特許第5977189号(P5977189)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5977189画像形成装置及び画像形成装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977189
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】画像形成装置及び画像形成装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20160817BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   G03G15/20 555
   G03G21/14
【請求項の数】14
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2013-68876(P2013-68876)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-191296(P2014-191296A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】591044164
【氏名又は名称】株式会社沖データ
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090620
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 宣幸
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敏貴
【審査官】 平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−022093(JP,A)
【文献】 特開2013−025045(JP,A)
【文献】 特開平09−006179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 15/00− 15/01
G03G 21/00− 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に現像剤像を形成する画像形成部と、前記媒体を加熱して前記現像剤像を前記媒体に定着させる定着部材と、前記定着部材へ熱を供給する加熱手段と、前記定着部材の温度を検知する温度検知手段とを備える画像形成装置において、
前記定着部材の温度が、設定された設定温度範囲内となるように、前記加熱手段を制御する温度制御手段と、
当該画像形成装置で実行中の現画像形成処理で残っている残媒体数を計数する残媒体数計数手段と、
前記温度制御手段が前記定着部材の温度を設定された設定温度範囲内に制御する第1の制御処理を継続するか、前記温度制御手段が前記加熱手段をオフに制御した加熱オフ状態で残媒体数分の定着処理を行う第2の制御処理に移行するかを判定する制御処理判定手段とを有し、
前記温度制御手段は、前記制御処理判定手段の判定結果に従って、前記加熱手段を制御し、
前記制御処理判定手段は、前記温度検知手段が計測する温度変化と、前記温度制御手段の制御履歴と、前記残媒体数計数手段が計数した残媒体数とを利用して、前記第1の制御処理を継続するか、前記第2の制御処理に移行するかを判定し、
前記制御処理判定手段は、
前記温度検知手段が計測する温度変化と、前記温度制御手段の制御履歴とに基づき、現時点から前記第2の制御処理に移行した状態で、前記残媒体数分の媒体の定着処理を前記定着部材が行った定着処理終了時点の前記定着部材の蓄熱量を計算する蓄熱量計算部と、
前記温度検知手段が計測する温度変化と、前記温度制御手段の制御履歴とに基づき、当該画像形成装置で実行中の現画像形成処理における前記定着処理終了時点での前記定着部材の定着処理終了時温度を計算する定着処理終了時温度計算部と、
前記蓄熱量計算部が計算した蓄熱量と、前記定着処理終了時温度計算部が計算した定着処理終了時温度とに基づいて、前記定着処理終了時点から前記定着部材が当該蓄熱量の加熱により温度上昇した後の上昇後温度を求める上昇後温度計算部と、
前記上昇後温度計算部が求めた上昇後温度と、前記定着処理終了時点以後の前記設定温度範囲の上限値とに基づいて、前記第1の制御処理を継続するか、前記第2の制御処理に移行するかを判定する判定部とを有する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
当該画像形成装置内で前記媒体を搬送する搬送機構と
前記定着処理終了時温度計算部が計算した定着処理終了時温度と、前記設定温度範囲の下限値との比較結果に基づき、当該画像形成装置が前記第1の制御処理から前記第2の制御処理に移行する際に、前記搬送機構の媒体搬送間隔を調整する媒体搬送間隔調整手段とをさらに有する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記蓄熱量計算部は、前記加熱手段の発熱量と前記媒体の吸熱量との差に基づいて蓄熱量を計算することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記蓄熱量計算部は、過去所定期間の加熱手段がオン状態である発熱時間に基づいて、前記加熱手段の発熱量を算出することを特徴とする請求項に記載の画像形成装置
【請求項5】
前記蓄熱量計算部は、前記温度検知手段が計測する温度変化を利用して、前記媒体の吸熱量を計算することを特徴とする請求項に記載の画像形成装置
【請求項6】
前記媒体の厚さを検知する媒体厚検知手段をさらに備え、
前記定着処理終了時温度計算部は、前記媒体厚検知手段が検知した前記媒体の厚さに基づいて、定着処理終了時温度の計算結果を補正する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
当該画像形成装置内の温度を検知する装置温度検知手段をさらに備え、
前記定着処理終了時温度計算部は、前記装置温度検知手段が検知した装置温度に基づいて、定着処理終了時温度の計算結果を補正する
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
媒体に現像剤像を形成する画像形成部と、前記媒体を加熱して前記現像剤像を前記媒体に定着させる定着部材と、前記定着部材へ熱を供給する加熱手段と、前記定着部材の温度を検知する温度検知手段とを備える画像形成装置の制御方法において、
温度制御手段、残媒体数計数手段、制御処理判定手段を有し、
前記温度制御手段は、前記定着部材の温度が、設定された設定温度範囲内となるように、前記加熱手段を制御し、
前記残媒体数計数手段は、当該画像形成装置で実行中の現画像形成処理で残っている残媒体数を計数し、
前記制御処理判定手段は、前記温度制御手段が前記定着部材の温度を設定された設定温度範囲内に制御する第1の制御処理を継続するか、前記温度制御手段が前記加熱手段をオフに制御した加熱オフ状態で残媒体数分の定着処理を行う第2の制御処理に移行するかを判定し、
前記温度制御手段は、前記制御処理判定手段の判定結果に従って、前記加熱手段を制御し、
前記制御処理判定手段は、前記温度検知手段が計測する温度変化と、前記温度制御手段の制御履歴と、前記残媒体数計数手段が計数した残媒体数とを利用して、前記第1の制御処理を継続するか、前記第2の制御処理に移行するかを判定し、
前記制御処理判定手段は、蓄熱量計算部、定着処理終了時温度計算部、上昇後温度計算部、及び判定部を有し、
前記蓄熱量計算部は、前記温度検知手段が計測する温度変化と、前記温度制御手段の制御履歴とに基づき、現時点から前記第2の制御処理に移行した状態で、前記残媒体数分の媒体の定着処理を前記定着部材が行った定着処理終了時点の前記定着部材の蓄熱量を計算し、
前記定着処理終了時温度計算部は、前記温度検知手段が計測する温度変化と、前記温度制御手段の制御履歴とに基づき、当該画像形成装置で実行中の現画像形成処理における前記定着処理終了時点での前記定着部材の定着処理終了時温度を計算し、
前記上昇後温度計算部は、前記蓄熱量計算部が計算した蓄熱量と、前記定着処理終了時温度計算部が計算した定着処理終了時温度とに基づいて、前記定着処理終了時点から前記定着部材が当該蓄熱量の加熱により温度上昇した後の上昇後温度を求め、
前記判定部は、前記上昇後温度計算部が求めた上昇後温度と、前記定着処理終了時点以後の前記設定温度範囲の上限値とに基づいて、前記第1の制御処理を継続するか、前記第2の制御処理に移行するかを判定する
ことを特徴とする画像形成装置の制御方法。
【請求項9】
前記画像形成装置は、搬送機構及び媒体搬送間隔調整手段をさらに備え、
前記搬送機構は、前記画像形成装置内で前記媒体を搬送し、
前記媒体搬送間隔調整手段は、前記定着処理終了時温度計算部が計算した定着処理終了時温度と、前記設定温度範囲の下限値との比較結果に基づき、当該画像形成装置が前記第1の制御処理から前記第2の制御処理に移行する際に、前記搬送機構の媒体搬送間隔を調整する
ことを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項10】
前記蓄熱量計算部は、前記加熱手段の発熱量と前記媒体の吸熱量との差に基づいて蓄熱量を計算することを特徴とする請求項8又は9に記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項11】
前記蓄熱量計算部は、過去所定期間の加熱手段がオン状態である発熱時間に基づいて、前記加熱手段の発熱量を算出することを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項12】
前記蓄熱量計算部は、前記温度検知手段が計測する温度変化を利用して、前記媒体の吸熱量を計算することを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項13】
前記画像形成装置は、媒体厚検知手段をさらに備え、
