(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977070
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/167 20060101AFI20160817BHJP
H02K 37/14 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
H02K5/167 A
H02K5/167 B
H02K37/14 M
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-94514(P2012-94514)
(22)【出願日】2012年4月18日
(65)【公開番号】特開2013-223368(P2013-223368A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸明
【審査官】
三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−196559(JP,A)
【文献】
特開2010−016923(JP,A)
【文献】
特開2007−104849(JP,A)
【文献】
特開2003−333794(JP,A)
【文献】
特開2003−284311(JP,A)
【文献】
特開平11−122862(JP,A)
【文献】
特開平09−154271(JP,A)
【文献】
特開2006−174595(JP,A)
【文献】
特開2009−189191(JP,A)
【文献】
特開2007−252121(JP,A)
【文献】
特開平07−075322(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0001600(US,A1)
【文献】
米国特許第05811903(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0206690(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0216243(US,A1)
【文献】
米国特許第05486054(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/167
H02K 37/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力側に送りネジが固定または形成される回転軸と、前記回転軸の反出力側の外周面に固定される永久磁石と、前記永久磁石の外周側に配置される駆動用コイルを有するステータと、前記回転軸の前記反出力側の端部を少なくとも前記回転軸の軸方向で支持する軸受と、前記ステータの前記反出力側に固定され前記軸受を前記軸方向へスライド可能に保持する軸受ホルダと、前記軸受を前記出力側へ付勢する板バネとを備えるモータであって、
前記軸受には、前記回転軸の径方向の外側へ突出する突出部が形成され、
前記板バネは、前記軸受ホルダの前記反出力側の端面に固定されるとともに、前記軸受を前記軸受ホルダの前記反出力側から前記出力側へ付勢しており、
前記突出部は、前記モータの通常の動作状態においては、前記永久磁石の前記反出力側の端面と前記軸受ホルダの前記出力側の端面との間に配置され、前記回転軸とともに前記軸受が前記反出力側へ過度にスライドすると、前記軸受ホルダの前記出力側の端面に接触することを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記突出部は、前記回転軸の円周方向の全域に亘って鍔状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のモータ。
【請求項3】
前記突出部は、前記軸受の前記出力側端に形成され、
前記永久磁石の前記反出力側の端面には、前記出力側に向かって窪む凹部が前記回転軸を囲むように形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のモータ。
【請求項4】
前記軸受の前記出力側の端面には、前記径方向の外側に向かうにしたがって前記反出力側へ傾斜する傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項3記載のモータ。
