特許第5977064号(P5977064)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ニイタカの特許一覧

<>
  • 特許5977064-アルコール系固形燃料の燃焼容器 図000003
  • 特許5977064-アルコール系固形燃料の燃焼容器 図000004
  • 特許5977064-アルコール系固形燃料の燃焼容器 図000005
  • 特許5977064-アルコール系固形燃料の燃焼容器 図000006
  • 特許5977064-アルコール系固形燃料の燃焼容器 図000007
  • 特許5977064-アルコール系固形燃料の燃焼容器 図000008
  • 特許5977064-アルコール系固形燃料の燃焼容器 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977064
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】アルコール系固形燃料の燃焼容器
(51)【国際特許分類】
   F23B 20/00 20060101AFI20160817BHJP
   F24C 5/20 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   F23B20/00
   F24C5/20 C
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-86754(P2012-86754)
(22)【出願日】2012年4月5日
(65)【公開番号】特開2013-217530(P2013-217530A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190736
【氏名又は名称】株式会社ニイタカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 直毅
(72)【発明者】
【氏名】福原 知宏
(72)【発明者】
【氏名】生田 直人
(72)【発明者】
【氏名】城市 徳彦
【審査官】 鈴木 貴雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−169299(JP,A)
【文献】 特開2013−053770(JP,A)
【文献】 特開2002−195509(JP,A)
【文献】 特開平10−153319(JP,A)
【文献】 特開平01−262812(JP,A)
【文献】 実公昭36−006855(JP,Y1)
【文献】 特開2001−046235(JP,A)
【文献】 特開2002−109921(JP,A)
【文献】 米国特許第06171101(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23B 20/00
F24C 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する蓋部と、
上部が開口し、内部にアルコール系固形燃料を収容する容器部と、
前記容器部を支持する支持台部とを備えたアルコール系固形燃料の燃焼容器であって、
前記容器部は、前記支持台部の上面の中心点を中心とする前記支持台部の上面と相似形の領域の内側に存在する一又は複数の支持部により支持、固定されており、前記支持台部の上面と相似形の領域の面積は、前記支持台部の上面の面積の36%以下であることを特徴とするアルコール系固形燃料の燃焼容器。
【請求項2】
前記支持部は、一の支持部からなり、前記支持部は、前記支持台部の上面の中心点を含む部分に存在している請求項1に記載のアルコール系固形燃料の燃焼容器。
【請求項3】
前記支持部は、3個の支持部からなり、前記3個の支持部は、前記支持台部の上面の中心点の周囲に3回対称に存在している請求項1に記載のアルコール系固形燃料の燃焼容器。
【請求項4】
前記支持台部の上面の中心点を中心とする円は、前記支持台部の上面と相似形の領域の形状であり、その半径は、24mm以下であり、支持台部の上面の形状は、円形状であり、その半径は、40〜60mmである請求項1〜3のいずれかに記載のアルコール系固形燃料の燃焼容器。
【請求項5】
前記支持部近傍における前記容器部の底面と前記支持台部の上面との距離は、1mm以上である請求項1〜4のいずれかに記載のアルコール系固形燃料の燃焼容器。
【請求項6】
前記容器部、前記蓋部及び前記支持台部は、金属製である請求項1〜5のいずれかに記載のアルコール系固形燃料の燃焼容器。
