特許第5977082号(P5977082)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977082
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】毛髪処理剤、および、毛髪の処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20160817BHJP
   A61Q 5/04 20060101ALI20160817BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   A61K8/19
   A61Q5/04
   A61K8/44
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-119502(P2012-119502)
(22)【出願日】2012年5月25日
(65)【公開番号】特開2013-245189(P2013-245189A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108672
【氏名又は名称】タカラベルモント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】久下 宗一
(72)【発明者】
【氏名】久世 祥代
(72)【発明者】
【氏名】山口 剛弘
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−294814(JP,A)
【文献】 特開平08−325123(JP,A)
【文献】 特開平07−101840(JP,A)
【文献】 特開昭62−246509(JP,A)
【文献】 特開2000−026251(JP,A)
【文献】 特開2003−267846(JP,A)
【文献】 特開2009−067712(JP,A)
【文献】 特開2003−261425(JP,A)
【文献】 特開2013−129608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛髪変形処理における毛髪の還元処理後に用いられる毛髪処理剤であって、酸化剤を含有し、pH8.1以上のアルカリ性液であり、セスキ炭酸ナトリウム、アルギニン、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする毛髪処理剤。
【請求項2】
前記酸化剤が臭素酸塩であることを特徴とする請求項に記載の毛髪処理剤。
【請求項3】
毛髪変形処理における毛髪の還元処理後酸化処理前に用いられる毛髪処理剤であって、pH8以上のアルカリ性液であり、セスキ炭酸ナトリウムを含有することを特徴とする毛髪処理剤。
【請求項4】
毛髪変形処理における毛髪の還元処理後酸化処理前に用いられる毛髪処理剤であって、pH8以上13以下のアルカリ性液であり、炭酸水素ナトリウム及び炭酸ナトリウムを含有することを特徴とする毛髪処理剤。ただし、炭酸水素ナトリウム及び炭酸ナトリウムを含有するpH10.0以下の毛髪処理剤を除く。
【請求項5】
毛髪変形処理における毛髪の還元処理後酸化処理前に用いられる毛髪処理剤であって、pH8以上13以下のアルカリ性液であり、アルギニンを含有することを特徴とする毛髪処理剤。ただし、炭酸塩又は炭酸水素塩とアルギニンとを含有するpH10.0以下の毛髪処理剤と、亜硫酸又は亜硫酸水素のアルギニン塩、シリコーン誘導体及び多価アルコールを含有するpH11以下の毛髪処理剤と、サトウキビエキスとアルギニンとを含有するpH10.0以下の毛髪処理剤とを除く。
【請求項6】
毛髪の還元処理後に、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の毛髪処理剤を用いて行うことを特徴とする毛髪の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーブ形成や縮毛矯正などの毛髪変形処理において毛髪の還元処理後に用いられ、毛髪酸化環境を調整する毛髪処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
パーマネントウェーブ処理、ストレートパーマ処理に代表される毛髪の還元処理を伴う毛髪変形処理では、還元処理の後に毛髪を酸化させて変形を定着させる。
【0003】
このときの酸化が不十分若しくは不均一であると、毛髪変形処理の効果が十分に得られず、また、良好な仕上がり感が得られない。