前記媒体厚検知手段は、前記媒体の厚さを検知し、
前記定着処理終了時温度計算部は、前記媒体厚検知手段が検知した前記媒体の厚さに基づいて、定着処理終了時温度の計算結果を補正する
ことを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項14】
前記画像形成装置は、装置温度検知手段をさらに備え、
前記装置温度検知手段は、前記画像形成装置内の温度を検知し、
前記定着処理終了時温度計算部は、前記装置温度検知手段が検知した装置温度に基づいて、定着処理終了時温度の計算結果を補正する
ことを特徴とする請求項8〜13のいずれかに記載の画像形成装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及び画像形成装置の制御方法に関し、例えば、電子写真式のプリンタに適用し得る。
【背景技術】
【0002】
トナー(現像剤)によるトナー像(現像剤像)を印刷用紙(媒体)に転写して定着させる電子写真式のプリンタ(画像形成装置)では、印刷用紙に形成されたトナー像を、熱及び圧力により定着させる定着装置が備えられている。
【0003】
従来の定着装置においては、画像形成装置の制御手段による制御に基づいて、定着ローラを加熱し、定着ローラの温度を温度検知手段で検知し、その温度が印刷条件に応じて最適となるようにヒータの駆動を制御する。さらに、従来の定着装置においては、加圧ローラを定着ローラに押圧し、定着ローラと加圧ローラにより形成されるニップ部6aに、トナーが転写された印刷用紙を通過させることで、トナーを熱と圧力により印刷用紙に定着させる方式が一般的である。
【0004】
従来の定着装置では、上述の通り定着ローラをヒータにより加熱するが、その定着ローラの温度は、印刷に用いる印刷用紙の種類等の諸条件に基づいて定められた目標の温度を保つことが望ましい。
【0005】
従来の画像形成装置において、定着装置を構成する定着ローラの温度を調整する構成として特許文献1の記載技術がある。特許文献1に記載の画像形成装置では、定着装置に印刷用紙を通過(以下、「通紙」とも呼ぶ)させた後に、ヒータをオフにして定着ローラを一定時間空回し(印刷用紙が通過していない状態で回転)させることにより、定着ローラの(以下、「オーバーシュート」とも呼ぶ)を抑制し、定着ローラの温度をコントロールしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−128747号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、通紙後に定着ローラを空回しして定着ローラのオーバーシュートを抑制する画像形成装置では、通紙直後に待機時間が発生し、すぐに次の印刷用紙の定着処理に移行できず、印刷速度に影響を与える恐れがある。
【0008】
そのため、定着部材(例えば、定着ローラ)の温度を安定的に目標範囲内に保つことができる画像形成装置及び画像形成装置の制御方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の本発明の画像形成装置は、媒体に現像剤像を形成する画像形成部と、前記媒体を加熱して前記現像剤像を前記媒体に定着させる定着部材と、前記定着部材へ熱を供給する加熱手段と、前記定着部材の温度を検知する温度検知手段とを備える画像形成装置において、(1)前記定着部材の温度が、設定された設定温度範囲内となるように、前記加熱手段を制御する温度制御手段と、(2)当該画像形成装置で実行中の現画像形成処理で残っている残媒体数を計数する残媒体数計数手段と、(3)前記温度制御手段が前記定着部材の温度を設定された設定温度範囲内に制御する第1の制御処理を継続するか、前記温度制御手段が前記加熱手段をオフに制御した加熱オフ状態で残媒体数分の定着処理を行う第2の制御処理に移行するかを判定する制御処理判定手段とを有し、(4)前記温度制御手段は、前記制御処理判定手段の判定結果に従って、前記加熱手段を制御し、(5)前記制御処理判定手段は、前記温度検知手段が計測する温度変化と、前記温度制御手段の制御履歴と、前記残媒体数計数手段が計数した残媒体数とを利用して、前記第1の制御処理を継続するか、前記第2の制御処理に移行するかを判定し、(6)前記制御処理判定手段は、(6−1)前記温度検知手段が計測する温度変化と、前記温度制御手段の制御履歴とに基づき、現時点から前記第2の制御処理に移行した状態で、前記残媒体数分の媒体の定着処理を前記定着部材が行った定着処理終了時点の前記定着部材の蓄熱量を計算する蓄熱量計算部と、(6−2)前記温度検知手段が計測する温度変化と、前記温度制御手段の制御履歴とに基づき、当該画像形成装置で実行中の現画像形成処理における前記定着処理終了時点での前記定着部材の定着処理終了時温度を計算する定着処理終了時温度計算部と、(6−3)前記蓄熱量計算部が計算した蓄熱量と、前記定着処理終了時温度計算部が計算した定着処理終了時温度とに基づいて、前記定着処理終了時点から前記定着部材が当該蓄熱量の加熱により温度上昇した後の上昇後温度を求める上昇後温度計算部と、(6−4)前記上昇後温度計算部が求めた上昇後温度と、前記定着処理終了時点以後の前記設定温度範囲の上限値とに基づいて、前記第1の制御処理を継続するか、前記第2の制御処理に移行するかを判定する判定部とを有することを特徴とする。
【0010】
第2の本発明は、媒体に現像剤像を形成する画像形成部と、前記媒体を加熱して前記現像剤像を前記媒体に定着させる定着部材と、前記定着部材へ熱を供給する加熱手段と、前記定着部材の温度を検知する温度検知手段とを備える画像形成装置の制御方法において、(1)前記画像形成装置は、温度制御手段、残媒体数計数手段、制御処理判定手段を有し、(2)前記温度制御手段は、前記定着部材の温度が、設定された設定温度範囲内となるように、前記加熱手段を制御し、(3)前記残媒体数計数手段は、当該画像形成装置で実行中の現画像形成処理で残っている残媒体数を計数し、(4)前記制御処理判定手段は、前記温度制御手段が前記定着部材の温度を設定された設定温度範囲内に制御する第1の制御処理を継続するか、前記温度制御手段が前記加熱手段をオフに制御した加熱オフ状態で残媒体数分の定着処理を行う第2の制御処理に移行するかを判定し、(5)前記温度制御手段は、前記制御処理判定手段の判定結果に従って、前記加熱手段を制御し、(6)前記制御処理判定手段は、前記温度検知手段が計測する温度変化と、前記温度制御手段の制御履歴と、前記残媒体数計数手段が計数した残媒体数とを利用して、前記第1の制御処理を継続するか、前記第2の制御処理に移行するかを判定し、(7)前記制御処理判定手段は、(7−1)前記温度検知手段が計測する温度変化と、前記温度制御手段の制御履歴とに基づき、現時点から前記第2の制御処理に移行した状態で、前記残媒体数分の媒体の定着処理を前記定着部材が行った定着処理終了時点の前記定着部材の蓄熱量を計算する蓄熱量計算部と、(7−2)前記温度検知手段が計測する温度変化と、前記温度制御手段の制御履歴とに基づき、当該画像形成装置で実行中の現画像形成処理における前記定着処理終了時点での前記定着部材の定着処理終了時温度を計算する定着処理終了時温度計算部と、(7−3)前記蓄熱量計算部が計算した蓄熱量と、前記定着処理終了時温度計算部が計算した定着処理終了時温度とに基づいて、前記定着処理終了時点から前記定着部材が当該蓄熱量の加熱により温度上昇した後の上昇後温度を求める上昇後温度計算部と、(7−4)前記上昇後温度計算部が求めた上昇後温度と、前記定着処理終了時点以後の前記設定温度範囲の上限値とに基づいて、前記第1の制御処理を継続するか、前記第2の制御処理に移行するかを判定する判定部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、定着部材の温度を安定的に目標範囲内に保つことができる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係る画像形成装置の制御系の構成(機能的構成)について示したブロック図である。
図2】第1の実施形態に係る画像形成装置の概略断面図である。
図3】第1の実施形態に係る定着装置内部の構成について示した概略斜視図である。
図4】第1の実施形態に係る印刷動作について示したフローチャートである。
図5】第1の実施形態に係る加熱制御部が行う蓄熱量判定処理について示したフローチャートである。
図6】第1の実施形態に係る印刷制御部が行う紙間変更要否の判定処理について示したフローチャートである。
図7】第1の実施形態に係る印刷制御部が行う紙間再開判定処理について示したフローチャートである。
図8】第1の実施形態に係るオーバーシュート温度と蓄熱量との関係(その1)について示した説明図である。
図9】第1の実施形態に係るオーバーシュート温度と蓄熱量との関係(その2)について示した説明図である。
図10】第1の実施形態に係る印刷制御部が行う温度変化量の制御について示した説明図である。
図11】第1の実施形態に係る印刷制御部が行う温度変化量の制御とその副作用について示した説明図である。
図12】第1の実施形態に係る印刷制御部が行う紙間の調整要否の判定方法について示した説明図である。
図13】第1の実施形態に係る画像形成装置の制御動作の例について示したタイミングチャートである。
図14】第1の実施形態に係る画像形成装置で、従来技術に基づく制御動作を行った場合の例について示したタイミングチャートである。
図15】第1の実施形態の画像形成装置に係る効果を示すグラフである。
図16】第2の実施形態に係る画像形成装置の制御系の構成(機能的構成)について示したブロック図である。
図17】第2の実施形態に係る印刷制御部が行う温度変化量の制御について示した説明図である。
図18】第2の実施形態に係る加熱制御部が行う蓄熱量判定処理について示したフローチャートである。
図19】第3の実施形態に係る画像形成装置の制御系の構成(機能的構成)について示したブロック図である。
図20】第3の実施形態に係る印刷制御部が行う温度変化量の制御について示した説明図である。