【請求項7】
所定の容器に料理を入れ、所定時間、前記料理を保温するチェーフィングの保温用に用いられる請求項1〜6のいずれかに記載のアルコール系固形燃料の燃焼容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール系固形燃料の燃焼容器に関する。
【背景技術】
【0002】
バイキング形式やビュフェ形式等の呼び名で呼ばれる、一定料金で指定された範囲から好きなものを好きなだけ食べる事が可能な食事のシステムが最近人気を集めている。このような食事のシステムでは、調理済み料理等の多数の温かい料理を一定時間、所定の温度に保つ必要があり、そのために「チェーフィング」という料理保温装置がよく使われる。
【0003】
チェーフィングとは、料理をのせる皿やプレートの下に熱源を置き、湯煎又は直火により料理を保温することができるように構成された装置をいうが、直火では、温度のコントロールが難しいため、皿やプレートの下に水(お湯)を介在させ、湯煎により料理を保温している場合が多い。このようなチェーフィングを用いる場合、従来より、燃焼芯を有する液体燃料容器に液体燃料を入れ、燃焼芯を燃やして湯煎をすることにより料理を所定の温度に保っていた。
【0004】
しかしながら、このような液体燃料を用いた場合には、液体燃料用燃焼容器に一定の液体燃料を入れておく必要があるが、その際には、蓋を開け、燃料を補充する必要があるほか、一定回数使用すると、燃料以外に燃焼芯の交換が必要となる。
また、液体燃料を液体燃料用燃焼容器に移す際や、液体燃料を入れた容器を持ち運ぶ際にも、液体燃料がこぼれやすく、液体燃料がこぼれた場合には、火災が発生する危険性がある。また、火炎から発生する煙、ススの量が多く、特に消火の際に煙が多く発生するという問題がある。さらに、燃焼芯に着火する際、着火しにくいという問題点もある。
【0005】
一方、アルコール系固形燃料を用いてチェーフィングを保温することも可能である。固形燃料を用いた場合には、料理等の保温を開始する前に、単に固形燃料を容器内に入れ、ライター等で着火するだけでよい。また、燃焼芯の交換が必要なく、燃料がこぼれるおそれがないため、使用前の準備が極めて簡単である。また、液体燃料を使用した場合、液体燃料がこぼれた場合には、こぼれた液体燃料に火が付き、火災となる危険性もあるが、固形燃料の場合には、そのような火災の危険性がないという優れた特徴を有する。
そこで最近では、液体燃料に代わって固形燃料を用いたチェーフィングの保温が検討されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような用途に使用されるアルコール系固形燃料の燃焼容器として、固形燃料を収容する容器のみからなるものや、固形燃料を収容する容器部とそれを支持する支持台部からなり、上記支持台部の上面全体が接合されたものが存在しているが、これらの容器は、料理の保温が終了した際には、固形燃料の燃焼熱により全体の温度が上昇しており、55℃以下程度の温度になるまでに時間がかかる。そのため、料理の保温終了後、直ぐに固形燃料の燃焼容器を手で掴んで移動させるのが難しいという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、固形燃料の燃焼を終了した直後であっても、手で掴んで移動させることが可能なアルコール系固形燃料の燃焼容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明のアルコール系固形燃料の燃焼容器は、開口を有する蓋部と、上部が開口し、内部にアルコール系固形燃料を収容する容器部と、上記容器部を支持する支持台部とを備えたアルコール系固形燃料の燃焼容器であって、上記容器部は、上記支持台部の上面の中心点を中心とする上記支持台部の上面と相似形の領域の内側に存在する一又は複数の支持部により支持、固定されており、上記支持台部の上面と相似形の領域の面積は、上記支持台部の上面の面積の36%以下であることを特徴とする。
【0009】
本発明のアルコール系固形燃料の燃焼容器は、上記容器部を支持する支持台部を備え、上記支持台部の上面の中心点を中心とする上記支持台部の上面と相似形の領域の内側に存在する一又は複数の支持部により支持、固定されており、上記支持台部の上面と相似形の領域の面積は、上記支持台部の上面の面積の36%以下であるので、支持台部の支持部から側面までの距離が遠く、熱が伝わりにくい。従って、容器部に収容されたアルコール系固形燃料の燃焼が終了した直後や燃焼中であっても、支持台部の側面の温度は余り高くならず、容易に手で支持台部の側面に接触することができ、アルコール系固形燃料の燃焼容器を掴んで持ち運ぶことができる。
