(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トレッド面のうちタイヤ赤道面からトレッド展開半幅TDW/2の70[%]の位置までの領域をセンター領域と呼ぶと共に、トレッド展開半幅TDW/2の70[%]の位置から90[%]の位置までの領域をショルダー領域と呼ぶときに、
前記ショルダー領域における最大溝深さを有する溝の溝下ゲージgsが0.5[mm]≦gs≦2.0[mm]の範囲内にある請求項1に記載の空気入りタイヤ。
前記トレッド部のトレッドゴムが、タイヤのトレッド面を構成するキャップトレッドゴム層と、前記キャップトレッドゴム層のタイヤ径方向内側に配置されるアンダートレッドゴム層とを積層して成るときに、
前記アンダートレッドゴム層の20[℃]におけるJIS硬度Hsが67≦Hs≦78の範囲内にある請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0018】
[空気入りタイヤ]
図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。
図2は、
図1に記載した空気入りタイヤのトレッドゲージを示す拡大断面図である。
【0019】
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤの回転軸(図示せず)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、前記回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、前記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道面)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤの回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ幅は、タイヤ幅方向の外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道面とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1の周方向に沿う線をいう。本実施の形態では、タイヤ赤道面にタイヤ赤道面と同じ符号「CL」を付す。なお、以下に説明する空気入りタイヤ1は、タイヤ赤道面CLを中心としてほぼ対称になるように構成されていることから、空気入りタイヤ1の回転軸を通る平面で該空気入りタイヤ1を切った場合の子午断面図(
図1)においては、タイヤ赤道面CLを中心とした一側(
図1において右側)のみを図示して当該一側のみを説明し、他側(
図1において左側)の説明は省略する。
【0020】
本実施の形態の空気入りタイヤ1は、
図1に示すように、トレッド部2を有している。トレッド部2は、ゴム材(トレッドゴム)からなり、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面が空気入りタイヤ1の輪郭となる。このトレッド部2の表面は、空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)が走行した際に路面と接触する面であるトレッド面21として形成されている。
【0021】
トレッド面21は、複数の溝により陸部が形成されている。その一例として、本実施の形態の空気入りタイヤ1では、トレッド面21は、
図1および
図2に示すように、タイヤ周方向に沿って延在する複数の縦溝22が設けられている。本実施の形態における縦溝22は、トレッド面21に4本設けられた周方向主溝22aと、2本設けられた周方向細溝22bとを含んでいる。そして、トレッド面21は、複数の周方向主溝22aにより、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ赤道面CLと平行なリブ状の陸部23が複数形成されている。本実施の形態における陸部23は、周方向主溝22aを境にしてトレッド面21に5本設けられ、タイヤ赤道面CL上に配置された第一陸部23aと、第一陸部23aのタイヤ幅方向外側に配置された第二陸部23bと、第二陸部23bのタイヤ幅方向外側であってトレッド面21のタイヤ幅方向最外側に配置された第三陸部23cとを有している。第二陸部23bには、周方向細溝22bが設けられている。
【0022】
