特許第5976992号(P5976992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5976992
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】軸流ファン
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/32 20060101AFI20160817BHJP
【FI】
   F04D29/32 C
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-15072(P2011-15072)
(22)【出願日】2011年1月27日
(65)【公開番号】特開2012-154270(P2012-154270A)
(43)【公開日】2012年8月16日
【審査請求日】2013年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベア株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松本 薫
(72)【発明者】
【氏名】山脇 孝之
【審査官】 田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−223195(JP,A)
【文献】 特開2010−025087(JP,A)
【文献】 特開2006−063978(JP,A)
【文献】 特開2002−039096(JP,A)
【文献】 特開2000−034999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータヨークの内周面にマグネットを装着し、該ロータヨークの外周面に複数の羽根を形成したハブからなるインペラを具備した軸流ファンにおいて、
前記ロータヨークは円筒部と該円筒部に連接した底面部からなるカップ状で、前記底面部の中央には開口を備え、
前記ロータヨークの前記開口に、金属材料からなるボス部が結合し、
前記開口の周縁に形成された複数の突起部が前記ボス部の中に入り込んで埋設されるとともに、シャフトが前記ボス部に入り込んで固定され、
前記ロータヨークの前記円筒部の外周面にはハブと該ハブの外周面から径方向外方に伸長する複数枚の羽根が樹脂成形され、
前記ハブは内周壁と、外周壁と、前記外周壁と前記内周壁の間には前記ロータヨークの前記円筒部の端面から前記底面部までの長さと略等しい長さを有する環状の溝が形成され、前記内周壁の外周面と前記外周壁の内周面とは周方向に均等に位置する複数のリブによって結合され、前記ハブが前記ロータヨークの内周面と前記底面部を除いて前記ロータヨークを軸方向で挟み込むように前記ロータヨークの円筒部端面と前記ロータヨークのコーナー部を覆ってなり、
前記内周壁の厚さは前記外周壁の厚さよりも薄いことを特徴とする軸流ファン。










【請求項2】
前記ロータヨークの前記底面部には複数個の貫通孔を形成してなることを特徴とする請求項1に記載の軸流ファン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸流ファンに関し、特にロータヨークのインサート成形によってインペラを形成した軸流ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
軸流ファンにおけるインペラはカップ状のハブの外周面から径外方に伸長する複数の羽根を備えたもので、一般に樹脂で成形される。このインペラはモータのロータに取り付けられるが、取り付け方法として、ロータをインペラの内側に圧入する手段や、ロータヨークのインサート成形によってインペラの成形時にロータヨークと回転軸を一体に作製する方法が知られている。ロータヨークのインサート成形によって一体に作製する場合、金属製のロータヨークと合成樹脂製のインペラとの間での熱膨張率の違いによって成形時の冷却工程の際、ロータヨークとの接合面でのクラックの発生や、成形時の樹脂圧によるロータヨークの変形が生じ易くなる。このようなインサート成形に伴うクラックやロータヨークの変形の発生を抑制するため、ロータヨークの外周の周壁部に隙間を形成した軸流ファンが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5は特許文献1に記載の軸流ファンの断面図、図6図5に示す軸流ファンのロータユニットの拡大断面図である。図6に示すように、インペラ4のインペラカップ41は、中央の円筒部43から径方向外方へ延びる略円盤状の上面44とその外周縁から軸方向基端側へ延びる略円筒状の周壁部45を有する。周壁部45はロータホルダ25の周壁部251の外周面に密着した略円筒状の内側円筒部451と、軸方向先端側で内側円筒部451に接続され軸方向基端側へ近づくほど径方向外側へテーパ状に広がる外側テーパ円筒部452とからなる二重円筒形状を有し、外側テーパ円筒部452の外周面から複数の羽根42が径方向外側へ延びている。