なお、相似とは、複数の図形が縮小または拡大の関係にあることをいい、多角形では、対応する角の大きさが等しく、対応する辺の長さの比が等しい。
【0010】
本発明のアルコール系固形燃料の燃焼容器において、上記支持部は、一の支持部からなり、上記支持部は、上記支持台部の上面の中心点を含む部分に存在していることが望ましい。
上記アルコール系固形燃料の燃焼容器では、支持部が支持台部の側面から最も遠い支持台部の上面の中心点を含む部分に存在しているので、熱が伝わりにくく、容器部に収容されたアルコール系固形燃料の燃焼が終了した直後や燃焼中であっても、支持台部の側面の温度は高くならず、容易に手で支持台部の側面に接触して持ち運ぶことができる。
【0011】
本発明のアルコール系固形燃料の燃焼容器は、1個以上の支持部から構成されるが、支持部の強度を確保するため3個以上の支持部が望ましい。また、上記3個以上の支持部は、上記支持台部の上面の中心点の周囲に回転対称に存在していることが望ましい。
本発明のアルコール系固形燃料の燃焼容器で、3個以上の支持部により容器部が支持されており、3個以上の支持部が、支持台部の上面の面積の36%以下の領域の内側に存在する場合、支持部から側面までの距離が遠く、熱が伝わりにくい。従って、容器部に収容されたアルコール系固形燃料の燃焼が終了した直後や燃焼中であっても、支持台部の側面の温度は高くならず、容易に手で支持台部の側面に接触して持ち運ぶことができる。
また、3個の支持部が上記上面の中心点に対して回転対称に存在するので、3個の支持部により安定的に容器部を支持することができ、破損しにくく、耐久性に優れたアルコール系固形燃料の燃焼容器となる。
【0012】
本発明のアルコール系固形燃料の燃焼容器において、上記支持台部の上面の中心点を中心とする円の半径は、24mm以下であり、支持台部の上面の半径は、40〜60mmであることが望ましい。
支持台部の上面の半径が40〜60mmであるとき、半径24mmの円の内部に支持部が存在すれば、支持部から側面までの距離が遠く、熱が伝わりにくいからである。
【0013】
本発明のアルコール系固形燃料の燃焼容器において、上記支持部近傍における上記容器部の底面と上記支持台部の上面との距離は、1mm以上であることが望ましい。
このアルコール系固形燃料の燃焼容器では、上記支持部近傍における上記容器部の底面と上記支持台部の上面との距離が、1mm以上であるので、容器部から支持台部の上面により熱が伝わりにくく、支持台部の側面に容易に手で接触することができ、アルコール系固形燃料の燃焼容器を掴んで持ち運ぶことができる。
【0014】
上記支持部近傍における上記容器部の底面と上記支持台部の上面との距離は、3〜10mmであることがより望ましい。
容器部の底面と支持台部の上面との距離は、遠いほど支持台部の温度は上昇しにくいが、10mm程度離れていれば、アルコール系固形燃料の燃焼を終了した直後であっても、充分に低い温度に保つことができる。一方、あまり容器部の底面と支持台部の上面との距離が遠いと、支持部の高さを高くする必要があるため、加工が難しくなるからである。
なお、支持部近傍とは、支持部のできるだけ近くで、支持部を形成することによる影響を受けていない容器部の底面及び支持台部の一部をいい、その部分のレベル(高さ方向の位置)の差を、容器部の底面と支持台部の上面との距離とする。
【0015】
本発明のアルコール系固形燃料の燃焼容器において、上記容器部、上記蓋部及び上記支持台部は、金属製であることが望ましい。
容器部、蓋部及び支持台部が金属製であると、容易に所定の形状に成形することができ、耐久性に優れ、軽量とすることができるからである。
【0016】
本発明のアルコール系固形燃料の燃焼容器は、所定の容器に料理を入れ、所定時間、上記料理を保温するチェーフィングの保温用に用いられることが望ましい。
本発明のアルコール系固形燃料の燃焼容器は、上記のように構成されているので、使用前の準備が簡単であり、着火が簡単であり、火災になる心配がなく、アルコール系固形燃料の燃焼容器自体も、チェーフィングの保温の前後で簡単に持ち運ぶことができる。従って、本発明のアルコール系固形燃料の燃焼容器は、チェーフィングの保温用として最適である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1(a)は、本実施形態で用いるアルコール系固形燃料の燃焼容器の一例を模式的に示した斜視図であり、図1(b)は、上記アルコール系固形燃料の燃焼容器を模式的に示した断面図であり、図1(c)は、上記アルコール系固形燃料の燃焼容器を模式的に示した平面図である。
