特許第5976985号(P5976985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5976985美白用外用剤、水溶性美白成分の皮膚浸透促進剤、及び、皮膚美白方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976985
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】美白用外用剤、水溶性美白成分の皮膚浸透促進剤、及び、皮膚美白方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/39 20060101AFI20160817BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20160817BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   A61K8/39
   A61K8/67
   A61Q19/02
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2008-164825(P2008-164825)
(22)【出願日】2008年6月24日
(65)【公開番号】特開2010-6715(P2010-6715A)
(43)【公開日】2010年1月14日
【審査請求日】2011年5月31日
【審判番号】不服2014-16233(P2014-16233/J1)
【審判請求日】2014年8月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】神保 和子
【合議体】
【審判長】 大熊 幸治
【審判官】 齊藤 光子
【審判官】 関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/136067(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/038724(WO,A1)
【文献】 Chanel、Chanel Precision Hydramax + Active − Active Moisture Fluid、MINTEL GNPD、2008年4月
【文献】 ウィルブライド(WILBRIDE) S−753 製品カタログ、2006年1月、p.1−7
【文献】 田村健夫、香粧品科学、1977年10月10日、p.70−71
【文献】 化粧品ハンドブック、日光ケミカルズ株式会社、1996年11月1日、p.599−609
【文献】 日本化粧品技術者会編、化粧品事典、丸善株式会社、2003年12月15日、p.532−533
【文献】 Krister Holmberg 他 原書編、辻井薫 他 監訳、翻訳 応用界面・コロイド化学ハンドブック、株式会社エヌ・ティー・エス、2006年1月31日、p.292−302
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)PEG/PPG/ポリブチレングリコール−8/5/3グリセリン、及び
(b)美白用外用剤の全重量を基準として0.1〜20重量%のアスコルビン酸又はその誘導体である少なくとも1つの水溶性美白成分
を含む美白用外用剤。
【請求項2】
化粧料又は皮膚外用剤である、請求項1記載の外用剤。
【請求項3】
PEG/PPG/ポリブチレングリコール−8/5/3グリセリンからなる、アスコルビン酸又はその誘導体である水溶性美白成分の皮膚浸透促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性美白成分の皮膚浸透性が改善された化粧料等の美白用外用剤、水溶性美白成分の皮膚浸透促進剤、及び、皮膚美白方法に関する。
【背景技術】
【0002】
優れた感触と保湿性を備え、洗浄後もうるおいを保つ保湿剤として、国際公開第2006/038724号パンフレットには、下記式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体が記載されている。
【0003】
【化1】
(式中、
Zは3〜9個の水酸基を有する化合物の水酸基を除いた残基を表し;
AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基を表し;
EOはオキシエチレン基を表し;
BOは炭素数4のオキシアルキレン基を表し;
aは3〜9を表し;
l、m及びnは、それぞれ、AO、EO及びBOの平均付加モル数であって、1≦l≦50、1≦m≦50及び0.5≦n≦5であり;
AOとEOとの重量比(AO/EO)は1/5〜5/1であり;
AO及びEOはランダム状又はブロック状に付加していてもよい)
【0004】
