(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977052
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】鉄道車両のスカート固定構造
(51)【国際特許分類】
B61F 19/06 20060101AFI20160817BHJP
【FI】
B61F19/06
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-66875(P2012-66875)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-199135(P2013-199135A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2014年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085291
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117798
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 慎一
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(72)【発明者】
【氏名】張間 光雄
【審査官】
志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−290054(JP,A)
【文献】
特開2007−308042(JP,A)
【文献】
特開2001−055141(JP,A)
【文献】
実開昭54−119106(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61C 1/00 − 17/12
B61D 1/00 − 49/00
B61F 1/00 − 99/00
B61G 1/00 − 11/18
B61J 1/00 − 99/00
B61K 1/00 − 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の車体下部を構成する台枠に、スカートが固定されている鉄道車両のスカート固定構造であって、
前記台枠は、左右の側はりと、前記左右の側はりの間に設けられる基部とを有するものであり、
前記スカートは、車両前後方向に延びる側部分と、車両左右方向に延びる前部分とを有するものであり、
前記台枠の基部に車両前後方向に延びる案内スリットまたは長穴を有するボルト吊り下げ部が前記前部分に対応して形成されると共に、前記台枠の側はりに車両前後方向に延びる案内スリットまたは長穴が前記側部分に対応して形成され、
前記案内スリットまたは長穴には支持ボルトが、それのボルト軸部を前記案内スリットまたは前記長穴を通じて垂下させることで軸線が鉛直方向になるように吊り下げられ、
前記支持ボルトに前記スカートをナットを用いて取り付けることで、前記スカートが前記台枠に固定される構成とされ、
前記スカートを前記台枠に固定する前に、前記支持ボルトが、それのボルト軸部を前記案内スリットまたは長穴を通じて垂下させた状態で車両前後方向に位置調整可能であることを特徴とする鉄道車両のスカート固定構造。
【請求項2】
前記ボルト吊り下げ部は、互いに向かい合うように前記車体下部から下方に突出して取り付けられる断面L型の第1凸部と断面逆L型の第2凸部とを有し、前記第1及び第2凸部の間に前記案内スリットによる吊り溝部を形成する構成とされ、
前記支持ボルトのボルト頭部が、前記第1及び第2凸部の間に回転不能でかつ車両前後方向に位置調整可能に配置され、
前記案内スリットの任意の位置で、前記スカートが前記車体下部に固定可能である、請求項1記載の鉄道車両のスカート固定構造。
【請求項3】
前記スカートは、前記スカートが前記車体下部に固定された状態で前記スカートと前記車体下部との接続部分において、前記スカートの側部分が前記車体下部の側部外面より車両内方側に位置するように予め形成されたものである、請求項1または2に記載の鉄道車両のスカート固定構造。
【請求項4】
鉄道車両の車体下部に、スカートが固定されている鉄道車両のスカート固定構造であって、
前記車体下部にボルト吊り下げ部が形成され、
前記ボルト吊り下げ部には支持ボルトが、それの軸線が鉛直方向になるように吊り下げられ、
前記支持ボルトに前記スカートをナットを用いて取り付けることで、前記スカートが前記車体下部に固定され、
