特許第5976986号(P5976986)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5976986-調節可能な融合プロモーター 図000019
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976986
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】調節可能な融合プロモーター
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20160817BHJP
   A01H 5/00 20060101ALI20160817BHJP
   A01K 67/027 20060101ALI20160817BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20160817BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20160817BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20160817BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20160817BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20160817BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20160817BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20160817BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20160817BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20160817BHJP
   C12Q 1/68 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   A01H5/00 A
   A01K67/027
   A61K31/7088
   A61K31/7105
   A61K35/76
   A61K48/00
   A61P25/00
   A61P31/04
   A61P35/00
   C12N1/15
   C12N5/10
   C12Q1/68 A
【請求項の数】81
【全頁数】60
(21)【出願番号】特願2008-533689(P2008-533689)
(86)(22)【出願日】2006年9月29日
(65)【公表番号】特表2009-509544(P2009-509544A)
(43)【公表日】2009年3月12日
(86)【国際出願番号】US2006038154
(87)【国際公開番号】WO2007041350
(87)【国際公開日】20070412
【審査請求日】2009年9月28日
【審判番号】不服2013-21518(P2013-21518/J1)
【審判請求日】2013年11月5日
(31)【優先権主張番号】60/722,568
(32)【優先日】2005年10月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508099173
【氏名又は名称】スタウト, チャールズ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(72)【発明者】
【氏名】スタウト, チャールズ
【合議体】
【審判長】 中島 庸子
【審判官】 山崎 利直
【審判官】 長井 啓子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/130184(US,A1)
【文献】 特表2005−512596(JP,A)
【文献】 Nucleic Acids Res.,1998年,Vol.26,No.2,p.616−622
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C12N15/00-90
MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Pol III依存性プロモーター/Pol II依存性プロモーターの融合プロモーターを含む核酸構築物であって、前記融合プロモーターが、
(a) Pol II依存性プロモーターの、基本プロモーターエレメント以外の調節領域からなるシス活性調節領域と、(b) TATAボックス領域および近位配列エレメント(proximal sequence element:PSE)を含むPol III依存性プロモーターの基本プロモーターエレメントからなり
前記(a)が前記(b)に作動可能に連結されており、前記融合プロモーターの前記シス活性調節領域が前記構築物由来の発の特異的調節を提供する、核酸構築物。
【請求項2】
前記(a)が細胞特異的調節を提供する、請求項1に記載の構築物。
【請求項3】
前記構築物が、前記融合プロモーターに作動可能に連結されたshRNAをコードする配列をさらに含む、請求項1に記載の構築物。
【請求項4】
前記構築物が、前記融合プロモーターに作動可能に連結されたsiRNAの2つの鎖をコードする配列をさらに含む、請求項1に記載の構築物。
【請求項5】
前記(b)U6基本プロモーター、H1基本プロモーター、又はtRNA基本プロモーターである、請求項1に記載の構築物。
【請求項6】
前記(b)が、Pol II依存性プロモーターの基本プロモーターが当初結合されていた位置において、前記(a)に結合される、請求項1に記載の構築物。
【請求項7】
前記(b)が、Pol II依存性プロモーターの基本プロモーターの点変異体であり、Pol IIの代わりにPol IIIに優先的に結合する、請求項1に記載の構築物。
【請求項8】
前記(a)が、CMV初期中間調節領域を含む、請求項1に記載の構築物。
【請求項9】
前記(a)が、完全なPol II調節領域から基本プロモーターを欠いたものを含む、請求項1に記載の構築物。
【請求項10】
疾患関連遺伝子のmRNAをターゲティングするRNAi作用因子をコードする配列をさらに含む、請求項1に記載の構築物。
【請求項11】
Pol III依存性プロモーター/Pol II依存性プロモーターの融合プロモーターを含むベクターであって、前記融合プロモーターが、
(a) Pol II依存性プロモーターの、基本プロモーターエレメント以外の調節領域からなるシス活性調節領域と、(b) TATAボックス領域および近位配列エレメント(proximal sequence element:PSE)を含むPol III依存性プロモーターの基本プロモーターエレメントとからなり
前記(a)が前記(b)に作動可能に連結されており、前記融合プロモーターの前記シス活性調節領域が前記構築物由来の発の特異的調節を提供する、ベクター。
【請求項12】
前記融合プロモーターに作動可能に連結されたRNAi作用因子をコードする領域をさらに含む、請求項11に記載のベクター。
【請求項13】
前記RNAi作用因子がsiRNAである、請求項12に記載のベクター。
【請求項14】
前記RNAi作用因子がshRNAである、請求項12に記載のベクター。
【請求項15】
前記ベクターがプラスミドである、請求項11に記載のベクター。
【請求項16】
前記ベクターがウイルスベースのベクターである、請求項11に記載のベクター。
【請求項17】
前記ベクターが複製欠損性を示す、請求項11に記載のベクター。
【請求項18】
前記ベクターが複製能力を示す、請求項11に記載のベクター。
【請求項19】
コード配列に作動可能に連結されたPol III依存性プロモーター/Pol II依存性プロモーターの融合プロモーターを含む細胞であって、前記融合プロモーターが、
(a) Pol II依存性プロモーターの、基本プロモーターエレメント以外の調節領域からなるシス活性調節領域と、(b) TATAボックス領域および近位配列エレメント(proximal sequence element:PSE)を含むPol III依存性プロモーターの基本プロモーターエレメントとからなり
前記(a)が前記(b)に作動可能に連結されており、前記融合プロモーターの前記シス活性調節領域が前記構築物由来の発の特異的調節を提供する、細胞。
【請求項20】
前記コード配列がRNAi作用因子をコードする、請求項19に記載の細胞。
【請求項21】
前記RNAi作用因子がsiRNAである、請求項20に記載の細胞。
【請求項22】
前記RNAi作用因子がshRNAである、請求項20に記載の細胞。
【請求項23】
前記融合プロモーターおよび前記RNAi作用因子が1つのベクター中に存在する、請求項20に記載の細胞。
【請求項24】
前記ベクターがプラスミドである、請求項23に記載の細胞。
【請求項25】
前記ベクターがウイルスベクターである、請求項23に記載の細胞。
【請求項26】
前記細胞が細胞培養物中に存在する、請求項19に記載の細胞。
【請求項27】
前記細胞が動物細胞である、請求項26に記載の細胞。
【請求項28】
前記動物細胞がヒト細胞である、請求項27に記載の細胞。
【請求項29】
前記細胞が昆虫細胞である、請求項26に記載の細胞。
【請求項30】
前記細胞が植物細胞である、請求項26に記載の細胞。
【請求項31】
前記細胞が動物中に存在する、請求項19に記載の細胞。
【請求項32】
前記動物がヒトである、請求項31に記載の細胞。
【請求項33】
前記動物がウシである、請求項31に記載の細胞。
【請求項34】
前記動物がブタである、請求項31に記載の細胞。
【請求項35】
前記動物がヒツジである、請求項31に記載の細胞。
【請求項36】
前記動物がネコである、請求項31に記載の細胞。
【請求項37】
前記動物がイヌである、請求項31に記載の細胞。
【請求項38】
前記動物がトリである、請求項31に記載の細胞。
【請求項39】
前記細胞が植物中に存在する、請求項19に記載の細胞。
【請求項40】
前記細胞が真菌中に存在する、請求項19に記載の細胞。
【請求項41】
コード配列に作動可能に連結されたPol III依存性プロモーター/Pol II依存性プロモーターの融合プロモーターを含む遺伝子構築物を含む複数の細胞を含む非ヒトトランスジェニック生物であって、前記合プロモーターが、
(a) Pol II依存性プロモーターの、基本プロモーターエレメント以外の調節領域からなるシス活性調節領域と、(b) TATAボックス領域および近位配列エレメント(proximal sequence element:PSE)を含むPol III依存性プロモーターの基本プロモーターエレメントとからなり
前記(a)が前記(b)に作動可能に連結されており、前記融合プロモーターの前記シス活性調節領域が前記構築物由来の発の特異的調節を提供する、非ヒトトランスジェニック生物。
【請求項42】
前記コード配列がRNAi作用因子をコードする、請求項41に記載の生物。
【請求項43】
前記生物が動物である、請求項41に記載の生物。
【請求項44】
前記生物が植物である、請求項41に記載の生物。
【請求項45】
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の核酸構築物、および
使用説明書を含むキット。
【請求項46】
前記核酸構築物が単回使用形態で包装されている、請求項45に記載のキット。
【請求項47】
前記核酸構築物がベクター中に存在する、請求項45に記載のキット。
【請求項48】
前記核酸構築物が、前記合プロモーターに作動可能に連結されたコード配列をさらに含む、請求項45に記載のキット。
【請求項49】
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の核酸構築物であって、前記核酸構築物が、前記融合プロモーターに作動可能に連結されたshRNAまたはsiRNA配列をさらに含む核酸構築物、および
薬学的に許容可能な担体または賦形剤を含む薬学的組成物。
【請求項50】
前記組成物を注射用組成物として処方する、請求項49に記載の薬学的組成物。
【請求項51】
前記組成物を局所投与のために処方する、請求項49に記載の薬学的組成物。
【請求項52】
前記組成物をリポソーム組成物として処方する、請求項49に記載の薬学的組成物。
【請求項53】
前記組成物がウイルスベクターを含む、請求項49に記載の薬学的組成物。
【請求項54】
遺伝子構築物の作製方法であって、前記方法は、RNAi作用因子をコードする核酸配列をPol III依存性プロモーター/Pol II依存性プロモーターの融合プロモーターに作動可能に連結させる工程を含み、前記融合プロモーターが、
(a) Pol II依存性プロモーターの、基本プロモーターエレメント以外の調節領域からなるシス活性調節領域と、(b) TATAボックス領域および近位配列エレメント(proximal sequence element:PSE)を含むPol III依存性プロモーターの基本プロモーターエレメントとからなり
前記(a)が前記(b)に作動可能に連結されており、前記融合プロモーターの前記シス活性調節領域が前記構築物由来の発の特異的調節を提供する、方法。
【請求項55】
前記融合プロモーターが、RNAi作用因子をコードする前記核酸配列の細胞特異的発現を提供する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記RNAi作用因子がshRNAである、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記RNAi作用因子がsiRNAである、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
RNAi作用因子コード配列に作動可能に連結されたPol III依存性プロモーター/Pol II依存性プロモーターの融合プロモーターを含む遺伝子構築物を含む、細胞中にRNAi作用因子を発現させるための組成物であって、前記合プロモーターが、
(a) Pol II依存性プロモーターの、基本プロモーターエレメント以外の調節領域からなるシス活性調節領域と、(b) TATAボックス領域および近位配列エレメント(proximal sequence element:PSE)を含むPol III依存性プロモーターの基本プロモーターエレメントとからなり
前記(a)が前記(b)に作動可能に連結されており、前記融合プロモーターの前記シス活性調節領域が前記構築物由来の発の特異的調節を提供する、組成物。
【請求項59】
前記RNAi作用因子がshRNAである、請求項58に記載の組成物。
【請求項60】
前記RNAi作用因子がsiRNAである、請求項58に記載の組成物。
【請求項61】
遺伝子構築物を含むベクターを含む、細胞中の標的遺伝子の発現を阻害するための組成物であって、前記遺伝子構築物が、Pol III依存性プロモーター/Pol II依存性プロモーターの融合プロモーターを含み、前記融合プロモーターが、
(a) Pol II依存性プロモーターの、基本プロモーターエレメント以外の調節領域からなるシス活性調節領域と、(b) TATAボックス領域および近位配列エレメント(proximal sequence element:PSE)を含むPol III依存性プロモーターの基本プロモーターエレメントとからなり
前記(a)が前記(b)に作動可能に連結されており、前記融合プロモーターの前記シス活性調節領域が前記構築物由来の発の特異的調節を提供する、組成物。
【請求項62】
前記細胞が生物中に存在する、請求項61に記載の組成物。
【請求項63】
細胞中の遺伝子機能を分析する方法であって、前記方法は、
前記細胞中の遺伝子発現を阻害する工程であって、前記阻害がRNAi作用因子をコードする核酸配列に作動可能に連結されたPol III依存性プロモーター/Pol II依存性プロモーターの融合プロモーターを含む遺伝子構築物由来の前記RNAi作用因子の発現に起因する工程、および
前記阻害後に前記細胞における生物学的変化を決定する工程であって、前記生物学的変化が前記遺伝子の機能を示す工程を含み、前記融合プロモーターが
(a) Pol II依存性プロモーターの、基本プロモーターエレメント以外の調節領域からなるシス活性調節領域と、(b) TATAボックス領域および近位配列エレメント(proximal sequence element:PSE)を含むPol III依存性プロモーターの基本プロモーターエレメントとからなり
前記(a)が前記(b)に作動可能に連結されており、前記融合プロモーターの前記シス活性調節領域が前記構築物由来の発の特異的調節を提供する、方法。
【請求項64】
前記決定が、少なくとも1つの生物学的特徴を前記細胞の発現が阻害されないコントロール細胞と比較する工程を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記細胞を、前記遺伝子構築物を含むベクターでトランスフェクトする工程をさらに含む、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記ベクターがウイルスベクターである、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記ベクターがプラスミドである、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
標的遺伝子を治療標的として実証する方法であって、前記方法が、
細胞培養物中の細胞における推定治療標的遺伝子の発現を阻害する工程であって、前記阻害がRNAi作用因子をコードする核酸配列に作動可能に連結されたPol III依存性プロモーター/Pol II依存性プロモーターの融合プロモーターを含む遺伝子構築物由来の前記RNAi作用因子の発現に起因する工程、および
前記阻害後の前記細胞における生物学的変化が治療効果と対応するかどうかを決定する工程であって、前記生物学的変化の前記治療効果との対応は前記遺伝子が治療標的遺伝子であることを示す工程を含み、前記融合プロモーターが
(a) Pol II依存性プロモーターの、基本プロモーターエレメント以外の調節領域からなるシス活性調節領域と、(b) TATAボックス領域および近位配列エレメント(proximal sequence element:PSE)を含むPol III依存性プロモーターの基本プロモーターエレメントとからなり
前記(a)が前記(b)に作動可能に連結されており、前記融合プロモーターの前記シス活性調節領域が前記構築物由来の発の特異的調節を提供する、方法。
【請求項69】
小分子試験化合物の生物学的効果の正のコントロールを得る方法であって、前記方法が、
第1細胞を試験化合物と接触させる工程と、
RNAi作用因子をコードする配列に作動可能に連結された、発現の特異的調節を提供するPol III依存性プロモーター/Pol II依存性プロモーターの融合プロモーターを含む遺伝子構築物由来の前記RNAi作用因子の発現を使用して比較細胞中の標的遺伝子を阻害する工程、および
前記第1細胞中の前記試験化合物の効果を、前記比較細胞中の前記標的遺伝子の阻害効果と比較する工程を含むとともに、前記融合プロモーターが
(a) Pol II依存性プロモーターの、基本プロモーターエレメント以外の調節領域からなるシス活性調節領域と、(b) TATAボックス領域および近位配列エレメント(proximal sequence element:PSE)を含むPol III依存性プロモーターの基本プロモーターエレメントとからなり
