特許第5977058号(P5977058)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977058
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】処理液供給装置および処理液供給方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20160817BHJP
   B08B 3/04 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   H01L21/304 648G
   H01L21/304 648F
   H01L21/304 648K
   B08B3/04 Z
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-74135(P2012-74135)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-207076(P2013-207076A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(74)【代理人】
【識別番号】100137062
【弁理士】
【氏名又は名称】五郎丸 正巳
(72)【発明者】
【氏名】安田 周一
【審査官】 堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−175559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B08B 3/00 − 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象に処理液による処理を施すための処理部に処理液を供給する処理液供給装置であって、
前記処理部に供給すべき処理液が貯留される処理液タンクと、
前記処理液タンクから前記処理部へと処理液を導く処理液供給路と、
この処理液供給路に介装され、前記処理液タンクに貯留されている処理液を前記処理液供給路へと送り出す送液手段と、
前記処理液供給路に介装されて、前記処理液供給路を流通する処理液をろ過するフィルタと、
前記フィルタの二次側に接続され、または前記フィルタの下流側の前記処理液供給路に分岐接続されて、前記処理液供給路から供給された処理液を排液させる排液路と、
前記フィルタの上流側の前記処理液供給路に介装された第1処理液バルブと、
前記排液路との接続部分よりも下流側の前記処理液供給路に介装された第2処理液バルブと、
前記排液路に介装された排液バルブと、
前記第1および第2処理液バルブならびに前記排液バルブの開閉を制御する制御手段とを含み、
前記制御手段は、前記処理液供給装置の起動後の処理液供給開始動作において、前記第1および第2処理液バルブならびに前記排液バルブが閉じられかつ前記送液手段が駆動された状態で、前記第2処理液バルブが開けられるのに先立って前記第1処理液バルブおよび前記排液バルブを開き、その後 、前記第2処理液バルブを開きかつ前記排液バルブを閉じる 供給開始動作制御手段を含み、前記供給開始動作制御手段は、前記第1処理液バルブを開き、前記第1処理液バルブが開けられてから予め定める期間が経過した後に前記排液バルブを開く手段を含 む、処理液供給装置。
【請求項2】
前記供給開始動作制御手段は、前記排液バルブを開いた後において、前記フィルタから前記排液路を通して排液される処理液の積算流量が予め定める量に達した場合に前記第2処理液バルブを開く、請求項に記載の処理液供給装置。
【請求項3】
処理対象に処理液による処理を施すための処理部に処理液を供給する処理液供給装置であって、
前記処理部に供給すべき処理液が貯留される処理液タンクと、
前記処理液タンクから前記処理部へと処理液を導く処理液供給路と、
この処理液供給路に介装され、前記処理液タンクに貯留されている処理液を前記処理液供給路へと送り出す送液手段と、
前記処理液供給路に介装されて、前記処理液供給路を流通する処理液をろ過するフィルタと、
前記フィルタの二次側に接続され、または前記フィルタの下流側の前記処理液供給路に分岐接続されて、前記処理液供給路から供給された処理液を排液させる排液路と、
前記フィルタの上流側の前記処理液供給路に介装された第1処理液バルブと、
前記排液路との接続部分よりも下流側の前記処理液供給路に介装された第2処理液バルブと、
前記排液路に介装された排液バルブと、
前記第1および第2処理液バルブならびに前記排液バルブの開閉を制御する制御手段とを含み、
前記制御手段は、前記処理液供給装置の起動後の処理液供給開始動作において、前記第1および第2処理液バルブならびに前記排液バルブが閉じられかつ前記送液手段が駆動された状態で、前記第2処理液バルブが開けられるのに先立って前記第1処理液バルブおよび前記排液バルブを開き、その後、前記第2処理液バルブを開きかつ前記排液バルブを閉じる供給開始動作制御手段を含み、
前記供給開始動作制御手段は、前記排液バルブを開いた後において、前記フィルタから前記排液路を通して排液される処理液の積算流量が予め定める量に達した場合に前記第2処理液バルブを開く、処理液供給装置。
【請求項4】
前記処理液タンクに溜められている処理液の量を検出するための液量センサをさらに含み、
前記供給開始動作制御手段は、前記液量センサの検出出力に基づいて、前記フィルタから前記排液路を通して排液される処理液の積算流量を求める、請求項3に記載の処理液供給装置。
【請求項5】
前記処理部に向けて前記処理液供給路から供給された後の処理液を、前記処理液タンクへと帰還させる処理液帰還路をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の処理液供給装置。
【請求項6】
処理対象に処理液による処理を施すための処理部に供給すべき処理液が貯留される処理液タンクと、前記処理液タンクから前記処理部へと処理液を導く処理液供給路と、この処理液供給路に介装され、前記処理液タンクに貯留されている処理液を前記処理液供給路へと送り出す送液手段と、前記処理液供給路に介装されて、前記処理液供給路を流通する処理液をろ過するフィルタと、前記フィルタの二次側に接続され、または前記フィルタの下流側の前記処理液供給路に分岐接続されて、前記処理液供給路から供給された処理液を排液させる排液路と、前記フィルタの上流側の前記処理液供給路に介装された第1処理液バルブと、前記排液路との接続部分よりも下流側の前記処理液供給路に介装された第2処理液バルブと、前記排液路に介装された排液バルブとを含む処理液供給装置において実行される処理液供給方法であって、
前記処理液供給装置の起動後の処理液供給開始動作において、前記第1および第2処理液バルブならびに前記排液バルブが閉じられかつ前記送液手段が駆動された状態で前記第1処理液バルブを開き、前記第1処理液バルブが開けられてから予め定める期間が経過した後に前記排液バルブを開き、その後、前記第2処理液バルブを開きかつ前記排液バルブを閉じる、処理液供給方法。
