特許第5977135号(P5977135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977135
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/04 20060101AFI20160817BHJP
   C08F 255/02 20060101ALI20160817BHJP
   C08F 8/00 20060101ALI20160817BHJP
   H01B 3/44 20060101ALI20160817BHJP
   H01B 13/14 20060101ALI20160817BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20160817BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20160817BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20160817BHJP
   C08K 5/56 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   C08L23/04
   C08F255/02
   C08F8/00
   H01B3/44 F
   H01B3/44 P
   H01B13/14 A
   H01B7/02 F
   C08K5/54
   C08K5/14
   C08K5/56
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-220903(P2012-220903)
(22)【出願日】2012年10月3日
(65)【公開番号】特開2014-74093(P2014-74093A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250384
【氏名又は名称】リケンテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(74)【代理人】
【識別番号】100097250
【弁理士】
【氏名又は名称】石戸 久子
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 真一
(72)【発明者】
【氏名】三柳 恵子
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−114959(JP,A)
【文献】 特開平09−208637(JP,A)
【文献】 特表2005−534802(JP,A)
【文献】 特開2001−342363(JP,A)
【文献】 特開平05−039428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/04
C08K 5/14
C08K 5/54
C08K 5/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリエチレン100質量部に対し、
(b)シランカップリング剤を0.5〜5.0質量部、
(c)有機過酸化物を0.01〜0.5質量部、および
(d)ビスマス化合物系シラノール縮合触媒を0.05〜0.5質量部
含有してなる樹脂組成物。
【請求項2】
前記(d)ビスマス化合物系シラノール縮合触媒が、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)、ビスマスネオデカノエート、ビスマステトラメチルヘプタンジオエート、ナフテン酸ビスマスまたはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(a)ポリエチレンの190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が、0.01〜10.0g/10分であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(b)シランカップリング剤が、ビニルトリメトキシシランであることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
電線の絶縁材料として用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
導電体の周囲を請求項5に記載の樹脂組成物で被覆する工程と、前記樹脂組成物を水架橋する工程とを有することを特徴とする電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂組成物に関し、詳しくは電線の被覆に好適に用いられ得る樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンは様々な分野において広く利用されている。一例としてポリエチレンは、電線の絶縁材料として好適である(例えば特許文献1〜3参照)。
一方、ポリエチレンにラジカル発生剤の存在下でシラン化合物をグラフトさせ、シラン変性ポリエチレンを得、このシラン変性ポリエチレンをシラノール縮合触媒の存在下で水架橋させて得られる架橋ポリエチレン(水架橋ポリエチレン)は、優れた耐熱性を有することが知られ(例えば特許文献4参照)、これもまた電線の絶縁材料として広く用いられている。
【0003】
一般的に電線は、導電体の周囲に絶縁材料を押出被覆成形することにより製造される。しかしながら、従来技術において、水架橋ポリエチレンを電線の絶縁材料として使用した場合、押出被覆成形後の水架橋ポリエチレンの表面にブツが発生するという問題点があった。
このブツの発生は、本発明者の検討によれば、架橋の偏在が原因であると考えられ、これにより、電線が絶縁破壊する恐れがあり、当業界ではその解決が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−312118号公報
【特許文献2】特開平8−185712号公報
【特許文献3】特開平9−25373号公報