図21】第3の実施形態に係る加熱制御部が行う蓄熱量判定処理について示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(A)第1の実施形態
以下、本発明による画像形成装置及び画像形成装置の制御方法の第1の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。
【0014】
(A−1)第1の実施形態の構成
図2は、第1の実施形態の概略断面図である。
【0015】
第1の実施形態の画像形成装置1は、電子写真式のプリンタであるものとして以下の説明を行う。
【0016】
図2に示すように、画像形成装置1には、記録光露光部材としてのLEDヘッド3、記録光に応じたトナー像現像して媒体としての印刷用紙Pに形成(転写)する画像形成部としてのトナー像形成部5、トナー像形成部5により形成されたトナー像を印刷用紙Pに定着させる定着装置6、トナー像形成部5に供給する媒体としての印刷用紙Pを載置(堆積)する用紙トレイ91、定着装置6によりトナー像が定着処理された印刷用紙Pを排紙(載置)するための排紙トレイ92、及び装置内で印刷用紙Pを搬送する搬送機構として用紙搬送部4が配置されている。
【0017】
なお、以下では、画像形成装置1で、印刷用紙Pが搬送される方向を媒体搬送方向と呼ぶものとする。また、以下では、媒体搬送方向において、印刷用紙Pの供給源である用紙トレイ91の側を上流側、印刷用紙Pの排出先である排紙トレイ92の側を下流側と呼ぶものとする。
【0018】
トナー像形成部5には、現像ユニット51及び転写ローラ52が配置されている。そして、現像ユニット51には、感光体ドラム511、帯電ローラ512、及びトナーカートリッジ513が配設されている。
【0019】
帯電ローラ512は、感光体ドラム511の表面を一様に帯電させるものである。トナーカートリッジ513は、感光体ドラム511に供給するためのトナー剤を蓄積するものであり、現像ユニット51に着脱可能に配設されている。感光体ドラム511は、表面に記録光に応じたトナー像を形成するものである。感光体ドラム511は、帯電ローラ512により一様に帯電させられた後、LEDヘッド3の記録光が照射されると表面に静電潜像が形成される。そして、感光体ドラム511の表面に形成された静電潜像にトナーカートリッジ513のトナー剤が供給されると、トナー像が形成(現像)される。
【0020】
転写ローラ52は、感光体ドラム511と対向する位置に配置されており、表面にトナー像が形成された感光体ドラム511との間で印刷用紙Pを挟持して、印刷用紙Pに当該トナー像を転写するものである。
【0021】
定着装置6は、定着部材としての定着ローラ64、定着ローラ64を加熱する加熱手段としての定着ヒータ61、定着装置6内部の温度を検知する温度検知手段としてのサーミスタ62、定着ローラ64との間で印刷用紙Pを挟持し、印刷用紙Pに圧力を加えながら搬送する加圧ローラ63を有している。
【0022】
用紙搬送部4は、印刷用紙Pを搬送するための用紙搬送路41、42を有している。
【0023】
用紙搬送路41は、用紙トレイ91上の印刷用紙Pを、トナー像形成部5まで搬送するものである。用紙搬送路41上には、上流側から順に、用紙トレイ91上の印刷用紙Pを繰り出すためのピックアップローラ43、1対の搬送ローラ42a、42b、印刷用紙Pの位置を検知するための書き出しセンサ8、及び1対の搬送ローラ42c、42dが配置されている。
【0024】
用紙搬送路42は、定着装置6から排出された印刷用紙Pを、排紙トレイ92まで搬送するものである。用紙搬送路42には、上流側から順に、1対の搬送ローラ42a、42b、及び1対の搬送ローラ42c、42dが配置されている。
【0025】
次に、画像形成装置1の制御系の構成について、図1を用いて説明する。
【0026】
図1に示すように、画像形成装置1では、印刷制御部100により各構成要素の画像形成に係る制御が行われている。図1に示すように、画像形成装置1には、上述の各構成要素を駆動するための構成要素として、トナー像形成部電源7、ヒータ電源16、搬送モータ電源17、用紙搬送モータ18、定着モータ電源20、定着装置モータ21を有している。そして、印刷制御部100には、LEDヘッド3、トナー像形成部電源7、書き出しセンサ8、ヒータ電源16、搬送モータ電源17、用紙搬送モータ18、定着モータ電源20、定着装置モータ21、サーミスタ62が接続されている。また、印刷制御部100は、定着モータ制御部101、用紙搬送制御部102、温度制御手段としての加熱制御部103、及び設定情報記憶部104を有している。
【0027】
加熱制御部103は、定着装置6の温度制御を行う加熱制御手段である。定着モータ制御部101は、定着装置モータ21の駆動を制御する制御手段として機能するものである。用紙搬送制御部102は、用紙搬送部4を制御し、用紙の搬送を制御する用紙搬送制御手段として機能するものである。設定情報記憶部104は、印刷制御部100の動作に必要となる各種パラメータ等の情報(以下、「設定情報」と呼ぶ)を記憶している。定着モータ制御部101、用紙搬送制御部102、及び加熱制御部103の処理内容の詳細、及び、設定情報記憶部104に記憶される設定情報の詳細については、後述する動作説明の欄で説明する。
【0028】
トナー像形成部電源7は、トナー像形成部5に電圧を印加する電源として機能するものである。定着装置モータ21は、定着ローラ64を回転駆動するものである。また、定着モータ電源20は、定着装置モータ21に定着装置モータに電力を供給するものである。用紙搬送モータ18は、用紙搬送部4を構成する各搬送モータを駆動するものである、また、搬送モータ電源17は、用紙搬送モータ18に電力を供給するものである。ヒータ電源16は、定着ヒータ61に電力を供給するものである。
【0029】
そして、印刷制御部100は、例えば、外部のPC等により構成される上位コントローラXからの指示信号(例えば、印刷内容を記述した印刷ジョブ等のデータ)が供給されると、その指示信号に基づいて各部の制御を行う。上位コントローラXから供給される指示信号には、1又は複数ページ分の印刷データと、印刷条件(例えば、用いる印刷用紙Pの種類等)が含まれるものとする。
【0030】
次に、定着装置6の詳細構成について、図3を用いて説明する。
【0031】
図3は、定着装置6内部の構成について示した概略斜視図である。
【0032】
定着ローラ64の具体的な構成については限定されないものであるが、この実施形態における具体的な構成例について以下に説明する。この実施形態において、定着ローラ64は、芯金(基体)となる中空の円柱形状のシャフト64aと、シャフト64aの外周面に被覆(形成)された弾性層64bにより構成されるものとする。また、この実施形態では、定着ローラ64の断面の直径(外径)は28mmであるものとする。またシャフト64aには素材として鉄が用いられているものとする。さらに、シャフト64aの厚さ(円柱形状の芯金の層厚)は、0.5mmであるものとする。
【0033】
弾性層64bには、素材としてシリコンゴムが用いられているものとする。また、弾性層64bの厚さは、1mmであるものとする。
【0034】
定着ローラ64は図示しないギアを有しており、このギアが定着装置モータ21により回転駆動されることで定着ローラ64が回転駆動される。
【0035】
加圧ローラ63は、ばね等の図示しない弾性体により、定着ローラ64に圧接する向きに押し付けられている。加圧ローラ63は定着ローラ64に対向する位置において定着ローラ64に当接しており、これにより、用紙と加圧ローラ63が当接する範囲(以下、「ニップ部6a」と呼ぶ)が形成されている。
【0036】
定着ヒータ61はたとえばハロゲンヒータなどが使用され、さらに、定着ヒータ61の両端は電圧印加手段としてのヒータ電源16に接続されている。定着ヒータ61は、この電源より電圧を印加されることで発熱する。この実施形態の例では、定着ヒータ61に印加される電圧は、100Vであり、さらに、定着ヒータ61の出力は800Wであるものとする。
【0037】
サーミスタ62は定着ローラ64の表面温度を検出するものであり、例えば、温度に応じて自身の抵抗値が変化するサーミスタ用の半導体素子により構成することができる。そして、印刷制御部100では、その抵抗値の変化を検出することで温度情報を取得することができる。この実施形態では、サーミスタ62は、SUS等の金属により形成された図示しない支持部材により支持されているものとする。また、その支持部材は、定着ローラ64に接触するように設置されており、定着ローラ64の表面温度と略同一温度となるものとする。その結果、サーミスタ62が検知する温度は、定着ローラ64の表面温度と略同一温度となる。なお、画像形成装置1において、定着ローラ64の表面温度を検知するための手段は限定されないものであり、例えば定着ローラ64の温度を非接触に検知する方式としてもよい。
【0038】
定着装置モータ21と定着ローラ64とは図示しないギア等の駆動力伝達機構を用いて接続されている。定着ローラ64は、印刷制御部100の制御に基づいて定着装置モータ21が駆動すると回転する。
【0039】
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、以上のような構成を有する第1の実施形態の画像形成装置1の動作(実施形態の画像形成装置の制御方法)を説明する。
【0040】
図4は、画像形成装置1の印刷動作の全体処理について示したフローチャートである。
【0041】
画像形成装置1は起動すると、印刷制御部100による処理が開始する。そして、印刷制御部100(加熱制御部103)は、サーミスタ62により定着ローラ64の温度を検知し、所定の設定温度(例えば、初期設定に基づく設定温度)となるように定着ヒータ61の発熱量を制御する(S101)。
【0042】
そして、印刷制御部100は、上位コントローラXから印刷指示の供給を受けたものとする(S102)。また、印刷制御部100(定着モータ制御部101)は印刷指示を受けると、定着装置モータ21を制御して、定着ローラ64の回転を開始させる。