【請求項7】
処理対象に処理液による処理を施すための処理部に供給すべき処理液が貯留される処理液タンクと、前記処理液タンクから前記処理部へと処理液を導く処理液供給路と、この処理液供給路に介装され、前記処理液タンクに貯留されている処理液を前記処理液供給路へと送り出す送液手段と、前記処理液供給路に介装されて、前記処理液供給路を流通する処理液をろ過するフィルタと、前記フィルタの二次側に接続され、または前記フィルタの下流側の前記処理液供給路に分岐接続されて、前記処理液供給路から供給された処理液を排液させる排液路と、前記フィルタの上流側の前記処理液供給路に介装された第1処理液バルブと、前記排液路との接続部分よりも下流側の前記処理液供給路に介装された第2処理液バルブと、前記排液路に介装された排液バルブとを含む処理液供給装置において実行される処理液供給方法であって、
前記処理液供給装置の起動後の処理液供給開始動作において、前記第1および第2処理液バルブならびに前記排液バルブが閉じられかつ前記送液手段が駆動された状態で、前記第2処理液バルブが開けられるのに先立って前記第1処理液バルブおよび前記排液バルブを開き、その後 、前記第2処理液バルブを開きかつ前記排液バルブを閉じ、
前記第2処理液バルブの閉成は、前記排液バルブを開いた後において、前記フィルタから前記排液路を通して排液される処理液の積算流量が予め定める量に達した場合に行われる、処理液供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、処理対象の基板を処理する処理部に処理液を供給する処理液供給装置および処理液供給方法に関する。処理対象になる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などの基板が含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置の製造工程では、半導体ウエハなどの基板を処理液によって処理する基板処理装置が用いられる。基板を1枚ずつ処理する枚葉型の基板処理装置は、たとえば、基板を水平に保持して回転させるスピンチャックと、このスピンチャックに保持された基板に向けて処理液を吐出する処理液ノズルと有する処理部を、本体部に備えている。処理液ノズルに処理液を供給するために、基板処理装置には、本体部とは別に処理液供給装置が備えられる。処理液ノズルには、処理液供給装置から延びる処理液供給配管が接続されており、この処理液供給配管を介して処理液供給装置の処理液タンクに貯留された処理液が供給される(たとえば特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1記載の処理液供給装置では、処理液供給配管には、処理液ノズルへの処理液の供給および供給停止を切り換える三方弁と、処理液タンクに貯留されている処理液を汲み出すポンプと、処理液供給配管内を流通する処理液の温度を調節する温度調節器と、当該処理液供給配管内を流通する処理液をろ過するフィルタとが介装されている。三方弁には、処理液供給配管に送り込まれた処理液を処理液タンクに帰還させるリターン配管が接続されている。処理液供給配管、三方弁およびリターン配管によって処理液タンク内の処理液を循環させる循環経路が形成されている。処理液ノズルに対して処理液が供給されていない間、処理液タンク内の処理液は循環経路を循環させられることにより、処理液タンク内の処理液が温度調節器によって温度調節され、処理液タンク内の温度が所定の温度に調節される。また、循環経路を循環する処理液はフィルタにろ過されて清浄化されるので、処理液タンク内の処理液が清浄状態に保たれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−351709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、メンテナンスの終了後、温調・循環停止の状態(IDLE状態)にある処理液供給装置を再起動させると、その再起動から数分の間に処理液供給タンクや循環経路にパーティクルが急増することがある。
この問題について本件発明者が詳細に検討したところ、次に述べるように、このようなパーティクルの発生源はフィルタであることがわかった。
【0006】
温調・循環停止の状態では、ポンプの駆動停止により処理液の循環が停止されて、フィルタにおける処理液の流動が無くなる。循環を開始すると、フィルタからパーティクルが発塵し、このパーティクルが、フィルタの二次側に滞留している処理液に放出されて蓄積されていると推察される。そして、処理液供給装置の再起動後には、ポンプの駆動により処理液の循環が再開され、フィルタの二次側に蓄積されていたパーティクルが、循環経路を介して処理液タンクにも拡散するものと推察される。
【0007】
処理液供給装置内に拡散したパーティクルは、その後、循環経路を循環する処理液がフィルタによりろ過され続けることにより、時間の経過に伴って減少する。そのため、処理液供給装置の再起動後にパーティクルが増加しても、その後、ある程度の長時間(1時間程)が経過すると、処理液タンクや循環経路にパーティクルはほとんど存在しなくなる。
しかしながら、再起動後そのような長時間を経過してからでないと、処理部において処理液を用いた処理を基板に施すことはできず、基板処理装置のマシンタイムの低下を招いている。
【0008】
したがって、処理液供給装置の再起動の直後から、循環経路を循環する処理液を、パーティクルを含まない清浄な状態に保つことが求められている。
そこで、この発明の目的は、処理液供給装置の再起動の直後から、清浄な処理液を処理部に供給することができる、処理液供給装置および処理液供給方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、処理対象に処理液による処理を施すための処理部(2)に処理液を供給する処理液供給装置(3)であって、前記処理部に供給すべき処理液が貯留される処理液タンク(10)と、前記処理液タンクから前記処理部へと処理液を導く処理液供給路(11)と、この処理液供給路に介装され、前記処理液タンクに貯留されている処理液を前記処理液供給路へと送り出す送液手段(14)と、前記処理液供給路に介装されて、前記処理液供給路を流通する処理液をろ過するフィルタ(19)と、前記フィルタの二次側に接続され、または前記フィルタの下流側の前記処理液供給路に分岐接続されて、前記処理液供給路から供給された処理液を排液させる排液路(33)と、前記フィルタの上流側の前記処理液供給路に介装された第1処理液バルブ(15)と、前記排液路との接続部分よりも下流側の前記処理液供給路に介装された第2処理液バルブ(16)と、前記排液路に介装された排液バルブ(31)と、前記第1および第2処理液バルブならびに前記排液バルブの開閉を制御する制御手段(43)とを含み、