上記式(I)のアルキレンオキシド誘導体は、べたつき感がなく、さっぱりとした感触をもたらすので、各種の保湿用化粧料、特に化粧水の基剤として好適に使用することができる。例えば、特開2006−199665号公報には、上記式(I)に相当するアルキレンオキシド誘導体、及び、水溶性高分子化合物を必須に含み、保湿効果の持続性、肌荒れ改善効果、肌保護効果及び皺抑制効果に優れ、肌にハリ及び透明感を与え、肌をすべすべにし、並びに、優れた経時安定性を有するとされる化粧水が記載されている(なお、美白用化粧料については全く記載されていない)。
【特許文献1】国際公開第2006/038724号パンフレット
【特許文献2】特開2006−199665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、皮膚のしみ、そばかす等の色素沈着は、ホルモンの異常分泌、紫外線、炎症等によって、表皮色素細胞内のメラニン産生信号伝達回路が活性化して、メラニン産生主要酵素であるチロシナーゼの産生、活性発現が亢進した結果等により、メラニンが表皮に過剰に沈着するために生じる。
【0006】
このような色素沈着への対処手段として、従来より、アスコルビン酸、アスコルビン酸グルコシド等のアスコルビン酸誘導体、コウジ酸、エラグ酸、レゾルシン及びその誘導体、その他の美白成分が、皮膚に塗布される美白用化粧品等の有効成分として使用されている。
【0007】
これらの美白成分が美白効果を発揮するためにはメラニンの過剰な生成の原因である表皮色素細胞や、表皮色素細胞への刺激伝達経路等にできるだけ多量に当該美白成分が到達するべきであるが、そのためには、当該美白成分はまず皮膚表面の角質層を通過する必要がある。
【0008】
しかし、角質層は皮膚内部を外界から保護するために高いバリア性を有しており、美白成分によっては、角質層の迅速な通過が困難な場合がある。そこで、できるだけ多くの美白成分が迅速に角質層を通過できるようにすることが求められる。
【0009】
したがって、本発明の目的は、美白成分の皮膚浸透性が高く、多くの美白成分が角質層を迅速に通過でき、高い美白効果を発揮することのできる美白化粧料等の美白用外用剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、
(a)下記式(I):
【化2】
(式中、
Zは3〜9個の水酸基を有する化合物の水酸基を除いた残基を表し;
AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基を表し;
EOはオキシエチレン基を表し;
BOは炭素数4のオキシアルキレン基を表し;
aは3〜9を表し;
l、m及びnは、それぞれ、AO、EO及びBOの平均付加モル数であって、1≦l≦50、1≦m≦50及び0.5≦n≦5であり;
AOとEOとの重量比(AO/EO)は1/5〜5/1であり;
AO及びEOはランダム状又はブロック状に付加していてもよい)
で表される、少なくとも1つのアルキレンオキシド誘導体、及び
(b)少なくとも1つの水溶性美白成分
を含む美白用外用剤によって達成される。
【0011】
また、本発明の目的は、下記式(I):
【化3】
(式中、
Zは3〜9個の水酸基を有する化合物の水酸基を除いた残基を表し;
AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基を表し;
EOはオキシエチレン基を表し;
BOは炭素数4のオキシアルキレン基を表し;
aは3〜9を表し;
l、m及びnは、それぞれ、AO、EO及びBOの平均付加モル数であって、1≦l≦50、1≦m≦50及び0.5≦n≦5であり;
AOとEOとの重量比(AO/EO)は1/5〜5/1であり;
AO及びEOはランダム状又はブロック状に付加していてもよい)
で表される、少なくとも1つのアルキレンオキシド誘導体からなる、水溶性美白成分の皮膚浸透促進剤によっても達成できる。
【0012】
上記式(I)において、AOとEOはランダム状に付加していてもよく、また、AOはオキシプロピレン基であることが好ましい。更に、上記式(I)において、3〜9個の水酸基を有する前記化合物はグリセリンであることが好ましい。
【0013】
前記水溶性美白成分は、アスコルビン酸又はその誘導体であることが好ましい。
【0014】
本発明の外用剤は化粧料(化粧品組成物)又は皮膚外用剤でありうる。
【0015】
また、本発明は、上記の美白用外用剤を皮膚に塗布することを含む、皮膚美白方法にも関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上記式(I)のアルキレンオキシド誘導体が水溶性美白成分の角質層浸透性を改善するので、当該水溶性美白成分の皮膚浸透性が促進される。したがって、本発明によれば、多くの水溶性美白成分を皮膚内に送達することができるので、高い美白効果を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、特定の構造を有するアルキレンオキシド誘導体が水溶性美白成分の皮膚浸透性を促進するという新規な知見に基づく。したがって、本発明の美白用外用剤は前記アルキレンオキシド誘導体及び前記水溶性美白成分を必須に含み、また、本発明の水溶性美白成分の皮膚浸透促進剤は前記アルキレンオキシド誘導体を必須に含む。
【0018】
