特許第5977095号(P5977095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977095
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】サッシ
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/32 20060101AFI20160817BHJP
   E06B 7/14 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   E06B1/32
   E06B7/14
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-140241(P2012-140241)
(22)【出願日】2012年6月21日
(65)【公開番号】特開2014-5609(P2014-5609A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年1月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090206
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 信道
(74)【代理人】
【識別番号】100168228
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 達則
(72)【発明者】
【氏名】七山 貴志
(72)【発明者】
【氏名】増山 新作
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−113194(JP,A)
【文献】 特開2007−321351(JP,A)
【文献】 特開2001−012151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00−1/70
E06B 7/00−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下枠本体と、下枠本体の上面に取り付けた下枠補助材とを備え、一の下枠補助材は、上側面部と、レールと、ホロー部と、一及び他の壁面部を一体に有すると共に、排水孔を有しており、上側面部は、上面が略フラットに形成してあり、レールは、障子の戸車が走行するものであって、上側面部から上向きに突出しており、ホロー部は、上側面部の下側に形成してあり、一の壁面部は、レールの下側に形成してあって、ホロー部の一部を構成し、他の壁面部は、一の壁面部と間隔をおいて配置してホロー部の一部を構成するものであり、排水孔は、上側面部のレールの室内側に形成してあって、排水孔から浸入した水がホロー部を経由して室外側へ排水されるものであることを特徴とするサッシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下枠の上面をフラットに形成したサッシに関する。
【背景技術】
【0002】
下枠の上面をフラットに形成したバリアフリータイプのサッシにおいては、下枠が、下枠本体と、その上側に取り付けた下枠補助材からなるものが一般的である。そして従来、特許文献1に示すように、下枠補助材の上面に、障子の戸車が走行するレールが溝状に形成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−227550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような形状にした場合、レールの内部にゴミなどがたまり、その上を戸車が走行するため、レールに傷が付くという問題があった。また、このように下枠の上面をフラットにする場合、上面に大きな勾配を設けることができないので、水の流路を形成することが難しく、特に室内側で生じた結露水などを室外側に排水するための流路をどのように確保するかが問題であった。
【0005】
本発明は、上記事情を鑑みたものであり、レールにゴミがたまることがなく、かつレールの室内側に生じた水を排水可能な下枠を備えるサッシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下枠本体と、下枠本体の上面に取り付けた下枠補助材とを備え、一の下枠補助材は、上側面部と、レールと、ホロー部と、一及び他の壁面部を一体に有すると共に、排水孔を有しており、上側面部は、上面が略フラットに形成してあり、レールは、障子の戸車が走行するものであって、上側面部から上向きに突出しており、ホロー部は、上側面部の下側に形成してあり、一の壁面部は、レールの下側に形成してあって、ホロー部の一部を構成し、他の壁面部は、一の壁面部と間隔をおいて配置してホロー部の一部を構成するものであり、排水孔は、上側面部のレールの室内側に形成してあって、排水孔から浸入した水がホロー部を経由して室外側へ排水されるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、レールを上向きに突出する形状としたので、ゴミがたまることがない。