【実施例】
【0092】
実施例1
β−脱離による切断が可能な基
放出速度の評価のために、潜在的なpK
a修飾因子(置換芳香族化合物、ケトン、ニトリル、スルホン)として一連の官能基を有する一連のリンカー骨格を設計し、調製し、および、カルバメート結合を介してN
e−2,4−ジニトロフェニル−L−リシン(N
e−DNP−Lys)に結合した。水溶性であると共にHPLC−UV分析が可能である強発色団であるために、DNP−Lysを放出される部分として選択した。この実験は、カルバメートの切断速度は、トリガ基の特定の置換基を選択することで制御可能であることを実証する。
【化20】
【0093】
モデルDNP−リシン誘導体を、整理番号67057−20003.00として出願した同時継続中の出願に記載のとおり調製した。
【0094】
これらの化合物からのN
ε−2,4−ジニトロフェニル−L−リシンの放出速度を、pH7.4またはpH8.3、37℃で、HPLC分析により測定した。放出反応の動態学的分析を、350nmでUV/visモニタを用いてHPLC(C18;線形メタノール/水+0.5%HOAc勾配)により実施した。Lys(DNP)(「P」)および出発材料(「S」)ピーク下面積を積分してR=P/(S+P)として反応(「R」)の程度を判定した。反応速度は、ln(1−R)対時間のプロットの線形回帰分析により得た線の傾きから算出した。pH7.4および/または8.3でのDNP−Lysカルバメートのβ−脱離切断のt
1/2値が表2に示されている。
【0095】
(表2)
37℃でのNe-2,4-ジニトロフェニル-L-リシンの放出に係る動態データ
【0096】
表2に示されているとおり、カルバメートの脱離およびN
ε−2,4−ジニトロフェニル−L−リシンの放出に係る半減期は、pH7.4では2時間から1650時間超の間変化した。切断がβ−脱離反応により形成されたことは異なる半減期により明らかにされ、観察では、O−ベンジル−N−(N
ε−2,4−ジニトロフェニル−L−リシン)−カルバメート(O−アルキル分断されることができない)は、37℃およびpH7.4で5日間後に、N
ε−2,4−ジニトロフェニル−L−リシン(0.25%切断の推定検出限界未満)の観察可能な放出を示さなかった(t
1/2>3年)。
【0097】
O−ベンジル−N−(N
e−2,4−DNP−Lys)カルバメートは、37℃で1週間後に、50%ヒト血清中において検出可能な加水分解を示さなかった。これは、カルバメートの血清ヒドロラーゼに対する安定性を実証していた。一般に、C−Hと比して、a)β位の電子吸引基は速度を高め;b)α位のアルキル基は速度を高め;および、c)α位のアリール部分は速度を低下させる。
【0098】
良好な直線自由エネルギー関係が置換(フェニルスルホニル)エチルリンカーについて観察され、ハメットσパラメータを用いた、SARに基づくこの系列における他の置換リンカーに係る放出速度の推定が可能であった。それ故、置換基を選択して、遅い放出速度(例えば、4−OMe、σ
p=−0.27;4−OH、σ
p=−0.37;4−Me
2N、σ
p=−0.83)または中間の放出速度(例えば、4−F、σ
p=+0.06;4−Cl、σ
p=+0.23;3−Br、σ
m=+0.39;4−CF
3、σ
p=+0.54)を提供することが可能である。
【0099】
実施例2
クロロホルメートおよびN−ヒドロキシスクシンイミドカーボネートの一般的調製
ピリジン(0.33当量)を、アルコールR
1R
2C−(C=C)
mC(R
5)
2OH(1当量)およびトリホスゲン(0.33当量)の氷で冷却した無水テトラヒドロフラン(2mL/mmol)中の激しく撹拌した溶液に滴下する。1時間後、混合物を周囲温度にし、一晩保持する。次いで、混合物をろ過し、ロータリーエバポレータで減圧下で濃縮する。得られる粗クロロホルメートR
1R
2C−(C=C)
mC(R
5)
2OC(O)Clをさらに精製せずに用いる。
【0100】
N−ヒドロキシスクシンイミドカーボネートを調製するために、粗クロロホルメートを無水テトラヒドロフラン(2mL/mmol)中に溶解させ、ピリジン(2当量)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(4当量)で、周囲温度で30分間処理する。混合物を酢酸エチルで希釈し、0.1N HCl、水および塩水で順次洗浄し、次いで、MgSO
4で乾燥させ、ろ過し、蒸発させる。粗カーボネートR
1R
2C−(C=C)
mC(R
5)
2OC(O)Suをシリカゲルクロマトグラフィ(酢酸エチル/ヘキサン)により精製する。
【0101】
実施例3
カルバメートの一般的調製
実施例2のクロロホルメート(1当量)のアセトン(2mL/mmol)中の溶液を、激しく撹拌したアミンBNH
2(1当量)とNaHCO
3(2当量)との水(2mL/mmol)中の混合物に滴下する。30分後、固形分として析出したカルバメートを減圧ろ過により回収し、水で洗浄し、乾燥させ;油として分離するカルバメートを酢酸エチルで抽出する。抽出物をMgSO
4で乾燥させ、ろ過し、蒸発させて粗カルバメートを得る。いずれの場合も、粗カルバメートR
1R
2C−(C=C)
mC(R
5)
2OC(O)NHBをカラムクロマトグラフィー(SiO
2)により、または、結晶化によりさらに精製する。
【0102】
あるいは、トリエチルアミン(1当量)を、アミンBNH
2(1当量)とクロロホルメート(1当量)との例えばジクロロメタン、テトラヒドロフランまたは酢酸エチルなどの不活性の無水溶剤中の混合物に添加する。周囲温度で1時間攪拌した後、混合物を乾燥するまで蒸発させ、残渣を酢酸エチル中に溶解させ、1N HCl、水、飽和水性NaHCO
3および塩水で順次洗浄し、次いで、MgSO
4で乾燥させ、ろ過し、蒸発させて粗カルバメートを得、これを上記のとおり精製する。
【0103】
あるいは、アルコールR
1R
2C−(C=C)
mC(R
5)
2OHを、中間体クロロホルメートを単離することなくカルバメートに転換する。ピリジン(0.33当量)を、アルコール(1当量)およびトリホスゲン(0.33当量)の氷で冷却した無水テトラヒドロフラン(2mL/mmol)中の激しく撹拌した溶液に滴下する。1時間後、混合物を周囲温度にし、一晩保持する。混合物を氷で冷却し、アミンBNH
2(2当量)を添加する。混合物を周囲温度にし、一晩保持する。次いで、混合物を乾燥するまで蒸発させ、残渣を酢酸エチル中に溶解させ、1N HCl、水、飽和水性NaHCO
3および塩水で順次洗浄し、次いで、MgSO
4で乾燥させ、ろ過し、蒸発させて粗カルバメートを得、これを上記のとおり精製する。
【0104】
実施例4
カルバメートのN−クロロメチル化
密閉したネジ蓋付きのバイアル中の、実施例3(1当量)のカルバメートと、パラホルムアルデヒド(3当量のホルムアルデヒド)との、1:1テトラヒドロフラン/クロロトリメチルシラン(1mL/mmol)中の混合物を清透な溶液が得られるまで55℃で加熱する。混合物をロータリーエバポレータで減圧下で濃縮し、残渣を酢酸エチル中に溶解させ、ろ過し、再度濃縮して粗N−クロロメチルカルバメートR
1R
2C−(C=C)
mC(R
5)
2OC(O)NBCH
2Clを得る。
【0105】
実施例5
N−メトキシメチルカルバメート
実施例4のN−クロロメチルカルバメートのメタノール中の溶液を周囲温度で1時間静置し、次いで、乾燥するまで濃縮してN−メトキシメチルカルバメートR