前記(a)が前記(b)に作動可能に連結されており、前記融合プロモーターの前記シス活性調節領域が前記構築物由来の発の特異的調節を提供する、方法。
【請求項70】
前記試験化合物を、前記標的遺伝子に対して活性であるように予め選択する、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記比較工程は、前記試験化合物が前記阻害効果に付加的な効果を有するかどうかを決定する工程を含む、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
標的遺伝子の阻害が有益な効果を提供する疾患または病態を治療するための組成物であって、
RNAi作用因子をコードする核酸配列に作動可能に連結された、発現を特異的に調節するPol III依存性プロモーター/Pol II依存性プロモーターの融合プロモーターを含む遺伝子構築物を含むベクターを含み、前記融合プロモーターが、
(a) Pol II依存性プロモーターの、基本プロモーターエレメント以外の調節領域からなるシス活性調節領域と、(b) TATAボックス領域および近位配列エレメント(proximal sequence element:PSE)を含むPol III依存性プロモーターの基本プロモーターエレメントとからなり
前記(a)が前記(b)に作動可能に連結されており、前記融合プロモーターの前記シス活性調節領域が前記構築物由来の発の特異的調節を提供する、組成物。
【請求項73】
前記ベクターがプラスミドである、請求項72に記載の組成物。
【請求項74】
前記ベクターがウイルスベクターである、請求項72に記載の組成物。
【請求項75】
前記RNAi作用因子がshRNAである、請求項72に記載の組成物。
【請求項76】
前記RNAi作用因子がsiRNAである、請求項72に記載の組成物。
【請求項77】
標的遺伝子の阻害によって有益な効果を提供する疾患または病態の治療薬の調製における、RNAi作用因子をコードする配列に作動可能に連結された、発現の特異的調節を提供するPol III依存性プロモーター/Pol II依存性プロモーターの融合プロモーターを含む遺伝子構築物を含むベクターの使用であって、前記融合プロモーターが、
(a) Pol II依存性プロモーターの、基本プロモーターエレメント以外の調節領域からなるシス活性調節領域と、(b) TATAボックス領域および近位配列エレメント(proximal sequence element:PSE)を含むPol III依存性プロモーターの基本プロモーターエレメントとからなり
前記(a)が前記(b)に作動可能に連結されており、前記融合プロモーターの前記シス活性調節領域が前記構築物由来の発の特異的調節を提供する、使用。
【請求項78】
前記ベクターがウイルスベクターである、請求項77に記載の使用。
【請求項79】
前記ベクターがプラスミドである、請求項77に記載の使用。
【請求項80】
前記RNAi作用因子がshRNAである、請求項77に記載の使用。
【請求項81】
前記RNAi作用因子がsiRNAである、請求項77に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、以前に出願された仮出願である米国特許出願第60/722,568号(2005年10月1日出願)の優先権を主張し、この米国出願の内容は、本明細書中でその全体が参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、コード配列の転写をターゲティングおよび/または調節するため、特に、RNA干渉(RNAi)、ミクロRNA(miRNA)、アプタマー、短い干渉RNA(siRNA)、および/または短いヘアピンRNA(shRNA)のRNA配列を発現するためのRNAポリメラーゼプロモーターに関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
以下の考察は、読み手の理解を補助することのみを目的として提供し、考察した情報または引用した文献のいずれも本発明に対する先行技術を構成すると認めない。
【0004】
約18〜30塩基対の短いRNA二重鎖は、遺伝子発現のいくつかの配列特異的調節型を開始させることが示されている。1つの調節型(すなわち、RNA干渉(RNAi))では、これらの短いRNA二重鎖によって、広範な真核細胞(哺乳動物細胞が含まれる)でmRNAの配列選択的分解をもたらす。RNAiの1つの実施形態では、小さな干渉RNA(siRNA)は、約21ヌクレオチド(nt)長であり、これらが19塩基対のステムおよび2ntの3’突出末端を有するように対合し、真核細胞に導入される場合、これらにより、ターゲティングされたmRNAの配列選択的分解および遺伝子抑制をもたらす(非特許文献1;非特許文献2)。RNAiの別の実施形態では、真核細胞に送達されたDNA構築物のインビボ転写を利用して、1)酵素的にプロセシングされて短いdsRNAが得られる長いdsRNA、2)小さいヘアピンRNA(shRNA)、または3)インビボでハイブリッド形成してsiRNAを形成することができる個別の短い相補鎖を導入する。上記方法のいずれかによって送達された短いdsRNA二重鎖は、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)中の1つの鎖の組み込みによって媒介される標的RNAの分解を誘発する。30塩基対より長い二本鎖RNAがインターフェロン応答を活性化し、非特異的翻訳阻止およびアポトーシスを生じさせることができることが認められている。
【0005】
短いRNA二重鎖による遺伝子発現の別の調節型は、約21〜23ntの小さなRNAにプロセシングされる約24〜30塩基対長の短いdsRNAヘアピンループをコードする遺伝子クラスを含む。ミクロRNA(miRNA)と呼ばれるこれらの短いRNA二重鎖は、標的mRNA認識の誘導に必要なアルゴノートタンパク質との会合によってsiRNAと同一の経路で機能する。mRNAは、植物においては相補標的mRNAを切断するが、動物ではmRNA切断よりもむしろmRNA翻訳を抑制するようである。
【0006】
アプタマーまたはイントラマー(intramer)と呼ばれる機能的な短いRNAの別のカテゴリーは、種々の標的(タンパク質および小分子の両方が含まれる)に対して高い親和性および選択性を示す23〜400ヌクレオチド長のRNAである。標的タンパク質または分子へのアプタマーの結合により、分子機能を遮断するか、そうでなければ調整することができる。リボスイッチは、遺伝子調節に関与する天然のRNAアプタマーである。
【0007】
siRNA、shRNA、RNAi、RNAアプタマー(例えば、リボスイッチ)、およびmiRNA(この文書を通して、短いRNAと呼ぶ)を、古典的な遺伝子移入法(その適用前にsiRNAの化学的または酵素的合成が必要なリポソーム媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、カルシウムショック、流体力学的ショック、または微量注入など)によって細胞に導入することができる。これらを、プラスミドDNA、組み込んだ導入遺伝子の遺伝子座、またはレトロウイルス、レンチウイルス、もしくはアデノウイルスの構築物からの転写によって細胞内に生成することもできる。小さなRNA分子の細胞内転写は、siRNAテンプレートを通常は小さな核RNAU6またはヒトRnアーゼP RNAH1をコードするRNAポリメラーゼIII(polIII)転写単位にクローニングすることによって可能である。
【0008】
典型的には、shRNAは、ベクター(例えば、プラスミドベクターまたはウイルスベクター)から合成される。一般に、かかる合成は、III型RNAポリメラーゼ(polIII)プロモーターによって駆動される。polIIIプロモーターは、一般に、遍在する。一般に使用されるpolIIIプロモーターは、U6プロモーター(強力構成性プロモーター)である。一般に、polIIIは、5’末端がキャッピングされておらず、3’末端がポリアデニル化されていない小さなU6核RNA(snRNA)などの小さな非コード転写物を産生する。polIIIプロモーターエレメントは、開始部位に対して5’に位置する遠位配列エレメント(DSE)、近位配列エレメント(PSE)、およびTATAボックスを含む。さらに、polIIIプロモーターによって駆動される転写は、確定したヌクレオチドで開始され、転写が4つまたはそれを超える連続したTに遭遇した場合に終結し、得られた転写物は4つのU(末端配列)のうちの1つの3’オーバーハングを有する。かかる3’オーバーハングは、siRNAに有利とされる3’オーバーハングに類似する。
【0009】
小さなRNAの非ターゲティング細胞への送達が有害であり、そして/または非特異的影響を及ぼし得ることを証明する証拠が増加しつつある。したがって、実際に適用するために、ターゲティングされた細胞集団に小さなRNAを選択的に送達させることが有利であろう。polIIIプロモーターは本質的に遍在するので、DNAベースの小さなRNAの送達方法は転写ターゲティングされず、したがって、これらの非特異的且つ有毒な副作用を被り得る。小さなRNAのいくつかのターゲティング方法(LoxCre、Tet、リガンド−親和性媒介リポソームカプセル化(encapulated)送達などが含まれる)が検討されている。LoxCreおよびTetは、polIIIプロモーターに対して5’および3’末端に存在するDNA調節領域に依存するDNAベースの方法である。いくつかのストラテジーでは、DNA調節領域は、PolIIIプロモーター内に存在するか、その一部が置き換わっている。これらの方法は、比較的大量のDNAを含むことができ(すなわち、Cre酵素がPolIIプロモーターの発現調節下にあり、Lox部位が切断された場合にshRNAが全U6プロモーターを有するレジスターになるLoxCre法の場合のようにジシストロニックである)、Tetまたはいくつかの他の抗生物質もしくはリガンドの外因的添加に依存し得、これらが全活性U6プロモーターを適所に有するので、「漏出性」を示し得る。したがって、ターゲティングされたモノシストロニックな小さなRNAプロモーターの明確で簡潔な作製方法が有利であろう。
【0010】
PolIIプロモーターは、広範な内因性ターゲティングパターンを示す。PolIIプロモーターの発現プロフィールには、組織特異性、腫瘍特異性、器官特異性、照射特異性、リガンド特異性(すなわち、エストロゲン、タモキシフェンなどが含まれる)、超音波特異性、炎症特異性、ウイルス特異性、および種々の疾患特異性が含まれる(これらに限定されない)。遺伝子チップマイクロアレイを使用した特定の条件によって活性化される遺伝子を同定し、特定の条件によって活性化されるpolIIプロモーターとして使用するためにそのプロモーターをクローン化することが一般的な方法である。したがって、発現プロフィールが公知の非常に多数のプロモーターおよび臨床的または科学的に興味深い発現プロフィールを有するさらなるプロモーターを同定するための体系的方法が存在する。興味深い発現プロフィールを有する類似のpolIIIプロモーター集団は存在しない。
【非特許文献1】Caplen,ら(2001)Proc Natl Acad Sci USA,98,9742−9747
【非特許文献2】Elbashir,ら(2001)Nature,411,494−498
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の概要)
本発明は、少なくとも一部が、PolIIIプロモーターの基本的領域およびPolIIプロモーターの調節領域を有するプロモーターを含むように生成された構築物を使用して、細胞中の短いRNA分子の発現をターゲティングおよび/または調節することができるという発見に基づく。かかる構築物は、PolIIIプロモーターおよびPolIIプロモーターの両機能のいくつかを利用する(すなわち、特定の長さを有するRNAを得ることおよび特定の発現プロフィールを有するRNAを得ること)。いくつかの現在利用可能な構築物には、特異的ターゲティングおよび/または調節が可能ではない全PolIIIプロモーター(U6プロモーターなど)が含まれる。本出願は、PolII発現プロフィールに類似の特定の発現プロフィールを有する構築物を特色とする。
【0012】
本発明は、細胞中の短いRNA分子、特に、RNA阻害(RNAi)、ミクロRNA(miRNA)媒介発現調節に関与し得るdsRNA(siRNA、短いヘアピンRNA(shRNA)など)およびmiRNAまたはRNAアプタマー(例えば、リボスイッチ)の発現をターゲティングおよび/または調節するために使用することができる遺伝子構築物に関する。かかる調節は、多数の異なる型(空間的(例えば、特に細胞および組織(腫瘍特異的発現が含まれる))、一過性(特定の時間に生じる(特定の発生段階など))、および環境的(特定の環境条件への応答(照射に対する応答など))など)からなり得る。
【0013】
一般に、かかる遺伝子構築物は、RNAポリメラーゼIIプロモーター領域由来の調節エレメントと共にRNAポリメラーゼIII複合体に結合する配列を含む。例えば、かかる遺伝子構築物を、PolIIプロモーター領域由来のシス活性調節領域(例えば、特定の調節エンハンサーおよび/または抑制エレメント)に作動可能に連結されたPolIII基本プロモーター領域の間の融合物として構築することができる。同様に、かかる遺伝子構築物を、PolIII複合体に結合するようにPolII基本プロモーター領域を変異誘発することによって構築することができる。かかる変異配列または修飾配列を、種々の方法(親配列の変異または化学合成など)によって構築することができる。しかし、産生されると、PolII調節エレメントと共にpolIII結合を提供する本遺伝子構築物を、「融合プロモーター」または「キメラプロモーター」という。
【0014】
かかる融合プロモーターを使用して、かかる阻害RNA分子を様々に適用する(一般に、遺伝子のノックダウンまたはノックアウト)ために阻害RNA分子発現を調節することができる。例えば、かかる用途には、遺伝子融合分析、薬剤開発、遺伝子経路研究、RNAベースの治療法の開発、治療的および予防的適用、ならびに小分子薬物のスクリーニングおよび開発におけるコントロールまたは指標としての用途が含まれる。
【0015】
1つの態様では、本開示は、PolIII/PolII融合プロモーターを含む核酸構築物を特徴とする。融合プロモーターは、RNAポリメラーゼIII結合基本プロモーター領域、基本プロモーター領域に作動可能に連結されたPolIIプロモーター由来の1つまたは複数のシス活性調節領域を含む。シス活性調節領域は、構築物由来の発現の特異的調節を提供する。特定の実施形態では、核酸構築物は、異なる特定の調節特性を有する2つの連結したPolIII/PolII融合プロモーターを含む。
【0016】
ある実施形態では、シス活性調節領域により、細胞特異的調節、組織特異的調節、細胞周期特異的調節、インビボでの腫瘍特異的調節、インビボでの放射線誘導発現、インビボでのエストロゲン誘導発現、インビボでのリガンド誘導発現、インビボでのパターン特異的発現(ウイルスと同一の分布もしくはウイルス遺伝子の発現と同一の分布の発現、またはRNAポリメラーゼII型プロモーター様発現プログラムに類似の分布の発現など)、またはインビボでの免疫特異的もしくは領域特異的発現、インビボでの超音波誘導発現、インビボでの熱誘導発現、インビボでの低温誘導発現(例えば、メタロチオネイン−1)、インビボでのグルコース誘導発現、インビボでの高血糖誘導発現、インビボでの疾患誘導発現、インビボでの炎症誘導発現(例えば、ASIC3などの酸感受性イオンチャネル(ASCI)ポリペプチドおよび炎症性腸疾患(IBD)中などの粘膜アドレシン細胞接着分子−1、ヒト肺上皮細胞中などのシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2))、インビボでの組織応答誘導発現、インビボでの光誘導発現(例えば、fos、NGFI−A、およびNGFI−B)、インビボでの投薬誘導発現、インビボでのアポトーシス誘導発現、インビボでの拡延性抑圧誘導発現(例えば、心房性ナトリウム利尿ペプチド、COX−2、TNF−α、IL−1β、ガラニン、および、MMP−9などのメタロプロテイナーゼ)、インビボでの梗塞誘導発現(例えば、P−セレクチン)、インビボでの肺塞栓症誘導発現、インビボでの低酸素症誘導発現(例えば、低酸素症誘導性因子1α、血管内皮成長因子(VEGF)、内皮成長応答1(Egr−1)、エリスロポエチン)、インビボでの卒中誘導発現、およびこれらの組み合わせが得られる。
【0017】
ある実施形態では、構築物は、融合プロモーターに作動可能に連結されたRNAi作用因子(例えば、shRNAまたはsiRNA)をコードする(すなわち、siRNAの2つの鎖をコードする)配列も含む。特定の実施形態では、RNAi作用因子を、疾患または病態に関連する遺伝子のmRNAにターゲティングする。種々のかかる遺伝子が同定されており、そのいくつかはRNAiを使用してターゲティングおよび阻害されている。
【0018】
特定の実施形態では、基本プロモーター領域は、PolIIIプロモーター(例えば、U6基本プロモーター、H1基本プロモーター、tRNA基本プロモーター)に由来し、PolIII基本プロモーター配列を有し、PolIIの代わりにPolIIIに優先的に結合する変異PolII基本プロモーターである。
【0019】
特定の実施形態では、シス活性調節領域は、基本プロモーターエレメント以外のPolII転写遺伝子由来の全調節領域を含む。特定の実施形態では、シス活性調節領域は、CMV初期中間(early intermediate)調節領域を含む。
【0020】
別の態様では、本発明はまた、例えば、上記または本明細書中に記載の本発明のPolIII/PolII融合プロモーターを含むベクターを提供する。
【0021】
特定の実施形態では、ベクターは、プラスミド、ウイルスベースのベクター、コスミド、YAC、またはsBACである。特定の実施形態では、ベクターは、複製欠損性を示す。ベクターは複製能力を示す。
【0022】
同様に、別の関連する態様では、本発明は、shRNAまたはsiRNAなどのRNAi作用因子などの、コード配列に作動可能に連結された本発明のPolIII/PolII融合プロモーターを含む細胞に関する。融合プロモーターおよび連結したRNAi作用因子コード配列は、本明細書中に記載のようにベクター中に存在するか、染色体中に組み込むことができる。
【0023】
ある実施形態では、細胞は細胞培養物中に存在し、動物中(例えば、ヒト、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、トリ)、真菌中、植物中に存在する。特定の場合では、細胞は動物細胞(例えば、ヒト細胞、ネコ細胞、イヌ細胞、ウシ細胞、ブタ細胞、ヒツジ細胞、ウマ細胞)、トリ細胞、昆虫細胞、植物細胞である。
【0024】
さらに別の関連する態様では、本発明は、本発明の遺伝子構築物を含む複数の細胞を含む非ヒトトランスジェニック生物を提供する。
【0025】
特定の実施形態では、かかる細胞を、上記または本明細書中に記載している。生物は、本明細書中に記載のとおりである。
【0026】
