特許第5977162号(P5977162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977162
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/26 20060101AFI20160817BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   H01L21/26 T
   H01L21/265 602B
   H01L21/26 J
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-272221(P2012-272221)
(22)【出願日】2012年12月13日
(65)【公開番号】特開2014-120509(P2014-120509A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】古川 雅志
【審査官】 桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−174879(JP,A)
【文献】 特開2009−272399(JP,A)
【文献】 特開2000−138170(JP,A)
【文献】 特開平09−237764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/26
H01L 21/265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板形状の基板に対して光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、
基板を収容するチャンバーと、
前記チャンバー内にて基板を保持する保持部と、
前記保持部に保持された基板の主面よりも広く当該主面に対向する領域に複数の棒状ランプを配置した光照射部と、
前記光照射部と前記保持部との間にて中心軸が前記基板の中心を通るように設けられ、前記光照射部から出射された光に対して不透明な円筒形状の遮光部材と、
を備え、
前記光照射部には、前記保持部から近い順に第1段と第2段とのそれぞれに複数の棒状ランプが配置され、
前記第1段に配置された複数の棒状ランプと前記第2段に配置された複数の棒状ランプとは互いに直交するように設けられ、
前記遮光部材の円形の端部のうち前記第2段に配置された複数の棒状ランプの長手方向と直交する部位が最も深く、かつ、前記第1段に配置された複数の棒状ランプの長手方向と直交する部位が最も浅くなるような切り欠き部を形成することを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の熱処理装置において、
前記遮光部材の前記保持部に近い側の端部に切り欠き部を形成することを特徴とする熱処理装置。
【請求項3】
請求項1記載の熱処理装置において、
前記遮光部材の前記光照射部に近い側の端部に切り欠き部を形成することを特徴とする熱処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の熱処理装置において、
前記遮光部材は不透明石英にて形成されることを特徴とする熱処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の熱処理装置において、
前記光照射部に配置される複数の棒状ランプはハロゲンランプであり、
前記光照射部からの光照射によって予備加熱された基板にフラッシュ光を照射するフラッシュランプをさらに備えることを特徴とする熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円板形状の半導体ウェハー等の薄板状精密電子基板(以下、単に「基板」と称する)に対して光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいて、不純物導入は半導体ウェハー内にpn接合を形成するための必須の工程である。現在、不純物導入は、イオン打ち込み法とその後のアニール法によってなされるのが一般的である。イオン打ち込み法は、ボロン(B)、ヒ素(As)、リン(P)といった不純物の元素をイオン化させて高加速電圧で半導体ウェハーに衝突させて物理的に不純物注入を行う技術である。注入された不純物はアニール処理によって活性化される。この際に、アニール時間が数秒程度以上であると、打ち込まれた不純物が熱によって深く拡散し、その結果接合深さが要求よりも深くなり過ぎて良好なデバイス形成に支障が生じるおそれがある。
【0003】
そこで、極めて短時間で半導体ウェハーを加熱するアニール技術として、近年フラッシュランプアニール(FLA)が注目されている。フラッシュランプアニールは、キセノンフラッシュランプ(以下、単に「フラッシュランプ」とするときにはキセノンフラッシュランプを意味する)を使用して半導体ウェハーの表面にフラッシュ光を照射することにより、不純物が注入された半導体ウェハーの表面のみを極めて短時間(数ミリ秒以下)に昇温させる熱処理技術である。
【0004】
キセノンフラッシュランプの放射分光分布は紫外域から近赤外域であり、従来のハロゲンランプよりも波長が短く、シリコンの半導体ウェハーの基礎吸収帯とほぼ一致している。よって、キセノンフラッシュランプから半導体ウェハーにフラッシュ光を照射したときには、透過光が少なく半導体ウェハーを急速に昇温することが可能である。また、数ミリ秒以下の極めて短時間のフラッシュ光照射であれば、半導体ウェハーの表面近傍のみを選択的に昇温できることも判明している。このため、キセノンフラッシュランプによる極短時間の昇温であれば、不純物を深く拡散させることなく、不純物活性化のみを実行することができるのである。
【0005】
このようなキセノンフラッシュランプを使用した熱処理装置として、特許文献1,2には、半導体ウェハーの表面側にフラッシュランプ等のパルス発光ランプを配置し、裏面側にハロゲンランプ等の連続点灯ランプを配置し、それらの組み合わせによって所望の熱処理を行うものが開示されている。特許文献1,2に開示の熱処理装置においては、ハロゲンランプ等によって半導体ウェハーをある程度の温度まで予備加熱し、その後フラッシュランプからのパルス加熱によって所望の処理温度にまで昇温している。また、特許文献3には、半導体ウェハーをホットプレートに載置して所定の温度まで予備加熱し、その後フラッシュランプからのフラッシュ光照射によって所望の処理温度にまで昇温する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−258928号公報
【特許文献2】特表2005−527972号公報
