(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の段ボール用ライナーの実施の形態を詳説する。
【0019】
当該段ボール用ライナーは、三層以上の紙層を有する。この多層構造において、裏面に位置する紙層を第一紙層(裏層)、この第一紙層の表面に積層される紙層を第二紙層(裏二層)とする。なお、この紙層の層数としては3層以上であれば特に制限されないが、十分な強度を確保し、かつ、必要以上に嵩高やコスト増となることを防ぐ点などから、5層以下が好ましく、4層がより好ましい。
【0020】
この多層構造は、パルプを主成分とするパルプスラリーを多層抄き等することによって形成することができる。このパルプとしては、広葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹未晒クラフトパルプ、針葉樹未晒クラフトパルプ、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等が挙げられる。また、木材繊維を含む主原料として、化学的に処理されたパルプ、木材以外の繊維原料であるケナフ、麻、葦等非木材繊維を主原料として化学的に処理されたパルプやチップを機械的にパルプ化したグランドパルプ、木材又はチップに化学薬品を添加しながら機械的にパルプ化したケミグランドパルプ、及びチップを柔らかくなるまで蒸解した後、レファイナー等でパルプ化したセミケミカルパルプ等のバージンパルプ及び、段ボールや新聞紙、チラシ等の古紙のほか、塗工紙、非塗工紙、地券、カラー印刷された紙、白黒印刷された紙など種々の耐漂白性を有する紙を含む雑誌古紙などをも使用することができる。
【0021】
なお、リサイクル性の点からは、古紙パルプを用いることが好ましい。全パルプに対する古紙パルプの使用量として、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。また、表層以外の各紙層の古紙パルプ使用量としては、90質量%以上が好ましく、100質量%がより好ましい。当該段ボール用ライナーによれば、このようにサイズ剤が一定量含有しうる古紙パルプを使用しても、各層の物理的作用により吸水性等を制御するため、高い接着強度を発揮することができる。
【0022】
また、上記パルプに加えて、レーヨン繊維、アクリル繊維、ポリアミド繊維、その他の合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維等が紙層の成分として用いられていてもよい。
【0023】
(内添紙力増強剤)
上記パルプスラリーには、上記原料パルプの他に紙力増強剤を更に添加するとよい。内紙力増強剤としては、乾燥紙力増強剤や湿潤紙力増強剤があり、乾燥紙力増強剤としては、例えばカチオン澱粉、両性澱粉、ポリアクリルアミド(PAM)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられ、湿潤紙力増強剤としては、例えばポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂、尿素樹脂、酸コロイド・メラミン樹脂、熱架橋性付与PAM等が挙げられる。これらのうち、歩留りの優れるポリアクリルアミドが好ましい。
【0024】
上記内添紙力増強剤の電荷としては特に限定されず、カチオン性、アニオン性又は両性のいずれを用いてもよい。これらのうち、微小異物の発生が少なく、比圧縮強さの向上効果に優れ、貼合用の接着剤水溶液の吸収性に優れる点で両性の内添紙力増強剤が好ましく、特に両性ポリアクリルアミドが好ましい。
【0025】
(サイズ剤)