同様に、別の態様では、本発明は、包装された一定量の1つまたは複数の本発明の遺伝子構築物を含むキットを提供する。典型的には、かかるキットは、使用説明書などのさらなる構成要素も含む。遺伝子構築物は単回使用形態で包装されている。遺伝子構築物はベクター中に含まれる。遺伝子構築物は、PolIII/PolII融合プロモーターに作動可能に連結されたコード配列も含む。遺伝子構築物は薬学的組成物中に処方される。キットは第2活性化合物も含む。遺伝子構築物は、単位投与形態中に封入される。
【0027】
本発明の別の態様は、融合プロモーターに作動可能に連結されたshRNAまたはsiRNA配列などのRNAi作用因子も含む本発明の遺伝子構築物および薬学的に許容可能な担体または賦形剤を含む薬学的組成物に関する。
【0028】
ある実施形態では、かかる薬学的組成物を、注射用組成物として処方し、局所投与のために処方し、リポソーム組成物として処方する。かかる薬学的組成物は、構築物を含むベクター、構築物を含むウイルスベクター、異なる構築物を含む複数のベクターを含む。
【0029】
さらなる態様は、RNAi作用因子をコードする核酸配列を本発明のPolIII/PolII融合プロモーターに作動可能に連結することによって本発明の遺伝子構築物を作製する方法に関する。
【0030】
ある実施形態では、構築物、作動可能に連結されたコード配列、特定の調節特性、および/または構築物の特徴もしくはその使用は、本明細書中に記載のとおりである(例えば、RNAi作用因子は、shRNAまたはsiRNAである)。
【0031】
本発明の構築物および関連する材料の使用に関連して、本発明の別の態様は、発現条件下に細胞を維持することによる細胞中でのRNAi作用因子の発現方法であって、細胞がRNAi作用因子コード配列に作動可能に連結された本発明の遺伝子構築物を含む方法に関する。いくつかの実施形態では、RNAi作用因子は、shRNA、siRNAである。
【0032】
同様に、別の態様は、細胞中の標的細胞の発現を阻害する方法に関する。本方法は、標的遺伝子にターゲティングするRNAi作用因子をコードする核酸配列に作動可能に連結された本発明の遺伝子構築物を含むベクターで細胞をトランスフェクトする工程と、発現条件下で細胞を維持する工程を含む。
【0033】
特定の実施形態では、細胞は生物(例えば、本明細書中に記載の生物)中に存在する。構築物は、組織特異的調節エレメントを含む。標的遺伝子は、組織特異的調節エレメントに対応する組織の細胞中で優先的に阻害される。構築物は、腫瘍特異的調節エレメントを含む。標的遺伝子は、腫瘍特異的調節エレメントに対応する腫瘍の細胞中で優先的に阻害される。放射線に応答して阻害が誘導される。有効量の非ペプチドおよび非ヌクレオチド化学種(例えば、エストロゲン)の存在に応答して阻害が誘導される。
【0034】
さらに、別の態様は、細胞中の遺伝子発現を阻害する工程であって、阻害がRNAi作用因子をコードする核酸配列に作動可能に連結された本発明の遺伝子構築物由来のRNAi作用因子の発現に起因する工程、および阻害後に細胞中の生物学的変化を決定する工程であって、かかる生物学的変化が遺伝子機能を示す工程を含む、遺伝子機能の分析方法に関する。
【0035】
特定の実施形態では、決定は、少なくとも1つの生物学的特徴を遺伝子発現が阻害されないコントロール細胞と比較する工程を含む。該方法は、遺伝子構築物を含むベクター(例えば、プラスミドのウイルスベクター)で細胞をトランスフェクトする工程も含む。
【0036】
別の態様は、標的を治療標的として実証する方法を提供する。本方法は、細胞中の推定治療標的遺伝子の発現を阻害する工程であって、阻害がRNAi作用因子をコードする核酸配列に作動可能に連結された本発明の遺伝子構築物由来のRNAi作用因子の発現に起因する工程、および阻害後の細胞の生物学的変化が治療効果と一致するかどうかを決定する工程を含む。生物学的変化と治療効果との一致は、遺伝子が治療標的遺伝子であることを示す。
【0037】
別の態様では、本発明は、有用な試験コントロール、したがって、小分子試験化合物の生物学的効果の正のコントロールを得る方法を提供する。本方法は、第1細胞を試験化合物と接触させる工程、RNAi作用因子をコードする配列に作動可能に連結された本発明の遺伝子構築物由来のRNAi作用因子の発現を使用して比較細胞中の標的遺伝子を阻害する工程、および第1細胞中の試験化合物の効果を、比較細胞中の標的遺伝子の阻害効果と比較する工程を含む。
【0038】
特定の実施形態では、試験化合物を、標的遺伝子に対して活性であるように予め選択する。比較工程は、試験化合物がRNAi作用因子による阻害効果に付加的な効果を有するかどうかを決定する工程を含む。
【0039】
さらに別の態様では、本発明は、標的遺伝子の阻害によって有益な効果が得られる疾患または病態の治療方法を提供する。本方法は、薬理学的有効量の核酸構築物、ベクター、細胞、キット、または、標的遺伝子をターゲティングするRNAi作用因子をコードする配列に作動可能に連結された本発明の遺伝子構築物を含む薬学的組成物をかかる疾患または病態を罹患しているかリスクのある被験体に投与する工程を含む。疾患または病態は、例えば、癌、感染症、または神経変性疾患(例えば、SOD1遺伝子の変異に起因する)であり得る。
【0040】
特定の実施形態では、ベクターはプラスミドである。ベクターはウイルスベクターである。被験体はヒトである。被験体は非ヒト動物である。被験体は植物である。RNAi作用因子はshRNAである。RNAi作用因子はsiRNAである。
【0041】
標的遺伝子の阻害によって有益な効果が得られる、疾患または病態の治療または予防における開示の核酸構築物、ベクター、細胞、キット、または薬学的組成物の使用も本発明の範囲内に含まれる。疾患は、例えば、癌、感染症、または神経変性疾患(例えば、SOD1遺伝子の変異に起因するもの)であり得る。1つの態様では、開示は、RNAi作用因子をコードする配列に作動可能に連結された、発現の特異的調節を提供するPolIII/PolII融合プロモーターを含む遺伝子構築物を含むベクターの使用であって、該融合プロモーターは、RNAポリメラーゼIII結合基本プロモーター領域、および基本プロモーター領域に作動可能に連結されたPolIIプロモーター由来のシス活性調節領域を含み、標的遺伝子の阻害によって有益な効果が得られる疾患または病態を治療するために、シス活性調節領域により、融合プロモーター由来の発現の特異的調節を提供する使用を特徴とする。
【0042】
特定の実施形態では、ベクターはプラスミドである。ベクターはウイルスベクターである。RNAi作用因子はshRNAである。RNAi作用因子はsiRNAである。
【0043】
標的遺伝子の阻害によって有益な効果が得られる疾患または病態の治療薬の製造における開示の核酸構築物、ベクター、細胞、キット、または薬学的組成物の使用も本発明の範囲内に含まれる。薬物は、本明細書中に記載の任意の形態であり得る。疾患は、例えば、癌、感染症、または神経変性疾患(例えば、SOD1遺伝子の変異に起因するもの)であり得る。1つの態様では、開示は、RNAi作用因子をコードする配列に作動可能に連結された、発現の特異的調節を提供するPolIII/PolII融合プロモーターを含む遺伝子構築物を含むベクターの使用であって、該融合プロモーターは、RNAポリメラーゼIII結合基本プロモーター領域、および基本プロモーター領域に作動可能に連結されたPolIIプロモーター由来のシス活性調節領域を含み、標的遺伝子の阻害によって有益な効果が得られる疾患または病態の治療薬の調製において、シス活性調節領域は、融合プロモーター由来の発現の特異的調節を提供する使用を特徴とする。
【0044】
特定の実施形態では、ベクターはプラスミドである。ベクターはウイルスベクターである。RNAi作用因子はshRNAである。RNAi作用因子はsiRNAである。
【0045】
本発明の構築物に関して使用する場合、用語「シス活性調節領域」は、構造遺伝子の転写に影響を与える構造遺伝子部分付近の核酸配列をいう。
【0046】
ヌクレオチド配列に関して使用する場合、用語「コードする」は、ヌクレオチド配列または分子(一般に、DNA)が基準RNA配列に相補的な配列を含むことを示す。したがって、特定のRNA分子をコードするDNA配列は、適切な調節配列に作動可能に連結される場合、必要な反応成分の存在下でかかるRNA分子を産生することができる。アミノ酸配列に関して、用語「コードする」は、かかるヌクレオチド配列が必要な反応成分の存在下で適切なコントロール配列に作動可能に連結された場合、示したヌクレオチド配列が示したアミノ酸配列に翻訳することができる配列(RNA配列の場合)または示したアミノ酸配列に翻訳することができる相補RNAに転写することができる配列(DNAの場合)を有することを意味する。
【0047】
本明細書中で使用される、用語「遺伝子構築物」および「構築物」は、一般に、1つまたは複数のエンハンサーおよび/またはリプレッサー調節領域に作動可能に連結された基本プロモーターを含む操作DNA分子をいう。構築物は、基本プロモーターに作動可能に連結されたshRNAコード領域ならびにエンハンサーおよび/またはリプレッサー調節領域などのさらなる配列も含む。
【0048】
用語「エンハンサー」は、特定のタンパク質因子に結合した場合に遺伝子の発現レベルを向上するが、単独では発現するのに十分でないDNA配列をいう。多くの場合、「エンハンサー」は、遺伝子に対していずれかの配列の方向に遺伝子から実質的に離れて位置している場合でさえ、遺伝子発現を促進することができる。
【0049】
本発明に関連して、用語「キット」は、細胞または生物中でRNAiを活性化するための少なくとも1つの試薬(例えば、構築物)を含む包装された製品(例えば、ボックス、ボトル、バイアル、または他の容器または容器の組み合わせ)をいう。特定の実施形態では、1つまたは複数の本発明の単位投与調製物を含むキットを調製する。
【0050】
本発明の遺伝子構築物に関連して、用語「単位用量」は、単回使用(例えば、治療のための単回投与および遺伝子のための単回ノックダウン試験)のために設計され、これに適切な構築物の量をいう。
【0051】
用語「イントロン」は、タンパク質に翻訳されない遺伝子のコード配列内の配列をいう。かかるイントロンは、RNAに転写されるが、RNAがタンパク質に翻訳される前に(RNAスプライシングによって)除去される。
【0052】
用語「遺伝子」には、ゲノムDNA、cDNA、RNA、または遺伝子産物をコードする他のポリヌクレオチドが含まれ、転写、翻訳、または他の調節および/またはプロセシング機能に影響を与えるイントロンおよび調節配列が含まれる。
【0053】
用語「外因性遺伝子」および「外来遺伝子」は、生物、生物以外の細胞型、または発現される細胞型から得た遺伝子をいう。別途明確に示さない限り、これらの用語には、ゲノム内でのその正常な位置から転位置された同一生物由来の遺伝子も含まれる。同様に、用語「外因性配列」および「外来配列」などは、かかる他の供給源または位置由来のヌクレオチド配列をいう。
【0054】
本明細書中で使用される、用語「標的遺伝子」は、RNA干渉(「RNAi」)の使用などによる下方制御(すなわち、阻害)を意図する遺伝子をいう。同様に、用語「標的RNA」は、(例えば、RNAi誘導分解による)下方制御を意図するRNA分子(例えば、mRNA)をいう。
【0055】
本発明の核酸構築物に関して本明細書中で使用される、用語「プロモーター」は、RNAポリメラーゼが付加的に転写を調節する関連する調節エレメント(例えば、他の転写因子の結合エレメント)と共に作動可能に連結されたコード配列に結合してその転写を開始することができるDNA配列をいう。
【0056】
用語「PolIIIプロモーター」は、RNAポリメラーゼIIIプロモーターをいう。PolIIIプロモーターの例には、U6プロモーター、H1プロモーター、およびtRNAプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。
【0057】
「PolIIプロモーター」は、RNAポリメラーゼIIプロモーターを意味する。PolIIプロモーターの例には、ユビキチンCプロモーターおよびCMV初期中間プロモーターが含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
遺伝子またはコード領域由来の産物の産生において、用語「発現」は、転写および/または翻訳プロセスによる産物の酵素的合成をいい、細胞での発現ならびに無細胞発現系およびクローニング系などにおける核酸の転写および/または翻訳が含まれる。
【0059】
本明細書中で使用される、用語「RNA干渉」および「RNAi」は、発現の下方制御によって標的分子(例えば、標的遺伝子、タンパク質、またはRNA)が下方制御される配列特異的プロセスをいう。特定の機構に拘束されないが、現在当業者に理解されるように、RNAiは、酵素によるRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)によって触媒されるRNA分子(例えば、細胞内のmRNA分子)の分解を含む。RNAiは、酷似する配列を有する他のRNA配列に分解機構を指示するより長いdsRNAから切断されたdsRNAフラグメントによって誘発される外来RNA(例えば、ウイルスRNA)を除去するために細胞中で天然に生じる。テクノロジーとして実用化される場合、人間の介入により、外因的に合成されたdsRNAまたは細胞中に転写されたdsRNA(例えば、短いヘアピン構造を形成する配列として合成されたdsRNA)のいずれかを使用してRNAiを開始させて、標的遺伝子の発現を減少させるか、さらにサイレンシングすることができる。
【0060】
本明細書中で使用される、用語「RNAi作用因子」は、標的RNAにRNAiを指示するのに、標的RNAとの十分な配列相補性を有する配列を含むRNA(またはRNAアナログ)をいう。かかる配列相補性は、完全な相補性であり得るが、低レベルのミスマッチ(例えば、3’または5’末端ミスマッチ)を含み得る。
【0061】
用語「RNA」、「RNA分子」、および「リボ核酸分子」は、リボヌクレオチドのポリマーをいう。別途明確に示さない限り、かかるリボヌクレオチドには、リボヌクレオチドアナログが含まれる。同様に、用語「DNA」、「DNA分子」、および「デオキシリボ核酸分子」は、デオキシリボヌクレオチドのポリマーをいう。別途明確に示さない限り、かかるデオキシリボヌクレオチドには、デオキシリボヌクレオチドアナログが含まれる。DNAおよびRNAを、(例えば、細胞または無細胞酵素合成系で)酵素的複製または転写機構を使用して合成することができるか、または化学的に合成することができる。特に、RNAは1つまたは複数のリボヌクレオチドにおいて転写後修飾され得る。DNAおよびRNAは、一般鎖(すなわち、ssDNAおよびssRNA)または多重鎖であり得、最も一般的には二本鎖(すなわち、dsRNAおよびdsDNA)である。
【0062】
RNAiに関して、用語「配列特異的」は、かかる分子のRNAi誘導分解を優先的に指示するのに、標的RNA分子配列に対する十分な配列相補性を意味する。RNAi作用因子が標的配列と完全に相補的であることや、RNAi作用因子によって指示された標的分解の誤りが存在しないことを意味しない。
【0063】
用語「mRNA」および「メッセンジャーRNA」を、1つまたは複数のポリペプチド鎖のアミノ酸配列をコードする配列を有する一本鎖をいうために常套的に使用する。かかるコード配列は、タンパク質合成中に翻訳されて、対応するアミノ酸配列を産生する。
【0064】
用語「転写物」は、RNAポリメラーゼによってDNAまたはRNAテンプレートから転写されたRNA分子をいう。用語「転写物」には、ポリペプチドをコードするRNA(すなわち、mRNA)および非コードRNA(「ncRNA」)が含まれる。
【0065】
本明細書中で使用される、用語「小さな干渉RNA」および「短い干渉RNA」(「siRNA」)は、短いRNA分子、一般に、約10〜50ヌクレオチド長(用語「ヌクレオチド」にはヌクレオチドアナログが含まれる)、好ましくは約15〜25ヌクレオチド長の二本鎖RNA分子をいう。ほとんどの場合、siRNAは、17、18、19、20、21、22、23、24、または25ヌクレオチド長である。かかるsiRNAは、オーバーハング末端(例えば、1、2、または3つのヌクレオチド(またはヌクレオチドアナログ)の3’オーバーハング)を有し得る。かかるsiRNAは、RNA干渉を媒介することができる。
【0066】
本発明に関連して使用する場合、用語「shRNA」は、ステム−ループ構造を有するRNA分子をいう。ステム−ループ構造は、各方向および相補度によって二配列間で塩基対合できる2つの相互に相補的な配列を含む。相互に相補的な配列は、ループ領域によって連結され、該ループはループ領域内のヌクレオチド(またはヌクレオチドアナログ)間の塩基対合の欠損に起因する。
【0067】
用語「被験体」は、動物(例えば、哺乳動物またはトリ)または植物などの生きている高等生物をいう。動物被験体の例には、ヒト、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、およびそのトランスジェニック誘導体または変異体が含まれる。
【0068】
本明細書中で使用される、用語「治療」は、疾患または病態、疾患または病態の症状、疾患または病態に対する素因を有するか、そうでなければ疾患または病態を罹患するリスクがある被験体への治療薬の適用または投与(または被験体から単離した組織または細胞株への治療薬の適用または投与)を意味する。かかる治療は、疾患または病態の少なくとも1つの症状の少なくとも一部を緩和し、疾患または病態の経過を改変し、そして/または被験体が疾患または病態を発症する可能性を軽減する(例えば、疾患または病態、疾患または病態の症状、疾患または病態に対する素因、または疾患もしくは病態を発症する可能性を回復、治癒、軽減、緩和、改変、修復、改善、改良する、または影響を及ぼす)ことを意図する。
【0069】
本明細書中で使用される、用語「治療薬」は、疾患または病態を罹患しているかそのリスクを有する被験体に投与または適用した場合に治療効果が得られる組成物(例えば、分子)を意味する。かかる治療薬は、例えば、小分子、ペプチド、抗体、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、化学療法薬、および放射線であり得る。
【0070】
本明細書中で使用される、用語「有効量」は、特定の薬理学的効果を得るのに十分な量と定義する。
【0071】
用語「治療量」は、特定の疾患または病態を治療または防止するのに十分な量をいう。かかる量は、被験体のサイズ、体重、健康状態、疾患または病態の型、投与される特定の作用因子、ならびに作用因子の投与方法および投与経路などの要因に応じて変化し得る。当業者は、作用因子のかかる治療量を過度に実験することなく決定する。
【0072】
用語「変異」は、遺伝子配列内の1つのヌクレオチドまたは少数のヌクレオチドの置換、付加、または欠失をいう。かかる変異は、遺伝子配列によってコードされたタンパク質の異常な産生をもたらし得るか(例えば、誤調節産生)、異常な産物または変異体産物の産生をもたらし得るか、またはサイレントであり得る。
【0073】
用語「ヌクレオシド」は、リボースまたはデオキシリボース糖に共有結合したプリンまたはピリミジン塩基を有する分子をいう。例示的なヌクレオシドには、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジン、およびチミジンが含まれる。用語「ヌクレオチド」は、糖部分にエステル結合で連結した1つまたは複数のリン酸基を有するヌクレオシドをいう。例示的なヌクレオチドには、ヌクレオシド一リン酸、ヌクレオシド二リン酸、およびヌクレオシド三リン酸が含まれる。用語「ポリヌクレオチド」および「核酸分子」は、本明細書中で交換可能に使用され、5’炭素原子と3’炭素原子との間がリン酸ジエステル結合によって連結されたヌクレオチドのポリマーをいう。