前記制御手段は、前記処理液供給装置の起動後の処理液供給開始動作において、前記第1および第2処理液バルブならびに前記排液バルブが閉じられかつ前記送液手段が駆動された状態で、前記第2処理液バルブが開けられるのに先立って前記第1処理液バルブおよび前記排液バルブを開き、その後、前記第2処理液バルブを開きかつ前記排液バルブを閉じる供給開始動作制御手段(43)を含み、前記供給開始動作制御手段は、前記第1処理液バルブを開き、前記第1処理液バルブが開けられてから予め定める期間が経過した後に前記排液バルブを開く手段を含む、処理液供給装置である。
【0010】
なお、括弧内の数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、特許請求の範囲を実施形態に限定する趣旨ではない。以下、この項において同じ。
この構成によれば、処理液供給装置の起動後の処理液供給開始動作では、第1および第2処理液バルブならびに排液バルブが閉じられている状態から送液手段が駆動されつつ、第2処理液バルブが開けられるのに先立って、第1処理液バルブおよび排液バルブを開く。これにより、フィルタの二次側に滞留している薬液が排液される。そして、フィルタの二次側に滞留している処理液の排液後、第2処理液バルブを開きつつ排液バルブを閉じる。
【0011】
処理液供給装置の電源オフ状態では、フィルタの二次側に滞留する処理液にパーティクルが蓄積されている。処理部に対する処理液の供給に先立って、フィルタの二次側に滞留している処理液を排液する。したがって、パーティクルを含む処理液を排液した後に、処理液供給路に処理液を供給させるので、処理液供給配管を流通する処理液にはパーティクルは含まれていない。これにより、処理液供給装置の起動直後から、パーティクルを含まない清浄な処理液を処理部に供給することができる。
【0013】
また、第1および第2処理液バルブならびに排液バルブが閉じられた状態から、送液手段が駆動されつつ第1処理液バルブを開く。その後、予め期間が経過した後、排液バルブを開く。第2処理液バルブおよび排液バルブが閉じられた状態で第1処理液バルブを開くことにより、フィルタに薬液が送り込まれるとともに、圧力の逃げ道がないのでフィルタに高い圧力が加わる。
【0014】
フィルタに加わる圧力が高い状態で排液バルブを開くので、フィルタの二次側にある処理液が強い勢いで排液路に向けて押し流される。そのため、フィルタの二次側に存在するパーティクルや気泡を、良好に排出させることができる。これにより、処理液供給装置の起動後に、処理液供給装置内に留まるパーティクルの量を極力低減させることができる。
請求項に記載の発明は、前記供給開始動作制御手段は、前記排液バルブを開いた後において、前記フィルタから前記排液路を通して排液される処理液の積算流量が予め定める量に達した場合に前記第2処理液バルブを開く、請求項に記載の処理液供給装置である。
【0015】
この構成によれば、フィルタの二次側にある処理液の量、すなわち、パーティクルを含む処理液の量は限られている。したがって、フィルタの二次側に存在する処理液の量を超える予め定める量の処理液をフィルタに流入させた後は、それ以上の処理液をフィルタに流入させなくても、フィルタの二次側の処理液は排液されている。したがって、排液路を通して排液される処理液の積算流量が予め定める量に達した場合に第2処理液バルブを開くことにより、排液する処理液の量を、極力少量に抑えることができる。
前記の目的を達成するための請求項3記載の発明は、処理対象に処理液による処理を施すための処理部(2)に処理液を供給する処理液供給装置(3)であって、前記処理部に供給すべき処理液が貯留される処理液タンク(10)と、前記処理液タンクから前記処理部へと処理液を導く処理液供給路(11)と、この処理液供給路に介装され、前記処理液タンクに貯留されている処理液を前記処理液供給路へと送り出す送液手段(14)と、前記処理液供給路に介装されて、前記処理液供給路を流通する処理液をろ過するフィルタ(19)と、前記フィルタの二次側に接続され、または前記フィルタの下流側の前記処理液供給路に分岐接続されて、前記処理液供給路から供給された処理液を排液させる排液路(33)と、前記フィルタの上流側の前記処理液供給路に介装された第1処理液バルブ(15)と、前記排液路との接続部分よりも下流側の前記処理液供給路に介装された第2処理液バルブ(16)と、前記排液路に介装された排液バルブ(31)と、前記第1および第2処理液バルブならびに前記排液バルブの開閉を制御する制御手段(43)とを含み、前記制御手段は、前記処理液供給装置の起動後の処理液供給開始動作において、前記第1および第2処理液バルブならびに前記排液バルブが閉じられているとともに前記送液手段が駆動された状態で、前記第2処理液バルブが開けられるのに先立って前記第1処理液バルブおよび前記排液バルブを開き、その後、前記第2処理液バルブを開きかつ前記排液バルブを閉じる供給開始動作制御手段(43)を含み、前記供給開始動作制御手段は、前記排液バルブを開いた後において、前記フィルタから前記排液路を通して排液される処理液の積算流量が予め定める量に達した場合に前記第2処理液バルブを開く、処理液供給装置である。
この構成によれば、処理液供給装置の起動後の処理液供給開始動作では、第1および第2処理液バルブならびに排液バルブが閉じられている状態から送液手段が駆動されつつ、第2処理液バルブが開けられるのに先立って、第1処理液バルブおよび排液バルブを開く。これにより、フィルタの二次側に滞留している薬液が排液される。そして、フィルタの二次側に滞留している処理液の排液後、第2処理液バルブを開きつつ排液バルブを閉じる。
処理液供給装置の電源オフ状態では、フィルタの二次側に滞留する処理液にパーティクルが蓄積されている。処理部に対する処理液の供給に先立って、フィルタの二次側に滞留している処理液を排液する。したがって、パーティクルを含む処理液を排液した後に、処理液供給路に処理液を供給させるので、処理液供給配管を流通する処理液にはパーティクルは含まれていない。これにより、処理液供給装置の起動直後から、パーティクルを含まない清浄な処理液を処理部に供給することができる。
また、フィルタの二次側にある処理液の量、すなわち、パーティクルを含む処理液の量は限られている。したがって、フィルタの二次側に存在する処理液の量を超える予め定める量の処理液をフィルタに流入させた後は、それ以上の処理液をフィルタに流入させなくても、フィルタの二次側の処理液は排液されている。したがって、排液路を通して排液される処理液の積算流量が予め定める量に達した場合に第2処理液バルブを開くことにより、排液する処理液の量を、極力少量に抑えることができる。
【0016】