【特許文献3】特開2007−5532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3に開示されるようなホットプレートにて半導体ウェハーを予備加熱する場合は、プレート温度を正確に温調すればウェハー温度の面内分布を比較的均一なものとすることができる。特に、特許文献3のホットプレートは同心円状に複数のゾーンに区分けされており、ゾーンごとに温調可能であるためウェハー温度の面内分布を容易に均一にすることができる。一方、特許文献1,2に開示されるようなハロゲンランプにて予備加熱を行う場合には、比較的高い予備加熱温度にまで半導体ウェハーを短時間で昇温することができるというプロセス上のメリットが得られるものの、ウェハー周縁部の温度が中心部よりも低くなる問題が生じやすい。
【0008】
このようなハロゲンランプによる予備加熱段階での周縁部における温度低下を解消するために、ハロゲンランプからウェハー周縁部に照射する光量を増やすと、周縁部の一部の温度が上昇するものの、逆に周縁部よりも内側領域の温度分布均一性が損なわれることとなる。しかも、半導体ウェハーの最も外周の端縁部における温度低下は十分には解消されないまま残存する。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、基板の面内温度分布を均一にすることができる熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、円板形状の基板に対して光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置において、基板を収容するチャンバーと、前記チャンバー内にて基板を保持する保持部と、前記保持部に保持された基板の主面よりも広く当該主面に対向する領域に複数の棒状ランプを配置した光照射部と、前記光照射部と前記保持部との間にて中心軸が前記基板の中心を通るように設けられ、前記光照射部から出射された光に対して不透明な円筒形状の遮光部材と、を備え、前記光照射部には、前記保持部から近い順に第1段と第2段とのそれぞれに複数の棒状ランプが配置され、前記第1段に配置された複数の棒状ランプと前記第2段に配置された複数の棒状ランプとは互いに直交するように設けられ、前記遮光部材の円形の端部のうち前記第2段に配置された複数の棒状ランプの長手方向と直交する部位が最も深く、かつ、前記第1段に配置された複数の棒状ランプの長手方向と直交する部位が最も浅くなるような切り欠き部を形成することを特徴とする。
【0012】
また、請求項の発明は、請求項1の発明に係る熱処理装置において、前記遮光部材の前記保持部に近い側の端部に切り欠き部を形成することを特徴とする。
【0013】
また、請求項の発明は、請求項1の発明に係る熱処理装置において、前記遮光部材の前記光照射部に近い側の端部に切り欠き部を形成することを特徴とする。
【0014】
また、請求項の発明は、請求項1から請求項のいずれかの発明に係る熱処理装置において、前記遮光部材は不透明石英にて形成されることを特徴とする。
【0015】
また、請求項の発明は、請求項1から請求項のいずれかの発明に係る熱処理装置において、前記光照射部に配置される複数の棒状ランプはハロゲンランプであり、前記光照射部からの光照射によって予備加熱された基板にフラッシュ光を照射するフラッシュランプをさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1から請求項の発明によれば、光照射部と保持部との間にて中心軸が基板の中心を通るように設けられ、光照射部から出射された光に対して不透明な円筒形状の遮光部材を備えるため、光照射部から基板の内側領域に向かう光の一部を遮光して基板の面内温度分布を均一にすることができる。また、遮光部材の円形の端部のうち保持部から遠い第2段に配置された複数の棒状ランプの長手方向と直交する部位が最も深く、かつ、第1段に配置された複数の棒状ランプの長手方向と直交する部位が最も浅くなるように切り欠き部を形成するため、遮光部材から第1段の棒状ランプまでの距離と第2段の棒状ランプまでの距離との差に起因した照度分布の不均一を解消して基板の面内温度分布を均一にすることができる。
【0018】
また、請求項の発明によれば、ハロゲンランプによる予備加熱時における基板の面内温度分布を均一にすることができ、その結果フラッシュ光照射時における基板の面内温度分布も均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る熱処理装置の構成を示す縦断面図である。
図2】保持部の全体外観を示す斜視図である。
図3】保持部を上面から見た平面図である。
図4】保持部を側方から見た側面図である。
図5】移載機構の平面図である。
図6】移載機構の側面図である。
図7】複数のハロゲンランプの配置を示す平面図である。
図8】第1実施形態のルーバーの全体概観を示す斜視図である。
図9】第1実施形態のルーバーによる遮光を模式的に示す図である。
図10】第2実施形態のルーバーの全体概観を示す斜視図である。
図11】第2実施形態のルーバーが設置された状態を示す図である。
図12】第2実施形態のルーバーによる遮光を模式的に示す図である。
図13】第2実施形態のルーバーによる遮光を模式的に示す図である。
図14】第2実施形態のルーバーが設置された状態の他の例を示す図である。
図15】切り欠き部の形状の他の例を示す図である。
図16】切り欠き部の形状の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0021】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る熱処理装置1の構成を示す縦断面図である。本実施形態の熱処理装置1は、基板としてφ300mmの円板形状の半導体ウェハーWに対してフラッシュ光照射を行うことによってその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。熱処理装置1に搬入される前の半導体ウェハーWには不純物が注入されており、熱処理装置1による加熱処理によって注入された不純物の活性化処理が実行される。なお、図1および以降の各図には、それらの方向関係を明確にするためZ軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を適宜付している。また、図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0022】
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュ加熱部5と、複数のハロゲンランプHLを内蔵するハロゲン加熱部4と、を備える。チャンバー6の上側にフラッシュ加熱部5が設けられるとともに、下側にハロゲン加熱部4が設けられている。ハロゲン加熱部4とチャンバー6との間にはルーバー21が設けられている。また、熱処理装置1は、チャンバー6の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に保持する保持部7と、保持部7と装置外部との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う移載機構10と、を備える。さらに、熱処理装置1は、ハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