図2図2(a)は、本実施形態のアルコール系固形燃料の燃焼容器を用いたチェーフィングの保温方法の一例を模式的に示した斜視図であり、図2(b)は、上記チェーフィングの一例を模式的に示した、一部分解斜視図である。
図3図3は、第二実施形態に係るアルコール系固形燃料の燃焼容器を模式的に示した断面図である。
図4図4は、比較例1に係るアルコール系固形燃料の燃焼容器を模式的に示した断面図である。
図5図5は、比較例2に係るアルコール系固形燃料の燃焼容器を模式的に示した断面図である。
図6図6は、比較例3に係るアルコール系固形燃料の燃焼容器を模式的に示した断面図である。
図7図7は、比較例5に係るアルコール系固形燃料の燃焼容器を模式的に示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のアルコール系固形燃料の燃焼容器について、具体的な実施形態を示しながら説明するが、本発明はこれらの実施形態だけに限定されるものではない。
【0019】
(第一実施形態)
図1(a)は、本実施形態で用いるアルコール系固形燃料の燃焼容器の一例を模式的に示した斜視図であり、図1(b)は、上記アルコール系固形燃料の燃焼容器を模式的に示した断面図であり、図1(c)は、上記アルコール系固形燃料の燃焼容器を模式的に示した平面図である。
【0020】
図1(a)、(b)に示すアルコール系固形燃料の燃焼容器10は、中央部に開口12aを有する蓋部12と、上部が開口し、内部にアルコール系固形燃料14を収容する有底円筒形状の容器部11と、容器部11を3箇所の支持部130により支持する支持台部13とを備えており、容器部11は、アルコール系固形燃料14をその内部に収容することができるようになっている。
【0021】
支持台部13は、蓋付きの円筒形状となっており、上面13aに容器部11を支持する支持部130が3箇所形成されている。支持部130は、その垂直な断面が台形の形状(立体的に見ると円錐の上部をカットし、平坦面とした形状)となっており、台形の上底となる部分が容器部11と溶接等の接合手段により接合されている。なお、支持台部13は、下にいくに従って、若干、外径が大きくなる垂直断面が略台形形状のものであってもよい。
【0022】
3箇所の支持部130は、支持台部13の上面13aの中心点Pを中心とする円の内部に存在しており、上記円の面積は、支持台部13の上面13aの面積の36%以下である。以下においては、支持台部13の上面13aの中心点Pを中心とする円の内部を支持部存在領域Aともいう。
すなわち、支持台部13の上面13aの中心点Pを中心とし、支持台部13の面積の36%以下の面積を有する円の内部、すなわち、支持部存在領域Aの内部に3箇所の支持部130が存在している。
【0023】
また、3箇所の支持部130は、平面視した支持台部13の上面13aの中心点の周囲に3回対称に存在している。すなわち、図1(c)に示すように、平面視した上面13aの中心点Pと、2箇所の支持部130の中心との間に直線を引き、2つの直線のなす角度θを測定すると、θ=略120°となるように3箇所の支持部130が配置されている。ただし、支持部130の位置は、厳密に回転対称の位置に配置されている必要はなく、例えば、角度θを測定した際、±20°程度の位置づれは許容される。また、中心点Pからの位置も、厳密に同じである必要はなく、半径の20%程度、前後にずれてもよい。
【0024】
支持台部13の上面13aの半径は、特に限定されるものではないが、40〜60mmであることが望ましく、支持台部13の上面13aの中心点Pを中心とする円(支持部存在領域A)の半径は、24mm以下であることが望ましい。
【0025】
また、アルコール系固形燃料14の燃焼を終了した直後であっても、支持台部13を手で掴んで移動させることが可能な温度とするためには、支持台部13と容器部11との距離は離れていることが好ましいが、支持台部13を手で掴んで移動させることができる程度に温度を低下させれば充分であるので、余り距離を大きくとる必要はない。アルコール系固形燃料14の燃焼を終了した直後の支持台部13の温度は、55℃以下であれば問題ない。
【0026】
このためには、支持部近傍における容器部11の底面と支持台部13の上面13aとの距離は、1mm以上であることが望ましく、3〜10mmであることがより望ましい。