【0004】
このような問題に対して、従来は、還元処理後にpH3〜6の中間酸リンスによる酸化に先立っての処理(例えば、非特許文献1)、pH5〜7の臭素酸塩タイプの酸化処理剤、あるいは、pH2〜4の過酸化水素タイプの酸化処理剤が用いられてきた。しかしながら、これら従来技術に係る毛髪処理剤では、酸化効果が十分若しくは均一ではなく、改善が強く求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「ベーシック・ケミカル」日本パーマネントウェーブ液工業組合著、新美容出版株式会社、2006年11月8日発行、第48頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した従来の問題点を改善する、すなわち、毛髪変形処理における毛髪の還元処理後の毛髪酸化環境を調整し、酸化を十分且つ均一に進行させることにより、毛髪変形処理の効果が十分に得られ、かつ、良好な仕上がり感が得られる毛髪処理剤、及び、毛髪の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の毛髪処理剤は上記課題を解決するため、請求項1に記載の通り、毛髪変形処理における毛髪の還元処理後に用いられる毛髪処理剤であって、酸化剤を含有し、pH8.1以上のアルカリ性液であり、セスキ炭酸ナトリウム、アルギニン、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする毛髪処理剤である。
【0008】
また、本発明の毛髪処理剤は、請求項2に記載の通り、請求項1に記載の毛髪処理剤において、酸化剤が臭素酸塩であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の毛髪処理剤は、請求項3に記載の通り、毛髪変形処理における毛髪の還元処理後酸化処理前に用いられる毛髪処理剤であって、pH8以上のアルカリ性液であり、セスキ炭酸ナトリウムを含有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の毛髪処理剤は、請求項4に記載の通り、毛髪変形処理における毛髪の還元処理後酸化処理前に用いられる毛髪処理剤であって、pH8以上13以下のアルカリ性液であり、炭酸水素ナトリウム及び炭酸ナトリウムを含有することを特徴とする。ただし、炭酸水素ナトリウム及び炭酸ナトリウムを含有するpH10.0以下の毛髪処理剤を除く。
【0011】
また、本発明の毛髪処理剤は、請求項5に記載の通り、毛髪変形処理における毛髪の還元処理後酸化処理前に用いられる毛髪処理剤であって、pH8以上13以下のアルカリ性液であり、アルギニンを含有することを特徴とする。ただし、炭酸塩又は炭酸水素塩とアルギニンとを含有するpH10.0以下の毛髪処理剤と、亜硫酸又は亜硫酸水素のアルギニン塩、シリコーン誘導体及び多価アルコールを含有するpH11以下の毛髪処理剤と、サトウキビエキスとアルギニンとを含有するpH10.0以下の毛髪処理剤とを除く。
【0012】
本発明の毛髪の処理方法は、請求項6に記載の通り、毛髪の還元処理後に、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の毛髪処理剤を用いて行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の毛髪処理剤によれば、毛髪変形処理における毛髪の還元処理後の毛髪の酸化環境を整えて、酸化を十分且つ均一に進行させることができる。この結果、毛髪変形処理の効果を従来得られないレベルまで高めることができるので、優れたウェーブ形成や縮毛矯正、弾力付与、持続性、ウェット・ドライ差のなさが確保され、かつ、良好な仕上がり感、すなわち、低ダメージ性、良好な指通り、やわらかさ、自然なツヤが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の毛髪処理剤は、毛髪変形処理における毛髪の還元処理後に用いられる毛髪の処理剤である。
【0015】
本発明において毛髪変形処理とは、パーマネントウェーブ処理、ストレートパーマ処理などの、毛髪中のシスチン結合の還元を伴う処理を云う。
【0016】
本発明の毛髪処理剤は、上記のような毛髪変形処理における毛髪の還元処理を行った後の毛髪に対して用いる。毛髪処理剤による毛髪酸化環境調整処理は、還元処理後の酸化処理(シスチン結合の再結合処理)前であっても、酸化処理と同時であってもよい。