請求項4に記載のように、前記処理液タンクに溜められている処理液の量を検出するための液量センサ(40)をさらに含み、前記供給開始動作制御手段は、前記液量センサの検出出力に基づいて、前記フィルタから前記排液路を通して排液される処理液の積算流量を求めてもよい。
また、前記供給開始動作制御手段は、前記排液バルブが開けられてから予め定める期間が経過したときに、前記フィルタから前記排液路を通して排液される処理液の積算流量が予め定める量に達したものとして、前記第2処理液バルブを開くようにしてもよい。
【0017】
請求項5に記載のように、前記処理部に向けて前記処理液供給路から供給された後の処理液を、前記処理液タンクへと帰還させる処理液帰還路(21)をさらに含んでいてもよい。
この構成によれば、処理液供給路および処理液帰還路における処理液の循環開始に先立って、フィルタの二次側に滞留している処理液を先に排液するので、処理液供給装置の起動直後から、パーティクルを含まない清浄な処理液を、処理液供給路および処理液帰還路に循環させることができる。したがって、処理液供給装置の再起動後に、処理液供給路および処理液帰還路を循環する処理液が清浄化するための待機時間が不要になるから、処理液供給装置が組み込まれる装置(基板処理装置)のマシンタイムの向上を図ることができる。
【0018】
前記の目的を達成するための請求項6に記載の発明は、処理対象に処理液による処理を施すための処理部(2)に供給すべき処理液が貯留される処理液タンク(10)と、前記処理液タンクから前記処理部へと処理液を導く処理液供給路(11)と、この処理液供給路に介装され、前記処理液タンクに貯留されている処理液を前記処理液供給路へと送り出す送液手段(14)と、前記処理液供給路に介装されて、前記処理液供給路を流通する処理液をろ過するフィルタ(19)と、前記フィルタの二次側に接続され、または前記フィルタの下流側の前記処理液供給路に分岐接続されて、前記処理液供給路から供給された処理液を排液させる排液路(33)と、前記フィルタの上流側の前記処理液供給路に介装された第1処理液バルブ(15)と、前記排液路との接続部分よりも下流側の前記処理液供給路に介装された第2処理液バルブ(16)と、前記排液路に介装された排液バルブ(31)とを含む処理液供給装置(3)において実行される処理液供給方法であって、前記処理液供給装置の起動後の処理液供給開始動作において、前記第1および第2処理液バルブならびに前記排液バルブが閉じられているとともに前記送液手段が駆動された状態で前記第1処理液バルブを開き、前記第1処理液バルブが開けられてから予め定める期間が経過した後に前記排液バルブを開き、その後、前記第2処理液バルブを開きかつ前記排液バルブを閉じる、処理液供給方法である。
【0019】
この発明の方法によれば、請求項1に関連して述べた作用効果と同様な作用効果を奏することができる。
前記の目的を達成するための請求項7に記載の発明は、処理対象に処理液による処理を施すための処理部(2)に供給すべき処理液が貯留される処理液タンク(10)と、前記処理液タンクから前記処理部へと処理液を導く処理液供給路(11)と、この処理液供給路に介装され、前記処理液タンクに貯留されている処理液を前記処理液供給路へと送り出す送液手段(14)と、前記処理液供給路に介装されて、前記処理液供給路を流通する処理液をろ過するフィルタ(19)と、前記フィルタの二次側に接続され、または前記フィルタの下流側の前記処理液供給路に分岐接続されて、前記処理液供給路から供給された処理液を排液させる排液路(33)と、前記フィルタの上流側の前記処理液供給路に介装された第1処理液バルブ(15)と、前記排液路との接続部分よりも下流側の前記処理液供給路に介装された第2処理液バルブ(16)と、前記排液路に介装された排液バルブ(31)とを含む処理液供給装置(3)において実行される処理液供給方法であって、前記処理液供給装置の起動後の処理液供給開始動作において、前記第1および第2処理液バルブならびに前記排液バルブが閉じられかつ前記送液手段が駆動された状態で、前記第2処理液バルブが開けられるのに先立って前記第1処理液バルブおよび前記排液バルブを開き、その後、前記第2処理液バルブを開きかつ前記排液バルブを閉じ、前記第2処理液バルブの閉成は、前記排液バルブを開いた後において、前記フィルタから前記排液路を通して排液される処理液の積算流量が予め定める量に達した場合に行われる、処理液供給方法である。
【0020】
この発明の方法によれば、請求項に関連して述べた作用効果と同様な作用効果を奏することができる。
である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る処理液供給装置が適用された薬液供給ユニットが組み込まれた基板処理装置の構成を模式的に示す図である。
図2図1に示すフィルタの構成について説明するための断面図である。
図3図1に示す基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
図4】制御装置による薬液供給ユニットの薬液循環再開動作の制御内容を説明するためのタイムチャートである。
図5図1に示す第2薬液バルブの開動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る処理液供給装置が適用された薬液供給ユニット3が組み込まれた基板処理装置1の構成を模式的に示す図である。この基板処理装置1は、基板の一例としての半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW」という。)を1枚ずつ処理する枚葉型の装置である。基板処理装置1は、ウエハWを処理するための処理ユニット2(処理部)と、この処理ユニット2に薬液を供給するための薬液供給ユニット3とを備えている。図1では、一つの処理ユニット2が図示されているが、処理ユニット2は複数設けられていてもよい。また、複数設けられる処理ユニット2に対応して、薬液供給ユニット3が複数設けられていてもよい。
【0023】
処理ユニット2は、ウエハWを水平に保持して回転させるスピンチャック4と、処理液としての薬液の一例である硫酸をウエハWに供給する薬液ノズル5と、リンス液の一例であるDIWをウエハWに供給するリンス液ノズル6とを備えている。スピンチャック4は、ウエハWをほぼ水平に保持して鉛直軸線まわりに回転可能なスピンベース8と、このスピンベース8を鉛直軸線まわりに回転させる回転駆動機構9とを含む。薬液ノズル5およびリンス液ノズル6は、それぞれ、ウエハW上での薬液およびリンス液の着液位置が固定された固定ノズルであってもよいし、薬液およびリンス液の着液位置がウエハWの回転中心からウエハWの周縁に至る範囲で移動されるスキャンノズルであってもよい。
【0024】
薬液供給ユニット3は、薬液タンク(処理液タンク)10と、薬液ノズル5に薬液を供給する薬液供給配管(処理液供給路)11とを備えている。薬液ノズル5には、薬液タンク10に貯留された薬液が薬液供給配管11を介して供給される。
