(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977098
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】警光灯
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20160817BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20160817BHJP
【FI】
F21S2/00 663
F21Y115:10
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-145219(P2012-145219)
(22)【出願日】2012年6月28日
(65)【公開番号】特開2014-10943(P2014-10943A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 祐啓
(72)【発明者】
【氏名】望月 和久
(72)【発明者】
【氏名】松永 幸久
【審査官】
竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−114347(JP,A)
【文献】
特開平11−297106(JP,A)
【文献】
特開平10−188615(JP,A)
【文献】
特開2007−012330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、光源の前方に配置された第1レンズと、第1レンズの前方に配置された第2レンズとを備え、第1レンズが光源からの光を集めるカップ型の集光レンズを含み、集光レンズが第2レンズに向けて平行光を出射する段付き出射面を備え、第2レンズが、入射面と全反射面と出射面とを備えた複数本の棒状プリズムレンズを含み、第1レンズが出射した光のうち、一部を平行光のまま隣接する棒状プリズムレンズの隙間から素通しさせ、残りを前記全反射面により偏向して、前記平行光の出射範囲より外側に拡散光を形成するように構成されていることを特徴とする警光灯。
【請求項2】
前記棒状プリズムレンズが、断面二等辺三角形の棒状に形成され、入射面と全反射面とのなす角度が全反射面と出射面とのなす角度と同等である請求項1に記載の警光灯。
【請求項3】
車体に取り付けられるハウジングの長手方向中央部にスピーカを設置し、スピーカの左右両側に点滅ユニットを配置し、点滅ユニットに請求項1又は請求項2に記載の警光灯を使用したことを特徴とする散光式警光灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、警告
光を広範囲に照射可能な警光灯に関し、特に、緊急車両等に装備される警光灯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、警告光の遠方視認性を高めるために、光源にLEDを使用し、LEDからの光を集光レンズで集めて灯具前方へ配光する警光灯が知られている。しかし、集光レンズの配光は左右方向の照射範囲が狭いため、緊急車両に装備される散光式警光灯の固定照明ユニットに使用した場合、複数ユニットの出射光が完全に重なり合わず、車両周辺の一部に警告光の届かない領域が発生するという問題があった。
【0003】
この問題を解決するために、従来、反射鏡を用いて警告光を配光する警光灯が提案されている。例えば、特許文献1には、散光式警光灯の回転照明ユニットからの警告光を第1反射鏡のスリットに透過させた後に、第2反射鏡により所要の方向へ配光する技術が提案されている。特許文献2には、固定照明ユニットからの警告光をスリット付き反射鏡によって配光する警光灯が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63−63903号公報
【特許文献2】特開2011−146303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の警光灯によると、スリットを透過しない光は反射鏡で遮られるため、警告光の一部をロスし、主光軸方向の光量が低下するという問題点があった。また、灯室内に複数の反射鏡を設置する必要があり、特に、固定照明ユニットと回転照明ユニットを並設した散光式警光灯の場合、部品点数が増え、灯室内が煩雑になり、固定照明ユニット大きな設置スペースを占有するという問題点もあった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、簡単かつコンパクトな構成により、警告光をロスなく広範囲に拡散させることができる警光灯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、次のような警光灯を提供する。
(1)光源と、光源の前方に配置された第1レンズと、第1レンズの前方に配置された第2レンズとを備え、第1レンズが光源からの光を集めて平行光を出射し、第2レンズが第1レンズからの光の一部を偏向させ、平行光の出射範囲より外側に拡散光を形成することを特徴とする警光灯。
【0008】
(2)第2レンズが、入射面と全反射面と出射面とを備えたプリズムレンズを含むことを特徴とする警光灯。
【0009】
(3)プリズムレンズが、断面二等辺三角形の棒状に形成され、入射面と全反射面とのなす角度が全反射面と出射面とのなす角度と同等であることを特徴とする警光灯。
【0010】
(4)第2レンズが、第1レンズからの光の一部を平行光のまま出射する素通し部と、第1レンズからの光の別の部分を拡散光として出射する拡散部とを備えたことを特徴とする警光灯。
【0011】
(5)車体に取り付けられるハウジングの長手方向中央部にスピーカを設置し、スピーカの左右両側に点滅ユニットを配置し、点滅ユニットに上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の警光灯を使用したことを特徴とする散光式警光灯。
【発明の効果】
【0012】
