特許第5977192号(P5977192)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5977192-経口固形製剤及びその製造方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977192
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】経口固形製剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4422 20060101AFI20160817BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20160817BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   A61K31/4422
   A61K9/20
   A61K47/20
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-78390(P2013-78390)
(22)【出願日】2013年4月4日
(62)【分割の表示】特願2007-118797(P2007-118797)の分割
【原出願日】2007年4月27日
(65)【公開番号】特開2013-129681(P2013-129681A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2013年4月4日
【審判番号】不服2014-22902(P2014-22902/J1)
【審判請求日】2014年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】横江 淳一
(72)【発明者】
【氏名】中城 圭介
(72)【発明者】
【氏名】片山 直久
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 俊哉
【合議体】
【審判長】 服部 智
【審判官】 村上 騎見高
【審判官】 穴吹 智子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−191516号公報(JP,A)
【文献】 特開2006−306754号公報(JP,A)
【文献】 改訂 医薬品添加物ハンドブック,2007年 2月28日,p.603−609,650−657,936−941
【文献】 ニルジピン錠5 ニルジピン錠10 添付文書 2013年5月改訂(第13版)
【文献】 ニルジピン錠5 ニルジピン錠10 添付文書 2001年11月改訂(第4版)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-31/80
A61K9/00-9/72
A61K47/00-47/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジヒドロピリジン系の薬剤と、タール色素を懸濁又は溶解した液で着色された粉体又は造粒物状の添加剤と、を混合して打錠して得られる経口固形製剤であって
記タール色素の配合割合が、経口固形製剤全体の0.0001〜2重量%であり、
前記タール色素は、食用青色5号、食用黄色4号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用黄色5号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号及び食用青色2号から選択される1以上である、経口固形製剤。
【請求項2】
素錠の形態である請求項1に記載の経口固形製剤。
【請求項3】
口腔内崩壊錠の形態である請求項1又は2に記載の経口固形製剤。
【請求項4】
前記ジヒドロピリジン系の薬剤が、アムロジピン又はその薬学上許容される塩を含有する請求項1〜3のいずれか1つに記載の経口固形製剤。
【請求項5】
前記タール色素が黄色5号である請求項1〜4のいずれか1つに記載の経口固形製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口固形製剤及びその製造方法に関し、より詳細には、光に対する安定性を有する経口固形製剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬効を示す主剤の中には、光に対し非常に不安定な薬剤がある。例えば、ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬であるアムロジピンは生体での血中半減期が長く、1日1回服用タイプの降圧剤として、臨床現場で幅広く使用されている。
しかし、ジヒドロピリジン系の薬物は、一般に光に対する安定性が課題になっている。それらのうち、アムロジピンは比較的、光分解を受けにくい化合物ではあるが、曝光量が多い場合は分解を受け、薬効が低下することが懸念される。
【0003】
そこで、アムロジピンの製剤化には、光に対する安定性を確保するための技術が要求されている。