上記パルプスラリーには、サイズ剤(内添サイズ剤)を添加することもできる。サイズ剤としては、例えば、ロジンサイズ、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水コハク酸(ASA)等の公知のサイズ剤を用いることができる。ただし、ロジンエマルジョンサイズ剤及びアルキルケテンダイマーサイズ剤の少なくとも一方を用いるのが好ましい。サイズ剤がロジンエマルジョンサイズ剤及びアルキルケテンダイマーサイズ剤の少なくとも一方であると、接着剤水溶液の微妙な吸水性の調節を行うことができ好ましい。
【0026】
(その他の添加剤)
当該段ボール用ライナーには、上記内添紙力増強剤の他に、例えば定着剤、滑剤、填料分散剤、pH調整剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、紫外線吸収材、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、蛍光消去剤等の公知の種々の添加剤を単独で、あるいは2種以上を混合して添加してもよい。
【0027】
(第一紙層(裏層))
当該段ボール用ライナーにおける第一紙層の坪量としては、115g/m
2以上145g/m
2以下であり、125g/m
2以上135g/m
2以下が好ましい。
【0028】
また、この第一紙層の密度としては、0.70g/cm
3以上0.82g/cm
3以下であり、0.72g/cm
3以上0.80g/cm
3以下が好ましい。
【0029】
当該段ボール用ライナーにおいては、このように第一紙層にある程度の厚みをもたせ、かつ、低密度としているため、第一紙層が物理的に所定量の水溶液を吸収しやすい構造となっている。従って、当該段ボール用ライナーによれば、優れた接着剤水溶液の吸収性を有し、接着強度に優れる段ボールを得ることができる。
【0030】
上記第一紙層の坪量が上記下限未満の場合は、厚みが薄くなり、十分な量の接着剤水溶液を吸収することができず、貼合強度が低下する。逆に、上記第一紙層の坪量が上記上限を超える場合は、低密度の層が厚くなるため、ライナーとしての強度が低下したり、吸水性が良すぎて貼合強度が低下する。
【0031】
上記第一紙層の密度が上記下限未満の場合は、ライナーとしての強度が低下する。また、このように低密度すぎる場合は、接着剤水溶液の浸透速度が速すぎ、シングル側のライナーとして使用された場合に、十分な貼合強度が得られない場合もある。逆に、上記第一紙層の密度が上記上限を超える場合は、十分な量の接着剤水溶液を吸収することができず、十分な貼合強度を得ることができない。
【0032】
この第一紙層の坪量は、抄紙の際の付け量で調整することができる。また、この第一紙層の密度は、原料パルプスラリーのパルプ種やフリーネス、紙力増強剤やサイズ剤等の種類や量により調整することができる。例えば、第一紙層用パルプスラリーにおいて、上記内添サイズ剤の含有量を、0.1質量%以下、より好ましくは0.04質量%以上0.10質量%以下、上記紙力増強剤の含有量を、0.08質量%以上0.40質量%以下、より好ましくは、0.10質量%以上0.35質量%以下とするとよい。
【0033】
このように内添サイズ剤及び紙力増強剤の含有量を少なくしたパルプスラリーを用いて第一紙層を形成することで、上述のような低密度な層を得やすく、さらには、サイズ剤の含有量の少なさからも、吸水性を高めることができる。なお、通常、高い強度が要求されるライナーにおいては、紙力増強剤の使用量が多いため、このように紙力増強剤の含有量を少なくすることで、より効果的に吸水性を高めることができる。
【0034】
第一紙層用パルプスラリーにおいて、内添サイズ剤及び紙力増強剤の含有量が上記上限を超えると、接着剤水溶液の浸透速度が遅くなり、貼合性が低下するおそれがある。また、内添サイズ剤の含有量が上記下限未満の場合は、浸透速度が速くなりすぎ、貼合性が逆に低下する場合がある。紙力増強剤の含有量が上記下限未満の場合は、紙力が低下するおそれがある。
【0035】