1R
2C−(C=C)
mC(R
5)
2OC(O)NBCH
2OMeを得る。
【0106】
実施例6
N−アルコキシメチルカルバメート、N−フェノキシメチルカルバメート、N−チオメチルカルバメートおよびN−チオフェニルメチルカルバメート
薬物DH(1当量)由来のアルコール、フェノール、チオールまたはチオフェノールおよび実施例4のN−クロロメチルカルバメート(1当量)の、例えばテトラヒドロフラン、ジクロロメタンまたは酢酸エチルなどの不活性無水溶剤中の溶液を、トリエチルアミン(1当量)で滴下処理した。1時間後、混合物を乾燥するまで蒸発させる。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィにより精製する。
【0107】
実施例7
O−(9−フルオレニルメチル)−N−プロパルギルカルバメート
塩化9−フルオレニルメトキシカルボニル(2.6g)の20mLのアセトン中の溶液を、プロパルギルアミン塩酸塩(0.91g)とNaHCO
3(2.5g)との20mLの水中の撹拌混合物にゆっくりと添加した。1時間後、固体析出物を減圧ろ過により回収し、水で洗浄し、空気乾燥させた。酢酸エチル/ヘキサンからの結晶化で生成物を得た。
【0108】
実施例8
O−(9−フルオレニルメチル)N−(4−ブロモフェニル)カルバメート
トリエチルアミン(0.7mL)を、4−ブロモアニリン(0.85g)と塩化9−フルオレニルメトキシカルボニル(1.3g)との25mLのジクロロメタン中の撹拌混合物に添加した。混合物を周囲温度で1時間撹拌し、次いで、1N HCl、水、飽和水性NaHCO
3および塩水で洗浄した。有機溶液をMgSO
4で乾燥させ、ろ過し、蒸発させた。
【0109】
実施例9
O−(9−フルオレニルメチル)N−(4−(エトキシカルボニル)フェニル)カルバメート
トリエチルアミン(0.7mL)を、エチル4−アミノ安息香酸塩(0.85g)と塩化9−フルオレニルメトキシカルボニル(1.3g)との25mLのジクロロメタン中の撹拌混合物に添加した。混合物を周囲温度で1時間撹拌し、次いで、1N HCl、水、飽和水性NaHCO
3および塩水で洗浄した。有機溶液をMgSO
4で乾燥させ、ろ過し、蒸発させた。
【0110】
実施例10
O−(9−フルオレニルメチル)N−フェニルN−メトキシメチルカルバメート
【化21】
O−(9−フルオレニルメチル)N−フェニルN−クロロメチルカルバメート(実施例14)をメタノールに溶解させることにより調製した。1H−NMR(d6−DMSO)δ7.86(2H,d,J=7Hz),7.42−7.22(m,9H),7.14(m,2H),4.83(2H,br s),4.47(2H,d,J=6Hz),4.18(1H,m),3.11(3H,br s)。
【0111】
実施例11
ヒドロキシおよびチオール含有部分のリンカーへの共役
この実施例は、ヒドロキシ含有分子がリンカー部分に容易に共役化されることを実証する。
【0112】
A.N−(6−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)ヘキサノイル−L−セリンアリルエステル
【化22】
ステップ1.N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−セリンアリルエステル:アリルブロミド(2.3mL、26.6mmol)およびトリカプリルメチル塩化アンモニウム(4.00g、9.90mmol)のCH
2Cl
2(35mL)中の撹拌溶液に、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−セリン(1.03g、5.02mmol)およびNaHCO
3(0.43g、5.12mmol)の水(16mL)中の溶液を添加した。二相性反応混合物を、室温で48時間激しく撹拌した。これを水(50mL)で希釈し、CH
2Cl
2(3×50mL)で抽出した。組み合わせた有機抽出物をMgSO
4で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮して無色の油を得た(5.95g)。60%ヘキサン/40%酢酸エチルでの溶離が伴うThomson Instruments Single Step 80gシリカゲルカートリッジを用いる精製で、LR2−1(1.01g、82%)を無色の油として得た。
1H NMR(DMSO−d6)δ1.37(9H,s),3.63(2H,m),4.00(2H,m),4.53(2H,m),4.89(1H,t,J=6.2Hz),5.18(1H,dd,J=1.4Hz,J=10.6Hz),5.30(1H,dd,J=1.6Hz,J=17.1Hz),5.84(1H,m),6.98(1H,d,J=8.2Hz)。
【0113】
ステップ2.N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−セリンアリルエステル(0.175g、0.731mmol)の4M塩化水素/ジオキサン(2mL)中の溶液を周囲温度で40分間撹拌した。反応混合物をロータリーエバポレータで濃縮し、粗HCl塩を無水テトラヒドロフラン(3mL)中に採った。この溶液に、N−スクシンイミジル6−(2,4−ジニトロアニリノ)ヘキサノエート(0.288g、0.791mmol)およびトリエチルアミン(102mL、0.731mmol)を添加した。反応混合物を室温で30分間撹拌し、溶剤を蒸発させた。残渣を酢酸エチルと水との間に分割し、相を分離した。有機相を飽和NaHCO
3および飽和NaClで洗浄した。これをMgSO
4で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮して粗生成物(0.293g)を黄色の油として得た。50%ヘキサン/50%酢酸エチル、続いて、酢酸エチルでの溶離が伴うThomson Instruments Single Step 12gシリカゲルカートリッジを用いる精製で、生成物(0.222g、72%)を黄色の油として得た。
1H NMR(DMSO−d6)δ1.32(2H,m),1.52−1.64(4H,m),2.15(2H,t,J=7.0Hz),3.44(2H,m),3.59(1H,m),3.66(1H,m),4.33(1H,m),4.55(2H,m),5.02(1H,t,J=5.5Hz),5.17(1H,m),5.28(1H,m),5.83(1H,m),7.21(1H,d,J=9.5Hz),8.12(1H,d,J=7.9Hz),8.23(1H,dd,J=2.5Hz,J=9.4Hz),8.85(2H,m)。
【0114】
B.O−(N−((9−フルオレニルメトキシ)カルボニル)−N−フェニル)アミノエチル)N−(6−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)ヘキサノイル)−セリン
【化23】
ステップ1.N−(6−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)ヘキサノイル−L−セリンアリルエステル(0.050g、0.118mmol)、O−(9−フルオレニルメチル)N−フェニルN−クロロメチルカルバメート(0.043g、0.118mmol)およびトリエチルアミン(16.1mL、0.116mmol)の無水CH
2Cl
