した技術は、本明細書で「前方押圧FFR」、「引き戻しFFR」、および、「同時FFR」と呼ぶものを含めて、FFRを算出する多くの方法を含む。これらのそれぞれは、携帯ディスプレーユニット104(図1)のメモリ/記憶装置118に保存したソフトウェアコードまたはマシンコードによって実行可能である。プロセッサ124はFFRを算出するためにソフトウェアコードを実行可能であり、結果として得た情報は表示画面114に表示可能である。それぞれの算出方法を説明する。
【0046】
同時血流予備量比
同時FFRは、別個の2つの圧力センサからの同時の圧力の読み、および、別個の2つの圧力センサからの圧力の読みを受信した時の実時間でのFFRの算出結果に関与している。図1および図9を参照すると、一方の圧力センサはモニタガイドワイヤ102内に所在し、患者の狭窄に遠位の圧力を測定するために使用する。圧力の読みは、モニタガイドワイヤ102の通信ユニット112によって携帯ディスプレーユニット104の通信ユニット120に通信可能である(902)。この通信は無線通信とすることが可能であり、または、例えば図3に示すコネクタを介した有線通信とすることが可能である。他方の圧力センサは大動脈押出し圧力を測定可能であり、図1の装置100の外部にある。携帯ディスプレーユニット104は、受信した圧力測定値を狭窄に遠位の圧力として指定可能である(904)。外部センサの読みは、例えば図3に示す通信ポートによって、携帯ディスプレーユニットの通信ユニット120に通信可能である(906)。携帯ディスプレーユニット104は受信した圧力測定値を狭窄に近位の圧力として指定可能である(908)。携帯ディスプレーユニット104は、圧力測定値を受信すると、式FFR=(Psensor−Pra)/(Pport−Pra)によって同時FFRを算出可能であり(910)、ここで、
portは通信ポートにおいて受信した実時間の圧力測定値の経時移動平均値であり、
sensorはモニタガイドワイヤのコアワイヤの遠位領域の圧力センサからの実時間の圧力測定値の経時移動平均値であり、
raは定数であり、ゼロまたは別の一定値とすることが可能である。
【0047】
一実施形態において、経時移動平均値は、1回の心拍にわたる時間枠に対する平均値を算出可能である。別の実施形態において、この時間枠は、1回の心拍より短く、または、1回の心拍よりも長くわたることが可能である。この枠は、移動平均値を算出するために、経時的に新しいセンサ測定値を受信するに従い(902、906)、より新しい測定値を含め、より古い測定値を取り除くことが可能である。
【0048】
携帯ディスプレーユニット104は圧力測定値を受信可能であり、受信した測定値に基づいて同時FFRを算出可能である。携帯ディスプレーユニット104は受信した圧力測定値および/または算出した同時FFRをメモリ/記憶装置118に保存可能であり、算出した同時FFRおよび/または受信した圧力測定値のグラフを表示画面114に表示可能である(912)。
【0049】
前方押圧血流予備量比
同時FFRとは対照的に、前方押圧FFRは外部の圧力測定値を受信しない。図1を引き続き参照すると、前方押圧FFRは、モニタガイドワイヤ102の遠位領域の圧力センサ108のみからの圧力測定値を使用して算出する。狭窄は、従来の血管造影法を使用して位置決定が可能であり、図8に示すように、モニタガイドワイヤは狭窄に近位の箇所まで患者に挿入可能である。圧力はこの位置でセンサ108によって測定可能であり、通信ユニット112によって携帯ディスプレーユニット104に通信可能である(1002)。携帯ディスプレーユニット104は、この位置での測定値を狭窄に近位の圧力としてメモリ/記憶装置118に保存可能である(1004)。次に、図7に示すように、モニタガイドワイヤ102は狭窄を通り過ぎて狭窄に遠位の箇所まで前方に押し進めることが可能である。圧力はこの位置でセンサ108によって測定可能であり、通信ユニット112によって携帯ディスプレーユニット104に通信可能である(1006)。携帯ディスプレーユニット104は、この位置において受信した圧力測定値を狭窄に遠位の圧力として指定可能である(1008)。プロセッサ124は、式FFR=(Psensor−Pra)/(Psaved−Pra)によって前方押圧FFRを算出可能であり(1010)、ここで、
savedは、狭窄に近位の記録した圧力測定値の経時移動平均値であり、
sensorは、狭窄に遠位の実時間の圧力測定値の経時移動平均値であり、
raは定数であり、ゼロまたは別の一定値とすることが可能である。
【0050】
経時移動平均値を算出する各態様は同時FFRに関連して上記に説明しており、それらの態様は前方押圧FFRにも同じく適用する。
