(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
蒸気が通過可能な複数の蒸気孔が形成されかつ発泡性合成樹脂粒子を充填するための成形空間を形成する第1成形型と第2成形型とを備え、前記第1成形型と第2成形型の少なくとも一方の成形型の成形空間側の面とは反対側の面に、前記複数の蒸気孔の間に配置されるように凹部が形成され、該凹部は、その中心部側ほど深く形成されていることを特徴とする成形装置。
前記第1成形型が雌型で、かつ、前記第2成形型が雄型からなり、該第1成形型の成形空間側の面とは反対側の面のうちの上面となる面に形成されている凹部の中心部に、該凹部から成形空間側に連通する貫通孔が形成されている請求項1に記載の成形装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、成形型に薄肉部を形成することによって、成形型の熱伝導率を高めることができる。これにより、加熱時の蒸気の使用量を減らすことができる利点がある。しかし、薄肉部は、凹んだ底面が平坦面になるように蒸気孔の近傍部付近に至るまで形成されていることから、特に前記蒸気孔の近傍部付近の部分が他の部分に比べて強度が低下してしまい、成形型の耐久性が低下する不都合があった。
【0006】
本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、成形型の熱伝導率を高めることができながらも、成形型の耐久性の低下を抑制することができる成形装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の成形装置は、前述の課題解決のために、蒸気が通過可能な複数の蒸気孔が形成されかつ発泡性合成樹脂粒子を充填するための成形空間を形成する第1成形型と第2成形型とを備え、前記第1成形型と第2成形型の少なくとも一方の成形型の成形空間側の面とは反対側の面に、前記複数の蒸気孔の間に配置されるように凹部が形成され、該凹部は、その中心部側ほど深く形成されていることを特徴としている。
【0008】
かかる構成によれば、第1成形型と第2成形型の少なくとも一方の成形型の成形空間側の面とは反対側の面に、凹部を形成することによって、凹部が形成された部分の成形型の厚みを薄くすることができる。これにより、成形型の熱伝導率を高めて加熱時の蒸気の使用量を減らすことができる。しかも、凹部は、複数の蒸気孔の間に配置され、かつ、その中心部側ほど深く形成されている。よって、蒸気孔の近傍部付近(凹部の外周部側)の成形型の厚みが他の部分(前記近傍部から離れた部分であり、凹部の中心部側の部分)よりも厚くなる。これにより、蒸気孔の近傍部付近における強度低下を抑制することができる。
【0011】
また、本発明の成形装置は、前記第1成形型が雌型で、かつ、前記第2成形型が雄型からなり、該第1成形型の成形空間側の面とは反対側の面のうちの上面となる面に形成されている凹部の中心部に、該凹部から成形空間側に連通する貫通孔が形成されていてもよい。
【0012】
上記構成によれば、上面となる面に形成されている凹部に、凹部から成形空間側に連通する貫通孔が形成されていれば、凹部に溜まる冷却水を貫通孔から成形空間内へ排出することができる。しかも、貫通孔が凹部の中心部に形成されていることから、貫通孔を形成することによる蒸気孔の近傍部付近の強度低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1成形型と第2成形型の少なくとも一方の成形型の成形空間側の面とは反対側の面に、複数の蒸気孔の間に配置されるように凹部が形成され、該凹部は、その中心部側ほど深く形成されているので、成形型の熱伝導率を高めることができながらも、成形型の耐久性の低下を抑制することができる成形装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る成形装置の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1及び
図2は、発泡成形体(発泡容器)を成形するための成形装置1を示している。この成形装置1は、一対(1組)の第1成形部1Aと第2成形部1Bとからなり、
図2の左側に位置する第1成形部1Aと、
図2の右側に位置する第2成形部1Bとを