【0027】
アルコール系固形燃料14は、アルコールを主成分とし、石鹸成分等にアルコールを溶解させることより固形としている。アルコール系固形燃料14は、通常、樹脂フィルムにより密封されているが、これは、アルコール分等が揮発することにより、アルコール系固形燃料14中の可燃成分が消失するのを防止するためである。しかし、アルコール系固形燃料中の成分によっては、必ずしも樹脂フィルムで密封しなくてもよい。なお、アルコール系固形燃料14の密度は、0.75〜0.85である。
【0028】
容器部11、蓋部12及び支持台部13は、金属製又はセラミック製であるが、金属製であることが望ましい。耐久性に優れ、軽量とすることができるからである。蓋部12の形状は、特に限定されるものではないが、図1(a)に示すように、外縁に容器部11の上部を覆う垂下部が形成されていることが望ましい。蓋部12がずれるのを防止するためである。容器部11、蓋部12及び支持台部13の材質としては、例えば、SUS430、SUS304、SUS316、アルミニウム合金、ブリキ等が挙げられる。これらのなかでは、SUS430、SUS304、アルミニウム合金が好ましい。
支持台部13の温度の上昇を抑えるためには、支持台部13は、セラミック製のほか、樹脂製であってもよい。
【0029】
容器部11の直径Rは、特に限定されるものではないが、40〜120mm程度であることが好ましく、容器部11の直径Rに対する蓋部12の開口12aの直径rの比(r/R)は、0.2〜0.8程度であることが好ましい。
【0030】
次に、本実施形態のアルコール系固形燃料の燃焼容器10を用いたチェーフィングの保温方法について、図面を参照しながら説明する。なお、本保温方法は代表例であり、上述のアルコール系固形燃料の燃焼容器10を用いて、チェーフィングを保温することができれば、他の保温方法を用いてもよい。
【0031】
なお、本発明のアルコール系固形燃料の燃焼容器の保温対象となるチェーフィングは、料理をのせる皿やプレートの下に熱源を置き、湯煎又は直火により料理を保温することができるように構成された装置であれば、特に限定されるものではないが、以下の実施の形態においては、内部にお湯を満たすことができるチェーフィングディッシュ及び上記チェーフィングディッシュにはめ込むチェーフィングパンを備えたものをチェーフィングとして説明する。
【0032】
図2(a)は、本実施形態のアルコール系固形燃料の燃焼容器を用いたチェーフィングの保温方法の一例を模式的に示した斜視図であり、図2(b)は、上記チェーフィングの一例を模式的に示した、一部分解斜視図である。
【0033】
図2に示すように、本実施形態で用いるチェーフィング20は、お湯を満たすことができるように構成された略直方体形状のチェーフィングディッシュ21の四隅に脚部22が設けられるとともに、チェーフィングディッシュ21にはめ込み、料理等を内部に収容するチェーフィングパン23を備えている。さらに、客に料理を提供する前等においては、料理に蓋をするための略半円筒ドーム形状の蓋部24を備えている。蓋部24は、容器の両側に回転自在に支持されており、取手を持って回転させることにより料理に蓋をした状態としたり、蓋を開けた状態とすることができる。
【0034】
さらに、容器の底部に上記実施形態に係るアルコール系固形燃料の燃焼容器10を載置するための燃料容器載置部25が取り付けられている。
【0035】
従って、まず、チェーフィング20を構成するチェーフィングディッシュ21にお湯を満たした後、チェーフィングディッシュ21にチェーフィングパン23をはめ込み、準備した料理をチェーフィングパン23の内部に入れる。
【0036】
一方、アルコール系固形燃料の燃焼容器10の準備に関しては、容器部11にアルコール系固形燃料14を収容し、蓋部12を用いて容器部11に蓋をする。
次に、アルコール系固形燃料の燃焼容器10を燃料容器載置部25に載置した後、容器部11の内部に載置されたアルコール系固形燃料14に点火することにより、所定の時間、チェーフィング20内の料理を所定の温度に保温する。
【0037】
燃料容器載置部25の内部に載置するアルコール系固形燃料の燃焼容器10の数は、特に限定されるものではなく、チェーフィング20の大きさ等により、2個以上載置してもよい。
【0038】
(第二実施形態)
図3は、第二実施形態に係るアルコール系固形燃料の燃焼容器を模式的に示した断面図である。
