【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の構成は、細長い形状(oblong shape)を有して、バッテリ電源ユニット(battery power supply unit)および少なくとも1つの回路基板(circuit board)を収容する空洞(cavity)を備え、かつ、自転車フレームのシートチューブ内に挿入可能なサイズを有している、自転車用オンボード装置において、ボトルケージ留め手段(bottle cage fastening means)と合致する少なくとも1つの留め手段を備えることを特徴としている自転車用オンボード装置である。
【0012】
事実、典型的な自転車フレームは、ボトルケージをシートチューブに沿って留めるための構造を具備している。前記装置はシートチューブ内に挿入可能なので、サドルを自転車から取り外す際に、オンボードシステムにおける他の電気装置、電子装置および/または電気機械装置との接続ケーブルの接続を外さなくて済む。また、前記自転車用オンボード装置は、インテグラルシートポストの自転車フレームにも適している。さらに、前記オンボード装置をシートポストに必ずしも引っ掛けなくてよいので、シートポストに特殊な留め手段を設けなくて済む。そのため、無数に存在する製造業者による全ての自転車フレームおよびシートポストに対して(つまり、複合材料製の、および/または非円形断面の、自転車フレームおよびシートポストに対しても)、即座に使用することができる。また、前記装置の重量が自転車フレームの最下点近くに位置するので、安定性の側面からみても有利である。
【0013】
一実施形態において、前記少なくとも1つの留め手段は、ボトルケージ用締結ねじの雄ねじと合致する雌ねじを有する1つの孔、好ましくは2つの孔を含む。このねじ付きの孔は、前記オンボード装置の取り付け状態において、前記フレームの対応するインサートと同軸に配置される。事実、典型的には、自転車フレームは、締結ねじが適正な螺合長さで螺合できるように当該フレームの内側に突出した、一対の雌ねじ付きインサートを有している。
【0014】
本明細書では説明を簡単にするために「インサート」という用語を、以後使用するが、本発明は、フレームと単一体(one piece)の補強部にも適用可能である。
【0015】
一実施形態において、前記孔のうちの少なくとも1つの孔の雌ねじは、対応するインサートの雌ねじと同一であり、かつ、好ましくは、前記装置の本体の他の部分に対して少なくとも1自由度の運動(at least one degree of freedom of movement)をする部品に形成されている。これにより、既にフレームのインサートに螺合したボトルケージ用締結ねじとの係合が容易になる。
【0016】
好ましくは、前記雌ねじを有する前記部品は、前記オンボード装置の滑らかな孔に収容されて予圧ばねによって長手方向に付勢されたブッシュである。
【0017】
あるいは、前記フレームのねじ付きインサートは、滑らかな孔を具備したインサートに置き換えられてもよく、当該滑らかな孔は、前記オンボード装置のみに螺合するボトルケージ用締結ねじを通すだけである。
【0018】
また、前記オンボード装置の雌ねじの直径およびこれに対応する締結ねじの直径を、前記フレームのインサートの内径よりも小さくしてよい。これにより、ボトルケージ用締結ねじは、前記フレームのねじ付きインサートに係合せずに通過し、前記オンボード装置に対してのみ螺合する。
【0019】
前述の実施形態において、好ましくは、前記オンボード装置は、前記フレームに効率よく固定されると同時にボトルケージも固定される。後でボトルケージが固定される場合には、ねじを1つだけ外し、それをボトルケージに螺合させた後、前記オンボード装置に再び螺合させてから、同様に2つ目のねじに取り掛かればよい。また、ボトルケージを取り外したい場合には、ねじを1つだけ外し、それをボトルケージから取り出した後、前記オンボード装置に再び螺合させてから、同様に2つ目のねじに取り掛かればよい。
【0020】
前記オンボード装置の取り付け過程とボトルケージの取り付け過程とを完全に別々に行う実施形態では、雌雄ねじ(externally and internally threaded element)がその雄ねじを介して前記フレームのインサートおよび前記オンボード装置と螺合する。これにより、残りの雌ねじが、これに対応する締結ねじでボトルケージを留めるのに利用される。
【0021】