例えば、ジヒドロピリジン誘導体の錠剤に酸化鉄を配合したフィルム剤をコーティングすることにより、光に対して安定化された錠剤が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかし、口腔内崩壊型製剤のように、口腔内にて30秒以内に崩壊することを要件とする製剤の場合は、錠剤全体をコーティングするこの技術では、速崩壊性が損なわれ、その機能が十分に発揮できない。また、薬物自身をコーティングして粒子を得ることは技術的に可能であるが、コーティングを施すことにより、粒子からの薬物の速溶出性が損なわれるため、服用後の十分な薬効の発揮が損なわれることが懸念される。
【0005】
さらに、コーティングを施さないジヒドロピリジン系の薬物に対する光安定化方法が提案されている。このような技術として、例えば、ニフェジピンに黄色三二酸化鉄を添加することにより、光によって生じる酸化体の生成量を抑制し、かつ主薬含量の低減を抑制している(特許文献2)。
【0006】
しかし、ここには、アムロジピンに関する記載はない。
一方、アムロジピンに関して、酸化鉄を配合することにより、アムロジピン及び薬学上許容される塩の光による変色及び分解を防止したことが紹介されている(特許文献3)。
【0007】
しかし、この文献では、黄色三二酸化鉄による変色及び分解の防止について記載されているのみであり、他の着色剤の効果については十分に検討されていない。
【特許文献1】特開2003−104888号公報
【特許文献2】特開昭55−22645号公報
【特許文献3】特開2006−306754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、光に対して不安定な薬物の光による変色及び分解を防止し、光に対する安定性を向上した経口固形製剤及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、通常よりも微量の色素を配合することによっても、予想外に、光に対して不安定な薬物の光分解の抑制及び錠剤表面の変色を抑えることができることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明の経口固形製剤は、主剤と、着色剤で着色された粉体又は造粒物状の添加剤とからなることを特徴とする。
また、本発明の経口固形製剤の製造方法は、添加剤を着色剤で着色し、得られた添加剤を主剤と混合し、打錠する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光に対して不安定な薬物の光による変色及び分解を有効に防止し、微量の着色剤を用いてもなお、光に対する安定性を向上した経口固形製剤を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1〜4及び比較例1〜2における色調変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の経口固形製剤は、主剤と、添加剤とを含んで構成される。
主剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、酔い止め、解熱鎮痛剤、芳香性健胃剤、健胃消化剤、制酸剤、ビタミン剤、滋養強壮剤、酵素製剤、滋養強壮保健薬、抗炎症薬、抗リウマチ薬、痛風治療剤、抗ヒスタミン剤、アレルギー剤、抗生物質製剤、合成抗菌剤、歯科口腔用薬、気管支拡張剤、鎮咳剤、去たん剤、睡眠鎮静剤、抗不安剤、抗てんかん剤、精神神経用剤、自律神経剤、中枢神経作用剤、鎮けい剤、脳代謝改善剤、脳循環改善剤、抗パーキンソン病剤、アルツハイマー治療剤、強心剤、不整脈用剤、利尿剤、血管収縮剤、血管拡張剤、血圧降下剤、高脂血症用剤、止瀉剤、消化性潰瘍用剤、下剤、ホルモン剤、糖尿病用剤等、あるいはプロドラッグ等の1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、光に対して不安定な薬物であることが効果的である。
【0013】
例えば、アムロジピン、ニフェジピン等のジヒドロピリジン誘導体、リトナビルやサキナビル等の抗ウイルス・HIVプロテアーゼ阻害薬、クロフィブラート等の高脂血症治療薬、イオポダートナトリウム、ヨウ化ナトリウム等のヨード類、イコサペント酸エチル(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等の高度不飽和脂肪酸誘導体類、リコピン、ビキシン、β−カロチン、キサントフィル、ルティン等のカルチノイド類、代謝性強心剤であるユビデカレノン、コエンザイムQ10等のユビキノン(補酵素Q)、メコバラミン等の各種ビタミン誘導体、インドメタシン、プラノプロフェン、ワルファリンカリウム、コルヒチン、ジアゼパム、シロシンゴピン、ノルエチステロン、ピレタニド、プロペリシアジン、ペルフェナジン、メキタジン、メダゼパム、メナテトレノン、塩酸インデノロール、レセルピン、ソファルコン、メシル酸ブロモクリプチン、塩酸ブフェトロール、塩酸オクスブレノール、アズレン類等又はこれらの薬学上許容される塩の1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、ヒジドロピリジン誘導体、特に、アムロジピン又はその薬学上許容される塩が効果的である。
【0014】
主剤の形態は特に限定されるものではなく、粉末状、固体状、顆粒状など、いずれの形態であってもよい。その大きさは、特に限定されず、例えば、口腔内崩壊錠として服用する際に、舌触り等を考慮して、適宜調整することができる。具体的には、5μm程度〜50μm程度の平均粒径が例示される。なお、主剤を適切な形状及び大きさにするためには、例えば、篩又はメンブレンフィルター等により粒径をそろえる方法、ボールミル粉砕機、ハンマーミル粉砕機、ピンミル粉砕機等で粉砕する方法等が挙げられる。また、主剤は、当該分野で公知の方法により、造粒したものであってもよい。