第二実施形態に係るアルコール系固形燃料の燃焼容器30では、第一実施形態と同様の構成の蓋部12、容器部11が使用されているが、支持台部33の上面33aには、1箇所の支持部330が形成されており、支持部330は、支持台部33の上面33aの中心点を含む部分に存在している。支持部330の形状は、第一実施形態に係る支持台部13に形成された支持部130の形状と同様である。
アルコール系固形燃料の燃焼容器30の材質、上記した形状以外のアルコール系固形燃料の燃焼容器30の形状、その他は、第一実施形態の場合と同様である。
【0039】
第二実施形態に係るアルコール系固形燃料の燃焼容器30では、支持部330が支持台部33の側面から最も遠い支持台部33の上面33aの中心点を含む部分に存在しているので、熱が伝わりにくく、容器部11に収容されたアルコール系固形燃料14の燃焼が終了した直後や燃焼中であっても、支持台部33の側面の温度は高くならず、容易に手で支持台部33の側面に接触し、支持台部33を掴んで持ち運ぶことができる。
【0040】
第一実施形態及び第二実施形態では、支持部の断面形状が台形の場合について説明したが、支持部の断面形状は、台形に限らず、矩形状でもよく、三角形状でもよい。すなわち、支持部の立体的形状は、円柱形状でもよく、円錐形状でもよい。
また、第一実施形態及び第二実施形態では、支持台部に加工を加えることにより、支持部を形成しているが、支持部を形成する方法は特に限定されず、例えば、支持部として円柱形状の金属部材を用い、金属部材と容器部の底部及び支持台部の上面に溶接等の手段で接合してもよい。
【0041】
支持部は、支持台部の上面の面積の36%以下であり、かつ、支持台部の上面の形状と相似形の形状の支持部存在領域Aの内部に位置すればよく、その位置や数は特に限定されるものではないが、支持台部の上面の中心点の周囲に回転対称に存在していることが望ましい。容器部を安定的に支持することができるからである。
【実施例】
【0042】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例だけに限定されるものではない。
【0043】
(実施例1)
まず、図1に示すアルコール系固形燃料の燃焼容器10を準備した。アルコール系固形燃料の燃焼容器10を構成する容器部11の寸法は、内径が80mm、高さが30.5mmであり、蓋部12には、直径が35mmの開口12aが形成されている。そして、容器部11の内部に、直径74mm、高さが27mmのアルコール系固形燃料14を収容した。支持台部13は、第一実施形態で説明した形状で、支持台部13の上面の直径は88.5mmであり、3箇所の支持部130は、支持台部13の上面13aの中心点Pから10mmの位置に3回対称に形成されている。支持部130近傍における容器部11の底部と支持台部13の上面との距離は、3mmであった。なお、アルコール系固形燃料の燃焼容器10を構成する容器部11、蓋部12及び支持台部は、SUS304製であった。
実施例1で使用したアルコール系固形燃料の燃焼容器10の支持部の数、支持部の中心点からの位置、面積比(%)、支持部近傍における容器部の底面と支持台部の上面との距離(距離)を表1に示す。なお、面積比(%)は、支持台部の上面の面積に対する支持台部の上面と相似形の領域の面積の比を示す。
【0044】
このアルコール系固形燃料の燃焼容器10の温度測定に関し、図1(a)に示しているように、支持台部13の側面の高さの1/2の点を支持台部13の温度測定点(D)とし、この温度測定点(D)に熱電対を接触させ、温度を測定することとした。
【0045】
次に、アルコール系固形燃料の燃焼容器10の容器部11にアルコール系固形燃料14を収容し、蓋部12を用いて容器部11に蓋をし、容器部11の内部に載置されたアルコール系固形燃料14にライターで点火し、アルコール系固形燃料を30分間燃焼させ、支持台部13の側面の温度測定点(D)の温度を30分間、継続的に測定し、支持台部13の側面の最高温度を記録した。その結果を表1に示す。
【0046】
なお、図1に示したアルコール系固形燃料の燃焼容器10は、アルコール系固形燃料の燃焼が終了した直後であっても持ち運び可能か(可搬性)、嵩張らないか(収納性)についても評価を行い、その結果を表1に示した。
「可搬性」の評価に関し、アルコール系固形燃料の燃焼が終了した直後であっても、持ち運び可能なものを○、持ち運びが難しいものを×とした。