第一紙層パルプスラリーに用いられる紙力増強剤としては、ポリアクリルアミドが好ましく、両性ポリアクリルアミドがより好ましい。第一紙層の坪量を115g/m
2以上145g/m
2以下とし、第一紙層の密度を、0.70g/cm
3以上0.82g/cm
3以下にすることに加え、第一紙層パルプスラリーに用いられる紙力増強剤を両性ポリアクリルアミドにすることで、低密度化を図りつつ、貼合用の接着剤水溶液の吸収性により優れ、しかも良好な比圧縮強度を付与することができ好ましい。
【0036】
また、第一紙層の紙力増強剤含有量は、第二紙層の紙力剤含有量の0.7倍以下であるとよい。このように、第一紙層の紙力増強剤含有量を第二紙層の紙力剤含有量と比して少なくすることで、第一紙層の密度を下げて吸水性を高め、かつ、第二紙層の密度を上げて、浸透抑制能を高め、適度な吸水性の得ることができる。
【0037】
また、当該段ボール用ライナーの坪量に対する、上記第一紙層の坪量を40%以上70%以下とすることが好ましい。このように、全体に対する第一紙層の坪量を大きくすることで、上述の吸水性等をより高めることができる。なお、上記第一紙層の坪量が上記上限を超えると、段ボール用ライナーの強度等が低下するおそれがある。
【0038】
なお、第一紙層用パルプスラリーにおけるパルプとしては、ダンボール古紙パルプと雑誌古紙パルプとの混合古紙パルプが好ましく、このフリーネスとしては、300ml以上500ml以下が好ましく、340ml以上350ml以下がより好ましく、350ml以上440ml以下がより好ましい。このようなパルプを上記紙力増強剤、サイズ剤と組み合わせて用いることで、より容易に第一紙層の密度を、0.70g/cm
3以上0.82g/cm
3以下にでき、低密度でかつ優れた接着剤水溶液の浸透性を有する第一紙層を好適に形成することができ好ましい。
【0039】
(第二紙層(裏二層))
当該段ボール用ライナーにおける第二紙層の密度としては、0.78g/cm
3以上0.93g/cm
3以下が好ましく、0.80g/cm
3以上0.91g/cm
3以下がより好ましい。このように第二紙層の密度を高めることで、当該ダンボール用ライナーの強度を高めることができ、かつ、第一紙層に吸収された接着剤水溶液が表面側へ浸透しすぎることを抑制し、貼合時の接着性を高めることができる。さらに、第二紙層の密度が、0.78g/cm
3以上0.93g/cm
3以下であることに加え、第二紙層の密度が第一紙層の密度よりも高いことが好ましい。第一紙層の坪量を115g/m
2以上145g/m
2以下とし、第一紙層の密度を、0.70g/cm
3以上0.82g/cm
3以下にすることに加え、裏二紙層の密度を、0.78g/cm
3以上0.93g/cm
3以下とし、なおかつ第二紙層の密度を第一紙層の密度よりも高くすることにより、優れた接着剤水溶液の吸水性が発現されるとともに、過剰な接着剤水溶液の吸水を抑制でき、高速貼合性に優れる段ボール用ライナーとなり好ましい。
【0040】
この第二紙層の密度は、第一紙層と同様、原料パルプスラリーのパルプ種やフリーネスの調製、紙力増強剤の種類や量により調整することができる。例えば、第二紙層用パルプスラリーにおいて、上記紙力増強剤の含有量を、0.5質量%以上0.8質量%以下、より好ましくは、0.55質量%以上0.75質量%以下とするとよい。
【0041】
このように紙力増強剤の含有量を多くしたパルプスラリーを用いて第二紙層を形成することで、上述のような高密度な第二紙層を効率的に形成することができる。
【0042】
第二紙層用パルプスラリーに用いられる紙力増強剤としては、ポリアクリルアミドが好ましく、両性ポリアクリルアミドがより好ましい。このような紙力増強剤を用いることで、比圧縮強度を高め、かつ、高密度な第二紙層を効果的に形成することができる。また、接着剤水溶液の第二紙層への浸透を抑制することができ、接着剤を第一紙層により留めやすくなる。
