特許第5977057号(P5977057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5977057発泡樹脂成形型および発泡樹脂成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977057
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】発泡樹脂成形型および発泡樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 44/00 20060101AFI20160817BHJP
【FI】
   B29C67/22
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-73104(P2012-73104)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-202889(P2013-202889A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597163234
【氏名又は名称】株式会社積水化成品東部
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100099128
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 康
(72)【発明者】
【氏名】小泉 敏
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩久
【審査官】 岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−155906(JP,A)
【文献】 特開2010−228248(JP,A)
【文献】 特開2003−251651(JP,A)
【文献】 特開2001−079869(JP,A)
【文献】 実開平02−065537(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の成形面を持つ第1の成形型と第2の成形面を持つ第2の成形型とを備え、第1の成形面と第2の成形面とで成形用キャビティが形成されるようになっており、第1と第2の成形面には複数の蒸気穴が形成されており、いずれか一方の成形型には原料フィーダーが備えられており、いずれか一方の成形型には押し出しピンが備えられており、前記原料フィーダーの原料噴出口から発泡性樹脂粒子を噴出して前記成形用キャビティ内に発泡性樹脂粒子を充填し、前記複数の蒸気穴を介して充填した発泡性樹脂粒子に蒸気を接触させることで発泡樹脂成形品を成形する発泡樹脂成形型において、
前記成形用キャビティが形成された状態で、前記押し出しピンを備えた成形型に対向する他方の成形型の成形面における押し出しピンの先端に対面する領域には、少なくとも1つの蒸気穴の全部または一部が位置するように双方の成形型が設計されていることを特徴とする発泡樹脂成形型。
【請求項2】
第1の成形面を持つ第1の成形型と第2の成形面を持つ第2の成形型と第3の成形面を持つ第3の成形型を備え、第1の成形面と第2の成形面とで両側面がまた第3の成形面で周側面が区画された成形用キャビティが形成されるようになっており、第1と第2の成形面には複数の蒸気穴が形成されており、第1と第2の成形型のいずれか一方には原料フィーダーが備えられており、第1と第2の成形型のいずれか一方には押し出しピンが備えられており、前記原料フィーダーの原料噴出口から発泡性樹脂粒子を噴出して前記成形用キャビティ内に発泡性樹脂粒子を充填し、前記複数の蒸気穴を介して充填した発泡性樹脂粒子に蒸気を接触させることで発泡樹脂成形品を成形する発泡樹脂成形型において、
前記成形用キャビティが形成された状態で、前記押し出しピンを備えた成形型に対向する他方の成形型の成形面における押し出しピンの先端に対面する領域には、少なくとも1つの蒸気穴の全部または一部が位置するように第1および第2の成形型が設計されていることを特徴とする発泡樹脂成形型。
【請求項3】