【0051】
携帯ディスプレーユニット104は、算出した前方押圧FFRおよび/または受信して記録した圧力測定値のグラフを表示可能である(1012)。
【0052】
前方押圧FFRは狭窄が1つの場合に算出可能であり、狭窄が多数の場合にも算出可能である。いずれの場合でも、Psavedはすべての狭窄に近位の圧力測定値の経時移動平均値である。一実施形態において、Psavedは記録した圧力測定値に基づいて算出した経時移動平均値である。一実施形態において、Psavedは圧力測定値を受信する間に算出および記録した経時移動平均値であり、圧力測定値は記録してもしなくてもよい。例えば、狭窄が2つの場合、Psavedは第1および第2の狭窄の両方に近位の圧力測定値に基づいている。モニタガイドワイヤ圧力センサ108が第1と第2の狭窄との間に位置するように前方に押し進めた場合、Psensorは2つの狭窄の間の実時間の圧力測定値に基づいている。前方押圧FFRは、この位置において計算可能であり、表示画面114に表示可能である。モニタガイドワイヤ圧力センサ108を第1および第2の狭窄の両方に近位の位置まで前方に押し進めた場合、Psensorは2つの狭窄の両方に遠位の実時間の圧力測定値に基づいている。前方押圧FFRはこの位置で計算可能であり、表示画面114に表示可能である。前方押圧FFRは、モニタガイドワイヤ102を血管内腔内で1つまたは複数の狭窄を通り過ぎて前方に押し進める間のFFRの算出および表示を可能にする。前方押圧FFRの算出のために記録する必要のある唯一の測定値および/または移動平均値は、すべての狭窄に近位の圧力測定値および/またはその圧力測定値の移動平均値であり、これは最初に実行する。
【0053】
引き戻し血流予備量比
前方押圧FFRと同様に、引き戻しFFRは外部の圧力測定値を受信しない。むしろ、引き戻しFFRは、モニタガイドワイヤ102の遠位領域の圧力センサ108のみからの圧力測定値を使用して算出する。狭窄は、従来の血管造影法を使用して位置決定が可能であり、図7に示すように、モニタガイドワイヤは狭窄に遠位の箇所まで患者に挿入可能である。圧力はこの位置でセンサ108によって測定可能であり、通信ユニット112によって携帯ディスプレーユニット104に通信可能である(1102)。携帯ディスプレーユニット104は、この位置での測定値を狭窄に遠位の圧力としてメモリ/記憶装置118に保存可能である(1104)。次に、図8に示すように、モニタガイドワイヤ102は狭窄を通過して狭窄に近位の箇所まで引き戻すことが可能である。圧力はこの位置でセンサ108によって測定可能であり、通信ユニット112によって携帯ディスプレーユニット104に通信可能である(1106)。携帯ディスプレーユニット104は、この位置において受信した測定値を狭窄に近位の圧力として指定可能である(1108)。プロセッサ124は、式FFR=(Psaved−Pra)/(Psensor−Pra)によって引き戻しFFRを算出可能であり(1110)、ここで、
savedは、狭窄に遠位の記録した圧力測定値の経時移動平均値であり、
sensorは、狭窄に近位の実時間の圧力測定値の経時移動平均値であり、
raは定数であり、ゼロまたは別の一定値とすることが可能である。
【0054】
経時移動平均値を算出する各態様は同時FFRに関連して上記に説明しており、これらの態様は引き戻しFFRにも同様に適用する。
【0055】
携帯ディスプレーユニット104は、算出した引き戻しFFRおよび/または受信して記録した圧力測定値のグラフを表示可能である(1112)。
【0056】
引き戻しFFRは狭窄が1つの場合に算出可能であり、狭窄が多数の場合にも算出可能である。いずれの場合でも、Psensorはすべての狭窄に近位の実時間の圧力測定値の経時移動平均値であり、これらは採用した最終的な圧力測定値である。例えば、狭窄が2つの場合、先ずモニタガイドワイヤ圧力センサ108を第1および第2の狭窄の両方に遠位の位置に定置する。圧力はこの位置でセンサ108によって測定可能であり、通信ユニット112によって携帯ディスプレーユニット104に通信可能である。一実施形態において、Psaved_d1は記録した圧力測定値に基づいて後で算出した経時移動平均値である。一実施形態において、Psaved_d1は圧力測定値をこの位置で受信する間に算出および記録した経時移動平均値であり、圧力測定値は記録してもしなくてもよい。メモリ/記憶装置118は、この位置での圧力測定値および/またはその圧力測定値に基づいた算出した経時移動平均値を記録可能である。引き戻しFFRはまだ計算不可能である。