【0043】
なお、印刷制御部100の設定情報記憶部104には、印刷条件ごとに最適な品質となるパラメータが設定されているものとする。そして、設定情報記憶部104には、少なくとも、印刷条件を構成する印刷用紙Pの厚さ(以下、「用紙厚」と呼ぶ)に対応するパラメータとして、定着装置6(定着ローラ64)の制御に適用する設定温度、上限温度、及び下限温度が記憶されているものとする。ただし、上位コントローラXから供給される印刷指示に印刷用紙Pの種類だけが含まれている場合には、設定情報記憶部104に、印刷用紙Pの種類ごとの用紙厚に対応する設定温度等を記憶しておくようにしてもよい。
【0044】
そして、印刷制御部100は、設定情報記憶部104の設定情報から、上述の印刷指示に対応した設定温度、上限温度、下限温度を選択し、それぞれを設定温度T1、上限温度TH1、下限温度TL1として保持する。また、以下では、印刷制御部100において、現在処理中の印刷処理(以下、「現印刷」とも呼ぶ)での印刷条件に基づく設定温度をT1、上限温度をTH1、下限温度をTL1とする。さらに、以下では、印刷制御部100において、現印刷の次に印刷する制御処理(以下、「次印刷」とも呼ぶ)での印刷条件に基づく設定温度をT2、上限温度をTH2、下限温度をTL2とそれぞれ呼ぶものとする。
【0045】
さらにまた、以下では、上限温度及び下限温度により示される範囲を「印刷可能温度範囲」、もしくは「設定温度範囲」とも呼ぶものとする。印刷可能温度範囲とは印刷用紙P(当該印刷指示に係る用紙厚の印刷用紙P)ヘトナーを定着させることができる温度範囲である。印刷可能温度範囲を構成する下限温度及び上限温度は、ニップ部6a内に搬送されたトナーと印刷用紙Pの温度が必要十分なだけ上昇可能であり、且つ、トナーを印刷用紙Pに固着させることができる範囲である必要がある。これに対して例えば印刷用紙Pの温度上昇が不十分である場合は、溶解したトナーが印刷用紙Pの中に十分に浸透することができなくなり、トナー剥がれ等の印刷不具合を生じることになる。また印刷用紙Pの温度上昇が必要以上である場合は溶解したトナーの流動性が大きくなりすぎ、印刷用紙P内に浸透する以外に定着ローラ64に付着してしまい、その部分が再度印刷用紙Pに接触する際に付着してしまう等の印刷不具合を生じる。上述の条件を満たすことができる印刷可能温度範囲としては、例えば、150〜190℃の範囲内で設定することが望ましい。
【0046】
その後、印刷制御部100(加熱制御部103)は、定着ローラ64の表面温度(サーミスタ62で検出する温度)が、現印刷に係る印刷可能温度範囲内(TL1〜TH1の範囲内)であるかを判断する(S103)。定着ローラ64の表面温度が印刷可能温度範囲内の場合、印刷制御部100(用紙搬送制御部102)は、印刷用紙Pの搬送を開始する制御を行い、後述するステップS104の処理に移行する。
【0047】
なお、加熱制御部103は上位コントローラXからの印刷指示による印刷指示に応じて、定着ローラ64の表面温度(サーミスタ62で検出する温度)を、設定情報に基づく設定温度T1になるように定着ヒータ61のオン、オフを制御する。加熱制御部103は、定着ローラ64の表面温度が設定温度T1よりも低い場合は、設定温度との温度差が大きくなるほど定着ヒータ61をオンする時間を長くしてオフする時間を短くすることで、定着ヒータ61の発熱量を大きくして設定温度により早く近づけるようにする。また設定温度に近づくほど定着ヒータ61をオンする時間を短くしてオフする時間を多くすることで発熱量を調整し、設定温度を超えないように制御しているものとする。また、加熱制御部103は、定着ローラ64の温度が設定温度T1よりも高い場合は、定着ヒータ61への通電をオフすることで発熱を止めて定着ローラ64の温度を低下させることで設定温度T1に近づくように制御している。
【0048】
そして、定着ローラ64の表面温度が印刷可能温度範囲内の場合、印刷制御部100(加熱制御部103)は、印刷開始とともに、蓄熱量判定処理を開始する(S104)。ステップS104で開始する蓄熱量判定処理は定着ローラ64の蓄熱量を算出して最適な制御を行うための処理であり、以下詳細に説明する。
【0049】
図8図9は第1の実施形態における蓄熱量判定処理に係るオーバーシュートと蓄熱量の関係について示した説明図である。
【0050】
図8(a)は定着ローラ表面温度の時間変化を示している。また、図8(b)は通紙が完了した後の定着ローラ64の単位時間当たりの温度変化量(以下、これを「温度傾き」と呼ぶ)と、通紙完了時とその後の最大上昇温度との温度差(以下これを「オーバーシュート量ΔTos」と呼ぶ)との関係を示すグラフである。
【0051】
定着ヒータ61は定着ローラ64の内部に設置されて発熱する。定着ローラはその熱容量が大きいため、定着ヒータ61が発熱するとその熱が定着ローラ64の表面に到達するまでに時間がかかり、さらに定着ローラ64の内部のシャフト64aや弾性層64bに熱を蓄える。以下これを蓄熱と呼ぶ。図8(a)は印刷時の定着ローラ温度Tupの時間変化を示しており、図中通紙期間において、定着ヒータ61は加熱制御部103により加熱制御が行われるものとする。通紙が完了するとそれ以上熱を供給する必要がないため、加熱制御部103はヒータをオフ状態(定着ヒータ61をOFFした状態、以下、「加熱オフ状態」とも呼ぶ)とする。しかし、上述した定着ローラ64の熱容量により内部には蓄熱があり、通紙が終わったことで印刷用紙Pが熱を奪わなくなるためにその熱が定着ローラ64の表面温度を上げることとなり、その表面温度が上昇する。これが、定着ローラ64におけるオーバーシュート現象である。この温度上昇は定着装置6の特性に応じた所定の時間が経過すると最大値を示し、その後温度が低下する。これは蓄熱された熱量のほうが定着ローラ64の表面から奪われる熱量(ここでは加圧ローラヘ移動する熱量)よりも多い場合に上昇し、逆に少なくなると温度が低下していくが、最大値を示すまでの時間は定着装置6の特性により決定される。
【0052】
次に、定着装置6(定着ヒータ61)における蓄熱量と通紙完了後の温度上昇傾きの関係を説明する。
【0053】
定着ヒータ61の非定常熱伝導方程式は、例えば、以下の式(1)で表すことができる。なお、以下の(1)式では、Qは蓄熱量[J]、cは比熱[J/kg・K]、ρは密度[kg/m]、Tは温度、dx・dv・dzは体積[m]をそれぞれ示している。
【数1】
【0054】
上記の(1)式を定着ローラ64に当てはめて考えると、Qは定着ローラ64内の蓄熱量でTは温度でありその時々で変化する値である。それに対して比熱c、密度ρ、体積dx・dy・dzは定着ローラ64の構成によって決定される値であり時間では変化せず常に一定である。
【0055】
よって上記の(1)式から、定着ローラ64の温度上昇傾き(dT/dt)は、定着ローラ64の蓄熱量Qに比例することがわかる。
【0056】
図8(a)に示すように、オーバーシュート量ΔTosが大きい場合は通紙完了後の温度上昇が急、つまり温度上昇傾きが大きく、逆の場合は温度上昇傾きが小さくなっている。図8(b)のグラフは前記特性について、条件を変えて実測した結果である。図8(b)に図示するように通紙完了後の温度上昇傾きとオーバーシュート量ΔTosとは比例することがわかる。
【0057】
図9(a)は蓄熱量Qと温度上昇傾きの関係について示したグラフである。
【0058】
蓄熱量Qの算出方法は後述するが、図9(a)に示すように、蓄熱量Qと通紙完了後の温度上昇傾き(dT/dt)とは比例の関係がある。したがって、図9(a)に示される関係と、上述の図8(b)で示される関係とから、図9(b)のグラフが得られる。つまり蓄熱量Qとオーバーシュート量ΔTosとは比例の関係にあり、本関係を用いて蓄熱量Qからオーバーシュート量ΔTosを求めることができる。
【0059】
次に、上述のステップS104において、加熱制御部103が行う蓄熱量Qの算出方法について説明する。
【0060】
図9(b)は蓄熱量Qとオーバーシュート温度Tosを算出する方法を説明する図である。
【0061】
蓄熱量Qはその定義から定着ローラ64に入る熱量Qin(加えられる熱量)と出て行く熱量Qout(排出される熱量)との差で表される。定着ローラ64におけるQinとは定着ヒータ61の発熱量であり、ヒータの出力は一定(800W)であるから、過去にオンした時間から発熱量を計算できる(発熱量[J]=出力[W]×時間[s])。
【0062】
Qoutとは雰囲気や印刷用紙P、加圧ローラが奪う熱量であるが、温度差が大きいほど単位時間当たりに移動する熱量は増える(ニュートンの冷却則)ことと、特に通紙中は加圧ローラ温度が約100℃、印刷用紙Pが25℃等であることから、印刷中はそのほとんどを印刷用紙Pに移動する熱量が占めることとなる。さらに、接触する2物体間での熱の移動はその物体間の温度差に比例するので、印刷中の定着装置においてQoutは定着ローラ64と印刷用紙Pとの温度差に比例することとなる。印刷用紙Pの温度は10秒程度の短時間であればほぼ一定とみなせるため、Qoutは定着ローラ温度に比例すると考えられる。そこで、第1の実施形態ではQoutを定着ローラ64の温度から算出するものとする。
【0063】
そして、上述のステップS104において、加熱制御部103が開始する蓄熱量判定処理をフローチャートで表すと図5のようになる。
【0064】
加熱制御部103は、まず、過去所定期間分(例えば10秒間)のヒータオン時間(定着ヒータ61がON状態であった時間)を計測し、そのヒータオン時間に基づいてQinを算出し、保持する(S201)。言い換えると、加熱制御部103は、定着ヒータ61に対する制御履歴に基づいてQinを算出することができる。
【0065】
さらに、加熱制御部103は、Qoutとして現在のローラ温度Tupを取得して保持する(S202)。
【0066】
次に、加熱制御部103は、ローラ内蓄熱量Qを以下の(2)式を用いて算出する(S203)。