本発明で使用されるアルキレンオキシド誘導体は、下記式(I):
【化4】
(式中、
Zは3〜9個の水酸基を有する化合物の水酸基を除いた残基を表し;
AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基を表し;
EOはオキシエチレン基を表し;
BOは炭素数4のオキシアルキレン基を表し;
aは3〜9を表し;
l、m及びnは、それぞれ、AO、EO及びBOの平均付加モル数であって、1≦l≦50、1≦m≦50及び0.5≦n≦5であり;
AOとEOとの重量比(AO/EO)は1/5〜5/1であり;
AO及びEOはランダム状又はブロック状に付加していてもよい)
で表される。上記のアルキレンオキシド誘導体は単一種類であってもよく、若しくは、複数種類の混合物であってもよい。
【0019】
式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体において、Zは3〜9個の水酸基を有する化合物の水酸基を除いた残基であり、aはZの化合物の水酸基の数であり3〜9である。3〜9個の水酸基を有する化合物として、例えば、a=3であればグリセリン、トリメチロールプロパン、a=4であれば、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ソルビタン、アルキルグリコシド、ジグリセリン、a=5であればキシリトール、a=6であればジペンタエリスリトール、ソルビトール、イノシトール、a=8であればショ糖、トレハロース、a=9であればマルチトール、及び、これらの混合物等が挙げられる。好ましくは、Zは3〜6個の水酸基を有する化合物の水酸基を除いた残基であり、3≦a≦6を満たす。3〜9個の水酸基を有する化合物としてはグリセリン、トリメチロールプロパンが好ましく、グリセリンが特に好ましい。なお、a≦2では、油脂などの油性成分との相溶性に劣り油性製剤への配合安定性が悪化する傾向がある。10≦aではべたつき感が生じる。
【0020】
AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基であり、例として、オキシプロピレン基、オキシブチレン基(オキシn−ブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシt−ブチレン基)、オキシトリメチレン基、オキシテトラメチレン基等が挙げられる。好ましくは、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、さらに好ましくはオキシプロピレン基である。
【0021】
lはAOの平均付加モル数であり、1≦l≦50、好ましくは2≦l≦20である。mはEOの平均付加モル数であり、1≦m≦50、好ましくは2≦m≦20である。lが0であるとべたつき感を生じてしまい、50を超えると保湿効果が低下してしまうので好ましくない。また、mが0であると保湿効果が低下してしまい、50を超えるとべたつき感が生じてしまうので好ましくない。
【0022】
AOとEOとの重量比(AO/EO)は1/5〜5/1であり、好ましくは1/4〜4/1である。1/5より小さいとべたつき感を生じてしまい、5/1より大きいと保湿感が低下してしまうので好ましくない。AOとEOの付加する順序は特に指定はなく、ブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよい。より優れた肌荒れ防止効果を得るためには、ランダム状に付加されているものが好ましい。
【0023】
BOは炭素数4のオキシアルキレン基であり、例としてはオキシブチレン基(オキシn−ブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシt−ブチレン基)、オキシテトラメチレン基等が挙げられる。好ましくはオキシブチレン基である。
【0024】
nはBOの平均付加モル数であり、0.5<n≦5であり、好ましくは0.8≦n≦3であり、より好ましくは1≦n≦3である。0.5以下であるとべたつき感が生じてしまい、5を超えると保湿感が低下してしまうので好ましくない。なお、式(I)において、(BO)は末端水素原子に結合していることが必要である。
【0025】
式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体は、公知の方法で製造することができる。例えば、3〜9個の水酸基を有している化合物にエチレンオキシドおよび炭素数3〜4のアルキレンオキシドを付加重合した後に、炭素数4のアルキレンオキシドを反応させることによって得られる。なお、3〜9個の水酸基を有している化合物にエチレンオキシドおよび炭素数3〜4のアルキレンオキシドを付加重合する段階においては、エチレンオキシドとアルキレンオキシドとをランダム重合してもよく、又は、ブロック重合してもよい。
【0026】
式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体のうち、好ましい前記アルキレンオキシド誘導体としては、例えば、下記式(II):
