特許第5977091号(P5977091)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977091
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】冷却器
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20160817BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   H01L23/36 Z
   H05K7/20 B
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-132509(P2012-132509)
(22)【出願日】2012年6月12日
(65)【公開番号】特開2013-258219(P2013-258219A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】596170479
【氏名又は名称】株式会社最上インクス
(74)【代理人】
【識別番号】100080724
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 久喜
(72)【発明者】
【氏名】中谷 公治
(72)【発明者】
【氏名】谷崎 巧
(72)【発明者】
【氏名】福田 真弘
(72)【発明者】
【氏名】上田 真己
(72)【発明者】
【氏名】村上 達也
(72)【発明者】
【氏名】藤島 誠一
【審査官】 豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−163622(JP,A)
【文献】 特開2009−283672(JP,A)
【文献】 実開昭61−20057(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0114301(US,A1)
【文献】 登録実用新案第3148593(JP,U)
【文献】 特開2009−24933(JP,A)
【文献】 特開2008−170060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L23/29
23/34 −23/36
23/373−23/427
23/44
23/467−23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同形である冷却板複数枚を積層一体化してなる冷却器であって、該冷却板を、該冷却板上の定められた一点を中心に一定角度ずつ回転させながら積層固定することで、一の冷却板とこれに隣接する冷却板とに重複部分と非重複部分を形成させたものであることを特徴とする冷却器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に電子装置のプリント配線板等に実装される半導体部品などを冷却するための冷却器の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子装置などに使用する半導体部品においては、近年その集積度が飛躍的に向上し、また一方では装置のコンパクト化や軽量化、更には低コスト化が以前にも増して厳しく要求されてきている。
こうした状況の中で、比較的低消費電力型ヒートシンクの分野では、押出し成型タイプのヒートシンクが現在主流となっているが、引き抜き型のものも多く、近時は薄板をコルゲート状に繰り返し折り曲げ形成しベースプレートと接合させたいわゆるコルゲートフィンも多く使われるようになってきている。また、切削加工しか製造方法がないが故にコスト高であることから敬遠されているが、丸棒金属材料から、薄い円盤を何層にも切り出した、いわゆるディスク型フィンも採用されている。いずれのものも放熱の原理は、フィンを外気に接触させることによるものであるため、限られたスペースの中で、大きな表面積のものをどのような形態で配置するのかが基本テーマであると言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3158983号公報
【特許文献2】特開2009−283672公報
【特許文献3】特開2003−031743公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
即ち、元来が熱に対して脆弱である電子部品でありながら自身が発熱体であるという現実、そして、これを冷却するに当たって許容される設置位置やその容積が、加速するコンパクト化や軽量化の要求に応じて次第に制限されてきているという環境から、旧来構造が淘汰され、時代の要求に適うと謳う構造が提案され、その一部が実施され、やがてそれも淘汰される、という循環にあるのが現状である。