【0067】
Q=Qin−Qout …(2)
そして、加熱制御部103は、オーバーシュート温度Tosを算出する(S204)。オーバーシュート温度Tosは、例えば、上述の図9(b)におけるQとオーバーシュート温度Tosの関係に基づき、以下の(3)により求めることができる。
【0068】
Tos=Tup+(A×Q+B) …(3)
上記の(3)式において、A、Bは実験より得られる係数である。この実施形態では、例として、A=2.57、B=19とする。例えば、Tup=160℃である時点においてQ=2と算出された場合、オーバーシュート温度TosはTos=160+(2.57×2+19)=185℃と算出されることになる。
【0069】
以下では、オーバーシュート温度Tosについて「上昇後温度」とも呼ぶものとする。また、この実施形態では、印刷制御部100は、上昇後温度を計算する「上昇後温度計算部」として機能する。
【0070】
次に、加熱制御部103は、上位コントローラXからの次の印刷指示に対応する温度に係るパラメータ(設定温度T2、上限温度をTH2、下限温度をTL2)を、設定情報記憶部104から読みこんで保持する(S205)。ここで次の印刷要求がない場合は、加熱制御部103は、現印刷の設定の内容(設定温度T1、上限温度TH1、下限温度TH1)を、次印刷の設定の内容(設定温度T2、上限温度をTH2、下限温度をTL2)とみなして、そのまま適用するものとする。
【0071】
次に、加熱制御部103は、低下させる必要がある温度変化量を算出する(S206)。
【0072】
以下、ステップS206の処理について図10を用いて説明する。
【0073】
図10は、加熱制御部103が、現印刷よりも次印刷の方が設定温度等が低い場合(すなわち、T1>T2、TH1>TH2、TL1>TL2の場合)の各温度の時間変化を示す図である。具体的には、図10では、設定温度と印刷可能温度範囲(上限温度及び下限温度)と定着ローラ64の表面温度の時間変化の一例を示している。
【0074】
また、図10では、仮に、加熱制御部103が、通紙完了後に定着ヒータ61をオフさせる温度制御を行った場合の定着ローラ64の温度変化を、ローラ温度Tupとして図示している。
【0075】
そして、図10では、現印刷時は加熱制御部103によってローラ温度Tupは設定温度T1に制御されているが、通紙が完了して定着ヒータ61をオフさせた後にオーバーシュートが発生しており、このときのオーバーシュート量はΔTos、オーバーシュート温度はTosと図示されている。このとき、定着装置6において、オーバーシュート温度Tosは次印刷の上限温度TH2を超えているため、すぐに次印刷を開始すると印刷用紙Pに与える熱量が過多となり、印刷不良が発生するおそれがある。それを防止するために印刷制御部100は、定着ローラ64を回転させたままの状態で、ローラ温度Tupが上限温度TH2よりも低下するまで待ち、その後次の給紙を再開する。そのため、上述のような温度低下待ちを行わずにすぐに次の印刷を行うためには、オーバーシュート温度Tosを上限温度TH2よりも低く抑える必要がある。そして、それを実現するために、印刷制御部100は、オーバーシュート量ΔTosを以下の(4)式で表される温度低下量Tdownだけ減少させる必要がある。なお、以下の(4)式において、例えば、Tos=185℃、TH2=170℃の場合、Tdown=−15℃とするようにしてもよい。
【0076】
Tdown=TH2−Tos …(4)
次に、加熱制御部103は、TosをTH2以下とするために必要なヒータオフ状態での通紙枚数Nを算出する(S207)。
【0077】
以下、TosをTH2以下とするために必要な処理(操作量)について、図11を用いて説明する。図11(a)は、印刷枚数Nとオーバーシュート量ΔTosとの関係について示したグラフである。また、図11(b)は、印刷枚数Nと温度低下量Tdownとの関係について示したグラフである。さらに、図11(c)は、印刷枚数Nと、通紙中の温度低下量Tlossとの関係について示した説明図である。
【0078】
加熱制御部103がヒータオフ状態とすると、ヒータ61の発熱量が減少して定着ローラ64へ入る熱量Qinが減少する。その状態でも、定着装置6において通紙は継続するためQoutは減らず、結果として蓄熱量Qが減少する。そのため、例えば、現印刷の印刷終了前の3枚をヒータオフ状態で通紙すると、現印刷の最終紙の通紙完了時の蓄熱量Qが減少するため、それに比例するオーバーシュート量ΔTosが減少し、オーバーシュー量ΔTosが15℃となる(図11(a)参照)。つまり、加熱制御部103が、ヒータオフ状態で通紙する制御を行う前と比較して、オーバーシュート温度Tosが15℃減少することとなる。以上のような特性から、加熱制御部103が、蓄熱量Qに応じて、通紙枚数Nを制御することにより、通紙完了後のオーバーシュート量を低下させることができる(図11(b)参照)。そして、通紙枚数Nは、以下の(5)式により求めることができる。以下の式(5)において、Cは実験から得られる値であり、この実施形態では、例えば−5℃/枚程度とする。そして、例えば、Tdown=−15℃とした場合は、N=15/5=3枚となる
N=Tdown/C …(5)
次に、加熱制御部103は、通紙枚数Nで定着ヒータ61をオフした制御を行った場合の、その後(通紙後)における定着ローラ64の低下温度を算出する(S208)。
【0079】
以下、加熱制御部103が、ヒータオフ状態で通紙枚数N分通紙した場合の定着ローラ64の温度変化について、図11(c)を用いて説明する。図11(c)に示すように、定着ヒータ61をオフにすると、定着ヒータ61の発熱量が減少して定着ローラ64へ入る熱量Qinが減少する。その状態で、定着装置6への通紙は継続するので、Qoutは減らず、蓄熱量Qが減少するとともに、定着ローラ64のローラ表面温度が急速に低下する。そのヒータオフ状態での通紙枚数Nと、定着ローラ64の温度低下量Tlossとの関係が、図11(c)により示されている。図11(c)では、通紙枚数Nと温度低下量Tlossとは比例関係にあることを示している。したがって、印刷制御部100(加熱制御部103)では、通紙枚数Nがわかれば温度低下量Tlossは、以下の(6)式を用いて算出することができる。以下の(6)式において、Dは実験から得られる値(係数)であり、この実施形態では例えば、−5℃/枚とする。例えば、定着ローラ64オーバーシュートを抑えるために必要なヒータオフ状態で通紙させる通紙枚数Nが3枚の場合、その通紙によって低下する定着ローラ64の温度Tlossは、Tloss=3*−5=−15℃となる。
【0080】
Tloss=N*D …(6)
次に、加熱制御部103は、最終紙印刷時(現印刷の最終ページの通紙時点)の定着ローラ64の温度(以下、「Tfinal」と呼ぶ)を算出する(S209)。
【0081】
ここで、加熱制御部103が、温度Tfinalを算出するにあたって、以下のような課題がある。
【0082】
定着装置6において、オーバーシュート量ΔTosが非常に大きい場合は、多くの枚数をヒータオフ状態で通紙させる必要がある。そして、その通紙中の定着ローラ64の温度低下も大きくなり、場合によっては下限温度TL1を下回り定着不良を起こしてしまうおそれがある。第1の実施形態の画像形成装置1を実現する上では、このような課題を解決する必要があるが、具体的な解決手段について、図12を用いて説明する。
【0083】
図12は、ヒータオフ状態での通紙枚数N=3枚とした場合のローラ温度Tupの時間変化を示す図である。
【0084】
図12の実線で示したローラ温度Tupの変化を見ると、オーバーシュート温度Tosを次上限温度TH2よりも低下させるために、ヒータオフ状態で3枚分通紙しているが、そのときの低下温度は−15℃となっている。そのため、定着ローラ64の表面温度が、ヒータオフ状態を開始した時点の160℃から15℃低下したため、145℃となっている。このとき、定着ローラ64の表面温度は、下限温度であるTL1=150℃を下回ってしまい、定着不良が発生するおそれが発生する。
【0085】
以上のようにヒータオフ開始時の定着ローラ64の温度Tupと、温度低下量Tlossから以下の(7)式で、最終紙印刷時の定着ローラ温度Tfinalが算出できる。なお、Tupは、上述の通り、現在の定着ローラ64の表面温度である。そして、例えば、Tup=160℃で通紙枚数N=3の場合、Tlossは、例えば−15℃となるため、Tfinal=160−15=145℃となる。
【0086】
Tfinal=Tup+Tloss …(7)
以上のようなS104で開始した蓄熱量判定処理を印刷制御部100(加熱制御部103)が、ヒータの制御周期(例えば0.1秒)ごとに行うことで、その時点での最適な設定を算出できる。
【0087】
そして、ステップS104により蓄熱量判定処理を開始した後、印刷制御部100は用紙搬送制御部102等により、印刷用紙Pの給紙を開始し、画像形成処理を開始する(S105)。
【0088】
印刷制御部100は、書き出しセンサ8の検知結果により印刷用紙Pの搬送位置を検知して次頁(次に印刷する印刷用紙P)の給紙開始タイミングを検知する(S106)。印刷制御部100は、まず書き出しセンサ8にて印刷用紙P後端が通過したことを検知した後、あらかじめ設定された所定の距離(例えば60mm)だけ前の印刷用紙Pが搬送されたことを時間等の計測で検知する。例えば、画像形成装置1内における用紙搬送速度が120mm/sの場合は、60/120=0.5秒が経過すると、印刷制御部100は、所定の紙間(搬送路上で、連続する印刷用紙Pの間の距離)が開いたと判断し、次の給紙開始タイミングとなったことを検知することができる。
【0089】
印刷制御部100は、次頁の給紙開始タイミングを検知すると、残りの印刷枚数(以下、「残媒体数」とも呼ぶ)を計算する(S107)。印刷制御部100は上位コントローラXからの印刷要求での印刷指示枚数から、すでに印刷した枚数を減算することによって、残りの印刷枚数を算出できる。すでに印刷した枚数は、例えば書き出しセンサ8の変化回数を計数して保持しておくようにしてもよい。したがって、印刷制御部100は、上述の残媒体数を計数する残媒体数計数手段としても動作することになる。