【0074】
本明細書中で使用される、用語「薬学的組成物」は、ヒトまたは他の動物被験体への投与に適切な1つまたは複数の適合可能な充填剤、希釈剤、担体、賦形剤、またはカプセル化物質を用いて処方された活性薬剤をいう。
【0075】
本発明のある方法は、値、レベル、特性、特徴、性質などを「適切なコントロール」(「適当なコントロール」ともいう)と比較する工程を含む。かかるコントロールは、比較目的に有用な当業者に許容可能な任意のコントロールまたは標準である。一実施形態では、「適切なコントロール」または「適当なコントロール」は、本明細書中に記載のように、RNAi法の実施前に決定された値、レベル、特性、特徴、性質などである。例えば、転写率、mRNAレベル、翻訳率、タンパク質レベル、生物活性、細胞の特徴または性質、遺伝子型、表現型などを、細胞もしくは生物または基準細胞もしくは基準生物に本発明のRNAi作用因子を導入する前に決定することができる。
【0076】
用語「上流」は、基準配列に先行する(例えば、5’側に存在する)ヌクレオチド配列をいう。
【0077】
用語「下流」は、基準配列に続く(例えば、3’側に存在する)ヌクレオチド配列をいう。
【0078】
本発明に関連して使用する場合、用語「ベクター」は、連結した別の核酸を細胞中に輸送することができる核酸分子をいう。かかるベクターには、プラスミド、ウイルスベクター、コスミド、YAC、およびBACなどが含まれる。「プラスミド」は、細胞ゲノムと独立して複製される小さな環状の二本鎖DNA分子である。典型的には、かかるプラスミドは、さらなるDNAセグメントを挿入してライゲーションすることができる1つまたは複数の部位を含む。「ウイルスベクター」は、ウイルスゲノムをベースとするベクターであり、操作および/または組換えウイルスベクターであり得る。しばしば、かかるウイルスベクターは、除去される非必須遺伝子を有し、クローニング部位を付加するように操作することができ、ならびに/または、弱毒化ウイルスでありおよび/もしくは複製欠損を示し、もしくは他の選択された性質を有するように選択または修飾することができる。ウイルスベクターの例には、レンチウイルス(例えば、HIV、SIV、EAIV、FIV)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、オンコレトロウイルス、ポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルスおよびカアリポックスウイルス(caarypox virus))、ヘルペスウイルス、泡沫状ウイルス、MMLVウイルス(モロニーマウス白血病ウイルス)、バキュロウイルス、アルファウイルス(例えば、セムリキ森林ウイルス(SFV)、シンドビスウイルス(SIN)、およびベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE))が含まれる。以下の3つの異なるアルファウイルスベクター型が構築されている。I.複製欠損ベクター:ウイルス非構造遺伝子(nsP1〜4)および対象の外来遺伝子を含むRNA分子をウイルス構造遺伝子含有ヘルパーベクターによってアルファウイルス粒子にパッケージングする。生成された組換えアルファウイルス粒子は、宿主細胞に感染することができるが、ウイルス構造遺伝子が提供されないので、さらなるウイルス複製が起こらない。したがって、得られた導入遺伝子発現は、一過性である。II.複製能力のあるベクター:上記の自殺ベクターと対照的に、これらのベクターは、全長アルファウイルスゲノムに付加した第2サブゲノムプロモーターおよび対象の外来遺伝子を含む。複製能力のある粒子の宿主細胞への感染により、明らかにウイルスが複製する。III.層状DNAベクター:RNAポリメラーゼII発現カセットを導入して、自己複製RNA(レプリコン)ベクターの転写を駆動し、それにより、トランスフェクションおよび発現研究のためのプラスミドDNA(Berglundら、1996,Dubenskyら、1996)およびパルボウイルスベクターを直接使用できる。
【0079】
さらなる実施形態は、詳細な説明および特許請求の範囲から明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0080】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
I.概要
二本鎖RNA(dsRNA)誘導配列特異的遺伝子スプライシングは、RNA干渉(RNAi)として公知である。広範な疾患(癌および感染症が含まれる)の治療についてのRNAiの莫大な治療的潜在性が認識されつつある(Biら、Curr Gene Ther 2003,3(5):411−417;Brisibeら、Trends Biotechnol 2003,21(7):306−311;Caplen Expert Opin Biol Ther 2003,3(4):575−586;Liebermanら、Trends Mol Med 2003,9(9):397−403;Wangら、World J Gastroenterol 2003,9(8):1657−1661;Wolff & Herweijer Ernst Schering Res Found Workshop 2003(43):41− 59)。さらに、RNAiは、基礎科学者にとって逆遺伝子操作によって遺伝子機能を調査するための強力なツールである(Scherrら、Curr Med Chem 2003,10(3):245−256;Szweykowska−Kulinskaら、Acta Biochim Pol 2003,50(1):217−229;Wimmer Nat Rev Genet 2003,4(3):225−232)。科学および医学の両方におけるRNAiの役割が大きくなり続けるにつれて、短いdsRNA(siRNA)の所望の組織へのターゲティングされた送達がますます重要になるであろう。いくつかの報告では、化学的に合成したsiRNAを、ナノゲルおよびPEG化免疫リポソームのような物理的ターゲティングテクノロジーを使用してターゲティングすることができると示されている。DNAベースのRNAiアプローチは、未修飾dsRNAよりも不安定性が低く、増幅する(すなわち、1つの送達されたDNAプロモーター構築物から多数のdsRNAを発現することができる)という利点が得られる。DNAベースのRNAi構築物のターゲティングのための記載のアプローチには、Lox/CreベースのアプローチおよびナノゲルまたはPEG化免疫リポソームを使用したDNA構築物の物理的ターゲティングが含まれる。しかし、本発明のsiRNAの送達ための簡潔な転写ターゲティング法は、RNAi療法の重要な進展を示す。
【0081】
RNAiへのDNAベースのアプローチでは、DNAベースの構築物を使用して、いずれかの短いヘアピンRNA(shRNA)の形態で細胞中に短いdsRNAを発現するか、二本鎖相補配列の両鎖を発現する。これらの各アプローチは、典型的には、適切な長さで転写が終結するように、RNAポリメラーゼIIIプロモーターの使用に依存する。RNAポリメラーゼII型プロモーターのいくつかの使用が記載されているが、一般に、RNAポリメラーゼII型により、はるかに長いRNA分子が得られ、これが細胞炎症カスケードおよび他の非特異的影響を活性化させることが示されている。
【0082】
RNAポリメラーゼII型プロモーターおよびRNAポリメラーゼIII型プロモーターの両方は、コア(または基本)プロモーターならびにエンハンサー、サイレンサー、および他のエレメントの集団を含む構造を有する。典型的には、各ホロ酵素は、転写因子集団と共にコアプロモーター領域に結合して、前開始複合体を作製する。次いで、転写率を、主に、コアプロモーターの5’および3’の両方に位置するエンハンサー、サイレンサー、および他のエレメントの作用によって制御する。この基礎機構は、RNAポリメラーゼII型プロモーター(組織特異的、腫瘍特異的、放射線誘導性、エストロゲン誘導性、細胞周期依存性、および生物特異的なプロモーターが含まれる(網羅していない))によって示される複合体転写ターゲティングを担う。
【0083】
RNAポリメラーゼIII型プロモーターは適切に終結するという利点を有するが、現在特徴づけられているRNAポリメラーゼIII型プロモーターは、発現がほぼ遍在する。RNAPolIIIプロモーターと対照的に、RNAポリメラーゼII型プロモーターは非常に多くの転写制御を示すが、長いRNA分子の産生によりsiRNAまたはshRNAの発現のために使用するのは依然として一般に適切ではない。
【0084】
したがって、本発明は、RNAポリメラーゼIII型前開始複合体の転写率を調節してキメラRNAi発現プロモーターを作製するためのエンハンサー、サイレンサー、およびRNAポリメラーゼII型プロモーター由来の他の調節エレメントの使用に関する。RNAポリメラーゼIII型がポリメラーゼII型の代わりに転写複合体を形成するようなRNAポリメラーゼII型プロモーターの変化により、RNAPolIIIの重合特性および終結特性を保持しながら親RNAポリメラーゼII型プロモーターに類似の発現特性を有するRNAiプロモーターが得られる。
【0085】
これを達成するための潜在的方法がいくつか存在し、これらには、RNAポリメラーゼII型プロモーターのコアプロモーターをRNAポリメラーゼIII型プロモーター由来のコアプロモーター由来のコアプロモーターと交換し、およびRNAポリメラーゼIIIに優先的に結合するようなRNAポリメラーゼIIプロモーターのコアプロモーター領域の変異を作製することが含まれる。さらに、エンハンサー、サイレンサー、および両プロモーター由来の他のエレメントの異なる組み合わせを組み合わせて、所望の発現特性を有するRNAiプロモーターを達成することができる。
【0086】
したがって、本発明は、RNA(特に、shRNAおよびsiRNAなどのRNAiの活性化のためのRNA作用因子)の発現のための特異的に調節可能な遺伝子構築物に関する。かかる調節は、空間的、一過性、または環境的であり得る。本発明の調節可能な遺伝子構築物は、RNAポリメラーゼIIプロモーター領域由来の少なくとも1つのさらなる調節エレメントに作動可能に連結された、RNAポリメラーゼIIIに結合する基本プロモーターを含む融合プロモーターを含む。
【0087】
驚いたことに、かかる融合プロモーターは、III型ポリメラーゼに関連する有利な合成特性を付与する一方で、II型ポリメラーゼの調節範囲または調節の柔軟性も付与する。
【0088】
したがって、本発明は、RNA干渉のための組成物ならびにかかる組成物の調製および使用方法を提供する。組成物は、あるRNAi適用範囲(正常遺伝子および変異遺伝子の両方の遺伝子機能の決定および分析、遺伝子経路の決定および分析、推定薬物標的の分析および実証、ならびに治療および予防的適用のための遺伝子のターゲティングが含まれる)で有用である。有利には、かかる適用を、使用できる種々の異なる調節特性を使用した調節様式で行うことができる。
II.融合プロモーター
A.PolIII/PolII融合(キメラ)プロモーターの設計および構築
種々の方法を使用して、本発明の融合プロモーターを標準的な技術を使用して産生することができる。融合プロモーターを作製するためのかかるアプローチは、(例えば、常套のクローニング技術を使用して)RNAPolII基本プロモーターをRNAPolIII基本プロモーターに置換することである。得られた構築物は、PolIII基本プロモーターに会合したPolII調節領域由来の調節エレメントを有する。PolIII基本プロモーターに連結されたPolII調節領域由来の1つまたは複数の調節エレメントの逆も行うことができる。いずれにしても、PolIII基本プロモーターおよびPolII調節領域由来の少なくとも1つのさらなる調節エレメントを有するキメラ核酸が得られる。
【0089】
例えば、U6プロモーター、RNAポリメラーゼIII型プロモーターは、基本プロモーターまたはコアプロモーターならびにPSEおよびDSEと呼ばれる2つの調節エレメントを有する。グリア繊維性酸性タンパク質(GFAP)のタンパク質プロモーター、グリア細胞選択プロモーターは、コアプロモーター、コアプロモーターに対して5’側の3つの調節領域、およびコアプロモーターに対して3’側の1つの調節領域を有する。U6の基本プロモーターおよびRNAiの組織選択的発現を示すGFAPプロモーターの調節領域からなるキメラプロモーターを作製することが可能である。この証拠は、この方法を使用して興味深い発現ターゲティング特性を有する広範なRNAiプロモーターを体系的に作製することができるというより広い概念を支持する。これらには、他の組織特異的プロモーター、放射線誘導性プロモーター、リガンド誘導性プロモーター、エストロゲン誘導性プロモーター、生物特異的プロモーター(すなわち、ウイルス、寄生虫、または酵母特異的プロモーターの複製の同一の一般的分布で発現するウイルス特異的プロモーター)、腫瘍特異的プロモーター、細胞周期依存性プロモーター、および発生段階特異的プロモーターの作製が含まれるが、これらに限定されない。
B.変異プロモーター
TATAボックス領域に対する簡潔な点変異によってプロモーターをRNAポリメラーゼII型プロモーターからRNAポリメラーゼIII型プロモーターに変換することができることが証明されている。このアプローチを使用して、RNAポリメラーゼII型プロモーターのターゲティング特性を保持しながらRNAポリメラーゼII型プロモーターをRNAiプロモーターに変換することができる。例えば、グリア繊維性酸性タンパク質(GFAP)のTATAボックスのATAAからAATATへの変異により、組織選択的発現を有するRNAiプロモーターに変換する。
【0090】
同様に、この簡潔な方法を使用して、広範なRNAポリメラーゼII型プロモーターをRNAポリメラーゼIII型プロモーターに変換することができる。これにより、種々の特徴を有するターゲティングRNAiプロモーター(他の組織特異的プロモーター、放射線誘導性プロモーター、リガンド誘導性プロモーター、エストロゲン誘導性プロモーター、生物特異的プロモーター(すなわち、ウイルス、寄生虫、または酵母特異的プロモーターの複製の同一の一般的分布で発現するウイルス特異的プロモーター)、腫瘍特異的プロモーター、細胞周期依存性プロモーター、および発生段階特異的プロモーターが含まれるが、これらに限定されない)が作製される。
C.RNAiプロモーターを作製するための調節エレメントのより一般的な混合、定方向変異誘発と調節エレメントの混合との組み合わせ
RNAiプロモーターの作製は、複数の調節エレメント型の混合(コアプロモーターの混合に加えるかコアプロモーターの混合の代わり)または定方向変異誘発と調節エレメントの任意の程度の混合物の組み合わせとの組み合わせ含み得る。さらに、複数のRNAポリメラーゼII型プロモーター型由来の調節エレメントを有する化合物RNAiプロモーターを使用して、RNAi発現のより特異的な制御をもたらすことができる。これには、グリア細胞へのRNAi発現のターゲティングを改良するためのグリア特異的である2つのプロモーターのような類似の発現特性を有する2つのプロモーター由来の調節エレメントの使用または特定の組織中で腫瘍をターゲティングできるキメラプロモーターを作製するための腫瘍特異的RNAiプロモーター由来のエレメントを有する組織特異的RNAiプロモーター由来の調節エレメントの使用が含まれるであろうが、これらに限定されない。特定の調節エレメントの封入または除外を使用して、ターゲティングの程度を制御するかRNAiプロモーターのターゲティングを拡大するか完全に変化させることができる。
D.PolIIIプロモーター
多くの異なるPolIIIプロモーターを、本発明のPolIII/PolII融合プロモーターの構築で使用することができる。プロモーターの周知の例には、U6プロモーター、H1プロモーター、およびtRNAプロモーター(例えば、セレノシステインtRNA遺伝子(TRSP))が含まれる。これらのプロモーターの配列は公知であり、常套の分子生物学的方法によってこれらを操作して、組換え核酸構築物を作製することができる。
【0091】
他のPolIIIプロモーターには、7SL RNAプロモーター(例えば、シロイヌナズナ、ヒト、またはマウス)、RNアーゼP RNA(RPPH1)遺伝子プロモーター(例えば、家畜犬(イヌ))、およびアデノウイルスVA1ポリメラーゼIII(polIII)プロモーターが含まれる。
【0092】
公知であるか同定されるさらなるPolIIIプロモーターを使用することもできる。かかるプロモーターを、前にPolIIIプロモーターが同定された方法と類似の方法によって同定することができる。
E.PolII調節領域エレメント
PolIIIプロモーターと同様に、多くの異なるPolII調節領域およびエレメントが公知であり、より多くが同定されている。かかる領域およびエレメントを使用して、本発明の融合プロモーターを構築することができる。PolIIプロモーターおよびその関連する調節エレメントは、対応する遺伝子について証明された種々の特定の調節に注目すべきである。かかる調節エレメントを、本発明のPolIII/PolII融合プロモーター中に組み込み、それにより、作動可能に連結されたコード配列の融合プロモーター由来の発現の特異的調節を提供することができる。
【0093】
かかるPolII調節エレメントによって得られる特異的調節の例には、細胞型特異的調節、組織特異的調節、細胞周期特異的調節、発生段階特異的調節、放射線誘導調節、およびホルモン誘導調節が含まれる。異なる調節型を提供するエレメントを組み合わせて使用した場合でさえ、1つの構築物を有する複数の調節型および/またはさらにもしくは相乗的に特異的な調節効果を提供することができる。
III.RNAi作用因子および他のRNA分子をコードする核酸
本発明の核酸構築物には、RNAi作用因子またはミクロRNA(miRNA)などの他の短いRNAをコードする核酸配列に作動可能に連結された融合プロモーターを有する核酸構築物が含まれる。かかるRNAi作用因子には、siRNAおよびshRNA、ならびにRNAi機構によって細胞内でより短い配列にプロセシングされるより長い配列が含まれる。
【0094】
shRNAコード核酸配列または分子は、ヌクレオチド配列を有する第1配列(または部分)および第2配列(または部分)を含み、その結果、これらの部分によってコードされるRNA配列が互いにハイブリッド形成して二重鎖または二本鎖のステム部分を形成するのに十分に相補的である。かかる十分な相補性は、これらの部分が十分または完全に相補的である必要はない。ステム形成部分は、配列を有する部分(ループ部分またはループコード部分と呼ばれる)によって連結しており、その結果、該部分由来のコードされたRNAが他のshRNA部分にアニーリングやハイブリッド形成しない(すなわち、一本鎖ループを形成する)。かかるshRNAコード核酸配列または分子が転写され、それにより、shRNAが形成される。shRNAは、1つまたは複数のバルジ(すなわち、ステムの一部に小さなヌクレオチド「ループ」(例えば、1、2、または3ヌクレオチドのループ)を作製する余分なヌクレオチド)も含み得る。コードされるステム部分は同一の長さであり得るか、または1つの部分は、例えば、1〜5ヌクレオチドのオーバーハング(例えば、3−オーバーハング)を含み得る。