薬液供給配管11は、その一端が薬液タンク10に接続されており、その他端が薬液ノズル5に接続されている。薬液供給配管11には、薬液流通方向に沿って、ヒータ12、温度計13、ポンプ(送液手段)14、薬液バルブ(第1処理液バルブ)15、第2薬液バルブ(第2処理液バルブ)16および薬液吐出バルブ17が、この順に介装されている。ヒータ12は、薬液供給配管11内を流通する薬液を加熱して温度調節する。温度計13は、薬液供給配管11内を流通する薬液の温度を計測する。ポンプ14は、薬液タンク10から薬液を汲み出して薬液供給配管11に送り込む。ポンプ14は、薬液供給ユニット3の起動時には常時駆動されており、薬液タンク10内の薬液を常時汲み出している。また、フィルタ19は、薬液供給配管11内を流通する薬液をろ過して、その薬液からパーティクルを除去する。第1および第2薬液バルブ15,16は、それぞれ、薬液供給配管11を開閉する。薬液吐出バルブ17は、薬液ノズル5への薬液の供給および供給停止を切り換える。なお、薬液タンク10、ヒータ12、温度計13、ポンプ14、薬液バルブ15および第2薬液バルブ16は、薬液供給ユニット3内に設けられているとともに、薬液吐出バルブ17は処理ユニット2内に設けられている。また、ヒータ12および温度計13は温度調節器として一体化されていてもよい。
【0025】
処理ユニット2において、薬液吐出バルブ17よりも薬液流通方向の上流側の薬液供給配管11には、薬液供給配管11を流通する薬液を薬液タンク10に帰還させるためのリターン配管(処理液帰還路)21が分岐接続されている。リターン配管21には、薬液循環方向に沿って、リターンバルブ22および流量計24が、この順に介装されている。薬液供給配管11およびリターン配管21により、薬液タンク10内の薬液を循環させる第1循環経路23が形成されている。
【0026】
薬液供給ユニット3において、ポンプ14と第1薬液バルブ15との間の薬液供給配管11と、温度計24よりも薬液循環方向の下流側のリターン配管21とを接続するためのバイパス配管25が接続されている。バイパス配管25には、そのバイパス配管25を開閉するためのバイパス開閉バルブ26が介装されている。バイパス配管25との接続部分よりも薬液流通方向の上流側の薬液供給配管11、バイパス配管25、およびバイパス配管25との接続部分よりも薬液循環方向の下流側のリターン配管21により、薬液タンク10内の薬液を循環させる第2循環経路20が形成されている。第1循環経路23が薬液タンク10から処理ユニット2を経由して薬液タンク10に帰還するのに対し、第2循環経路20は薬液供給ユニット3内で循環している。
【0027】
薬液供給ユニット3は、フィルタ19内の気泡(エア)を抜くための2つのエア抜き配管27,28を備えている。これらのエア抜き配管27,28は、パーティクルの発生の原因になるフィルタ19内の気泡を除去するために用いられる。具体的には、フィルタ19の一次側(後述するフィルタ19のハウジング42の一次側空間X1内)には、一次側エア抜き配管27の一端(上流端)が接続されているとともに、フィルタ19の二次側(後述するフィルタ19のハウジング42の二次側空間X2内)には、二次側エア抜き配管28の一端(上流端)が接続されている。各エア抜き配管27,28の他端側は、薬液タンク10に接続されている。一次側エア抜き配管27には、一次側エア抜き配管27を開閉するための一次側エア抜きバルブ29が介装されている。二次側エア抜き配管28には、二次側エア抜き配管28を開閉するための二次側エア抜きバルブ30が介装されている。
【0028】
また、薬液供給ユニット3には、フィルタ19を通過した後の薬液を排液させるための排液機構32が備えられている。排液機構32は、薬液供給配管11に分岐接続されて、薬液供給配管11から、フィルタ19を通過した後の薬液が流入して流通する第2排液配管(排液路)33と、薬液供給配管11から排出された薬液を溜めておくための排液タンク34とを備えている。
【0029】
この実施形態では、第1排液配管33の一端はフィルタ19の二次側に接続されており、第1排液配管33の他端は排液タンク34に接続されている。排液タンク34には、水供給配管35を介して、水供給源からの水が供給される。水供給配管35には、逆流防止のためのアスピレータ36、および水供給配管35を開閉するための排液用水流入バルブ37が、排液タンク34側からこの順で介装されている。排液用水流入バルブ37が開かれると、水供給源からの水が水供給配管35を通して排液タンク34に供給される。第1排液配管33から排液タンク34に導かれた薬液は、排液タンク34に供給される水によって希釈される。その後、排出配管38を通して薬液供給ユニット3の機外(基板処理装置1の機外)に排液される。
【0030】
バイパス開閉バルブ26が閉じられ、かつ第1および第2薬液バルブ15,16が開かれつつポンプ14が駆動された状態で、薬液吐出バルブ17が開かれリターンバルブ22が閉じられると、薬液タンク10から汲み出された薬液が、ヒータ12、温度計13、第1薬液バルブ15、フィルタ19、第2薬液バルブ16および薬液吐出バルブ17を通って薬液ノズル5に供給される。これにより、薬液ノズル5から薬液が吐出される。
【0031】
また、バイパス開閉バルブ26が閉じられ、かつ第1および第2薬液バルブ15,16が開かれつつポンプ14が駆動された状態で、薬液吐出バルブ17が閉じられリターンバルブ22が開かれると、薬液タンク10から汲み出された薬液が、ヒータ12、温度計13、第1薬液バルブ15、フィルタ19、第2薬液バルブ16、リターンバルブ22およびリターン配管21を通って、薬液タンク10に帰還する。これにより、薬液タンク10内の薬液が第1循環経路23を循環する。
【0032】
また、ポンプ14が駆動された状態で、第1薬液バルブ15が閉じられバイパス開閉バルブ26が開かれると、薬液タンク10から汲み出された薬液が、ヒータ12、温度計13、バイパス開閉バルブ26、バイパス配管25およびリターン配管21を通って、薬液タンク10に帰還する。これにより、薬液タンク10内の薬液が第2循環経路20を循環する。
【0033】
薬液タンク10には、新しい薬液を補充するための薬液補充管39が接続されている。薬液タンク10には、高さの異なる複数の位置にそれぞれセンサ部を有する液面センサ40(液量センサ)が取り付けられており、これらの液面センサ40によって、薬液タンク10内の薬液の液面高さが検出される。薬液タンク10への新液の補充は、薬液タンク10が空になっているときや、薬液タンク10内の薬液の液量が所定量以下になったときに行われる。
【0034】
図2は、フィルタ19の構成について説明するための断面図である。
基板処理装置1は、フィルタ19を内部で保持するハウジング42を含む。フィルタ19は、ハウジング42に保持されている。ハウジング42は、開閉可能であり、フィルタ19は、ハウジング42に取り外し可能に取り付けられている。フィルタ19は、たとえば、上端が閉塞された筒状である。ハウジング42の内部は、フィルタ19によって一次側空間(フィルタ19の一次側)X1と二次側空間(フィルタ19の二次側)X2とに仕切られている。
