特許第5977097号(P5977097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977097
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】簡易型防護柵
(51)【国際特許分類】
   E01F 7/04 20060101AFI20160817BHJP
【FI】
   E01F7/04
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-143012(P2012-143012)
(22)【出願日】2012年6月26日
(65)【公開番号】特開2014-5683(P2014-5683A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000201490
【氏名又は名称】前田工繊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】吉田 眞輝
(72)【発明者】
【氏名】井坂 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】井上 和徳
(72)【発明者】
【氏名】辻村 修一
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭48−107504(JP,U)
【文献】 実開昭57−123454(JP,U)
【文献】 特開2000−069863(JP,A)
【文献】 特開2012−002014(JP,A)
【文献】 米国特許第05435524(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 7/00〜 7/06
A01M 1/00〜 99/00
A01G 11/00〜 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防護面を形成するネットと、
前記ネットの両側縁の網目に挿通された、2本の支柱と、
前記ネットの上縁の網目に挿通されて、両端が前記2本の支柱の上部間に取り付けられた高さ調整ロープと、
前記ネットの下縁の網目に挿通されて、両端が前記2本の支柱の下部間に取り付けられた固定ワイヤと、
地面に設置され、前記支柱の下端差し込まれて該支柱位置決される、支柱取付具と、
前記支柱取付具の直上に配置し、前記支柱の上端を位置決めする支柱押さえ具とを備え、
前記ネットを前記2本の支柱に巻き付け可能に構成したことを特徴とする、
簡易型防護柵。
【請求項2】
前記固定ワイヤの他端が前記支柱取付具から離間した位置の地面に設置されたワイヤ支持具に接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の簡易型防護柵。
【請求項3】
記支柱押さえ具がクランプ、ボルト、又はアンカーピンの何れかひとつの固定具を介して既設の構造物に固定されることを特徴とする、請求項1に記載の簡易型防護柵。
【請求項4】
前記ネットに反射ロープが横架されていることを特徴とする、請求項1に記載の簡易型防護柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として小規模落石に対する仮設用の防護柵や動物の侵入を防止する防獣用の防護柵、その他の安全策等として使用することが可能な、簡易型防護柵に関する。
【背景技術】
【0002】
仮設の落石防護や防獣対策の為に用いる防護柵は、山腹に設置する場合が多く、立木が多く生えている箇所では、立木を支柱代わりとしてロープを張設し、該ロープにネットを架け渡して防護柵を構築する場合がある。
【0003】
一方、支柱として代替できるものが存在しない現場では、新たに支柱を用意し、現場に運搬して設置する必要が生ずる。
以下の特許文献1に記載の防獣用柵は、間隔を隔てて立てられた支柱間に条体が横架され、ネットが条体の長手方向に弛緩した状態で吊持されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−306940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した従来技術では、以下に示す問題のうち、少なくとも一つの問題を有する。