【0023】
チャンバー6は、筒状のチャンバー側部61の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側部61は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。チャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英により形成された円板形状部材であり、フラッシュ加熱部5から出射されたフラッシュ光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。また、チャンバー6の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英により形成された円板形状部材であり、ハロゲン加熱部4からの光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。
【0024】
また、チャンバー側部61の内側の壁面の上部には反射リング68が装着され、下部には反射リング69が装着されている。反射リング68,69は、ともに円環状に形成されている。上側の反射リング68は、チャンバー側部61の上側から嵌め込むことによって装着される。一方、下側の反射リング69は、チャンバー側部61の下側から嵌め込んで図示省略のビスで留めることによって装着される。すなわち、反射リング68,69は、ともに着脱自在にチャンバー側部61に装着されるものである。チャンバー6の内側空間、すなわち上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64、チャンバー側部61および反射リング68,69によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
【0025】
チャンバー側部61に反射リング68,69が装着されることによって、チャンバー6の内壁面に凹部62が形成される。すなわち、チャンバー側部61の内壁面のうち反射リング68,69が装着されていない中央部分と、反射リング68の下端面と、反射リング69の上端面とで囲まれた凹部62が形成される。凹部62は、チャンバー6の内壁面に水平方向に沿って円環状に形成され、半導体ウェハーWを保持する保持部7を囲繞する。
【0026】
チャンバー側部61および反射リング68,69は、強度と耐熱性に優れた金属材料(例えば、ステンレススチール)にて形成されている。また、反射リング68,69の内周面は電解ニッケルメッキによって鏡面とされている。
【0027】
また、チャンバー側部61には、チャンバー6に対して半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、ゲートバルブ185によって開閉可能とされている。搬送開口部66は凹部62の外周面に連通接続されている。このため、ゲートバルブ185が搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から凹部62を通過して熱処理空間65への半導体ウェハーWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウェハーWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖するとチャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
【0028】
また、チャンバー6の内壁上部には熱処理空間65に処理ガス(本実施形態では窒素ガス(N))を供給するガス供給孔81が形設されている。ガス供給孔81は、凹部62よりも上側位置に形設されており、反射リング68に設けられていても良い。ガス供給孔81はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間82を介してガス供給管83に連通接続されている。ガス供給管83は窒素ガス供給源85に接続されている。また、ガス供給管83の経路途中にはバルブ84が介挿されている。バルブ84が開放されると、窒素ガス供給源85から緩衝空間82に窒素ガスが送給される。緩衝空間82に流入した窒素ガスは、ガス供給孔81よりも流体抵抗の小さい緩衝空間82内を拡がるように流れてガス供給孔81から熱処理空間65内へと供給される。
【0029】
一方、チャンバー6の内壁下部には熱処理空間65内の気体を排気するガス排気孔86が形設されている。ガス排気孔86は、凹部62よりも下側位置に形設されており、反射リング69に設けられていても良い。ガス排気孔86はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間87を介してガス排気管88に連通接続されている。ガス排気管88は排気部190に接続されている。また、ガス排気管88の経路途中にはバルブ89が介挿されている。バルブ89が開放されると、熱処理空間65の気体がガス排気孔86から緩衝空間87を経てガス排気管88へと排出される。なお、ガス供給孔81およびガス排気孔86は、チャンバー6の周方向に沿って複数設けられていても良いし、スリット状のものであっても良い。また、窒素ガス供給源85および排気部190は、熱処理装置1に設けられた機構であっても良いし、熱処理装置1が設置される工場のユーティリティであっても良い。
【0030】
また、搬送開口部66の先端にも熱処理空間65内の気体を排出するガス排気管191が接続されている。ガス排気管191はバルブ192を介して排気部190に接続されている。バルブ192を開放することによって、搬送開口部66を介してチャンバー6内の気体が排気される。
【0031】
図2は、保持部7の全体外観を示す斜視図である。また、図3は保持部7を上面から見た平面図であり、図4は保持部7を側方から見た側面図である。保持部7は、基台リング71、連結部72およびサセプター74を備えて構成される。基台リング71、連結部72およびサセプター74はいずれも石英にて形成されている。すなわち、保持部7の全体が石英にて形成されている。
【0032】
基台リング71は円環形状の石英部材である。基台リング71は凹部62の底面に載置されることによって、チャンバー6の壁面に支持されることとなる(図1参照)。円環形状を有する基台リング71の上面に、その周方向に沿って複数の連結部72(本実施形態では4個)が立設される。連結部72も石英の部材であり、溶接によって基台リング71に固着される。なお、基台リング71の形状は、円環形状から一部が欠落した円弧状であっても良い。