前記スカートは、上部に、前記支持ボルトに前記スカートをナットを用いて取り付ける際に、前記車体下部との間に作業スペースとなる空間部を形成する突出部が設けられていることを特徴とする鉄道車両のスカート固定構造。
【請求項5】
前記スカートは、分解可能である複数のスカート部分により構成され、
前記隣り合う各スカート部分は、鉛直接合面を有する取付部をそれぞれ備え、前記両取付部を、それらの鉛直接合面を対向させて固定ボルトにて締結することにより結合されるものである、請求項4に記載の鉄道車両のスカート固定構造。
【請求項6】
鉄道車両の車体下部に、スカートが固定されている鉄道車両のスカート固定構造であって、
前記車体下部にボルト吊り下げ部が形成され、
前記ボルト吊り下げ部には支持ボルトが、それの軸線が鉛直方向になるように吊り下げられ、
前記支持ボルトに前記スカートをナットを用いて取り付けることで、前記スカートが前記車体下部に固定され、
前記スカートは、分解可能である複数のスカート部分により構成され、
前記隣り合う各スカート部分は、鉛直接合面を有する取付部をそれぞれ備え、前記両取付部を、それらの鉛直接合面を対向させて固定ボルトにて締結することにより結合されるものであり、
前記隣り合うスカート部分の取付部の結合部分は、前記隣り合うスカート部分の一方から前記結合部分の前側に延びるスカート延長部により隠蔽されていることを特徴とする鉄道車両のスカート固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両のスカート固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、先頭車両の前部にスカート(排障板)を取り付けることが行われている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
そのようなスカートは、車体下部(台枠)に対し、スカートに設けられた取付金具を、取付ボルトを用いて取り付けるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭56−48618号公報
【特許文献2】実開昭54−119106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記スカートは、車体下部(台枠)前部左右の下側に取付ボルトによって取り付けられるが、取付ボルトの取付方向がいろいろあり、取付作業スペースの制約を受ける場合があり、取付作業性に劣る。
【0006】
そこで、発明者は、前記車体下部に対する前記スカート(取付金具)の取付方向を鉛直方向に統一すれば、取付作業スペースは車体下部の下側に確保され、取付作業性が向上することに着想し、本発明をなしたものである。
【0007】
本発明は、スカートの取付作業性を向上させた鉄道車両のスカート固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、鉄道車両の車体下部
を構成する台枠に、スカートが固定されている鉄道車両のスカート固定構造であって、
前記台枠は、左右の側はりと、前記左右の側はりの間に設けられる基部とを有するものであり、前記スカートは、車両前後方向に延びる側部分と、車両左右方向に延びる前部分とを有するものであり、前記台枠の基部に車両前後方向に延びる案内スリットまたは長穴を有するボルト吊り下げ部が前記前部分に対応して形成されると共に、前記台枠の側はりに車両前後方向に延びる案内スリットまたは長穴が前記側部分に対応して形成され、前記案内スリットまたは長穴には支持ボルトが、それの
ボルト軸部を前記案内スリットまたは前記長穴を通じて垂下させることで軸線が鉛直方向になるように吊り下げられ、前記支持ボルトに前記スカートをナットを用いて取り付けることで、前記スカートが前記
台枠に固定
される構成とされ
、前記スカートを前記
台枠に固定する前に、前記支持ボルトが、それのボルト軸部を前記案内スリットまたは長穴を通じて垂下させた状態で車両前後方向に位置調整可能であることを特徴とする。ここで、車体下部から吊り下げた支持ボルトにスカートをナットを用いて取り付けるのは、スカートを取付金具を介して取り付ける場合のほか、スカート自体を車体下部に直接取り付ける場合も含まれる。
【0009】
このようにすれば、ナットを用いてスカートが取り付けられる支持ボルトはすべて軸線が鉛直方向になるように吊り下げられているので、前記支持ボルトに対する前記スカートの取り付けを、すべて車体下部(下面)の下側からナットを用いて行うことができる。このように、スカートの取付方向が鉛直方向のみに統一されるので、作業の単純化が図れる。また、スカートを車体下部に締結するためのナットの作業スペースが、車体下部(下面)の下側に確保されるので、作業スペースに余裕をもって作業を行うことができる。よって、スカートの取付作業性が向上する。