【請求項5】
前記永久磁石の前記反出力側の端面と、前記軸受の前記出力側の端面とが略同一平面状に配置されていることを特徴とする請求項3または4記載のモータ。
【請求項6】
前記軸受ホルダには、前記軸受を保持する軸受保持孔が形成され、
前記軸受ホルダの前記出力側の端面には、前記反出力側に向かって窪むホルダ凹部が形成され、
前記ホルダ凹部は、前記軸受保持孔を囲むように形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のモータ。
【請求項7】
前記軸受には、前記回転軸の前記反出力側の端部が配置される軸受凹部が、前記軸受の前記出力側の端面から前記反出力側に向かって窪むように形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力側に送りネジが固定または形成される回転軸を備えるモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、
図4に示すように、回転軸101および回転軸101に固定される永久磁石102を有するロータ103と、永久磁石102の外周面に対向する極歯104および極歯104の外周側に配置される駆動用コイル105を有するステータ106とを備えるステッピングモータ100が知られている(たとえば、特許文献1参照)。ステッピングモータ100では、回転軸101の出力側は、ステータ106から突出しており、回転軸101の出力側には、送りネジが形成されている。この送りネジには、図示を省略する被送り体が係合している。この被送り体は、回転軸101が回転すると、送りネジに沿って直線的に移動する。なお、被送り体は、送りネジに係合するメネジが内周側に形成されるナットや、送りネジに係合する爪部が内周側に形成されるラック等である。
【0003】
また、ステッピングモータ100では、回転軸101の反出力側の端部は、ボール107とボール保持体108とからなる軸受109に回転可能に支持されている。ステータ106の反出力側の端面には、ボール保持体108を保持するガイド部材110が固定されており、ボール保持体108は、ガイド部材110に対して軸方向へスライド可能となっている。また、ボール保持体108は、ガイド部材110に取り付けられる板バネ111によって出力側へ付勢されている。また、回転軸101の出力側の端部は、図示を省略するボールとボール保持体とからなる軸受に回転可能に支持されている。回転軸101の出力側に配置されるボール保持体は、所定のフレームに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−154271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ステッピングモータ100では、通常、ロータ103の回転に支障がないように、永久磁石102の反出力側の端面102aと、ガイド部材110の出力側の端面110aとの間に隙間が形成されている(
図4(A)参照)。しかしながら、送りネジに係合する被送り体が回転軸101の出力側へ移動するように回転軸101が所定の速度で回転しているときに、ステッピングモータ100の制御エラー等が発生して、回転軸101の出力側に配置されるボール保持体に被送り体が衝突すると、
図4(B)に示すように、永久磁石102の端面102aとガイド部材110の端面110aとが接触して、永久磁石102とガイド部材110とが固着することがある。
【0006】
すなわち、回転軸101が所定の速度で回転しているときに被送り体が回転軸101の出力側に配置されるボール保持体に衝突すると、被送り体がボール保持体に接触した状態で回転軸101がさらに回転して、ロータ103に反出力側への応力が発生する。そのため、