(1)支柱を確実に支持すべく、支柱の長さを地面に差し込む分だけ余分に確保しなければならない。支柱の長さが長くなれば長くなるほど、運搬時や現場での取り回しが面倒となったり、支柱自体の重量増加も避けられない為、作業効率が悪化する。
(2)急峻な斜面など、重機での運搬が困難な現場では、支柱の運搬や構築作業を人力に頼らざるを得ないため、より多大な労力を費やすこととなる。
(3)支柱と条体とネットとが別部材であるため、現場での構築に際し、支柱の立設作業と、条体の横架作業と、ネットの吊設作業とを個別に行わなければならず、防護柵の設置作業の効率化に未だ改善の余地が残されている。
【0006】
すなわち、本願発明は、運搬性及び作業性に優れた簡易型防護柵を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決すべくなされた本願発明は、防護面を形成するネットと、前記ネットの両側縁の網目に挿通された、2本の支柱と、前記ネットの上縁の網目に挿通されて、両端が前記2本の支柱の上部間に取り付けられた高さ調整ロープと、前記ネットの下縁の網目に挿通されて、両端が前記2本の支柱の下部間に取り付けられた固定ワイヤと、地面に設置され、前記支柱の下端差し込まれて該支柱位置決される、支柱取付具と、前記支柱取付具の直上に配置し、前記支柱の上端を位置決めする支柱押さえ具とを備え、前記ネットを前記2本の支柱に巻き付け可能に構成したことを特徴とする、簡易型防護柵を提供するものである。
また、前記発明において、前記固定ワイヤの他端が前記支柱取付具から離間した位置の地面に設置されたワイヤ支持具に接続されている
また、前記発明において、前記支柱押さえ具がクランプ、ボルト、又はアンカーピンの何れかひとつの固定具を介して既設の構造物に固定される
また、前記発明において、前記ネットに反射ロープが横架されている

【発明の効果】
【0008】
本願発明によれば、下記に示す効果のうち、少なくとも何れか一つを得ることができる。
(1)支柱の長さを必要最低限に抑えることが出来るため、取り回し性が良い。(2)支柱の重量を節減できるため、低コスト化に寄与する。
(3)支柱とロープとネットとが一体化されているため、運搬性に優れ、現場での作業性も良好である。
(4)ネットスパンの調節が容易である。
(5)以上の通り、簡易な構造で低コスト且つ軽量であり、更に設置方法も簡便で専門的な知識を要しないため、用途、設置場所、作業者を選ばない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の簡易型防護柵の実施例を示す概略斜視図。
図2図1に係る支柱取付具近傍を示す一部拡大図。
図3図1に係るワイヤ固定具近傍を示す一部拡大図。
図4図1に係る支柱押さえ具近傍を示す一部拡大図。
図5】本発明の簡易型防護柵の運搬例を示す概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、各図面を参照しながら、本発明の簡易型防護柵の実施例について説明する。
【実施例】
【0011】
<1>全体構成
本発明の簡易型防護柵Aは、防護面を形成するネット1と、前記ネット1の両側縁の網目に挿通した、一組の支柱2と、地面に設置し、前記支柱の下端を差し込んで該支柱を位置決めする、支柱取付具3と、を少なくとも備えてなる(図1)。
以下、各部材について説明する。
【0012】
<2>ネット
ネット1は、落石を受撃したり、動物の侵入を遮るための防護面を形成する為の部材である。
ネット1の素材は、落石防護や防獣などの用途に応じて、素材や強度等の諸条件を満たす公知の材料を用いればよい。
【0013】
<3>支柱
支柱2は前記ネット1を支持するための部材である。
【0014】
[支柱の素材]
支柱2の素材は、落石防護や防獣などの用途に応じて、素材や強度等の諸条件を満たす公知の材料を用いればよく、例えば鋼製やFRP製とすることができる。
【0015】
[支柱の下端処理]
支柱2の下端は、後述する支柱取付具3に取付可能な処理を施しておくことを要する。本実施例では、支柱2のうち、少なくとも下端部を中空形成しているが、支柱2全体を筒状の部材とすれば足りる(図2)。
【0016】
<4>支柱取付具
支柱取付具3は、支柱2を支持するための部材である。
【0017】
[支柱取付具の設置態様]
支柱取付具3は、地面や構造物の壁面などの設置面Bに、クランプ、ボルト、アンカーなどの公知の固定方法で固定する。
【0018】
[支柱取付具と支柱との関係]