【0010】
特に、車体下部にスカートを取り付ける際には、車体下部の下側に潜って取付作業を行うことになるため、取付方向を鉛直方向に統一し、車体下部の下側に取付作業スペースを確保することで、スカートの取付作業性が一段と向上する。
【0012】
また、支持ボルトが、車両前後方向において(つまり案内スリットまたは長穴に沿って)位置調整可能であるので、スカートが車体前部よりはみ出すことがないように、スカートを見栄えよく取り付けることができる。
【0013】
すなわち、製作誤差などを原因として、スカートの一部が車両前後方向(レール方向)において車体前部からはみ出して取り付けられる場合があり、そのようなはみ出し部分があると見栄えが悪くなる。そのような場合に、見栄えをよくするために、取り付け後にスカートについて取付位置の調整を行うことになるが、前記支持ボルトの、車両前後方向における取付位置を調整可能とすることができるので、前述した調整作業が容易となる。
【0014】
請求項
2に記載のように、前記ボルト吊り下げ部は、互いに向かい合うように前記車体下部から下方に突出して取り付けられる断面L型の第1凸部と断面逆L型の第2凸部とを有し、前記第1及び第2凸部の間に前記案内スリットによる吊り溝部を形成する構成とされ、前記支持ボルトのボルト頭部が、前記第1及び第2凸部の間に回転不能でかつ車両前後方向に位置調整可能に配置され、前記案内スリットの任意の位置で、前記スカートが前記車体下部に固定可能である、構成とすることができる。なお、アルミダブルスキン形材による床構造において多用される床下機器を固定するための吊り溝を利用してスカートを取り付けることも可能である。
【0015】
このようにすれば、支持ボルトを車両前後方向において位置調整可能に支持する構造を簡単に実現することができる。
【0016】
請求項
3に記載のように、前記スカートは、前記スカートが前記車体下部に固定された状態で前記スカートと前記車体下部との接続部分において、前記スカートの側部分が前記車体下部の側部外面より車両内方側に位置するように予め形成された、ものとすることが望ましい。
【0017】
このようにすれば、スカートの側部分が、スカートが車体下部に取り付けられた状態で、車体下部の側部外面よりも車両内方側に位置するように予め形成し、前記側部分が車体下部よりも車両外側方にはみ出すことがないようにしているので、スカートの取付位置を調整する際には、車両左右方向の位置関係については考慮することなく、特にスカート取り付けの見栄えに影響する車両前後方向におけるスカートの取付位置を調整すればよく、調整作業も容易である。
【0018】
請求項
4の発明は、鉄道車両の車体下部に、スカートが固定されている鉄道車両のスカート固定構造であって、前記車体下部にボルト吊り下げ部が形成され、前記ボルト吊り下げ部には支持ボルトが、それの軸線が鉛直方向になるように吊り下げられ、前記支持ボルトに前記スカートをナットを用いて取り付けることで、前記スカートが前記車体下部に固定され、前記スカートは、上部に、前記支持ボルトに前記スカートをナットを用いて取り付ける際に、前記車体下部との間に作業スペースとなる空間部を形成する突出部が設けられている
ことを特徴とする。
【0019】
このようにすれば、前記支持ボルトに前記スカートをナットを用いて取り付ける際の取付作業スペースを車体下部の下側に確保する上で、より有利となる。
【0020】
請求項
5に記載のように、前記スカートは、分解可能である複数のスカート部分により構成され、前記隣り合う各スカート部分は、鉛直接合面を有する取付部をそれぞれ備え、前記両取付部を、それらの鉛直接合面を接触させて固定ボルトにて締結することにより結合される、構成することができる。
【0021】
このようにすれば、分解可能である複数のスカート部分によりスカートを構成しているので、各スカート部分が軽量となり、取付作業の際の取り扱いが容易となる。隣り合うスカート部分の両取付部を、それらの鉛直接合面を対向させて固定ボルトにて締結することにより行うことができるので、前記両取付部どうしのすり合わせが容易となり、固定ボルトの取付方向も水平方向となるので、取付作業性も確保される。
【0022】
請求項