また、トレッド面21は、各陸部23(23a,23b,23c)について、縦溝22に交差する横溝24が設けられている。第一陸部23aに設けられた横溝24は、周方向主溝22aに一端が開口すると共に他端が閉塞し、かつタイヤ幅方向およびタイヤ周方向に対して傾斜した突起溝24aとして形成されている。この突起溝24aは、タイヤ赤道面CLを境にして周方向主溝22aからの傾斜方向が逆向きに形成されている。
【0023】
また、第二陸部23bに設けられた横溝24は、タイヤ幅方向外側の周方向主溝22aに一端が開口すると共に周方向細溝22bに他端が開口し、かつタイヤ幅方向およびタイヤ周方向に対して傾斜しつつ湾曲した傾斜溝24bとして形成されている。この傾斜溝24bは、タイヤ赤道面CLを境にして周方向主溝22aからの傾斜方向が逆向きに形成されている。
【0024】
また、第三陸部23cに設けられた横溝24は、トレッド面21のタイヤ幅方向最外端からタイヤ幅方向内側に湾曲して延在しつつ延在端が周方向主溝22aに開口する円弧溝24cとして形成されている。この円弧溝24cは、タイヤ赤道面CLを境にして湾曲方向が逆向きに形成されている。
【0025】
また、トレッド面21は、横溝24として、第二陸部23bおよび第三陸部23cについて、タイヤ周方向に交差するサイプ24d,24eが設けられている。第二陸部23bに設けられたサイプ24dは、タイヤ幅方向外側の周方向主溝22aに一端が開口すると共に他端が閉塞し、かつタイヤ幅方向およびタイヤ周方向に対して傾斜しつつ湾曲して形成されている。このサイプ24dは、タイヤ赤道面CLを境にして周方向主溝22aからの傾斜方向が逆向きに形成されている。また、第三陸部23cに設けられたサイプ24eは、タイヤ幅方向外側の周方向主溝22aに一端が開口すると共に他端が閉塞し、かつタイヤ幅方向およびタイヤ周方向に対して傾斜しつつ湾曲して形成されている。このサイプ24eは、タイヤ赤道面CLを境にして周方向主溝22aからの傾斜方向が逆向きに形成されている。
【0026】
ここで、周方向主溝22aは、溝幅が4[mm]以上のタイヤ周方向に延在する溝を示す。また、周方向細溝22bは、溝幅が4[mm]未満のタイヤ周方向に延在する溝を示す。また、サイプ24d,24eは、溝幅が1[mm]以下のタイヤ周方向に対して横切る溝を示す。突起溝24a、傾斜溝24bおよび円弧溝24cは、ラグ溝と総称され、サイプ24d,24e以外で、溝幅が1[mm]を超えてタイヤ周方向に対して横切る溝を示す。なお、溝や陸部の構成は、上述した例に限定されるものではなく、縦溝22や横溝24の配置により様々な構成がある。また、図には明示しないが、トレッド面21は、縦溝22を有さず、タイヤ幅方向で屈曲または湾曲した横溝24のみ設けられた構成であってもよい。
【0027】
また、本実施の形態に係る空気入りタイヤ1は、カーカス層6と、ベルト層7と、ベルト補強層8とを備えている。
【0028】
カーカス層6は、各タイヤ幅方向端部が、一対のビードコア(図示せず)でタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返され、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されてタイヤの骨格を構成するものである。このカーカス層6は、タイヤ周方向に対する角度が90度(±5度)でタイヤ子午線方向に沿いつつタイヤ周方向に複数並設されたカーカスコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。カーカスコードは、有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。このカーカス層6は、
図1に示すように、本実施の形態では2層で設けられているが、少なくとも1層で設けられていてもよい。
【0029】
ベルト層7は、少なくとも2層のベルト71,72を積層した多層構造をなし、トレッド部2においてカーカス層6の外周であるタイヤ径方向外側に配置され、カーカス層6をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト71,72は、タイヤ周方向に対して所定の角度(例えば、20度〜30度)で複数並設されたコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。また、重なり合うベルト71,72は、互いのコードが交差するように配置されている。
【0030】
ベルト補強層8は、ベルト層7の外周であるタイヤ径方向外側に配置されてベルト層7をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト補強層8は、ベルト層7の外周を覆う態様で少なくとも2層配置された補強層81,82を有する。補強層81,82は、タイヤ周方向に並行(±5度)でタイヤ幅方向に複数並設されたコード(図示せず)がコートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。