【0005】
例えば主流である押出し成型タイプのヒートシンクの場合、その製造方法に由来し基本的に一種類の断面が連続したもの(これに切削加工を付加することで、一部を切除したものがある)となるため、フィンの形状に沿った一定方向に設置したときだけしか効率の良い放熱ができない、一定方向に設置される装置ではその放熱特性が有効であるが、近年の小形通信端末装置や家電製品、可搬型医療機器等においては、ユーザー設置条件の多様化に伴いその設置方向をメーカー側が制約することが非常に困難になってきている。加えてどうしても軽量化が難しい、という課題があるため次世代を担う構造足り得ない。
また、薄板をコルゲート状に繰り返し折り曲げ形成しベースプレートと接合させたコルゲートフィンや、コルゲートの一部をオフセット曲げして放熱性を高めたオフセットフィンなどが開発された。これらは軽量化は果たすものとなったが、前記押出し型フィンなどと同様、一定方向に対して放熱性が高まるような指向性を有しており採用し得る箇所が制限される。
更に、外気と接触する部分の表面積を大きくしてゆくという意味においては、薄い放熱板が僅かな隙間を以て多数積層されているという構造は非常に好適であるが、この隙間距離を小さくしてゆくと、隙間内の空気が循環しにくくなり、かえって十分な冷却効果が得られないということもあり得る。
【0006】
そのほか種々の構造(例えばこの指向性が顕著でないピン型フィン)が市場に投入されているが、設置条件を制限してしまう放熱指向性、熱放出に十分な空間の確保、等々の全ての課題が解消された理想的な構造が全く存在せず、提案すらなされていないというのが現状であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者らは上記諸点に鑑み鋭意研究の結果、遂に本発明を完成させたものであり、その特徴とするところは、同形である冷却板複数枚を積層一体化してなる冷却器であって、該冷却板を、該冷却板上の定められた一点を中心に一定角度ずつ回転させながら積層固定することで、一の冷却板とこれに隣接する冷却板とに重複部分と非重複部分を形成させた点にある。
即ち本発明は、薄い放熱板を僅かな隙間を以て多数積層させるという従来構造が持っていた種々の利点は残しながら、隙間内の空気が循環しにくくなるという欠点は解消するものであると言える。
【0008】
ここで「冷却板」は、本発明冷却器の構成単位であってこれが複数枚積層され製品となる。積層される冷却板は全て同形でありこれを、定められた一点を中心に一定角度ずつ回転させながら積層してゆく。この冷却板は、積層に際しては平板であっても良いが、放熱効率を考慮してその一部を折曲或いは湾曲させても良い。折曲或いは湾曲という変形をさせる場合、全ての冷却板を同形状で変形しても良いが、例えば積層最上段のみを湾曲させる、全ての冷却板が折曲部分を有しているが上段にゆくに従ってその傾斜が直角に近づくよう傾斜角度が変わる、といったものであっても、変形前の形状が同じであれば、「同形」の範疇に属するものとする。
【0009】
この回転の中心は、冷却板上に設けるものとする。回転させると、隣接する冷却板と重複する部分が必ず存在することになる。更に本発明においては重複しない部分(非重複部分)の存在を必須とする。即ち本発明は、冷却板の全体形状について、或いは回転の中心点について特に限定しないが、重複部分と非重複部分が共に存在している必要はある。従って例えば、冷却板が正三角形であり、この正三角形の中心を回転の中心としこれを120度ずつ回転させながら積層するといったもの、或いは円をその中心を軸に回転させたもの、等々は非重複部分が存在しないため本発明の権利範囲から除外する。なお、回転角度(隣接する冷却板とのズレの大きさ)に関しては何ら限定しない。45度、60度、90度、等々、360を整数で除した大きさであると、何枚か積層した状態で元の位置に戻ることになり美観上、或いは放熱効果面で多少有利であるが、何枚か積層した状態で元の位置に戻るようにする特段の必要性はない。
【0010】
積層して重複する部分は、冷却器として主に集熱部として機能し、重複しない部分は放熱部として機能する。冷却機能全般で言うと、集熱能力・放熱能力のいずれも大きいものが当然ながら好ましい。
集熱能力に関しては、発熱体との密着面積を大きくする、重複部分の体積を大きくする、積層の際に冷却板同士の密着性を上げる、といったことで対応できる。