【化5】
(式中、
Glyはグリセリンから水酸基を除いた残基を表し;
POはオキシプロピレン基を表し;
EOはオキシエチレン基を表し;
sおよびtはそれぞれPOおよびEOの平均付加モル数であって、1〜50の値であり、
POとEOとの質量比(PO/EO)は1/5〜5/1であって、
BOは炭素数4のオキシアルキレン基を表し;
uはBOの平均付加モル数であって、0.5〜5の値である)
のアルキレンオキシド誘導体(ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセロール)が挙げられる。
【0027】
式(II)のアルキレンオキシド誘導体は、グリセリンにプロピレンオキシドおよびエチレンオキシドをそれぞれグリセリンに対して3〜150モル当量の割合で付加させた後に、炭素数4のアルキレンオキシドをグリセリンに対して1.5〜15モル当量の割合で付加させて得られる。
【0028】
グリセリンにこれらのアルキレンオキシドを付加させる場合、アルカリ触媒、相関移動触媒、ルイス酸触媒などを用いて付加反応を行う。一般的には、水酸化カリウムなどのアルカリ触媒を用いることが好ましい。
【0029】
式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体のうち、更に好ましいものは、グリセリンに6〜10モルのエチレンオキシド及び3〜7モルのプロピレンオキシドを付加させた後に、2〜4モルのブチレンオキシドを付加させたものである。
【0030】
式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体のうち、更により好ましいものは、グリセリンに8モルのエチレンオキシド及び5モルのプロピレンオキシドを付加させた後に、3モルのブチレンオキシドを付加させた、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセロールであり、INCI名でPEG/PPG/ポリブチレングリコール−8/5/3グリセリンと称される。PEG/PPG/ポリブチレングリコール−8/5/3グリセリンは、WILBRIDE S-753の名称で日本油脂株式会社より市販されている。
【0031】
本発明の美白用外用剤中への式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体の配合量は特には限定されないが、通常は、美白用外用剤の全重量を基準として、0.1〜30重量%であり、好ましくは5〜25重量%、より好ましくは10〜20重量%である。
【0032】
本発明の皮膚浸透促進剤中への式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体の配合量は特には限定されないが、通常は、皮膚浸透促進剤の全重量を基準として、10〜100重量%であり、好ましくは20〜100重量%、より好ましくは50〜100重量%である。本発明の皮膚浸透促進剤は、式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体のみからなる(100重量%)ことが好ましい。
【0033】
本発明の美白用外用剤に含まれる水溶性美白成分、並びに、本発明の皮膚浸透促進剤の促進対象となる水溶性美白成分は、水溶性である限り、任意の美白成分を使用することができる。ここで、「美白成分」とは、ヒトの皮膚を効果的に脱色及び/又は白くする成分を意味している。それは、特に、外的要因等による茶色の色素によるしみ又は老化等の内的要因によるしみを有するヒトの皮膚、或いは、紫外線照射後等のメラニン生成による茶色の着色の始まりに対抗しようとするヒトの皮膚に塗布される。水溶性美白成分は水溶性という共通の特性を有しており、類似の挙動を示す。水溶性美白成分は、単一種類のものを用いてもよく、2種類以上の混合物を使用してもよい。
【0034】
前記水溶性美白成分としては、例えば、アスコルビン酸又はその誘導体、コウジ酸又はその誘導体、トラネキサム酸又はその誘導体、レゾルシン又はその誘導体、アルコキシサリチル酸又はその塩、アデノシン一リン酸又はその塩、ハイドロキノン又はその配糖体並びにそれらの誘導体、グルタチオン、4−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノール、マグノリグナン(5,5’−ジプロピル−ビフェニル−2,2’−ジオール)、プラセンタエキス、カミツレエキス等が挙げられる。
【0035】
アスコルビン酸はD又はL体があり、L体が好適に使用される。アスコルビン酸はビタミンCとも称されており、その強い還元作用により、メラニン生成抑制作用を有する。アスコルビン酸の誘導体は、アスコルビン酸の塩であってもよく、アスコルビン酸の塩は、好ましくは、アスコルビン酸ナトリウム、リン酸アスコルビルマグネシウム、及び、リン酸アスコルビルナトリウムから選択される。アスコルビン酸の誘導体は、アスコルビン酸の配糖体又はアスコルビン酸のエステルであってもよく、例えば、アスコルビン酸の配糖体としてはアスコルビルグルコシドが挙げられる。アスコルビン酸のエステルとしては、例えば、アスコルビン酸のシリルエステル、アスコルビン酸のトコフェリルエステル、アスコルビン酸のアルキルエステルが挙げられる。アスコルビン酸のアルキルエステルとしては、好ましくは、アスコルビン酸メチルエステル、又は、アスコルビン酸エチルエステルが使用できる。特に、アスコルビルグルコシドが好ましい。アスコルビン酸又はその誘導体は1種又は2種以上を使用することができる。