そして、レールの室内側に生じた水を、ホロー部を経由して室外側へ排水できる。また、レールが受ける障子の荷重は、レールの下側の壁面部及びこの壁面部が構成するホロー部により、安定して支持することができる。そして、このようにホロー部が排水経路としての機能と補強構造としての機能を併せ持つことにより、下枠の構造が単純なものとなり、コンパクトに形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第一実施形態の下枠部分の縦断面図である。
図2】第一実施形態の下枠本体を示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
図3】第一実施形態の下枠補助材を示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は下面図、(d)は側面図である。
図4】(a)は第一実施形態の平面図であり、(b)は排水経路を示す平面図、(c)は排水経路を示す縦断面図である。
図5】第一実施形態の左側端部部品を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図6】第一実施形態の右側端部部品を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図7】第二実施形態の下枠部分の縦断面図である。
図8】第三実施形態の下枠部分の縦断面図である。
図9】第四実施形態の下枠部分の縦断面図である。
図10】第五実施形態の下枠部分の縦断面図である。
図11】第六実施形態の下枠部分の縦断面図である。
図12】第七実施形態の下枠部分の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下において左右とは、図4(a)における左右(サッシを室外側から見たときの左右)を示すものとする。このサッシの第一実施形態は、上枠と、下枠10と、左右の縦枠20とを四周枠組みした枠体に、二枚の障子(外障子4aと内障子4b)を引違いに納めた引違い窓を構成する。これらの障子を閉鎖した際、外障子4aは右側、内障子4bは左側に位置する。そして、下枠10は、左右の縦枠20と枠組みした下枠本体1と、下枠本体1の上面に取り付けた下枠補助材2とを備えている。下枠補助材2の上面は略フラットに形成されており、つまずきなどを防いだバリアフリータイプのものとなっている。以下、下枠10の構成について詳述する。なお、後記のとおり、サッシの右側部分(外障子4aが位置する側)と左側部分(内障子4bが位置する側)とで排水孔の有無が異なるが、図1はサッシの右側部分における断面を示したものである。ただし、本来サッシの左側に位置する内障子4bや、本来左右方向位置が異なる各排水孔25a〜25eのすべてを、一つの図面に模式的に示してある。
【0010】
下枠本体1は、アルミ形材からなるものであり、図1及び図2に示すように、本体上側面部11と、本体ホロー部12と、起立片13と、網戸レール14とを備える。本体上側面部11は、室内外に延び、室外側に向けて緩やかに下方に傾斜している。そして、本体ホロー部12は、本体上側面部11の下側に形成した断面略矩形の空隙である。その室外側端は本体上側面部11の室外側端に一致し、室内側端は本体上側面部11の室内外中央部に位置しており、本体上側面部11もその一部(上側面)を構成する。また、起立片13は、本体上側面部11の室内側端から垂直上方に延びている。さらに、網戸レール14は、本体ホロー部12の室外側面に形成してあり、断面略L字形である。そして、図2に示すように、本体ホロー部12の上側面(本体上側面部11)には、本体上面排水孔15を形成してあり、本体ホロー部12の室外側面には、本体正面排水孔16を形成してある。本体上面排水孔15と本体正面排水孔16は、何れも略矩形の貫通孔であって、それぞれ左右方向に複数個形成してある。なお、本体正面排水孔16には開閉弁(図示省略)を取り付けてあり、本体ホロー部12及びそれに連通する空隙を室内圧に維持して、効率的に排水できるようにしてある。
【0011】