【特許文献4】特開平9−208637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の目的は、例えば電線の絶縁材料として用いた場合に、押出被覆成形後にその表面にブツが発生せず、かつ、引張特性等の物性に優れた樹脂組成物を提供することにある。
また本発明の別の目的は、上記の絶縁破壊等の問題が発生しない電線およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、特定のシラノール縮合触媒を特定量で使用して得た水架橋ポリエチレンが、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
【0007】
すなわち本発明は、以下の通りである。
1.(a)ポリエチレン100質量部に対し、
(b)シランカップリング剤を0.5〜5.0質量部、
(c)有機過酸化物を0.01〜0.5質量部、および
(d)ビスマス化合物系シラノール縮合触媒を0.05〜0.5質量部
含有してなる樹脂組成物。
2.前記(d)ビスマス化合物系シラノール縮合触媒が、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)、ビスマスネオデカノエート、ビスマステトラメチルヘプタンジオエート、ナフテン酸ビスマスまたはこれらの混合物であることを特徴とする前記1に記載の樹脂組成物。
3.前記(a)ポリエチレンの190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が、0.01〜10.0g/10分であることを特徴とする前記1または2に記載の樹脂組成物。
4.前記(b)シランカップリング剤が、ビニルトリメトキシシランであることを特徴とする前記1〜3いずれか1項に記載の樹脂組成物。
5.電線の絶縁材料として用いられることを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
6.導電体の周囲を請求項5に記載の樹脂組成物で被覆する工程と、前記樹脂組成物を水架橋する工程とを有することを特徴とする電線の製造方法
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂組成物は、特定のシラノール縮合触媒を特定量で使用するとともに、ポリエチレン、シランカップリング剤および有機過酸化物を特定量で使用するものである。この構成によれば、例えば本発明の樹脂組成物を電線の絶縁材料として用いた場合に、押出被覆成形後にその表面にブツが発生せず、かつ、引張特性等の物性に優れる。得られる電線は、絶縁破壊等の問題が発生しない。
本発明の樹脂組成物における前記効果発現のメカニズムは不明であるが、(d)ビスマス化合物系シラノール縮合触媒を使用することにより、縮合反応が穏やかに進み、前記ブツ等の発生を防止しているのではないかと推測される。なお、従来の有機スズ化合物系のシラノール縮合触媒を使用した場合は、前記効果は奏されない。また本発明で使用される(d)ビスマス化合物系シラノール縮合触媒は、前記有機スズ化合物系のシラノール縮合触媒よりも環境面で有利である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0010】
(a)ポリエチレン
本発明に使用される(a)ポリエチレンは、とくに制限されないが、例えば化学構造の観点から低圧法高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等が挙げられる。また本発明に使用される(a)ポリエチレンは、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体のようなエチレン−α−オレフィン共重合体であることもできる。エチレン−α−オレフィン共重合体は、、長鎖分岐を導入したものであってもよい。
【0011】
また、本発明で使用される(a)ポリエチレンの密度は、高密度0.942g/cm以上(0.990g/cm以下)、中密度0.925〜0.940g/cm、低密度0.910〜0.925g/cm、超低密度0.900〜0.909g/cm、超超低密度0.86〜0.90g/cmが挙げられる。中でも、密度は0.86〜0.94g/cmであるのが好ましく、0.90〜0.93g/cmであるのがさらに好ましい。
該密度は、JIS K6760−1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112−1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される。
(a)ポリエチレンの密度は、重合温度、連鎖移動剤を変えることによって調整することができる。例えば、重合温度を高くすると、密度を低下させることができる。
エチレン−α−オレフィン共重合体の密度は、エチレンとα−オレフィンの重合比率を変えることによって調整することができる。α−オレフィンの重合比率を低くすることで密度を高めることができる。
【0012】
本発明に使用される(a)ポリエチレンのメルトフローレート(以下、「MFR」と記載することがある。)は、通常、0.01(g/10分)〜100(g/10分)である。該メルトフローレートは、成形加工時の押出負荷を低減する観点から、好ましくは0.05g/10分以上であり、より好ましくは0.1g/10分以上である。該メルトフローレートは、ペレットの製造性を向上する観点から、好ましくは10g/10分以下であり、より好ましくは4g/10分以下である。該メルトフローレートは、JIS K7210−1995に規定された方法において、温度190℃、荷重21.18Nの条件で、A法により測定される値である。
(a)ポリエチレンのメルトフローレートは、重合体製造時に連鎖移動性を高くすることで重合中の分子の重合点が他の分子に移る連鎖移動が促進されることにより、大きくすることができる。連鎖移動性を高くする具体的な例としては、連鎖移動剤濃度を高くしたり、重合温度を高くすることが挙げられる。連鎖移動剤としては、水素、エタン、プロパン等が用いられる。