前記成形用キャビティが形成された状態で、第1の成形面と第2の成形面に形成された双方の蒸気穴が成形面に垂直な方向から見て重ならないように、双方の成形面の蒸気穴の位置が設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の発泡樹脂成形型。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載した発泡樹脂成形型を用いて発泡樹脂成形品を製造する方法であって、前記発泡樹脂成形型の成形用キャビティに原料フィーダーから発泡性樹脂粒子を充填し、複数の蒸気穴を介して該発泡性樹脂粒子に蒸気を接触させることによって充填した発泡性樹脂粒子を発泡させることを特徴とする発泡樹脂成形品の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形型に備えた成形面で形成される成形用キャビティ内に発泡性樹脂粒子を充填し、充填した発泡性樹脂粒子を蒸気と接触させて発泡樹脂成形品を製造するための発泡樹脂成形型と、該発泡樹脂成形型を用いる発泡樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第1の成形面を持つ第1の成形型と第2の成形面を持つ第2の成形型とを備え、第1の成形面と第2の成形面とで成形用キャビティが形成されるようになっており、第1と第2の成形面には複数の蒸気穴が形成されており、いずれか一方の成形型には原料フィーダーが備えられており、いずれか一方の成形型には押し出しピンが備えられており、前記原料フィーダーの原料噴出口から発泡性樹脂粒子を噴出して前記成形用キャビティ内に発泡性樹脂粒子を充填し、前記複数の蒸気穴を介して充填した発泡性樹脂粒子に蒸気を接触させることで発泡樹脂成形品を成形する発泡樹脂成形型は知られており、その具体的な例が特許文献1、2あるいは3などに記載されている。
【0003】
また、特に板状の低倍発泡品を成形するのに適した発泡樹脂成形型として、特許文献4には、第1の成形面を持つ第1の成形型と第2の成形面を持つ第2の成形型と第3の成形面を持つ第3の成形型を備え、第1の成形面と第2の成形面とで両側面がまた第3の成形面で周側面が区画された成形用キャビティが形成されるようになっており、第1と第2の成形面には複数の蒸気穴が形成されており、第1と第2の成形型のいずれか一方には原料フィーダーが備えられており、第1と第2の成形型のいずれか一方には押し出しピンが備えられており、前記原料フィーダーの原料噴出口から発泡性樹脂粒子を噴出して前記成形用キャビティ内に発泡性樹脂粒子を充填し、前記複数の蒸気穴を介して充填した発泡性樹脂粒子に蒸気を接触させることで発泡樹脂成形品を成形する発泡樹脂成形型が記載されている。
【0004】
上記のような発泡樹脂成形型を用いて発泡樹脂成形品を成形する場合、成形用キャビティ内に充填された発泡性樹脂粒子は蒸気に接触することで相互に発泡しかつ融着する。そのために、内部で強度差のない均一な成形品を得るためには、充填された発泡性樹脂粒子に対して、可能な限り均一に蒸気を供給することが必要とされる。そのために、通常、成形型の成形面には、複数の蒸気穴が縦横に規則的なピッチで設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平3−98031号公報
【特許文献2】特開2003−251651号公報
【特許文献3】特開2008−230087号公報
【特許文献4】特開平8−25393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
成形型の成形面に縦横に規則的なピッチで複数個の蒸気穴を設けることで、成形用キャビティ内にほぼ均一に蒸気を送給することができ、発泡性樹脂粒子がほぼ均一に融着した、実使用上で格別の支障がない発泡樹脂成形品が得られる。
【0007】
しかし、成形面において、押し出しピンが取り付けられている部分には、蒸気穴を形成することができないので、特に、対向する成形面側における押し出しピンに対面する領域に蒸気穴が形成されていない場合に、成形用キャビティ内における押し出しピンの位置近傍で他の領域と比べて蒸気が通り難くなるのを避けられず、わずかとはいえ、押し出しピンの位置近傍において、樹脂粒子同士の融着が他の領域と比較して不十分となる場合が起こり得る。そして、融着不良は製品に部分的な強度不足をもたらす一因となる。
【0008】
近年、発泡樹脂成形品の用途がますます広がってきており、用途によっては、従来以上の高い均質性が求められるケースがある。そのようなケースでは、これまでさほど問題視されていなかった押し出しピンの位置近傍での蒸気の流れ込み状態を、従来のもの以上に改善することが、大きな課題となりつつある。