【0033】
平板状のサセプター74は基台リング71に設けられた4個の連結部72によって支持される。サセプター74は石英にて形成された略円形の平板状部材である。サセプター74の直径は半導体ウェハーWの直径よりも大きい。すなわち、サセプター74は、半導体ウェハーWよりも大きな平面サイズを有する。サセプター74の上面には複数個(本実施形態では5個)のガイドピン76が立設されている。5個のガイドピン76はサセプター74の外周円と同心円の周上に沿って設けられている。5個のガイドピン76を配置した円の径は半導体ウェハーWの径よりも若干大きい。各ガイドピン76も石英にて形成されている。なお、ガイドピン76は、サセプター74と一体に石英のインゴットから加工するようにしても良いし、別途に加工したものをサセプター74に溶接等によって取り付けるようにしても良い。
【0034】
基台リング71に立設された4個の連結部72とサセプター74の周縁部の下面とが溶接によって固着される。すなわち、サセプター74と基台リング71とは連結部72によって固定的に連結されており、保持部7は石英の一体成形部材となる。このような保持部7の基台リング71がチャンバー6の壁面に支持されることによって、保持部7がチャンバー6に装着される。保持部7がチャンバー6に装着された状態においては、略円板形状のサセプター74は水平姿勢(法線が鉛直方向と一致する姿勢)となる。チャンバー6に搬入された半導体ウェハーWは、チャンバー6に装着された保持部7のサセプター74の上に水平姿勢にて載置されて保持される。半導体ウェハーWは、5個のガイドピン76によって形成される円の内側に載置されることにより、水平方向の位置ずれが防止される。なお、ガイドピン76の個数は5個に限定されるものではなく、半導体ウェハーWの位置ずれを防止できる数であれば良い。
【0035】
また、図2および図3に示すように、サセプター74には、上下に貫通して開口部78および切り欠き部77が形成されている。切り欠き部77は、熱電対を使用した接触式温度計130のプローブ先端部を通すために設けられている。一方、開口部78は、放射温度計120がサセプター74に保持された半導体ウェハーWの下面から放射される放射光(赤外光)を受光するために設けられている。さらに、サセプター74には、後述する移載機構10のリフトピン12が半導体ウェハーWの受け渡しのために貫通する4個の貫通孔79が穿設されている。
【0036】
図5は、移載機構10の平面図である。また、図6は、移載機構10の側面図である。移載機構10は、2本の移載アーム11を備える。移載アーム11は、概ね円環状の凹部62に沿うような円弧形状とされている。それぞれの移載アーム11には2本のリフトピン12が立設されている。各移載アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対の移載アーム11を保持部7に対して半導体ウェハーWの移載を行う移載動作位置(図5の実線位置)と保持部7に保持された半導体ウェハーWと平面視で重ならない退避位置(図5の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。水平移動機構13としては、個別のモータによって各移載アーム11をそれぞれ回動させるものであっても良いし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対の移載アーム11を連動させて回動させるものであっても良い。
【0037】
また、一対の移載アーム11は、昇降機構14によって水平移動機構13とともに昇降移動される。昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて上昇させると、計4本のリフトピン12がサセプター74に穿設された貫通孔79(図2,3参照)を通過し、リフトピン12の上端がサセプター74の上面から突き出る。一方、昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて下降させてリフトピン12を貫通孔79から抜き取り、水平移動機構13が一対の移載アーム11を開くように移動させると各移載アーム11が退避位置に移動する。一対の移載アーム11の退避位置は、保持部7の基台リング71の直上である。基台リング71は凹部62の底面に載置されているため、移載アーム11の退避位置は凹部62の内側となる。なお、移載機構10の駆動部(水平移動機構13および昇降機構14)が設けられている部位の近傍にも図示省略の排気機構が設けられており、移載機構10の駆動部周辺の雰囲気がチャンバー6の外部に排出されるように構成されている。
【0038】
図1に戻り、チャンバー6の上方に設けられたフラッシュ加熱部5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、フラッシュ加熱部5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュ加熱部5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状の石英窓である。フラッシュ加熱部5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。フラッシュランプFLはチャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65にフラッシュ光を照射する。
【0039】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
【0040】
キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプHLの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。
【0041】
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
【0042】
チャンバー6の下方に設けられたハロゲン加熱部4は、筐体41の内側に複数本(本実施形態では40本)のハロゲンランプHLを内蔵している。ハロゲン加熱部4は、複数のハロゲンランプHLによってチャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65への光照射を行う光照射部である。
【0043】
図7は、複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。第1実施形態では、保持部7に保持された円板形状の半導体ウェハーWの主面(つまり、直径300mmの円)よりも広い領域に複数のハロゲンランプHLが配置されている。また、当該半導体ウェハーWの主面のうち下面と対向する領域に複数のハロゲンランプHLが配置されている。