【0035】
一次側空間X1は、ろ過すべき液体が供給されるフィルタ19の外側の空間であり、二次側空間X2は、フィルタ19によってろ過された液体が供給されるフィルタ19の内側の空間である。ハウジング42は、一次側空間X1に連通する流入部42aと、二次側空間X2に連通する流出部42bとを含む。
流入部42aには、フィルタ19よりも上流側の薬液供給配管11の下流端が接続されている。流入部42aには、また、一次側エア抜き配管27の一端(上流端)も接続されている。
【0036】
流出部42bには、フィルタ19よりも下流側の薬液供給配管11の上流端が接続されている。流出部42bには、また、二次側エア抜き配管28の一端(上流端)も接続されている。流出部42bには、さらに、第1排液配管33の上流端も接続されている。
したがって、フィルタ19よりも上流側の薬液供給配管11内を流れる薬液は、流入部42aを介して一次側空間X1に流入する。また、フィルタ19によってろ過された薬液は、流出部42bを介して、フィルタ19よりも下流側の薬液供給配管11または第1排液配管33に選択的に流出する。
【0037】
図3は、基板処理装置1の電気的構成を示すブロック図である。
基板処理装置1は、マイクロコンピュータを含む構成の制御装置43を備えている。この制御装置43には、回転駆動機構9、ヒータ12、ポンプ14、第1および第2薬液バルブ15,16、バイパス開閉バルブ26、一次側および二次側エア抜きバルブ29,30、フィルタ排液バルブ(排液バルブ)31等が制御対象として接続されている。また、制御装置43には、温度計13からの検出出力および液面センサ40からの検出出力が入力されるようになっている。
【0038】
メンテナンス等のために、薬液供給ユニット3(または基板処理装置1全体)を電源オフして、その起動を停止させる場合がある。その後、メンテナンス等の終了に伴って、薬液供給ユニット3の電源が投入され、薬液供給ユニット3が再起動させられる。
薬液供給ユニット3の電源オフの状態(IDLE状態)では、ヒータ12およびポンプ14の駆動がそれぞれ停止されており、そのため、薬液タンク10の薬液の温度は低下しているとともに、薬液の循環も停止している。薬液供給ユニット3の再起動に伴い、薬液タンク10に溜められている薬液が昇温させられるとともに、薬液が第1循環経路23を循環するようになる。
【0039】
薬液供給ユニット3の電源オフの状態では、ポンプ14の駆動が停止されているから薬液の循環が停止されている。そのため、薬液は電源オフ時に存在していた場所で、そのまま残留している。たとえば、薬液が第1循環経路23を循環している途中で処理ユニット2が電源オフされた後の状態では、薬液供給配管11、リターン配管21、薬液タンク10、ポンプ14およびフィルタ19などに薬液が滞留している。そして、フィルタ19のハウジング42の二次側空間X2に滞留する薬液には、パーティクルが多く含まれているおそれが高い。これは、ポンプ14の駆動停止により、フィルタ19における薬液の流動が無くなっており、この状態で、フィルタ19に集まったパーティクルが、ハウジング42の二次側空間X2に滞留する薬液に放出されて蓄積されていることが原因であると考えられる。
【0040】
図4は、制御装置43による薬液循環再開動作(処理液供給開始動作)の制御内容を説明するためのタイムチャートである。図1および図4を参照して、薬液供給ユニット3の再起動後の薬液循環再開動作(図4で示す「READY」の状態)について説明する。
この実施形態では、薬液供給ユニット3の前回の起動終了時に、制御装置43は、バイパス開閉バルブ26を開くともに、第1および第2薬液バルブ15,16、フィルタ排液バルブ31、排液用水流入バルブ37ならびに一次側および二次側エア抜きバルブ29,30を閉じる。この実施形態では、フィルタ19よりも上流側の薬液供給配管11、フィルタ19よりも下流側の薬液供給配管11、一次側および二側エア抜き配管27,28、ならびに第1排液配管33がフィルタ19に接続されている。薬液供給ユニット3の前回の起動終了時にバルブ15,16,29,30,31を閉じて、これらの配管11,27,28,33を閉塞することにより、フィルタ19のハウジング42の二次側空間X2に存在するパーティクルが、電源オフの状態で周囲に拡散するのを防止することができる。
【0041】
薬液供給ユニット3の再起動後には、まず、制御装置43により、ポンプ14の駆動が開始されるとともにヒータ12の駆動が開始される。また、制御装置43は、バイパス開閉バルブ26の開状態、ならびに第1および第2薬液バルブ15,16、フィルタ排液バルブ31、一次側および二次側エア抜きバルブ29,30等を閉成状態のまま維持する。この場合、ポンプ14が駆動された状態で、第1薬液バルブ15が閉じられバイパス開閉バルブ26が開かれているので、薬液タンク10から汲み出された薬液は、第2循環経路20を循環しつつ、ヒータ12により加熱されて昇温させられる。制御装置43は、温度計13の出力値を常時参照することにより、薬液タンク10に溜められている薬液(第2循環経路20を循環する薬液)の温度を監視している。薬液は、予め定める処理温度(たとえば80℃)を目標に昇温させられる。
【0042】
薬液タンク10に溜められている薬液が、処理温度よりも若干低い予め定める温度(たとえば50℃)に達すると、制御装置43は、排液用水流入バルブ37を開く。これにより、水供給源からの水が水供給配管35を通して排液タンク34に供給され、排液タンク34に溜められる。
排液用水流入バルブ37の開成から予め定める時間(たとえば1秒間)が経過すると、制御装置43は第1薬液バルブ15を開く。これにより、薬液供給配管11におけるバイパス配管25との接続部分において、それまでバイパス配管25にのみ流入していた薬液が、バイパス配管25との接続部分よりも下流側の薬液供給配管11とバイパス配管25との双方に流入可能になる。
【0043】
次いで、第1薬液バルブ15の開成から予め定める時間(たとえば1秒間)が経過すると、制御装置43は、バイパス開閉バルブ26を閉じる。これにより、薬液タンク10から汲み出された薬液が、バイパス配管25と薬液供給配管11との接続部分において、バイパス配管25との接続部分よりも下流側の薬液供給配管11にのみ流入し、フィルタ19に流入する。このとき、フィルタ19に薬液が送り込まれるとともに、圧力の逃げ道がないので、フィルタ19のハウジング42の内部圧力が高まる。
【0044】
なお、この実施形態では、薬液供給配管11内やバイパス配管25内が高圧にならないように配管保護のために、第1薬液バルブ15の開成タイミングとバイパス開閉バルブ26の閉成タイミングとを同時に設定せず、第1薬液バルブ15の開成からバイパス開閉バルブ26の閉成までの間に所定時間(たとえば1秒間)を設けている。