内側円筒部451と外側テーパ円筒部452との間には略三角形の断面形状を有する環状空間ASが形成されており、環状空間ASには内側円筒部451の外周面と外側テーパ円筒部452の内周面とを接続する複数のリブ46が周方向に略等間隔で形成されているため、インペラカップ41の変形が発生し難くなり、必要な強度を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−25087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の軸流ファンにおけるロータユニットではロータホルダ25の上面252の表面を覆い円筒部43に延びるインペラカップ41の上面44はインサート成形時に樹脂にて一体に成形される。そして、ロータホルダ25の内側にコイル31を装着したステータコア32が配設される構成となっている。コイル31に励磁電流を印加すると発熱により熱がロータホルダ25の内側にこもり易い。この結果、熱サイクルによる経時変化にて、内側円筒部451のロータホルダ25との接合面でクラックが発生する虞がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたもので、ロータヨークのインサート成形によって一体にインペラを成形する軸流ファンにおいて、インペラの構造を改良することにより、インペラの内側に熱がこもり難く、効率よく放熱できる結果、熱サイクルでの内周壁のロータヨークとの接合面におけるクラックの発生を防止した軸流ファンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明の軸流ファンにおいては、ロータヨークの内周面にマグネットを装着し、該ロータヨークの外周面に複数の羽根を形成したハブからなるインペラを具備した軸流ファンにおいて、前記ロータヨークは円筒部と該円筒部に連接した底面部からなるカップ状で、前記底面部の中央には開口を備え、前記ロータヨークの前記開口に、金属材料からなるボス部が結合し、前記開口の周縁に形成された複数の突起部が前記ボス部の中に入り込んで埋設されるとともに、シャフトが前記ボス部に入り込んで固定され、前記ロータヨークの前記円筒部の外周面にはハブと該ハブの外周面から径方向外方に伸長する複数枚の羽根が樹脂成形され、前記ハブは内周壁と、外周壁と、前記外周壁と前記内周壁の間には前記ロータヨークの前記円筒部の端面から前記底面部までの長さと略等しい長さを有する環状の溝が形成され、前記内周壁の外周面と前記外周壁の内周面とは周方向に均等に位置する複数のリブによって結合され、前記ハブが前記ロータヨークの内周面と前記底面部を除いて前記ロータヨークを軸方向で挟み込むように前記ロータヨークの円筒部端面と前記ロータヨークのコーナー部を覆ってなり、
前記内周壁の厚さは前記外周壁の厚さよりも薄いことを特徴とする。

【0008】
この構成においては、外周壁と内周壁の間にはカップ状のロータヨークの円筒部の端面から底面部までの長さと略等しい長さを有する環状の溝を形成しているため、内周壁でのクラックの発生を防止できる。また、ハブがロータヨークの内周面と底面部を除いてロータヨークを軸方向で挟み込むようにロータヨークの円筒部端面とロータヨークのコーナー部を覆っているため、ロータヨークの底面部が露出する結果、効率よく放熱でき、熱サイクルによる内周壁でのクラックの発生を防止できる。
【0009】
請求項2に係る発明の軸流ファンにおいては、ロータヨークの底面部には複数個の貫通穴を形成してなることを特徴とする。この構成においては、貫通穴によってロータヨークの内側と外部とが連通するので、ロータヨークの内側が冷却され、ロータヨークの底面部からより効率よく放熱でき、熱サイクルによる内周壁でのクラックの発生を防止できる。
【発明の効果】
【0010】
本願請求項1に係る発明によれば、軟磁性金属材料からなるカップ状のロータヨークの底面部には樹脂が覆うことなく露出しているためインペラの内側に熱がこもり難く、効率よく放熱できる結果、熱サイクルによる内周壁でのクラックの発生を防止した軸流ファンを提供することができる。
【0011】
本願請求項2に係る発明によれば、露出したカップ状のロータヨークの底面部には複数個の貫通穴が形成されているため、ロータヨークの底面部からより効率的に放熱できる結果、熱サイクルによる内周壁のロータヨークとの接合面でのクラックの発生を防止した軸流ファンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る軸流ファンを示す断面図である。
図2図1に示す軸流ファンの底面図である。
図3図1に示す軸流ファンの部分拡大図である。
図4】図に示す軸流ファンの部分拡大図である。
図5】従来の軸流ファンを示した断面図である。
図6図5に示す軸流ファンのロータユニットの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の軸流ファンについて図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は本発明の軸流ファンにおけるインペラの断面図、図2図1の底面図、図3図1の部分拡大図、図4図2の部分拡大図である。
【0015】