【0095】
shRNAについて、コードされたshRNAのステム部分の1つの鎖は、RNA干渉(RNAi)による標的RNAの分解または切断を媒介するのに標的RNA(例えば、mRNA)に十分に相補的(例えば、アンチセンス)である。アンチセンス部分は、ステムの5’末端または3’末端上に存在し得る。shRNAコード核酸のステムコード部分(またはshRNAのステム部分)は、典型的には、約15〜約50ヌクレオチド長である。哺乳動物細胞中で使用する場合、ステム部分の長さを、インターフェロン経路のような誘発非特異的応答を回避するために30ヌクレオチド未満に選択することができる。非哺乳動物細胞では、ステムは、30ヌクレオチドより長くてよい。実際、ステム部分は、標的mRNAに相補的なはるかに長い区分(全mRNAを含む長さまで)を含み得る。shRNA中のループ部分(またはコードDNA中のループコード部分)は、種々の長さ(例えば、約2〜約20ヌクレオチド長(すなわち、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれを超えるヌクレオチド長))であり得る。あるループ部分は、「テトラループ」配列と呼ばれる4ヌクレオチド配列であるか、またはこれを含む。制限されないが、かかるテトラループ配列には、GNRA(Nは任意のヌクレオチドであり、Rはプリンヌクレオチドである)、GGGG、およびUUUUが含まれる。
【0096】
siRNAのために、発現がビシストロニック配列に由来し、二本鎖siRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖の逆方向領域を有するように構築物を設計することができる。次いで、2つの相補鎖は、細胞中でハイブリッド形成することができる。あるいは、各鎖の発現は、個別の融合プロモーターに由来し得、これらは、同一であっても異なっていても良い。異なるプロモーターの場合、総合してdsRNA調節の特異性が増加するようにプロモーターを選択することができる(例えば、腫瘍特異的プロモーターと組み合わせた細胞型特異的プロモーター)。
【0097】
siRNAまたはshRNAのアンチセンス部分の配列を、翻訳の開始から100〜200または300ヌクレオチド上流または下流の領域からの18、19、20、21、22、23、24、25、またはそれを超えるヌクレオチド(標的RNA(例えば、mRNA)の内部由来の配列)の選択によって設計することができる。一般に、標的RNA(例えば、mRNA)の任意の部分(5’UTR(非翻訳領域)、コード領域、または3’UTRが含まれる)から配列を選択することができる。この配列は、2つの隣接するAAヌクレオチドを含む標的遺伝子領域の直後に続き得る。ヌクレオチド配列の最後の2つのヌクレオチドを、UUであるように選択することができる。このようにして生成されたshRNAおよびより長いdsRNAを、RNAi機構(すなわち、ダイサーおよび/またはRISC複合体)によって適切な条件下で(例えば、適切なインビトロ反応または細胞中で)プロセシングして、siRNAを生成する。一本鎖RNA(shRNAおよびmiRNAが含まれる)を外因的に合成することができるか、RNAポリメラーゼ(例えば、PolIIまたはPolIIIポリメラーゼ)からインビボで転写することができる。
IV.ベクターおよび宿主細胞
本発明はまた、本発明の構築物を含むベクターに関する。発現ベクター(特に、真核細胞中での発現のための発現ベクター)が特に有利である。かかるベクターは、例えば、ウイルスベクター、プラスミドベクター、コスミドベクター、または人工染色体(例えば、酵母人工染色体)ベクターであり得る。
【0098】
典型的には、プラスミドは、選択されたDNA配列(例えば、コード配列)の挿入のための1つまたは複数のクローニング部位を含む環状dsDNAエレメントである。かかるプラスミドは、機能的複製起点を含み得るので複製能力を示すか、複製欠損であり得る。
【0099】
プラスミドに加えて、ウイルスベクター(例えば、複製欠損のレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)を有利に使用することもできる。広範な種々の異なる性質を有する多数のかかるウイルスベクターが開発されている。例えば、かかるウイルスベクターは、複製欠損のレトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスであり得る。組換えレトロウイルスの産生およびかかるウイルスのインビトロまたはインビボでの細胞への感染のための技術および手順は、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel,F.M.ら(eds.)Greene Publishing Associates,(1989),Sections 9.10−9.14および他の標準的な実験マニュアルに記載されている。適切なレトロウイルスの例には、pLJ、pZIP、pWE、およびpEMが含まれ、これらは当業者に周知である。適切なパッケージングウイルス株の例には、.psi.Crip、.psi.Cre、.psi.2、および.psi.Amが含まれる。
【0100】
本明細書中に記載の調節可能なshRNA構築物をコードおよび発現するが、正常な溶解性ウイルスの生活環におけるその複製能力に関して不活性であるようにアデノウイルスのゲノムを操作することができる。例えば、Berknerら(1988)BioTechniques 6:616;Rosenfeldら(1991)Science 252:431−434;およびRosenfeldら(1992)Cell 68:143−155を参照のこと。アデノウイルスAd株5dl324型または他のアデノウイルス株(例えば、Ad2、Ad3、Ad7など)由来の適切なアデノウイルスベクターは、当業者に周知である。あるいは、Tratschinら(1985)Mol.Cell.Biol.5:3251−3260などに記載のアデノ随伴ウイルスベクターを使用して、トランス活性化因子融合タンパク質を発現することができる。
【0101】
他のウイルスベクター代替物には、レンチウイルスベクターが含まれる。このようなベクターならびにその調製および使用は、例えば、米国特許第6,924,123号、同第6,863,884号、同第6,830,892号、同第6,818,209号、同第6,808,923号、同第6,799,657号(これら全ての全体が本明細書中で参考により援用される)に記載されている。
【0102】
本発明のベクターは、PolIII/PolII融合プロモーターに作動可能に連結されたRNAi作用因子コード(shRNAコード)核酸配列を有利に含み得る。特定の発現ベクターの設計に含まれる他のエレメントは、形質転換すべき宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベルなどの要因に依存し得る。本発明の発現ベクターを、宿主細胞に導入し、それにより、本明細書中に記載の核酸によってコードされるタンパク質またはペプチド(融合タンパク質またはペプチドが含まれる)を産生することができる。
【0103】
本明細書中に記載のベクターを、当該分野内で公知の種々の方法のいずれか1つによって細胞または組織に導入することができる。かかる方法は、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1992)(本明細書中で参考により援用される)に記載されている。Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,Md.(1989);Hittら、”Construction and propagation of human adenovirus vectors,” in Cell Biology:A Laboratory Handbook,Ed.J.E.Celis.,Academic Press.2nd Edition,Volume 1,500−512頁,1998;Hittら、”Techniques for human adenovirus vector construction and characterization,” in Methods in Molecular Genetics,Ed.K.W.Adolph,Academic Press,Orlando,Fla.,Volume 7B,12−30頁,1995;Hitt,ら、”Construction and propagation of human adenovirus vectors,” in Cell Biology:A Laboratory Handbook,” Ed.J.E.Celis.Academic Press.479−490頁,1994(これらも本明細書中で参考により援用される)も参照のこと。方法には、例えば、組換えウイルスベクターを使用した安定なまたは一過性のトランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション、および感染が含まれる。用語「トランスフェクトする」または「トランスフェクション」は、宿主細胞に核酸を導入するための全ての常套の技術(リン酸カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション、および微量注入が含まれる)を含むことが意図される。適切な宿主細胞のトランスフェクション方法は、Sambrookら(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory press(1989))および他の実験書に見出すことができる。
【0104】
植物細胞のために、Tiプラスミドまたはウイルスベクターをしばしば使用する。例えば、かかるプラスミドおよびウイルスベクターを使用して、アグロバクテリウムツメファシエンス媒介トランスフェクション(A.ツメファシエンス感染に感受性を示す植物細胞用)によって宿主植物細胞をトランスフェクションすることができるか、例えば、微量注入、微粒子銃、またはエレクトロポレーションを使用して、細胞に直接挿入することができる。他の方法では、植物細胞からプロトプラストを作製し、次いで、トランスフェクションすることができる。
【0105】
本発明の核酸構築物で形質転換された宿主細胞数は、少なくとも一部が、使用した組換え発現ベクターの型およびトランスフェクション技術の型に依存する。核酸を、宿主細胞に一過性または長期発現のために導入することができる。長期発現のために、核酸を、宿主細胞のゲノムに安定に組み込むか、安定なエピソームエレメントとして残存させる。
【0106】
宿主細胞DNAへの核酸の組み込みのために、典型的には、選択性マーカー(例えば、薬物耐性)をコードする遺伝子を対象の核酸と共に宿主細胞に導入する。一般に、種々のかかる選択性マーカー(ハイグロマイシンおよびネオマイシンなどの薬物)を使用する。選択性マーカーを、対象の核酸由来の個別のプラスミドまたは他のベクターに導入することができるか、同一ベクターに導入する。本発明の核酸構築物(例えば、組換え発現ベクター)および選択性マーカーの遺伝子でトランスフェクションした宿主細胞を、選択性マーカーを使用した細胞の選択によって同定することができる。
【0107】
本発明の核酸構築物を、常套のトランスフェクション技術(例えば、リン酸カルシウム共沈、DEAE−デキストラントランスフェクション、エレクトロポレーション、および他の方法)によってインビトロでの培養で成長した真核細胞に導入することができる。細胞を、例えば、インビボでの細胞への核酸の導入に適切な送達機構、例えばウイルスベクター(例えば、Ferry,N (1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:8377−8381;およびKay,M.A.ら(1992)Human Gene Therapy 3:641−647を参照のこと)、アデノウイルスベクター(例えば、Rosenfeld,M.A.(1992)Cell 68:143−155;およびHerz,J.and Gerard,R.D.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2812−2816を参照のこと)、受容体媒介性DNA取り込み(例えば、Wu,G.and Wu,C.H.(1988)J.Biol.Chem.263:14621;Wilsonら(1992)J.Biol.Chem.267:963−967;および米国特許第5,166,320号を参照のこと)、DNAの直接注入(例えば、Acsadiら(1991)Nature 332:815−818;およびWolffら(1990)Science 247:1465−1468を参照のこと)、または遺伝子銃(例えば、Cheng,L.ら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:4455−4459;およびZelenin,A.V.ら(1993)FEBS Letters 315:29−32を参照のこと)の適用によってインビボでトランスフェクションすることもできる。したがって、本発明では、細胞を、インビトロまたはエキソビボでトランスフェクションして被験体に投与することができるか、あるいは、細胞を、インビボで直接修飾することができる。
【0108】
本発明の別の態様は、本発明の宿主構築物が導入された宿主細胞(すなわち、「組換え宿主細胞」)に関する。用語「組換え宿主細胞」は、特定の対象細胞だけでなく、かかる細胞の子孫または潜在的子孫をいうと理解される。変異または環境の影響のいずれかによって継続的にある修飾が起こり得るので、かかる子孫は、実際、親細胞と同一ではない場合があるが、本明細書中で使用されるこの用語の範囲内に依然として含まれる。
【0109】
宿主細胞は、任意の原核細胞または真核細胞であり得るが、真核細胞が好ましい。例示的な真核細胞には、哺乳動物細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)またはCOS細胞など)が含まれる。他の適切な宿主細胞が当業者に公知である。
V.トランスジェニック動物
本発明はまた、トランスジェニック生物(導入遺伝子を発現する少なくともいくつかの細胞を有する動物である非ヒト動物など)に関する。このような非ヒトトランスジェニック動物を、例えば、選択された障害(変異体または異常な遺伝子の発現、機能獲得型変異体に関連する疾患および障害、および神経疾患および障害など)の有害な症状を改善することができる活性薬剤または化合物(例えば、薬物、医薬品など)を同定するために設計されたスクリーニングアッセイで使用することができる。
【0110】
導入遺伝子は、細胞(例えば、哺乳動物細胞)に組み込まれているか組み込まれるように設計される構築物であり、この導入遺伝子を、ヌクレオチド配列を含む構築物が発現されるように生きている動物に組み込む。導入遺伝子は、トランスジェニック動物に対して内因性または外因性の配列(例えば、RNAi作用因子コード配列)を含み得る。導入遺伝子は、トランスジェニック動物のいくつかの細胞または全細胞中に染色体外エレメントとして存在するか、いくつかの細胞または全細胞、より好ましくは動物の生殖系列DNAに組み込まれて(すなわち、その結果、導入遺伝子が動物の子孫に全てまたはいくつか伝播される)、トランスジェニック動物の1つまたは複数の細胞型または組織中での導入遺伝子産物の発現を指示することができる。別途明確に示さない限り、本明細書中でトランスジェニック動物という場合、一過性とは対照的に長期間導入遺伝子が存在する(例えば、生殖系列細胞の染色体中に安定に組み込まれた)ことを意味する。多くの場合、内因性遺伝子発現を妨害しないような部位でゲノムに導入遺伝子が組み込まれることが望ましい。
【0111】
本発明のトランスジェニック非ヒト動物は、例えば、哺乳動物、トリ、爬虫類、または両生類であり得る。本明細書中に記載の用途に適切な哺乳動物には、げっ歯類、反芻動物、有蹄動物、家畜、および乳畜が含まれる。好ましい動物には、げっ歯類、ヤギ、ヒツジ、ラクダ、ウシ、ブタ、ウマ、雄牛、ラマ、ニワトリ、ガチョウ、およびシチメンチョウが含まれる。好ましい実施形態では、非ヒト動物は、マウスまたはラットである。
【0112】
種々のトランスジェニック動物の産生方法が記載されている(例えば、Watson,J.D.,ら、”The Introduction of Foreign Genes Into Mice,” in Recombinant DNA,2d Ed.,W.H.Freeman & Co.,New York(1992),255−272頁;Gordon,J.W.,Intl.Rev.Cytol.115:171−229(1989);Jaenisch,R.,Science 240:1468−1474(1989);Rossant,J.,Neuron 2:323−334(1990)を参照のこと)。例示的なトランスジェニックブタの産生プロトコールは、White and Yannoutsos,Current Topics in Complement Research:64th Forum in Immunology,88−94頁;米国特許第5,523,226号;米国特許第5,573,933号;PCT出願WO93/25071号;およびPCT出願WO95/04744号に見出すことができる。例示的なトランスジェニックラットの産生プロトコールは、Bader and Ganten,Clinical and Experimental Pharmacology and Physiology,Supp.3:S81−S87,1996に見出すことができる。例示的なトランスジェニックウシの産生プロトコールは、Transgenic Animal Technology,A Handbook,1994,ed.,Carl A.Pinkert,Academic Press,Incに見出すことができる。例示的なトランスジェニックヒツジの産生プロトコールは、Transgenic Animal Technology,A Handbook,1994,ed.,Carl A.Pinkert,Academic Press,Incに見出すことができる。ある例示的方法を、以下により詳細に記載する。
A.前核注入
トランスジェニック動物を、卵細胞への本発明の核酸構築物の注入によって産生することができる。種々の発生段階の胚標的細胞を使用して、導入遺伝子を導入する。胚標的細胞の発生段階に応じて、異なる方法を使用する。導入遺伝子の例示的導入方法には、受精卵または接合子の微量注入(Brinster,ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1985)82:4438−4442)およびウイルス組み込み(Jaenisch R.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1976)73:1260−1264;Jahner,ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1985)82:6927−6931;Van der Putten,ら(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)82:6148−6152)が含まれるが、これらに限定されない。胚操作および微量注入の手順は、例えば、Manipulating the Mouse Embryo(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1986(その内容が本明細書中で参考により援用される))に記載されている。他のトランスジェニック動物の産生のために類似の方法を使用する。