図1に示すように前面側で合わせて発泡成形体を成形するように構成されている。
図1及び
図2に示す成形装置1は、一対の成形部1A,1Bを左右方向(水平方向)に開閉させる横型の成形装置である。ここでは、横型の成形装置を示しているが、上下方向に開閉させる縦型の成形装置であってもよい。
【0017】
第1成形部1Aは、雌型の第1成形型2と、第1成形型2を保持する成形保持手段H1とを備えている。成形保持手段H1は、雌型の第1成形型2が取付けられる第1取付プレート3と、第1取付プレート3を支持する第1フレーム4と、第1フレーム4の後面側の開口部4Kを閉じる第1バックプレート5とを備えている。
【0018】
また、第2成形部1Bは、雄型の第2成形型6と、第2成形型6を保持する成形保持手段H2とを備えている。成形保持手段H2は、雄型の第2成形型6が取り付けられる第2取付プレート7と、第2取付プレート7を支持する第2フレーム8と、第2フレーム8の後面側の開口部8Kを閉じる第2バックプレート9とを備えている。
【0019】
また、第1成形部1Aは、固定部(図示せず)に固定され、第2成形部1Bは、図示していないアクチュエータにより水平方向に移動できるように可動式に構成され、第1成形部1Aに対して第2成形部1Bを接近させた成形位置(
図1参照)と、成形後に第1成形部1Aに対して第2成形部1Bを離間させて成形された成形品を取り出す取出位置(
図2参照)とに位置変更可能になっている。
【0020】
雌型の第1成形型2は、前面側端(
図1及び
図2では右側端)が開口された凹部を備えた本体部2Aと、この本体部2Aの開口端から径方向外側に突出形成された環状の鍔部2Bとを備えている。また、雄型の第2成形型6は、雌型の第1成形型2の凹部内に入り込んで発泡性合成樹脂粒子を充填するための成形空間Sを形成するための前面側に突出する凸部を備えた本体部6Aと、この本体部6Aの突出側とは反対側(後面側)端から径方向外側に突出形成された環状の鍔部6Bとを備えている。
【0021】
固定側の雌型の第1成形型2の本体部2Aは、後側に位置する略正方形状の後側壁部21と、後側壁部21の4辺のうちの上辺から前側に延びる上側壁部22と、下辺から前側に延びる下側壁部23と、左右辺から前側に延びる左右側壁部24,25とを備えている。
【0022】
可動側の雄型の第2成形型6の本体部6Aは、前記雌型の第1成形型2の本体部2Aよりも一回り小さく形成され、その大きさは、成形する発泡容器の厚みによって設定される。そして、本体部6Aは、成形面側に突出して前側に位置する略正方形状の前側壁部61と、前側壁部61の4辺から後側に延びる4つの側壁部、つまり上側壁部62,下側壁部63,左右側壁部64,65とを備えている。
【0023】
固定側の雌型の第1成形型2を構成する後側壁部21、上側壁部22、下側壁部23、左右側壁部24,25のそれぞれには、
図3(a),(b),(c)に示すように、蒸気が通過可能な多数の円形の蒸気孔2Mが縦横に所定間隔L3を置いて格子状に形成されている。これら蒸気孔2Mには、
図4(b)に示すように、コアベント2Cが嵌め込まれている。これらのコアベント2Cは、一端が円板部により閉じられた円筒状体からなり、その円板部に多数のキリ孔(図示せず)が形成されたキリ孔タイプのものや、円板部に多数のスリット孔(長孔、図示せず)が平行に形成されたスリット孔タイプのものがある。これらコアベント2Cのキリ孔やスリット孔を蒸気孔とし、該蒸気孔を通して加熱工程で供給される蒸気を成形空間S内に取り入れて発泡性合成樹脂粒子を加熱膨張させて互いに熱融着させる。
【0024】
可動側の雄型の第2成形型6を構成する前側壁部61、上側壁部62、下側壁部63、左右側壁部64,65のそれぞれには、図示していないが、固定側の雌型の第1成形型2と同様に、蒸気が通過可能な多数の円形の蒸気孔(図示せず)が縦横に所定間隔を置いて格子状に形成されている。これら蒸気孔には、
図4(b)に示すコアベント2Cが嵌め込まれる。
【0025】
また、固定側の雌型の第1成形型2を構成する上側壁部22、下側壁部23、左右側壁部24,25の成形空間S側の面とは反対側の面(外面)には、4つの蒸気孔2Mを頂点として囲まれる矩形枠状の領域内の略中央に配置されかつ中心部側ほど深くなる凹部2Pが形成されている。
【0026】
凹部2Pは、
図3(a),(b),(c)及び