6の発明は、鉄道車両の車体下部に、スカートが固定されている鉄道車両のスカート固定構造であって、前記車体下部にボルト吊り下げ部が形成され、前記ボルト吊り下げ部には支持ボルトが、それの軸線が鉛直方向になるように吊り下げられ、前記支持ボルトに前記スカートをナットを用いて取り付けることで、前記スカートが前記車体下部に固定され、前記スカートは、分解可能である複数のスカート部分により構成され、前記隣り合う各スカート部分は、鉛直接合面を有する取付部をそれぞれ備え、前記両取付部を、それらの鉛直接合面を対向させて固定ボルトにて締結することにより結合されるものであり、前記隣り合うスカート部分の取付部の結合部分は、前記隣り合うスカート部分の一方から前記結合部分の前側に延びるスカート延長部により隠蔽されている
ことを特徴とする。
【0023】
このようにすれば、スカート延長部によって、前記隣り合うスカート部分の取付部の結合部分が隠蔽されるので、スカートを複数のスカート部分で構成する場合にそれらを見栄えよく取り付けることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、車体下部に吊り下げられる支持ボルトに対するスカートの取付方向を鉛直方向のみに統一し、また、スカートを車体下部に締結するためのナットの取付作業スペースを、車体下部の下側に確保するようにしたので、スカートの取付作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る鉄道車両のスカート固定構造を適用した一実施の形態を示す概略正面図である。
【
図5】(a)(b)は第3の取付金具を用いた取付部分の説明図である。
【
図6】側スカートと中間スカートとの締結部分の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。
【0027】
図1は本発明に係る鉄道車両のスカート固定構造を適用した一実施の形態を示す正面図、
図2は台枠を省略して示す同概略平面図,
図3は同概略側面図である。
【0028】
図1〜
図3に示すように、鉄道車両1の車体下部を構成する台枠2前部に、この台枠2前部に沿ってスカート3が取り付けられている。スカート3の台枠2への取り付けは、台枠2から吊り下げられ鉛直方向の軸線を有する複数の支持ボルト4に対しナット5を用いてなされる。台枠2へのスカート3の取り付けは、鉛直方向の軸線を有する複数の支持ボルト4に対してなされ、取付方向が鉛直方向に統一されている。スカート3は、台枠2前部の左右コーナ部に沿う左右の側スカート部分6L,6Rと、それらを連結する中間スカート部分7とに分解可能に構成され、側スカート部分6L,6Rそれぞれがナット5を用いて支持ボルト4に対して取り付けられる。
【0029】
この台枠2は、左右の側はり2Aと、これら左右の側はり2Aの間に設けられ下面の位置が左右の側はり2Aよりも高い基部2Bとを備える。
【0030】
各側スカート部分6L,6Rは、それぞれ車両前後方向に延びる左右の側部分6aと、車両左右方向に延びる左右の前部分6bと、それらを連接する左右の中間湾曲部分6cとを有し、左右の側部分6aは、側スカート部分6L,6Rが台枠2に取り付けられた状態で、台枠2の側部よりも長さ30mm〜40mm程度、車両内方側に位置する構成とされている。つまり、スカート3(側スカート部分6L,6R)は、スカート3が台枠2(車体下部)に固定された状態では、スカート3と台枠2との接続部分において、側スカート部分6L,6Rの側部分6aが台枠2(車体下部)の側部外面2aより車両内方側に位置するように予め形成されたものである。よって、側スカート部分6L,6Rを台枠2に取り付けた状態では、側スカート部分6L,6Rの側部分は台枠2より側方に突出あるいははみ出すことがなく、見栄えが損なわれることがない。
【0031】
各側スカート部分6L,6Rの前部分6bの中央側端部下部には、鉛直方向に貫通する取付穴11aを有する第1の取付金具11が設けられている。また、各側スカート部分6L,6Rの側部分6aの側端部上部には、鉛直方向に貫通する取付穴12aを有する第2の取付金具12が設けられている。各側スカート部分6L,6Rの中間湾曲部分6cの上部には、鉛直方向に貫通する取付穴13aを有する第3の取付金具13が設けられている。さらに、各スカート部分6L,6Rの上部には、台枠2(側はり2A)下面との間にナット5を締結する際に作業スペースとなる空間部を形成する中空の突出部6A(
図5(b)参照)がスペーサ8を介して設けられている。
【0032】