支柱取付具3は支柱2と取り付け可能な処理を施すことを要する。本実施例では、支柱2の下端に設けてある中空部分に挿入可能な突出部31を設けてある(図2)。
前記突出部31は別部材を接合、組み付けるなどして設けても良いし、支柱取付具3を地面に固定するためのアンカーピンの露出部分を突出部31として兼用するようにしてもよい(図示せず)。
【0019】
<5>固定ワイヤ及びワイヤ固定具
固定ワイヤ4及びワイヤ固定具3は、支柱2間に存するネット1を確実に位置決めするための部材である。
【0020】
[固定ワイヤ]
固定ワイヤ4は、ネット1の下縁の網目に挿通し、ネット1の長手方向(横方向)に亘ってネット1の両側縁から露出させておく。
【0021】
[ワイヤ固定具]
ワイヤ固定具5は、地面や構造物の壁面などの設置面Bであって、前記支柱取付具から若干離れた位置で、クランプ、ボルト、アンカーピンなどの公知の固定方法で固定しておく(図示せず)。
また、ワイヤ固定具5は、前記固定ワイヤ4を通すための掛止部51を設けておく(図3)。
【0022】
[固定ワイヤの位置決め]
ネットの両側縁から露出させておいた固定ワイヤ4を、支柱2を介しつつ掛止部51で折り返し、途上でワイヤークリップ52などで留めておく(図3)。
以上の構成とすれば、ネット1の両側縁側から固定ワイヤ4を引張って留めておくことで、ネット1を確実に位置決めすることができる。
また、ワイヤ固定具5は、前記支柱取付具3から若干離れた位置に設けてある為、固定ワイヤ4の先端や、ワイヤークリップ52等がネット1に干渉して、ネット1の破損を引き起こすことが無い。
【0023】
なお、図示しないが、本発明は、固定ワイヤ4の一端を支柱2に定着しておき、他端を、前記したワイヤ固定具5で留めるように構成してもよい。
【0024】
<6>支柱押さえ具
支柱押さえ具6は、前記した支柱取付具3とは別に、前記支柱2を補助的に位置決めするための部材である。
【0025】
[支柱押さえ具の設置態様]
支柱押さえ具6は、構造物の壁面などの設置面Bであって、支柱取付具3の略直上の位置に配し(図4)、クランプ、ボルト、アンカーピンなどの公知の固定方法で固定しておく(図示せず)。
【0026】
[支柱押さえ具と支柱との関係]
支柱押さえ具6には、前記支柱2の外形に対応する挿入穴61を設けておき、前記挿入穴61に支柱2の頭部を差し込んで位置決めする(図4)。
なお、支柱押さえ具6と支柱取付具3との対向距離は、支柱2の長さよりも短くしておく。こうすれば、まず始めに支柱押さえ具6の挿入穴61に支柱2の頭部を差し込み、支柱取付具3の突出部31を支柱2の下端に挿入するように支柱2を降ろすことで、支柱2を上端近傍及び下端近傍の二点で支持・位置決めすることが可能となる(図1)。
また、上記構成は、支柱の脱着が容易であり、簡易型防護柵Aの構築・撤去が簡便である。
【0027】
<7>高さ調整ロープ
高さ調整ロープ7は、ネット1の高さを調整するための部材である。
高さ調整ロープ7は、ネット1の上縁の網目に挿通しておき、該高さ調整ロープ7を上下に移動することで、ネット1の高さを調整する。高さ調整ロープ7の両端はそれぞれ支柱に結わえておいてもよいし、高さ調整後に支柱2に定着してもよい。
【0028】
<8>その他
また、本発明は動物の忌避や、人間への注意喚起のために、ネットに反射ロープ8を横架しておいても良い。
【0029】
<9>構築方法
本発明の簡易型防護柵の構築方法について説明する。
簡易型防護柵Aを現場まで運搬するにあたっては、支柱2にネット1を巻き付け、あたかも巻物のような形態(図5)とし、前記した各種治具とともに運搬する。
現場到着後は、始めに前記した各種治具を設置する。
次に、一方の支柱2を各種治具に取り付けて位置決めし、他方の支柱を引っ張って巻き付けてあるネット1をほどきながら展開し、他方の支柱2を各種治具に取り付けて位置決めする。
最後に、固定ワイヤ4の一端若しくは両端を引っ張りつつ、支柱2及びワイヤ固定具5を介してワイヤークリップ52などで留める。
以上の工程により防護柵を構築する。
【0030】
なお、前記した構築方法の各工程は、本発明に係る簡易型防護柵の構築手順を限定するものではなく、可能な範囲で適宜工程を入れ換えてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 ネット
2 支柱
3 支柱取付具
4 固定ワイヤ
5 ワイヤ固定具
6 支柱押さえ具
7 高さ調整ロープ
8 反射ロープ
A 簡易型防護柵
B 設置面
図1
図2
図3
図4
図5