図4(a),(b)に示すように、複数個が蒸気孔2Mと重なり合うことがないように縦横に所定間隔を置いて格子状に形成されている。また、凹部2Pは、正面視において円形状に形成され、底面が中心部側ほど深くなるように凹んだ円弧状の湾曲面に形成されている。そして、前記4つの蒸気孔2Mの外周縁から凹部2Pの外周縁までのそれぞれの距離が同一の距離L1に設定されている。また、凹部2Pは複数設けられ、凹部2P,2P同士間の距離(凹部の中心間距離)も同一距離L2に設定されている。また、蒸気孔2M同士間の距離も同一距離L3(蒸気孔の中心間距離)に設定されている。
【0027】
具体的には、蒸気孔2Mの直径は、10mm(8mm〜12mmの範囲が好ましい)で、蒸気孔2M同士間の距離L3は、25mm(この値は発泡成形体の大きさや厚みなどに応じて適宜変更可能である)である。また、凹部2Pの直径は16mm(13mm〜19mmの範囲であれば、どのような値でもよい)で、凹部2P,2P同士間の距離L2は、蒸気孔2M同士間の距離L3と同一の25mmとなっているが、必ずしも同一でなくてもよい。また、
図4(b)に示すように、第1成形型2の厚みWは8mm(5mm〜12mmの範囲であれば、どのような値でもよい)で、凹部2Pの中心部(最深部)の深さFは、3mm(2mm〜7mmの範囲が好ましい)である。尚、前記示した数値は、第2成形型6も同様である。
【0028】
第1成形型2の成形空間側の面とは反対側の面のうちの上面となる面、つまり上側壁部22の上面に形成されている凹部2Pの中心部に、凹部2Pから成形空間側に連通する円形の貫通孔2D(
図3(a)及び
図4(a),(b)参照)が形成されている。尚、貫通孔2Dの直径は、0.8mm(0.6mm〜1.0mmの範囲が好ましい)にしている。
【0029】
第1取付プレート3は、第1成形型2の本体部2Aが入り込む大きさの貫通孔3Aが形成され、第1成形型2の鍔部2Bの外周縁を支持している。第1フレーム4は、正面視が矩形状の環状枠体に形成され、環状枠体の内面に形成されたフランジ4Aで第1取付プレート3の外周縁を支持している。第1バックプレート5は、矩形状の板状材からなり、第1フレーム4の後面側の開口部4Kを閉じるように第1フレーム4の後面に取り付けられている。このように第1取付プレート3と第1フレーム4と第1バックプレート5により第1成形型2の後面を囲うことにより一方の第1成形型2の蒸気室10が形成されている。
【0030】
第1フレーム4の上側の壁部4Bには、貫通孔(図示せず)が形成され、その貫通孔から蒸気室10へ蒸気又は冷却水を供給するための共通配管(図示せず)が接続されている。
【0031】
第2取付プレート7は、第2成形型6の本体部6Aが入り込む大きさの貫通孔7Aが形成され、第2成形型6の鍔部6Bの外周縁を支持している。第2フレーム8は、第1フレーム4と同様に、正面視が矩形状の環状枠体に形成され、環状枠体の内面に形成されたフランジ8Aで第2取付プレート7の外周縁を支持している。また、第2バックプレート9は、第2フレーム8の後面側の開口部8Kを閉じるように第2フレーム8の後面に取り付けられている。このように第2取付プレート7と第2フレーム8と第2バックプレート9とで第2成形型6の後面を囲うことにより他方の第2成形型6の蒸気室11が形成されている。
【0032】
また、第2フレーム8の上側の壁部8Bには、貫通孔(図示せず)が形成され、その貫通孔から蒸気室11へ蒸気又は冷却水を供給するための共通配管(図示せず)が接続されている。
【0033】
また、第1フレーム4の下側の壁部(図示せず)及び第2フレーム8の下側の壁部(図示せず)のそれぞれには、排水口(図示せず)を備え、これら排水口に、ドレン管(図示せず)が接続されている。
【0034】
前記構成の成形装置により成形品を成形する過程について説明する。
【0035】
まず、
図2に示す成形部1A,1Bの成形型2,6の前面側の合わせ面同士を合わせるために両成形部1A,1Bを閉じる(