2(2mL)中の溶液を還流で1時間加熱した。さらなるアリコートのO−(9−フルオレニルメチル)N−フェニルN−クロロメチルカルバメート(0.043g、0.118mmol)およびトリエチルアミン(16.1mL、0.116mmol)を添加し、還流を1時間維持した。溶液を室温に冷却し、CH
2Cl
2で希釈し、飽和NaCl溶液で洗浄し、MgSO
4で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮した。粗材料(0.145g)を、50%ヘキサン/50%酢酸エチル、続いて、30%ヘキサン/70%酢酸エチルでの溶離が伴うThomson Instruments Single Step 12gシリカゲルカートリッジを用いて精製して、中間体アリルエステル(0.030g、33%)を黄色の油として得た。
1H NMR(DMSO−d6)δ1.31(2H,m),1.52−1.63(4H,m),2.15(2H,t,J=7.3Hz),3.41(2H,m),3.43−3.70(2H,br.m),4.15(1H,br,m),4.43−4.54(5H,br.m),4.87(2H,br.m),5.14(1H,m),5.25(1H,m),5.79(1H,m),7.12−7.38(12,m),7.82(2H,d,J=7.4Hz),8.21(1H,dd,J=2.5Hz),J=9.5Hz),8.25(1H,d,J=8.0Hz),8.84(2H,m)。
【0115】
ステップ2.テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.002g、1.7μmol)を、ステップ1からのアリルエステル(0.030g、40μmol)およびフェニルシラン(9.8mL、80μmol)の無水テトラヒドロフラン(0.5mL)中の撹拌溶液に添加した。反応混合物を周囲温度で30分間撹拌し、次いで、濃縮した。シリカゲルおよびCH
2Cl
2を添加し、混合物を再度濃縮し、短いシリカゲルカラムに充填した。カラムを30%ヘキサン/70%酢酸エチル、続いて、酢酸エチル、および、最後に0.5%酢酸を含有する酢酸エチルで溶離して、カルボン酸(0.024g、86%)を黄色の油として生成した。
1H NMR(DMSO−d6)δ1.31(2H,m),1.51−1.62(4H,m),2.14(2H,t,J=7.3Hz),3.40(2H,m),3.45−3.80(2H,br.m),4.14(1H,br.m),4.41(3H,br.m),4.87(2H,br.m),7.16−7.30(12H,m),7.82(2H,d,J=7.6Hz),8.08(1H,d,J=8.1Hz),8.20(1H,dd,J=2.7Hz,J=9.6Hz),8.83(2H,m)。0.1Mヘペス緩衝液中における、15mM NaCl、pH7.40、37℃でのN−(6−(2,4−ジニトロフェニル)アミノヘキサノイル)−セリンのO−(N−(9−フルオレニルメトキシカルボニル−N−フェニル)アミノエチル)−セリンからの放出に係る動態学が
図4に示されている。
【0116】
C.S−(N−(9−フルオレニルメトキシカルボニル−N−フェニルアミノ)メチル)N−(2,4−ジニトロフェニル)−システイン
【化24】
N−(DNP)−システインアリルエステル(82mg)およびO−(9−フルオレニルメチル)N−フェニルN−クロロメチルカルバメート(91mg)のジクロロメタン(1mL)中の溶液をトリエチルアミン(35μL)で1時間処理し、次いで、1:1酢酸エチル/ヘキサンを用いてシリカゲルを通してろ過し、乾燥するまで濃縮した。生成物をシリカゲルクロマトグラフィにより精製した。
【0117】
アリルエステル、フェニルシラン(75μL)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(15mg)のTHF(2.5mL)中の溶液を周囲温度で10分間撹拌し、次いで、乾燥するまで蒸発させた。残渣をジクロロメタン中に溶解し、シリカゲルの5mLカラムに充填し、これを1:4酢酸エチル/ヘキサン、酢酸エチルおよび0.5%酢酸/酢酸エチルで順次に溶離した。生成物を含有する画分を組み合わせ、蒸発させた。
1H−NMR(d6−DMSO):d 13.7(1H,br s),9.01(1H,d,J=7Hz),8.85(1H,d,J=3Hz),8.25(1H,dd,J=3,9Hz),7.82(1H,d,J=7),7.40−7.25(m,7H),7.25−7.15(m,3H),7.11(m,2H),4.96(m,1H),4.81(s,2H),4.30(m,2H),4.08(m,1H),3.18(m,2H)。S−(N−(9−フルオレニルメトキシカルボニル−N−フェニル)アミノエチル)N−(2,4−ジニトロフェニル)−システインからの、0.1Mヘペス緩衝液、15mM NaCl、pH7.40、37℃におけるN−(2,4−ジニトロフェニル)−システインの放出の動態学が
図3に示されている。
【0118】
実施例12
O−((9−(2−(N−(6−アジドヘキサノイル)N−メチル)アミノエチル)フルオレニル)メチル)N−フェニルN−クロロメチルカルバメート
【化25】
フルオレン−2−塩化カルボニル(フルオレン−2−カルボン酸および塩化オキサリルから調製)のTHF中の溶液を水性メチルアミン(2モル当量)に添加してN−メチルフルオレン−2−カルボキサミドを調製する。エーテル中のLiAlH
4を用いるアミドの還元で2−((メチルアミノ)メチル)フルオレンを得る。アミンをジ−tert−ブチルジカルボネートとの反応により保護して2−((N−
tBOC−N−メチルアミノ)メチル)フルオレンを得る。
【0119】
2−((N−
tBOC−N−メチルアミノ)メチル)フルオレンの無水テトラヒドロフラン(THF)中の溶液を−78℃に冷却し、次いで、リチウムビス(トリメチルシリル)アミドのTHF中の溶液(1.2モル当量)で処理する。1時間後、ギ酸エチルを添加し、混合物を周囲温度にする。混合物を酢酸エチルで希釈し、0.1N HCl、水、飽和水性NaHCO
3および塩水で順次洗浄し、次いで、MgSO
4で乾燥させ、ろ過し、蒸発させて、2−((N−
tBOC−N−メチルアミノ)メチル)−フルオレン−9−カルボキシアルデヒドを得る。この化合物をメタノール中に溶解し、NaBH
4で処理して9−(2−((N−
tBOC−N−メチルアミノ)メチル)フルオレニルメタノールを得る。
【0120】
9−(2−((N−
tBOC−N−メチルアミノ)メチル)フルオレニルメタノールをTHF中に溶解し、実施例2の基本手順に従ってトリホスゲンおよびピリジンで処理してクロロホルメートを得る。クロロホルメートを実施例3の方法に従ってアニリンと反応させてO−(9−(2−((N−
tBOC−N−メチルアミノ)メチル)フルオレニルメチル)N−フェニルカルバメートを得る。
【0121】
カルバメートをトリフルオロ酢酸中に溶解して
tBOC保護基を取り外す。乾燥するまで蒸発させた後、得られるアミンをTHF中に溶解し、N−(6−アジドヘキサノイル)スクシンイミドおよびトリエチルアミン(2当量)で処理してO−(9−(2−((N−(6−アジドヘキサノイル)−N−メチルアミノ)メチル)フルオレニルメチル)N−フェニルカルバメートを得る。
【0122】
O−(9−(2−((N−(6−アジドヘキサノイル)−N−メチルアミノ)メチル)フルオレニルメチル)N−フェニルカルバメートと1:1THF/クロロトリメチルシラン中のパラホルムアルデヒドとの反応で生成物N−クロロメチルカルバメートを得る。
【0123】