【0017】
本発明の毛髪処理剤は、pH8以上のアルカリ性液である。このとき、用いる溶媒としては水のみ、あるいは必要に応じて、エタノール、イソプロパノール等の有機溶媒を人体に接触しても無害な濃度で含有していてもよい。また、本発明の毛髪処理剤は必ずしも溶液でなくてもよく、必要に応じて添加する成分が懸濁ないし乳化されているものであってもよい。
【0018】
本発明の毛髪処理剤は、上記溶媒(分散媒)以外に、pH調整成分を有し、このpH調整成分によりpH8以上となっている。
【0019】
このようなpH調整成分としては、セスキ炭酸ナトリウム、アルギニン、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、モノエタノールアミン、アンモニア、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、水酸化ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三ナトリウム、及び、リン酸水素二アンモニウムが挙げられ、これらから選ばれる少なくとも1種を含有していると、高い効果、すなわち、毛髪変形処理の効果が高くなることに加え、良好な仕上がり感が得られるので好ましい。
【0020】
これらの中で、セスキ炭酸ナトリウム、アルギニン、炭酸水素ナトリウム、及び、炭酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種を含有していると特に高い効果が得られるのでより好ましい。
【0021】
本発明の毛髪処理剤のpHの上限としては、人体に用いるものであるので、通常はpH14以下とし、より好ましい上限としてはpH13以下である。
【0022】
本発明の毛髪処理剤には本発明の効果を損なわない範囲で、上記のようなpH調整成分以外に、上記した以外のpH調整成分(例えば、クエン酸、乳酸、リン酸等)、油性成分(例えば、スフィンゴ脂質、セラミド類、コレステロール誘導体、フィトステロール誘導体、リン脂質、ラノリン、ラノリン脂肪酸誘導体、パーフルオロポリエーテル等)、植物油(例えば、オリーブ油、シア脂、マカデミアナッツ油等)、ロウ類(例えば、ホホバ種子油、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ等)、炭化水素(例えば、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン、ワセリン、イソドデカン、イソヘキサデカン等)、高級脂肪酸(例えば、ミリスチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、分岐脂肪酸(C(炭素数)14−28)、ヒドロキシステアリン酸等)、アルコール類(例えば、セタノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、水添ナタネ油アルコール、コレステロール、シトステロール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、1,2−ヘキサンジオール等)、糖及びその誘導体類(例えば、ブドウ糖、ショ糖、D−ソルビトール、マルトース、トレハロース、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド、グリセリルグルコシド等)、エステル類(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、オレイン酸オクチルドデシル、トリイソステアリン酸グリセリル、コハク酸ジエトキシエチル、乳酸セチル、ラノリン脂肪酸オクチルドデシル等)、シリコーン類(例えば、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、環状ジメチルシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ジメチコノール、PCAジメチコン等)、アミノ酸及びその誘導体類(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、セリン、メチオニン、トリメチルグリシン、ポリアスパラギン酸ナトリウム、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、N−ラウロイル−L−リジン等)、PPT及びタンパク類(例えば、加水分解シルク、加水分解コムギ、加水分解ダイズ、加水分解コラーゲン、加水分解ケラチン、シリル化加水分解シルク、シリル化加水分解コムギ、カチオン化加水分解シルク、カチオン化加水分解コラーゲン、ケラチン等)、天然高分子類(例えば、アルギン酸塩、マンナン、アラビアゴム、タマリンドガム、キトサン、カラギーナン、ムチン、セラック、ヒアルロン酸塩、カチオン化ヒアルロン酸、キサンタンガム、デキストリン、ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化セルロース、グァーガム、カチオン化グァーガム、ハチミツ等)、合成高分子(例えば、アニオン性高分子、カチオン性高分子、非イオン性高分子、両性高分子、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル等)、アニオン性界面活性剤(例えば、アルキルエーテルカルボン酸塩、N−アシルグルタミン酸、N−アシルメチルタウリン塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、リン酸ジセチル等)、カチオン性界面活性剤(例えば、アルキルアミン塩、脂肪酸アミドアミン塩、アルキル4級アンモニウム塩等)、両性界面活性剤(例えば、グリシン型両性界面活性剤、アミノプロピオン酸型両性界面活性剤、アミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルグルコシド、新油型モノステアリン酸グリセリル等)、染料(例えば、タール色素、天然色素等)、植物エキス類(例えば、カミツレエキス、コンフリーエキス、セージエキス、ローズマリーエキス、カキタンニン、チャ乾留液、銅クロロフィリンナトリウム等)、ビタミン類(例えば、L−アスコルビン酸、DL−α−トコフェロール、D−パンテノール、天然ビタミンE等)、紫外線吸収剤(例えば、パラアミノ安息香酸、サリチル酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、フェルラ酸等)、防腐剤(例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、サリチル酸、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラベン、フェノキシエタノール等)、酸化防止剤(例えば、亜硫酸水素ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン等)、金属イオン封鎖剤(例えば、エデト酸塩、ポリリン酸ナトリウム、フィチン酸等)、その他無機化合物(例えば、酸化チタン、銀、白金、塩化鉄、酸化鉄、臭素酸ナトリウム、過酸化水素等)、その他有機化合物(例えば、尿素、ヒドロキシエチル尿素、dl−ピロリドンカルボン酸ナトリウム、グルコン酸銅等)、溶剤(例えば、ベンジルアルコール等)、噴射剤(例えば、LPG(液化石油ガス)、DME(ジメチルエーテル)、窒素ガス、炭酸ガス等)、香料等の公知の化粧品各成分を配合することができる。
【0023】
また、本発明の毛髪処理剤は、通常の方法に従って、液状、ミルク状、クリーム状、泡状(使用時形状)、霧状(使用時形状)等の剤形とすることができ、エアゾール形態とすることもできる。
【0024】
本発明の毛髪処理剤の使用方法としては、毛髪変形処理における毛髪の還元処理を行った後に用いる。このとき、還元処理後の酸化処理(シスチン結合の再結合処理)前であっても、酸化処理と同時であってもよい。
【0025】
以上、本発明について、好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明の毛髪処理剤、及び、毛髪の処理方法は上記実施形態の構成に限定されるものではない。
【0026】
当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の毛髪処理剤、及び、毛髪の処理方法を適宜改変することができる。このような改変によってもなお本発明の毛髪処理剤、及び、毛髪の処理方法の構成を具備する限り、もちろん、本発明の範疇に含まれるものである。
【実施例】
【0027】
以下に本発明の毛髪処理剤の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0028】
<サンプルの毛髪の準備>