【0015】
本発明の経口固形製剤に含有される添加剤としては、特に限定されるものではなく、通常、医薬の分野において用いられるもののいずれであってもよい。例えば、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、溶解補助剤、流動化剤、甘味料、香料、発泡剤、界面活性剤、防腐剤等のそれぞれ1種又は2種以上を、単独又は2種以上を併用して用いることができる。
【0016】
これらの添加剤のうち、最も重量が大きいもの又は比較的重量が大きいものの1種又は2種以上の添加剤又は成分が、着色剤で着色されている。ここで、着色剤で着色されているとは、添加剤と着色剤とが単に混合されているものとは異なり、着色剤が、添加剤の少なくとも表面層にほぼ均一に付着しているか、又は着色剤が、添加剤の少なくとも表面層に浸透している状態を示す。
【0017】
このような着色剤での着色は、通常、着色剤の懸濁又は溶解液(好ましくは溶解液)を用いることにより実現することができる。つまり、着色剤を、例えば、水、エタノール等の有機溶媒等の当該分野で通常使用される液体に溶解又は懸濁し、これを、それ自体公知の方法により、添加剤に適用する方法が挙げられる。着色剤の溶液の添加剤への適用は、パンコーティング法、流動コーティング法、転動コーティング法等に基づいて、傾斜型のパン、通気型回転円筒型コーティング装置、汎用流動コーティング装置、ワースター型コーティング装置、複合型転動流動コーティング装置等の装置を利用して、噴霧器、ポンプ、スプレーガン、液送ライン等によって適用する方法が挙げられる。
【0018】
また、別の方法として、色素粒子を細かく粉砕し、乾式コーティング装置(メカノフュージョン、ホソカワミクロン製)等の装置を利用して、最も重量が大きいもの又は比較的重量が大きいものの1種又は2種以上の添加剤又は成分を被覆するように色素を付着させて、着色する方法が挙げられる。
【0019】
なお、着色剤の配合量は、用いる主剤の種類、着色剤の種類等によって適宜調整することができる。例えば、主剤の重量に対して0.01〜5重量%程度が適しており、さらに、0.01〜4重量%程度が好ましく、0.02〜4重量%程度、0.1〜3重量%程度がより好ましい。また、別の観点から、経口固形製剤全体の0.0001〜2重量%程度、0.0002〜1.5重量%程度、0.001〜2重量%程度、0.001〜1.5重量%程度が好ましい。
【0020】
また、着色剤の溶液を添加剤に適用する場合には、添加剤の1kgの重量に対して、40〜1000mL程度、さらに100〜400mL程度とすることが適している。別の観点から、着色剤の溶液の濃度が0.05w/v%〜5w/v%程度が適している。
【0021】
このように、着色剤の溶液を添加剤に適用することにより、添加剤の粒子間及び粒子表面、任意に粒子の内部にまで、着色剤溶液が浸透し、添加剤の少なくとも表面層に、ほぼ均一に着色剤を付着又は浸透させることができる。これにより、着色剤が添加剤に対して満遍なく、均一に行き渡り、より少量の着色剤で、主剤の十分な光安定性を与えることができる。
【0022】
なお、添加剤は、粉末状でもよく、造粒物でもよい。つまり、平均粒径が5〜500μm程度、さらに5〜300μm程度、5〜200μm程度とすることができる。このような形態は、上述したように、各種粉砕機等で主剤を粉砕等する方法によって得てもよいし、各種部材等により粒径をそろえることによって得てもよいし、当該分野で公知の方法を利用して造粒して得てもよい。
【0023】
造粒方法としては、湿式造粒、乾式造粒のいずれでもよい。湿式造粒の場合には、流動層造粒乾燥機、攪拌造粒機、円筒押出造粒機、転動流動層造粒コーティング機等、種々の装置を用いて又はスプレードライ法により造粒することができる。乾式造粒の場合には、ローラーコンパクター等の乾式造粒機、スラッグ打錠機等、種々の装置を用いて造粒することができる。なかでも、湿式造粒法で形成されたものが好ましい。湿式造粒法は、乾式造粒法に比べて、均一な粒子径が得られ、微粉の割合が減少することから、一般に成形性の良い顆粒が得られるからである。
【0024】
なお、添加剤を造粒する際には、任意に、後述する他の添加剤を添加してもよい。
本発明において用いることができる着色剤としては、特に限定されるものではなく、黄酸化鉄、三二酸化鉄(赤色)、オレンジエッセンス、褐色酸化鉄、カラメル、軽質無水ケイ酸、食用青色5号、食用黄色4号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用黄色5号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、食用青色2号、タルク、フルオレセインナトリウム、緑茶末、ビタミンC、食用レーキ色素、カロチノイド系色素、フラボノイド系色素、キノン系色素等が挙げられる。これらのうち、水溶性であるものが、製造工程の容易さから好ましい。また、タール色素であることが好ましく、特に黄色5号であることがより好ましい。黄色5号は水溶性であることから、容易に液状の着色剤を調製することができるとともに、ADI(1日摂取許容量:人が一生涯に渡って毎日摂取し続けても、健康に影響を及ぼさないと判断される量)が、黄色5号は0〜2.5mg・kgと、例えば、三二酸化鉄(0〜0.5mg/kg)に比較して、より安全性が高いからである。