なぜなら、すべての狭窄に近位の実時間の測定値が未だにないからである。次に、モニタガイドワイヤ102は、第1の狭窄を通過して第1と第2の狭窄との間の箇所まで引き戻すことが可能である。圧力はこの位置でセンサ108によって測定可能であり、通信ユニット112によって携帯ディスプレーユニット104に通信可能である。一実施形態において、Psaved_d2は、記録した圧力測定値に基づいて後で算出した経時移動平均値である。一実施形態において、Psaved_d1は、圧力測定値をこの位置で受信する間に算出および記録した経時移動平均値であり、圧力測定値は記録してもしなくてもよい。メモリ/記憶装置118は、この位置での圧力測定値および/またはその圧力測定値に基づいた算出した経時移動平均値を記録可能である。再び、引き戻しFFRはまだ計算不可能である。なぜなら、すべての狭窄に近位の実時間の測定値が未だにないからである。最後に、モニタガイドワイヤ102は、第2の狭窄を通過して第1と第2の狭窄の両方に近位の箇所まで引き戻すことが可能である。実時間の圧力はこの位置でセンサ108によって測定可能であり、通信ユニット112によって携帯ディスプレーユニット104に通信可能である。この位置にのみ、2つの引き戻しFFR、すなわち、FFR=(Psaved_d1−Pra)/(Psensor−Pra)およびFFR=(Psaved_d2−Pra)/(Psensor−Pra)を算出するための十分な測定値がある。そのため、引き戻しFFRは、モニタガイドワイヤを多数の狭窄を通過して引き戻す間にFFRを計算および表示することを可能にしない。
【0057】
血流予備量比に対する3つの算出を図7から11を参照して上記に説明した。開示した技術の一態様において、かつ、図1を参照すると、携帯ディスプレーユニット104は、3つの方法のいずれかを使用して血流予備量比を算出する能力を備えて構成されている。一実施形態において、携帯ディスプレーユニット104は、血流予備量比を算出する3つの方法の1つを自動的に使用するように構成可能である。一実施形態において、携帯ディスプレーユニット104は、条件が存在する場合に血流予備量比を算出する3つの方法の1つを自動的に選択するように構成可能であり、かつ、別の条件が存在する場合に血流予備量比を算出する3つの方法の別の1つを自動的に選択するように構成可能である。一実施形態において、携帯ディスプレーユニット104は、血流予備量比を算出する3つの方法の1つを使用者が手作業で選択することを許容するように構成可能である。
【0058】
開示した技術は圧力を測定し、血流予備量比(FFR)を計算する。FFRは中程度冠状動脈病変を治療するか否かを決定する際に支援するために臨床で実際に行われている計算である。従って、開示した技術の使用は中程度の病変について何をするかを決定する際に内科医を支援するものとなる。開示したFFRの等式は例示であり、開示した技術の範囲を限定しない。FFRを算出する他の方法も開示した技術の範囲内であると考えられる。
【0059】
本明細書に開示した図、実施形態、および、仕様は例示であり、開示した技術の趣旨および範囲を限定しない。1つあるいは複数の開示した実施形態もしくは仕様、または、1つあるいは複数の実施形態もしくは仕様の各部分の組み合わせは、開示した技術の範囲内であると考えられる。
【符号の説明】
【0060】
102・・・モニタガイドワイヤ、104・・・携帯ディスプレーユニット、106・・・コアワイヤ、108・・・センサ、110・・・保護構造体、112・・・通信ユニット、114・・・表示画面、116・・・電池、118・・・メモリ/記憶装置、120 通信ユニット、122・・・消費電力管理ユニット、124・・・プロセッサ。
【要約】
血管内診断の装置および方法を開示する。開示した技術の一態様において、血管内診断装置はモニタガイドワイヤおよびディスプレーユニットを含む。モニタガイドワイヤはコアワイヤおよびコアワイヤの遠位領域に配置したセンサを含む。ディスプレーユニットはプロセッサおよび表示画面を含み、モニタガイドワイヤから通信を受信可能である。ディスプレーユニットはモニタガイドワイヤから受信した通信に基づいてプロセッサを使用して算出を実行するように構成され、かつ、算出に基づいて表示画面に情報を表示するように構成されている。ディスプレーユニットは所定回数の使用の後または所定期間の使用の後に処分されるように構成可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
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図11