特許第5977061号(P5977061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977061
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/10 20060101AFI20160817BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20160817BHJP
【FI】
   F21S8/10 171
   F21S8/10 172
   F21Y115:10
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-76279(P2012-76279)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-206798(P2013-206798A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年2月4日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 淳一
【審査官】 當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−052442(JP,A)
【文献】 実開平05−083904(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の発光部と、
前記発光部を収容可能に形成されたランプボディと、
前記ランプボディの開口部を覆う透明カバーと、
を備える車両用灯具であって、
前記透明カバーは、
前記発光部の正面に位置する主出射面部と、
前記主出射面部に対して所定の角度を付けられた副出射面部と、
前記副出射面部の一部に形成された、他の部分よりも肉厚な肉厚部と、
前記肉厚部に突設された、前記透明カバーと前記ランプボディとを固定するための固定部と、
前記肉厚部周辺に形成された光拡散部と、
を備え
前記光拡散部は、前記副出射面部に形成された複数のシリンドリカル状のステップを有し、
前記肉厚部から突出する前記固定部の境界線は、前記シリンドリカル状のステップの境界線と一致していることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記主出射面部にも光拡散部が形成されており、前記主出射面部に形成された光拡散部と、前記副出射面部に形成された光拡散部とは、異なる形状を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記主出射面部の光拡散部は、格子状のステップを有することを特徴とする請求項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、灯室内にロービームランプ、ハイビームランプ、クリアランスランプ等を一体に組み込んだコンビネーションヘッドランプが知られている。このようなコンビネーションヘッドランプにおいては、ロービームランプ、ハイビームランプとして、例えばプロジェクタ型や反射型の灯具が用いられる。また、クリアランスランプとしては、従来反射型の灯具が一般的であったが、近年では、LED等の光源から出射された光を一端面から入射させて、内部で導光しながら外部へ出射する導光体を用いたものが提案されている(導光体を用いた車両用灯具としては、例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−3281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
導光体を用いた車両用灯具は、通常、ランプボディと透明カバーにより囲まれた灯室内に導光体が配置されている。ランプボディと透明カバーとをランス等の固定部を用いて固定した場合、カバーが透明なため、外側から固定部が見えてしまい、車両用灯具の見栄えという点において改善の余地がある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両用灯具の見栄えを向上することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用灯具は、長尺状の発光部と、発光部を収容可能に形成されたランプボディと、ランプボディの開口部を覆う透明カバーと、を備える。透明カバーは、発光部の正面に位置する主出射面部と、主出射面部に対して所定の角度を付けられた副出射面部と、副出射面部に突設された、透明カバーとランプボディとを固定するための固定部と、固定部が突設された副出射面部の部位周辺に形成された光拡散部とを備える。
【0007】
この態様によると、固定部が突設された副出射面部の部位周辺に光拡散部を形成したことにより、固定部を外部から見え難くすることができ、その結果車両用灯具の見栄えを向上できる。
【0008】
光拡散部は、副出射面部に形成された複数のシリンドリカル状のステップを有してもよい。
【0009】
主出射面部にも光拡散部が形成されており、主出射面部に形成された光拡散部と、副出射面部に形成された光拡散部とは、異なる形状を有してもよい。
【0010】
出射面部の光拡散部は、格子状のステップを有してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両用灯具の見栄えを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る車両用前照灯を説明するための概略正面図である。