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、成形用キャビティ内に従来のものよりもさらに均一に蒸気を送り込むことができるようにした発泡樹脂成形型と、該発泡樹脂成形型を用いる発泡樹脂成形品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による第1の形態の発泡樹脂成形型は、第1の成形面を持つ第1の成形型と第2の成形面を持つ第2の成形型とを備え、第1の成形面と第2の成形面とで成形用キャビティが形成されるようになっており、第1と第2の成形面には複数の蒸気穴が形成されており、いずれか一方の成形型には原料フィーダーが備えられており、いずれか一方の成形型には押し出しピンが備えられており、前記原料フィーダーの原料噴出口から発泡性樹脂粒子を噴出して前記成形用キャビティ内に発泡性樹脂粒子を充填し、前記複数の蒸気穴を介して充填した発泡性樹脂粒子に蒸気を接触させることで発泡樹脂成形品を成形する発泡樹脂成形型において、前記成形用キャビティが形成された状態で、前記押し出しピンを備えた成形型に対向する他方の成形型の成形面における少なくとも押し出しピンの先端に対面する領域には、少なくとも1つの蒸気穴の全部または一部が位置するように双方の成形型が設計されていることを特徴とする。
【0011】
本発明による第2の形態の発泡樹脂成形型は、第1の成形面を持つ第1の成形型と第2の成形面を持つ第2の成形型と第3の成形面を持つ第3の成形型を備え、第1の成形面と第2の成形面とで両側面がまた第3の成形面で周側面が区画された成形用キャビティが形成されるようになっており、第1と第2の成形面には複数の蒸気穴が形成されており、第1と第2の成形型のいずれか一方には原料フィーダーが備えられており、第1と第2の成形型のいずれか一方には押し出しピンが備えられており、前記原料フィーダーの原料噴出口から発泡性樹脂粒子を噴出して前記成形用キャビティ内に発泡性樹脂粒子を充填し、前記複数の蒸気穴を介して充填した発泡性樹脂粒子に蒸気を接触させることで発泡樹脂成形品を成形する発泡樹脂成形型において、前記成形用キャビティが形成された状態で、前記押し出しピンを備えた成形型に対向する他方の成形型の成形面における少なくとも押し出しピンの先端に対面する領域には、少なくとも1つの蒸気穴の全部または一部が位置するように第1および第2の成形型が設計されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、本発明による発泡樹脂成形型を用い、前記発泡樹脂成形型の成形用キャビティに原料フィーダーから発泡性樹脂粒子を充填し、複数の蒸気穴を介して該発泡性樹脂粒子に蒸気を接触させることによって充填した発泡性樹脂粒子を発泡させることを特徴とする発泡樹脂成形品の製造方法をも開示する。
【0013】
上記の第1および第2の形態の発泡樹脂成形型では、成形用キャビティが形成された状態で、押し出しピンが備えられたに成形型に対向する成形型の成形面における少なくとも押し出しピンの先端に対面する領域には、かならず、少なくとも1つの蒸気穴の全部または一部が位置するように設計している。そのために、成形用キャビティ内での押し出しピンの先端近傍に位置する発泡性樹脂粒子には、押し出しピンの先端に対面して位置する蒸気穴から供給される蒸気が十分に行き渡るようになり、その近傍において発泡性樹脂粒子同士の熱融着不良が起こるのを回避することができる。
【0014】
成形型の設計に当たっては、第1と第2の成形面に蒸気穴を形成するときに、一方の成形型に押し出しピンを取り付けた位置を勘案し、成形用キャビティが形成された状態で、他方の成形型の成形面における該押し出しピンの先端に対面する領域に、かならず少なくとも1つの蒸気穴の全部または一部が位置するように、蒸気孔を形成する。または、その逆に、一方の成形型の成形面であって、他方の成形型の成形面に形成された蒸気穴の少なくとも1つの蒸気穴の全部または一部に対面することとなる領域に、押し出しピンの先端を配置する。それにより、押し出しピンの先端近傍に位置する発泡性樹脂粒子に十分な蒸気を供給することが可能となる。
【0015】