放熱能力に関しては、放熱部自体を大きくする、放熱部先端側に向けてその厚みを減少させてゆく、先端にジグザグの切り込みを入れる等して表面積を拡大する、等々の方策がある。
【0011】
冷却板の材質は、本発明者が試作実験した範囲では、アルミニウム、銅、チタン、が好適であったが冷却器の目的に適うものであれば適宜選択して良く本発明において限定はしない。
冷却板の厚さは、0.15mm乃至1.50mm程度が現実的であるが、上述したように一定厚としない場合もあり得る。そこで、厚さに関しても本発明において限定はしない。
【0012】
冷却板の連結方法についても特に限定しない。本発明者が試作実験した範囲で言うと、ロウ付け、或いはカシメ加工によって連結するのが好適であった。特に、バーリングカシメ法にて一体化するという連結方法は、熱伝導性を損なわない確実な一体化、作業能率、ハトメやリベット等の別部品を使用しないことによる製造コストの低減、等々を総合的に勘案した結果最適であると思われた。
【0013】
バーリングカシメ法は元々、「孔のあいた部品」の孔に、「バーリング処理のなされた部品」の円筒状突出部を通した後加圧変形させて接合するという方法である。
これを本発明に適用する場合、冷却板には上記「孔」と「突出部」の双方を設けておく必要がある。そして、仮に冷却板を回転させずにそのまま積層すると、「孔」同士、「突出部」同士が対向することになるため、「孔」と「突出部」の配置が逆であるものと合わせ、二種類の冷却板必要となる。しかし本発明において各冷却板は、一定角度ずつ回転させて積層することを必須要件としているので、「孔」と「突出部」の設置位置を、この角度に合致するよう設計することで冷却板は一種類で済み好都合である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る冷却器は、同形である冷却板複数枚を積層一体化してなる冷却器であって、該冷却板を、該冷却板上の定められた一点を中心に一定角度ずつ回転させながら積層固定することで、一の冷却板とこれに隣接する冷却板とに重複部分と非重複部分を形成させたものであることを特徴とするものであり、以下述べる如き効果を有する極めて高度な発明である。
(1) 切削して放熱フィンを形成させるという方法ではなく、複数の同形冷却板を積層固定して冷却器となすものであるので、製造コストが小さい。
(2) 放熱効率を向上させるために、放熱部を折曲させることが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る冷却器の一例を概略的に示す概略斜視図である。
図2図1で示した冷却器の構成単位である冷却板を示す概略平面図である。
図3】(a)(b)は、図2で示した冷却板を積層しようとしている状態を示すものであり、同図(a)は斜視図、同図(b)は概略断面図である。
図4】(a)乃至(d)は、冷却器の形状についての他の例を示すいずれも概略平面図である。
図5】(a)(b)は、冷却板の形状についての更に他の例を示すいずれも概略斜視図である。
図6】(a)は、冷却板の形状についての更に他の例を示す平面図であり、(b)はそれを積層して成る冷却器を示す概略斜視図である。
図7】(a)乃至(c)は、冷却器の形状についての更に他の例を示すものであり、同図(a)(b)は一部分解概略斜視図、同図(c)は概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明に係る冷却器1(以下「本発明冷却器1」という)の一例を示すものである。図より明らかなように本例の本発明冷却器1は、平面的に観察すると、正六角形の各辺に、該各辺を一辺とする正方形(本例の場合正確には正方形ではなく最外辺は円弧である)を延出させた形状のものである。
本発明冷却器1はまた、冷却板2を複数枚(図示した例では9枚)積層してなるものであり、各冷却板2は図2に示す形状のものである。本例の冷却板2は、正方形部分を二つ、点対称位置に配置したという形状のものであるが、一つだけ設けても良いし、三つを等間隔(120度間隔)で設けるようにしても良い(図示略)。
なお本例の冷却板2には、厚さ約1.0mmのアルミニウム板を用いたので、本発明冷却器1の厚さは、約9.0mmとなっている。
【0017】
本例の冷却板2は、図2に示すようにその正六角形部分内に二つの円孔21と、バーリング加工による二つの円筒状突出22が設けられている。そしてこれに次の冷却板2を積層してゆくのであるが、その際60度だけずれる位置関係となるようにする。これによって正方形状部分は、隣の辺に移るような形となる。即ち、円孔21と円筒状突出22とは中心角60度ずれた位置関係にあると言える。