図1で示すベルト補強層8は、ベルト層7側の補強層81がベルト層7よりもタイヤ幅方向で大きく形成されてベルト層7全体を覆うように配置され、補強層81のタイヤ径方向外側の補強層82がベルト層7のタイヤ幅方向端部を覆うように補強層81のタイヤ幅方向端部にのみ配置されている。ベルト補強層8の構成は、上記に限らず、図には明示しないが、各補強層81,82が共にベルト層7よりもタイヤ幅方向で大きく形成されてベルト層7全体を覆うように配置された構成、または各補強層81,82が共にベルト層7のタイヤ幅方向端部のみを覆うように配置された構成であってもよい。すなわち、ベルト補強層8は、ベルト層7の少なくともタイヤ幅方向端部に重なるものであればよい。また、ベルト補強層8(補強層81,82)は、帯状(例えば幅10[mm])のストリップ材をタイヤ周方向に巻き付けて設けられている。
【0031】
[高内圧用プロファイル構造]
近年では、タイヤの使用空気圧を高圧化することにより、タイヤの転がり抵抗を低減して車両の低燃費化を実現することが検討されている。しかしながら、タイヤの内圧を高くすると、トレッド部センター領域の接地圧が増加して、タイヤ転動時の摩擦エネルギーが増加する。すると、センター領域が摩耗し易くなり、センター領域の耐摩耗性が低下するおそれがある。
【0032】
ここで、センター領域の接地圧を低減するためには、トレッド部ショルダー領域の落ち込み量(後述する角度θ)を小さくすることが効果的である。しかしながら、ショルダー領域の落ち込み量を小さくすると、ショルダー領域に接地圧が集中して、ショルダー領域の耐摩耗性が低下し、また、コーナリングパワーが低下するおそれがある。
【0033】
そこで、この空気入りタイヤ1では、高内圧条件下にてショルダー領域の耐摩耗性を維持しつつセンター領域の耐摩耗性を向上するために、以下の構成が採用されている。
【0034】
まず、トレッド部2の表面であるトレッド面21のプロファイルが、タイヤ径方向外側に凸形状の複数の異なる曲率半径の円弧により形成されている。具体的に、トレッド面21は、
図1に示すように、中央部円弧21aと、ショルダー側円弧21bと、ショルダー領域円弧21cと、サイド部円弧21dとで構成されている。
【0035】
中央部円弧21aは、トレッド面21におけるタイヤ幅方向の中央に位置しており、タイヤ赤道面CLを含み、タイヤ赤道面CLを中心としてタイヤ幅方向の両側に形成されている。この中央部円弧21aは、タイヤ赤道面CLを含む部分のタイヤ径方向における径が最も大きく形成されている。ショルダー側円弧21bは、中央部円弧21aのタイヤ幅方向外側に連続して形成されている。ショルダー領域円弧21cは、ショルダー側円弧21bのタイヤ幅方向外側に連続して形成されている。サイド部円弧21dは、ショルダー領域円弧21cのタイヤ幅方向外側に連続して形成され、トレッド部2のタイヤ幅方向最外側に位置している。
【0036】
そして、空気入りタイヤ1を正規リムに組込んで正規内圧の5[%]を内圧充填した無負荷状態で、
図1に示すタイヤ子午線方向の断面視にて、ショルダー側円弧21bの仮想の延長線とサイド部円弧21dの仮想の延長線との交点を基準点Pとする。また、タイヤ赤道面CLとトレッド面21のプロファイルとの交点をセンタークラウンCCとし、基準点PとセンタークラウンCCとを結んだ直線Aと、センタークラウンCCを通過してタイヤ幅方向に平行な直線Bとがなす角度をθとする。また、中央部円弧21aの曲率半径をRcとする。また、ショルダー側円弧21bの曲率半径をRsとする。また、タイヤ赤道面CLからショルダー側円弧21bのタイヤ幅方向内方端部位置までの円弧長である基準展開幅をLとする。また、基準点Pを通過すると共にタイヤ赤道面CLと平行な基準線がトレッド面21に交差した点間でのタイヤ幅方向の円弧長であるトレッド展開幅をTDWとする。また、扁平率をβとする。
【0037】
この場合、本実施の形態の空気入りタイヤ1のトレッド面21は、下記式(1)〜式(3)を満たして形成される。
0.025×β+1.0≦θ≦0.045×β+2.5…(1)
10≦Rc/Rs≦50…(2)
0.2≦L/(TDW/2)≦0.7…(3)
【0038】
ここで、正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。また、扁平率とは、タイヤの断面幅に対する断面高さの比である。断面幅は、タイヤを正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した無負荷状態でタイヤの側面の模様や文字などを除いた幅である。断面高さは、タイヤを正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した無負荷状態のタイヤの外径とリム径との差の1/2である。