また、「収納性」の評価に関し、チェーフィング20の燃料容器載置部25に簡単に載置することができ、チェーフィング20の保温中に誤ってアルコール系固形燃料の燃焼容器10に接触し易く、アルコール系固形燃料の燃焼容器10を燃料容器載置部25から落下させるおそれのないものを○、チェーフィング20の保温中に誤ってアルコール系固形燃料の燃焼容器10に接触し易く、アルコール系固形燃料の燃焼容器10を燃料容器載置部25から落下させるおそれのあるものを×とした。
【0047】
(実施例2)
アルコール系固形燃料の燃焼容器として、図3に示したアルコール系固形燃料の燃焼容器30を使用したほかは、実施例1と同様にして、支持台部側面の最高温度を記録した。実施例2で使用したアルコール系固形燃料の燃焼容器30の支持部の数、支持部の中心点からの位置、面積比(%)、支持部近傍における容器部の底面と支持台部の上面との距離(距離)を表1に示す。また、支持台部側面の最高温度、「可搬性」についての評価結果、及び「収納性」についての評価結果を表1に示す。
なお、アルコール系固形燃料の燃焼容器10は、支持部の個数、位置が異なる他は、実施例1で使用した容器部と同じ形状、材質である。
【0048】
(実施例3)
アルコール系固形燃料の燃焼容器として、支持部近傍における容器部の底面と支持台部の上面との距離を変えたほかは、実施例2と同様に構成されたアルコール系固形燃料の燃焼容器を使用し、実施例2と同様にして、支持台部側面の最高温度を記録した。実施例3で使用したアルコール系固形燃料の燃焼容器の支持部の数、支持部の中心点からの位置、面積比(%)、支持部近傍における容器部の底面と支持台部の上面との距離(距離)を表1に示す。また、支持台部側面の最高温度、「可搬性」についての評価結果、及び「収納性」についての評価結果を表1に示す。
【0049】
(比較例1)
比較例1に係るアルコール系固形燃料の燃焼容器として、図4に示すアルコール系固形燃料の燃焼容器40を使用した。
このアルコール系固形燃料の燃焼容器40は、実施例1で使用したものと同様の容器部11及び蓋部12のみからなり、支持台部が存在しない。
この場合、支持台部の側面の温度を測定できないので、支持台部の側面の温度ではなく、容器部12の側面の最高温度を測定した。
【0050】
この比較例1では、支持部は存在せず、従って、支持部の中心点からの位置、支持部近傍における容器部の底面と支持台部の上面との距離(距離)は、記載することができない。
「可搬性」についての評価結果、及び「収納性」についての評価結果を表1に示す。
【0051】
(比較例2)
比較例2に係るアルコール系固形燃料の燃焼容器50は、図5に示すように、図1で使用した容器部11、蓋部12が使用されており、支持台部53も上面が平坦である点を除いて実施例1と同様のものが使用されているが、支持台部53のほぼ上面全体が容器部11の底面と接合されている点が図1に示した実施例1に係るアルコール系固形燃料の燃焼容器10と異なる。
比較例2に係るアルコール系固形燃料の燃焼容器50の支持部の数、支持部の中心点からの位置、面積比(%)、支持部近傍における容器部の底面と支持台部の上面との距離(距離)を表1に示す。ただし、表1に示したように、このアルコール系固形燃料の燃焼容器50では、支持部は存在しないので、支持部の中心点からの位置は記載せず、容器部の底面と支持台部の上面との距離(距離)は0である。
また、支持台部側面の最高温度、「可搬性」についての評価結果、及び「収納性」についての評価結果を表1に示す。
【0052】
(比較例3)
比較例3に係るアルコール系固形燃料の燃焼容器60は、図6に示すように、図1で使用した容器部11、蓋部12が使用されているが、支持台部63に形成された3箇所の支持部630が支持台部63の側面に近いところに位置している点が図1に示した実施例1に係るアルコール系固形燃料の燃焼容器10と異なる。なお、3箇所の支持部630は、支持台部63の上面の中心点の周囲に回転対称に存在しており、支持部近傍における容器部の底面と支持台部の上面との距離(距離)は、3mmである。
【0053】
このアルコール系固形燃料の燃焼容器60の支持部の数、支持部の中心点からの位置、面積比(%)、支持部近傍における容器部の底面と支持台部の上面との距離(距離)を表1に示す。
また、支持台部側面の最高温度、「可搬性」についての評価結果、及び「収納性」についての評価結果を表1に示す。
【0054】
(比較例4)
比較例4に係るアルコール系固形燃料の燃焼容器は、支持部近傍における容器部の底面と支持台部の上面との距離(距離)が比較例3に係るアルコール系固形燃料の燃焼容器60と異なる他は、比較例3と同様に構成されている。なお、支持部近傍における容器部の底面と支持台部の上面との距離(距離)は、1mmである。