図1参照)。ここでは、一方の可動型の第2成形部1Bのみを移動させて閉じているが、両方の成形部1A,1Bを移動させる構成であってもよい。成形部1A,1Bを閉じることにより形成された成形空間Sに発泡性合成樹脂粒子を図示していない充填装置により充填する。次に、図示していないバルブを開放状態にすることにより、共通配管を介して蒸気室10,11に蒸気を供給して加熱する。この加熱時の蒸気の使用量を減らすことができる。これは、前述したように、成形型2,6に凹部2Pが形成されていることにより、凹部が形成された部分の成形型の厚みを薄くすることができることから、成形型の熱伝導率を高めることで加熱時の蒸気の使用量(平均蒸気流量)を減らすことができる(成形サイクル時間の短縮も図れる)。しかも、複数の蒸気孔2M,2Mの間に配置されるように中心部側ほど深くなっている凹部2Pとなっているので、蒸気孔2Mの近傍部付近の成形型2,6の厚みが他の部分(近傍部から離れる側の部分)よりも厚くなる。これにより、蒸気孔2Mの近傍部付近の強度低下を抑制することができる。さらに、4つの蒸気孔2Mにて囲まれる領域内の中央に凹部2Pを形成することによって、4つの蒸気孔2Mの近傍箇所それぞれの強度を略同一の強度にすることができる。
【0036】
加熱が終了すると、開放しているバルブを閉じてから、図示していない冷却水供給バルブを開放状態にして蒸気室10,11に共通配管を介して冷却水を供給して成形部1A,1B内を冷却する。この冷却時に供給される冷却水が、上面に形成されている凹部2Pに入り込んでも、その入り込んだ冷却水を貫通孔2Dから成形空間S側へ排出することができる。しかも、貫通孔2Dが凹部2Pの中心に形成されていることから、貫通孔2Dを形成することによる蒸気孔2Mの近傍部付近の強度低下を抑制することができる。
【0037】
冷却水の供給が終了した後は、減圧冷却工程(放冷工程ともいう)に移り、蒸気室10,11内を減圧することにより蒸気室内の残存水分や成形された発泡成形体に付着もしくは内部に含有されている水分を蒸発させるとともに蒸発熱を利用して冷却を促進させて、減圧冷却工程を終了する。こののち、成形部1A,1Bを開いて成形型2,6から発泡成形体を取り出して作業が終了する。
【0038】
前述したように、第1成形型2及び第2成形型6の成形空間側の面とは反対側の面に、凹部2Pを形成することによって、凹部2Pが形成された部分の成形型2,6の厚みを薄くすることができる。これにより、成形型2,6の熱伝導率を高めて加熱時の蒸気の使用量を減らすことができる。しかも、凹部2Pは、複数の蒸気孔2M,2Mの間に配置され、かつ、その中心部側ほど深く形成されている。よって、蒸気孔2Mの近傍部付近(凹部の外周部側)の成形型2,6の厚みが他の部分(前記近傍部から離れた部分であり、凹部2Pの中心部側の部分)よりも厚くなる。これにより、蒸気孔2Mの近傍部付近における強度低下を抑制することができる。また、4つの蒸気孔2Mを頂点として囲まれる矩形枠状の領域内に凹部2Pが形成されていることで、4つの蒸気孔2Mの近傍箇所それぞれの強度を略同一の強度にすることができる。さらにまた、上面となる面に形成されている凹部2Pに、凹部2Pから成形空間側に連通する貫通孔2Dが形成されていることで、凹部2Pに溜まる冷却水を貫通孔2Dから成形空間S内へ排出することができる。しかも、貫通孔2Dが凹部2Pの中心部に形成されていることから、貫通孔2Dを形成することによる蒸気孔2Mの近傍部付近の強度低下を抑制することができる。
【0039】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0040】
前記実施形態では、縦方向及び横方向で隣り合う蒸気孔2M,2M間のピッチを同一ピッチL3に構成したが、異なるピッチに構成してもよい。また、縦方向及び横方向で隣り合う凹部2P,2P間のピッチを同一ピッチL2に構成したが、異なるピッチに構成してもよい。
【0041】
また、前記実施形態では、凹部2Pの底面を円弧状の湾曲面から構成したが、
図5(a)に示すように、中心部ほど深くなる直線状のテーパー面から構成してもよいし、また、
図5(b)に示すように、複数(図では2つ)の直線状のテーパー面2t1,2t2を有する凹部2Pに構成してもよい。また、
図5(c)に示すように、複数(図では2つ)の円弧状の湾曲面2w1,2w2を有する凹部2Pに構成してもよい。
【0042】
また、前記実施形態では、4つの蒸気孔2Mを頂点として囲まれる矩形枠状の領域が複数形成され、その全てに凹部2Pを形成したが、前記複数の矩形枠状の領域のうちの一部にのみ凹部2Pを形成してもよい。また、第1成形型2と第2成形型6の両方に凹部2Pを形成する方が好ましいが、いずれか一方の成形型2又は6のみに凹部2Pを形成してもよい。