本発明による発泡樹脂成形型のより好ましい態様は、第1の成形面と第2の成形面に形成された双方の蒸気穴が成形面に垂直な方向から見て重ならないように、双方の成形面の蒸気穴の位置が設定されていることを特徴とする。
【0016】
この態様では、第1の成形面側の蒸気穴と第2の成形面側の蒸気穴を通して成形用キャビティ内を流れる蒸気の移動距離が、双方の蒸気穴が対面して位置している場合と比較して延長され、キャビティ内に満遍なく蒸気を行き渡らせることができる。その結果、発泡性樹脂粒子同士の融着状態のバラツキがさらに無くなり、一層高強度の成形品を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明による発泡樹脂成形型を用いることにより、従来のものよりも、発泡性樹脂粒子同士の融着のバラツキが軽減され、部位による強度差がなくなった発泡樹脂成形品を成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の形態の発泡樹脂成形型の一例を説明する図。
図2】第2の形態の発泡樹脂成形型の一例を説明する図。
図3】蒸気穴と押し出しピンの先端との関係の一例を模式的に示す図。
図4】本発明による構成を備えない発泡樹脂成形型での蒸気孔と押し出しピンとの関係を模式的に示す図(a)と、本発明による発泡樹脂成形型での蒸気孔と押し出しピンとの関係を説明するための図(b)。
図5】第1と第2の成形型における蒸気穴の位置関係を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明を実施の形態に基づき説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る第1の形態の発泡樹脂成形型を備えた成形装置の一例を模式的に示している。なお、この成形装置A1は、蒸気穴の配置と押し出しピンの位置関係を除き、例えば、前記した特許文献1、2、3などに記載される従来知られた形態の成形装置と同じであってよい。
【0021】
成形装置A1は、一対の雄成形型1(第1の成形型)と雌成形型2(第2の成形型)からなる。雄成形型1には第1の成形面3を構成する凸部が形成され、また雌成形型2には第2の成形面4を構成する凹部が形成されている。雌雄成形型1、2は、これら第1の成形面3と第2の成形面4とを互いに対向させた状態に配設される。そして、雌成形型2の凹部である第2の成形面4内に雄成形型1の凸部である第1の成形面3を挿入した状態として、雌雄成形型1、2を型閉めすることで、対向面間に成形用キャビティ6が形成される。
【0022】
雄成形型1の第1の成形面3には、成形用キャビティ6内に発泡性樹脂粒子を供給するための原料フィーダー10が、その原料噴出口12を前記成形用キャビティ6に開放するようにして取り付けられるとともに、成形用キャビティ6に面する部分には複数の蒸気穴7が好ましくは互いに直交する2軸方向に規則的なピッチで設けられている。また、雌成形型2の第2の成形面4における成形用キャビティ6に面する部分にも、複数の蒸気穴8が好ましくは互いに直交する2軸方向に規則的なピッチで設けられている。雌雄成形型1、2内は全体として中空構造とされており、この中空部20、21内に、図示しない蒸気発生部から蒸気が供給され、その蒸気が、前記した蒸気穴7、8を通過して、成形用キャビティ6内に送給される。
【0023】
第1の成形型1には、1個または複数個の押し出しピン9が取り付けられている。押し出しピン9は、図示しない適宜のアクチュエータに接続するステー9aと該ステー9aの先端に取り付けられたステー9aの断面積よりも広い面積を持つ平板状の先端部9bとで構成される。先端部9bは、この例では直径Dの円盤であり、その表面を第1の成形面3と同一平面となるようにして取り付けられている。押し出しピン9の先端部9bは、成形時には図示される引き込まれた位置にあり、成形後に成形品を型から取り出すときに、アクチュエータの作動により図で左方向に押し出される。
【0024】
図2は、本発明に係る第2の形態の発泡樹脂成形型を備えた成形装置の一例を模式的に示している。成形装置A2は、平坦な第1の成形面3を持つ第1の成形型1と、平坦な第2の成形面4を持つ第2の成形型2と、第3の成形面5bを持つ第3の成形型5を備えている。そして、第3の成形型5は、図示の例で、第1の成形型1の平坦な第1の成形面3に着脱可能に取り付けられている。第3の成形型5は、面内に開口部5aを有しており、該開口部5aの外周を区画する周側面が前記第3の成形面5bを構成する。