【0036】
アスコルビン酸の誘導体としては、具体的には、例えば、Exsymol社よりPRO-AAの名称で市販の5,6−ジ−O−ジメチルシリルアスコルベート;千寿製薬(株)よりSEPIVITAL EPCの名称で市販のdl−α−トコフェリル−2−l−アスコルビルフォスフェート;Roche社よりStay-C50の名称で市販のリン酸アスコルビルナトリウム;(株)林原生物化学研究所より市販のアスコルビルグルコシド;3−O−エチルアスコルビン酸等が挙げられる。
【0037】
アスコルビン酸又はその誘導体は、無水マレイン酸及びスチレンのコポリマーと組み合わせて使用することが好ましい。特に、前記コポリマーの無水マレイン酸単位の少なくとも一部は加水分解されていることが好ましい。前記加水分解された無水マレイン酸単位は、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ塩の形態とされていてもよい。前記無水マレイン酸単位はコポリマー全体を1モルとした場合にその0.4〜0.9モルを占めることが好ましく、更に、無水マレイン酸単位とスチレン単位が50:50の比率であることが好ましい。特に、無水マレイン酸単位とスチレン単位が50:50で、且つ、アンモニウム塩又はナトリウム塩の形態にあることが好ましい。前記コポリマーと組み合わせて使用することにより、アスコルビン酸又はその誘導体の安定性が向上する。前記コポリマーとしては、例えば、Atofina社により品番SMA1000H(登録商標)として市販の、水中30%のアンモニウム塩の形態のスチレン/無水マレイン酸(50/50)のコポリマー、またはAtofina社により品番SMA1000HNa(登録商標)として市販の、水中40%のナトリウム塩の形態のスチレン/無水マレイン酸(50/50)コポリマーを使用することができる。前記コポリマーは、美白用外用剤の全重量に対して0.1乃至20重量%の濃度で、好ましくは0.1乃至10重量%の濃度で使用することが好ましい。
【0038】
コウジ酸の誘導体としては、例えば、コウジ酸グルコシドが挙げられる。
【0039】
トラネキサム酸の誘導体としては、トラネキサム酸の二量体(例えば、塩酸トランス−4−(トランス−アミノメチルシクロヘキサンカルボニル)アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸)、トラネキサム酸とハイドロキノンのエステル体(例えば、トランス−4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸4’−ヒドロキシフェニルエステル)、トラネキサム酸とゲンチシン酸のエステル体(例えば、2−(トランス−4−アミノメチルシクロヘキシルカルボニルオキシ)−5−ヒドロキシ安息香酸及びその塩)、トラネキサム酸のアミド体(例えば、トランス−4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸メチルアミド及びその塩、トランス−4−(P−メトキシベンゾイル)アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸及びその塩、トランス−4−グアニジノメチルシクロヘキサンカルボン酸及びその塩)などが挙げられる。
【0040】
レゾルシンの誘導体としては、例えば、4−n−ブチルレゾルシノール(ルシノール)等が挙げられる。
【0041】
アルコキシサリチル酸は、サリチル酸の3位、4位又は5位のいずれかの水素原子がアルコキシ基で置換されたものであり、当該アルコキシ基は、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基のいずれかであり、さらに好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。具体的に化合物名を例示すれば、3−メトキシサリチル酸、3−エトキシサリチル酸、4−メトキシサリチル酸、4−エトキシサリチル酸、4−プロポキシサリチル酸、4−イソプロポキシサリチル酸、4−ブトキシサリチル酸、5−メトキシサリチル酸、5−エトキシサリチル酸、5−プロポキシサリチル酸などが挙げられる。アルコキシサリチル酸の塩としては、特に限定はされないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩のほか、アンモニウム塩、アミノ酸塩等の塩が挙げられる。4−メトキシサリチル酸のカリウム塩が好ましい。
【0042】
アデノシン一リン酸又はその塩としては、例えば、アデノシン一リン酸二ナトリウム等が挙げられる。