また、第1薬液バルブ15の開成から予め定めるフィルタ排液開始遅延時間t1(予め定める期間。第1薬液バルブ15の開成からバイパス開閉バルブ26の閉成までの間の時間(たとえば1秒間)よりも十分に長い時間)が経過すると、制御装置43は、フィルタ排液バルブ31を開く。これにより、フィルタ19内の薬液が第1排液配管33に流入する。
【0045】
フィルタ19のハウジング42の内圧が高い状態でフィルタ排液バルブ31を開くので、ハウジング42の二次側空間X2内の薬液が、流出部42bから強い勢いで押し出される。そのため、ハウジング42の二次側空間X2に存在するパーティクルや気泡を、フィルタ19から良好に排出させることができる。
第1排液配管33に流入した薬液は、第1排液配管33を流通して排液タンク34に導かれる。排液タンク34には、水供給配管35を通して水が既に溜められているので、排液タンク34内で、薬液は水に希釈されつつ溜められる。薬液を水により希釈するのは、薬液を安全に排液するためである。また、薬液を水よりも先に排液タンク34に供給すると排液タンク34が損傷するおそれがあるので、排液タンク34に水を先行して供給させている。
【0046】
次いで、制御装置43は、後述のように、フィルタ19から第1排液配管33に流入する薬液の積算流量(第1排液配管33を通した薬液の排液量)が排液基準量(予め定める量)に達したと判断すると、第2薬液バルブ16を開く。これにより、それまでフィルタ19の流出部42bにおいて、フィルタ19を通った薬液が全て第1排液配管33に流入していた薬液が、バイパス配管25との接続部分よりも下流側の薬液供給配管11とバイパス配管25との双方に流入可能になる。
【0047】
次いで、第2薬液バルブ16の開成から予め定めるフィルタ排液停止遅延時間t3(たとえば1秒間)が経過すると、制御装置43はフィルタ排液バルブ31を閉じる。これにより、フィルタ19を通った薬液は、フィルタ19の流出部42bにおいてフィルタ19よりも下流側の薬液供給配管11にのみ流入し、薬液吐出バルブ17が閉じられてリターンバルブ22が開かれている場合には、第1循環経路23を薬液が循環するようになる。なお、この実施形態では、薬液供給配管11内や第1排液配管33内が高圧にならないように、第2薬液バルブ16の開成タイミングとフィルタ排液バルブ31の閉成タイミングとを同時に設定せず、フィルタ排液停止遅延時間t3を設けている。むろん、フィルタ排液停止遅延時間t3を設けないように設定してもよい。
【0048】
次いで、制御装置43により、一次側および二次側エア抜きバルブ29,30が開かれ、排液用水流入バルブ37が閉じられる。
具体的には、フィルタ排液バルブ31の閉成から予め定めるエア抜き遅延時間t4が経過すると、制御装置43は、一次側および二次側エア抜きバルブ29,30を開く。これにより、フィルタ19のハウジング42の一次側および二次側空間X1,X2の双方からエアが抜かれる。なお、一次側および二次側エア抜きバルブ29,30の開成タイミングは、必ずしもフィルタ排液バルブ31の閉成後である必要はなく、フィルタ排液バルブ31の閉成と同時であってもよい。
【0049】
また、フィルタ排液バルブ31の閉成から予め定める水供給停止遅延時間t5(たとえば1秒間)が経過すると、制御装置43は、排液用水流入バルブ37を閉じる。これにより、排液タンク34への水の供給は停止される。その後、第2排液配管38に介装されたバルブ(第2排液配管38を開閉するためのバルブ。図示しない)が開かれて、排液タンク34に溜められた薬液と水との混合液が第2排液配管38を通して機外に排出される。
【0050】
次いで、制御装置43による薬液循環再開動作が終了し、制御装置43による通常動作が引き続き実行される。
そして、薬液タンク10から汲み出された薬液は、薬液タンク10内の薬液は、第1循環経路23を循環することによりヒータ12による温度調節を受け、その温度がウエハWの処理に適した処理温度(たとえば80℃)に保持される。また、薬液タンク10内の薬液は、第1循環経路23を循環することによりフィルタ19によってろ過され、薬液中に含まれるパーティクルが除去される。これにより、パーティクルを含む薬液が薬液ノズル5に供給されることが抑制または防止されている。したがって、パーティクルを含む薬液がウエハWに供給され、当該パーティクルによってウエハWが汚染されることが抑制または防止されている。
【0051】
図5は、第2薬液バルブ16の開動作を説明するためのフローチャートである。
制御装置43は、フィルタ排液バルブ31の開成時において、液面センサ40の出力を参照し、フィルタ排液バルブ31の開成タイミングにおける薬液タンク10に貯留されている薬液量を演算する(ステップS1)。そして、制御装置43は、薬液タンク10に貯留されている薬液量から、予め定める排液基準量を差し引いた薬液量を演算し、その薬液量を基準薬液量として設定する。
【0052】
その後、制御装置43は、液面センサ40の出力値を常時参照することにより、薬液タンク10の薬液の貯留量が基準薬液量に達したか否かを監視している(ステップS2,S3)。
そして、第1排液配管33を通じた薬液の排液により、薬液タンク10に貯留されている薬液量が基準薬液量に達したとき(予め定める排液基準量だけ排液されたとき)には(ステップS3でYES)、第2薬液バルブ16を開く(ステップS4)。
【0053】
排液基準量は、フィルタ19のハウジング42の容量(厳密に言えば、二次側空間X2の容量)よりも十分に大きな量に設定されている。ハウジング42の容量(厳密に言えば、二次側空間X2の容量)よりも十分に大きな量の薬液をフィルタ19に流入させれば、ハウジング42の二次側空間X2内に存在していた薬液を排液配管31に排液させることができる。したがって、パーティクルの排出のために必要な薬液の排液量を、極力少量に抑えることができる。
【0054】
次に、図1を再び参照して、処理ユニット2によるウエハWの処理の一例について説明する。未処理のウエハWは、基板搬送ロボット(図示しない)によって、処理ユニット2内へと搬送され、スピンチャック4に受け渡される。そして、基板搬送ロボットのハンドが処理ユニット2内から退出した後、回転駆動機構9によってスピンベース8が回転される。これにより、スピンベース8に保持されたウエハWが、鉛直軸線まわりに回転される。
【0055】
ウエハWが鉛直軸線まわりに回転されると、制御装置43により、リターンバルブ22が閉じられた状態で薬液吐出バルブ17が開かれ、薬液供給ユニット3の薬液タンク10から薬液ノズル5に薬液が供給される。これにより、薬液ノズル5から薬液が吐出され、ウエハWの上面(表面)における回転中心を含む範囲に薬液が着液する。ウエハWに着液した薬液は、ウエハWの回転による遠心力を受けてウエハWの周縁に向かって広がっていく。これにより、ウエハWの上面全域に薬液が供給され、ウエハWの上面に薬液による薬液処理が行われる。