【0055】
このアルコール系固形燃料の燃焼容器の支持部の数、支持部の中心点からの位置、面積比(%)、支持部近傍における容器部の底面と支持台部の上面との距離(距離)を表1に示す。
また、支持台部側面の最高温度、「可搬性」についての評価結果、及び「収納性」についての評価結果を表1に示す。
【0056】
(比較例5)
図7に示すように、手で持つための取手71が支持台部53の側面に取り付けられている他は、比較例2に係るアルコール系固形燃料の燃焼容器50と同様に構成されたアルコール系固形燃料の燃焼容器70を使用した。
このアルコール系固形燃料の燃焼容器70の支持部の数、支持部の中心点からの位置、面積比(%)、支持部近傍における容器部の底面と支持台部の上面との距離(距離)を表1に示すが、このアルコール系固形燃料の燃焼容器70も比較例2と同様に、支持部は存在しないので、支持部の中心点からの位置は記載できず、容器部の底面と支持台部の上面との距離(距離)は0である。また、比較例5では、支持台部側面の最高温度の代わりに、取手の温度を測定した。
また、取手の最高温度、「可搬性」についての評価結果、及び「収納性」についての評価結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示した結果から明らかなように、実施例1〜3に係るアルコール系固形燃料の燃焼容器では、支持台部側面の最高温度は、55℃以下である。従って、実施例1〜3に係るアルコール系固形燃料の燃焼容器では、アルコール系固形燃料の燃焼が終了した直後であっても持ち運び可能であり、チェーフィングの燃料容器載置部25から他の場所に簡単にアルコール系固形燃料の燃焼容器を移動させることができる。そのため、チェーフィングの後片付け等が楽になることが判明した。
【0059】
一方、比較例1〜4に係るアルコール系固形燃料の燃焼容器では、支持台部側面の最高温度は、55℃をはるかに超えているため、アルコール系固形燃料の燃焼が終了した直後に、アルコール系固形燃料の燃焼容器を移動させるが難しく、チェーフィングの保温が終了した後、直ぐに片付け等を行うことが難しいことがわかった。
【0060】
比較例5に係るアルコール系固形燃料の燃焼容器は、持ち運ぶための取手71が取り付けられているため、アルコール系固形燃料の燃焼が終了した直後でも、簡単に持ち運びはできるが、嵩張るために収納性に問題があり、例えば、だれかが燃料容器載置部25に載置されたアルコール系固形燃料の燃焼容器70の取手71に接触し、アルコール系固形燃料の燃焼容器70が転倒する等の危険性がある。
【0061】
(その他の実施形態)
上述した実施形態では、図1に示すように、蓋部として、外縁に垂下部が形成されたものを使用したが、蓋部の形状は、上記形状に限られず、容器部上部の内側にはめ込むことができるように構成された垂下部を有するものであってもよい。また、蓋部は、容器部に被せた際にずれなければよく、その幅が容器部の直径よりも大きく、容器部上部に溝が形成されたものでもよい。
さらに蓋部の開口の形状は、円形に限られず、楕円等であってもよい。
【0062】
容器部は、収納するアルコール系固形燃料が移動しないように、底部のアルコール系固形燃料を載置する部分の周囲にアルコール系固形燃料固定用の凸部が設けられたものであってもよい。
【0063】
さらに、上記実施形態では、アルコール系固形燃料の燃焼容器は、本体容器と蓋部により構成されているが、アルコール系固形燃料の燃焼容器は、蓋部と容器部とが一体化し、上部に所定直径の開口が形成されたものであってもよい。
その場合には、アルコール系固形燃料を収納するための、開閉可能な扉が本体容器の側面に設けられている必要がある。
【0064】
保温の対象となるチェーフィングの種類は、特に限定されるものではなく、湯煎式のものであってもよく、直接、プレートを加熱する形式のものであってもよい。
【符号の説明】
【0065】
10、30、40、50、60、70 アルコール系固形燃料の燃焼容器
11 容器部
12、24 蓋部
12a 開口
13、33、53、63 支持台部
13a、33a 上面
14 アルコール系固形燃料
20 チェーフィング
21 チェーフィングディッシュ
22 脚部
23 チェーフィングパン
25 燃料容器載置部
71 取手
130、330 支持部
P 中心点
D 温度測定点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7