(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、蚊、蚋、ユスリカ、ハエ類などの飛翔害虫に対して、ディート(N,N−ジエチルトルアミド)を含む忌避剤を皮膚表面に塗布する方法が汎用されてきたが、ディートは通常の香料成分と比べると揮散性が幾分低いために空間的な忌避効果は期待できない。一方、常温揮散性の殺虫成分、例えば、ピレスロイド系のエムペントリン等を空間に揮散させて飛翔害虫に対する忌避効果を実現することもできるが、殺虫成分の使用が敬遠される場面も少なからず存在する。
そこで、忌避成分として揮散性の天然精油やその組成成分を用いる試みがいくつか提案されている。例えば、シトロネラ油やその主成分であるシトロネラールが蚊に対して忌避効果を示すことはよく知られており、アメリカではシトロネラ油を有効成分として含有するキャンドルが市販された。しかしながら、キャンドルの熱を利用してシトロネラールを放散させる方法はシトロネラールの揮散効率が悪く、実用的な忌避効果を奏しえない。
【0003】
ところで、特開2002−173407号公報(特許文献1)には、シトロネラ油の外、オレンジ油、カシア油などから選ばれた天然精油を有効成分とする飛翔害虫忌避剤が記載され、液剤に使用するための溶剤として、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル等のエステル類、ヘキサン、ケロシン、パラフィン等の脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、エーテル類等、多種があげられている。
また、特開2003−201203号公報(特許文献2)は、害虫忌避成分(A)として、シトロネラールと、ターピネオール、メントール、リモネン、ゲラニオール、シトロネロール、カンフェン等から選ばれる1種又は2種以上とを含み、害虫忌避成分(A)中におけるシトロネラールの含有量が2〜10質量%である害虫忌避剤揮散組成物を開示している。しかしながら、これらの忌避剤は、天然産志向と安全性への配慮を謳っているものの、その忌避効果は長続きせず必ずしも満足のいくものではない。
更に、特開昭61−289002号公報(特許文献3)には、「グリコールエーテル類を有効成分とする節足動物類、軟体動物類並びに爬虫類用忌避剤」が提案され、グリコールエーテル類がゴキブリやダニ類に優れた忌避効果を示す旨記載されているが、その効果は到底十分とは言い難く、しかも飛翔害虫に対する効果は何ら言及されていない。
このように、現在のところ、飛翔害虫忌避効果、更にはこれに加えて芳香の持続性向上を目指した有用な飛翔害虫忌避香料組成物、及びこれを用いた飛翔害虫忌避製品は未だ知られていない。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の飛翔害虫忌避香料組成物では、実質的に殺虫成分を用いず、香料成分を飛翔害虫忌避成分として使用する。このような香料成分を、以降、飛翔害虫忌避香料と称し、例えば、(a)一般式(I)
CH
3−COO−R (I)
(式中、Rは炭素数が6〜12のアルコール残基を示す。)で表される酢酸エステル化合物、具体的には、p−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、o−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、p−tert−ペンチルシクロヘキシルアセテート、トリシクロデセニルアセテート、ベンジルアセテート、フェニルエチルアセテート、スチラリルアセテート、アニシルアセテート、シンナミルアセテート、テルピニルアセテート、ジヒドロテルピニルアセテート、リナリルアセテート、エチルリナリルアセテート、シトロネリルアセテート、ゲラニルアセテート、ネリルアセテート、ボルニルアセテート、及びイソボルニルアセテート等があげられる。
【0009】
また、(b)モノテルペン系アルコールもしくは炭素数が10の芳香族アルコールも有用であり、例えば、テルピネオール、ゲラニオール、ジヒドロミルセノール、ボルネオール、メントール、シトロネロール、ネロール、リナロール、エチルリナロール、チモール、オイゲノール、及びp−メンタン−3,8−ジオール等が代表的である。