図2図1に示す車両用前照灯のA−A断面図である。
図3】クリアランスランプの拡大断面図である。
図4】固定用ランスの周辺を灯具後方側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用前照灯10を説明するための概略正面図である。また、図2は、図1に示す車両用前照灯10のA−A断面図である。
【0015】
図1および図2に示すように、車両用前照灯10は、ランプボディ12と透明なカバー13とにより構成される灯室14内に、ロービームランプ16、ハイビームランプ18、およびクリアランスランプ20が収容されたコンビネーションヘッドランプである。
【0016】
ロービームランプ16およびハイビームランプ18は、灯室14内において車幅方向に並んで配置されている。図2では、ロービームランプ16として反射型の灯具が図示されているが、ロービームランプ16の種類は特に限定されず、例えば反射型やプロジェクタ型の車両用灯具を利用できる。反射型のロービームランプは公知であるので、ここでは詳細な説明者省略する。ハイビームランプ18の種類もまた、特に限定されず、例えば反射型やプロジェクタ型の車両用灯具を利用できる。
【0017】
クリアランスランプ20は、図1および図2に示すように、LED21と、LED21を搭載するための基板22と、長尺状の発光部としての導光体23と、透明カバー24と、エクステンション25とから構成されている。
【0018】
導光体23は、アクリルやポリカーボネート等の透明樹脂を射出成形することにより形成された棒状の部材である。図1において、導光体23はL字状に成形されており、ランプボディ12の上側縁部から車幅方向片側縁部にかけて略L字状に延在している。導光体23の一方の端面は、LED21からの光を入射する入射面23aとされている。導光体23は、入射面23aから入射した光を内部で導光しながら、延出方向に沿った出射面から前方に向けて出射するよう構成されている。
【0019】
LED21は、導光体23に光を供給する光源である。LED21は、導光体23の入射面23aに対向するように基板22上に搭載されている。
【0020】
エクステンション25は、ロービームランプ16およびハイビームランプ18とランプボディ12との隙間を隠すために、表面アルミ蒸着処理された樹脂成形体である。エクステンション25の前端部は、図2に示すように、前面の開口する容器状に形成されており、導光体23を収容可能なクリアランスランプ20のランプボディとして形成されている(以下、「クリアランスランプボディ26」と呼ぶ)。透明カバー24は、クリアランスランプボディ26の前面開口部を覆うように設けられている。透明カバー24およびクリアランスランプボディ26は、導光体23の形状に沿って延出形成されている。
【0021】
図3は、クリアランスランプ20の拡大断面図である。図3に示すように、導光体23は、透明カバー24とクリアランスランプボディ26とにより形成される灯室27内の略中央に位置決め保持されている。図3に示すように、導光体23は、略円形状の断面形状を有している。
【0022】
本実施形態において、導光体23の周面における前面側の部位は、光を灯具前方に出射する出射面23bとして機能する。また、導光体23の周面における後面側の部位には、導光体23内を進む光の一部を出射面23bに向けて反射する複数のステップ23cが導光体23の延出方向に沿って形成されている。ステップ23cの形状、大きさ、配列ピッチ等は、クリアランスランプとして要求される強度の光が出射面23bから正面方向(前方)に照射されるように設計される。
【0023】
図3に示すように、透明カバー24は、凹形状に形成されており、導光体23の出射面23bの正面に位置する主出射面部24aと、導光体23の上方に位置する第1副出射面部24bと、導光体23の下方に位置する第2副出射面部24cとを備える。第1副出射面部24bは、主出射面部24aに対して所定の第1角度を付けられており、クリアランスランプボディ26の上端部と係合している。第2副出射面部24cは、主出射面部24aに対して所定の第2角度を付けられており、クリアランスランプボディ26の下端部と係合している。このように本実施形態では、透明カバー24は主に3つの面部から構成されており、この透明カバー24により外形意匠が表現されている。導光体23は通常、円形断面のものが用いられるが、本実施形態のように、導光体23を覆う透明カバー24として複数の面部を有するものを用いることにより、あたかも角柱が発光しているかのような見栄えを安価に構成できる。
【0024】
主出射面部24aは、導光体23の出射面23bの正面に位置しているため、導光体23から高い強度の光が入射する。従って、クリアランスランプ20の配光を規定する光の多くは、主出射面部24aから出射される。主出射面部24aの内面には、クリアランスランプ20として求められる配光パターンを達成するために、第1光拡散部30が形成されている。本実施形態において、第1光拡散部30は、正面視において格子状のステップとして形成されている。この格子状のステップは、配光制御用のステップと言うことができる。
【0025】
第1副出射面部24bは、主出射面部24aの上端部から灯具後方に延びるように形成されている。第1副出射面部24bからは、導光体23からの光の一部が出射される。第1副出射面部24bの後端部には、透明カバー24をクリアランスランプボディ26に固定するための固定用ランス32が突設されている。
【0026】