長さ30cmの直毛の毛髪からなる毛束(5g)を用い、化学的処理として市販のヘアカラーによる2回の染色処理を行い、さらに市販のパーマ液で、1回パーマネントウェーブ処理後、50℃に保ったポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム水溶液(5重量%)に一晩浸漬後、十分に水洗したものをサンプル毛髪とした(一般的な女性の損傷毛髪の典型として想定した)。
【0029】
<評価方法1 酸化処理(シスチン結合の再結合処理)前での使用>
上記のサンプル毛髪に対して、パーマネントウェーブ処理を行った。具体的には、以下の(a1)工程〜(j1)工程をこの順番に行った。
【0030】
(a1)毛束を水で濡らす、
(b1)毛髪をロッドに巻く、
(c1)パーマネントウェーブ処理用第1剤塗布(還元処理)、
(d1)容器に入れて密閉し、20分間、室温で放置、
(e1)中間水洗、
(f1)中間処理(毛髪処理剤による毛髪酸化環境調整処理)、
(g1)パーマネントウェーブ処理用第2剤塗布(酸化処理)、
(h1)5分間、室温で放置((g1)工程→(h1)工程を2回繰り返す)、
(i1)ロッドアウト(ロッドの除去)、
(j1)水洗。
【0031】
上記(f1)中間処理としては表1及び表2に示した毛髪処理剤(各pH調整成分を表1及び表2に記載の配合濃度となるように精製水に溶解させて調製)を用いて、毛髪に塗布し室温で5分間放置して行った。また、参照例として中間処理に毛髪処理剤を用いない場合(処理なし)も実施した。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
また、パーマネントウェーブ処理に用いたパーマネントウェーブ処理用第1剤(還元処理剤)、および第2剤(酸化処理剤)の配合成分および配合濃度を表3に示す。
【0035】
【表3】
【0036】
<毛髪処理剤の効果確認>
上記(a1)〜(j1)の工程を行った毛髪に対して(f1)で使用する毛髪処理剤がパーマネントウェーブ処理の仕上がりに及ぼす効果について以下の項目について官能評価を行った。
【0037】
具体的には(1)カールの強さ、(2)カールのウェット・ドライ差のなさ、(3)カールの弾力、(4)カールの持続性、(5)やわらかさ、(6)指通り、及び、(7)ツヤの7項目について評価した。
それぞれの項目について評価基準を以下に記す。
【0038】
(1)カールの強さ
パーマネントウェーブ処理の最終水洗直後の毛髪が濡れている時のカール形状の強さを比較し、「◎」、「○」、「△」、及び、「×」の4段階で評価した。これらの内、「◎」は特に優れているとの評価、「○」は十分な効果との評価であり、「△」及び「×」は不十分とする評価である。
◎:ウェーブ効率が非常に高く、非常にしっかりとカール形成されている、
○:ウェーブ効率が高く、しっかりとカール形成されている、
△:ウェーブ効率が低く、ゆるやかにカール形成されている、
×:ウェーブ効率が非常に低く、非常にゆるやかにカール形成されている。
【0039】
(2)カールのウェット・ドライ差のなさ
パーマネントウェーブ処理の最終水洗直後の毛髪が濡れている時のカール形状(処理直後のウェット時)と、パーマネントウェーブ処理の最終水洗後に乾燥させた後のカール形状(処理直後のドライ時)を比較し、「◎」、「○」、「△」、及び、「×」の4段階で評価した。これらの内、「◎」は特に優れているとの評価、「○」は十分な効果との評価であり、「△」及び「×」は不十分とする評価である。
◎:ウェットとドライの差がほとんどない、
○:ウェットとドライの差がややある、
△:ウェットとドライの差がある、
×:ウェットとドライの差がかなりある。
【0040】
(3)カールの弾力
パーマネントウェーブ処理の最終水洗後に乾燥させた毛束をほぐした時の跳ね返り感を評価し、「◎」、「○」、「△」、及び、「×」の4段階で評価した。これらの内、「◎」は特に優れているとの評価、「○」は十分な効果との評価であり、「△」及び「×」は不十分とする評価である。
◎:跳ね返りが非常に強く、非常に弾力がある、
○:跳ね返りが強く、弾力がある、
△:跳ね返りがやや弱く、弾力がやや少ない、
×:跳ね返りがほとんどなく、ほとんど弾力がない。
【0041】
(4)カールの持続性
パーマネントウェーブ処理の最終水洗後に乾燥させた毛髪を60℃の温水に20分間浸漬した。この処理によってパーマネントウェーブ処理から2週間程度経過したのと同程度の状態を引き起こすものとし(時間経過処理)、以下この状態を「時間経過後」とした。
【0042】