実施例13
SN−38とのリンカー−薬物化合物
【化26】
この実施例は、特に薬物分子中のフェノール基を介した薬物分子の本発明の化合物とのリンケージを実証する。
【0124】
実施例12のN−クロロメチルカルバメート(1当量)、SN−38(1当量)およびヨウ化ナトリウム(10当量)の無水アセトン中の溶液をトリエチルアミン(1当量)で処理する。生成物をシリカゲルクロマトグラフィにより精製する。
【0125】
実施例14
PEGへの共役
40−kDa PEG−アルキン(2.5μmol;40−kDa PEG−アミンと5−ヘキシン酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルとの反応により調製)とアジド−リンカー(50μmol;例えば、実施例12の分子)とのTHF(3mL)および水(1.6mL)中の混合物を、0.1M CuSO
4(50μL)、DMSO(50μL)中の50mMトリス[(1−ベンジル−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)メチル]アミン(TBTA)と、0.1Mアスコルビン酸ナトリウム(200μL)との新たに調製した混合物で処理する。周囲温度で12時間後、混合物をロータリーエバポレータで濃縮してTHFを除去し、水で2mLに希釈し、Sephadex G25カラムでゲル−ろ過する。次いで、巨大分子を含有する流出物を凍結乾燥し、残渣を2mLのTHF中に溶解し、5mLのメチルtert−ブチルエーテルを添加することにより生成物を析出させる。必要な場合には、ゲル−ろ過およびその後のステップを繰り返す。
【0126】
実施例15
R
5アジドアルキル−リンカーの調製の一般的スキーム
【化27】
例えばNaH、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(LiHMDS)またはリチウムジイソプロピルアミド(LDA)などの強塩基の存在下での、R−CH
2−トリガのアジドアルカノエートエステルN
3(CH
2)
nCO
2R'(n=3〜6)とのクライゼン縮合ではケトンが得られ、これが、例えば水素化ホウ素ナトリウムなどの温和な還元剤とのメタノール中での反応によりアルコールに還元される。次いで、得られるアルコールをクロロホルメートを介してカルバメートに、次いで、上記のとおりN−クロロメチルカルバメート転換する。
【0127】
実施例16
R
5BOC−保護アミンリンカーの調製の一般的スキーム
【化28】
例えばNaH、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(LiHMDS)またはリチウムジイソプロピルアミド(LDA)などの強塩基の存在下での、R−CH
2−トリガの((N−tert−ブトキシカルボニルN−アルキル)アミノ)アルカノエートエステル(n=3〜6)とのクライゼン縮合ではケトンが得られ、これを、例えば水素化ホウ素ナトリウムなどの温和な還元剤とのメタノール中での反応によりアルコールに還元する。次いで、得られるアルコールを、実施例3に記載のとおりアミンB−NH
2を用いてカルバメートに転換する。カルバメートを、実施例4に記載のとおりN−クロロメチルカルバメートに転換する。
【0128】
アルコール、チオール、フェノールまたはチオフェノール基中の薬物分子とのカップリングの後、BOC基をトリフルオロ酢酸での処理によりカルバメートから取り外す。得られるアミンをEDCIなどの例えばカルボジイミドなどの縮合剤を用いてカルボン酸を含む巨大分子とカップリングする。
【0129】
実施例17
R
5アミド−アジドアルキル−リンカーの調製の代替スキーム
【化29】
トリフルオロ酢酸での処理により実施例19の中間体BOC−保護カルバメートからBOC基を除去し、得られるアミンとアジドアルカノエートN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(n=3〜6)との反応でアジドアミドを得る。これを、実施例4に記載されているとおりN−クロロメチルカルバメートに転換する。
【0130】
実施例18
スルホニル−トリガR
5アミンリンカーの調製
【化30】
エチル(2−フェニルスルホニル)アセテートを過剰量のNaHを用いてTHF中で脱プロトン化し、N−(6−ブロモヘキシル)エチルカルバメートでアルキル化する。生成物を水素化アルミニウムリチウムを用いてエーテル中で還元してメチルアミノアルコールを得、これをBOCカルバメートとしてN−保護する。アルコールをクロロホルメートに転換し、ここから、既述の手法に従ってカルバメート、および、N−クロロメチルカルバメートに転換する。
【0131】
実施例19
スルホニル−トリガR
5アミド−アジドリンカーの調製
【化31】
トリフルオロ酢酸での処理により実施例18の中間体BOC−保護カルバメートからBOC基を除去し、得られるアミンとアジドアルカノエートN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(n=3〜6)との反応でアジドアミドを得る。これを、実施例4に記載されているとおりN−クロロメチルカルバメートに転換する。
【0132】
実施例20
スルホニル−活性化R
5酸リンカーの合成
【化32】
フェニルメチルスルホンをNaHでテトラヒドロフラン中で脱プロトン化し、その際グルタル酸無水物でアシル化してケト酸を得る。得られる酸をtert−ブチルエステルとして保護し、ケトンをNaBH
4を用いて還元する。得られるアルコールをクロロホルメートを介してカルバメートに転換し、ここから、上記のとおりN−クロロメチルカルバメートに転換する。
【0133】
実施例21
スルホニル−活性化酸リンカーを有するリンカー−薬物化合物の調製およびPEGへの共役
【化33】
実施例20のリンカーを、1当量のトリエチルアミンの存在下に薬物DHと反応させる。得られる保護されたリンカー−薬物化合物をトリフルオロ酢酸で処理し、得られる遊離カルボン酸を、EDCIを用いてアミノ−ポリエチレングリコールに共役化する。メチルt−ブチルエーテル(MTBE)の添加によりアセトニトリルから共役体を析出させ、次いで、サイズ排除クロマトグラフィにより精製する。
【0134】
実施例22
結合ペプチドの合成
この実施例は、ペプチド合成は本発明の化合物を用いて容易に達成されることを実証する。ペプチド合成を、これらの残基の側鎖が他の残基の脱保護を伴わずに選択的に脱ブロック化され得るよう好適な保護形態で、セリン、チロシンまたはシステインを用いる固体相ペプチド合成のための標準的な方法を用いて実施する。部分的に脱保護されたペプチドを過剰量の式(II)の化合物と温和な塩基の存在下で反応させる。樹脂を洗浄した後、生成物ペプチドを脱ブロック化し、樹脂から切断して、Dがペプチドである式(III)の化合物を得る。
【0135】
一例として、CCK8(Asp−Tyr−Met−Gly−Trp−Met−Asp−Phe−NH
2)を、例えば、米国特許第4,769,445号明細書(本明細書において参照により援用されている)に記載されている当該技術分野において公知である方法を用いて、Rink樹脂を用いて固体担体上に合成する。市販されているFmoc−Phe−Rinkアミド−MBHA樹脂を予めDMF中に30分間膨潤させ、次いで、ピペリジン/DMF(体積基準で1:4、50ml)中に室温で30分間懸濁および振盪させて、Fmoc基を除去する。生成物をろ過により単離し、DCM、DCM中の5%N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、および、DCMで洗浄(各々3×50ml)して、Phe−Rinkアミド−MBHA−樹脂の遊離塩基を得る。Fmoc−Asp(O