B.胚幹細胞由来のトランスジェニック動物
トランスジェニック動物(例えば、トランスジェニックマウス)の別の作製方法では、組換えDNA分子(例えば、構築物または導入遺伝子)を、胚幹(ES)細胞(例えば、マウス細胞)に導入する。次いで、得られた組換えES細胞を、標準的技術を使用して胚盤胞に微量注入する。
【0113】
一般に、ES細胞を、着床前の胚から得、インビトロで培養する(Evans,M J.,ら、Nature 292:154156(1981);Bradley,M.O.ら、Nature 309:255−258(1984);Gossler,ら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)83:9065−9069(1986);Robertsonら、Nature 322:445448(1986))。発生中の胚の生殖系列に組み込まれてその一部になることができる任意のES細胞株は、構築物の生殖系列伝達に適切である。例えば、Robertson,Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells.A Practical Approach,E.J.Robertson,ed.IRL Press,Washington,D.C.,1987;Bradleyら、Current Topics in Devel.Biol.,20:357−371,1986;およびHoganら、Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1986(その内容全体が本明細書中で参考により援用される)に記載の当該分野で公知の方法を使用して、ES細胞を培養し、DNA挿入のために調製することができる。
【0114】
当該分野で公知の方法(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning.A Laboratory Manual,2nd Ed.,ed.,Cold Spring Harbor laboratory Press:1989(その内容が本明細書中で参考により援用される)に記載の方法)によって、発現構築物をES細胞に導入することができる。例示的方法には、エレクトロポレーション、微量注入、およびリン酸カルシウム処理法が含まれるが、これらに限定されない。
【0115】
形質転換ES細胞を、典型的には、構築物の存在のスクリーニングによって同定する。例えば、ES細胞ゲノムDNAを直接試験することができる。例えば、標準的な方法を使用したES細胞からのDNAの抽出および導入遺伝子配列と特異的にハイブリッド形成するように設計されたプローブを用いたサザンブロットでの探索によってこれを行うことができる。ゲノムDNAを、特定のサイズおよび構築物または導入遺伝子の配列のDNAフラグメントを増幅し、それにより構築物または導入遺伝子を含む細胞のみが適切なサイズのDNAフラグメントを生成するように特異的に設計されたプライマーを使用したPCRによって増幅することもできる。別のアプローチでは、マーカー遺伝子を、構築物に組み込み、マーカー遺伝子の存在についてマーカーを試験する。例えば、抗生物質耐性マーカー遺伝子について、細胞を、別の致死濃度の抗生物質の存在下で培養することができる。抗生物質の存在を、導入遺伝子を含む細胞について選択する。マーカー遺伝子が検出可能な活性を有する酵素(例えば、β−ガラクトシダーゼまたはルシフェラーゼ)をコードする場合、適切な条件下で酵素基質を細胞に添加することができ、導入遺伝子構築物の存在の指標として酵素活性を決定することができる。
【0116】
標準的なプロトコールによって、誕生後にトランスジェニック動物を同定することができる。例えば、組織由来のDNAを、例えば、サザンブロットおよび/またはPCRを使用して、導入遺伝子構築物の存在についてスクリーニングすることができる。モザイクであるようである子孫を相互に交配して、ホモ接合性動物を生成することができる。子孫が生殖系列伝達しているかどうかが不明である場合、子孫を親株または他の株と交配し、子孫をヘテロ接合性についてスクリーニングすることができる。ヘテロ接合体を、サザンブロットおよび/またはDNAのPCR増幅によって同定する。次いで、ヘテロ接合体を相互に交配させて、ホモ接合性トランスジェニック子孫を生成することができる。この交配の産物である子孫ならびに公知のヘテロ接合体および野生型動物である動物由来の等量のゲノムDNAのサザンブロッティングによってホモ接合体を同定することができる。サザンブロットをスクリーニングするためのプローブを、構築物もしくは導入遺伝子またはマーカー遺伝子またはその両方の配列に基づいて設計することができる。
【0117】
トランスジェニック動物を同定および特徴づける他の技術は、当該分野で公知である。例えば、ウェスタンブロットを使用して、ターゲティングしたタンパク質に対する抗体での探索によって阻害についてターゲティングされた遺伝子の発現レベルを評価することができる。あるいは、マーカー遺伝子産物に対する抗体を使用することができる。
【0118】
本発明はまた、トランスジェニック動物由来の本発明の導入遺伝子を含む細胞に関する。例えば、変異または組換えによってある遺伝子の変化が後世で起こり得るので、かかる子孫細胞は、親細胞と同一ではない場合がある。
VI.PolIII/PolII融合プロモーターの構築および試験
少なくとも1つのPolII調節領域由来の1つまたは複数のさらなる調節エレメントと共にPolIII転写遺伝子由来の基本プロモーターを使用して、融合プロモーターを構築することができる。さらに、同一または異なるPolIII遺伝子由来のさらなる調節エレメントを、融合プロモーターに組み込むことができる。構築を簡潔にするために、開始部位に対して5’側の調節エレメントを選択して使用することが有利である。
【0119】
本発明の融合プロモーターで使用することができるいくつかのPolIIIプロモーターが記載されている。かかるプロモーターには、U6プロモーター、H1プロモーター、tRNAプロモーター、アデノウイルスVA1などが含まれる。基本プロモーターエレメントを同定するために研究されたプロモーターについて、かかるプロモーターを、本発明融合プロモーターで使用することができる。
【0120】
tRNAプロモーターについて、RNAポリメラーゼIII転写に必要且つ十分なプロモーター配列をtRNA遺伝子中でコードし、したがって、tRNAに転写され、依然としてDおよびT.PSI.Cループ中に存在する配列から推測可能である。いくつかの場合、遺伝子本体の上流(5’)にさらなる調節配列が存在する。しかし、ほとんどの哺乳動物ゲノムは、100を超えるtRNA遺伝子をコードし、これらは重複しており、その多くが任意の5’調節配列を欠く(例えば、Thomannら、1989 J Mol Biol 209:505−523)。tRNA遺伝子の編集のデータベースは、http://rna.wustl.edu/tRNAdb/に見出すことができ、ヒトゲノムが648個のtRNA遺伝子をコードし、そのいくつかが偽遺伝子であることが公知であるが、大部分(496個)は、20個のアミノ酸をコードするのに必要な機能的tRNA(多くが重複している)をコードすることを示す。
【0121】
さらなるPolIII基本プロモーターを、常套のプロモーター分析を使用して同定し、使用することもできる。したがって、RNAPolIII転写遺伝子としての遺伝子の同定により、対応する基本プロモーターおよびさらなる調節エレメントを同定するための材料が得られる。
【0122】
同様に、PolII転写遺伝子の多数の調節領域を分析し、構成性調節エレメントを同定した。さらなるPolII調節領域およびエレメントを、常套の手段によって同定し、本発明で使用することができる。ほとんどの場合、調節領域の特定の調節特性を担うことが証明されたか見出されたエレメント組のエレメントを含むことが有利である。
【0123】
シス活性調節エレメントを得るために使用することができる特異的に調節されるPolII転写遺伝子の例には、当該分野で同定された種々のかかる遺伝子のいずれかが含まれる。多くのかかる遺伝子が記載されおり、プロモーターおよび調節エレメントが記載された例が含まれる。
VII.標的遺伝子および標的部位
一般に、機能的RNAi機構を含む細胞中でRNAiを使用して、任意の遺伝子を下方制御することができる。特に、本発明の核酸構築物を使用して、かかる遺伝子を下方調節することができる。多数のかかる遺伝子発現の阻害を、siRNAまたはshRNAのいずれかを使用して記載している。かかる遺伝子のターゲティングはまた、本発明に関連して有用である。
【0124】
1つのこのような標的遺伝子は、変異Cu、Znスーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)である。(例えば、米国特許公報2005013018号(その全体が本明細書中で参考により援用される)を参照のこと)。Cu、Znスーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)遺伝子の変異により、筋萎縮性側索硬化症(運動ニューロン変性、麻痺、および死亡を引き起こす神経変性疾患)の一部を引き起こす(Brown and Robberecht,2001;Siddique and Lalani,2002)。変異SOD1は、有毒性の獲得によって運動ニューロン変性を引き起こすことが十分に立証されている(Cleveland and Rothstein,2001)。しかし、運動ニューロンを死滅させるこの有毒性の分子的根拠や機構は理解されていない。このように疾患機構の理解が不完全であるために、治療法の妥当な設計による非常に有効な結果は得られていない。他方では、運動ニューロンを死滅させる毒性が変異タンパク質に起因するので(Cleveland and Rothstein,2001)、変異タンパク質の減少によって疾患が緩和されるかさらに防止されるはずである。
【0125】
RNAiに適切な標的部位を、例えば、当業者に公知の種々の方法のいずれかによって同定することができる。ほとんどの部位はRNAiによって少なくともいくらかの阻害レベルを提供するが、いくつかの部位は実質的により高い阻害レベルを提供することが見出されている。かかる「良好な」部位の1つの同定方法は、潜在的な標的部位の簡潔な試験による。さらに、多数の異なるアルゴリズムが、良好な標的部位を同定するために設計されている。一般に、かかるアルゴリズムを使用していくつかの部位を同定し、相対的有効性について試験する。
【0126】
したがって、mRNA標的中の適切な領域の例示的選択方法は、利用可能な刊行物(例えば、Vickersら、J.Biol.Chem.278:7108−7118,2003;Elbashirら、Nature 411:494−498,2001;Elbashirら、Genes Dev.15:188−200,2001を参照のこと)に記載されている。良好な標的配列は、一般に、低濃度のsiRNAによる下方調節に感受性を示す配列である。siRNA設計のガイダンスには、Ambion’s Technical Bulletin #506(Ambion Inc.,Austin,Tex.から利用可能)に記載のガイダンスが含まれる。低濃度のsiRNAの使用および別のスプライシングされた遺伝子産物で生じる配列の回避は、標的外の非配列特異的阻害の回避または制限に有用である。遺伝子が下方調節されるかどうかの評価および下方調節範囲の評価を、例えば、リアルタイムPCR、PCR、ウェスタンブロッティング、フローサイトメトリー、またはELISA法を使用して行うことができる。
【0127】
例として、mRNA中の潜在的な標的部位を、標的の近づきやすさおよび二次構造の予想を含む妥当な設計原理に基づいて同定する。これらはそれぞれ、mRNA標的の発現のノックダウンの再現性および程度ならびに治療効果に必要なsiRNAの濃度に影響を及ぼし得る。さらに、siRNA二重鎖の熱力学的安定性(例えば、アンチセンスsiRNA結合エネルギー、内部安定性プロフィール、およびsiRNA二重鎖末端のさらなる安定性)は、そのRNA干渉を得る能力に相関し得る(Schwarzら、Cell 115:199−208,2003;Khvorovaら、Cell 115:209−216,2003)。経験則(Tuschl laboratory(Elbashirら、Nature 411:494−498,2001;Elbashirら、Genes Dev.15:188−200,2001)に記載の経験則)も使用する。
【0128】
siRNA設計のためのソフトウェアおよびインターネット双方向サービスは、Ambion and Invitrogenウェブサイトで利用可能である。siRNAオリゴの設計および優先順位づけのためのさらなるソフトウェアシステムも記載されている(例えば、Levenkovaら、Bioinformatics 20:430−432,2004を参照のこと)。Levenkovaシステムはインターネットで利用可能であり、学術的および商業的目的のために無料でダウンロード可能である。
【0129】
siRNAオリゴの選択は、特異性対ヒト配列(すなわち、1つの良好なヒット対ヒトUnigeneおよび2番目に最良のヒットに対するハイブリッド形成温度(Tm)の大きな相違)およびGC含量(すなわち、40〜60%の範囲のGC率の配列)を含み得る。
【0130】
オリゴの潜在的ハイブリッド形成のより詳細な状況、RNA標的の近づきやすさ、および二次構造の予想を、利用可能なRNA構造予測ソフトウェア(例えば、Sfoldソフトウェア)を使用して行うことができる(Ding Y and Lawrence,C.E.(2004)Rational design of siRNAs with Sfold software.In:RNA Interference:from Basic Science to Drug Development.K.Appasani(Ed.),Cambridge University Press;Ding and Lawrence,Nucleic Acids Res.29:1034−1046,2001;Nucleic Acids Res.31:7280− 7301,2003)。Sfoldは、インターネットで利用可能である。RNA二次構造の決定は、Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry,Beaucageら、ed,2000,at 11.2.1−11.2.10にも記載されている。
【0131】
さらに、ある変異(例えば、siRNAまたはshRNAのアンチセンス鎖の5’末端上の第1、第2、または第3の位置でのAまたはUの挿入または置換)挿入により、RNAi効率が向上することが記載されており、この変異を本発明の構築物に組み込むことができる。かかる変異は、例えば、米国特許公報20050166272号(その全体が本明細書中で参考により援用される)に記載されている。
VIII.使用方法
本発明は、例えば、バイオテクノロジー、遺伝子分析、薬物の同定および開発、薬物の同定および開発、及び医学的治療法における種々の異なる適用に適切である。例えば、現在、ヒトならびに他の動物および他の生物における遺伝子機能の分析が多数行われている。したがって、特異的の遺伝子が調整されたトランスジェニック生物または組換え細胞を都合良く得ることができれば、遺伝子機能を分析し、薬物となる化合物を同定および評価することができる。
【0132】
特に、トランスジェニック動物および細胞における下方調節特異的遺伝子の影響の決定により、これらの遺伝子の生物学的機能を決定することができる。遺伝子機能の同定によって薬物の標的が立証され、疾患モデルを確立することが可能である。したがって、特定の細胞を、遺伝子(例えば、その活性が特定の疾患または病態に関連するか相関する遺伝子)の活性を下方調節するRNAi作用因子をコードする組換えベクター(例えば、レトロウイルスベクターなどのウイルスベクター)によりインビボまたはエキソビボでトランスフェクションすることができる。
【0133】
いくつかの適用では、特定の核酸またはポリペプチド(RNAi作用因子(例えば、siRNAまたはshRNA)および/または標的mRNAおよび/またはかかる標的mRNAによってコードされる遺伝子産物など)の存在および/またはレベルを決定することが有利であり得る。種々の適用可能な定性的および定量的検出方法および関連する技術(例えば、核酸のクローニングおよび配列決定、オリゴヌクレオチドライゲーション、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびその変形形態の使用、一ヌクレオチドプライマー誘導伸長アッセイ、標的特異的オリゴヌクレオチドを使用したハイブリッド形成技術、およびサンドイッチハイブリッド形成法が含まれる)が公知であり、これを使用することができる。
【0134】
標識プライマーまたはターミネーターを使用した市販の自動化シークエンサーまたはゲルベースの方法を使用した配列決定を使用して、配列決定を行うことができる。標的DNAまたはRNA分子上で互いに直接隣接してアニーリングするオリゴヌクレオチド配列のライゲーションに基づいた方法によっても配列分析を行う(Wu and Wallace,Genomics 4:560−569(1989);Landrenら、Proc.Natl.Acad.Sci.87:8923−8927(1990);Barany,F.,Proc.Natl.Acad.Sci.88:189−193(1991))。リガーゼ連鎖反応(LCR)は、標的増幅のために熱安定性Taqリガーゼを使用し、高いストリンジェンシーを提供する高い反応温度でライゲーション反応を行うことができるようにするので、特に有用である(Barany,F.,PCR Methods and Applications 1:5−16(1991))。
【0135】
種々の形式(フィルターベースの形式、サザンブロット、スロットブロット、「逆」ドットブロット、液相ハイブリッド形成、固体支持体ベースのサンドイッチハイブリッド形成、ビーズベース、シリコンチップベース、およびマイクロタイターウェルベースのハイブリッド形成形式が含まれる)でハイブリッド形成反応を行うことができる。特定のオリゴヌクレオチドプローブは、典型的には、10〜1,000塩基、より一般的には、15塩基と50塩基との間のサイズ範囲である。オリゴヌクレオチドプローブを使用して必要な標的の識別を行うために、ハイブリッド形成反応を、一般に、20〜60℃、より一般的には30〜50℃の範囲で行い、温度および/または塩濃度および/または洗浄物へのホルムアミドなどの他のカオトロピック剤の封入を選択して、最適な識別を提供する。
【0136】
特定のタンパク質またはポリペプチドの検出を、一般に、直接または間接的に標識した特異的抗体(例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、またはそのフラグメント)を使用して行う。かかる標識の例には、蛍光部分、比色部分、光散乱部分、および放射性同位体が含まれる。当業者は、かかる検出の実施に精通している。
【0137】
上記の一般的な検出方法および他の方法を、本発明の核酸構築物の試験および/または使用で使用することができる。
A.スクリーニング、アッセイ、および治療薬試験