【0044】
図1および図7に示すように、第1実施形態では、40本のハロゲンランプHLが上下2段に分けて配置されている。保持部7に近い上段(第1段)に20本のハロゲンランプHLが配設されるとともに、上段よりも保持部7から遠い下段(第2段)にも20本のハロゲンランプHLが配設されている。各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
【0045】
また、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向と下段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向とが互いに直交するように計40本のハロゲンランプHLが配設されている。本実施形態においては、上段ではランプ長手方向がY軸方向に沿うように20本のハロゲンランプHLが平行に配列され、下段ではランプ長手方向がX軸方向に沿うように20本のハロゲンランプHLが平行に配列されている。
【0046】
また、図7に示すように、上段、下段ともに保持部7に保持される半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、ランプ配列の中央部よりも周縁部の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。
【0047】
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方の半導体ウェハーWへの放射効率が優れたものとなる。
【0048】
また、ハロゲン加熱部4の筐体41内にも、2段のハロゲンランプHLの下側にリフレクタ43が設けられている(図1)。リフレクタ43は、複数のハロゲンランプHLから出射された光を熱処理空間65の側に反射する。
【0049】
第1実施形態においては、ハロゲン加熱部4とチャンバー6の下側チャンバー窓64との間にルーバー21が設けられている。図8は、第1実施形態のルーバー21の全体概観を示す斜視図である。第1実施形態のルーバー21は上下に開放端を有する円筒形状の部材である。ルーバー21は、ハロゲン加熱部4のハロゲンランプHLから出射される光に対して不透明な材質にて形成されており、例えば石英ガラスに微細な気泡を多数内包させた不透明石英にて形成されている。ルーバー21のサイズはチャンバー6およびハロゲン加熱部4の配置構成に応じた適宜のものとすることができる。ルーバー21の円筒の外径はハロゲンランプHLが配置される領域よりも小さければ良く、例えば第1実施形態ではルーバー21の外径を半導体ウェハーWの直径と同じ300mmとし、内径を294mmとしている。また、ルーバー21の高さは、例えば15mm〜25mmとすれば良い(第1実施形態では16mmとしている)。
【0050】
図1に示すように、ハロゲン加熱部4の筐体41の上端にはルーバーステージ22が設けられている。ルーバーステージ22は、ハロゲンランプHLから出射される光に対して透明な石英ガラスにて形成された平板状部材である。このルーバーステージ22の上面にルーバー21が設置される。ルーバー21は、その円筒の中心軸CXが保持部7に保持された半導体ウェハーWの中心を通るように設けられる。ハロゲン加熱部4の複数のハロゲンランプHLは、保持部7に保持された半導体ウェハーWの下面と対向する領域に配列されている。よって、ルーバー21の中心軸CXは、複数のハロゲンランプHLの配列の中心をも通ることとなる。
【0051】
また、制御部3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えている。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置1における処理が進行する。
【0052】
上記の構成以外にも熱処理装置1は、半導体ウェハーWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー6の壁体には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ハロゲン加熱部4およびフラッシュ加熱部5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。また、上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、フラッシュ加熱部5および上側チャンバー窓63を冷却する。
【0053】
次に、熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順について説明する。ここで処理対象となる半導体ウェハーWはイオン注入法により不純物(イオン)が添加された半導体基板である。その不純物の活性化が熱処理装置1によるフラッシュ光照射加熱処理(アニール)により実行される。以下に説明する熱処理装置1の処理手順は、制御部3が熱処理装置1の各動作機構を制御することにより進行する。
【0054】
まず、給気のためのバルブ84が開放されるとともに、排気用のバルブ89,192が開放されてチャンバー6内に対する給排気が開始される。バルブ84が開放されると、ガス供給孔81から熱処理空間65に窒素ガスが供給される。また、バルブ89が開放されると、ガス排気孔86からチャンバー6内の気体が排気される。これにより、チャンバー6内の熱処理空間65の上部から供給された窒素ガスが下方へと流れ、熱処理空間65の下部から排気される。
【0055】
また、バルブ192が開放されることによって、搬送開口部66からもチャンバー6内の気体が排気される。さらに、図示省略の排気機構によって移載機構10の駆動部周辺の雰囲気も排気される。なお、熱処理装置1における半導体ウェハーWの熱処理時には窒素ガスが熱処理空間65に継続的に供給されており、その供給量は処理工程に応じて適宜変更される。
【0056】
続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介してイオン注入後の半導体ウェハーWがチャンバー6内の熱処理空間65に搬入される。搬送ロボットによって搬入された半導体ウェハーWは保持部7の直上位置まで進出して停止する。そして、移載機構10の一対の移載アーム11が退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が貫通孔79を通ってサセプター74の上面から突き出て半導体ウェハーWを受け取る。
【0057】