一方、台枠2の基部2Bには、第1の取付金具11の、取付穴11aがある部分に対応して、車両前後方向に延びる案内スリット21aを有するボルト吊り下げ部21が設けられるとともに、第2の取付金具12の取付穴12aがある部分に対応して、台枠2の側はり2Aに車両前後方向に延びる長穴(図示せず)が形成され、第3の取付金具13の取付穴13aがある部分に対応して、台枠2の基部2Bに車両前後方向に延びる長穴(図示せず)が形成されている。
【0033】
支持ボルト4を吊り下げるボルト吊り下げ部21は、
図4に詳細を示すように、互いに向かい合うように台枠2の下面から下方に突出して取り付けられる断面L型の第1凸部21Aと断面逆L型の第2凸部21Bとを有し、第1及び第2凸部21A,21Bの間に案内スリット21aによる吊り溝部を形成する構成とされている。支持ボルト4のボルト頭部4aは、第1及び第2凸部21A,21Bの間に回転不能でかつ車両前後方向に位置調整可能に配置され、案内スリット21aを通じてボルト軸部4b(ねじ軸部)が垂下されている。そして、案内スリット21aの任意の位置で、スカート21を台枠2(車体下部)に固定することができる。
【0034】
ボルト軸部4bを案内スリット21aや長穴(図示せず)を通じて垂下させた状態で台枠2に取り付けられており、ナット5による側スカート部分6L,6Rの固定前には、支持ボルト4は、案内スリット21aや長穴に沿って車両前後方向に位置調整可能である。
【0035】
第1の取付金具11は、各側スカート部分6L,6Rの下部に下端部が締結固定され上端部が鉛直上方に延びる板状の鉛直取付部11Aと、この鉛直取付部11Aの後側上端から後方に二股状に分かれて延び取付穴11aが形成されている水平取付部11Bとを有する。ここで、台枠2(側はり2A)の下面と側スカート部分6L,6Rの上縁との間には、突出部6Aによって隙間(例えば40mm程度)が設けられるようになっており、吊り下げられた支持ボルト4に各取付金具11〜13を取り付けるための、台枠2の下方における作業スペースとなる空間部を広く確保できるようにしている。
【0036】
また、第2の取付金具12は平板状で、側スカート部分6L,6Rの側はり2Aの部位に対応して、車両前後方向に延びるように取り付けられている。
【0037】
さらに第3の取付金具13は、突出部6Aと並んでスカート部分6Lよりより後方に延びるように設けられている(
図5(a)参照)。
【0038】
そして、支持ボルト4のボルト軸部4bに第1〜第3の取付金具11〜13の取付穴11a〜13aを貫通させ、第1〜第3の取付金具11〜13の下側からナット5を用いて締結することで、左右の側スカート部分6L,6Rを台枠2に対し固定できるようになっている。
【0039】
また、左右の側スカート部分6L,6Rは、それらの下部が、
図6に示すように、車両左右方向に延びる中間スカート部分7にて連結され、中間スカート部分7から側スカート部分6L側に延びるスカート延長部7bによって鉛直取付部11Aと側スカート部分6Lとの結合部分が隠蔽されている。つまり、スカート延長部7bが前記結合部分の前側に延びている。
【0040】
具体的には、側スカート部分6Lの後面側には、第1の取付金具11の鉛直取付部11Aが溶着されており、それの後方に延びる中間部分11Aaの鉛直接合面に中間スカート部分7から後方に延びる板状の鉛直取付部7aの鉛直接合面が継ぎ目部分の隙間調整用のライナー33を介して対向している。そして、中間部分11Aaと鉛直取付部7aとが固定ボルト31と固定ナット32とを用いて締結固定されている。スカート延長部7bは、鉛直取付部11Aの前面に沿って延び、スカート延長部7bの表面とスカート部分6L(前部分6b)と略面一となっている。なお、側スカート部分6R側も同様に構成されるが、調整用ライナーは、側スカート部分6Rの一方の側だけに設け、部品点数の削減を図ることも可能である。
【0041】
この中間スカート部分7は台枠2ではなく、左右の側スカート部分6L,6Rに取り付けられるものであり、その取付ボルト21の取付方向は水平方向となるが、中間スカート部分7と台枠2との間には十分な空間部があるので、取付作業性を損なうおそれはない。
【0042】
上記構造によれば、台枠2に吊り下げられた支持ボルト4に取付金具11〜13をナット5にて締結することで各側スカート部分6L,6Rを取り付けるようにしているので、台枠2へのスカート3の取付方向(側スカート部分6L,6R)の取付方向が鉛直方向のみに統一され、取付作業性が向上する。
【0043】
また、側スカート部分6L,6Rの側部分6aは、台枠2に固定された状態で側スカート部分6L,6Rと台枠2との接続部分において、台枠2の側部外面2aよりも車両内方側に位置するように予め形成されており、かつ側スカート部分6L,6Rを支持する支持ボルト4が台枠2側に車両前後方向に位置調整可能に取り付けられているので、側スカート部分6L,6Rの側部分が台枠2よりも突出することはなく、側スカート部分6L,6Rの、特に見栄えに影響する車両前後方向における位置を調整だけすればよく、調整作業も容易である。