【0025】
賦形剤としては、例えば、ブドウ糖、果糖、乳糖、白糖、還元麦芽糖、糖アルコール(例えば、D−マンニトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、マルチトール、ラクチトール等)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0026】
崩壊剤としては、例えば、クロスポビドン、カルボキシスターチナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、でんぷん、部分α化澱粉、コーンスターチ、乳糖、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム結晶セルロース、低置換度ヒドロキシピロピルセルロース、クロスカルメロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルメロース、ヒドロキシプロピルスターチ等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。なかでも、クロスカルメロース、カルボキシスターチナトリウム、カルメロース、でんぷん、ヒドロキシプロピルスターチ、クロスポピドンが好適に用いられる。崩壊剤は、通常、口腔内崩壊錠の全重量に対して、0.1重量%程度以上、さらに0.5重量%程度以上、特に2重量%程度以上が挙げられる。また、30重量%程度以下、さらに25重量%程度以下、特に15重量%程度以下が挙げられる。
【0027】
滑沢剤として、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ステアリン酸、軽質無水ケイ酸、硬化ナタネ油、硬化ひまし油、グリセリン脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム、安息香酸ナトリウム、L-ロイシン、L-バリン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0028】
結合剤としては、例えば、水溶性物質が挙げられる。例えば、ゼラチン、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、デキストリン、キタンサンガム、アラビアゴム末、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、部分けん化ポリビニルアルコール、メチルセルロース、プルラン、部分α化澱粉、糖類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0029】
溶解補助剤として酸化マグネシウム、酸化カルシウム、クエン酸ナトリウム、塩化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
流動化剤としては、例えば、水和二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。
甘味料としては、アスパルテーム、サッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、ステビア、ソーマチン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0030】
香料としては、ミント、レモン、オレンジ等が挙げられる。
発泡剤としては、例えば、酒石酸塩、クエン酸塩、重炭酸塩等が挙げられる。
界面活性剤としては、アルキル硫酸ナトリウムなどのアニオン系界面活性剤、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンヒマシ油誘導体などの非イオン系界面活性剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
防腐剤としては、例えば、安息香酸、パラオキシ安息香酸又はそれらの塩等が挙げられる。
【0031】
本発明の経口固形製剤は、種々の形態に製剤化されていてもよい。例えば、錠剤、口腔内崩壊錠、カプセル剤、丸剤、トローチ剤、顆粒剤、散剤等;懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ剤等の経口投与が可能な他の形態であってもよい。なかでも、錠剤、特に口腔内崩壊錠の形態とすることが有用である。
【0032】
錠剤、特に口腔内崩壊製剤の形状は特に限定されないが、円盤状、ドーナツ状、多角形板状、球状、楕円状、キャプレット状等とすることができる。なかでも、通常の錠剤の形状である円盤状であるものが好ましい。大きさは特に限定されず、直接、嚥下されないように若干大きめであることが適しており、例えば、直径が3〜30mm程度、厚みが1〜10mm程度であることが好ましい。なお、特に、本発明の経口固形製剤は、最外層に被覆層のない形態であることが好ましく、言い換えると、素錠の形態であることが好ましい。このような形態とすることにより、特に口腔内崩壊錠として舌触り、崩壊性等を好適に維持することができる。
【0033】
本発明の経口固形製剤、特に口腔内崩壊錠は、主剤に、上述したように着色剤で着色された粉体又は造粒物状の添加剤とを混合し、成形することによって製造することができる。