【0056】
薬液ノズル5に供給される薬液としては、たとえば、高温(室温以上の温度)にすることで処理能力が向上する薬液である硫酸が用いられている。
また、高温にすることで処理能力が向上する薬液としては、前述の薬液以外に、SC―1(アンモニアと過酸化水素水との混合液)や、SC−2(塩酸と過酸化水素水との混合液)などを用いることができる。SC―1は、たとえば、パーティクルや各種金属不純物などの不要物を除去する洗浄処理に用いられる薬液であり、SC−2は、たとえば、パーティクルや各種金属不純物などの不要物を除去する洗浄またはエッチング処理に用いられる薬液である。これらの薬液は、たとえば40〜60℃に温度調節される。
【0057】
薬液処理が所定時間にわたって行われると、制御装置43により薬液吐出バルブ17が閉じられて、薬液供給ユニット3から薬液ノズル5への薬液の供給が停止される。これにより、薬液ノズル5からの薬液の吐出が停止される。そして、リンス液の一例であるDIW(脱イオン化された水)がリンス液ノズル6から吐出され、ウエハWの上面における回転中心を含む範囲に純水が着液する。ウエハWに着液したリンス液は、ウエハWの回転による遠心力を受けてウエハWの周縁に向かって広がっていく。これにより、ウエハW上の薬液が洗い流され、ウエハWの上面にリンス処理が行われる。
【0058】
予め定めるリンス処理時間が経過すると、制御装置43により、リンス液ノズル6からのリンス液の吐出が停止されるとともに、回転駆動機構9が制御されて、スピンチャック4が高速回転させられてウエハWを乾燥させる乾燥処理が行われる。この乾燥処理の後、基板搬送ロボットにより、処理済のウエハWが処理ユニット2から払い出される。
以上のようにこの実施形態では、薬液供給ユニット3の再起動後の薬液循環再開動作において、第1および第2薬液バルブ15,16ならびにフィルタ排液バルブ31が閉じられている状態から、ポンプ14が駆動されつつ、第2薬液バルブ16の開成に先立って、第1薬液バルブ15およびフィルタ排液バルブ31を開く。これにより、ハウジング42の二次側空間X2に滞留している薬液が排液される。そして、二次側空間X2に滞留している薬液の排液後、フィルタ排液バルブ31を閉じつつ第2薬液バルブ16を開く。
【0059】
薬液供給ユニット3の再起動後の薬液循環再開動作では、処理ユニット2に対する薬液の供給に先立って、フィルタ19のハウジング42の二次側空間X2に滞留している薬液を排液する。薬液供給ユニット3の電源オフ状態では、フィルタ19のハウジング42の二次側空間X2に滞留する薬液にパーティクルが蓄積されている。したがって、パーティクルを含む薬液を排液した後に、第1循環経路23に薬液を循環させるので、薬液供給ユニット3の再起動直後から、パーティクルを含まない清浄な薬液を第1循環経路23に循環させることができる。そのため、薬液供給ユニット3の再起動直後から、処理ユニット2において薬液供給ユニット3から供給される薬液を用いたウエハWの処理を実行することできる。したがって、薬液供給ユニット3の再起動後に、循環する薬液が清浄化するための待機時間が不要になるから、基板処理装置1のマシンタイムの向上を図ることができる。
【0060】
また、第1および第2薬液バルブ15,16ならびにフィルタ排液バルブ31が閉じられた状態から、ポンプ14が駆動されつつ第1薬液バルブ15のみを開く。その後、予め期間が経過してから、フィルタ排液バルブ31を開く。第1薬液バルブ15のみを開くことにより、フィルタ19に薬液が送り込まれるとともに、圧力の逃げ道がないので、フィルタ19のハウジング42の内部圧力が高まる。
【0061】
ハウジング42の内圧が高い状態でフィルタ排液バルブ31を開くので、ハウジング42の二次側空間X2内の薬液が、流出部42bから強い勢いで押し出される。そのため、ハウジング42の二次側空間X2に存在するパーティクルや気泡を、良好に排出させることができる。これにより、薬液供給ユニット3の起動後に、薬液供給ユニット3内に残留パーティクル量を極力低減させることができる。
【0062】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の実施形態では、第1排液配管33を通じた薬液の排液量を、薬液タンク10に溜められている薬液の減少量に基づいて求めるようにしていたが、これに代えて(または併せて)、薬液供給配管11を流通する薬液の積算流量に基づいて、第1排液配管33を通じた薬液の排液量を算出するようにすることもできる。この場合、たとえば薬液供給配管11に積算流量計を介装し、この積算流量計の検出出力に基づいて、薬液の排液量を算出する。
【0063】
また、フィルタ19のハウジング42の容量(厳密に言えば、二次側空間X2の容量)よりも十分に大きな排液基準量の薬液が第1排液配管33を通じて排液されるのに要する排液期間(予め定める期間)を設定しておき、フィルタ排液バルブ31の開成後にこの排液期間が経過したときには、第1排液配管33を通じた薬液の排液量が予め定める量に達したものとして、フィルタ排液バルブ31が閉じられるようにしてもよい。
【0064】
また、第1排液配管33の上流端は、フィルタ19のハウジング42の二次側空間X2ではなく、フィルタ19と第2薬液バルブ16との間の薬液供給配管11に接続されていてもよい。
また、図1に二点鎖線で示すように、バイパス配管25との接続部分と流量計24との間のリターン配管21には、リターン配管21を開閉するための開閉バルブ50が改装されていてもよい。この開閉バルブ50は、第2循環経路20に薬液を循環させる場合には閉じられているが、第1循環経路23に薬液を循環させる場合に開かれる。
【0065】
また、前述の実施形態では、処理対象となる基板としてウエハWを取り上げたが、ウエハWに限らず、たとえば、液晶表示装置用ガラス基板、プラズマディスプレイ用基板、FED用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などの他の種類の基板が処理対象とされてもよい。
【0066】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 基板処理装置
2 処理ユニット(処理部)
3 薬液供給ユニット(処理液供給装置)
10 薬液タンク(処理液タンク)
11 薬液配管(処理液供給路)
14 ポンプ(送液手段)
15 第1薬液バルブ(第1処理液バルブ)
16 第2薬液バルブ(第2処理液バルブ)
19 フィルタ
21 リターン配管(処理液帰還路)
31 フィルタ排液バルブ(排液バルブ)
33 第1排液配管
40 液面センサ(液量センサ)
43 制御装置(供給開始動作制御手段)
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5