本発明は、例えば、潜在的な薬理学的作用因子を同定および/または分析(例えば、試験化合物ライブラリーからの新規の薬理学的作用因子の同定および/または既知の薬理学的活性を有する化合物の作用および/または副作用の機構の特徴づけ)するためのスクリーニングアッセイで使用するために適用することができる。
【0138】
したがって、本発明は、本発明のPolIII/PolII融合プロモーターから作用因子(特に、RNAi作用因子)を発現する細胞または生物を使用して種々の生物学的アッセイおよび/または薬物スクリーニングアッセイを実施するための材料および方法に関する。一般に、かかる細胞は、真核細胞(例えば、動物細胞または植物細胞)であり、そして/またはかかる生物は真核生物(例えば、非ヒトトランスジェニック動物)である。
【0139】
かかるアッセイおよび試験は、一般に、細胞または生物中の核酸配列(例えば、RNAi作用因子コード配列)の発現および発現の少なくとも1つの影響の決定を含む。1つまたは少数のRNAi作用因子を試験またはアッセイするためにアッセイを行うことができるか、例えば、化合物ライブラリー中の化合物のための大規模アッセイ(少なくとも10、100、1000、10、10、10種の化合物のアッセイまたは試験など)で行うことができる。
【0140】
RNAi作用因子発現の影響の決定を含むアッセイまたは試験は、RNAi作用因子発現の不在、正および/または負のコントロール化合物の存在、および/または1つまたは複数の試験化合物の存在の影響の決定または比較も有利に含み得る。典型的には、かかるアッセイまたは試験は、RNAi作用因子および/または他の試験化合物の薬理学的性質の決定を含む。
【0141】
試験化合物を、異なる方法(例えば、当該分野で公知の化合物ライブラリー法における多数のアプローチのうちのいずれかを使用して)で得ることができる。例えば、ライブラリーは、市販の化合物ライブラリー、市販の化合物から構築したライブラリー、あつらえた化合物ライブラリー、合成化合物ライブラリー、および、例えば、細菌、酵母、および/または真菌によって産生された天然産物のライブラリーであり得る。
【0142】
1つの広義のカテゴリーのライブラリーおよびライブラリー法は、組み合わせライブラリー法であり、以下が含まれるが、これらに限定されない:生物ライブラリー、空間的にアドレス可能な並行固相または液相ライブラリー;解析が必要な合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物」ライブラリー法;およびアフィニティクロマトグラフィ選択を使用した合成ライブラリー法(Lam,K.S.(1997)Anticancer Drug Des.12:145)。かかるライブラリーは、ペプチドおよび/またはペプチドアナログ、オリゴヌクレオチドおよび/またはオリゴヌクレオチドアナログ、および/または小分子ライブラリーであり得る。
【0143】
分子ライブラリーの合成方法の例を、例えば、DeWittら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:6909;Erbら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11422;Zuckermannら(1994).J.Med.Chem.37:2678;Choら(1993)Science 261:1303;Carrellら(1994)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2059;Carellら(1994)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2061;およびGallopら(1994)J.Med.Chem.37:1233に見出すことができる。
【0144】
化合物のライブラリーは、例えば、溶液(例えば、Houghten(1992)Biotechniques 13:412−421)、ビーズ(Lam(1991)Nature 354:82−84)、チップ(Fodor(1993)Nature 364:555−556)、細菌(Ladnerの米国特許第5,223,409号)、胞子(Ladnerの米国特許第5,223,409号)、プラスミド(Cullら(1992)Proc Natl Acad Sci USA 89:1865−1869)、またはファージ(Scott and Smith(1990)Science 249:386−390);(Devlin(1990)Science 249:404−406);(Cwirlaら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.87:6378−6382);(Felici(1991)J.Mol.Biol.222:301−310);(Ladner、上記))に存在し得る。
【0145】
スクリーニングアッセイによって同定されたさらなる化合物または作用因子を、さらに試験および/または開発し、そして/または単独または組み合わせて(例えば、本発明のRNAi作用因子と)、治療的または予防的に使用することができる。
B.機能的ゲノミクスおよび/またはプロテオミクス
本発明の細胞および生物の一定の適用には、遺伝子発現プロフィールおよび/またはプロテオームの分析が含まれる。多くの場合、かかる分析は、標的遺伝子のノックアウトまたはノックダウン、遺伝子機能または阻害効果の指標において見られる表現型の変化の決定を含む。あるいは、かかる分析を、1つまたは複数の標的タンパク質の変異体または変異形態に対して行うことができ、この変異体または変異形態を上記の外因性標的核酸によって細胞または生物に再導入する。内因性遺伝子のノックアウトと変異した(例えば、部分的に欠失した)外因性標的の使用によるレスキューとの組み合わせは、ある利点(ターゲティングされたタンパク質の機能的ドメインの同定の補助など)を有する。かかる分析を、複数の細胞型および/または組織および/または生物のために行うことができる。これらの細胞および/または生物を、一般に、(i)標的遺伝子が阻害されていないコントロール細胞またはコントロール生物、(ii)標的遺伝子阻害が行われた細胞または生物、および(iii)標的遺伝子阻害および外因性標的核酸による標的遺伝子補完が行われた細胞または成分から選択する。
【0146】
かかるRNAノックアウト補完法を、その分取(例えば、真核細胞(特に、哺乳動物細胞、より詳細にはヒト細胞)からのタンパク質またはタンパク質複合体の親和性精製)のために使用することができる。本発明のこの実施形態では、外因性標的核酸は、親和性タグに融合する標的タンパク質を優先的にコードする。この方法は、哺乳動物細胞(特に、ヒト細胞)における機能的プロテオーム分析に適切である。本発明の別の有用性は、以前に未知の機能を有する標的遺伝子の活性を阻害するためのRNA分子の使用による生物の遺伝子機能の同定方法である。多大な時間を必要とし、且つ骨の折れる伝統的遺伝子スクリーニングによる変異体の単離の代わりに、機能的ゲノミクスは、標的遺伝子活性の量を減少させ、そして/またはタイミングを変化させるための本発明の使用による特徴づけていない遺伝子の機能の決定を想定するであろう。本発明を、薬剤学のための潜在的標的の決定、発生に関連する正常な事象および病理学的事象の理解、および出生後の発生/老化を担うシグナル伝達経路の決定で使用することができる。
【0147】
標的遺伝子を含む細胞/生物の作製により、本発明を、高処理スクリーニング(HTS)で使用することが可能である。例えば、異なる発現遺伝子を阻害することができるRNAi作用因子を含むかかる細胞を含む溶液を、規則正しいアレイとしてマイクロタイタープレート上に配置した各ウェルに配置することができ、各ウェル中のインタクトな細胞/生物を、標的遺伝子活性の阻害に対応する表現型、挙動、および/または発生の任意の変化または改変についてアッセイすることができる。かかるスクリーニングは、多数をプロセシングすることができる細胞および小さな被験体(例えば、シロイヌナズナ、ショウジョウバエ、真菌、線虫、ウイルス、ゼブラフィッシュ、植物、種々の生物(哺乳動物など)由来の組織培養細胞)に受け入れられる。(例えば、レポーター遺伝子構築物でトランスフェクションされた)調節されたプロモーターに応答して比色シグナル、蛍光発生シグナル、または発光シグナルを産生する線虫または他の生物を、HTS形式でアッセイすることができる。
【0148】
HTSを使用して、新規の薬物標的を同定および/または特徴づけることができる。潜在的薬物標的を、本発明を使用して立証することもできる。例えば、特定の疾患表現型を、遺伝子変異または化学物質によって誘導することができる。RNAiを使用して遺伝子を下方調節し、これらの下方調節遺伝子のいくつかによって疾患表現型を回復するか他の表現型を変化させることができ、これらは治療効果または予防効果を示す。これらの遺伝子は、潜在的な薬物標的である。
C.治療方法
本発明は、(例えば、ある予防的および/または治療的適用で)治療的に有用なRNAi作用因子発現構築物を提供する。例えば、かかる作用因子を、対応する標的遺伝子の望ましくないか異常な発現に関連する疾患または障害の治療における予防薬および/または治療薬として使用することができる。
【0149】
したがって、本発明は、疾患または障害(例えば、異常なまたは望ましくない標的遺伝子発現もしくは活性または感染に対する感受性に関連する疾患または障害)の罹患リスク(または感受性)のある被験体の予防的処置方法を提供する。疾患または障害が予防されるか、その進行が遅延するか、重症度が軽減するように、予防薬を疾患または病態に特徴的な症状が現れる前に投与することができる。
【0150】
同様に、本発明は、疾患または障害(例えば、異常なまたは望ましくない標的遺伝子発現もしくは活性または感染性作用因子由来の発現に関連する疾患または障害)を有する被験体の治療的処置方法を提供する。
【0151】
RNAi作用因子およびその標的の知識により、本発明の構築物および方法を使用して、かかる標的遺伝子が特異的に阻害され、多数の障害(癌、感染、神経障害などが含まれる)のいずれかを治療することが可能である。
【0152】
かかる予防的および治療的治療方法のために、薬理ゲノミクス分野から得た知識に基づいて治療を調整または改変することができる。本明細書中で使用される、「薬理ゲノミクス」は、臨床開発および市場に出ている薬物へのゲノミクステクノロジー(遺伝子配列決定、統計遺伝学、および遺伝子発現分析など)の適用をいう。より詳細には、この用語は、どのようにして患者の遺伝子が薬物に対する応答を決定するのかについて(例えば、患者の「薬物応答表現型」または「薬物応答遺伝子型」)の研究をいう。したがって、本発明はまた、個体の薬物応答遺伝子型に従って本発明構築物および方法を使用して個体の予防的または治療的処置を調整する方法を提供する。薬理ゲノミクスにより、臨床医または医師は、予防的または治療的処置を治療から最も利益を受ける患者を予防的または治療的処置の対象とし、有毒な薬物関連副作用を経験するであろう患者に対する処置を回避することが可能である。
IX.薬学的組成物
予防的および/または治療的処置のための本発明のRNAi作用因子を含む薬学的組成物のために、作用因子を、投与に適切な薬学的組成物に日常的に組み込む。かかる組成物は、核酸分子を含み、一般に、薬学的に許容可能な担体を含み、さらなる成分を含み得る。薬学的に活性な物質のためのかかる担体の使用は、当該分野で周知である。活性化合物に適合する任意の常套の媒質または作用因子を、本発明の薬学的組成物中で使用することができる。さらなる成分には、例えば、さらなるまたは補足的な活性化合物が含まれ得る。
【0153】
本発明の薬学的組成物を、意図する投与経路(例えば、非経口(例えば、静脈内、皮内、皮下、腹腔内、筋肉内)、経口(例えば、吸入)、経皮(局所)、および経粘膜投与)に適合するように処方する。非経口、皮内、または皮下適用のために使用される溶液または懸濁液は、以下の成分を含み得る:滅菌希釈剤(注射用の水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒など)、抗菌薬(ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなど)、抗酸化剤(アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなど)、キレート剤(エチレンジアミン四酢酸など)、緩衝液(酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、またはリン酸緩衝液など)、および浸透圧を調整するための作用因子(塩化ナトリウムまたはデキストロースなど)。酸または塩基(塩酸または水酸化ナトリムなど)を使用して、pHを調整することができる。組成物を、アンプル、使い捨てシリンジ、ガラスまたはプラスチック製の単回用量または複数回用量のバイアル、およびボトルなどに等分するか封入することができる。好ましくは、組成物は、意図する投与経路を考慮して、医学的に許容可能なレベルに滅菌されている。いくつかの場合、薬学的組成物は、特定の被験体クラス(ヒト被験体など)への投与について政府医薬品規制機関(例えば、米国FDA)によって承認されている。
【0154】
注射に適応した薬学的組成物には、例えば、滅菌水溶液(水溶性である場合)または分散液、および滅菌注射液または分散液の即時調製のための滅菌粉末が含まれる。静脈内投与のために、適切な担体には、例えば、生理食塩水、静菌水、CremophorEL(商標)(BASF,Parsippany,N.J.)、およびリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が含まれる。あらゆる場合において、組成物は無菌でなければならず、少なくともシリンジでの利用が十分に容易である流動物であるかこれに変換可能でなければならない。組成物および/または核酸構築物は、製造および保存条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保存されなければならない。
【0155】
担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、ポリエチレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびその適切な混合物を含む溶媒または分散媒であり得る。例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合の必要な粒子サイズの維持、および界面活性剤の使用によって、流動性を維持することができる。
【0156】
微生物に対する防腐剤には、種々の抗菌薬および抗真菌薬(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、およびチメロサールなど)が含まれ得る。
【0157】
多くの場合、組成物が血液に対して等張であることが望ましいであろう。組成物中で種々の等張剤(例えば、糖、ポリアルコール(マンニトール、ソルビトールなど)、塩化ナトリウム)を使用して、これを達成することができる。
【0158】
注射用組成物の吸収の遅延または拡大が望ましく、これを、吸収を遅延させる作用因子(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を組成物に含めることまたは組成物中の活性薬剤の微粒子もしくはナノ粒子を成分の放出を遅延もしくは拡大する材料でコーティングすることによって行うことができる。
【0159】
滅菌注射液を、例えば、1つまたは複数のさらなる成分を含む適切な溶媒中で必要量の活性化合物を溶解または懸濁することによって調製することができる。典型的には、かかる溶液または懸濁液の作製後に濾過滅菌を行う。一般に、塩基性分散媒および他の所望の成分を含む滅菌ビヒクル中に活性化合物を組み込むことによって分散液を調製する。滅菌注射液の調製のための滅菌粉末の場合、調製物を、例えば、真空乾燥および/または凍結乾燥によって乾燥させる。
【0160】
経口投与のための組成物は、典型的には、不活性または可食希釈剤または可食担体を含む。かかる組成物を、種々の方法(例えば、液体、カプセル、または錠剤の形態)で処方することができる。薬学的適合可能な結合剤および/またはアジュバント物質を、組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸薬、カプセル、およびトローチなどは、1つまたは複数の以下の成分または類似の性質の化合物のいずれかを含み得る:微結晶性セルロース、トラガカントガム、またはゼラチンなどの結合剤、デンプンまたはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、Primogel、またはトウモロコシデンプンなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムまたはSterotesなどの潤滑剤、コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤、スクロースまたはサッカリンなどの甘味料、またはペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジフレーバーなどの香味物質。
【0161】
吸入投与のために、化合物を、湿式または乾式エアゾールスプレーの形態で、例えば、適切な噴射剤(例えば、二酸化炭素などの気体)を含む加圧容器もしくは分注器または噴霧器から到達させる。
【0162】
経粘膜経路または経皮経路によって全身投与することもできる。経粘膜投与または経皮投与のために、典型的には、透過すべき障壁に適切な浸透剤を処方物中で使用する。多数のかかる浸透剤は、一般に当業者に公知であり、例えば、経粘膜投与、界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が含まれる。
【0163】
鼻内噴霧または座剤(例えば、ココアバターおよび他のグリセリドなどの常套の座剤基剤)の使用によって経粘膜投与を行うことができる。経皮投与のために、当該分野で一般的に公知のように、活性化合物を、軟膏、蝋膏、ゲル、またはクリーム中に処方する。
【0164】
かかる組成物に、放出制御処方物(インプラントおよびマイクロカプセル化送達系が含まれる)などの身体からの急速な排除から化合物を保護する担体を配合することもできる。生分解性の生体適合性ポリマー(酢酸エチレンビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルソエステル、およびポリ乳酸など)を使用することができる。材料を、例えば、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Inc.から購入することもできる。リポソーム懸濁液(特定の細胞にターゲティングされる(例えば、感染細胞にターゲティングされる)リポソームを含む)を使用して、薬学的組成物を調製することもできる。これらを、例えば、米国特許第4,522,811号に記載の当業者に公知の方法にしたがって調製することができる。
【0165】
容易に投与し、均一に投与するための単位投薬形態で経口または非経口の組成物を処方することが特に有利である。本明細書中で使用される、「単位投薬形態」は、治療を受ける被験体への単回投与に適切な物理的に個別の単位をいい、各単位は、必要な薬学的担体と共に所望の治療効果が得られるように計算された所定量の活性化合物を含む。本発明の単位投薬形態の仕様は、活性化合物の固有の特徴および達成されるべき特定の治療効果ならびに個体治療のためのかかる活性化合物の混合分野につきものの技術制限によって決定づけられ、且つこれらに直接依存する。