【0043】
第二紙層用パルプスラリーにおいても、内添サイズ剤を添加することができるが、第二紙層用パルプスラリーにおける内添サイズ剤の含有量は、第一紙層用パルプスラリーにおける内添サイズの含有量以下であることが好ましく、第二紙層用パルプスラリーに内添サイズ剤を含有させないことがより好ましい。第二紙層における内添サイズ剤の使用量を増やすと、第二紙層中の内添サイズ剤が第一紙層に浸透することなどにより、第一紙層のサイズ性が高まり、吸水性が低下するおそれがある。そこで、第二紙層用パルプスラリーにおける内添サイズ剤の添加を上述のようにすることで、当該段ボール用ライナーの裏面における接着剤水溶液の吸水性を更に高めることができる。
【0044】
当該段ボール用ライナーにおける第二紙層の坪量としては、特に限定されないが、40g/m
2以上80g/m
2以下が好ましい。第二紙層をこのような坪量とすることで、当該段ボール用ライナーに適度な比圧縮強度等を付与することができる。
【0045】
なお、第二紙層用パルプスラリーにおけるパルプとしては、ダンボール古紙パルプと雑誌古紙パルプとの混合古紙パルプが好ましく、このフリーネスとしては、300ml以上500ml以下が好ましく、340ml以上350ml以下がより好ましく、350ml以上440ml以下がさらに好ましい。このようなパルプを上記紙力増強剤と組み合わせて用いることで、より容易に第二紙層の密度を、0.78g/cm
3以上0.93g/cm
3以下にでき、高密度でかつ接着剤水溶液の浸透抑制能を有する第二紙層を好適に形成することができる。第一紙層の坪量を115g/m
2以上145g/m
2以下とし、第一紙層の密度を、0.70g/cm
3以上0.82g/cm
3以下にすることに加え、第二紙層用パルプスラリーにおけるパルプとして、フリーネスが300ml以上500ml以下のダンボール古紙パルプと雑誌古紙パルプとの混合古紙パルプを用いることでより容易に裏二紙層の密度を、0.78g/cm
3以上0.93g/cm
3以下とすることができ、さらに適度な接着剤水溶液の吸水性が発現され、高速貼合性に優れる段ボール用ライナーとなり好ましい。
【0046】
(他の層)
上記第二紙層の表面に積層される第三紙層の坪量や密度等は特に限定されないが、特に当該段ボール用ライナーが4層以上の多層構造である場合、第二紙層と同様に比較的高密度に形成することが好ましい。このようにすることで、当該ダンボール用ライナーの強度等を高めることができることに加え、第二紙層と共に二層で、第一紙層からの接着剤水溶液の過剰な浸透を抑えることができる。上記第三紙層の好ましい密度、坪量及びこの第三紙層用パルプスラリーへの添加剤の種類及び量並びにパルプ種等は、第二紙層(裏二層)と同様である。
【0047】
当該段ボール用ライナーにおける表層(表面に位置する紙層)の坪量や密度、形成するためのパルプスラリーの成分等も特に限定されない。但し、罫割れ等を防ぐ観点から、表層用パルプスラリーにおける紙力増強剤の含有量は、0.04質量%以上0.16質量%以下とすることが好ましい。
【0048】
なお、表層用パルプスラリーにおけるパルプとしては、針葉樹クラフトパルプが好ましく、このフリーネスとしては、500ml以上600ml以下であることが好ましい。このようなパルプを用いることで、罫線割れの発生を抑制し、また、白色度等にも優れる表層を好適に形成することができる。
【0049】
なお、当該段ボール用ライナーの表層表面には、塗工液による塗工等が施されていてもよい。上記塗工液には、表面サイズ剤、紙力増強剤等を含有することができる。
【0050】
(品質等)
当該段ボール用ライナーのJIS−P8124(1998)「紙及び板紙−坪量測定方法」に準拠して測定した坪量としては、特に限定されないが、200g/m
2以上320g/m
2以下が好ましく、204g/m