本発明の警光灯によれば、第2レンズが第1レンズからの光の一部を偏向し、平行光の外側に拡散光を形成するので、2つのレンズを組み合わせた簡単かつコンパクトな構成により、警告光をロスなく広範囲に拡散し、外部からの視認性を高めることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態を示す警光灯の正面図である。
【
図3】第1および第2レンズの配光作用を示す
図1のA−A線断面図である。
【
図4】第2レンズの変更例を示す水平断面図である。
【
図5】
図1の警光灯を固定照明ユニットに用いた散光式警光灯の斜視図である。
【
図6】散光式警光灯における警光灯の取付構造を例示する立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1、
図2に示すように、この実施形態の警光灯1は、ブラケット2の前面側に灯具ボディ3を備えている。灯具ボディ3の内側には第1レンズ4が設けられ、第1レンズ4よりも前方に第2レンズ5が配置されている。そして、灯具ボディ3、第1レンズ4、第2レンズ5が複数のネジ6でブラケット2に組み付けられている。
【0015】
図2、
図3に示すように、第1レンズ4の背後(ブラケット2側)には光源基板7が設置され、この基板7上に2つのLED光源8が保持されている。第1レンズ4は、LED光源8からの光を集める2つのカップ型の集光レンズ9を備えている。集光レンズ9の背面には受光部10と全反射面11が形成され、集光レンズ9の前面に段付き出射面12が設けられている。そして、LED光源8からの光が受光部10から集光レンズ9に入射し、全反射面11によって灯具前方に反射され、段付き出射面12から平行光PLとして第2レンズ5に向けて出射される。
【0016】
第2レンズ5は環状のレンズフレーム14を備え、レンズフレーム14の内側に複数本のプリズムレンズ15が等間隔をあけて垂直方向へ平行に延びるように配列されている。レンズフレーム14は、灯具ボディ3の前面に形成された凹溝16に位置決めされている。プリズムレンズ15は、断面二等辺三角形の棒状に形成され、第1レンズ4からの光を入射する入射面17と、入射光を全反射する全反射面18と、反射光を出射する出射面19とを備えている。
【0017】
図3に一部を拡大して示すように、入射面17と全反射面18とのなす角度(θin)は全反射面18と出射面19とのなす角度(θout)と等しく設定されている。プリズムレンズ15は、全反射面18が臨界角を超える所定の角度で集光レンズ9の光軸と斜交するように保持されている。そして、集光レンズ9からの平行光PLのうち、プリズムレンズ15に入射した光が全反射面18によって偏向され、平行光PLの出射範囲よりも外側に拡散光DLを形成するようになっている。
【0018】
従って、この実施形態の警光灯1によれば、第1および第2レンズ4,5を前後に組み合わせ、灯具全体を小型に構成し、平行光PLの外側に拡散光DLを形成し、警告光を広範囲に照射して、外部からの視認性を高めることができる。特に、第2レンズ5を複数本のプリズムレンズ15ですだれ状に構成したので、従来の反射鏡とは異なり、第1レンズ4が出射した光の一部を平行光PLのまま透過させ、残りを拡散光DLとして偏向させ、全光量をロスなく照射して、広範囲を明るく照明できるという利点がある。
【0019】
図4は、第2レンズの変更例を示す。この第2レンズ21は、第1レンズ4からの光の一部を平行光PLのまま出射する素通し部22と、第1レンズ4からの光の別の部分を拡散光DLとして出射する拡散部23とを備えている。素通し部22と拡散部23の面積比は、図示例に限定されず、平行光PLおよび拡散光DLの配分に応じて適宜に設定できる。また、拡散部23の断面形状は、図示例の三角形に限定されず、半円形、長円形、四角形、多角形など任意に変更可能である。
【0020】
図5に示す散光式警光灯31は、緊急車両の車体に取り付けられるハウジング32を備え、ハウジング32の長手方向中央部にスピーカ(図示略)を収納するスピーカ室33が設けられ、スピーカ室33の左右両側に灯室34が形成されている。灯室34には、スピーカ室33側に点滅光を照射する固定照明ユニット35が配置され、それよりも外側に回転光を照射する回転照明ユニット36が設置されている。そして、固定照明ユニット35に
図1〜
図3の警光灯1が使用され、2台の警光灯1がそれぞれ異なる向きで設置されている。
【0021】
したがって、この散光式警光灯31によれば、特に、小型の警光灯1を用いて固定照明ユニット35をコンパクトに構成し、限られたスペースの灯室34内に固定照明ユニット35と回転照明ユニット36を整然と設置することができる。また、警光灯1が発生した点滅光を固定照明ユニット35から車両周辺の広範囲に切れ目なく照射し、例えば、市街地の交差点において、横方向からの視認性を大幅に改善することができる。
【0022】
図6、
図7は、散光式警光灯31における警光灯1の取付構造を示す。ここでは、緊急車両の走行時の振動を考慮し、警光灯1の第2レンズ39が散光式警光灯31の設置ベース37(
図5参照)により強固に取り付けられている。第2レンズ39のレンズフレーム40はアルミ等の金属板で形成されている。レンズフレーム40の上側部分はネジ41でブラケット2の上端折曲部42に結合され、レンズフレーム40の下側部分に突設したピン43が設置ベース37の穴44に掛止されている。この取付構造によれば、第2レンズ39の取付強度を向上できるほか、ネジ41を上方から回して警光灯1を容易に交換できる利点がある。
【0023】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、
図1に示す警光灯1において集光レンズ9の個数や形状を変更したり、本発明の警光灯を作業用車両や工場生産ラインに装備したりするなど、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各部の構成を適宜に変更して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 警光灯
4 第1レンズ
5 第2レンズ
8 LED光源
9 集光レンズ
15 プリズムレンズ
17 入射面
18 全反射面
19 出射面
21 第2レンズ
22 素通し部22
23 拡散部