【0090】
次に、印刷制御部100(加熱制御部103)は、第二印刷制御(第2の印刷制御)へ移行する必要があるか否かを判定する処理(以下、「制御処理判定」とも呼ぶ)を行う(S108)。ここでの第二の印刷制御とは、現印刷の通紙完了後のオーバーシュートを少なく抑えるための一連の制御(以下、「内部蓄熱量制御」とも呼ぶ)を指す。また、以下では、印刷制御部100(加熱制御部103)が、第二印刷制御に移行せずに、従前からの処理を継続する制御を第一印刷制御(第1の印刷制御)と呼ぶものとする。印刷制御部100(加熱制御部103)は、第二印刷制御へ移行する必要があると判断した場合後述するステップS110へ移行し、そうでない場合(第一印刷制御を継続すると判断した場合)には後述するステップS109へ移行する。ステップS108において、印刷制御部100は、まず、算出した残印刷枚数と、蓄熱量判定処理で算出した通紙枚数N(ヒータオフ状態で印刷(通紙)すべき枚数)とを比較する。そして、印刷制御部100は、上述の蓄熱量判定処理で算出した通紙枚数Nが、残印刷枚数より少なければ第二の印刷制御への移行は不要と判断し、そうでない場合は第二の印刷制御への移行は必要と判断する。
【0091】
上述のステップS108で、第二の印刷制御への移行は不要と判断された場合、印刷制御部100は、上位コントローラXからの印刷指示の全ページの印刷が完了したかを確認する(S109)。全ページについて印刷完了している場合には、印刷制御部100は、印刷処理終了し、そうでない場合には上述のステップS105の処理に戻って動作する。
【0092】
上述のステップS108で、第二の印刷制御への移行は必要と判断された場合、印刷制御部100(加熱制御部103)は、まず定着ヒータ61をオフの状態(ヒータオフ状態)に制御して、定着ローラ64に不要な熱を与えないようにする(S110)。
【0093】
そして、印刷制御部100は、第二の印刷制御を開始し、蓄熱量判定処理を行うことで紙間を変更する必要の有無を判定する(S111)。この実施形態では、印刷制御部100は、最終紙通紙完了時温度Tfinal(ヒータオフ状態で通紙枚数N分連続通紙した後における定着ヒータ61の温度)と、下限温度TL1とを比較することで判断するものとする。
【0094】
最終紙通紙完了時とは、現印刷の最終ページ(通紙枚数Nのうちの最終の印刷用紙P)について定着処理が終了した時点のことである。なお、以下では、この時点を「定着処理終了時点」とも呼ぶ。また、Tfinalのことを、以下では「定着処理終了時温度」とも呼ぶものとする。さらに、この実施形態では、印刷制御部100は、Tfinal(定着処理終了時温度)を計算する「定着処理終了時温度計算部」として機能する。
【0095】
ステップS111における、印刷制御部100の判定処理(紙間変更要否の判定処理)について、図6のフローチャートを用いて説明する。
【0096】
まず、印刷制御部100は、現印刷の最終ページ(通紙枚数Nのうちの最終の印刷用紙P)の印刷時における定着ローラ64の温度Tfinalから、次印刷の上限温度TH2に対して温度が高い分を、オーバーシュート低減不足温度Tshortとして算出する(S110−1)。印刷制御部100は、例えば、以下の(8)式により、オーバーシュート低減不足温度Tshortを求めることができる。例えば、TL1=150℃、Tfinal=145℃の場合はTshort=5℃となる。
【0097】
Tshort = Tfinal−TL1 …(8)
次に、印刷制御部100は、ヒータオフ状態での連続通紙後(通紙枚数N分の印刷処理後)の温度Tfinalと下限温度TL1とを比較する(S110−2)。
【0098】
「Tfinal>TL1」の場合、印刷制御部100は、紙間を変更せず(紙間を増加させず)に、後述のステップS112へ移行する。「Tfinal>TL1」である場合は、ヒータオフ状態で通紙しても、下限温度を下回ることがないため、紙間は変更せずに印刷を行うことができるためである。
【0099】
一方、「Tfinal<TL1」の場合、印刷制御部100は、紙間を変更する(紙間を増加させる)と判定して、後述するステップS114へ移行する。Tfinal<TL1である場合は、最終紙が下限温度を下回るため、紙間を空ける処理を行う必要があるためである。
【0100】
上述のステップS112で、紙間を変更すると判断された場合、印刷制御部100では、加熱制御部103の蓄熱量判断処理の結果による給紙停止要求に応じて、用紙搬送制御部102により給紙(用紙トレイ91からの印刷用紙Pの繰出し)が一時停止される(S112)。
【0101】
次に、印刷制御部100は、蓄熱量判定処理結果に基づいて給紙再開が可能か否かの判定を繰り返し、給紙再開タイミングを検出する(S113)。
【0102】
次に、上述のステップS113の処理について図7のフローチャートを用いて説明する。
【0103】
印刷制御部100は用紙搬送制御部102によって給紙を一時停止させ、このときの定着ローラ64の温度(以下、「Tup0」と呼ぶ)を測定して保持する(S113−1)。
【0104】
そして、加熱制御部103は、不足温度Tshortだけ、定着ローラ64の表面温度が上昇するまで、定着ローラ64の表面温度の監視を継続する(S113−2)。印刷制御部100におけるステップS113−2の監視処理は、温度Tup0と、現時点での定着ローラ64の温度Tupとの差分を求め、その結果を不足温度Tshortと比較することで実現できる。
【0105】
そして、印刷制御部100(加熱制御部103)は、定着ローラ64の表面温度が不足温度Tshortだけ上昇したことを検知(Tshort<Tup−Tup0となったことを検知)すると、印刷制御部100は、用紙搬送制御部102によって給紙を再開させて(S113−3)、後述するステップS114の処理に移行する。
【0106】
給紙を再開すると、印刷制御部100は、残りページについて全ての印刷処理(通紙)を行って(ステップS114、S115)、現印刷の印刷処理を終了し、上位コントローラXからの指示信号に基づく次印刷の印刷処理に移行する。
【0107】
以上の処理を繰り返すことにより、画像形成装置1では、印刷品位を落とすことなく、定着装置6における通紙完了後のオーバーシュートを抑えることができ、さらに、定着装置6の温度低下待ち時間を大幅に短縮することができる。
【0108】
なお、以下では、紙間のことを「媒体搬送間隔」とも呼ぶものとする。また、この実施形態では、印刷制御部100が紙間を調整(媒体搬送間隔を調整)する「媒体搬送間隔調整手段」として機能する。
【0109】
上述のステップS113−1で、給紙を再開する条件(S113−2の処理に移行する要件)は、上述の温度判定以外にも、以下のような方式を適用するようにしてもよい。
【0110】
例えば、印刷制御部100が、あらかじめ給紙停止時の温度上昇速度を記憶(設定情報記憶部104の設定情報として記憶)しておき、その速度と不足温度から給紙を停止させておくべき時間を算出するようにしてもよい。そして、印刷制御部100は、その算出した時間だけ、給紙を停止させた後に再開することとしてもよい。なお、印刷制御部100は、給紙再開から再開後最初の印刷用紙Pが定着装置6へ到達するまでの遅れ分(書き出しセンサ8と定着装置6との距離に基づく遅延時間)を考慮して、給紙を停止させておくべき時間に反映する(例えば、算出した時間から上述の遅れ分の時間を減算する)ようにしてもよい。
【0111】
また、上述のステップS114で、残りページの印刷処理を行う場合に、その紙間を広げると、定着ローラ64表面の温度低下が少なくなり、下限温度TL1をより確実に上回ることができるため好ましい。
【0112】
さらに、第1の実施形態では、定着部材として定着ローラ64を使用し、その蓄熱量に応じて、通紙枚数Nや紙間(用紙搬送間)等を変更することとしたが、他の定着部材を用いるようにしてもよい。例えば、第1の実施形態において、定着部材に蓄熱量が少ない定着ベルトを用いる定着装置を用いる場合でも、加熱手段としてのヒータやその他蓄熱部材の蓄熱量に応じて通紙枚数Nや紙間(用紙搬送間)等を設定すれば、同様な効果を得ることができる。その場合、媒体の吸熱量を算出する手段としての温度は、上述の蓄熱部材の温度とすればよい。
【0113】
次に、画像形成装置1が、上述の図4図7のフローチャートに従って動作した場合の時系列的な動作例について、図13のタイミングチャートを用いて詳細説明する。
【0114】
図13(a)は、定着ヒータ61の表面温度(サーミスタ62により検知されるローラ温度Tup)及びオーバーシュート温度Tosについて示している。
【0115】
図13(b)では、加熱制御部103が、設定温度と現在のローラ温度Tupとの比較から判断したヒータ駆動制御信号を示している。
【0116】
図13(c)に示すQinは、図13(b)に示すヒータ駆動状態から算出される、定着ローラ64へ入る熱量である。
【0117】
図13(d)に示す蓄熱量ΔQは、図13(c)に示すQinから、図13(a)に示す定着ローラ温度を引いた値である。
【0118】
図13(e)に示す定着装置通紙状態は、図14(f)に示す書き出しセンサ8による用紙位置検知結果から求めた定着装置6内での通紙状態を示す。これは書き出しセンサ8で、印刷用紙Pの先端を検知した時間に、書き出しセンサ8と定着装置6との距離を用紙搬送速度で割った時間が経過すると、印刷用紙Pの先端が定着装置6に到達したと判断できることから得られる。
【0119】
図13(f)に示す書き出しセンサ検知結果は、印刷制御部100が用紙搬送制御部102によって印刷用紙Pを搬送した結果書き出しセンサ8へ到達した場合に検知される。
【0120】
図13(g)は、定着装置モータ21の回転状態を示している。
【0121】
次に、図13の各タイミングt00〜t04における、各項目(図13(a)〜図13(g))に係るパラメータ値又は動作状態の関係について説明する。