【0025】
この成形装置A2では、前記第3の成形型5を中間として第1の成形型1および第2の成形型2を締めることにより、平坦な第1の成形面3と平坦な第2の成形面4とで両側面が規制され、第3の成形型5の開口部5aの周側壁である第3の成形面5bで周側面が規制された成形用キャビティ6が形成される。
【0026】
成形装置A2において、第1の成形型1には、成形装置A1と同じように、成形用キャビティ6内に発泡性樹脂粒子を供給するための原料フィーダー10が、その原料噴出口12を平坦な第1の成形面3に位置させかつ前記成形用キャビティ6に開放するようにして取り付けられている。また、平坦な第1の成形面3の成形用キャビティ6に面する部分には、複数の蒸気穴7が好ましくは互いに直交する2軸方向に規則的なピッチで設けられており、第2の成形型2に取り付けた平坦な第2の成形面4における成形用キャビティ6に面する部分にも、複数の蒸気穴8が好ましくは互いに直交する2軸方向に規則的なピッチで設けられている。そして、成形装置A2においても、第1の成形型1には、成形装置A1と同様、ステー9aと先端部9bを備えた1個または複数個の押し出しピン9が取り付けられている。その作動は成形装置A1における作動と同じである。成形装置A2においても、第1と第2の成形型1、2内は全体的に中空構造とされており、この中空部20、21内に、図示しない蒸気発生部から蒸気が供給され、その蒸気が、前記した蒸気穴7、8を通過して、成形用キャビティ6内に送給される。
【0027】
なお、成形装置A1、A2において、第1の成形型1側に原料フィーダー10を取り付けるようにしたが、第2の成形型2側に原料フィーダー10を取り付けるようにしてもよい。さらに、押し出しピン9も、第1の成形型1側に取り付けるようにしたが、第2の成形型2側に取り付けるようにしてもよく、第1の成形型1および第2の成形型2の双方に取り付けるようにしてもよい。
【0028】
本発明による発泡樹脂成形型A1、A2において、雄成形型1と雌成形型2とを型合わせして成形用キャビティ6を形成したときに、押し出しピン9を備えた成形型(図示のものでは第1の成形型1)に対向する成形型(図示のものでは第2の成形型2)の成形面4であって、前記先端部9bに対面する領域には、少なくとも1つの蒸気穴8の全部または一部が位置するように、第1の成形型1と第2の成形型2が設計されている。
【0029】
より詳細には、図1に示した成形装置A1においては、第1の成形型1の第1の成形面3と第2の成形型2の第2の成形面4とで成形用キャビティ6を形成したときに、第1の成形型1に取り付けた押し出しピン9の直径Dである先端部9aに対向する成形型2の第2の成形面4の領域には、少なくとも1つの蒸気穴8の全部または一部が位置するように第2の成形型2が設計されている。
【0030】
図2に示す成形装置A2においても同様であり、第1の成形型1の第1の成形面3と第2の成形型2の第2の成形面4と第3の成形型の第3の成形面5bとで成形用キャビティ6を形成したときに、第1の成形型1に取り付けた押し出しピン9の直径Dである先端部9aに対向する成形型2の第2の成形面4の領域には、少なくとも1つの蒸気穴8の全部または一部が位置するように第2の成形型2が設計されている。
【0031】
図3は、第2の成形型2の第2の成形面4を示している。図3には、成形用キャビティ6を形成したときでの、第1の成形型1に取り付けた押し出しピン9の直径Dである円盤状の先端部9bの投影図の3つのパターンが仮想線で示されている。ここでは、蒸気穴8は直径dの円形であり、複数個の蒸気穴8が、互いに直交するX軸方向およびY軸方向に等しいピッチaで形成されている。
【0032】
図3でのパターン(イ)では、1個の蒸気穴8aのすべてが、直径Dである円盤状の先端部9bの投影線9c内であってかつその中央部に位置している。この態様では、成形用キャビティ6内での押し出しピンの先端部9b近傍に位置する発泡性樹脂粒子に、十分に蒸気がほぼ均等に行き渡るようになり、発泡性樹脂粒子同士の熱融着不良が起こるのを回避することができる。
【0033】
パターン(ロ)では、1個の蒸気穴8aのすべてが、直径Dである円盤状の先端部9bの投影線9c内で外縁に近接したところに位置している。この態様であっても、押し出しピンの先端部9b近傍に位置する発泡性樹脂粒子に十分に蒸気を供給するができる。蒸気孔8aから遠い部分には、近接する他の蒸気孔8からの蒸気が供給されるので、やはり発泡性樹脂粒子同士の熱融着不良が起こるのを回避することができる。