【0043】
ハイドロキノンの配糖体としては、例えば、ハイドロキノンα−D−グルコース、ハイドロキノンβ−D−グルコース、ハイドロキノンα−L−グルコース、ハイドロキノンβ−L−グルコース、ハイドロキノンα−D−ガラクトース、ハイドロキノンβ−D−ガラクトース、ハイドロキノンα−L−ガラクトース、ハイドロキノンβ−L−ガラクトース等の六炭糖配糖体;ハイドロキノンα−D−リボース、ハイドロキノンβ−D−リボース、ハイドロキノンα−L−リボース、ハイドロキノンβ−L−リボース、ハイドロキノンα−D−アラビノース、ハイドロキノンβ−D−アラビノース、ハイドロキノンα−L−アラビノース、ハイドロキノンβ−L−アラビノース等の五炭糖配糖体;ハイドロキノンα−D−グルコサミン、ハイドロキノンβ−D−グルコサミン、ハイドロキノンα−L−グルコサミン、ハイドロキノンβ−L−グルコサミン、ハイドロキノンα−D−ガラクトサミン、ハイドロキノンβ−D−ガラクトサミン、ハイドロキノンα−L−ガラクトサミン、ハイドロキノンβ−L−ガラクトサミン等のアミノ糖配糖体;ハイドロキノンα−D−グルクロン酸、ハイドロキノンβ−D−グルクロン酸、ハイドロキノンα−L−グルクロン酸、ハイドロキノンβ−L−グルクロン酸、ハイドロキノンα−D−ガラクツロン酸、ハイドロキノンβ−D−ガラクツロン酸、ハイドロキノンα−L−ガラクツロン酸、ハイドロキノンβ−L−ガラクツロン酸等のウロン酸配糖体等が挙げられる。これらの中でも、ハイドロキノンβ−D−グルコース(以下、「アルブチン」という)が好ましい。ハイドロキノン又はその配糖体の誘導体としては、例えば、ハイドロキノン又はその配糖体の塩が挙げられる。特に、アルブチンの誘導体としては、例えば、6−O−カフェオイルアルブチン等が挙げられる。
【0044】
水溶性美白成分としては、特に、L−アスコルビン酸又はその誘導体、コウジ酸又はその誘導体、トラネキサム酸又はその誘導体、アルブチン又はその誘導体、ルシノールが好ましく、L−アスコルビン酸グルコシド等のアスコルビン酸配糖体が更に好ましい。
【0045】
本発明の美白用外用剤中への水溶性美白成分の配合量は特には限定されないが、通常は、美白用外用剤の全重量を基準として、0.1〜20重量%であり、好ましくは0.5〜15重量%、より好ましくは1〜10重量%である。
【0046】
本発明の美白用外用剤及び水溶性美白成分の皮膚浸透促進剤は、水溶性高分子化合物を含んでもよく、また、含まなくてもよい。ここでの水溶性高分子は、植物、微生物、動物などに由来する天然高分子化合物(多糖類、たんぱく質など)、半合成高分子化合物(セルロース系、デンプン系、アルギン酸系など)および合成高分子化合物(アクリル系、ビニル系など)に分類される。さらに、電気的性質により陰イオン性、陽イオン性、両性および非イオン性に分けられる。これらの水溶性高分子化合物は、レオロジー的性質の改善(増粘作用など)、界面活性作用、皮膜形成作用、保湿作用、包接作用など多岐にわたる機能を有している。天然高分子化合物としては、例えば、アラビアガム、カラーギナン、グアガム、ローストビーンガム、ペクチン、トラガント、デンプン、キサンタンガム、デキストリン、フルクタン、プルラン、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウムなどの多糖類、ゼラチン、カゼインなどのたんぱく質などが挙げられる。セルロース系の半合成高分子化合物としては、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、カチオン化セルロースなどが挙げられる。アルギン酸系の半合成高分子化合物としては、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールなどが挙げられる。アクリル系の合成高分子化合物としては、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸アミド、アクリルアミド/アクリル酸共重合体などが挙げられる。ビニル系の合成高分子化合物としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。その他ポリエチレングリコール、ポリグリセリン、カチオン化グアガム、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンなどが挙げられる。さらに、これらの高分子化合物の誘導体、あるいはこれらの高分子化合物と適切なモノマーとの共重合体で、水溶性のものなどが挙げられる。これらの化合物の中で、肌保護効果、肌にはり、透明感およびすべすべ感を与える効果を考慮すると、多糖類化合物、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンおよびポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと他のモノマーとの共重合体が好ましい。
【0047】