図4(B)に示すように、ロータ103とともにボール保持体108が反出力側へ移動して、永久磁石102の端面102aとガイド部材110の端面110aとが接触し、永久磁石102の端面102aとガイド部材110の端面110aとの間に接触摩擦が発生し、ロータ3の回転が拘束される。したがって、その後、被送り体が反出力側へ移動するように回転軸101を回転させようとしても、回転軸101が回転しないといった状況が発生することがある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、出力側に送りネジが固定または形成される回転軸を備えるモータにおいて、回転軸の反出力側の端部を支持する軸受をスライド可能に保持する軸受ホルダと、回転軸に固定される永久磁石との固着を防止することが可能なモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明のモータは、出力側に送りネジが固定または形成される回転軸と、回転軸の反出力側の外周面に固定される永久磁石と、永久磁石の外周側に配置される駆動用コイルを有するステータと、回転軸の反出力側の端部を少なくとも回転軸の軸方向で支持する軸受と、ステータの反出力側に固定され軸受を軸方向へスライド可能に保持する軸受ホルダと、軸受を出力側へ付勢する
板バネとを備え
るモータであって、軸受には、回転軸の径方向の外側へ突出する突出部が形成され、
板バネは、軸受ホルダの反出力側の端面に固定されるとともに、軸受を軸受ホルダの反出力側から出力側へ付勢しており、突出部は、
モータの通常の動作状態においては、永久磁石の反出力側の端面と軸受ホルダの出力側の端面との間に配置され
、回転軸とともに軸受が反出力側へ過度にスライドすると、軸受ホルダの出力側の端面に接触することを特徴とする。
【0009】
本発明のモータでは、回転軸の反出力側の端部を少なくとも軸方向で支持する軸受に、径方向の外側へ突出する突出部が形成され
ており、この突出部は、
モータの通常の動作状態においては、永久磁石の反出力側の端面と軸受ホルダの出力側の端面との間に配置され
、回転軸とともに軸受が反出力側へ過度にスライドすると、軸受ホルダの出力側の端面に接触する。そのため、たとえば、送りネジに係合しながら回転軸の出力側へ移動する被送り体が回転軸の出力側の端部を支持する軸受に衝突して、回転軸が反出力側に引っ張られ、回転軸とともに軸受が反出力側へ過度にスライドしたときには、軸受ホルダの出力側の端面に突出部が接触して、回転軸および永久磁石がそれ以上、反出力側へ移動しなくなる。したがって、本発明では、軸受ホルダの出力側の端面に永久磁石の反出力側の端面が接触するのを防止することが可能になり、その結果、軸受ホルダと永久磁石との固着を防止することが可能になる。
【0010】
本発明において、突出部は、回転軸の円周方向の全域に亘って鍔状に形成されていることが好ましい。このように構成すると、軸受ホルダの出力側の端面に永久磁石の反出力側の端面が接触するのを効果的に防止することが可能になる。
【0011】
本発明において、突出部は、軸受の出力側端に形成され、永久磁石の反出力側の端面には、出力側に向かって窪む凹部が回転軸を囲むように形成されていることが好ましい。また、本発明において、軸受の出力側の端面には、径方向の外側に向かうにしたがって反出力側へ傾斜する傾斜面が形成されていることが好ましい。このように構成すると、永久磁石の反出力側の端面と軸受の出力側の端面との距離を近づけても、永久磁石と軸受との接触を防止することが可能になる。したがって、軸方向でモータを小型化することが可能になる。また、このように構成すると、軸受ホルダの出力側の端面に接触しているときの突出部と軸受ホルダとの接触状態を安定させるために、径方向の外側へ突出部を大きく突出させても、永久磁石と突出部との接触を防止することが可能になる。
【0012】
本発明において、たとえば、永久磁石の反出力側の端面と、軸受の出力側の端面とが略同一平面状に配置されている。
【0013】
本発明において、軸受ホルダには、軸受を保持する軸受保持孔が形成され、軸受ホルダの出力側の端面には、反出力側に向かって窪むホルダ凹部が形成され、ホルダ凹部は、軸受保持孔を囲むように形成されていることが好ましい。このように構成すると、軸受に突出部が形成されていても、ホルダ凹部の窪み分だけ反出力側へ軸受をスライドさせることが可能になる。したがって、軸受に突出部が形成されていても、軸受ホルダに対する軸受のスライド量を確保することが可能になる。
【0014】