次に、下枠補助材2は、樹脂からなるものである。図1及び図3に示すように、上面には、室外側の外上側面部21aと、室内側の内上側面部21bが形成されており、外上側面部21aの室外側には外溝26aが、外上側面部21aと内上側面部21bの間には内溝26bが形成されている。外上側面部21aは、室内外に延び、室外側部分は略水平で、室内側部分は室内側に向けて緩やかに下方に傾斜している。一方、内上側面部21bは、室内外に伸び、室外側部分は略水平で、室内側部分は室外側に向けて緩やかに下方に傾斜している。そして、外溝26a及び内溝26bは、何れも上向きに開口する断面略U字形の溝である。また、外上側面部21aの室外側の水平部分と、内上側面部21bの室外側の水平部分には、それぞれ外レール22aと内レール22bが形成してある。外レール22a及び内レール22bは、何れも上向きに突出するものであって、曲線的に微小隆起した形状である。このように、外上側面部21a及び内上側面部21bが水平面又は緩やかな傾斜面となっており、また外レール22a及び内レール22bは微小隆起した形状であるから、下枠補助材2(外上側面部21a及び内上側面部21b)の上面は、略フラットであるといえる。
【0012】
また、内レール22bの下側には、略垂直向きの壁面部24を形成してある。壁面部24は、下枠補助材2の内上側面部21bから、下枠本体1の本体上側面部11まで延びるものである。さらに、内上側面部21bを上側面、壁面部24を室外側面として、略矩形の内ホロー部23bを形成してある。内ホロー部23bの下側面は、下枠本体1の本体上側面部11に当接しており、内ホロー部23bの室内側面は、下枠本体1の起立片13に近接して対向している。また、外レール22aの下側には、外ホロー部23aを形成してある。外ホロー部23aは、外上側面部21aの水平部分を上側面として、室外側部分は外溝26aの下側に回り込むように形成してあり、下側面は下枠本体1の本体上側面部11に当接しており、室外側面は下枠補助材2の室外側端に位置している。なお、外ホロー部23aと内ホロー部23bの間には、外上側面部21a及び内溝26bを上側面、下枠本体1の本体上側面部11を下側面として、中間空隙部23cが形成される。下枠本体1の本体上面排水孔15は、中間空隙部23cに連通している。そして、内レール22bの室内側、すなわち内上側面部21bの水平部分には、上面排水孔25aが形成してあり、上面排水孔25aは内ホロー部23bに連通している。また、内ホロー部23bの室外側下端部には、下部排水孔25bが形成してあり、中間空隙部23cに連通している。よって、内上側面部21bから、上面排水孔25a、内ホロー部23b、下部排水孔25b、中間空隙部23c、本体上面排水孔15、本体ホロー部12及び本体正面排水孔16を経由して室外側に連通する排水経路が形成される。さらに、外溝26aの底部には外溝排水孔25cが形成してあり、外ホロー部23aに連通している。また、内溝26bの底部には内溝排水孔25dが形成してあり、中間空隙部23cに連通している。さらに、外ホロー部23aの室外側面には正面排水孔25eが形成してあり、室外側と連通している。これらの排水孔は、何れも左右方向に複数個形成してある。ただし、内溝排水孔25dは、下枠補助材2の中央より右側部分のみに形成してある。そして、内溝26bの中央には閉止部材28を挿入してあって、内溝26bを左右に遮断している(図4(b))。
【0013】
そして、外レール22a及び内レール22bの上を、それぞれ外障子4aと内障子4bの戸車41a,41bが走行する。なお、外障子4aと内障子4bは、何れも室外側下端部から下方に延びる垂下片42a,42bを有しており、外障子4aの垂下片42aが外溝26aに挿入されており、内障子4bの垂下片42bが内溝26bに挿入されている。そして、外溝26a内の室内側面及び内溝26b内の室外側面と室内側面にはタイト材27が取り付けてあって、各タイト材27は垂下片42a,42bに当接しており、室内外を遮断して気密性・水密性を確保している。
【0014】
さらに、図4(a)に示すように、下枠補助材2の左右両端と、左右の縦枠20の間には、それぞれ端部部品(左側端部部品3L、右側端部部品3R)を設けてある。図5及び図6に示すように、何れの端部部品も、ブロック状のもので、外ホロー部23a、内ホロー部23b及び中間空隙部23cに挿入して係合する突起31a,31b,31cを有している。また、各端部部品は、縦枠20の内周側面に当接している。そして、左側端部部品3Lは、その右側面によって、外ホロー部23a、中間空隙部23c及び外溝26aの左端を塞いでいる。また、室内側には内ホロー部23bと連通する内ホロー部連通部32Lを形成してあり、内ホロー部連通部32Lは、略U字形状で上側に開口している。さらに、室内外中央部には、内溝26bに連通する内溝連通部33Lを形成してあり、内溝連通部33Lは、上側、左側及び室外側に開口している。ただし、内溝連通部33Lの左側には縦枠20の内周側面が位置しているので、内溝連通部33Lは内溝26bから室外側へ至る排水経路となっている。一方、右側端部部品3Rは、その左側面によって、外ホロー部23a及び中間空隙部23cの右端を塞いでいる。また、室内側には、内ホロー部23bと連通する内ホロー部連通部32Rを形成してあり、内ホロー部連通部32Rは、略U字形状で上側に開口している。さらに、室内外中央部には、内溝26bに連通する内溝連通部33Rを形成してあり、内溝連通部33Rは、略U字形状で上側に開口している。また、室外側には、外溝26aと連通する外溝連通部34Rを形成してあり、外溝連通部34Rは上側、右側及び室外側に開口している。ただし、外溝連通部34Rの右側には縦枠20の内周側面が位置しているので、外溝連通部34Rは外溝26aから室外側へ至る排水経路となっている。