前記オンボード装置の取り付け過程とボトルケージの取り付け過程とを別々に行う他の実施形態では、スタッドボルトを、前記フレームのインサートおよび前記オンボード装置に螺合させ、さらに、ボトルケージを、ナットを介して当該スタッドボルトに固定させる。
【0022】
他の実施形態において、前記少なくとも1つの留め手段は、自己ねじ切りねじ(self-threading screw)によってねじ山が作られ且つそれを保持可能な材料を具備している。
【0023】
一実施形態において、前記オンボード装置は、ボトルケージを留めるための前記自転車フレームの少なくとも1つのインサートの一部を収容するように寸法決めされた、主要な長手方向に沿って延びる溝を有しており、当該溝の底部に前記少なくとも1つの留め手段が設けられている。
【0024】
有利なことに、前記溝により、前記フレームの前記シートチューブの主要な長手軸心周りの回転および当該長手軸心に対する傾動が規制されるので、応力および騒音の発生を避けることができる。また、上記のような溝を設ける構成では、前記オンボード装置の寸法を最大化することができるので、それに伴って利用可能な内部空間を最大化できる。事実、前記オンボード装置は、どこの部分でも前記フレームの前記シートチューブの内寸法に実質上対応する横寸法を有することができる。また、前記オンボード装置は、その長手方向において、ボトムブラケットアセンブリのハウジングボックスから、または当該ハウジングボックスの少し上方から、前記シートポストに可能な限り挿入した際の深さにまで広げることが可能になる。
【0025】
好ましくは、前記溝は、前記装置の取り付け状態において当該装置の最下方に位置する端部から延びており、かつ、当該溝の長手方向の上方端部において当接面(abutment surface)を有する。これにより、前記オンボード装置は、前記フレームの上方のインサートに引っ掛かって懸架状態を維持することができるので、ボトムブラケットアセンブリのシャフトとの干渉を確実に防ぐことができる。
【0026】
一実施形態において、前記装置は、その少なくとも1つの長手方向端部に、シートポストまたは前記シートチューブに懸架状態で留まるための代替的な留め手段を備える。
【0027】
これにより、前記オンボード装置は、シートポストから引っ掛けられて固定されるか、シートポストに挿入されてシートチューブに引っ掛けられるか、またはシートチューブに挿入されて前述のようにボトルケージで固定したりすることが可能になる。
【0028】
前記代替的な留め手段は、前記シートポストの内壁または前記シートチューブの内壁に対して径方向の圧力で留められるエクスパンダーを具備することができる。
【0029】
前記エクスパンダーは、前記装置の他の部分に対してジョイントを介して取外し自在に留め可能な部品で構成されることができる。前記ジョイントは、例えば、蟻継手、バヨネット継手、スナップ継手などである。この実施形態は、前記エクスパンダーの調節ねじにより容易に達成される。
【0030】
好ましくは、前記装置は、プラスチック材料からなる中空の細長い形状の本体を備える。
【0031】
前記溝と、あらゆる留め手段および/または代替的な留め手段とは、前記中空の細長い形状の本体(例えば、プラスチック材料からなる)と着脱自在に連結可能な、金属プレートで構成されたものであってもよい。これにより、強度を向上させることができ、および/または中空の細長い形状の単一の本体および一連のプレートをそれぞれ異なる寸法に適合させることができ、および/または当該単一の本体および一連のプレートをそれぞれボトルケージ留めインサートの異なる中心間距離に合わせることができる。
【0032】
あるいは、前記内部空間の寸法を犠牲にして、異なる角度位置に複数の留め手段、例えば、複数対の孔を設けてもよい。
【0033】
前記オンボード装置には、さらに、取り付け支援手段を一時的に留めるための着座部が設けられていてもよい。
【0034】
一実施形態において、前記着座部は、前記オンボード装置の主要な長手方向に略垂直に延びる貫通孔である。さらに好ましくは、前記貫通孔は、前記フレームの下方のインサートに対応する雌ねじを具備した孔である。この実施形態では、スチールケーブルのような半剛性のケーブルの第1の端部が、前記フレームの前記下方のインサートの孔に通され(threaded into the hole)、前記シートチューブの上端部から取り出され、前記貫通孔に通され、前記シートチューブに再び通され(rethreaded into the tube)、ボトムブラケットアセンブリのハウジングボックスから取り出される。前記ケーブルの2つの端部を前記フレームから遠ざかる方向に引っ張ることにより、前記オンボード装置は、前記フレームの前記インサートと同軸の雌ねじ付き孔に対して適正に位置決めされる。