本発明において、たとえば、軸受には、回転軸の反出力側の端部が配置される軸受凹部が、軸受の出力側の端面から反出力側に向かって窪むように形成されている。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明では、出力側に送りネジが固定または形成される回転軸を備えるモータにおいて、回転軸の反出力側の端部を支持する軸受をスライド可能に保持する軸受ホルダと、回転軸に固定される永久磁石との固着を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態にかかるモータの断面図であり、(A)はモータの通常動作時の状態を示す図、(B)は被送り体が軸受に衝突したときの状態を示す図である。
【
図4】従来技術にかかるモータの要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
(モータの全体構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるモータ1の断面図であり、(A)はモータ1の通常動作時の状態を示す図、(B)は被送り体11が軸受8に衝突したときの状態を示す図である。
【0019】
本形態のモータ1は、いわゆるPM型のステッピングモータである。このモータ1は、回転軸2と永久磁石3とを有するロータ4と、永久磁石3の径方向の外側に対向配置される極歯5を有するステータ6と、ステータ6に固定されるフレーム7とを備えている。また、モータ1は、回転軸2の出力側の端部を回転可能に支持する軸受8と、回転軸2の反出力側の端部を回転可能に支持する軸受9とを備えている。なお、以下の説明では、回転軸2の出力側となる
図1等のZ1方向側を「出力側」、回転軸2の反出力側となる
図1等のZ2方向側を「反出力側」とする。また、以下の説明では、回転軸2の軸方向を「軸方向」とし、回転軸2の径方向を「径方向」とし、回転軸2の円周方向を「円周方向」とする。
【0020】
回転軸2の出力側は、ステータ6よりも出力側へ突出している。回転軸2の、ステータ6よりも突出した部分には、送りネジ(リードスクリュー)2aが形成されている。送りネジ2aには、送りネジ2aに係合するメネジが内周面に形成されるナットや、送りネジ2aに係合する爪部が内周側に形成されるラック等の被送り体11が係合している。被送り体11には、たとえば、カメラのレンズ枠が取付可能となっており、ロータ4が回転すると、送りネジ2aに沿って、被送り体11とともに、レンズ枠が直線的に移動する。
【0021】
永久磁石3は、略円筒状に形成されている。この永久磁石3は、ステータ6の内部に配置される回転軸2の反出力側の外周面に固定されている。永久磁石3の外周面には、N極とS極とが円周方向に沿って交互に着磁されている。永久磁石3の反出力側の端面3aには、出力側に向かって窪む凹部3bが回転軸2を囲む円環状に形成されている。この凹部3bの詳細な構成については後述する。永久磁石3の出力側の端面には、反出力側に向かって窪む凹部3cが回転軸2を囲む円環状に形成されている。凹部3cは、回転軸2に永久磁石3を固定する際の接着剤が溜まる接着剤溜りとして機能している。
【0022】
ステータ6は、軸方向で重なるように配置される第1のステータ部組14と第2のステータ部組15とを備えている。本形態では、第1のステータ部組14が反出力側に配置され、第2のステータ部組15が出力側に配置されている。第1のステータ部組14は、外ステータコア16と、駆動用コイル17が巻回されるボビン18と、ボビン18を外ステータコア16との間に挟む内ステータコア19とを備えている。第2のステータ部組15は、第1のステータ部組14と同様に、外ステータコア16と、駆動用コイル17が巻回されるボビン18と、内ステータコア19とを備えている。
【0023】
ボビン18は、全体として略鍔付きの円筒状に形成されている。ボビン18の外周面には、導線が巻回されており、ボビン18の外周面に導線が略円筒状に巻回されることで駆動用コイル17が形成されている。また、ボビン18の反出力端側には、径方向へ突出する端子台18aが形成されている。端子台18aには、端子ピン20が固定されており、端子ピン20には、駆動用コイル17を構成する導線の端部が巻回されて固定されている。
【0024】