【0039】
なお、この空気入りタイヤ1では、ショルダー領域の落ち込み量(角度θ)が、0.03×β+1.2≦θ≦0.04×β+2.3の範囲内にあることが好ましい。
【0040】
また、センター領域とショルダー領域との曲率半径比Rc/Rsが、12≦Rc/Rs≦30の範囲内にあることが好ましい。
【0041】
また、基準展開幅Lとトレッド展開半幅TDW/2との比L/(TDW/2)が、0.4≦L/(TDW/2)≦0.5の範囲内にあることが好ましい。
【0042】
[ショルダー領域のトレッドゲージ]
また、ショルダー側円弧21b(通常は、トレッド輪郭線)上であってタイヤ赤道面CLからトレッド展開半幅TDW/2の85[%]の位置を点Qとし、この点Qからショルダー側円弧21bに引いた垂直とベルト補強層8を構成するコードのタイヤ径方向外側面との交点を点Rとする(
図1および
図2参照)。このとき、点Qと点Rとの距離tsが4.0[mm]≦ts≦8.0[mm]の範囲内にあることが好ましく、5.5[mm]≦ts≦6.5[mm]の範囲内にあることがより好ましい。
【0043】
なお、距離tsは、タイヤを正規リムに組み込んでタイヤに正規内圧の5[%]の内圧を充填した無負荷状態にて測定され、通常は、ショルダー領域のトレッドゲージにほぼ等しい。また、ベルト補強層が複数の補強層を積層して成る多層構造を有する場合には、タイヤ径方向外側にある補強層について、点Rが規定される。また、ベルト補強層を構成するコードのタイヤ径方向外側面とは、隣り合うコードのタイヤ径方向外側点を結んだ平面をいうものとする。
【0044】
例えば、この実施の形態では、ベルト補強層8が一対の補強層81、82を積層して成る二層構造を有している(
図1および
図2参照)。また、補強層81(82)が、スチール製あるいは有機繊維製のコード811(821)をコードゴムで被覆して成る圧延材から構成されている。また、点Qからショルダー側円弧21bに引いた垂直が、タイヤ径方向外側にある補強層81のコード811と交差していない。このため、隣り合うコード811、811のタイヤ径方向外側点を結んだ平面(コードのタイヤ径方向外側面)をとり、この平面と点Qからの垂線との交点が点Rとなっている。そして、この点Rと点Qとの距離tsが、ショルダー領域のトレッドゲージとなっている。
【0045】
また、トレッド面のうちタイヤ赤道面からトレッド展開半幅TDW/2の70[%]の位置までの領域をセンター領域と呼び、トレッド展開半幅TDW/2の70[%]の位置から90[%]の位置までの領域をショルダー領域と呼ぶ(
図3参照)。このとき、ショルダー領域における最大溝深さを有する溝(例えば、第三陸部23cの円弧溝24c)の溝下ゲージgsが0.5[mm]≦gs≦2.0[mm]の範囲内にあることが好ましく、1.0[mm]≦gs≦1.5[mm]の範囲内にあることがより好ましい(
図4参照)。
【0046】
なお、ショルダー領域における最大溝深さは、ショルダー領域に形成されたすべての溝の溝深さにかかる最大値をいう。例えば、この実施の形態では、トレッド展開半幅TDW/2の70[%]の位置が第三陸部23cの周方向主溝22a側のエッジ部よりもややタイヤ幅方向外側にあり、この位置を境界として、センター領域とショルダー領域とが区画されている(
図3参照)。このため、第三陸部23cにある円弧溝24cの溝深さがショルダー領域における最大溝深さとなっている(
図1参照)。そして、この円弧溝24cの溝下ゲージgsが上記の範囲内に設定されている(
図4参照)。
【0047】
また、タイヤの仕様により、第二陸部23bと第三陸部23cとを区画する周方向主溝22aが、ショルダー領域に位置する場合もある(図示省略)。かかる場合には、この周方向主溝22aと円弧溝24cとの溝深さの比較により、ショルダー領域における最大溝深さを有する溝が規定される。また、円弧溝24cなどのラグ溝がショルダー領域にない場合(図示省略)には、他の溝(例えば、サイプ24e、24f。
図3参照。)の溝深さの比較により、最大溝深さを有する溝が規定される。
【0048】
また、溝下ゲージgsとは、タイヤを正規リムに組み込んでタイヤに正規内圧の5[%]の内圧を充填した無負荷状態における溝底からベルト補強層8の外側表面までの距離をいう。ここでは、ショルダー領域の円弧溝24cについて、この溝下ゲージgsが測定される(
図4参照)。
【0049】