パーマネントウェーブ処理の最終水洗直後の毛髪が濡れている時のカール形状(処理直後のウェット時)と、時間経過処理後の濡れている時のカール形状(時間経過後のウェット時)を比較してカールの持続性を評価し、「◎」、「○」、「△」、及び、「×」の4段階で評価した。これらの内、「◎」は特に優れているとの評価、「○」は十分な効果との評価であり、「△」及び「×」は不十分とする評価である。
◎:パーマネントウェーブ処理直後と時間経過後の差がほとんどなく、持続性が非常に高い、
○:パーマネントウェーブ処理直後と時間経過後の差がややあるが、持続性が高い、
△:パーマネントウェーブ処理直後と時間経過後の差があり、持続性が低い、
×:パーマネントウェーブ処理直後と時間経過後の差がかなりあり、持続性が非常に低い。
【0043】
(5)やわらかさ
パーマネントウェーブ処理の最終水洗後に乾燥させた毛束をほぐした時の手触りのやわらかさを評価し、「◎」、「○」、「△」、及び、「×」の4段階で評価した。これらの内、「◎」は特に優れているとの評価、「○」は十分な効果との評価であり、「△」及び「×」は不十分とする評価である。
◎:非常にやわらかい、
○:やわらかい、
△:硬さがややある、
×:硬さがある。
【0044】
(6)指通り
パーマネントウェーブ処理の最終水洗後に乾燥させた毛束をほぐした時の指通りを評価し、「◎」、「○」、「△」、及び、「×」の4段階で評価した。これらの内、「◎」は特に優れているとの評価、「○」は十分な効果との評価であり、「△」及び「×」は不十分とする評価である。
◎:すべりが非常によい、
○:すべりがよい、
△:すべりがやや悪い、
×:すべりが悪い。
【0045】
(7)ツヤ
パーマネントウェーブ処理の最終水洗後に乾燥させた毛束をほぐした後にツヤの有無を評価し、「◎」、「○」、「△」、及び、「×」の4段階で評価した。これらの内、「◎」は特に優れているとの評価、「○」は十分な効果との評価であり、「△」及び「×」は不十分とする評価である。
◎:ツヤが非常にある、
○:ツヤがある、
△:ツヤがややない、
×:ツヤがない。
評価方法1についての効果確認の結果を表1及び表2に併せて記載した。
【0046】
表1及び表2より、本発明に係る毛髪処理剤による中間処理(毛髪酸化環境調整処理)によって、毛髪変形処理の効果が十分に得られ、かつ、良好な仕上がり感が得られること、その中でも、セスキ炭酸ナトリウム、アルギニン、炭酸水素ナトリウム、及び、炭酸ナトリウムを単独で用いた系、及び、炭酸水素ナトリウムと炭酸ナトリウムとを混合して用いた系で特に優れた効果が得られることが理解される。
【0047】
<評価方法2 酸化処理と同時での使用(酸化成分との併用)>
次に、酸化処理(シスチン結合の再結合処理)と同時に本発明の毛髪処理剤による処理(毛髪酸化環境調整処理)を実施する場合の各効果についても評価を行った。具体的には、酸化成分を配合した毛髪処理剤を調製し、それらについて各効果の評価を行った。
【0048】
パーマネントウェーブ処理は、以下の(a2)〜(i2)工程をこの順番に行った。
(a2)毛束を水で濡らす、
(b2)毛髪をロッドに巻く、
(c2)パーマネントウェーブ処理用第1剤塗布(還元処理)、
(d2)容器に入れて密閉し、20分間、室温で放置、
(e2)中間水洗、
(f2)毛髪処理剤(酸化成分配合)塗布(毛髪酸化環境調整処理+酸化処理)、
(g2)5分間、室温で放置((f2)工程→(g2)工程を2回繰り返す)、
(h2)ロッドアウト(ロッドの除去)、
(i2)水洗。
【0049】
上記(c2)でのパーマネントウェーブ処理用第1剤は表3に示された物を用い、(f2)で用いた毛髪処理剤(酸化成分配合)は表4及び表5に配合成分および配合濃度を示す(酸化成分としては臭素酸ナトリウムを用いた)。なお、毛髪処理剤(酸化成分配合)は、(g1)のパーマネントウェーブ処理用第2剤と同様の方法によって毛髪に塗布した。
(i2)の水洗後の毛髪について、上記<毛髪処理剤の効果確認>と同様に評価を行い、結果を表4及び表5に併せて記載した。
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】
【0052】
表4及び表5より、本発明に係る毛髪処理剤はパーマネントウェーブ処理用第2剤の酸化成分が配合された場合であっても(すなわち還元処理後の酸化処理(シスチン結合の再結合処理)と同時に使用した場合であっても)、毛髪変形処理の効果が十分に得られ、かつ、良好な仕上がり感が得られることが理解される。