ボビン18の内周側には、外ステータコア16および内ステータコア19のそれぞれに形成された複数の極歯5が円周方向に隣接するように配置されている。極歯5の内周側には、永久磁石3が配置されている。すなわち、駆動用コイル17は、永久磁石3の外周側に配置されている。また、駆動用コイル17の外周側は、外ステータコア16の一部によって覆われている。すなわち、本形態の外ステータコア16の一部は、駆動用コイル17の外周側を覆うケース体としての機能を果たしている。
【0025】
フレーム7は、略角溝状に形成されており、底面部7aと、底面部7aの出力側端から略直角に立ち上がる側面部7bと、底面部7aの反出力側端から略直角に立ち上がる側面部7cとから構成されている。このフレーム7は、ステータ6の出力側の端面に固定されている。具体的は、側面部7cが、ステータ6の出力側の端面に固定されている。側面部7cには、回転軸2のリードスクリュー2aの一部が配置される貫通孔7dが形成されている。
【0026】
軸受8は、樹脂で形成されている。また、軸受8は、鍔付きの略有底円筒状に形成されており、軸受8には、軸受8の反出力側の端面から出力側に向かって窪む軸受凹部8aが形成されている。この軸受8は、その鍔部8bが側面部7bの反出力側の側面に当接するように側面部7bに固定されている。軸受8は、軸方向および径方向において、回転軸2の出力側の端部を支持している。
【0027】
ステータ6の反出力側の端面には、軸受9を軸方向へスライド可能に保持する軸受ホルダ21が固定されている。軸受ホルダ21には、軸受9を出力側へ付勢する付勢部材としての板バネ22が固定されている。以下、軸受9、軸受ホルダ21および永久磁石3の凹部3bの詳細な構成について説明する。
【0028】
(軸受、軸受ホルダおよび永久磁石の凹部の構成)
図2は、
図1(A)のE部の拡大図である。
図3は、
図1(B)のF部の拡大図である。
【0029】
軸受ホルダ21は、略円板状に形成されている。また、軸受ホルダ21は、金属で形成されている。たとえば、軸受ホルダ21は、ステンレス鋼板で形成されている。軸受ホルダ21の出力側の端面(側面)21aは、第1のステータ部組14の外ステータコア16に固定されている。本形態では、軸受ホルダ21の端面21aは、溶接によって、第1のステータ部組14の外ステータコア16に固定されている。板バネ22は、軸受ホルダ21の反出力側の端面(側面)21bに固定されている。本形態では、板バネ22は、溶接によって、軸受ホルダ21の端面21bに固定されている。
【0030】
軸受ホルダ21の略中心には、軸受9を保持する軸受保持孔21cが軸受ホルダ21を軸方向で貫通するように形成されている。軸受ホルダ21の出力側の端面21aには、反出力側に向かって窪むホルダ凹部としての凹部21dが形成されている。凹部21dは、軸受保持孔21cを囲む円環状に形成されている。本形態では、略円板状に形成される金属の中心部分にプレスの半抜き加工を行うことで、端面21aに凹部21dが形成されており、凹部21dの底面21eは、軸方向に直交する平面状に形成されている。
【0031】
軸受9は、樹脂で形成されている。また、軸受9は、鍔付きの略有底円筒状に形成されている。軸受9には、軸受9の出力側の端面9eから反出力側に向かって窪む軸受凹部としての凹部9aが形成されている。また、軸受9には、軸受9の反出力側の端面から出力側に向かって窪む凹部9bが形成されている。凹部9aと凹部9bとの間に、軸受9の底部9cが形成されている。凹部9aの深さ(軸方向の深さ)は、凹部9bの深さ(軸方向の深さ)よりも深くなっている。なお、凹部9bは、軸受9を成形する際のゲート部の残りが軸受9の反出力側の端面から突出しないように設けられている。
【0032】
軸受9は、板バネ22によって出力側へ付勢されており、回転軸2の反出力側端は、底部9cの出力側の面に当接している。回転軸2の反出力側端は、底部9cの出力側の面によって軸方向で支持されている。また、回転軸2の反出力側の端部の側面は、凹部9aの側面によって径方向で支持されている。すなわち、回転軸2の反出力側の端部は、凹部9aの中に配置されており、軸受9によって、径方向および軸方向で支持されている。
【0033】
軸受9の出力側端には、径方向の外側へ突出する突出部9dが形成されている。突出部9dは、円環状に形成されている。すなわち、突出部9dは、円周方向の全域に亘って鍔状に形成されている。また、軸受9の出力側の端面9eの外周側には、径方向の外側に向かうにしたがって反出力側へ傾斜する傾斜面9fが形成されている。傾斜面9fの内径D1(