また本例では、円孔21を突出した円筒状突出22を加圧変形させる加工が加えられるので、この変形が冷却板2の実質厚さを変更することがないよう円孔21には図3に示すような皿穴加工を施している。これによって冷却板2同士の密着性が保持される。
なお、冷却板同士の連結方法は、これ以外にも種々あり状況が要求するものを適宜採用して良い。また、以下の図面においては、円孔21、円筒状突出22、その他連結のための構造部分についての描出を省略するものとする。
【0018】
このように、隣接する冷却板を一定角度(60度)ずつずらして積層すると、正六角形部分は相互に密着して重複部分Aとなり、正方形部分は非重複部分Bとなる。これは、三枚目以降を積層する場合も同様であり、九枚積層した段階で、非重複部分Bの厚さはどこも1mmであるが、重複部分Aの厚さは9mmというものになる。これを冷却の対象である発熱電子部品に設置すると、重複部分Aは集熱部として、非重複部分Bは放熱部として機能することになる。
【実施例2】
【0019】
前例の冷却板2は、正六角形の二辺に各辺を一辺とする正方形を延出させた形状のものであった。しかし本発明はこれに限定するものではない。発熱体の性状、設置空間の制約、等々によって、正方形ではなく長方形にしたり、或いは図4(a)乃至(d)の如き形状のものとしても良い。
【0020】
同図(a)(b)は、円弧上から二本の接線を延ばし、この円と同心で径の大きい円とこの接線で形成される図形の例であり、同図(a)の場合には二接線はほぼ平行(交差角度が小さい)、(b)の場合には交差角度が大きい例である。どちらも積層後の形状は、平面的に見て該径の大きい円に収まっておりデザイン的に好ましいものとなっているが、集熱・放熱の形態に関しては差異がある。またいずれも、60度ずつずらして積層するよう設計されているが、回転させる角度を大きくすれば(例えば90度)非重複部分Bの小さい冷却器になり、小さくすれば(例えば30度)非重複部分Bの大きい冷却器になる。
【0021】
同図(c)は、冷却板2の形状が長方形である例である。これを90度ずつ回転させて冷却器1とするものである。本例では長方形の辺長さの比を2:1とし、重複部分A、非重複部分Bとも正方形となっている例である。
同じ長方形でも、回転の中心位置を変えると冷却器の全体形状は違ってくる。その一例を同図(d)に示す。
【実施例3】
【0022】
放熱能力を向上させるためには、上述したように積層したときに非重複部分Bの面積が大きくなるように設計するのが基本であるが、これ以外に例えば図5(a)(b)のような方法を用いても良い。
同図(a)は非重複部分Bの先端側をジグザグ状に切欠した例、(b)は非重複部分Bの厚さを先端側に向けて薄くした例、を示すものである。いずれの場合も、放熱能力は向上する。
【実施例4】
【0023】
以上冷却板2が平板(厳密には図5(b)は平板ではないが)の例を示してきた。冷却板2が放熱するということは、接触する空気に熱エネルギーを伝達することであり、その空気が暖められていない空気と連続的に入れ替わることで放熱が図れるということになる。
一方、暖められた空気は上方に移動しようとする。
従って、放熱部分を折曲或いは湾曲させ、空気の上方への移動が案内されるようにすると、空気の循環は円滑になり放熱効果が増大する。
【0024】
図6(a)(b)はその一例を示すものである。冷却板2の全体形状は、図2で示したものと同形であるが、図2(a)で示した正六角形部分と正方形部分との分画線を稜線として折り曲げられている点で構造が異なっている。そしてこれを図3で示した手法で積層固定してゆく。すると、図2(b)のような冷却器1となる。
【0025】
図7(a)は、稜線が一本ではなく、折曲によってV字形部分が形成された例を示す。暖められた空気が上昇散逸しやすくなることで更なる放熱効果の向上が期待される。
図7(b)は、集熱部の平面形状を円形とした例であり、これに起因することになるが非重複部分を湾曲させた例である。放熱部分の大きさ・形状、湾曲の程度については設計上の要求に従って適宜調整すれば良く、図示した形状に限られるものではない。
図7(c)は、冷却板2の形状は図1或いは図6と同形であり、積層枚数も同じく九枚であるが、折曲稜線位置並びに傾斜角度が3種である例を示すものである。これを、非重複部分Bの傾斜は下層三枚では緩く(水平に近く)、上層三枚ではきつく(直角に近く)、中層三枚はその間の傾斜となるよう折曲した例である。
【符号の説明】
【0026】
1 本発明に係る冷却器
2 冷却板
21 円孔
22 円筒状突出
A 重複部分
B 非重複部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7