半導体ウェハーWがリフトピン12に載置された後、搬送ロボットが熱処理空間65から退出し、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖される。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、半導体ウェハーWは移載機構10から保持部7のサセプター74に受け渡されて水平姿勢にて下方より保持される。半導体ウェハーWは、パターン形成がなされて不純物が注入された表面を上面として保持部7に保持される。また、半導体ウェハーWは、サセプター74の上面にて5個のガイドピン76の内側に保持される。サセプター74の下方にまで下降した一対の移載アーム11は水平移動機構13によって退避位置、すなわち凹部62の内側に退避する。
【0058】
半導体ウェハーWが石英にて形成された保持部7によって水平姿勢にて下方より保持された後、ハロゲン加熱部4の40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して予備加熱(アシスト加熱)が開始される。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成されたルーバーステージ22、下側チャンバー窓64およびサセプター74を透過して半導体ウェハーWの裏面(表面とは反対側の主面)から照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウェハーWが予備加熱されて温度が上昇する。なお、移載機構10の移載アーム11は凹部62の内側に退避しているため、ハロゲンランプHLによる加熱の障害となることは無い。
【0059】
ハロゲンランプHLによる予備加熱を行うときには、半導体ウェハーWの温度が接触式温度計130によって測定されている。すなわち、熱電対を内蔵する接触式温度計130が保持部7に保持された半導体ウェハーWの下面にサセプター74の切り欠き部77を介して接触して昇温中のウェハー温度を測定する。測定された半導体ウェハーWの温度は制御部3に伝達される。制御部3は、ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度が所定の予備加熱温度T1に到達したか否かを監視する。予備加熱温度T1は、半導体ウェハーWに添加された不純物が熱により拡散する恐れのない、200℃ないし800℃程度、好ましくは350℃ないし600℃程度とされる(本実施の形態では600℃)。なお、ハロゲンランプHLからの光照射によって半導体ウェハーWを昇温するときには、放射温度計120による温度測定は行わない。これは、ハロゲンランプHLから照射されるハロゲン光が放射温度計120に外乱光として入射し、正確な温度測定ができないためである。
【0060】
ところで、予備加熱中の半導体ウェハーWには中心部分に比較して周縁部の温度が低くなりやすい傾向が認められる。このような現象が生じる原因としては、半導体ウェハーWの周縁部からの熱放射、或いは半導体ウェハーWの周縁部から比較的低温のサセプター74への熱伝導などが考えられる。
【0061】
このため、ハロゲン加熱部4におけるハロゲンランプHLの配設密度は、半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域の方が高くなるように構成されており、半導体ウェハーWの中心部よりも周縁部に向かう光量が多くなるようにしている。また、チャンバー側部61に装着された反射リング69の内周面は鏡面とされているため、この反射リング69の内周面によっても半導体ウェハーWの周縁部に向けて反射する光量が多くなる。
【0062】
このようにして半導体ウェハーWの中心部よりも周縁部に照射されるハロゲン光量を多くしたとしても、なお半導体ウェハーWの周縁部における温度低下を解消することは困難であった。この傾向は、ハロゲンランプHLと保持部7に保持された半導体ウェハーWとの距離が大きくなるにつれて顕著となる。
【0063】
このため、第1実施形態においては、ハロゲン加熱部4とチャンバー6との間に不透明な円筒形状のルーバー21を設け、ハロゲン加熱部4から保持部7に保持された半導体ウェハーWへと向かう光を一部遮光している。図9は、ルーバー21による遮光を模式的に示す図である。同図は、円筒形状のルーバー21の直径がX軸方向と一致する位置にて切断したXZ断面である。
【0064】
上述したように、本実施形態では、円板形状の半導体ウェハーWの主面よりも広い領域に複数のハロゲンランプHLを配置しており、ルーバー21の外径は半導体ウェハーWの直径と同じである。従って、円筒形状のルーバー21より外側にもハロゲンランプHLが存在しており、第1実施形態では上段および下段のそれぞれにおいて、複数のハロゲンランプHLの配列の両端から3本ずつがルーバー21の円筒外壁よりも外側に設けられている。
【0065】
ルーバー21を設けることにより、図9に点線矢印で示すように、ルーバー21よりも外側に設けられたハロゲンランプHLから半導体ウェハーWの中心部近傍を含む内側領域(周縁部よりも内側の領域)に向かう光が不透明なルーバー21の壁面によって遮光される。その一方、図9の実線矢印で示すように、ルーバー21よりも外側に設けられたハロゲンランプHLから半導体ウェハーWの周縁部に向かう光は遮光されない。その結果、ルーバー21を設けることにより、ハロゲン加熱部4から半導体ウェハーWの周縁部に向かう光はほとんど減少しないのに対して、内側領域へと向かう光が減少し、内側領域の加熱が弱まることとなる。これにより、相対的に半導体ウェハーWの周縁部が強く加熱されることとなり、予備加熱時における半導体ウェハーWの面内温度分布の不均一を効果的に解消することができる。なお、図9から明らかなように、ルーバー21の壁面よりも内側に設けられているハロゲンランプHLから半導体ウェハーWの裏面へと向かう光はルーバー21による影響を受けない(遮光されるのは半導体ウェハーWの外方へと向かう光)。
【0066】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達して所定時間が経過した時点にてフラッシュ加熱部5のフラッシュランプFLが半導体ウェハーWの表面にフラッシュ光照射を行う。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー6内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてからチャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。
【0067】
フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光(閃光)照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。すなわち、フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短く強い閃光である。そして、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射によりフラッシュ加熱される半導体ウェハーWの表面温度は、瞬間的に1000℃以上の処理温度T2まで上昇し、半導体ウェハーWに注入された不純物が活性化された後、表面温度が急速に下降する。このように、熱処理装置1では、半導体ウェハーWの表面温度を極めて短時間で昇降することができるため、半導体ウェハーWに注入された不純物の熱による拡散を抑制しつつ不純物の活性化を行うことができる。なお、不純物の活性化に必要な時間はその熱拡散に必要な時間に比較して極めて短いため、0.1ミリセカンドないし100ミリセカンド程度の拡散が生じない短時間であっても活性化は完了する。
【0068】
第1実施形態では、ルーバー21によってハロゲン加熱部4から半導体ウェハーWの内側領域に向かう光の一部を遮光して予備加熱段階での半導体ウェハーWの面内温度分布を均一にしているため、フラッシュ光照射時における半導体ウェハーW表面の面内温度分布も均一にすることができる。
【0069】
フラッシュ加熱処理が終了した後、所定時間経過後にハロゲンランプHLが消灯する。これにより、半導体ウェハーWが予備加熱温度T1から急速に降温する。降温中の半導体ウェハーWの温度は接触式温度計130または放射温度計120によって測定され、その測定結果は制御部3に伝達される。制御部3は、測定結果より半導体ウェハーWの温度が所定温度まで降温したか否かを監視する。そして、半導体ウェハーWの温度が所定以下にまで降温した後、移載機構10の一対の移載アーム11が再び退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12がサセプター74の上面から突き出て熱処理後の半導体ウェハーWをサセプター74から受け取る。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、リフトピン12上に載置された半導体ウェハーWが装置外部の搬送ロボットにより搬出され、熱処理装置1における半導体ウェハーWの加熱処理が完了する。
【0070】
第1実施形態においては、ハロゲン加熱部4とチャンバー6との間に不透明な円筒形状のルーバー21を設け、ルーバー21よりも外側に設けられたハロゲンランプHLから半導体ウェハーWの内側領域に向かう光を遮光している。ルーバー21を設けることなく、ハロゲン加熱部4によって予備加熱を行った場合には、半導体ウェハーWの内側領域よりも周縁部の温度が低下する傾向が認められる。そこで、不透明な円筒形状のルーバー21を設け、ハロゲン加熱部4から半導体ウェハーWの内側領域に向かう光の一部をルーバー21によって遮光することにより、予備加熱時における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一にすることができる。その結果、フラッシュ加熱時における半導体ウェハーW表面の面内温度分布も均一にすることができる。
【0071】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の熱処理装置の全体構成は第1実施形態と概ね同様である。また、第2実施形態の熱処理装置における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同じである。第2実施形態が第1実施形態と相違するのはルーバーの形状である。
【0072】
図10は、第2実施形態のルーバー121の全体概観を示す斜視図である。第2実施形態のルーバー121は、第1実施形態と同様の円筒形状部材の上端に2箇所の切り欠き部123を形成している。ルーバー121は、ハロゲン加熱部4のハロゲンランプHLから出射される光に対して不透明な材質にて形成されており、例えば石英ガラスに微細な気泡を多数内包させた不透明石英にて形成されている。
【0073】
ルーバー121は、ハロゲン加熱部4とチャンバー6の下側チャンバー窓64との間に設けられており、具体的にはハロゲン加熱部4の上端に設けられたルーバーステージ22の上面に設置される。ルーバー121は、その中心軸CXが保持部7に保持された半導体ウェハーWの中心を通るように設けられる。また、ルーバー21の中心軸CXは、複数のハロゲンランプHLの配列の中心を通る。
【0074】
ルーバー121の上端(つまり、保持部7に近い側の端部)には、その円形の径方向に沿って相対向するように切り欠き部123が形成されている。第2実施形態では、2箇所の切り欠き部123がX軸方向に沿って相対向するように、ルーバー121がルーバーステージ22上に設置される。換言すれば、図11に示すように、ルーバー121の円形の上端において、ハロゲン加熱部4の下段に配置された複数のハロゲンランプHLの長手方向に沿った両端領域に切り欠き部123が形成されている。
【0075】
第2実施形態においても、ハロゲン加熱部4とチャンバー6との間に不透明な円筒形状のルーバー121を設け、予備加熱時にハロゲン加熱部4から保持部7に保持された半導体ウェハーWへと向かう光を一部遮光している。図12および図13は、第2実施形態のルーバー121による遮光を模式的に示す図である。図12はルーバー121の直径がX軸方向と一致する位置にて切断したXZ断面であり、図13はルーバー121の直径がY軸方向と一致する位置にて切断したYZ断面である。
【0076】
第1実施形態と同様に、上段および下段のそれぞれにおいて、複数のハロゲンランプHLの配列の両端から3本ずつがルーバー121の円筒外壁よりも外側に設けられている。図13に示すように、上段のハロゲンランプHLと平行なYZ面においては、切り欠き部123が形成されていないため、ルーバー121の高さがXZ面よりも高くなっている。ここで、下段に配置されたハロゲンランプHLからルーバー121までの距離は上段に配置されたハロゲンランプHLからルーバー121までの距離よりも当然に長い。このため、下段のハロゲンランプHLからルーバー121の壁面を高さ方向に見込む角αは、その直上の上段のハロゲンランプHLからルーバー121の壁面を高さ方向に見込む角βよりも小さくなる。従って、半導体ウェハーWの裏面において、ルーバー121の壁面によって遮光される領域は、上段のハロゲンランプHLよりも下段のハロゲンランプHLの方が小さい。
【0077】
半導体ウェハーWのY軸方向の照度分布については、それと垂直なX軸方向に沿って配列された下段のハロゲンランプHLによる光照射が支配的となる。下段のハロゲンランプHLからの光照射については、ルーバー121の壁面によって遮光される領域が相対的に小さいため、ルーバー121の高さが高くても比較的多くの光量が半導体ウェハーWの裏面のY軸方向について照射されることとなる。
【0078】