図1に示すように、本発明の軸流ファンにおけるインペラ1は樹脂成形品で、金属材料からなるシャフト2はインサート成形によってインペラ1の中央部に形成されたボス部3の中央に一体に固定されている。軟磁性金属材料からなるロータヨーク4は円筒部4aとこれに連接した底面部4bから構成されたカップ状からなり、底面部4bには複数の貫通穴5(図では円周方向に均等間隔で6個)が形成され、ロータヨーク4の中央には開口が形成されており、開口の周縁には切り込みを入れて突起部4cが形成され、ボス部3に突起部4cが埋設されている。ロータヨーク4もシャフト2と同様、インサート成形によってカップ状のハブ6の内側に固定されている。また、カップ状のハブ6の外周面から径方向外方に伸長する複数枚の羽根7(図では7枚)が成形樹脂で一体に成形されている。
【0016】
本発明の軸流ファンにおけるインペラ1の製造手順について説明する。
【0017】
まず、軟磁性金属材料からなるロータヨーク4は円筒部4aとこれに連接した底面部4bから構成されたカップ状からなり、底面部4bには複数の貫通穴5が形成され、底面部4bの中央には開口が形成されており、開口の周縁には切り込みを入れて複数の突起部4cが形成されている。
【0018】
次に、図示しない金型にシャフト2とカップ状のロータヨーク4をセットし、金属材料(例えば、ダイカスト材であるアルミニウム材料や亜鉛材料)を金型に加圧注入してロータヨーク4の中央部の開口にボス部3がインサート成形にて形成される。このボス部3の中にロータヨーク4の中央部の開口の周縁に形成された複数の突起部4cが入り込んで埋設されるので、結合強度を向上させる。また、シャフト2の一方側にはローレット加工が施され、このローレット加工された箇所がボス部3の中に入り込むため、シャフト2の結合強度を向上できる。このようにして、シャフト2がロータヨーク4に強固に固着される。このようにダイカスト材にてロータヨーク4にインサート成形にてボス部3が形成されるため、シャフト2とロータヨーク4との同芯度を精度良く、またロータヨーク4に強固に固着することができる。
【0019】
そして、シャフト2が固着されたロータヨーク4を図示しない金型内にセットした後、モールド樹脂を金型内に注入して、インペラ1をインサート成形する。カップ状のロータヨーク4の円筒部4aの外周面をモールド樹脂が覆うように成形してハブ6が形成される。ハブ6はロータヨーク4の円筒部4aの外周面を覆う内周壁8と、内周壁8の外周で軸方向に伸長する環状の溝9と、環状溝9の外周に外周壁10が形成され、内周壁8の外周面と外周壁10の内周面とは周方向に均等に位置する複数のリブ11によって結合されている。ロータヨーク4の軸方向端面4dの内周側には面取り4eを施しているため、モールド樹脂はロータヨーク4のコーナー部4fとロータヨーク4の軸方向端面4dを覆い、ロータヨーク4を軸方向両端から挟み込みようしてカップ状のハブ6が形成される。
【0020】
しかし、ロータヨーク4の内周面4gとロータヨークの底面部4bにはモールド樹脂が存在せず、ロータヨーク4が露出した状態となっている。
【0021】
軸方向における環状溝9の長さLは、カップ状のロータヨーク4の円筒部4aの端面4dから底面部4bまでの長さと略等しい長さを有している。このため、環状溝9の軸方向の長さLを長くしているので、インペラ1のハブ6の内周壁8でのクラックの発生を防止することができる。
【0022】
そして、図示しない金型から樹脂成形したインペラ1を取り出し、ロータヨーク4の内周面4gにロータマグネット(図示省略)を装着し、ロータマグネットの内側には所定のギャップを隔ててステータ(図示省略)が配設されて軸流ファンが構成される。そして、図示しないステータのコイルの発熱に対しても、ロータヨーク4の底面部4bにはモールド樹脂が存在せず、金属材料のロータヨーク4が露出して空気と直接触れた状態であるため、金属材料のロータヨーク4の底面部4bから効率よく放熱できる。この結果、ロータヨーク4の内側に熱がこもり難いため、熱サイクルでの経時変化による内周壁8のロータヨーク4との接合面でクラックが発生する虞がない。さらに、ロータヨーク4の底面部4bには複数の貫通穴5が形成されているため、貫通穴5によってロータヨーク4の内側と外部とが連通する結果、ロータヨーク4の内側が冷却され、ロータヨーク4の底面部4bからより効率よく放熱できる。
【0023】
なお、ハブ6の内周壁8の厚さは、ロータヨーク4を保持するための剛性を確保できる厚さがあればよく、ハブ6の外周壁10の厚さよりも薄くすることが好ましい。ハブ6の内周壁8の厚さを薄くすることによって、内周壁8を形成する樹脂の熱膨張による影響を小さくすることができ、より熱サイクルによる内周壁8でのクラックの発生を防止することができる。
【0024】
また、ハブ6の樹脂成形時にコーナー部4fの近傍には周方向に複数の凹部12が同時に形成される。この凹部12はインペラ1の回転時のバランス調整用のウエイトを装着するために用いる。また、環状溝9もバランス調整用のウエイトを装着するために利用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 インペラ
2 シャフト
3 ボス部
4 ロータヨーク
4a 円筒部
4b 底面部
4c 突起部
4d 端面
4e 面取り
4f コーナー部
4g 内周面
5 貫通穴
6 ハブ
7 羽根
8 内周壁
9 溝
10 外周壁
11 リブ
12 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6