【0122】
図13では、タイミングt00〜t04の間と、タイミングt04以後で、設定温度及び印刷可能温度範囲(上限温度、下限温度)が異なっているものとする。そして、図13では、タイミングt00〜t04の間の設定温度をT1、上限温度をTH1、下限温度をTL1としている。そして、図13では、タイミングt04以後の設定温度をT2、上限温度をTH2、下限温度をTL2としている。また、図14においては、T1>T2、TH1>TH2、TL1>TL2という関係となっているものとして説明する。
【0123】
まず、タイミングt00の時点の各パラメータ及び状態の遷移について説明する。 タイミングt00では、印刷制御部100が、印刷要求を受け取とり、定着装置モータ21の回転を開始させたものとする。そうすると、定着ローラ64の温度が低下(図13(a)参照)するため、加熱制御部103は定着ヒータ61を駆動させ(図13(b)参照)、その結果Qinが増加し始める(図13(c)参照)。さらに、加圧ローラ63の表面温度は低下しているので、蓄熱量は増加する(図13(d)参照)。
【0124】
次に、タイミングt01の時点の各パラメータ及び状態の遷移について説明する。タイミングt01の時点において、印刷制御部100は、定着ローラ64の表面温度が印刷可能温度範囲内であると判断すると、用紙搬送制御部102により給紙を開始する制御を行う。そして、印刷制御部100は、その後印刷制御を継続する。このとき、加熱制御部103は、蓄熱量ΔQ(図13(d)参照)の計算結果を元にしてオーバーシュート温度Tos(図13(a)参照)の算出も継続して行う。
【0125】
次に、タイミングt02の時点の各パラメータ及び状態の遷移について説明する。タイミングt02では、印刷制御部100は、残印刷枚数よりも通紙枚数N(ヒータオフ状態で通紙すべき枚数)が多くなったものとする。そして、印刷制御部100(加熱制御部102)は、定着ヒータ61をオフ状態とし、給紙を一時停止する制御を行うことになる。そして、印刷制御部100は、その後、定着ローラ64の表面温度の監視を継続する。
【0126】
次に、タイミングt03の時点の各パラメータ及び状態の遷移について説明する。
【0127】
タイミングt03時間では、印刷制御部100(温度制御部102)により、定着ローラ64の表面温度が、不足温度分上昇したことを検知され、印刷制御部100(用紙搬送制御部102)が給紙を再開させたものとする。そしてその後、ヒータオフ状態で通紙を行うことで、定着ローラ64内の蓄熱量は大きく減少していく。
【0128】
次に、タイミングt04の時点の各パラメータ及び状態の遷移について説明する。タイミングt04では、現印刷の最終ページについて印刷が完了した時点であるものとする。この時点で、定着ローラ64の蓄熱量は十分少なくなっており、その後のオーバーシュート温度Tosは次印刷の上限温度TH2よりも低く抑えることができる。したがってこの時点で、定着装置6は、すぐに次印刷の処理を開始することができ、温度低下待ち時間が発生しない。さらに、画像形成装置1では、最終紙通紙完了時温度も、前印刷の下限温度TL1を下回ることがなく、印刷不良の発生を防止できている。
【0129】
図14では、印刷制御部100が、従来の制御方式で、定着ヒータ61を制御した場合(第二の印刷制御や紙間の変更処理等を行わない場合)の時系列な動作例について示している。具体的には、図14では、印刷制御部100が、印刷開始から終了まで単純に設定温度に基づいて定着ヒータ61のON/OFFを制御した場合の例となっている。図14(a)〜図14(g)に示す各項目のパラメータ又は動作状態については、それぞれ上述の図13(a)〜図13(g)の項目に対応する内容となっている。ただし、図14(a)では、オーバーシュート温度については図示していない。
【0130】
次に、図14の各タイミングt10〜t12における、各項目(図14(a)〜図14(g))に係るパラメータ値又は動作状態の遷移について説明する。
【0131】
なお、図14では、タイミングt10〜t11と、タイミングt11以後で、上述の図13と同様に設定温度及び印刷可能温度範囲(上限温度、下限温度)が異なっている。
【0132】
図14の例では、タイミングt10からt11まで(印刷開始から印刷終了まで)、一様な印刷処理を行うため(第二の印刷制御を行わないため)、通紙完了まで同じ制御を繰り返している。そのため通紙完了時(タイミングt11)の定着ローラ64の蓄熱量が十分下がっていないため、通紙完了後の空回し中の定着ローラ64のオーバーシュート温度Tosが大きく、タイミングt11以後、次印刷設定での上限温度TH2を超えてしまっている。定着装置6では、この状態で通紙を行うと、次印刷用紙へ与える熱量が過多となってしまい印刷不良が発生する。そのため印刷制御部100は定着ローラ64の温度が上限温度TH2よりも低下するまで給紙を待つ必要があり、温度が上限温度TH2を下回った時点(t12)にて初めて次印刷の印刷用紙Pの給紙を開始する必要がある。
【0133】
図15は、この実施形態の画像形成装置1における内部蓄熱量制御の効果について示した実験結果のグラフである。図15(a)は、印刷制御部100が、上述の図14に示す動作を行った場合(従来の制御方式で、定着ヒータ61を制御した場合)における、現印刷の最終ページの通紙終了時点(タイミングt11の時点)でのオーバーシュート温度Tosについて示している。図15(b)は、印刷制御部100が、上述の図13に示す例の動作を行った場合の現印刷の最終ページの通紙終了時点(タイミングt04の時点)でのオーバーシュート温度Tosについて示している。以下では、図15(a)に示す例を「従来技術の動作例」と呼び、図15(b)に示す例を「本実施形態の動作例」と呼ぶものとする。
【0134】
図15では、現印刷に係る通紙枚数Nを1〜15枚の範囲内でそれぞれ変化させた場合のオーバーシュート温度Tos(通紙終了時点)の分布を示している。また、図15では、T1=170、TL1=160、TH1=180、T2=160、TL2=150、TH2=170としている。
【0135】
図15(a)に示すように、従来技術の動作例では、印刷枚数が増加するほど、現印刷に係る通紙終了時点でのオーバーシュート温度Tosは高くなり、印刷可能温度範囲を外れる傾向にある。これに対して、本実施形態の動作例を示す図15(b)では、印刷枚数が変化しても、現印刷に係る通紙終了時点でのオーバーシュート温度Tosの変化が、従来技術の動作例よりも少なく、より設定温度(目標温度)に近いことがわかる。
【0136】
(A−3)第1の実施形態の効果
第1の実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0137】
画像形成装置1では、定着装置6への通紙完了後において、定着ローラ64表面のオーバーシュート温度を十分低く抑えることができる。これにより、画像形成装置1では、定着ローラ64表面温度を、次印刷の上限温度よりも低く制御でき、無駄な温度低下待ち時間を短縮又は不要とすることができる。
【0138】
また、画像形成装置1では、最終紙印刷時において、定着ローラ64の表面温度を、下限温度よりも高く保つことができるため、印刷品質の劣化も防止できる。
【0139】
さらに、画像形成装置1の定着ローラ64では、内部の蓄熱量もできる限り、定着ローラ64の加熱に活用することができるため、エネルギーのより有効な活用が可能となる。
【0140】
(B)第2の実施形態
以下、本発明による画像形成装置及び画像形成装置の制御方法の第2の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。
【0141】
(B−1)第2の実施形態の構成
図16は、第2の実施形態の画像形成装置1Aの制御系の構成について示したブロック図であり、上述の図1と同一又は対応する部分には、同一又は対応する符号を付している。
【0142】
第2の実施形態の画像形成装置1Aでは、制御系の構成要素として用紙厚設定部204が追加されている点で第1の実施形態と異なっている。また、第2の実施形態において、その他の構成については、第1の実施形態と同様であるので、詳しい説明を省略する。
【0143】
用紙厚設定部204は、当該画像形成装置1Aで印刷される印刷用紙Pの厚みの設定を受付けることができる用紙厚設定手段である。用紙厚設定部204は、印刷制御部100Aへ接続されている。
【0144】
用紙厚設定部204は、ユーザ(操作者)が入力可能な操作入力部205(例えば、1又は複数のボタンによる入力手段)を有している。操作入力部205の具体的構成については限定されないものであるが、この実施形態では、厚紙ボタン205a及び薄紙ボタン205bにより操作入力部205により構成されているものとする。操作入力部205であ、ユーザが、厚紙ボタン205a、又は薄紙ボタン205bのいずれかを押下することにより、手動にて印刷される印刷用紙Pの厚みを設定することが可能な構成となっているものとする。
【0145】
また、印刷制御部100が上位コントローラXから取得した印刷データの中に、印刷用紙の厚さの指定が含まれているとき、用紙厚設定部204は、当該印刷データから印刷用紙Pの厚さに係る情報を取得するようにしてもよい。この場合用紙厚設定部204は、印刷制御部100の一部として構成されることになる。さらに、用紙厚設定部204は、用紙厚検知部として、図示しない一対のローラ(用紙搬送部4の搬送路上のローラ)を備え、当該ローラに搬送された印刷用紙Pの厚さを自動的に検知するように構成してもよい。
【0146】
以下では、用紙厚(印刷用紙Pの厚さ)のことを「媒体厚」とも呼ぶものとする。そして、この実施形態では、用紙厚設定部204が、媒体厚を検知する媒体厚検知手段として機能する。
【0147】
(B−2)第2の実施形態の動作
次に、以上のような構成を有する第2の実施形態の画像形成装置1Aの動作(実施形態の画像形成装置の制御方法)を説明する。
【0148】