2以上300g/m
2以下が好ましい。当該段ボール用ライナーの坪量が上記上限を超えると近年の軽量化、省資源化の要請に反することとなる。一方、当該段ボール用ライナーの坪量が上記下限未満の場合、十分な強度等が得られないおそれがある。
【0051】
当該段ボール用ライナーのJIS−P8118(1998)「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準じて測定した密度としては、特に限定されないが、0.75g/cm
3以上0.90g/cm
3以下が好ましい。密度が上記上限を超えると、貼合時の接着剤が当該段ボール用ライナーの内部に染み込み難くなるおそれや柔軟性が低下するおそれがある。一方、密度が上記下限未満の場合、貼号時の接着剤の浸透速度が速すぎ、浸透過多により接着強度が低下するおそれがある。
【0052】
当該段ボール用ライナーのJIS−P8126(2005)「紙及び板紙−圧縮強さ試験方法−リングクラッシュ法」に準拠して測定した比圧縮強さ(横)としては、例えば280g/m
2では180N・g/m
2以上220N・g/m
2以下が好ましい。当該段ボール用ライナーの比圧縮強さ(横)が上記上限を超えると加工性が低下するおそれがある。一方、当該段ボール用ライナーの比圧縮強さ(横)が上記下限未満の場合、段割れが生じるおそれがある。なお、当該段ボール用ライナーにおいては、上述の層構造とすることで、このような良好な優れた圧縮強度を備えることができる。また、比圧縮強さ(横)は、その他、例えば繊維の配向性や原料パルプの種類や配合、フリーネスを調整することによっても調節することができる。
【0053】
当該段ボール用ライナーのJIS−P8117(2009)「紙及び板紙−透気度及び透気抵抗度試験方法(中間領域)−ガーレー法」に準じてガーレー試験機を用いて測定した。透気抵抗度としては、70秒以上150秒以下が好ましい。このような透気抵抗度とすることで、貼合適性に加え、優れた乾燥性を発揮することができる。なお、当該段ボール用ライナーにおいては、上述の層構造とすることで、このような良好な透気性も備えることができる。透気抵抗度が上記上限を超えると、貼合用の接着剤が当該段ボール用ライナーの内部に染み込み難くなるおそれがある。一方、透気抵抗度が上記下限未満の場合、貼合用の接着剤が当該段ボール用ライナーの内部に過剰に浸透することにより、当該段ボール用ライナーと中芯との貼合性が低下するおそれがある。
【0054】
当該段ボール用ライナーの動的液体浸透性測定装置における信号強度が最大値を示すまでの時間としては0.5秒以下が好ましく、0.3秒以下がより好ましい。動的液体浸透性測定装置における信号強度が最大値を示すまでの時間が上記上限を超えると、当該段ボール用ライナーと中芯とを貼合する際の接着剤が当該段ボール用ライナーの内部に染み込み難くなり、接着剤のアンカー効果が低下するおそれがある。なお、上記信号強度が最大値を示すまでの時間は、動的液体浸透性測定装置としてEmtec社製の「SURFACE AND SIZING TESTER(EST−12)」を使用して測定した値である。第一紙層の坪量を115g/m
2以上145g/m
2以下とし、第一紙層の密度を、0.70g/cm
3以上0.82g/cm
3以下にすることに加え、第二紙層の密度を、0.78g/cm
3以上0.93g/cm
3以下とし、動的液体浸透性測定装置における信号強度が最大値を示すまでの時間を0.5秒以下とすることにより、より高速貼合性に優れた段ボール用ライナーが得られ好ましい。
【0055】