【0044】
とくに、台枠2の下面と各側スカート部分6L,6Rの上縁との間には車両上下方向において、突出部6Aによって台枠2の下側にナット6を締結する際に作業スペースとなる空間部を形成しているので、側スカート部分6L,6Rの取付金具11〜13を台枠2に締結するナット5の取付作業スペースを台枠2の下側に無理なく確保することができる。
【0045】
また、各側スカート部分6L,6Rの中央側端部において各側スカート部分6L,6R下部を第1の取付金具11を介して取り付け、各側スカート部分6L,6Rの側端部において各側スカート部分6L,6Rの上部を第2の取付金具12を介して取り付けるようにしているので、側スカート部分6L,6R上部の側端部と下部の中央側端部とを支持することで、側スカート部分6L,6Rの支持は安定する。さらに、中間湾曲部分6cを第3の取付金具13を介して取り付けるようにすることで、側スカート部分6L,6Rの支持はより安定する。
【0046】
第1の取付金具11は、鉛直取付部11Aと、水平取付部11Bとを有する構成としているので、第1の取付金具11を用いて、吊り下げられている支持ボルト4のボルト軸部4bを、水平取付部11Bの取付穴11aに貫通させ、ナット5を用いて取り付けるので、台枠2に対する側スカート3L,3Rの取付作業性に優れる。
【0047】
さらに、左右の側スカート部分6L,6Rは、それらの下部が中間スカート部分7にて連結されているので、中間スカート部分7によって第1の取付金具11の鉛直取付部11Aが隠蔽される。また、スカート延長部7bによって鉛直取付部11Aと側スカート部分6Lとの結合部分が隠蔽される。これらにより、台枠2に対し側スカート部分6L,6Rを見栄えよく取り付ける上で有利となる。特に、側スカート部分6L,6Rと中間スカート部分7との間の隙間を調整するスペーサ33を含めて結合部が外部から見えないので、見栄え向上の効果が大きく、スカート両側においてスペーサを使用する場合だけでなく、片側においてのみスペーサを使用する場合でも見付上の問題がなく、部品点数の削減が可能となる。
【0048】
本発明は、前述したほか、次のように変更して実施することもできる。
【0049】
(i)前記実施の形態では、複数のスカート部分(左右の側スカート部分6L,6Rと中間スカート部分7)を用いて分解可能であるスカート3を構成しているが、単体である1つのスカートとして構成してもよいのはもちろんである。
【0050】
(ii)前記実施の形態では、ボルト吊り下げ部21(第1及び第2凸部21A,21B)に案内スリット21aを形成するようにしているが、本発明はそれに限定されるものではなく、案内スリットに代えて、車両前後方向に延びる長穴とすることも可能である。
【0051】
(iii)前記実施の形態では、第1の取付金具を取り付ける部分に対応して案内スリットを、第2および第3の取付金具を取り付ける部分に対応して長穴をそれぞれ設けているが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1の取付金具を取り付ける部分に対応して長穴を、第2および第3の取付金具を取り付ける部分に対応して案内スリットを設けることができるのはもちろん、すべての部分に案内スリットあるいは長穴のいずれか一方を設けることもできるのはいうまでもない。つまり、車両前後方向の調整ができるように、取付金具を取り付ける部分に対応して案内スリットまたは長穴が形成されていればよい。
【0052】
(iv)第1〜第3の取付金具を用いることなく、スカートを車体下部(台枠)に直接に取り付けるようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 鉄道車両
2 台枠(車体下部)
2a 台枠の側部外面
3 スカート
4 支持ボルト
4a ボルト頭部
4b ボルト軸部
5 ナット
6L,6R 側スカート部分
6A 突出部
6a 側部分
6b 前部分
6c 中間湾曲部分
7 中間スカート部分
7a 鉛直取付部
7b スカート延長部
11 第1の取付金具
11a 取付穴
11A 鉛直取付部
11Aa 中間部分(取付部)
11B 水平取付部
12 第2の取付金具
12a 取付穴
13 第3の取付金具
21 ボルト吊り下げ部
21a 案内スリット
31 固定ボルト
32 固定ナット
33 ライナー