図4は、固定用ランス32の周辺を灯具後方側から見た図である。図3および図4に示すように、第1副出射面部24bの後端部の一部には、その他の部位よりも肉厚に形成された肉厚部40が設けられている。固定用ランス32は、この肉厚部40から灯具後方に向けて延びている。この固定用ランス32には爪部32aが形成されており、この爪部32aがクリアランスランプボディ26に形成された係止部34と係合することにより、透明カバー24がクリアランスランプボディ26に固定される。
【0027】
ここで本実施形態においては、図3および図4に示すように、第1副出射面部24bの内面に第2光拡散部31が形成されている。本実施形態において、この第2光拡散部31は、肉厚部40を除いた第1副出射面部24bの内面上に形成された複数のシリンドリカル状のステップ41と、肉厚部40の内面上に形成された複数のシリンドリカル状のステップ42とを含む。複数のシリンドリカル状のステップ41,42は、クリアランスランプ20の延出方向(長手方向)に沿って並べられている。このようなシリンドリカル状のステップ41,42は、透明カバー24を金型を用いて成形する際に、透明カバー24を金型から抜きやすくなるので有利である。
【0028】
本実施形態に係るクリアランスランプ20においては、このような第2光拡散部31を第1副出射面部24bに形成することにより、図3に示すクリアランスランプ20上方の視点Aからクリアランスランプ20を見た場合に、固定用ランス32を見え難くすることができる。これにより、クリアランスランプ20の見栄えを向上できる。第2光拡散部31は、少なくとも固定用ランス32が突設された第1副出射面部24bの部位周辺、すなわち肉厚部40の周辺に形成される必要があるが、第1副出射面部24bの内面の略全域にわたって形成されてもよい。
【0029】
本実施形態において、肉厚部40の境界線40aは、図4に示すように第1副出射面部24bの内面上に形成されたシリンドリカル状のステップ41の境界線41aと一致している。また、肉厚部40から突出する固定用ランス32の境界線32bは、肉厚部40の内面上に形成されたシリンドリカル状のステップ42の境界線42と一致している。このような構成とすることにより、肉厚部40および固定用ランス32が目立たないようにすることができる。
【0030】
上述したように本実施形態においては、主出射面部24aに形成した第1光拡散部30は格子状のステップであり、第1副出射面部24bに形成した第2光拡散部31はシリンドリカル状のステップである。このように、第1光拡散部30と第2光拡散部31の形状異ならせることにより、主出射面部24aと第1副出射面部24bの光り方を変え、斬新な見え方の車両用灯具を構成できる。また、主出射面部24aと第1副出射面部24bの照射の目的を変え、一つの灯具に複数の機能を持たせることができる。
【0031】
第1副出射面部24bの外面にシボ加工を施してもよい。この場合、固定用ランス32をより見え難くすることができ、クリアランスランプ20の見栄えを向上できる。
【0032】
主出射面部24aの下端部から灯具後方に延びるように形成された第2副出射面部24cにも固定用ランスが設けられている場合には、透明カバー24の内面にも、第1副出射面部24bと同じように、複数のシリンドリカル状のステップから成る光拡散部を形成してもよい。この場合、クリアランスランプ20下方の視点からクリアランスランプ20を見た場合に、固定用ランスを見え難くすることができるので、クリアランスランプ20の見栄えを向上できる。また、第2副出射面部24cの外面にシボ加工を施してもよい。
【0033】
上述の実施形態では、クリアランスランプ20の光源としてLEDを用いたが、もちろんバルブ等の他の光源を用いることも可能である。また、導光体23の形状は特に限定されず、様々な形状の導光体を用いることができる。
【0034】
また、上述の実施形態では、長尺状の発光部として導光体23を例示したが、長尺状の発光部は、導光体に限定されず、例えば複数のLEDを一列または複数列に並べた形態であってもよい。
【0035】
また、上述の実施形態では、固定用ランス32の爪部32aがクリアランスランプボディ26に形成された係止部34と係合することにより、透明カバー24がクリアランスランプボディ26に固定される構成とした。しかしながら、例えば固定用ランス32をクリアランスランプボディ26にネジ止めすることにより、透明カバー24とクリアランスランプボディ26を固定してもよい。この場合も、第2光拡散部31を第1副出射面部24bに形成することにより、固定用ランス32およびネジを見え難くすることができ、クリアランスランプの見栄えを向上できる。
【0036】
また、上述の実施形態では、クリアランスランプを例として本発明を説明したが、本発明はクリアランスランプだけでなく、長尺状の発光部を用いたその他の車両灯具にも適用できる。
【0037】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。これらの実施形態は例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0038】
10 車両用前照灯、 12 ランプボディ、 14 灯室、 16 ロービームランプ、 18 ハイビームランプ、 20 クリアランスランプ、 21 LED、 22 基板、 23 導光体、 24 透明カバー、 24a 主出射面部、 24b 第1副出射面部、 24c 第2副出射面部、 25 エクステンション、 26 クリアランスランプボディ、 30 第1光拡散部、 31 第2光拡散部、 32 固定用ランス、 40 肉厚部、 41、42 ステップ。
図1
図2
図3
図4