tBu)−OH(1.23g、3mmol)、DCC(0.62g、3mmol)およびHOBt(0.69g、4.5mmol)を、0°で1時間攪拌しながら50mlの体積基準で4:1のDCM/DMF中に溶解する。Phe−Rinkアミド−MBHA樹脂(1meq)をろ過した反応混合物(析出したDCUは除去する)中に懸濁させ、室温で2〜15時間振盪する。Fmoc−Asp−(O
tBu)−Phe−Rinkアミド−MBHA樹脂生成物をろ過により回収し、DCMで洗浄する。Fmoc−Asp−(O
tBu)−Phe−Rinkアミド−MBHA樹脂を、ピペリジン/DMF(体積基準で1:4、50ml)中に室温で3分間懸濁および振盪させ、次いで、2回目として7分間振盪させてFmoc基を除去する。生成物をろ過により単離し、DMFおよびDCMで洗浄(各々3×50ml)してAsp−(O
tBu)−Phe−Rinkアミド−MBHA樹脂の遊離塩基を得る。Fmoc−Met−OH(1.12g、3mmol)、DCC(0.62g、3mmol)およびHOBt(0.69g、4.5mmol)を、0°で1時間攪拌しながら50mlの体積基準で4:1のDCM/DMF中に溶解する。Asp−(O
tBu)−Phe−Rinkアミド−MBHA樹脂(1meq)をろ過した反応混合物(析出したDCUは除去する)中に懸濁させ、室温で2〜15時間振盪する。Fmoc−Met−Asp−(O
tBu)−Phe−Rinkアミド−MBHA樹脂生成物をろ過により回収し、DCMおよびDMFで洗浄する。Fmoc−Met−Asp−(O
tBu)−Phe−Rinkアミド−MBHA樹脂を脱保護し、Fmoc−Trp−OH(1.28g、3mmol)、Fmoc−Gly−OH(0.89g、3mmol)、Fmoc−Met−OH(1.12g、3mmol)、Fmoc−Tyr−OH(1.37g、3mmol)およびBoc−Asp(O
tBu)−OH(1.23g、3mmol)で順次にカップリングさせて、Boc−Asp(O
tBu)−Tyr−Met−Gly−Trp−Met−Asp(OtBu)−Phe−Rinkアミド−MBHA樹脂を得る。Boc−Asp(O
tBu)−Tyr−Met−Gly−Trp−Met−Asp(O
tBu)−Phe−Rinkアミド−MBHA樹脂をDCMで洗浄(3×50ml)し、O−(9−フルオレニルメチル)N−フェニルN−クロロメチルカルバメート(10当量)とトリエチルアミン(1当量)とのDCM中の混合物中に懸濁および振盪させる。樹脂をろ過により単離し、DCMで洗浄する(各々3×50ml)。得られるBoc−Asp(O
tBu)−Tyr(OX)−Met−Gly−Trp−Met−Asp(OtBu)−Phe−Rinkアミド−MBHA樹脂を樹脂から切断し、8%フェノール、5%チオアニソール、5%水および3%3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジチオールの混合物と一緒にトリフルオロ酢酸(10mL/g樹脂)中で4時間振盪することにより脱ブロック化する。樹脂をろ過により除去し、ペプチドを10体積のエーテルを添加することにより析出させる。粗ペプチドを逆相HPLCにより精製する。
【0136】
他の例において、システイン含有ペプチドを、S−(アリルオキシカルボニルアミノメチル)−システイン[Cys(allocam)]またはS−(N−[2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(N'−ピペリジノ)フェニル]−N−アリルオキシカルボニル−アミノ)システイン[Cys(fnam)]残基を組み込む上記の方法を用いる固体相合成によって調製する。樹脂からの切断に先行して、システイン残基を、(Ph
3P)
4Pdおよびフェニルシランを用いてDCM中で選択的に脱ブロック化し、次いで、上記のとおり式(II)の化合物を反応させる。ペプチドを最終的に脱ブロック化し、樹脂から取り出し、上記のとおり精製する。
【0137】
実施例23
5−フルオロウラシルのリンカー−薬物化合物
Dが複素環式Nを介してカップリングさせた薬物の残基である本発明の化合物の一調製例として、式(III)のリンカー−薬物化合物を、5−フルオロウラシルおよび式(II)の化合物から、Taylor and Sloane,「1−Alkylcarbonyloxymethyl Prodrugs of 5−Fluorouracil(5−FU):Synthesis,Physicochemical Properties,and Topical Delivery of 5−FU」,J.Pharmaceutical Sci.(1998)87:15−20、および、Roberts and Sloane、「Synthesis of 3−Alkylcarbonyl−oxymethyl Derivatives of 5−Fluorouracil」,J.Heterocyclic Chem.39:905−910(各本明細書において参照により援用されている)により用いられたものと同様の手法で調製し得る。それ故、LがClである式(II)の化合物(1mmol)とNaI(1.3mmol)との乾燥アセトニトリル(1mL)中の懸濁液を暗中で24時間撹拌し、次いで、ろ過してLがIである式(II)の化合物の溶液を得る。濾液を、1−(アリルオキシカルボニル−オキシメチル)−5−フルオロウラシル[Liu,Fullwood,and Rimmer,「Synthesis of Allyloxycarbonylmethyl−5−fluorouracil and copolymerizations with N−vinylpyrrolidinone」,J.Materials Chem.(2000)10:1771−1777](0.8mmol)と1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレンとの混合物と周囲温度で反応させる。6時間後、混合物をエーテルで希釈し、1時間撹拌し、ろ過する。濾液を濃縮して粗保護生成物を得、これを、テトラキス(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(0)とフェニルシランとの混合物で無水THF中で1時間処理してアリルオキシカルボニルメチル保護基を取り外す。混合物を蒸発させ、残渣をシリカゲルクロマトグラフィにより精製して、式(III)のリンカー−薬物化合物を得る。
【0138】
実施例24
6−アジドヘキサナルの調製
【化34】
(1)6−アジド−1−ヘキサノール:6−クロロ−1−ヘキサノール(25g、183mmol)とアジ化ナトリウム(32.5g、500mmol)との200mLの水中の混合物を還流で20時間加熱し、次いで、周囲温度に冷却し、酢酸エチルで3回抽出した。組み合わせた抽出物を塩水で洗浄し、MgSO
4で乾燥させ、ろ過し、濃縮して生成物を薄い黄色の油として得た(28.3g)。
【0139】
(2)6−アジドヘキサナル:固体トリクロロイソシアヌル酸(TCCA;4.3g)を、6−アジド−1−ヘキサノール(7.15g)と重炭酸ナトリウム(5.0g)とのジクロロメタン(100mL)および水(10mL)中の激しく撹拌した混合物に、少分量で添加した。添加の後、混合物をさらに30分間撹拌し、次いで、珪藻土のパッドを通してろ過した。有機相を分離し、飽和水性NaHCO