図2参照)は、軸受9の突出部9dを除いた部分の外径よりも小さくなっている。また、傾斜面9fは、突出部9dの外周端まで形成されており、傾斜面9fの外径D2(
図2参照)は、軸受9の突出部9dを除いた部分の外径よりも大きくなっている。また、傾斜面9fの外径D2は、軸受ホルダ21の凹部21dの底面21eの外径D3(
図2参照)よりも小さくなっている。
【0034】
永久磁石3の凹部3bの底面3dは、軸方向に直交する平面状に形成されている。凹部3bの側面3eは、反出力側に向かうにしたがってその内径がしだいに大きくなる傾斜面となっている。側面3eの最小内径D4(
図2参照)は、傾斜面9fの内径D1よりも大きくなっている。側面3eの最大内径D5(
図2参照)は、傾斜面9fの外径D2よりも小さくなっている。また、永久磁石3の外径は、傾斜面9fの外径D2より大きく、かつ、軸受ホルダ21の凹部21dの底面21eの外径D3よりも小さくなっている。
【0035】
本形態では、回転軸2の反出力側端が底部9cの出力側の面に当接しているときに、永久磁石3の反出力側の端面3aと、軸受9の出力側の端面9eとが略同一平面状に配置されるように、軸受9の凹部9aが形成され、かつ、永久磁石3が回転軸2に固定されている。上述のように、凹部3bの側面3eの最小内径D4は、傾斜面9fの内径D1よりも大きくなっているため、永久磁石3の反出力側の端面3aと、軸受9の出力側の端面9eとが略同一平面状に配置されていても、永久磁石3と軸受9とは接触していない。
【0036】
また、本形態では、突出部9dは、軸受ホルダ21の出力側の端面21aよりも出力側に配置されている。すなわち、突出部9dは、永久磁石3の反出力側の端面3aと軸受ホルダ21の出力側の端面21aとの間に配置されている。具体的には、
図1(A)、
図2に示すモータ1の通常の動作状態において、突出部9dは、軸受ホルダ21の出力側の端面21aの、凹部21dを除く部分と、永久磁石3の反出力側の端面3aとの間に配置されている。そのため、
図1(B)に示すように、回転軸2の出力側へ移動する被送り体11が軸受8に衝突して、回転軸2が反出力側に引っ張られ、
図3に示すように、回転軸2とともに軸受9が反出力側へ過度にスライドしたときには、軸受ホルダ21の出力側の端面21aに軸受9の突出部9dが接触して(具体的には、凹部21dの底面21eに突出部9dが接触して)、ロータ4がそれ以上、反出力側へ移動しなくなる。
【0037】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、軸受9に形成される突出部9dが永久磁石3の反出力側の端面3aと軸受ホルダ21の出力側の端面21aとの間に配置されており、回転軸2の出力側へ移動する被送り体11が軸受8に衝突して、回転軸2が反出力側に引っ張られ、回転軸2とともに軸受9が反出力側へ過度にスライドしたときには、軸受ホルダ21の出力側の端面21aに軸受9の突出部9dが接触して、ロータ4がそれ以上、反出力側へ移動しなくなる。したがって、本形態では、軸受ホルダ21の出力側の端面21aに永久磁石3の反出力側の端面3aが接触するのを防止することが可能になり、その結果、軸受ホルダ8と永久磁石3との固着を防止することが可能になる。
【0038】
また、本形態では、回転軸2の出力側へ移動する被送り体11が軸受8に衝突して、回転軸2が反出力側に引っ張られ、回転軸2とともに軸受9が反出力側へ過度にスライドしたときでも、ロータ4においては、回転軸2の反出力側の端部のみが軸受9の底部9cの出力側の面に当接しており、その他の部分は、軸受9や軸受ホルダ21に当接していない。すなわち、このときでも、軸受9や軸受ホルダ21等の固定側の部材とロータ4との摩擦抵抗が小さい。そのため、本形態では、回転軸2とともに軸受9が反出力側へ過度にスライドした状態であっても、被送り体11が反出力側へ移動する方向に回転軸2を容易に回転させることが可能になる。
【0039】
特に本形態では、突出部9dは、円周方向の全域に亘って鍔状に形成されているため、軸受ホルダ21の出力側の端面21aに永久磁石3の反出力側の端面3aが接触するのを効果的に防止することが可能になる。
【0040】