【0015】
次に、図4に基づき、この下枠10の上面に生じた水(結露水や、室外側から吹き込む雨水など)の排水経路について説明する。まず、内レール22bの室内側に生じた水は、内上側面部21bの傾斜に沿って室外側へ流れ、内レール22bの室内側に形成した上面排水孔25aへと流れ落ちる。そして水は、上記の排水経路、すなわち、上面排水孔25aから、内ホロー部23b、下部排水孔25b、中間空隙部23c、本体上面排水孔15、本体ホロー部12及び本体正面排水孔16を経由して室外側に排水される(A矢印)。また、外レール22aと内レール22bの間に生じた水は、サッシの左右で排水経路が異なる。サッシの右側、すなわち外障子4aの室内側に生じた水は、外上側面部21aの傾斜に沿って室内側へ流れ、内溝26bに流入し、内溝26bの底部に形成した内溝排水孔25dに流れ落ちる。そして水は、内溝排水孔25dから、中間空隙部23c、本体上面排水孔15、本体ホロー部12及び本体正面排水孔16を経由して室外側に排水される(B矢印)。一方、サッシの左側、すなわち内障子4bの室外側に生じた水は、外上側面部21aの傾斜に沿って室内側へ流れ、内溝26bに流入し、内溝26bの左端から左側端部部品3Lの内溝連通部33Lを経由して室外側に排水される(C矢印)。さらに、外レール22aの室外側に生じた水は、外溝26aに流入し、外溝26aの底部に形成した外溝排水孔25cに流れ落ちる。そして水は、外溝排水孔25cから、外ホロー部23a及び正面排水孔25eを経由して室外側に排水される(D矢印)。また、水量が多い場合には、外溝26aの右端から右側端部部品3Rの外溝連通部34Rも経由して室外側に排水される(E矢印)。なお、上記のとおり、外障子4aと内障子4bの室外側下端部には垂下片42a,42bを設けてあって、これにタイト材27が当接することで室内外を遮断している。また、外障子4aの召合框の下端部にはシールピース(図示省略)を設けてあって、当該部分において室内外を遮断している。そしてこれらによって、図4(a)、(b)中の二点鎖線で示すような気密ラインが形成されている。また、図4(b)、(c)中の「内」、「外」は、当該箇所の圧力が室内圧又は室外圧に等しいことを示している。すなわち、内ホロー部23b及び中間空隙部23cの全部並びに内溝26bの右側部分は、下枠本体1の本体正面排水孔16に設けた開閉弁によって室外側と遮断されているから、室内圧に等しい。一方、外ホロー部23a及び外溝26aの全部並びに内溝26bの左側部分は、室外側と連通しており、室外圧に等しい。
【0016】
このように構成した下枠10を備えるサッシによれば、外レール22a及び内レール22bを上向きに突出する形状としたので、ゴミがたまることがない。そして、下枠10の上面に生じた水を、種々の排水経路を経由して適宜排水できる。すなわち、内レール22bの室内側に生じた水は、内ホロー部23b、中間空隙部23c及び本体ホロー部12を経由して室外側へ排水できる。また、外レール22aと内レール22bの間に生じた水は、内溝26b、中間空隙部23c及び本体ホロー部12を経由するか、内溝26b及び内溝連通部33Lを経由して室外側へ排水できる。さらに、外レール22aの室外側に生じた水は、外溝26a及び外ホロー部23aを経由するか、外溝26a及び外溝連通部34Rを経由して室外側へ排水できる。なお、気密ラインの室外側で生じた水は、下枠10の内部の空間(外ホロー部23aを除く)を通さないような排水経路となっており、外ホロー部23a以外の各ホロー部、空隙部はすべて室内圧に維持されているので、下枠10の内部の空間の大部分を、気密ラインの室内側で生じた水の貯留空間として利用することができる。また、内レール22bが受ける内障子4bの荷重は、内レール22bの下側の壁面部24及びこの壁面部24が構成する内ホロー部23bにより、安定して支持することができる。一方、外レール22aが受ける外障子4aの荷重は、外レール22aの下側の外ホロー部23aにより、安定して支持することができる。そして、このようにホロー部が排水経路としての機能と補強構造としての機能を併せ持つことにより、下枠10の構造が単純なものとなり、コンパクトに形成できる。
【0017】