第2の実施形態の画像形成装置1Aの全体処理についても、上述の図4を用いて説明することができる。以下では、第2の実施形態の画像形成装置1Aの動作について、第1の実施形態との差異部分のみを説明する。
【0149】
第2の実施形態の画像形成装置1Aでは、蓄熱量判定処理の内容が第1の実施形態と異なっている。第2の実施形態の画像形成装置1Aにおける蓄熱量判定処理の内容について、図18を用いて説明する。なお、図18では、上述の図5と同一の処理について同一のステップ番号(符号)を付している。
【0150】
第2の実施形態の蓄熱量判定処理の内容は、ステップS208がステップS208Aに置き換わっていること以外第1の実施形態と同様である。
【0151】
ステップS208Aにおいて、印刷制御部100は、定着ヒータ61をオフして通紙したときに低下する温度であるTlossの算出を行う。このとき、印刷制御部100は、Tlossの算出に仕様する係数であるDに、用紙厚設定部204の検知結果に応じた値を適用する(下記の(9)式)点で、第1の実施形態と異なっている。下記の(9)式では、D[用紙厚]は実験から得られる値であり、用紙厚ごとに最適な値を保持する。D[用紙厚]としては、例えば、用紙厚が80gsm(薄紙)である場合は−5℃/枚、160gsm(厚紙)の場合は−7.5℃/枚とすることが望ましい。
【0152】
Tloss=N*D[用紙厚] …(9)
例えば、定着ヒータ61のオーバーシュートを抑えるために必要とするヒータオフ状態で通紙させる通紙枚数Nが3枚で、用紙厚が160gsmであった場合(D=−7.5℃)は、その通紙によって低下する定着ローラ64の温度TlossはTloss=3*−7.5=−24℃となる。すなわち、用紙厚が厚紙(160gsm)の場合、薄紙(80gsm)の場合よりもより温度が低下する。
【0153】
図17は、第2の実施形態において、係数D[同紙厚]とヒータオフ状態での通紙枚数Nとの関係を示す図である。図17に示すように、同じ通紙枚数でも、印刷する用紙厚が厚いほど、通紙時の定着ローラ温度低下が大きくなっている。これは、用紙厚が厚くなるほど紙の体積は増加し、体積に比例する熱容量が増加し、より多くの熱が奪われる(吸収される)ためである。
【0154】
(B−3)第2の実施形態の効果
第2の実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加えて、以下のような効果を奏することができる。
【0155】
第2の実施形態では、用紙厚設定部204により、印刷する印刷用紙Pの厚みを取得し、蓄熱量判定処理(Tlossの算出処理)に適用している。これにより、第2の実施形態の画像形成装置1Aでは、第1の実施形態よりも精度よく蓄熱量判定処理を行うことができる。言い換えると、第2の実施形態の画像形成装置1Aでは、印刷用紙Pの厚さが変動しても、印刷不良を防止し、かつ次印刷までの待ち時間を大幅に短縮することができる。
【0156】
(C)第3の実施形態
以下、本発明による画像形成装置及び画像形成装置の制御方法の第3の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。
【0157】
(C−1)第3の実施形態の構成
図19は、第3の実施形態の画像形成装置1Bの制御系の構成について示したブロック図であり、上述の図1と同一又は対応する部分には、同一又は対応する符号を付している。
【0158】
第3の実施形態の画像形成装置1Bでは、制御系の構成要素として装置温度検知部305が追加されている点で第1の実施形態と異なっている。また、第3の実施形態において、その他の構成については、第1の実施形態と同様であるので、詳しい説明を省略する。
【0159】
装置温度検知部305は、当該画像形成装置1B内部の温度を検知する装置温度検知手段である。また、装置温度検知部305は、印刷制御部100Bへ接続されている。
【0160】
装置温度検知部305は、当該画像形成装置1Bの筐体内部であり、かつ、定着装置6の外部の所定の位置(例えば印刷制御部100B上)に、サーミスタ(例えば、定着装置6にて使用されるサーミスタ62と同様に温度検知可能な半導体素子)等の温度検知センサを設置して構成するようにしてもよい。
【0161】
すなわち、この実施形態では、装置温度検知部305が、装置温度を検知する装置温度検知手段として機能する。
【0162】
画像形成装置1Bは、定着装置6よりも大きい筐体で構成されており、定着装置6と比較して非常に熱容量が大きい。そのため、装置温度検知部305が検知する温度(以下、「装置温度」とも呼ぶ)は、ほぼ周囲(画像形成装置1Bの周囲)の雰囲気温度と同様となる。これは、画像形成装置1B内の用紙トレイ91に載置されている印刷用紙Pの温度(以下、「用紙温度」と呼ぶ)についても同様である。すなわち、装置温度と用紙温度はほぼ同様の温度が検知できる。そのため、用紙温度は装置温度検知部305で検知された温度と同様と推定することができる。
【0163】
(C−2)第3の実施形態の動作
次に、以上のような構成を有する第3の実施形態の画像形成装置1Bの動作(実施形態の画像形成装置の制御方法)を説明する。
【0164】
第3の実施形態の画像形成装置1Bの全体処理についても、上述の図4を用いて説明することができる。以下では、第3の実施形態の画像形成装置1Bの動作について、第1の実施形態との差異部分のみを説明する。
【0165】
第3の実施形態の画像形成装置1Bでは、蓄熱量判定処理の内容が第1の実施形態と異なっている。第3の実施形態の画像形成装置1Bにおける蓄熱量判定処理の内容について、図21を用いて説明する。なお、図21では、上述の図5と同一の処理について同一のステップ番号(符号)を付している。
【0166】
第3の実施形態の蓄熱量判定処理の内容は、ステップS208がステップS208Bに置き換わっていること以外第1の実施形態と同様である。
【0167】
ステップS208Bにおいて、印刷制御部100は、定着ヒータ61をオフして通紙したときに低下する温度であるTlossの算出を行う。このとき、印刷制御部100は、Tlossの算出に使用する係数であるDに、装置温度検知部305の検知結果に応じた値を適用する(下記の(10)式)点で、第1及び第2の実施形態と異なっている。下記の(10)式における、D[装置温度]は実験から得られる値であり、装置温度ごとに最適な値を保持する。D[装置温度]としては、例えば、例えば装置温度が25℃である場合は−5℃/枚、10℃である場合、は−7.5℃/枚とすることが望ましい。
【0168】
Tloss=N*D[装置温度] …(10)
例えばオーバーシュートを抑えるために必要なヒータオフで通紙させる枚数Nが3枚で、装置温度が10℃であった場合(D=−7.5℃)は、その通紙によって低下する定着ローラ64の温度TlossはTloss=3*L7.5=−24℃となり、装置温度が25℃の場合よりもより温度が低下することがわかる。
【0169】
図20は、第3の実施形態において、係数D[装置温度]とヒータオフ状態での通紙枚数Nとの関係を示す図である。
【0170】
図20に示すように、同じ通紙枚数でも装置温度が低い、つまり印刷する用紙の温度が低いほど、通紙時の定着ローラ温度低下が大きくなっている。これは印刷用紙Pの温度が低くなるほど定着ローラ64と印刷用紙Pとの温度差が大きくなる。すなわち、2物体間(定着ローラと印刷用紙P)の温度差が大きくなることで熱の移動が大きくなるためである。
【0171】
(C−3)第3の実施形態の効果
第3の実施形態によれば、第2の実施形態の効果に加えて、以下のような効果を奏することができる。
【0172】
第3の実施形態では、装置温度検知部305により、装置温度を取得し、蓄熱量判定処理(Tlossの算出処理)に適用している。これにより、第3の実施形態の画像形成装置1Bでは、第1の実施形態よりも精度よく蓄熱量判定処理を行うことができる。言い換えると、第3の実施形態の画像形成装置1Bでは、装置温度が変動しても、印刷不良を防止し、かつ次印刷までの待ち時間を大幅に短縮することができる。
【0173】
(D)他の実施形態
本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するような変形実施形態も挙げることができる。
【0174】
(D−1)上記の各実施形態では、本発明の画像形成装置をプリンタとして用いる例について説明したが、本発明の画像形成装置の用途は限定されないものであり、印刷機、複写機、複合機(MFP)、ファクシミリ等の他の種類の画像形成装置に適用するようにしてもよい。
【0175】
(D−2)第2の実施形態では、用紙厚を取得してTlossを算出する係数Dを算出し、ている。また、第3の実施形態では装置温度を検知して、Tlossを算出する係数Dを算出している。これに対して、用紙厚及び装置温度の両方を用いて、Tlossを算出する係数Dを算出するようにしてもよい。例えば、用紙厚と装置温度を重み付加算して、Tlossを算出する係数Dを算出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0176】
1…画像形成装置、100…印刷制御部、101…定着モータ制御部、102…用紙搬送制御部、103…加熱制御部、104…設定情報記憶部、16…ヒータ電源、17…搬送モータ電源、18…用紙搬送モータ、20…定着モータ電源、21…定着装置モータ、3…LEDヘッド、4…用紙搬送部、41、42…用紙搬送路、41a、41b、41c、41d、42a、42b、42c、42d…搬送ローラ、43…ピックアップローラ、5…トナー像形成部、51…現像ユニット、511…感光体ドラム、512…帯電ローラ、513…トナーカートリッジ、52…転写ローラ、…定着装置6、61…定着ヒータ、62…サーミスタ、63…加圧ローラ、64…定着ローラ、64a…シャフト、64b…弾性層、7…トナー像形成部電源、8…書き出しセンサ、91…用紙トレイ、92…排紙トレイ、P…印刷用紙。
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