混合は、任意に上述した添加剤等を添加して、当該分野で公知の方法により、公知の装置等を利用して行うことができる。この際の混合は、着色剤での着色状態を変化又は損なわないために、湿潤又は加湿することなく行うことが好ましい。ここで湿潤又は加湿とは、口腔内崩壊錠の全重量の5%程度より多い水分量を添加することを意味する。
【0034】
混合物の成形は、当該分野で公知の方法により、公知の装置等を利用して圧縮して行うことが適している。例えば、圧縮成形する装置としては、錠剤の成形に使用する打錠用臼、打錠用上杵及び下杵を用い、油圧式ハンドプレス機、単発式打錠機またはロータリー式打錠機等を利用することができる。
【0035】
圧縮成形は、得られる錠剤が、適当な硬度、例えば、30N程度以上、さらに40N程度以上を有し、錠剤中に適当な独立空隙を確保し、口腔内崩壊錠として速やかに崩壊することができるように調節して行うことが好ましい。例えば、打錠圧は、特に限定されるものでなく、用いる装置、原理、錠剤の大きさ、主薬の種類等によって適宜調整することができる。上述したような装置を用いる場合には、例えば、打錠圧50kg/cm2程度以上、1500kg/cm2程度以下が挙げられ、通常300kg/cm2程度以上、1000kg/cm2程度以下が適している。なお、圧縮成形も、非湿潤及び非加湿下で行うことが適している。
【0036】
本発明の経口固形製剤が、圧縮成形により形成される場合には、添加剤の少なくとも表面層がほぼ均一に着色されていたとしても、最終固形製剤中において、必ずしもそのままの状態で存在しているとは限らず、例えば、圧縮成形により、添加剤及び/又は主剤の粒子空隙を埋設するように、添加剤の粒子形状が変形していることがある。これにともなって、着色剤が添加剤の表面層から脱離等することがあるが、いずれにしても、固形製剤中において、着色剤が、均一に分布又は周期的に分布していると考えられる。また、このように添加剤の少なくとも表面層がほぼ均一に着色されており、これを主剤と混合することにより、通常、主剤よりも配合量が多い添加剤が、主剤の粒子を取り囲むことにより、主剤に対する着色剤の付着又は主剤周辺における着色剤の配置が実現され、より微量の着色剤によって、主剤の光安定性を向上させることができる。
【0037】
以下に、本発明の経口固形製剤及びその製造方法を詳細に説明する。
実施例1〜4及び比較例1〜2
食用黄色5号を表1に従い秤量し、精製水50gに溶解し、コーティング液1〜4とした。
【0038】
【表1】
【0039】
続いて、ワースター型流動層造粒機(MP−SPC−01、パウレック製)に、D−マンニトール(平均粒径:約40μm)500gを投入し、吸気温度70℃、吸気風量0.80m3/秒、アトマイズ空気量15.0〜22.5NL/分、コーティング液1噴霧速度4.0〜6.0g/分の条件でコーティングし、着色D−マンニトール1を得た(平均粒径:約60μm)。
【0040】
同様にコーティング液2〜4をそれぞれD−マンニトールに噴霧し、着色D−マンニトール2〜4を得た。
その後、表2に従い各成分を秤量し、混合して、ロータリー式打錠機にて1錠重量200mg(硬度50N)になるように打錠し、口腔内にて20秒間で崩壊する口腔内崩壊錠を得た。
【0041】
【表2】
【0042】
なお、比較例1及び2では、任意に、黄色三二酸化鉄の粉末を溶液にせずにそのまま配合し、打錠することにより、口腔内崩壊錠とした。
試験例
実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた口腔内崩壊錠について光安定性試験を実施した。蛍光灯40万、80万、120万ルクス・時における色調変化を図1に示すとともに、酸化体の生成量を表4に示す。
【0043】
なお、色調変化は色差計(Z−300A、日本電色工業製)で測定した。
また、酸化体(2−[(2−アミノエトキシ)メチル]−4−(o−クロロフェニル)−6−メチル−3,5−ピリジンカルボン酸3−エチルエステル5−メチルエステル)の定量は液体クロマトグラフ法により分析した。
【0044】
HPLC分析法
カラム:オクタデシル基結合型シリカゲル(平均粒径3μm、内径4.6×長さ150mm)(関東化学株式会社製、商品名:Mightysil RP−18 GP 150−4.6(3μm))
カラム温度:35℃付近の一定温度
移動相A:水/トリフルオロ酢酸(5000:1)
移動相B:アセトニトリル/トリフルオロ酢酸(5000:1)
移動相の送液:移動相A及びBの混合比を表3に示すように変えて濃度勾配を制御する。
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】
図1から、比較例1では、色調の変化が目立ち、ルクスの上昇に伴い、色調の変化率ΔE値が10を超える値を示した。
一方、実施例1〜3では、いずれも、色調の変化が抑えられており、ΔE値は4以下程度と、比較例3よりも低い値を示した。また、実施例4では、ルクスの上昇にかかわらず、色調がほぼ一定であり、ΔE値もほぼ8程度であった。
【0048】
また、表4から、酸化体の生成について、無着色のD−マンニトールを用いた比較例1では、酸化体の生成量が多かったが、実施例1〜4の製剤ではD−マンニトールの着色度合いによって、酸化体生成量が減少した。
このように、黄色5号でコーティングしたD−マンニトールを含有する製剤では色調変化、酸化体生成量とも抑制されることが分かった。
図1