【0010】
本発明では、(a)一般式(I)で表される酢酸エステル化合物から選ばれる1種又は2種以上の香料成分と、(b)モノテルペン系アルコールもしくは炭素数が10の芳香族アルコールから選ばれる1種又は2種以上の香料成分を併用する必要がある。そして、後記する忌避効果持続成分との組合わせを検討した結果によれば、(a)の(b)に対する配合比率は0.1〜1.0倍量が特に好ましいことが認められた。
【0011】
本発明では、飛翔害虫忌避香料として、上記以外の香料成分、例えば、メントン、カルボン、プレゴン、カンファー、ダマスコン等のモノテルペン系ケトン、シトラール、シトロネラール、ネラール、ペリラアルデヒド等のモノテルペン系アルデヒド、アリルヘプタノエート、アリルシクロヘキシルプロピオネート、ゲラニルフォーメート等のエステル化合物、フェニルエチルアルコール、ジフェニルオキサイド、インドールアロマ、更には、上記香料成分を含む種々精油類、例えば、ジャスミン油、ネロリ油、ペパーミント油、ベルガモット油、オレンジ油、ゼラニウム油、プチグレン油、レモン油、シトロネラ油、レモングラス油、シナモン油、ユーカリ油、レモンユーカリ油、タイム油等も適宜添加しても構わない。
【0012】
本発明の飛翔害虫忌避香料組成物は、飛翔害虫忌避香料の揮散後の忌避効果持続成分として、20℃における蒸気圧が0.2〜20Paのグリコール及び/又はグリコールエーテルの1種又は2種以上を配合したことにも特徴を有する。このようなグリコール及び/又はグリコールエーテルは、特許文献2において、エタノール、イソプロパノールや灯油等と同列に溶剤として羅列され、また、特許文献3では、ゴキブリやダニ類に優れた忌避効果を示す旨記載されているものの、飛翔害虫に対する効果は何ら言及されていない。
しかるに、本発明者らは、当該グリコール及び/又はグリコールエーテルが溶剤としてのみならず、前記飛翔害虫忌避香料に対して特異的に忌避効果の持続作用を奏し、芳香性の飛翔害虫忌避香料を用いた場合には初期の香調をも持続させ得ることを初めて知見したものである。
【0013】
その具体的代表例(20℃における蒸気圧を併記)としては、プロピレングリコール(10.7Pa)、ジプロピレングリコール(1.3Pa)、トリプロピレングリコール(0.67Pa)、ジエチレングリコール(3Pa)、トリエチレングリコール(1Pa)、1,3−ブチレングリコール、ヘキシレングリコール(6.7Pa)、ベンジルグリコール(2.7Pa)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(3Pa)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテルがあげられ、なかんずく、ジプロピレングリコールが本発明の目的に合致する。
なお、グリコール及び/又はグリコールエーテルの飛翔害虫忌避香料に対する配合比率は、0.2〜10倍程度が適当である。
【0014】
本発明では、上記飛翔害虫忌避香料組成物をそのまま若しくは希釈して使用することもできるが、通常これを担持体に含有させ、この担持体から飛翔害虫忌避香料を空間に揮散させて用いる飛翔害虫忌避製品が調製される。
飛翔害虫忌避製品には、本発明の効果に支障を来たさない限りにおいて他の機能性成分を配合してもよく、例えば、殺虫成分や、消臭成分、除菌・抗菌成分等があげられる。殺虫成分としては、常温揮散性ピレスロイド系のエムペントリン、プロフルトリン、トランスフルトリン、メトフルトリン等があげられるが、本発明の趣旨に照らし、配合するとしても極力微量に留めるのが好ましい。消臭成分としては、イネ科、ツバキ科、イチョウ科、モクセイ科、クワ科、ミカン科、キントラノオ科、カキノキ科の中から選ばれる植物抽出物が代表的である。また、「緑の香り」と呼ばれる青葉アルコールや青葉アルデヒド等を添加してリラックス効果を付与することもできる。
【0015】