本発明の美白用外用剤及び水溶性美白成分の皮膚浸透促進剤が、水溶性高分子化合物を含む場合はその配合量は0.1重量%〜3重量%、0.2重量%〜2重量%、0.3重量%〜1重量%がより好ましい。
【0048】
本発明の美白用外用剤及び水溶性美白成分の皮膚浸透促進剤は、水性媒体を更に含むことができる。水性媒体としては、水、又は、常温(25℃)において水と混和性の有機溶媒(水混和性有機溶媒)及び水との混合物を使用することができる。
【0049】
水は、ヤグルマギクの水等の芳香蒸留水、及び/又は、ヴィテル(Vittel)の水、ルーカス(Lucas) の水、ラ ロシェ ポセイ(La Roche Posay)の水等のミネラルウォーター、及び/又は、温泉水、及び/又は、海洋深層水等の海水であってもよい。
【0050】
本発明の美白用外用剤は、美白用外用剤の全重量に対して、50〜99.5重量%の範囲、好ましくは60〜99重量%の範囲、更に好ましくは70〜95重量%の範囲で水を含むことができる。
【0051】
本発明の水溶性美白成分の皮膚浸透促進剤は、皮膚浸透促進剤の全重量に対して、0.1〜30重量%の範囲、好ましくは1〜20重量%の範囲、更に好ましくは2〜10重量%の範囲で水を含むことができる。
【0052】
常温(25℃)において水と混和性の有機溶媒としては、例えば、以下のものが挙げられる。
エタノール、イソプロパノール等の2〜6の炭素原子を有するモノアルコール類;
2〜20の炭素原子、好ましくは、2〜10の炭素原子、より好ましくは2〜6の炭素原子を有するポリオール類、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、及びジエチレングリコール;
グリコールエーテル類(特に、3〜16の炭素原子を有するもの)、(例えば、モノ−、ジ−、トリプロピレングリコールの(C1-C4)アルキルエーテル類、及び、モノ−、ジ−、トリエチレングリコールの(C1-C4)アルキルエーテル類);並びに
これらの混合物。
【0053】
本発明の美白用外用剤は、前記水混和性有機溶媒を、美白用外用剤の全重量に対して、0.1〜30重量%、好ましくは5〜25重量%、より好ましくは10〜20重量%含んでもよい。
【0054】
本発明の水溶性美白成分の皮膚浸透促進剤は、前記水混和性有機溶媒を、皮膚浸透促進剤の全重量に対して、0.1〜30重量%の範囲、好ましくは1〜20重量%の範囲、更に好ましくは2〜10重量%の範囲で含んでもよい。
【0055】
更に、本発明の美白用外用剤は香料及び/又はビタミンE若しくはその誘導体を含んでもよい。
【0056】
香料としては、天然又は合成のフレグランス及びアロマ、及びそれらの混合物を使用することができる。 本発明の好ましい実施態様によれば、各種の香料をブレンドして用いることができ、それにより、総じて消費者に好まれる香りを生み出すことができる。
【0057】
本発明の美白用外用剤への香料の配合量は特には限定されないが、通常は、美白用外用剤の全重量を基準として、0.01〜1重量%であり、好ましくは0.01〜0.5重量%、より好ましくは0.01〜0.3重量%である。
【0058】
ビタミンEの誘導体としては、特に限定されるものではないが、例えば、酢酸トコフェロール等が挙げられる。
【0059】
本発明の美白外用剤へのビタミンE若しくはその誘導体の配合量は特には限定されないが、美白外用剤の全重量を基準として、0.01〜5重量%が好ましい。
【0060】
本発明の美白外用剤は、美白(whitening)のためにヒトの身体表面に塗布される局所用(topical)組成物であり、好ましくは、化粧料又は皮膚外用剤である。ここで、皮膚外用剤とは皮膚上に塗布されるべきものであり、皮膚科用医薬品又は医薬部外品の両方に相当しうるものである。ここでの「美白」とは、メラニンの生成・沈着を阻害するあらゆる作用を意味しており、例えば、メラニンの生成を抑制したり、生成したメラニンを還元することを含む。
【0061】
化粧料の形態は、特に限定されるものではなく、油中水型の乳化化粧料、水中油型の乳化化粧料、水性ゲル、水性溶液、多重エマルジョン等の任意の形態をとることができる。また、化粧料は、皮膚化粧料、頭髪化粧料のいずれでもよいが皮膚化粧料が好ましい。本発明の美白用外用剤は特に化粧水又は美容液として好適である。
【0062】
本発明の美白用外用剤が化粧水の場合は、当該化粧水は透明又はその外観が均一であることが好ましい。ここで、「透明」とは、屈折または反射による偏向を引き起こさずに光を通過させることを意味する。化粧水の如き組成物の透明性は濁度計を用いて測定できる。Hach社の携帯用濁度計モデル2100P(登録商標)を、例えば組成物の透明限度を測定するために使用することができる。測定された濁度が0から250NTUの間である場合に組成物が透明であると見なされる。
【0063】
本発明の美白用外用剤は、上記の成分の他に、外用剤、例えば、化粧料に通常使用される成分、具体的には、酸、塩基、塩類、色素、酸化防止剤、紫外線吸収剤、血行促進剤、金属キレート剤、皮脂抑制剤、粉体、収斂剤、皮膚柔軟剤、保湿剤、界面活性剤、油、有機溶媒、シリコーン、シリコーン誘導体、動植物由来の天然エキス、ロウ類等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択して用いることができる。