3および塩水で順次洗浄し、次いで、MgSO
4で乾燥させ、ろ過し、濃縮して生成物(5.8g)を得、これをさらに精製せずに用いた。
【0140】
実施例25
アジドアルコールの調製
【化35】
n−ブチルリチウム(3.1mL、5.0mmol)のヘキサン中の1.6M溶液を、−78℃に冷却したR−CH
3(5.0mmol)の無水テトラヒドロフラン(THF)(15mL)中の撹拌溶液に滴下した。添加の後、冷却浴を外し、混合物をゆっくりとおよそ30分間かけて0℃にした。次いで、混合物を−78℃に冷却し戻し、6−アジドヘキサナル(5.5mmol)を添加した。15分間攪拌した後、冷却浴を外し、混合物の温度が上昇するのを許した。混合物が清透になった時点で、5mLの飽和水性NH
4Clを添加し、混合物の温度が引き続き周囲温度まで上昇するのを許した。混合物を酢酸エチルで希釈し、水および塩水で順次洗浄し、次いで、MgSO
4で乾燥させ、ろ過し、蒸発させて粗生成物を油として得た。ヘキサン中の酢酸エチル勾配を用いるシリカゲルでのクロマトグラフィで精製した生成物を得た。
【0141】
この方法に従って調製した化合物は以下を含む:
1−(4−(トリフルオロメチル)フェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプタノール(R−CH
3=4−(トリフルオロメチル)フェニルメチルスルホン);
1−(4−クロロフェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプタノール(R−CH
3=4−クロロフェニルメチルスルホン);
1−(フェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプタノール(R−CH
3=フェニルメチルスルホン);
1−(4−メチルフェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプタノール(R−CH
3=4−メチルフェニルメチルスルホン);
1−(4−メトキシフェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプタノール(R−CH
3=4−メトキシフェニルメチルスルホン);
1−(2,4,6−トリメチルフェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプタノール(R−CH
3=2,4,6−トリメチルフェニルメチルスルホン);
1−(モルホリノスルホニル)−7−アジド−2−ヘプタノール(R−CH
3=4−(メチルスルホニル)−モルホリン;
1−(メタンスルホニル)−7−アジド−2−ヘプタノール(R−CH
3=ジメチルスルホン);
1−シアノ−7−アジド−2−ヘプタノール(R−CH
3=アセトニトリル);
1−(モルホリノカルボニル)−7−アジド−2−ヘプタノール(R−CH
3=4−アセチルモホリン);および
1−(9−フルオレニル)−7−アジド−2−ヘプタノール("R−CH
3"=フルオレン)。
【0142】
実施例26
アジド−リンカークロロホルメートの調製
【化36】
ピリジン(160μL)を、実施例25のアジドアルコール(1.0mmol)とトリホスゲン(500mg)との15mLの無水THF中の撹拌溶液に滴下した。得られた懸濁液を10分間撹拌し、次いで、ろ過し、濃縮して粗クロロホルメートを油として得た。
【0143】
この方法に従って調製した化合物は以下を含む:
1−(4−(トリフルオロメチル)フェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチルクロロホルメート;
1−(4−クロロフェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチルクロロホルメート;
1−(フェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチルクロロホルメート;
1−(4−メチルフェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチルクロロホルメート;
1−(4−メトキシフェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチルクロロホルメート;
1−(2,4,6−トリメチルフェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチルクロロホルメート;
1−(モルホリノスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチルクロロホルメート;
1−(メタンスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチルクロロホルメート;
1−シアノ−7−アジド−2−ヘプチルクロロホルメート;
1−(モルホリノカルボニル)−7−アジド−2−ヘプチルクロロホルメート;および
1−(9−フルオレニル)−7−アジド−2−ヘプチルクロロホルメート。
【0144】
トリガ官能基を有さないモデル系への経路の途中で、6−アジドヘキシルクロロホルメートを、6−アジドヘキサノールから開始して上記のとおり調製した。
【0145】
実施例27
アジド−リンカー−HSEカーボネートの調製
【化37】
実施例26のクロロホルメートの15mLの乾燥THF中の溶液を、N−ヒドロキシスクシンイミド(350mg)およびピリジン(250μL)で10分間かけて順次に処理した。次いで、混合物を濃縮し、残渣を酢酸エチル中に再度溶解させた。0.1N HCl、水、飽和NaHCO
3、水および塩水で洗浄した後、溶液をMgSO
4で乾燥させ、ろ過し、蒸発させた。いくつかの場合において、HSEカーボネートは自然と結晶化し、これを酢酸エチル/ヘキサンから再結晶化させた。他の場合においては、粗HSEカーボネートを先ずヘキサン中の酢酸エチルの勾配を用いるシリカゲルでのクロマトグラフィにかけ、続いて、結晶化した。すべての化合物は、1−(メタンスルホニル)−7−アジド−2−ヘプタノールから得たものを除き結晶性であった。
【0146】
この方法に従って調製した化合物は以下を含む:
O−[1−(4−(トリフルオロメチル)フェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−O'−スクシンイミジルカーボネート;
O−[1−(4−クロロフェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−O'−スクシンイミジルカーボネート;
O−[1−(フェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−O'−スクシンイミジルカーボネート;
O−[1−(4−メチルフェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−O'−スクシンイミジルカーボネート;
O−[1−(4−メトキシフェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−O'−スクシンイミジルカーボネート;