【0013】
本発明で用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ブテン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−オクテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン−1−オクテン共重合体等が挙げられ、本発明の効果の点から好ましくは、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−オクテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン−1−オクテン共重合体がよい。本発明で用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体は、市販品を用いることができ、例えば住友化学(株)製エクセレンGMH、住友化学(株)製スミカセンEP、住友化学(株)製CU5003等が挙げられる。
【0014】
(b)シランカップリング剤
本発明に使用される(b)シランカップリング剤としては、末端ビニル基などのラジカル反応可能な有機基およびアルコキシ基などの加水分解可能な有機基を有するシラン化合物が挙げられ、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニル−トリス(n−ブトキシ)シラン、ビニル−トリス(n−ペントキシ)シラン、ビニル−トリス(n−ヘキソキシ)シラン、ビニル−トリス(n−ヘプトキシ)シラン、ビニル−トリス(n−オクトキシ)シラン、ビニル−トリス(n−ドデシルオキソ)シラン、ビニル−ビス(n−ブトキシ)メチルシラン、ビニル−ビス(n−ペントキシ)メチルシラン、ビニル−ビス(n−ヘキソキシ)メチルシラン、ビニル−(n−ブトキシ)ジメチルシラン、ビニル−(n−ペントキシ)ジメチルシラン、β−メタクリルオキシエチル−トリス(n−ブトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(n−ドデシル)シラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス−(2−メトキシエトキシ)シラン等が挙げられる。中でも本発明の効果の点からビニルトリメトキシシランが好ましい。
【0015】
(c)有機過酸化物
本発明に使用する(c)有機過酸化物としてはとくに制限されず公知の有機過酸化物の中から適宜選択すればよいが、例えばジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等の有機過酸化物があげられる。これらの中ではジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドが好ましい。
【0016】
(d)ビスマス化合物系シラノール縮合触媒
本発明に使用する(d)ビスマス化合物系シラノール縮合触媒は、例えば、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)、ビスマスネオデカノエート、ビスマステトラメチルヘプタンジオエート、ナフテン酸ビスマスまたはこれらの混合物等が好ましいものとして挙げられる。中でもビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)が試験片の表面外観がよい上、物性も優れる点で最も好ましい。(d)ビスマス化合物系シラノール縮合触媒は、市販品を用いることができ、例えばビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)を主成分とする日東化成(株)製U−600、日東化成(株)製U−660等が挙げられる。
【0017】
本発明の樹脂組成物は、(a)ポリエチレン100質量部に対し、(b)シランカップリング剤を0.5〜5.0質量部、(c)有機過酸化物を0.01〜0.5質量部、および(d)ビスマス化合物系シラノール縮合触媒を0.05〜0.5質量部含有してなる。
(b)シランカップリング剤の配合量が0.5質量部未満または5.0質量部を超えると、本発明の樹脂組成物を電線の絶縁材料として使用した場合、押出被覆成形後の水架橋ポリエチレンの表面にブツが発生する。
(c)有機過酸化物の配合量が0.01質量部未満であると引張強度に劣り、0.5質量部を超えると、本発明の樹脂組成物を電線の絶縁材料として使用した場合、押出被覆成形後の水架橋ポリエチレンの表面にブツが発生する。
(d)ビスマス化合物系シラノール縮合触媒の配合量が0.05質量部未満であると引張強度に劣り、0.5質量部を超えると、本発明の樹脂組成物を電線の絶縁材料として使用した場合、押出被覆成形後の水架橋ポリエチレンの表面にブツが発生する。また0.5質量部を超えて配合した場合、(a)ポリエチレンにこの成分(d)がブリードするので好ましくない。
【0018】
本発明の樹脂組成物のさらに好ましい配合割合は、(a)ポリエチレン100質量部に対し、(b)シランカップリング剤が1.0〜3.0質量部、(c)有機過酸化物が0.02〜0.1質量部、および(d)ビスマス化合物系シラノール縮合触媒が0.05〜0.3質量部である。
【0019】
なお本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲内で、耐熱安定剤、老化防止剤、耐候安定剤、塩酸吸収剤、滑剤、有機系あるいは無機系顔料、カーボンブラック、目やに防止剤、難燃剤、帯電防止剤、その他の充填剤等を適宜配合することができる。
【0020】
次に本発明の樹脂組成物の使用方法について説明する。本発明の樹脂組成物を例えば電線の絶縁材料として用いる場合、前記各成分(a)〜(d)を一括して配合し、これを導電体の周囲に押出被覆成形により被覆し、水架橋させる。水架橋の条件としては、水中、水蒸気中または多湿雰囲気下、温度として常温〜100℃、時間として1分間〜1週間程度、好ましくは10分間〜1日間程度の条件が挙げられる。この一連の工程により、(a)ポリエチレンに(b)シランカップリング剤が(c)有機過酸化物の存在下でグラフトし、シラン変性ポリエチレンが得られこのシラン変性ポリエチレンが(d)ビスマス化合物系シラノール縮合触媒の存在下で水架橋し、水架橋ポリエチレンが得られる。