当該段ボール用ライナーの動的液体浸透性測定装置における浸透開始から1秒後の信号強度としては、信号強度の最大値に対して50%以下となることが好ましく、40%以下となることがより好ましい。動的液体浸透性測定装置における浸透開始から1秒後の信号強度が上記上限を超えると、当該段ボール用ライナーと中芯との貼合性が低下するおそれがある。なお、上記信号強度が最大値を示すまでの時間は、動的液体浸透性測定装置としてEmtec社製の「SURFACE AND SIZING TESTER(EST−12)」を使用して測定した値である。第一紙層の坪量を115g/m
2以上145g/m
2以下とし、第一紙層の密度を、0.70g/cm
3以上0.82g/cm
3以下にすることに加え、第二紙層の密度を、0.78g/cm
3以上0.93g/cm
3以下とし、動的液体浸透性測定装置における信号強度が最大値を示すまでの時間を0.5秒以下とし、さらに動的液体浸透性測定装置における浸透開始から1秒後の信号強度としては、信号強度の最大値に対して50%以下することにより、コルゲータでの接着剤水溶液の吸水性に優れ、かつ接着剤水溶液の表面側への浸透を適度に抑制することで、より高速貼合性に優れた段ボール用ライナーが得られ好ましい。
【0056】
(段ボール用ライナーの製造方法)
当該段ボール用ライナーは、上述のように各紙層に対応する原料パルプスラリーを抄紙することによって得ることができる。当該段ボール用ライナーは、一般に製紙に用いられるシステムで製造することができ、具体的には、例えばワイヤーパート、プレスパート、プレドライヤーパート、コーターパート、カレンダーパート、リールパートを含む製紙システム等を用いることができる。また、これ以外にも抄紙機とコーターパートとを分離したオフマシンコーターからなる製紙システムを用いても良く、抄紙機とソフトカレンダーを分離したオフマシンカレンダーからなる製紙システムを用いても良い。
【0057】
(当該段ボール用ライナーを用いた段ボールの製造方法)
当該段ボール用ライナーを用いて段ボールを製造する方法は特に限定されず、例えばシングルフェーサで段ボール用中芯を波状に形成(段繰り加工)し、この中芯の一方段頂部に貼合用の接着剤(接着剤水溶液)を塗布した後、当該段ボール用ライナーと貼り合せて片面段ボールを作成し、次に、この片面段ボールシートの中芯の他方段頂部にグルーマシンで貼合用の接着剤(接着剤水溶液)を塗布してダブルフェーサに送り、ヒーティングパートで中芯の他方段頂部側に当該段ボール用ライナーを貼りあわせ、熱板等で加熱した後、クーリングパートで冷却することにより段ボールを得ることができる。なお、一方のライナーだけに、当該段ボール用ライナーを用いることもできる。
【0058】
貼合用の接着剤としては、例えば澱粉等が挙げられ、具体的には、水、糊化澱粉(α化澱粉)、未糊化澱粉(β澱粉)、アルカリ化合物、硼素化合物等で構成される。主成分となる未糊化澱粉(β澱粉)としては、例えばとうもろこし澱粉、小麦澱粉、じゃがいも澱粉、タピオカ澱粉等の各種生澱粉やリン酸エステル化澱粉、アミノ化澱粉等のカチオン基で澱粉を化学修飾したカチオン化澱粉、酸で加水分解させ分子量を調整した酸化澱粉、α−アミラーゼで加水分解し分子量を調整した酵素変性澱粉等の化学変性された各種加工澱粉等を用いることができる。また、糊化澱粉(α化澱粉)としては、例えば酸加水分解澱粉、カチオン化澱粉、酵素変性澱粉等の加工澱粉やハイアミロース澱粉等が挙げられる。また、耐水性を要求される耐水性段ボールには、例えばアクリル、SBR等の合成樹脂や澱粉と合成樹脂を混合した接着剤を用いることができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下においては、特に断りのない限り、%は質量%を、薬品添加量はパルプ絶乾質量(t)当たりの固形分質量(kg)を意味する。
【0060】
なお、本実施例における各測定値は、以下の方法にて測定した値である。
【0061】
[坪量(単位:g/m
2)]
JIS−P8124(1998)に記載の「紙及び板紙−坪量測定方法」に準拠して測定した。
【0062】
[密度(単位:g/m