本発明の飛翔害虫忌避製品は各種の剤型が可能であり、製剤を調製するにあたっては、本発明の効果に支障を来たさない限りにおいて必要に応じ、溶剤、界面活性剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、pH調整剤、着色剤等を適宜配合してもよい。
あるいは、飛翔害虫忌避香料組成物を、例えば、マイクロカプセル化したり、サイクロデキストリン化して当該香料組成物の安定化を図ったり、飛翔害虫忌避香料の揮散性を調節することも可能である。
【0016】
液状製剤としては、例えば、液剤、乳剤、水溶剤、マイクロエマルジョン等を容器に収容し、対象物に滴下して用いたり、吸液芯を介して飛翔害虫忌避香料を空間に揮散させるようにすることができる。
液状製剤の調製に用いる溶剤としては、例えば、水、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、ノルマルパラフィンやイソパラフィン等の炭化水素系溶剤等があげられる。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル類(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等の非イオン系界面活性剤や、ラウリルアミンオキサイド、ステアリルアミンオキサイド、ラウリル酸アミドプロピルジメチルアミンオキサイド等の高級アルキルアミンオキサイド系界面活性剤を例示することができる。
【0017】
一方、本発明の飛翔害虫忌避製品は、使い易いこと、液漏れの心配がないことや薬液が手指に触れる危険性の少ないこと等を考慮し、飛翔害虫忌避香料組成物を担持体に含有させ、この担持体から飛翔害虫忌避香料を空間に揮散させて用いる剤型が好適に採用される。
ここで担持体としては、紙、織布、不織布等の基布、ビスコパール等の多孔質有機成形体、セラミックス等の無機担持体、プラスチック樹脂フィルムや成形体、あるいはシリコーンゴム等があげられるがこれらに限定されない。
プラスチック樹脂フィルムや成形体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、スチレン系ジブロックポリマー、スチレン系トリブロックポリマー等を例示できる。
用いる担持体の種類やその仕様は飛翔害虫忌避香料の揮散性能等を考慮して適宜決定すればよい。
【0018】
本発明の飛翔害虫忌避製品の担持体中に含有される飛翔害虫忌避香料組成物の配合量は、当該忌避製品の使用用途、使用期間、及び担持体の種類やその仕様等によって適宜決定すればよいが、1回あたり8〜12時間使用の忌避製品の場合、本発明の飛翔害虫忌避香料組成物を担持体あたり10〜50mg、一方、15〜30日使用の忌避製品にあっては100〜2000mg程度が適当である。
【0019】
飛翔害虫忌避香料組成物を担持体に含有させるに際しても、液状製剤の場合と同様に必要に応じて溶剤や界面活性剤等を添加し、従来公知の方法を適宜採用することができる。例えば、担持体が不織布の場合、飛翔害虫忌避香料組成物を薬液分注方式によって担持させてもよいし、あるいはパラフィンワックスと共に包埋させるようにしても構わない。
また、本発明の飛翔害虫忌避香料組成物は揮散性のため、プラスチック樹脂フィルムや成形体、あるいはシリコーンゴム等にこれを担持させるにあたっては、必要ならば炭化水素系溶剤と共に樹脂やシリコーンゴムを加熱溶融させた後、できるだけ温度を下げた状態で忌避香料組成物を混和するのが好ましい。
【0020】
上記担持体の飛翔害虫忌避製品への装着方法も任意である。担持体がシリコーンゴムの場合のように、担持体自体が飛翔害虫忌避製品(リストバンド)であってもよいし、飛翔害虫忌避製品がシールのような場合、フィルム状担持体の下面に粘着層を設け対象面に貼付するようにしてもよい。また、別途時計バンドを設け、その一部に小片状担持体の収納部を形成し、小片状担持体を取替え自在に使用に供する構成を採用することもできる。なお、この場合、小片状担持体が腕の皮膚に直接触れないというメリットを有する。
【0021】