また、この空気入りタイヤ1では、トレッド部2のトレッドゴムが、タイヤのトレッド面を構成するキャップトレッドゴム層2Aと、このキャップトレッドゴム層2Aのタイヤ径方向内側に配置されるアンダートレッドゴム層2Bとを積層して成る(
図5参照)。このとき、トレッド部2のアンダートレッドゴム層2Bの20[℃]におけるJIS硬度Hsが67≦Hs≦78の範囲内にあることが好ましく、70≦Hs≦75の範囲内にあることがより好ましい。
【0050】
[効果]
以上説明したように、この空気入りタイヤ1では、(1)角度θ、センター領域の曲率半径Rcとショルダー領域の曲率半径Rsとの比Rc/Rs、および、基準展開幅Lとトレッド展開半幅TDW/2との比L/(TDW/2)が、0.025×β+1.0≦θ≦0.045×β+2.5、10≦Rc/Rs≦50、且つ、0.2≦L/(TDW/2)≦0.7の範囲内にある。かかる構成では、トレッド部ショルダー領域の落ち込み量(角度θ)およびセンター領域とショルダー領域との曲率半径比Rc/Rsが適正化されるので、センター領域の接地圧とショルダー領域の接地圧との関係が適正化される。これにより、ショルダー領域の耐摩耗性を維持しつつセンター領域の耐摩耗性を向上できる利点がある。例えば、θ<0.025×β+1.0となるとショルダー領域の耐摩耗性が悪化し、θ>0.045×β+2.5となるとセンター領域の耐摩耗性にかかる向上効果が小さいため、好ましくない。また、Rc/Rs<10となるとセンター領域の耐摩耗性にかかる向上効果が小さいため、好ましくない。
【0051】
さらに、(2)ショルダー側円弧21b上であってタイヤ赤道面CLからトレッド展開半幅TDW/2の85[%]の位置を点Qとし、この点Qからショルダー側円弧21bに引いた垂直とベルト補強層8を構成するコードのタイヤ径方向外側面との交点を点Rとするときに、点Qと点Rとの距離tsが4.0[mm]≦ts≦8.0[mm]の範囲内にある(
図1および
図2参照)。かかる構成では、ショルダー領域のトレッドゲージ(距離ts)が適正化されるので、ショルダー領域の耐摩耗性を適正に維持しつつ、さらにタイヤのコーナリングパワー性を向上できる利点がある。
【0052】
また、この空気入りタイヤ1では、ショルダー領域における最大溝深さを有する溝(例えば、第三陸部23cの円弧溝24c)の溝下ゲージgsが0.5[mm]≦gs≦2.0[mm]の範囲内にある(
図3参照)。かかる構成では、溝下ゲージgsが適正化されるので、ショルダー領域の耐摩耗性を適正に維持しつつ、さらにタイヤのコーナリングパワー性を向上できる利点がある。例えば、gs<0.5となると、溝下ゲージgsが小さ過ぎるためベルト補強層8(補強層81)のコードが破損するおそれがあり、また、gs≧2.0となると、コーナリングパワー性の向上効果が十分に得られないため、好ましくない。
【0053】
また、この空気入りタイヤ1では、トレッド部2のアンダートレッドゴム層2Bの20[℃]におけるJIS硬度Hsが67≦Hs≦78の範囲内にある。かかる構成では、高いJIS硬度Hsを有するアンダートレッドゴム層2Bを配置することにより、タイヤのコーナリングパワー性がさらに向上する利点がある。例えば、Hs<67では、コーナリングパワー性の向上効果が十分に得られず、また、Hs>78では、タイヤの耐久性が悪化するため、好ましくない。
【0054】
[適用対象]
この空気入りタイヤ1は、260[kPa]を超える内圧、より好ましくは、280[kPa]〜350[kPa]の内圧を付与されて使用される乗用車用タイヤに適用されることが好ましい。かかる高内圧条件で使用される乗用車用タイヤでは、トレッド部センター領域の接地圧が高いため、センター領域の耐摩耗性が低下する傾向にある。したがって、かかるタイヤを適用対象とすることにより、耐摩耗性にかかる効果を顕著に得られる利点がある。
【実施例】
【0055】
この実施の形態では、条件が異なる複数の空気入りタイヤについて、(1)センター領域の耐摩耗性、(2)ショルダー領域の耐摩耗性、(3)コーナリングパワー性、および、(4)耐久性に関する性能試験が行われた(
図6〜
図13参照)。これらの性能試験では、タイヤサイズ215/55R17 93V(扁平率55)の空気入りタイヤがリムサイズ17×7Jのアルミホイールに組み付けられ、あるいは、タイヤサイズ245/35ZR19 93Y(扁平率35)の空気入りタイヤがリムサイズ19×81のアルミホイールに組み付けられる。また、この空気入りタイヤにJATMA規定の最大負荷能力が付与される。また、試験車両として、排気量3000[cc]かつFR車である国産セダンが使用される。
【0056】