【0034】
パターン(ハ)では、2個の蒸気穴8a、8aの一部が、直径Dである円盤状の先端部9bの投影線9c内に位置している。この態様であっても、2個の蒸気穴8a、8aから押し出しピンの先端部9b近傍に位置する発泡性樹脂粒子に十分に蒸気を供給するができる。
【0035】
図4(a)は、本発明による構成を備えない発泡樹脂成形型での、蒸気孔8と、直径Dである円盤状の先端部9bの投影図の一例を示している。図示されるように、先端部9bの投影線内には、蒸気孔8が形成されていない。そのために、押し出しピンの先端部9b近傍に位置する発泡性樹脂粒子、特に周囲の4つの蒸気孔8〜8で囲まれた領域の中央部に位置する発泡性樹脂粒子には蒸気の供給が不十分となり、発泡性樹脂粒子同士の熱融着不良が起こる可能性がある。
【0036】
次に、図4(a)のパターンを参照して、直径dである蒸気孔8の配置と押し出しピン9での直径Dである円盤状の先端部9bの寸法との関係について、考察する。図4(a)のパターンにおいて、蒸気穴8は、互いに直交するX軸方向およびY軸方向に等しいピッチaで形成されているとする。ここで、近接する4つの蒸気穴8、8、8、8を選択すると、その中心を結ぶことにより、矩形(この場合には正方形)が形成され、4つの蒸気穴間の距離は、対角線上にある蒸気穴8と蒸気穴8(または蒸気穴8と蒸気穴8)を結ぶ距離が最大となる。図4(b)に示すように、その距離、すなわち蒸気穴8と蒸気穴8の中心間の距離をAとすると、蒸気穴8と蒸気穴8に内接する円Cの直径Sは、S=A−d、A=√(a+a)となる。
【0037】
したがって、この例では、押し出しピン9の円盤状の先端部9bの直径Dを、前記内接円Cの直径S(S=A−d、A=√(a+a))以上とすることにより、押し出しピン9の取り付け位置を特に選択することなく、発泡樹脂成形型は本発明の条件を満たしたものとなる。しかし、発泡樹脂成形型によっては、押し出しピン9の円盤状の先端部9bの直径Dを内接円Cの直径S(S=A−d、A=√(a+a))以上とすることができない場合も起こり得る。そのような発泡樹脂成形型、すなわち、先端部9bの直径DがD≦S(=A−d)である押し出しピン9を備える発泡樹脂成形型であっては、前記したパターン(イ)〜(ハ)を満足する位置に押し出しピン9の取り付け位置を設定することにより、発泡樹脂成形型は本発明の条件を満たしたものとなる。
【0038】
図5は、本発明による発泡脂成形型のより好ましい態様を説明するための模式図である。図において、○は第2の成形面4に形成された蒸気穴8を示しており、●は第1の成形面3に形成された蒸気穴7を示している。また、図5は、第1の成形型1と第2の成形型2とを型締めしたときの、前記第1の成形面3と第2の成形面4とが重ね合わさった状態を示している。この態様では、図示のように、第2の成形面4に形成された蒸気穴8(○)と第1の成形面3に形成された蒸気穴7(●)とが重畳しないように、双方の成形面の蒸気穴のピッチが設定されている。
【0039】
このように、第1と第2の成形面3、4における蒸気穴7、8の位置決めを行うことにより、第1の成形面3側の蒸気穴7と第2の成形面4側の蒸気穴8を通して成形用キャビティ6内を流れる蒸気の移動距離が、双方の蒸気穴7、8が対向して位置している場合と比較して延長されるので、成形用キャビティ6内に満遍なく蒸気を行き渡らせることができる。その結果、発泡性樹脂粒子同士の融着状態のバラツキがさらに無くなり、一層均一かつ高強度の成形品を得ることができる。また、押し出しピン9の先端部9bに対向する第2の成形面4の領域に少なくとも1つの蒸気穴8の全部または一部が位置するように双方の成形型1、2が設計されていることで、押し出しピン9の先端部9b近傍の領域に十分な量の蒸気を行き渡らせることが可能となり、良品の発泡成形品が得られる。
【符号の説明】
【0040】
1…第1の成形型、
2…第2の成形型、
3…第1の成形面、
4…第2の成形面、
5…第3の成形型、
5a…第3の成形型の開口部、
5b…第3の成形面、
6…成形用キャビティ、
7…第1の成形面に形成される蒸気穴、
8…第2の成形面に形成される蒸気穴
9…押し出しピン、
10…原料フィーダー。
図1
図2
図3
図4
図5