【0166】
活性化合物および薬学的組成物の毒性および治療有効性を、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。例えば、かかる手順を、LD50(集団の50%を死滅させる用量)およびED50(集団の50%が治療的に有効な用量)の決定に日常的に適用する。毒作用と治療効果との間の用量比は治療指数であり、これを、LD50/ED50比で示すことができる。高い治療指数を示す化合物が一般に好ましい。
【0167】
細胞培養アッセイおよび動物研究から得たデータを、ヒトまたは他の意図する被験体で用いる投薬量範囲での処方で使用することができる。かかる化合物の投薬量を、通常、毒性がほとんどないか全くないED50を含む循環濃度範囲が得られるように選択する。投薬量は、使用される投薬形態および使用される投与経路に応じてこの範囲内で変化することができる。本発明の方法で使用される任意の化合物のために、治療有効用量を、細胞培養アッセイから最初に概算することができる。したがって、例えば、細胞培養で決定したEC50(すなわち、最大応答の半分が得られる試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度を達成するための用量を動物モデルで最初に確立することができる。かかる情報を使用して、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中のレベルを、例えば、高速液体クロマトグラフィまたは対象の化合物に適用される他の適切な分析方法によって測定することができる。
X.例示的な送達方法および組成物
核酸分子、特に、転写可能な核酸分子に適用可能な多数の送達方法が記載されており、さらなる方法が開発されている。すべてのかかる方法および関連する組成物を、本発明に適用可能である。かかる送達は、典型的には、裸の線状核酸、ウイルスベクター、またはプラスミドベクターを使用する。
【実施例】
【0168】
PolIII/PolII融合プロモーターが機能的に連結されたコード配列(特に、RNAi作用因子)の発現を特異的に調節する能力を、GFAPのPolII調節領域由来の細胞型特異的調節エレメントに基づいた細胞型特異的発現を使用して証明した。種々の構築物の配列を、配列番号1〜7として示す。以下の実施例は、例示的核酸構築物の作製および発現の例示的説明を提供するが、本発明を制限することを意図しない。
実施例1:PolIII/PolII融合プロモーター、関連する構築物、およびベクターの構築
組織特異的RNAiプロモーターを、キメラプロモーターを使用して作製することができるかどうかを試験するために、GFAPとU6プロモーターとの融合物であるプロモーターを作製した。プロモーター研究により、GFAPプロモーターが組織特異的発現に関与するいくつかのエレメント(A領域、B領域、およびD領域が含まれる)から構成されることが明らかとなった。これらのシス活性エレメントは、ヒトGFAPプロモーターの転写プログラムに関与する。以下の2つのプロモーターを作製した:GFAP−EcoNIpと呼ばれるU6のコアプロモーターに連結されたGFAPのAおよびBエレメントを含むプロモーターならびにGFAP−SmaIpと呼ばれるU6のコアプロモーターに連結されたGFAPプロモーターのA、B、およびDエレメントを含むプロモーター(図1を参照のこと)。
【0169】
2つの各プロモーターでは、GFAPエレメントを、U6プロモーターのコアプロモーターの上流に配置する。U6のコアプロモーターは、TATAボックス領域およびPSEを含むことが示されている。したがって、両キメラプロモーターは、RNAポリメラーゼII型プロモーターのエレメントおよびRNAポリメラーゼIII型プロモーターのエレメント(詳細には、コアプロモーター領域を含む)を含む。これらを、その作製で使用した制限部位に従って命名する(すなわち、pGliaSmaIおよびpGliaEcoNI)。最初の試験目的のために、eGFPに指向するRNAiを含めた。pGliaSmaI−eGFPおよびpGliaEcoNI−eGFPと呼ばれるeGFPに対するRNAiを含む2つのさらなるプラスミド作製した(図1を参照のこと)。最後に、eGFPおよびHcRed1の両方の発現カセットを有するジシストロニックプラスミドを作製した。プラスミドを含むキメラプロモーターを有するジシストロニックプラスミド(すなわち、peGFP/HcRed1)を同時トランスフェクションし、ノックダウンのためのeGFPおよびコントロールとしてのHcRed1の発現をアッセイするように研究を設計した。
【0170】
いくつかのさらなるベクターを作製した(マップは示さず)。キメラプロモーター(eGFPに対する+/−RNAi)をpeGFP/HcRed1にクローン化した4つのさらなるプラスミドを作製した。これらのベクターは、同時トランスフェクションすることなくアイデアの試験を可能にすることを意図した。あるいは、LacZ発現カセットをキメラベクターを含むプラスミドにクローン化した4つのさらなるベクターを作製した。これらのベクターの目的は、同時トランスフェクション実験でベクターを含むキメラプロモーターのトランスフェクション効率のモニタリングを可能にすることであった。この系を使用して、両プラスミドのトランスフェクションをモニタリングすることが可能である(すなわち、eGFPの送達をモニタリングするためのHcRed1発現およびキメラプロモーターの送達をモニタリングするためのおよびLacZ)。
【0171】
ベクターを、一般に、以下のように構築した。eGFPおよびHcRed1発現カセットの両方を有するジシストロニックベクター(peGFP−HcRed1と呼ばれる)を、いくつかのステップで作製した。第1に、AgeI(平滑末端)およびNotIで二重消化したpHcRed1−N1(Clontech)のHcRed1含有フラグメントをNheI(平滑末端)およびNotIで二重消化したpHygeEGFP(Clontech)の骨格フラグメントにライゲーションすることによって、pHcRed1−RNAiを作製した。第2に、SmaIおよびNotIで二重消化したpeGFP−1(Clontech)のeGFP含有フラグメントをNheI(平滑末端)およびNotIで二重消化したpHygeGFP(Clontech)の骨格フラグメントにライゲーションすることによってpeGFP−RNAiを作製した。BglIIおよびBamHIで二重消化したpeGFP−RNAiのCMVie−eGFP−polyAカセットをBamHIおよび仔牛アルカリホスファターゼで消化したpHcRed1−RNAiにライゲーションすることによってpeGFP−HcRed1を作製した。
【0172】
U6プロモーターおよびグリア繊維性酸性タンパク質(GFAP)プロモーター(pGfa2;Brennerら)を使用して、グリア細胞をターゲティングする2つのRNAiキメラプロモーターを作製した。DraIおよびBamHIで二重消化したpU6−eGFP shRNAの約150pgのフラグメント(Shiら)を、SmaIおよびBamHIで二重消化したpGfa2の骨格フラグメントにライゲーションして、pGFAP−SmaI−eGFPを作製した。同様に、pU6−コントロール(Shiら)の約150bpのフラグメントをSmaIおよびBamHIで二重消化したpGfa2の骨格フラグメントにライゲーションすることによって、コントロールベクター(pGFAP−SmaI−コントロール)を作製した。pGFAP−EcoNI−eGFPおよびpGFAP−EcoNI−コントロールの両方を作製するために、pU6−eGFPおよびpU6−コントロールの約150bpフラグメントを、EcoNI(平滑末端)およびBamHIで二重消化したpGfa2の骨格フラグメントに(それぞれ)ライゲーションした。
【0173】
pGfaSmaI−コントロール、pGfaSmaI−eGFP、pGfaEcoNI−コントロール、またはpGfaEcoNI−eGFPをBamHIおよびアルカリホスファターゼで二重消化したpeGFP/HcRed1にライゲーションすることによって、4つのさらなるプラスミドを作製した。制限分析によって方向性を決定し、キメラプロモーターのプロモーターの方向およびeGFP発現カセットを併置するクローンを試験のために選択した。
【0174】
pGfa2(Brennerら)のBamHIフラグメントを含むLacZをpIRES−eYFP(Clontech)のBamHI/BclI骨格フラグメントに最初にクローニングしてpCMV−LacZを作製することによって最後の4つのベクター組を作製した。最後に、BglII/BamHIで二重消化したpGfaSmaI−コントロール、pGfaSmaI−eGFP、pGfaEcoNI−コントロール、またはpGfaEcoNI−eGFPのフラグメントを含むキメラプロモーターを、BglIIおよびアルカリホスファターゼで二重消化したpCMV−LacZに個別にライゲーションした。pGfaSmaI−コントロール−LacZ、pGfaSmaI−eGFP−LacZ、pGfaEcoNI−コントロール−LacZ、またはpGfaEcoNI−eGFP−LacZと命名されたこれらのベクターは、キメラプロモーターのトランスフェクション効率のモニタリングで有用である。
実施例2:shRNAコード配列に連結されたPolIII/PolII融合プロモーターを含むベクターでの細胞のトランスフェクション
C6神経膠腫細胞、HelaS3細胞、およびHepG2細胞を、10%FBSを補足したDMEMを使用して、標準的なプロトコールにしたがって培養した。トランスフェクションの前日に、トランスフェクションの翌日に60〜70%の密度が達成されるように細胞を6ウェルプレートにプレートした。
【0175】
製造者のプロトコールにしたがって、リポフェクタミン2000(Invitrogen)トランスフェクション試薬で細胞をトランスフェクションした。簡潔に述べれば、300ngのpeGFP−HcRed1および3〜6μgのshRNA発現(コントロール)プラスミドを、100μlのOptiMem(Invitrogen)で希釈した。個別に、7μlのリポフェクタミン2000を、100μlのOptiMemで希釈した。これら2つの希釈物を合わせ、20分間インキュベートした。この間に、DMEM培養培地を各ウェルからリンスして捨て、1mlのOptiMemと置換した。リプレックス(liplex)を形成させるための20分間のインキュベーション後、リポプレックスを各ウェルに添加した。8時間のインキュベーション後、別のOptiMemを各ウェルに添加して、全部で2.2mlにした。24時間後、培養培地を、10%FBSを有するDMEMと交換し、トランスフェクションから24〜48時間後にさらなる実験(すなわち、蛍光顕微鏡法またはウェスタンブロット分析)を行った。
実施例3:shRNAの発現および分析
予備分析により、例示的構築物がshRNAをコードする連結コード配列の細胞特異的調節を提供することが証明された。細胞を、一般に、上記のように成長させた。
蛍光顕微鏡法
プラスミドを試験するために、6ウェルプレートにプレートされたC6神経膠腫細胞およびHelaS3細胞を、作製したプラスミドの異なる組み合わせでトランスフェクションした。6ウェルプレート中で成長した細胞の培地を、カルシウムおよびマグネシウムを含むリン酸緩衝化生理食塩水と交換し、プレートを、倒立顕微鏡(Olympus 1X70)にロードした。ImagePro画像化ソフトウェアおよびハードウェア(Media Cybernetics)を使用して画像をキャプチャーし、その後にAdobe Photoshop 6.0(Adobe Systems,San Jose,CA)を使用して画像を操作した。いくつかの細胞の視野由来の代表的画像をキャプチャーした。
【0176】
peGFP/HcRed1およびキメラプロモーター(コントロールおよびeGFPに指向するRNAi)の同時トランスフェクションにより、GFAPプロモーターのDエレメントを含むキメラプロモーターがC6膠細胞中のeGFPの発現を有効にサイレンシングすることが明らかとなった。さらに、HelaS3細胞中で検出可能なサイレンシングは認められなかった。対照的に、いずれかの細胞株中にDエレメントを含まないキメラプロモーターによって検出可能なサイレンシングは認められなかった。両方の場合、HcRed1の視覚化は最適以下であったので、コントロールおよびRNAiウェルの両方へのpeGFP/HcRed1の等しい送達を完全に証明できなかった。他方では、実験を複数回行い、peGFP/HcRed1を、個別の管に等分したmastermixに希釈し、その後にキメラプロモータープラスミドを添加して等しい送達を確実にした。
【0177】
キメラプロモーターならびにeGFPおよびHcRed1発現カセットの両方を含むプラスミドも試験した(データ示さず)。これらの実験では、C6神経膠腫細胞およびHelaS3細胞を1つのプラスミドでトランスフェクションし、eGFPおよびHcRed1発現を視覚化した。しかし、いかなるウェルの間にもeGFP蛍光の検出可能な相違を示すことができなかった。プラスミドを含む遺伝子に20倍過剰のプラスミドを含むRNAiプロモーターのコピーが必要であると報告されたことを考慮すると、これによっていかなる相違も明らかとならなかったことは驚くべきことではなかった。非常に活性なCMVieプロモーターから活性の低いプロモーターにeGFP発現カセットのプロモーターを交換するためのさらなる実験が検討されており、近い将来に行われるであろう。
ウェスタンブロット分析
蛍光顕微鏡法によって決定された発現の結果を確認し、さらに試験するために、ウェスタンを使用してタンパク質レベルを定量的に試験した。これらの実験を、peGFP/HcRed1でのキメラプロモーターの同時トランスフェクションによる蛍光顕微鏡分析と同一の様式で行った。ほとんどの場合、蛍光顕微鏡法を使用して実験を特徴づけたが、次いで、各ウェルに対してウェスタン分析を行ってサイレンシングeGFPでの各キメラプロモーターの有効性をより高感度に測定した。
【0178】
細胞を、一般に、上記のように培養した。6ウェルプレートの各ウェルから培地を除去し、各ウェルに溶解緩衝液を添加し、細胞を氷上で溶解した。細胞を、各ウェルから掻き取り、ウェスタンブロッティングを使用して、eGFPの発現を試験した。
【0179】
蛍光顕微鏡法と同様に、C6神経膠腫細胞における有効なプロモーター活性にはDエレメントが必要であることが見出された。より高い感度により、予想されるHelaS3細胞のいくつかの活性が検出可能であった。pGliaSmaI−eGFPでのpeGFP/HcRed1プロモーターの同時トランスフェクションにより、C6神経膠腫細胞におけるHcRed1と比較してeGFPタンパク質発現のサイレンシングが示された。対照的に、pGliaEcoNI−eGFPでは、eGFPタンパク質発現のサイレンシングに有効どころではなかった。
【0180】
明細書に引用された全ての特許および他の引例は、本発明に属する当業者の技術レベルを示し、各引例全体が個別に参考により援用されるのと同一の範囲でその全体(任意の表および図面が含まれる)が本明細書中で参考により援用される。
【0181】
当業者は、記載の目的および利点ならびにこれらに含まれるものを得るために本発明が十分に適合されることを容易に認識するであろう。本発明で好ましい実施形態を代表する本明細書中に記載の方法、変形、および組成物は例示であり、本発明の範囲を制限することを意図しない。当業者はその変更形態および他の用途を認識し、これらは本発明の精神の範囲内に含まれ、特許請求の範囲によって定義される。
【0182】
本発明の範囲および精神を逸脱することなく、本明細書中に記載の発明の種々の置換形態および修正形態を得ることができることが当業者に容易に明らかである。例えば、構築物およびかかる構築物を細胞および生物に送達させる方法に含まれる調節エレメントの変形形態を得ることができる。したがって、かかるさらなる実施形態は、本発明および以下の特許請求の範囲の範囲内に含まれる。
【0183】
本明細書中に例示的に記載された発明を、本明細書中に具体的に開示していないいかなる要素または制限の不在下で適切に実施することができる。したがって、例えば、本明細書中の各例では、「〜を含む」、「〜本質的になる」、および「〜なる」のいずれかを、他の2つの用語のいずれかと置換することができる。使用した用語および表現を、本発明を制限するのではなく説明のために使用し、かかる用語および表現において、表示または記載の特徴またはその一部の任意の等価物を排除することを意図しないが、特許請求の範囲に記載の発明の範囲内で種々の修正形態が可能であると認識される。したがって、本発明を好ましい実施形態および最適な特徴によって具体的に開示しているが、当業者は本明細書中に開示の概念の修正形態および変形形態を採用することができ、かかる修正形態および変形形態が添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に含まれると見なされると理解すべきである。
【0184】
さらに、本発明の特徴または態様をマーカッシュグループまたは他の代替分類で記載する場合、当業者は、本発明は、この分類によって、マーカッシュグループまたは他のグループの任意の各要素または要素のサブグループに関しても記載されていると認識するであろう。
【0185】
また、別途示さない限り、実施形態で種々の数値が示される場合、さらなる実施形態は、範囲の終点として任意の2つの異なる値によって記載される。このような範囲はまた、記載の発明の範囲内に含まれる。
【0186】
したがって、さらなる実施形態は、本発明および以下の特許請求の範囲の範囲内に含まれる。
【0187】
【数1】
【0188】
【数2】
【0189】
【数3】
【0190】
【数4】
【0191】
【数5】
【0192】
【数6】
【0193】
【数7】
【0194】
【数8】
【0195】
【数9】
【0196】
【数10】
【0197】
【数11】
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【図面の簡単な説明】
【0204】
図1図1は、GFAP調節エレメントを含むU6基本プロモーターを使用したPolIII/PolII融合プロモーターの設計を模式的に示す。作製した2つのキメラプロモーターは以下である:1)GFAP−EcoNIと呼ばれるU6のコアプロモーターに連結したヒトGFAPpエレメントのAおよびBシス活性エレメントを含み、pGFAP−EcoNI(またはpGFAP−EcoNI−Control)と呼ばれるプラスミドにクローン化されたキメラプロモーター、および2)GFAP−Smalと呼ばれるU6のコアプロモーターに連結したヒトGFAPpエレメントのA、B、およびD領域を含み、pGFAP−SmaI(またはpGFAP−Smal−Control)と呼ばれるプラスミドにクローン化されたキメラプロモーター。pGFAP−EcoNI−eGFPおよびpGFAP−SmaI−eGFPと呼ばれるeGFAPに指向するshRNAの発現を駆動する各キメラプロモーターを含む2つのさらなるプラスミドを作製した。これら4つのプラスミドを使用して、キメラプロモーター由来のshRNA発現を証明し、キメラプロモーターの発現プログラムの転写を調べた。
図1
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]