本形態では、永久磁石3の反出力側の端面3aに凹部3bが形成され、軸受9の出力側の端面9eに、傾斜面9fが形成されている。そのため、本形態では、永久磁石3の反出力側の端面3aと軸受9の出力側の端面9eとの距離を近づけても、永久磁石3と軸受9との接触を防止することが可能になり、その結果、軸方向でモータ1を小型化することが可能になる。また、本形態では、軸受ホルダ21の出力側の端面21aに接触しているときの突出部9dと軸受ホルダ21との接触状態を安定させるために、径方向の外側へ突出部9dを大きく突出させても、永久磁石3と突出部9dとの接触を防止することが可能になる。
【0041】
本形態では、軸受ホルダ21の出力側の端面21aに凹部21dが形成されている。そのため、本形態では、軸受9に突出部9dが形成されていても、凹部21dの窪み分だけ反出力側へ軸受9をスライドさせることが可能になる。したがって、本形態では、軸受9に突出部9dが形成されていても、軸受ホルダ21に対する軸受9のスライド量を確保することが可能になる。
【0042】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0043】
上述した形態では、軸受9の突出部9dは、軸受9の出力側端の円周方向の全体が径方向の外側へ突出する円環状に形成されている。この他にもたとえば、突出部9dは、軸受9の出力側端の円周方向の一部が径方向の外側へ突出するように形成されても良い。また、上述した形態では、突出部9dは、軸受9の出力側端に形成されているが、突出部9dは、軸方向における軸受9の中間位置に形成されても良い。
【0044】
上述した形態では、回転軸2の反出力側端が底部9cの出力側の面に当接しているときに、永久磁石3の反出力側の端面3aと、軸受9の出力側の端面9eとが略同一平面状に配置されている。この他にもたとえば、回転軸2の反出力側端が底部9cの出力側の面に当接しているときに、端面9eは、端面3aよりも反出力側に配置されても良いし、出力側に配置されても良い。端面9eが端面3aよりも反出力側に配置される場合には、端面9eに傾斜面9fが形成されなくても良い。また、端面9eが端面3aよりも反出力側に配置される場合には、永久磁石3に凹部3bが形成されなくても良い。
【0045】
上述した形態では、軸受ホルダ21の出力側の端面21aに凹部21dが形成されているが、端面21aに凹部21dが形成されていなくても良い。すなわち、端面21aは、平面状に形成されても良い。また、上述した形態では、軸受ホルダ21は、第1のステータ部組14の外ステータコア16に直接、固定されているが、軸受ホルダ21は、所定の部材を介して、第1のステータ部組14の外ステータコア16に固定されても良い。また、上述した形態では、軸受ホルダ21は金属で形成されているが、軸受ホルダ21は、樹脂で形成されても良い。この場合には、板バネ22は、接着によって、軸受ホルダ21の反出力側の端面21bに固定される。また、上述した形態では、板バネ22は、軸受ホルダ21に固定されているが、板バネ22は、ステータ6に固定されても良い。
【0046】
上述した形態では、回転軸2の、ステータ6よりも突出した部分に、送りネジ2aが形成されている。この他にもたとえば、回転軸2と別体で形成された送りネジが回転軸2の出力側に固定されても良い。また、上述した形態では、ロータ4は、1個の永久磁石3を備えているが、ロータ4が備える永久磁石3の数は、2個以上でも良い。また、上述した形態では、ステータ6は、第1のステータ部組14と第2のステータ部組15とによって構成されているが、ステータ6は、1個のステータ部組によって構成されても良いし、3個以上のステータ部組によって構成されても良い。また、上述した形態では、モータ1は、ステッピングモータであるが、本発明の構成が適用されるモータは、ステッピングモータ以外のモータであっても良い。
【符号の説明】
【0047】
1 モータ
2 回転軸
2a 送りネジ
3 永久磁石
3a 永久磁石の反出力側の端面
3b 凹部
6 ステータ
9 軸受
9a 凹部(軸受凹部)
9d 突出部
9e 軸受の出力側の端面
9f 傾斜面
17 駆動用コイル
21 軸受ホルダ
21a 軸受ホルダの出力側の端面
21c 軸受保持孔
21d 凹部(ホルダ凹部)
22 板バネ(付勢部材)
Z1 出力側
Z2 反出力側