なお、外上側面部21aを室内側に向けて下方に傾斜させて、水が内溝26bに流れるようにしたことで、外上側面部21aに排水孔を設ける必要がなくなった。また、下枠本体1の室内側端に起立片13を設け、下枠補助材2の内ホロー部23bの下側面と室内側面を、それぞれ下枠本体1の本体上側面部11と起立片13に略全面で近接させて、内ホロー部23bを下枠本体1に略密着する最大の大きさにしたことで、排水経路の流量にゆとりを持たせることができる。さらに、内ホロー部23bを大きくしたことで、上面排水孔25aや下部排水孔25bをプレス加工により形成する際、内ホロー部23bの内部に挿入する下型のサイズを大きくできるので、プレス金型の耐久性を向上させることができる。また、アルミ製の下枠本体1の本体上側面部11と起立片13に、樹脂製の下枠補助材2の内ホロー部23bの下側面と室内側面を近接させているため、下枠本体1からの冷気の輻射が抑えられ、断熱性能が高い。さらに、外ホロー部23aが外溝26aの下側に回り込むように形成してあることで、外溝26aの深さが必要以上に深くなりすぎない。外溝26aが深くなると、外溝26aの室外側壁面が長くなって変形しやすくなってしまうため、これを防いでいる。
【0018】
続いて、本発明のサッシの異なる実施形態について説明する。以下においては、第一実施形態と異なる部分を中心に説明し、第一実施形態と同じ部分の説明は適宜省略する。なお、第一実施形態と同様に、サッシの右側部分(外障子が位置する側)と左側部分(内障子が位置する側)とで排水孔の有無が異なるが、以下の各図はサッシの右側部分における断面を示したものである。ただし、本来サッシの左側に位置する内障子や、本来左右方向位置が異なる各排水孔のすべてを、一つの図面に模式的に示してある。
【0019】
まず、本発明の第二実施形態について、図7に基づき説明する。第二実施形態においては、下枠補助材202が、室外側補助材202aと室内側補助材202bの二部材に分割されている。室外側補助材202aは、室外側端から内上側面部221bの水平部分までを構成しており、室内側補助材202bは、内上側面部221bの傾斜部分から室内側端までを構成していて、内上側面部221b及び内ホロー部223bも室内外に分割されている。内レール222bの下側には、壁面部224を形成してある。壁面部224は、室外側補助材202aの内上側面部221bから下側に延び、途中で室外側に屈曲してさらに下側に延びており、内ホロー部223bの一部を構成するとともに、内溝226bのタイト材ホルダ及び内溝226bの一部を構成している。そして、第一実施形態と同じように、内レール222bの室内側、すなわち室外側補助材202aの内上側面部221bの水平部分には、上面排水孔225aが形成してあり、上面排水孔225aは内ホロー部223bに連通している。また、内ホロー部223bの室外側下端部には、下部排水孔225bが形成してあり、中間空隙部223cに連通している。よって、内レール222bの室内側に生じた水の排水経路は、第一実施形態と同じである。その他、外レール222aと内レール222bの間及び外レール222aの室外側に生じた水の排水経路も、第一実施形態と同じである。
【0020】
次に、本発明の第三実施形態について、図8に基づき説明する。第三実施形態においては、下枠補助材302の外上側面部321aが、室外側部分は略水平で、室内側部分は室外側に向けて緩やかに下方に傾斜している。外ホロー部323aは、外溝326aの下側に位置していて、下枠補助材302の室外側端から外レール322aの直下まで広がっている。そして、サッシの右側において、外レール322aの室内側、すなわち外上側面部321aの水平部分には、外上面排水孔325fが形成してあり、外上面排水孔325fは中間空隙部323cと連通している。よって、外上側面部321aから、外上面排水孔325f、中間空隙部323c、本体上面排水孔315、本体ホロー部312及び本体正面排水孔316を経由して室外側に連通する排水経路が形成される。なお、サッシの左側においては、外上側面部321aの左端から排水される。その他、内レール322bの室内側、内溝326b及び外レール322aの室外側に生じた水の排水経路は、第一実施形態と同じである。
【0021】
次に、本発明の第四実施形態について、図9に基づき説明する。第四実施形態においては、下枠補助材402の外上側面部421aが、室外側部分は略水平で、室内側部分は室外側に向けて緩やかに下方に傾斜している。そして、下枠補助材402が、室外側補助材402aと室内側補助材402bの二部材に分割されている。室外側補助材402aは、室外側端から外レール422aまでを構成しており、室内側補助材402bは、外上側面部421aから室内側端までを構成している。外ホロー部423aは、外溝426aの下側に位置していて、室外側補助材402aの室外側端から外レール422aの直下まで広がっている。また、室内側補助材402bの外上側面部421aの下側に、中間ホロー部423dを形成してあり、中間ホロー部423dの下側に中間空隙部423cが形成される。