【0021】
これとは別に、前記各成分(a)〜(c)を配合し、前記のように(a)ポリエチレンに(b)シランカップリング剤を(c)有機過酸化物の存在下でグラフトさせた後、成分(d)ビスマス化合物系シラノール縮合触媒を配合してもよい。得られた本発明の樹脂組成物の水架橋の条件は、前記と同様である。また、グラフト条件は公知の条件にしたがって適宜採用すればよい。
なお、(d)ビスマス化合物系シラノール縮合触媒は、(a)ポリエチレンの一部と混合し、マスターバッチを作成し、これを成分(d)の添加の際に用いることができる。この形態によれば、成分(d)を成分(a)中に均一に混合することができ、成形品の表面性が優れる点で好ましい。
【0022】
このように、本発明の樹脂組成物は、電線の絶縁材料、すなわち導電体の被覆材として用いるのが好適である。この場合、該被覆材の厚み(電線の直径から導電体の直径を減じ、その値を2で除した値)は、0.1〜5.0mmが好適である。また、導電体への被覆は、公知の押出被覆成形法を採用することができ、とくに制限されない。
【0023】
なお、上記では本発明の樹脂組成物を電線の絶縁材料として使用する形態について説明したが、本発明の樹脂組成物の用途は電線の絶縁材料に限定されず、そのほかにも、給湯管、給水管、床暖房、ロードヒーティング用の配水管の架橋パイプに有用である。
【実施例】
【0024】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0025】
以下の例において、成分(a)〜(d)は次のものを使用した。
(a)ポリエチレン
住友化学(株)製CU5003
エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体。密度=0.928g/cm、MFR=0.4g/10分
(b)シランカップリング剤
ビニルトリメトキシシラン
(c)有機過酸化物
ジクミルパーオキサイド
(d)ビスマス化合物系シラノール縮合触媒
ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)を主成分とする日東化成(株)製U−600
【0026】
実施例1〜13
表1に示す配合割合(質量部)において、前記成分(a)〜(d)を一括して混合し、これをL/D=20の押出機を用いて、成形温度200℃で押出し、試験片を作成した。試験片のサイズは、φ2mmの棒状、長さ1mとした。
得られた試験片について、表面の外観を以下の基準で評価した。結果を併せて表1に示す。
◎:1mm以上の大きさのブツがない。
○:1mm以上の大きさのブツが1〜3個ある。
△:1mm以上の大きさのブツが4〜9個ある。
×:1mm以上の大きさのブツが10個以上ある。
【0027】
また、前記試験片をプレスして、JIS C 3005 3号ダンベルとした後、該試験片を水架橋させた。水架橋は、試験片を80℃の温水に24時間以上浸水させることにより行なった。得られた水架橋ポリエチンレンを、200mm/分で引張強さ(MPa)および引張伸び(%)を測定した。結果を併せて表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
比較例1〜7
表2に示す配合割合(質量部)を採用したこと以外は、実施例1を繰り返し、評価を行なった。結果を表2に示す。
【0030】
【表2】
【0031】
表1および2の結果から、特定のシラノール縮合触媒を特定量で使用するとともに、ポリエチレン、シランカップリング剤および有機過酸化物を特定量で使用した本発明の樹脂組成物からなる水架橋ポリエチレンは、ブツの発生が認められず、引張特性も優れていた。これらの結果から、本発明の樹脂組成物からなる水架橋ポリエチレンは、電線の絶縁材料として有用であることが判明した。
これに対し、比較例1は(b)シランカップリング剤の配合量が本発明で規定する上限を超えているので、試験片の表面にブツが発生した。
比較例2は(b)シランカップリング剤の配合量が本発明で規定する下限未満であるので、試験片の表面にブツが発生した。
比較例3は、(c)有機過酸化物を配合していないので、引張強度に劣る結果となった。
比較例4は、(c)有機過酸化物の配合量が本発明で規定する上限を超えているので、試験片の表面にブツが発生した。
比較例5は、(d)ビスマス化合物系シラノール縮合触媒を配合していないので、引張強度に劣る結果となった。
比較例6は、(d)ビスマス化合物系シラノール縮合触媒の配合量が本発明で規定する上限を超えているので、試験片の表面にブツが発生した。
比較例7は、(d)ビスマス化合物系シラノール縮合触媒の替わりに、従来の有機スズ化合物系シラノール縮合触媒(ネオスタンU−830 日東化成(株))を使用した例であるので、試験片の表面にブツが発生した。
以上から、比較例1〜7で調製された水架橋ポリエチレンは、電線の絶縁材料として不適であることが判明した。
【0032】
実施例14
まず、(a)ポリエチレン100質量部と、(d)ビスマス化合物系シラノール縮合触媒5質量部とを混合し、マスターバッチを作成した。
これとは別に、(a)ポリエチレン100質量部と、(b)シランカップリング剤2質量部と、(c)有機過酸化物0.03質量部とを混合し、200℃に加熱し、成分(a)に成分(b)をグラフトさせ、シラン変性ポリエチレンを調製した。
続いて、前記マスターバッチとシラン変性ポリエチレンを混合比(質量比)5:100の割合で混合し、実施例1〜13と同じ条件で押出成形および水架橋を行い、実施例1〜13と同様の評価を行なった。
その結果、試験片の表面の外観は◎評価、引張強さは23.1(MPa)、引張伸びは536(%)であった。
上記結果から、実施例14の本発明の樹脂組成物からなる水架橋ポリエチレンは、電線の絶縁材料として有用であることが判明した。