(1)センター領域の耐摩耗性(センター摩耗)および(2)ショルダー領域の耐摩耗性(ショルダー摩耗)に関する性能試験では、空気入りタイヤを装着した試験車両が所定の舗装路を1万[km]走行し、その後にセンター領域の最大溝深さdcを有する溝の残溝量およびショルダー領域の最大溝深さdsを有する溝の残溝量がそれぞれ測定される。そして、この測定結果に基づいて従来例2を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が大きいほど好ましい。なお、センター領域の耐摩耗性は、103以上で優位性があると判断され、また、ショルダー領域の耐摩耗性は、100以上であれば適性に維持されていると判断される。
【0057】
(3)コーナリングパワー性に関する性能試験では、空気入りタイヤに
図6〜
図13に示す内圧を充填してドラム試験機に取り付け、450[kg]の荷重を負荷して10[km/h]の走行速度で走行させて、スリップ角右1°のときの横力とスリップ角左1°のときの横力とをそれぞれ測定する。そして、これらの横力の平均値に基づいて従来例2を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が大きいほど好ましい。
【0058】
(4)耐久性に関する性能試験では、空気入りタイヤに1.4[kg/cm
2]の内圧を充填してドラム試験機に取り付け、450[kg]の荷重を負荷して15[km/h]の走行速度で2000[km]のスローラム走行を行う。その後に、タイヤのベルト層の部分を切り出してベルトコードの破断の有無が観察される。そして、ベルトコードの破断がない場合には「○」評価、破断がわずかにある場合には「△」評価、破断が明らかにある場合には「×」評価が行われる。
【0059】
従来例1、2は、特開2008−307948号公報のタイヤである。従来例1では、内圧230[kPa]が付与され、従来例2では、内圧300[kPa]が付与されている。
【0060】
実施例1〜33は、
図1に記載した空気入りタイヤ1であり、内圧300[kPa]が付与されている。また、(1)角度θ、センター領域の曲率半径Rcとショルダー領域の曲率半径Rsとの比Rc/Rs、および、基準展開幅Lとトレッド展開半幅TDW/2との比L/(TDW/2)が適正化されている。また、(2)ショルダー領域のトレッドゲージ(距離ts)が所定の範囲内にある。また、円弧溝24cがショルダー領域における最大溝深さを有し、この円弧溝24cについて溝下ゲージgsが測定されている。なお、角度θは、上記のように、0.03×β+1.2≦θ≦0.04×β+2.3の範囲に設定されている。例えば、扁平率βがβ=55の場合には、角度θが2.375≦θ≦4.975となり、β=35の場合には、角度θが1.875≦θ≦4.075となる。
【0061】
試験結果に示すように、実施例1〜33の空気入りタイヤ1では、従来例1、2と比較して、ショルダー領域の耐摩耗性を維持しつつセンター領域の耐摩耗性を向上できることが分かる。また、タイヤのコーナリングパワー性が向上することが分かる。また、タイヤの耐久性が適正に確保されることが分かる(
図6〜
図13参照)。
【0062】
また、実施例1〜4と比較例1、2とを比較すると、角度θを適正化することにより、ショルダー領域の耐摩耗性を維持しつつセンター領域の耐摩耗性を向上できることが分かる(
図6参照)。また、実施例5〜8と比較例3、4とを比較すると、比Rc/Rsを適正化することにより、ショルダー領域の耐摩耗性を維持しつつセンター領域の耐摩耗性を向上できることが分かる(
図7参照)。また、実施例9〜12と比較例5、6とを比較すると、比L/(TDW/2)を適正化することにより、ショルダー領域の耐摩耗性を適正に維持できることが分かる(
図8参照)。
【0063】
また、実施例13〜16と比較例7、8とを比較すると、扁平率βの変更により角度θが変化した場合にも、この角度θを適正化することにより、ショルダー領域の耐摩耗性を維持しつつセンター領域の耐摩耗性を向上できることが分かる(
図9参照)。
【0064】
また、実施例17〜20と比較例9、10とを比較すると、ショルダー領域のトレッドゲージ(距離ts)を適正化することにより、ショルダー領域の耐摩耗性を適正に維持しつつタイヤのコーナリングパワー性を向上できることが分かる(
図10参照)。また、実施例21〜26を比較すると、ショルダー領域における最大溝深さを有する溝の溝下ゲージgsを適正化することにより、タイヤの耐久性を維持しつつタイヤのコーナリングパワー性を向上できることが分かる(
図11参照)。また、実施例27〜32を比較すると、アンダートレッドゴム層2BのJIS硬度Hsを適正化することにより、タイヤの耐久性を維持しつつタイヤのコーナリングパワー性を向上できることが分かる(
図12および
図13参照)。