こうして得られた本発明の飛翔害虫忌避製品は、玄関、台所、トイレ、リビングルーム、寝室などの室内、倉庫、車中等の空間や、庭先、屋外で使用することにより、アカイエカ、チカイエカ、ヒトスジシマカなどの蚊類、蚋、ユスリカ類、ハエ類、コバエ類(ショウジョウバエ類、ノミバエ類等)、チョウバエ類、イガ類などの飛翔害虫に対し、所定の期間にわたり優れた飛翔害虫忌避効果を示す。そして、芳香性の飛翔害虫忌避香料を用いた場合には初期の香調が変質することなく所定期間持続し、しかも、実質的に殺虫成分を含有していない本製品は殺虫剤の使用を嫌がる人にも手軽に使用できるので、その実用性は極めて高い。
【0022】
次に具体的な実施例に基づき、本発明の飛翔害虫忌避香料組成物、及びこれを用いた飛翔害虫忌避製品について更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
飛翔害虫忌避香料の(a)一般式(I)で表される酢酸エステル化合物として、p−tert−ブチルシクロヘキシルアセテートを8.0質量%とベンジルアセテートを3.5質量%、(b)モノテルペン系アルコールもしくは炭素数が10の芳香族アルコールとして、テルピネオールを14.0質量%、ゲラニオールを9.8質量%とジヒドロミルセノールを12.3質量%、忌避効果持続成分として、ジプロピレングリコール37.5質量%、更に、その他の飛翔害虫忌避香料を14.9質量%(フェニルエチルアルコールを7.6質量%、及びアリルヘプタノエートを1.7質量%を含む)配合した本発明の飛翔害虫忌避香料組成物を調製した。この飛翔害虫忌避香料組成物における(a)の(b)に対する配合比率は0.32倍であった。
この飛翔害虫忌避香料組成物の30mgを、リング状のシリコーンゴム(1.6g)に溶融含有させ、リストバンド形態の本発明の飛翔害虫忌避製品を得た。
このリストバンドを腕に巻いて外出したところ、8〜12時間にわたり、蚊やコバエ等の飛翔害虫に煩わされることがなく実用的な忌避効果が確認された。また、身体の周囲空間には初期香調のままの芳香が漂い、快適な爽やかさを満喫できた。
【実施例2】
【0024】
実施例1に準じ、飛翔害虫忌避香料の(a)一般式(I)で表される酢酸エステル化合物として、スチラリルアセテートを10mgと、(b)モノテルペン系アルコールもしくは炭素数が10の芳香族アルコールとして、ゲラニオールを30mgを用い、これに各忌避効果持続成分を配合して本発明の飛翔害虫忌避香料組成物を調製した。得られた香料組成物につき、下記の持続性評価試験を実施した。本試験では、アカイエカ成虫(♀)に対するノックダウン活性を持続性評価の指標とした。
[持続性評価試験]
上記飛翔害虫忌避香料と各忌避効果持続成分70mgを含む供試薬剤のアセトン溶液0.5mLを直径15cmの濾紙に含浸後風乾して各供試薬剤処理濾紙を調製した。
プラスチック製円筒(内径20cm、高さ43cm)を設置し、その中に各供試薬剤処理濾紙を置いた。円筒の上に、12メッシュの金網で上下を仕切り供試アカイエカ成虫20匹を放った第二の円筒(内径20cm、高さ20cm)を載せ、更にその上に第三の円筒(内径20cm、高さ43cm)を載せた。時間の経過に伴いノックダウンした供試虫数を数え、KT
50値(供試虫数の半数がノックダウンするまでの時間)を求めた。なお、各供試薬剤の持続性を評価するため、供試薬剤処理濾紙の風乾直後のもの(表1中の0h)と、供試薬剤処理濾紙を風乾後別室で4時間揮散させたもの(表1中の4h)の2種類を供した。
【0025】
【表1】
【0026】
試験の結果、20℃における蒸気圧が0.2〜20Paのグリコール及び/又はグリコールエーテルにノックダウン効果の持続作用、即ち、忌避効果持続成分としての有用性が認められた。なお、エチレングリコール系とプロピレングリコール系を対比すると、後者の方が好ましい傾向が観察された。これに対し、グリコール及び/又はグリコールエーテル以外のミリスチン酸イソプロピルやネオチオゾールについては、20℃における蒸気圧が0.2〜20Paの範囲であっても、ノックダウン効果の持続作用は乏しかった。
【実施例3】
【0027】
実施例2の結果に基づき、次にヘキシレングリコールとジプロピレングリコールにつき、飛翔害虫忌避香料の種類と配合量を変えて実施例2と同様の試験を行った。結果を表2に示す。
【0028】
【表2】
【0029】