そして、外ホロー部423aの室内側面から室内側に向けて延出片429が延びており、延出片429が中間ホロー部423dの下側面に当接していて、下側からネジ止めしてある。さらに、サッシの右側において、外レール422aの室内側、すなわち外上側面部421aの水平部分には、外上面排水孔425fが形成してあり、外上面排水孔425fは中間ホロー部423dに連通している。また、中間ホロー部423dの下側面には中間排水孔425gが形成してあり、中間空隙部423cと連通している。よって、外上側面部421aから、外上面排水孔425f、中間ホロー部423d、中間排水孔425g、中間空隙部423c、本体上面排水孔415、本体ホロー部412及び本体正面排水孔416を経由して室外側に連通する排水経路が形成される。なお、サッシの左側においては、外上側面部421aの左端から排水される。その他、内レール422bの室内側、内溝426b及び外レール422aの室外側に生じた水の排水経路は、第一実施形態と同じである。
【0022】
次に、本発明の第五実施形態について、図10に基づき説明する。第五実施形態においては、下枠補助材502の外上側面部521aが、室外側部分は略水平で、室内側部分は室外側に向けて緩やかに下方に傾斜している。そして、外レール522a、外溝526a及び外ホロー部523aが、下枠本体501と一体に形成してある。よって、下枠補助材502は、外上側面部521aから室内側端までを構成している。外ホロー部523aは、外溝526aの下側に位置していて、下枠本体501の室外側端から外レール522aの直下まで広がっている。また、下枠補助材502の外上側面部521aの下側に、中間ホロー部523dを形成してあり、中間ホロー部523dの下側に中間空隙部523cが形成される。また、内レール522bの下側には、壁面部524を形成してある。壁面部524は、下枠補助材502の内上側面部521bから下側に延び、途中で室外側に屈曲してさらに下側に延びており、内ホロー部523bの一部を構成するとともに、内溝526bのタイト材ホルダ及び内溝526bの一部を構成している。そして、第一実施形態と同じように、内レール522bの室内側、すなわち下枠補助材502の内上側面部521bの水平部分には、上面排水孔525aが形成してあり、上面排水孔525aは内ホロー部523bに連通している。また、内ホロー部523bの室外側下端部には、下部排水孔525bが形成してあり、中間空隙部523cに連通している。よって、内レール522bの室内側に生じた水の排水経路は、第一実施形態と同じである。さらに、サッシの右側において、外レール522aの室内側、すなわち外上側面部521aの水平部分には、外上面排水孔525fが形成してあり、外上面排水孔525fは中間ホロー部523dに連通している。また、中間ホロー部523dの下側面には中間排水孔525gが形成してあり、中間空隙部523cと連通している。よって、外上側面部521aから、外上面排水孔525f、中間ホロー部523d、中間排水孔525g、中間空隙部523c、本体上面排水孔515、本体ホロー部512及び本体正面排水孔516を経由して室外側に連通する排水経路が形成される。なお、サッシの左側においては、外上側面部521aの左端から排水される。その他、内溝526b及び外レール522aの室外側に生じた水の排水経路は、第一実施形態と同じである。
【0023】
次に、本発明の第六実施形態について、図11に基づき説明する。第六実施形態においては、下枠補助材602の外上側面部621aが、室外側部分は略水平で、室内側部分は室外側に向けて緩やかに下方に傾斜している。そして、下枠本体601の本体上側面部611の室外側端から垂直上方に延びる外起立片617が形成されており、下枠補助材602の室外側端が外起立片617に当接していて、外起立片617が外溝626aの室外側壁面を構成している。外ホロー部623aは、外溝626aの下側に位置していて、下枠補助材602の室外側端から外レール622aの直下まで広がっている。そして外ホロー部623aの室外側面には正面排水孔625eが形成してあり、外起立片617の対応位置に起立片排水孔618が形成してあって、室外側と連通している。よって、外溝626aから、外溝排水孔625c、外ホロー部623a、正面排水孔625e及び起立片排水孔618を経由して室外側に連通する排水経路が形成される。また、内レール622bの下側には、壁面部624を形成してある。壁面部624は、下枠補助材602の内上側面部621bから下側に延び、途中で室外側に屈曲してさらに下側に延びており、内ホロー部623bの一部を構成するとともに、内溝626bのタイト材ホルダ及び内溝626bの一部を構成している。そして、第一実施形態と同じように、内レール622bの室内側、すなわち下枠補助材602の内上側面部621bの水平部分には、上面排水孔625aが形成してあり、上面排水孔625aは内ホロー部623bに連通している。