一方、図12に示すように、下段のハロゲンランプHLと平行なXZ面においては、切り欠き部123が形成されているため、ルーバー121の高さがYZ面よりも低くなっている。半導体ウェハーWのX軸方向の照度分布については、それと垂直なY軸方向に沿って配列された上段のハロゲンランプHLによる光照射が支配的となる。上段のハロゲンランプHLからの光照射については、ルーバー121の壁面によって遮光される領域が相対的に大きくなるものの、XZ面ではルーバー121の高さがYZ面よりも低くなっている。このため、XZ面にて上段のハロゲンランプHLからの光照射がルーバー121の壁面によって遮光される領域は、YZ面にて下段のハロゲンランプHLからの光照射がルーバー121の壁面によって遮光される領域と概ね同程度となる。よって、上段のハロゲンランプHLから半導体ウェハーWの裏面のX軸方向について照射される光量は、下段のハロゲンランプHLから半導体ウェハーWの裏面のY軸方向について照射される光量と同程度となる。
【0079】
その結果、予備加熱時における半導体ウェハーWの裏面の周方向での照度分布も均一となり、半導体ウェハーWの面内温度分布の不均一をより効果的に解消することができる。なお、ルーバー121を設けることによって、第1実施形態と同様に、ハロゲン加熱部4から半導体ウェハーWの内側領域へと向かう光を減少させて半導体ウェハーWの裏面の径方向での照度分布を均一にする効果が得られることは勿論である。
【0080】
このように、第2実施形態においても、ルーバー121によってハロゲン加熱部4から半導体ウェハーWの内側領域に向かう光の一部を遮光して予備加熱段階での半導体ウェハーWの面内温度分布を均一にしているため、フラッシュ光照射時における半導体ウェハーW表面の面内温度分布も均一にすることができる。
【0081】
特に、第2実施形態では、下段に配置された複数のハロゲンランプHLの長手方向に沿ったルーバー121の両端領域に切り欠き部123を設けることにより、ルーバー121から上段のハロゲンランプHLまでの距離と下段のハロゲンランプHLまでの距離との差に起因した照度分布の不均一をも解消している。このため、ハロゲン加熱部4による予備加熱時における半導体ウェハーWの面内温度分布をより均一にすることができる。
【0082】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、第2実施形態ではルーバー121の上端に切り欠き部123を形成していたが、図14に示すように、ルーバー121の下端に切り欠き部123を形成するようにしても良い。図14の例では、ルーバー121の下端、すなわちハロゲン加熱部4に近い側の端部に切り欠き部123を形成している。第2実施形態と同じく、2箇所の切り欠き部123がX軸方向に沿って相対向するように形成されている。換言すれば、ルーバー121の円形の下端において、ハロゲン加熱部4の下段に配置された複数のハロゲンランプHLの長手方向に沿った両端領域に切り欠き部123が形成されている。
【0083】
ルーバー121の下端に切り欠き部123を形成しても、第2実施形態と同様に、上段のハロゲンランプHLからの光照射がルーバー121の壁面によって遮光される領域は、下段のハロゲンランプHLからの光照射がルーバー121の壁面によって遮光される領域と概ね同程度となる。このため、予備加熱時における半導体ウェハーWの裏面の周方向での照度分布も均一となり、半導体ウェハーWの面内温度分布の不均一をより効果的に解消することができる。
【0084】
また、ルーバー121に形成する切り欠き部の形状は図15または図16に示すようなものであっても良い。図15に示す例では、切り欠き部223の形状をサインカーブとしている。また、図16に示す例では、切り欠き部323の形状を三角形としている。
【0085】
上述したように、予備加熱時における半導体ウェハーWのY軸方向の照度分布については下段のハロゲンランプHLによる光照射が支配的であり、X軸方向の照度分布については上段のハロゲンランプHLによる光照射が支配的となる。他の方向の照度分布については、上段および下段のハロゲンランプHLに光照射による影響が混合し、その程度はX軸方向からの角度に応じてX軸方向の照度分布とY軸方向の照度分布との間となる。そして、第2実施形態で切り欠き部123を形成しているのは、ルーバー121の壁面を高さ方向に見込む角がより大きな上段のハロゲンランプHLからの光照射がルーバー121の壁面によって遮光される領域を小さくするためである。
【0086】
従って、切り欠き部の形状としては、ルーバー121の端部のうち下段に配置された複数のハロゲンランプHLの長手方向(X軸方向)と直交する部位が最も深く、かつ、上段に配置された複数のハロゲンランプHLの長手方向(Y軸方向)と直交する部位が最も浅く、その間は連続的になだらかに深さを変化させるのが好ましい。図15に示したサインカーブの切り欠き部223および図16に示した三角形の切り欠き部323は、このような形状を実現したものである。図15の切り欠き部223または図16の切り欠き部323を形成すれば、ルーバー121の全周にわたって、上段のハロゲンランプHLおよび下段のハロゲンランプHLから半導体ウェハーWの裏面に照射される光量の総和が均一となる。その結果、予備加熱時における半導体ウェハーWの裏面の周方向での照度分布をより均一なものとすることができる。
【0087】
また、上記各実施形態においては、フラッシュ加熱部5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。また、ハロゲン加熱部4に備えるハロゲンランプHLの本数も40本に限定されるものではなく、上段および下段に複数する配置する形態であれば任意の数とすることができる。
【0088】
また、本発明に係る熱処理装置によって処理対象となる基板は半導体ウェハーに限定されるものではなく、液晶表示装置などのフラットパネルディスプレイに用いるガラス基板や太陽電池用の基板であっても良い。また、本発明に係る技術は、金属とシリコンとの接合、或いはポリシリコンの結晶化に適用するようにしても良い。
【0089】
また、本発明に係る熱処理技術は、フラッシュランプアニール装置に限定されるものではなく、ハロゲンランプを使用した枚葉式のランプアニール装置やCVD装置などのフラッシュランプ以外の熱源の装置にも適用することができる。特に、チャンバーの下方にハロゲンランプを配置し、半導体ウェハーの裏面から光照射を行って熱処理を行うバックサイドアニール装置に本発明に係る技術は好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 熱処理装置
3 制御部
4 ハロゲン加熱部
5 フラッシュ加熱部
6 チャンバー
7 保持部
10 移載機構
21,121 ルーバー
22 ルーバーステージ
65 熱処理空間
123,223,323 切り欠き部
CX 中心軸
FL フラッシュランプ
HL ハロゲンランプ
W 半導体ウェハー
図1
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