3)]
JIS−P8118(1998)に記載の「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した。
【0063】
[各紙層(第一紙層及び第二紙層)の坪量及び密度]
デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX−100F)を用いて段ボール用ライナーの断面を撮影し、第一紙層及び第二紙層の厚さを10ヶ所測定し、この10ヶ所の測定結果を平均して、第一紙層及び第二紙層の厚さとした。次いで段ボール用ライナーを30cm×30cmの大きさに断裁し、蒸留水に24時間浸漬した。蒸留水に浸漬した段ボール用ライナーを取り出し、第一紙層及び第二紙層を剥がし、熱風乾燥器を用いて、102〜108℃の温度で2時間乾燥した。次いでJIS P 8111:1998に定める試験用紙の前処理に基づき前処理を行い、標準状態(温度23℃、湿度50%)で質量を測定し第一紙層及び第二紙層の坪量を算出した。また、上記厚さ及び質量より第一紙層及び第二紙層の密度を算出した。
【0064】
[比圧縮強さ(横)(単位:N・g/m
2)]
JIS−P8126(2005)に記載の「紙及び板紙−圧縮強さ試験方法−リングクラッシュ法」に準拠して測定した。
【0065】
[透気抵抗度(単位:秒)]
JIS−P8117(2009)の「紙及び板紙−透気度及び透気抵抗度試験方法(中間領域)−ガーレー法」に準拠して、ガーレー試験機を用いて測定した。
【0066】
[ピーク出現時間(単位:秒)]
動的液体浸透性測定装置として、Emtec社製の「SURFACE AND SIZING TESTER(EST−12)」を使用し、信号強度が最大値を示すピーク出現時間を測定した。具体的には、紙を抄紙流れ方向に50mm、幅方向75mmに裁断した測定用試験片の表層表面を両面粘着テープでサンプルホルダーに固定し、このサンプルホルダーを試験液である温度23℃の蒸留水に浸漬させて、超音波周波数2MHzにて段ボール用ライナーの裏面の信号強度が最大値を示すピーク出現時間を測定した。なお、ピーク出現時間が遅い程、液体浸透性(吸水性)が低いことを意味する。
【0067】
[1秒後の信号強度(単位:%)]
動的液体浸透性測定装置として、Emtec社製の「SURFACE AND SIZING TESTER(EST−12)」を使用して得られる浸透特性曲線における1秒後の信号強度を、ピーク時の信号強度を100%として相対的にあらわした。測定条件は上記ピーク出現時間の測定条件と同様である。
【0068】
[貼合速度]
段ボール用中芯(大王製紙社製の強化芯180g/m
2)の両面に得られた段ボール用ライナーを貼りあわせてA段シングルフルートを作製した。この際の貼合速度を表2に示した。なお、コルゲータは、ダイオーエンジニアリング社製「アグナティGO−14QRC(設計貼合速度250m/分)」を使用した。
【0069】
[剥がれ評価]
貼合後の完成段ボールのコルゲータ幅方向両端を手で折り曲げ、以下の基準による3段階の官能評価を行った。
○:幅方向両端まで完全に接着されており、剥がれが見られなかった場合。
△:折り曲げた時に「パリパリ」との剥がれ音が生じ、微少な剥がれが見られた場合。
×:折り曲げ前から明らかな剥がれが見られた場合。
【0070】
[接着強度]
得られた段ボールシートのライナーと中芯との接着力をJIS Z 0402:1995「段ボールの接着力試験方法」に準拠し、以下の基準に従い、評価した。なお、試験はシングルフェーサ側及びダブルフェーサ側について、それぞれ10個の試験片について行い、平均値を求めた。
◎:接着力が270N以上である。
〇:接着力が250N以上270N未満である。
△:接着力が230N以上250N未満である。
×:接着力が230N未満である。
【0071】
[実施例1]