また、内ホロー部623bの室外側下端部には、下部排水孔625bが形成してあり、中間空隙部623cに連通している。よって、内レール622bの室内側に生じた水の排水経路は、第一実施形態と同じである。さらに、サッシの右側において、外レール622aの室内側、すなわち外上側面部621aの水平部分には、外上面排水孔625fが形成してあり、外上面排水孔625fは中間空隙部623cと連通している。よって、外上側面部621aから、外上面排水孔625f、中間空隙部623c、本体上面排水孔615、本体ホロー部612及び本体正面排水孔616を経由して室外側に連通する排水経路が形成される。なお、サッシの左側においては、外上側面部621aの左端から排水される。その他、内溝626bに生じた水の排水経路は、第一実施形態と同じである。
【0024】
次に、本発明の第七実施形態について、図12に基づき説明する。第七実施形態においては、下枠補助材702の外上側面部721aが、室外側部分は略水平で、室内側部分は室外側に向けて緩やかに下方に傾斜している。そして、下枠補助材702が、室外側補助材702aと室内側補助材702bの二部材に分割されている。室外側補助材702aは、室外側端から内上側面部721bの水平部分までを構成しており、室内側補助材702bは、内上側面部721bの傾斜部分から室内側端までを構成していて、内上側面部721b及び内ホロー部723bも室内外に分割されている。内レール722bの下側には、壁面部724を形成してある。壁面部724は、室内側補助材702bの内上側面部721bから下側に延び、途中で室外側に屈曲してさらに下側に延びており、内ホロー部723bの一部を構成するとともに、内溝726bのタイト材ホルダ及び内溝726bの一部を構成している。そして、第一実施形態と同じように、内レール722bの室内側、すなわち室外側補助材702aの内上側面部721bの水平部分には、上面排水孔725aが形成してあり、上面排水孔725aは内ホロー部723bに連通している。また、内ホロー部723bの室外側下端部には、下部排水孔725bが形成してあり、中間空隙部723cに連通している。よって、内レール722bの室内側に生じた水の排水経路は、第一実施形態と同じである。なお、下枠本体701の起立片713の室外側面にタイト材719が設けてあって、内ホロー部723bの室内側面に当接している。さらに、外ホロー部723aは、外溝726aの下側に位置していて、室外側補助材702aの室外側端から外レール722aの直下まで広がっている。そして、サッシの右側において、外レール722aの室内側、すなわち外上側面部721aの水平部分には、外上面排水孔725fが形成してあり、外上面排水孔725fは中間空隙部723cと連通している。よって、外上側面部721aから、外上面排水孔725f、中間空隙部723c、本体上面排水孔715、本体ホロー部712及び本体正面排水孔716を経由して室外側に連通する排水経路が形成される。なお、サッシの左側においては、外上側面部721aの左端から排水される。その他、内溝726b及び外レール722aの室外側に生じた水の排水経路は、第一実施形態と同じである。
【0025】
なお、第二、第四、第七実施形態のように、下枠補助材を室外側補助材と室内側補助材の二部材に分割すると、両者の色彩を変えることができる。たとえば、下枠本体は、室外側からは見えるが、室内側からは躯体に隠れて見えないので、室外側補助材を下枠本体と同色にし、室内側補助材を躯体と同色にして、室外側と室内側のどちら側から見た場合にも色彩の統一感を持たせるといったことが可能である。また、第五、第六実施形態のように、下枠の上面の室外側の一部を下枠本体と一体に形成した場合にも、下枠補助材を躯体と同色にすれば、同様に色彩の統一感を持たせることができる。
【0026】
本発明は、上記の実施形態に限定されない。たとえば、窓種は引違い窓に限定されるものではなく、一方の窓が嵌め殺しになった片引き窓などにも適用できる。また、下枠本体や下枠補助材の形状は、例を示したものであって、上記の要件を満たす限り、窓種や寸法に応じて適宜変更できる。さらに、下枠補助材の材質は、樹脂に限られるものではなく、一部又は全部を他の材質により構成してもよい。たとえば、レールの頂部だけを金属製とすれば、戸車の走行による摩耗を防ぐことができるし、下枠補助材の全部を金属製とすれば、より防火性能を高めることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 下枠本体
2 下枠補助材
4b 内障子(障子)
21b 内上側面部(上側面部)
22b 内レール(レール)
23b 内ホロー部(ホロー部)
24 壁面部
25a 上面排水孔(排水孔)
41b 戸車
図1
図2
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図10
図11
図12