【0035】
他の実施形態において、前記着座部は、長手方向の上方端面に形成されており、かつ、剛性を有するロッドを一時的に留めるための着座部(例えば、バヨネット着座部または雌ねじ付き孔など)で構成されており、前記剛性を有するロッドは、前記オンボード装置が適正に位置決めされた際に一部が前記シートチューブから突出する長さを有する。
【0036】
好ましくは、前記細長い形状の中空本体は、密封空洞(tight cavity)を形成している。
【0037】
好ましくは、前記少なくとも1つの回路基板は、給電回路、マイクロプロセッサおよびメモリを有する。
【0038】
好ましくは、前記バッテリ電源ユニットは、円筒形状をしている。
【0039】
好ましくは、前記少なくとも1つの回路基板は、少なくとも一部が前記バッテリ電源ユニットを取り囲んでいる。
【0040】
好ましくは、前記マイクロプロセッサは、少なくとも1つのディレイラを管理するようにプログラムされている。
【0041】
好ましくは、前記オンボード装置は、複数の給電用、信号用および/またはデータ伝送用のケーブルを備えており、より好ましくは、前記オンボード装置には、オンボード電子システムにおける少なくとも1つの他のオンボード装置と接続するためのエンドコネクタが設けられている。
【0042】
好ましくは、各ケーブルは、前記オンボード装置の長手方向端面から突出している。
【0043】
変形例として、あるいは、上記の構成に加えて、前記オンボード装置の前記中空の細長い形状の本体は、少なくとも1本のケーブルを前記オンボード装置と前記自転車フレームとの間の隙間に通すための、当該本体の主要な長手軸心に略沿って延びる少なくとも1つの第2の溝を備えていてもよい。
【0044】
前記フレームのインサートを収容する溝を設けることには、前述したように一連の利点がある。また、出願人は、そのような溝を設けることにより、ボトルケージを留めるねじまたはその他の手段がなくとも、例えば、当該溝に前記インサートのうちの少なくとも一方を若干無理やり押し込むように挿入することにより、および/または前記オンボード装置周りに展伸材(expanded material)を設けることにより、前記シートチューブ内における前記オンボード装置の回転を十分に制限できることを見出した。
【0045】
本発明の他の構成は、細長い形状を有して、バッテリ電源ユニットおよび少なくとも1つの回路基板を収容する空洞を備え、かつ、自転車フレームのシートチューブ内に挿入可能なサイズを有している、自転車用オンボード装置において、ボトルケージを留めるための自転車フレームの少なくとも1つのインサートの一部を収容するように寸法決めされた、当該自転車用オンボード装置の主要な長手方向に沿って延びる溝を有することを特徴としている。
【0046】
本発明のさらなる他の構成は、自転車用オンボード装置の搭載方法であって、前記装置を、自転車フレームのシートチューブ内に挿入する工程と、
前記装置を、ボトルケージ留め手段と合致する少なくとも1つの留め手段によって前記フレームに留める工程と、を含む。
【0047】
好ましくは、前記方法は、さらに、前記装置を、ボトルケージを留めるための前記自転車フレームの少なくとも1つの孔付きインサートに対して位置決めする工程と、前記装置を、ボトルケージを留める少なくとも1つの締結ねじを前記少なくとも1つの孔付きインサートに通すことによって固定する工程と、を含む。
【0048】
一実施形態において、前記装置を位置決めする前記工程は、当該オンボード装置に、当該オンボード装置の主要な長手方向に略垂直に延びる貫通孔を設ける工程と、半剛性のケーブルの第1の端部を前記自転車フレームの下方のインサートの孔に通す工程と、前記第1の端部を前記シートチューブの上端部から取り出す工程と、前記第1の端部を前記貫通孔に通す工程と、前記第1の端部を前記シートチューブに再び通す工程と、前記第1の端部をボトムブラケットアセンブリのハウジングボックスから取り出す工程と、前記ケーブルの2つの端部を前記フレームから遠ざかる方向に引っ張る工程と、を有する。
【0049】
一実施形態において、前記装置を位置決めする前記工程は、剛性を有するロッドを当該オンボード装置の上方端部に一時的に留める工程を含み、前記剛性を有するロッドは、当該オンボード装置が適正に位置決めされた際に一部が前記シートチューブから突出する長さを有する。
【0050】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照しながら行う、好ましい実施形態についての以下の説明から明らかになる。