(第一紙層(裏層)用パルプスラリーの調製)
第一紙層用パルプスラリーとしては、段ボール古紙パルプ40%と雑誌古紙パルプ60%とを配合したものに、以下に記載の内添サイズ剤及び内添紙力増強剤を配合し、硫酸バンドでpHが6.5となるように調製したものを用いた。なお、このパルプスラリーのJIS−P8121(1995)「パルプのろ水度試験方法」に準拠して測定したフリーネスは400mlCSFだった。
[内添サイズ剤]
「ハーサイズNES−680(ロジンエマルジョンサイズ剤)」ハリマ化成社製、0.8kg/パルプt
[内添紙力増強剤]
「ハーマイドRB−236(両性PAM)」ハリマ化成社製、2.9kg/パルプt
【0072】
(第二紙層(裏二層)用パルプスラリーの調製)
第二紙層用パルプスラリーとしては、段ボール古紙パルプ40%と雑誌古紙パルプ60%とを配合したものに、以下に記載の内添紙力増強剤を配合し、硫酸バンドでpHが6.5となるように調製したものを用いた。なお、このパルプスラリーのJIS−P8121(1995)「パルプのろ水度試験方法」に準拠して測定したフリーネスは400mlCSFだった。
[内添紙力増強剤]
「ハーマイドRB−236(両性PAM)」ハリマ化成社製、6.5kg/パルプt
【0073】
(第三紙層用パルプスラリーの調製)
第三紙層用パルプスラリーとしては、段ボール古紙パルプ100%を配合したものに、以下に記載の内添サイズ剤及び内添紙力増強剤を配合し、硫酸バンドでpHが6.5となるように調製したものを用いた。なお、このパルプスラリーのJIS−P8121(1995)「パルプのろ水度試験方法」に準拠して測定したフリーネスは400mlCSFだった。
[内添サイズ剤]
「ハーサイズNES−680(ロジンエマルジョンサイズ剤)」ハリマ化成社製、2.5kg/パルプt
[内添紙力増強剤]
「ハーマイドRB−236(両性PAM)」ハリマ化成社製、6kg/パルプt
【0074】
(第四紙層(表層)用パルプスラリーの調製)
第四紙層用パルプスラリーとしては、針葉樹未晒クラフトパルプ100%を配合したものに、以下に記載の内添サイズ剤及び内添紙力剤を配合し、硫酸バンドでpHが6.5となるように調製したものを用いた。なお、このパルプスラリーのJIS−P8121(1995)「パルプのろ水度試験方法」に準拠して測定したフリーネスは530mlCSFだった。
[内添サイズ剤]
「ハーサイズNES−680(ロジンエマルジョンサイズ剤)」ハリマ化成社製、2.5kg/パルプt
[内添紙力剤]
「ハーマイドRB−236(両性PAM)」ハリマ化成社製、0.08kg/パルプt
【0075】
上記第一〜第四紙層用パルプスラリーを用いて多層抄きすることで、四層構造の段ボール用ライナーを得た。各層の付け量は、第一紙層(裏層)130g/m
2、第二紙層(裏二層)65g/m
2、第三紙層50g/m
2、第四紙層(表層)35g/m
2とした。
【0076】
[実施例2〜13及び比較例1〜2]
第一及び第二紙層用パルプスラリーにおけるフリーネス、内添サイズ剤及び紙力増強剤の量及び坪量(付け量)を表1に示すように替えたこと以外は、実施例1と同様にして各段ボール用ライナーを得た。なお、パルプスラリーにおけるフリーネスの調整は、パルプスラリーを分級及びまたは叩解処理することにより行った。
【0077】
[評価]
得られた各段ボール用ライナーの第一及び第二紙層の坪量及び密度、全体の坪量及び密度、比圧縮強さ(横)、透気抵抗度、動的浸透性(最大値の位置及び一秒後の強度比)、貼合速度、剥がれ評価及び接着強度の評価を上述した方法にて行った。評価結果を表1及び表2に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
上記表に示されるように、本発明の段ボール用ライナーは、第一紙層(裏層)の坪量及び密度を制御することで、優れた貼合性を有することが分かる。