O−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−O'−スクシンイミジルカーボネート;
O−[1−(モルホリノスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−O'−スクシンイミジルカーボネート;
O−[1−(メタンスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−O'−スクシンイミジルカーボネート;
O−[1−シアノ−7−アジド−2−ヘプチル]−O'−スクシンイミジルカーボネート;
O−[1−(モルホリノカルボニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−O'−スクシンイミジルカーボネート;
O−[1−(9−フルオレニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−O'−スクシンイミジルカーボネート。
【0147】
この方法に従って、6−アジドヘキシルクロロホルメートから開始して、O−[6−アジドヘキシル]−O'−スクシンイミジルカーボネートもまた調製した。
【0148】
実施例28
4−(N,N−ジエチルカルボキサミド)アニリンの調製
【化38】
(1)N,N−ジエチル4−ニトロベンズアミド:ジエチルアミン(5.6mL)を、4−ニトロベンゾイルクロリド(5.0g)の100mLのDCM中の氷冷溶液に添加した。1時間後、混合物を水、飽和水性NaHCO
3および塩水で順次に洗浄し、次いで、MgSO
4で乾燥させ、ろ過し、蒸発させて、静置させると結晶化する無色の液体を得た。酢酸エチル/ヘキサンからの再結晶で生成物を薄い黄色の結晶として得た(4.6g)。
【0149】
(2)4−(N,N−ジエチルカルボキサミド)アニリン:N,N−ジエチル4−ニトロベンズアミド(4.44g)と10%パラジウム炭素(0.2g)との100mLのメタノール中の混合物を、ギ酸アンモニウム(4.0g)で周囲温度で2時間処理した。混合物を珪藻土を通してろ過し、濃縮した。残渣をDCM中に再度溶解し、0.5M Na
2CO
3、水および塩水で順次洗浄し、次いで、MgSO
4で乾燥させ、ろ過し、蒸発させて結晶性材料を得た。酢酸エチル/ヘキサンからの再結晶で生成物アニリンを得た。
【0150】
同一の手法に従って、ジエチルアミンをモルホリンで置換することにより、4−(モルホリノカルボニル)アニリンも調製した。
【0151】
実施例29
アジドカルバメートの調製
【化39】
実施例26の手法に従って2.5mmolのアジドアルコールから調製した粗クロロホルメートを20mLのTHF中に溶解させ、アニリン(2.5mmol)およびトリエチルアミン(0.7mL、5.0mmol)を添加した。1時間後、混合物を酢酸エチルで希釈し、1N HCl、水、飽和NaHCO
3および塩水で順次洗浄し、次いで、MgSO
4で乾燥させ、ろ過し、蒸発させた。残渣を、酢酸エチル/ヘキサンを用いるシリカゲルでのクロマトグラフィにかけて生成物カルバメートを得た。
【0152】
この方法に従って調製した化合物は以下を含む:
O−[1−(フェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−N−[4−(ジエチルカルボキサミド)フェニルカルバメート;
O−[1−(モルホリノスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−N−[4−(ジエチルカルボキサミド)フェニルカルバメート;
O−[1−(メタンスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−N−[4−(ジエチルカルボキサミド)フェニルカルバメート;
O−[1−(フェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−N−[4−(モルホリノカルボキサミド)フェニルカルバメート;および
O−[1−(フェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−N−[4−(モルホリノスルホニル)フェニルカルバメート。
【0153】
実施例30
N−クロロメチルカルバメートの調製
【化40】
実施例29のアジドカルバメート(1.0mmol)、パラホルムアルデヒド(45mg)、クロロトリメチルシラン(1mL)およびTHF(1mL)の密閉した20mLバイアル中の混合物を55℃の浴中で17時間かけて加熱した。周囲温度に冷却した後、バイアルを開封し、混合物をロータリーエバポレータで粘性の油に濃縮し、これを酢酸エチル中に採り、再度濃縮した。残渣を2:1酢酸エチル/ヘキサン中に溶解し、ろ過し、濃縮してN−クロロメチルカルバメートを得、これをさらに精製せずに用いた。
【0154】
この方法に従って調製した化合物は以下:
O−[1−(フェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−N−[4−(ジエチルカルボキサミド)フェニル]−N−クロロメチルカルバメート;
O−[1−(モルホリノスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−N−[4−(ジエチルカルボキサミド)フェニル]−N−クロロメチルカルバメート;
O−[1−(メタンスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−N−[4−(ジエチルカルボキサミド)フェニル]−N−クロロメチルカルバメート;および
O−[1−(モルホリノカルボニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−N−[4−(ジエチルカルボキサミド)フェニル]−N−クロロメチルカルバメートを含み、
O−[6−アジドヘキシル]−N−[4−(ジエチルカルボキサミド)フェニル]−N−クロロメチルカルバメートもまた、トリガ基を有さない対照化合物への経路の途中で調製した。
【0155】
実施例31
N−アルコキシメチルカルバメートの調製
【化41】
実施例30のN−クロロメチルカルバメート(0.4mmol)を5mLの乾燥アルコール中に溶解する。1時間後、混合物を乾燥するまで蒸発させ、残渣をシリカゲル(酢酸エチル/ヘキサン)でクロマトグラフィにかけて生成物を得る。
【0156】
この方法に従って調製した化合物は以下を含む:
O−[1−(フェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−N−[4−(ジエチルカルボキサミド)フェニル]−N−メトキシメチルカルバメート;
O−[1−(モルホリノスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−N−[4−(ジエチルカルボキサミド)フェニル]−N−メトキシメチルカルバメート;および
O−[1−(メタンスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−N−[4−(ジエチルカルボキサミド)フェニル]−N−メトキシメチルカルバメート。
O−[6−アジドヘキシル]−N−[4−(ジエチルカルボキサミド)フェニル]−N−メトキシメチルカルバメートもまた、トリガ基を有さない対照化合物への経路の途中で調製した。
【0157】
実施例32
アジド−リンカー−SN38の調製