試験の結果、本発明で用いる忌避効果持続成分は、飛翔害虫忌避香料として(a)一般式(I)で表される酢酸エステル化合物と、(b)モノテルペン系アルコールもしくは炭素数が10の芳香族アルコールとを、好ましくは、(a)の(b)に対する配合比率が0.1〜1.0の範囲で組み合わせた場合に、より効率的なノックダウン効果の持続作用を示した。
【実施例4】
【0030】
4cm×4cmの方形不織布に、表3に記載の飛翔害虫忌避香料組成物をパラフィンワックスと共に包埋させ、その下層にPET層、接着剤層及び剥離紙をこの順に積層してシール形態の本発明の飛翔害虫忌避製品を作成した。
試験室内(約6m
3)に、蓋をしていないオープン状態のプラスチックカップ(約1L)を2個併設した。片方のプラスチックカップ内にショウジョウバエ誘引源と供試飛翔害虫忌避製品を入れ(処理区)、他方のプラスチックカップ内にはショウジョウバエ誘引源のみを入れた(コントロール区)。4時間後、室内にショウジョウバエ成虫を約100匹を放ち、両区プラスチックカップ内への侵入虫を計数し、次式に従って忌避率を算出した。
忌避率=[(コントロール区の侵入虫数−処理区の侵入虫数)/コントロール区の侵入虫数×100
【0031】
【表3】
【0032】
試験の結果、本発明の飛翔害虫忌避製品(飛翔害虫忌避香料、及び揮散後の忌避効果持続成分として20℃における蒸気圧が0.2〜20Paのグリコール及び/又はグリコールエーテルの1種又は2種以上を含有)は、揮散後4時間にわたり優れた飛翔害虫忌避効果を奏することが認められた。また、飛翔害虫忌避香料として、(a)一般式(I)で表される酢酸エステル化合物と、(b)モノテルペン系アルコールもしくは炭素数が10の芳香族アルコールとを、(a)の(b)に対する配合比率として0.1〜1.0倍量で組み合わせた場合に、忌避効果持続成分の作用がより効率的に発現し、忌避率のみならず、芳香の持続性も満足のいくものであった。
これに対し、忌避効果持続成分を配合しない比較9や、グリコール及び/又はグリコールエーテル系の忌避効果持続成分を配合しても20℃における蒸気圧が0.2〜20Paの範囲を外れる比較10及び比較11は、忌避効果の持続性が著しく低かった。
従って、飛翔害虫忌避香料と特定の忌避効果持続成分を組合わせた本発明の飛翔害虫忌避製品が高い実用性を有することは明らかである。
【実施例5】
【0033】
飛翔害虫忌避香料の(a)一般式(I)で表される酢酸エステル化合物として、トリシクロデセニルアセテートを10.2質量%とフェニルエチルアセテートを3.0質量%、(b)モノテルペン系アルコールもしくは炭素数が10の芳香族アルコールとして、ゲラニオールを25.0質量%とチモールを3.7質量%、忌避効果持続成分として、ジプロピレングリコール42.4質量%、更に、その他の飛翔害虫忌避香料を15.7質量%(ユーカリ油4.1質量%、及びアリルヘキサノエートを1.4質量%を含む)配合した本発明の飛翔害虫忌避香料組成物を調製した。この飛翔害虫忌避香料組成物における(a)の(b)に対する配合比率は0.46倍であった。
スチレン系トリブロックポリマー(Kraton G1650)22部とイソパラフィン炭化水素(アイソパーL)68部を70〜80℃に加温して溶解混合後、これに前記飛翔害虫忌避香料組成物10部を添加混合した。成形容器で固化させて、直径5cm、厚さ0.8cmの板状ゲル体(飛翔害虫忌避香料組成物として700mgを含有)の飛翔害虫忌避製品を得た。
この板状ゲル体を窓ガラスに設置したところ、15〜20日にわたり、蚊やチョウバエ、ユスリカ等が窓ガラスの周囲に近づくことはなかった。
【実施例6】
【0034】
実施例5で調製した本発明の飛翔害虫忌避香料組成物40mgをパルプ製原紙(縦10mm、横30mm、厚さ0.6mm)に含浸させた。
時計バンドの一部に前記忌避香料担持体の収納部を設け、その上面は通気性材質で形成した。この収納部に忌避香料担持体1枚を挿入し、時計バンドを腕に巻いて外出したところ、8〜12時間にわたり、蚊やコバエ等の飛翔害虫に煩わされることがなかった。また、本製品の場合、忌避香料担持体が直接皮膚に触れることがなく、安全性への配慮の面でも好ましかった。