【0064】
本発明の美白外用剤、特に化粧料は、皮膚に塗布する工程を含む美容処理方法において使用される。したがって、前記美容処理方法は皮膚美白方法でもある。この方法は、特に、外的要因等による茶色の色素によるしみ及び/又は老化等の内的要因によるしみを除去するために、及び/又は、茶色の皮膚を白くするために好適である。
【0065】
本発明の水溶性美白成分の皮膚浸透促進剤は、それ単独で製品として流通可能なものであり、水溶性美白成分と組み合わせて使用される。例えば、本発明の水溶性美白成分の皮膚浸透促進剤は、所定の態様でパッケージされて水溶性美白成分の皮膚浸透促進剤のラベルを付して市場で流通される。したがって、本発明の水溶性美白成分の皮膚浸透促進剤は、例えば、水溶性美白成分を含む既存の美白用化粧料に添加して、当該化粧料の美白効果を高めるために使用することができる。
【0066】
したがって、本発明の皮膚浸透促進剤は、上記式(I)で表される、少なくとも1つのアルキレンオキシド誘導体を、水溶性美白成分を含む美白用外用剤に配合することを特徴とする、当該美白用外用剤の美白性増強方法の実施に好適に使用することができる。換言すれば、前記方法は、前記美白用外用剤の美白性増強のための、上記式(I)で表される少なくとも1つのアルキレンオキシド誘導体の使用、に特徴を有する。
【0067】
また、本発明の皮膚浸透促進剤は、上記式(I)で表される、少なくとも1つのアルキレンオキシド誘導体を、水溶性美白成分と併用することを特徴とする、当該水溶性美白成分の皮膚浸透促進方法の実施にも好適に使用することができる。換言すれば、前記方法は、前記水溶性美白成分の皮膚浸透促進のための、上記式(I)で表される少なくとも1つのアルキレンオキシド誘導体の使用、に特徴を有する。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本発明をより詳細に例証するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0069】
[実施例1及び比較例1]
以下の表1に示す成分からなる実施例1及び比較例1の外用剤を以下の方法により調製した。
【表1】
PEG/PPG/ホ゜リフ゛チレンク゛リコール-8/5/3 ク゛リセリン(ホ゜リオキシフ゛チレンホ゜リオキシエチレンホ゜リオキシフ゜ロヒ゜レンク゛リセロール):
WILBRIDE S-753(日本油脂(株))
【0070】
(1)相Bの水の一部をとり、均一となるまで撹拌して、アスコルビルグルコシドを溶解させる。
(2)相Bの水の残りにクエン酸ナトリウム及びクエン酸を溶解させ、(1)で得られたアスコルビルグルコシド水溶液に添加する。次に、水酸化カリウムを加え、均一となるまで撹拌する。
(3)相Aの成分を混合し、75℃に加熱して、均一となるまで撹拌し、その後、室温まで冷却する。
(4)(3)で得られた相Aに(2)で得られた混合液を添加して撹拌する。
(5)更に相Cを添加して撹拌する。
【0071】
[皮膚浸透促進性評価]
実施例1及び比較例1の外用剤におけるアスコルビルグルコシドの皮膚浸透性を以下のようにして評価した。結果を表2に示す。
【0072】
(1)17人の被験者の前腕のいずれか一方に実施例1の外用剤を、他方に比較例1の外用剤を塗布する。実施例1及び比較例1の外用剤が左右のいずれの腕に塗布されるかはランダムとする。
(2)3時間後、左右の腕の皮膚表面を5回テープストリッピング(面積4cm)して、角質層サンプルとする。
(3)LCUV&LC−Fluo装置を使用して、各サンプル中のアスコルビルグルコシドの存在量を測定する。また、各サンプル中のトリプトファンの存在量を同様にして別途測定し、トリプトファン存在量に対するアスコルビルグルコシドの存在量の比を算出する。
(4)テープストリッピング5回分の角質層サンプルの平均値を算出する。
【0073】
【表2】
【0074】
表2の結果から、実施例1の方が比較例1よりも皮膚表面の角質層に残存するアスコルビルグルコシド量が少ないことが分かる。これは、比較例1よりも実施例1に含まれていたアスコルビルグルコシドの方が皮膚の角質層をより多く透過したことを示す。
【0075】
角質層サンプルの単位面積(cm)当たりでは、実施例1の方が比較例1よりもアスコルビルグルコシドが平均26%減少した。この差は、ウィルコクソンのノンパラメトリックテスト法による統計処理では、5%未満で有意であった。
【0076】
一方、皮膚角質層にもともと存在するNMF(天然保湿因子)の1つであるトリプトファン量に対してアスコルビルグルコシド量を正規化した場合は、より高精度の結果を得ることができるが、この場合についても、実施例1の方が比較例1よりもアスコルビルグルコシドが平均37%減少した。この差は、ウィルコクソンのノンパラメトリックテスト法による統計処理では、5%未満で有意であった。