【化42】
手法1(塩基=DBU)。SN−38(7−エチル−10−ヒドロキシ−カンプトテシン)(40mg、0.1mmol)の5mLのTHF中の懸濁液を、16.5μLの1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)で処理した。清透な金色の溶液が30分後に形成された。実施例30のN−クロロメチルカルバメート(0.11mmol)の1mLのTHF中の溶液を添加したところ、粘性の析出物の形成が見られた。30分後、HPLC分析は、SN−38のアジド−リンカー−SN38付加物への約40%の転換を示した。追加のDBU(20μL)およびN−クロロメチルカルバメート(0.04mmol)を添加した。15分後、混合物を10%水性クエン酸の添加により失活させ、ジクロロメタン(DCM)で抽出した。抽出物を、10%クエン酸、水および塩水で順次に洗浄し、次いで、MgSO
4で乾燥させ、ろ過し、蒸発させた。残渣をDCM中に溶解し、ろ過し、蒸発させて生成物を得た。
【0158】
手法2(塩基=LiHMDS)。5mLの4:1THF/DMF中のSN−38(42mg)の懸濁液を−78℃浴中で冷却し、リチウムビス(トリメチルシリルアミド)のTHF(150μL)中の1.0M溶液で滴下処理した。混合物は塩基の添加で濃い緑色に変色し、続いて濃い金色が形成された。添加が完了した後、混合物を周囲温度にし、実施例30のN−クロロメチルカルバメート(0.2μmol)の1mLのTHF中の溶液を添加した。10分後、反応を10%水性クエン酸の添加により失活させ、ジクロロメタン(DCM)で抽出した。抽出物を10%クエン酸、水および塩水で順次に洗浄し、次いで、MgSO
4で乾燥させ、ろ過し、蒸発させて黄色の油状の材料を得た。水で倍散して過剰量のDMFを除去して、粗生成物を黄色の固体として得た。残渣をDCM中に溶解し、ヘキサン中のアセトンの勾配を用いるシリカゲルでクロマトグラフィにかけて精製された生成物を得た。
【0159】
この手法に従って調製した生成物は以下を含む:
R=フェニルスルホニル、R'=4−(N,N−ジエチルカルボキサミド);
R=モルホリノスルホニル、R'=4−(N,N−ジエチルカルボキサミド);および
R=メタンスルホニル、R'=4−(N,N−ジエチルカルボキサミド)。
【0160】
実施例33
4−arm PEG−[DBCO]
4の調製
【化43】
ペンタエリスリトール核を有するアミノプロピル末端基を有する40−kDa4−armポリエチレングリコール(NOF America,PTE400PA)(500mg、12.5μmol)、トリエチルアミン(20μL)および6−アザ−5,9−ジオキソ−9−(1,2−ジデヒドロジベンゾ[b,f]アゾシン−5(6H)−イル)ノナン酸スクシンイミジルエステル(「DBCO−NHS」、Click Chemistry Tools,Macon,GA)(36mg、75μmol)の5mLのTHF中の溶液を周囲温度で24時間撹拌した。生成物を反応混合物の50mLのメチルtert−ブチルエーテル(MTBE)への添加により析出させた。析出物を減圧ろ過により回収し、減圧下で乾燥させて510mgの生成物を得た。
【0161】
実施例34
放出性4−arm PEG−SN38共役体の調製
【化44】
4−arm PEG−[DBCO]
4(100mg、2.0μmol DBCO)および実施例32のアジド−リンカー−SN38(10μmol)の1.5mLのTHF中の溶液を周囲温度で21時間維持した。混合物を濃縮し、次いで、メタノール中に再度溶解し、メタノールに対して透析(10kDaカットオフメンブラン)して遊離アジドを除去した。ロータリーエバポレータでの濃縮の後、生成物を2mLのTHF中で溶解し、10mLのMTBEの添加により析出させた。析出物を減圧ろ過により回収し、減圧下で乾燥させて生成物共役体を得た。水中の20〜100%アセトニトリル勾配+0.1%TFAを用いるHPLC分析(300A C4 Jupiterカラム(Phenomenex)、40℃で調温した)は、非共役化SN−38または遊離アジドは存在していなかったことを実証した。次いで、SN−38含有量を、361nmでε=22,500M
−1cm
−1を用いて水溶液のUV吸光度を計測することにより測定した。
【0162】
この方法に従って調製した放出性共役体は:各々R'=4−(N,N−ジエチルカルボキサミド)を有する、R=フェニルスルホニル;R=メタンスルホニル;および、R=モルホリノスルホニルを含む。対照として、トリガ基を有さない共役体を同一の手法に従って調製した。
【0163】
実施例35
SN−38のPEG−SN38共役体からの放出
R'=4−N,N−ジエチルカルボキサミドおよびR=フェニルスルホニルまたはメタンスルホニルである実施例34の4−arm SN−38共役体のサンプルを緩衝液中に溶解し、37℃で維持した。20μLのアリコートを定期的にHPLC(300A C4 Jupiterカラム(Phenomenex)、40℃で調温した)に注入し、水中の20〜100%アセトニトリル勾配+0.1%TFAを用い、蛍光検出(励起380nm;放射515nm)を用いて分析した。これらの条件下では、遊離SN−38は5分間で溶離され、共役体は7分間で溶離された。ピーク面積を計測し、これを用いて指数関数的適合により反応速度を算出した。
【0164】
R'=4−N,N−ジエチルカルボキサミドおよびR=フェニルスルホニルである0.1Mビシン中の共役体は、pH8.5、37℃で、SN−38をT
1/2=1.6時間で放出し、R'=4−N,N−ジエチルカルボキサミドおよびR=メタンスルホニルである共役体は、SN−38を同一条件下で、T
1/2=9時間で放出した。
【0165】
実施例36
マウスにおける4−arm PEG−SN38共役体の薬物動態学
361nm(ε=22,500M
−1cm
−1)でのUV吸光度による測定で1mMの最終SN−38濃度をもたらすよう、実施例34の4−arm PEG−SN38共役体を10mM酢酸ナトリウム、pH5.0に溶解させることにより投薬溶液を調製した。投薬溶液を0.2μmシリンジフィルタを用いて無菌ろ過し、凍結させた。
【0166】
サンプルを、2μL/g体重で化合物当たり4匹のCD−1マウスに静脈内注入した。血液サンプルを以下の計画を用いて眼窩静脈叢から採集した:マウス1:1、16および72時間;マウス2:2および24時間;マウス3:4および32時間;マウス4:8および48時間。サンプルを直ぐに、分析まで、−80℃で凍結させた。N
ε−(2,4−ジニトロフェニル)−L−リシンの0.25mg/mL溶液の体積の三分の一を、0.0625mg/mLの最終濃度に対する内標準として血清サンプルの各々に加えた。pH10.75の200mMトリエチルアミン・HCl緩衝液の体積の半分を血清サンプルの各々に加え、37℃で16時間置いた。加水分解に続いて、血清タンパク質を三回分のメタノールで析出した。検量線を、マウス血清中で希釈し、同一の手法を用いて加水分解したR=CH
3SO
2およびR'=4−(N,N−ジエチルカルボキサミド)の共役体のストック溶液から準備した。サンプルおよび標準を、H
2O中のアセトニトリルの20〜100%勾配と0.1%トリフルオロ酢酸とを用いるShimadzu HPLC Jupiter C4 300Å 5μカラムで総遊離SN38について分析した。SN38を、380nm/515nmの励起/放射で設定した蛍光検出器で検出した。蛍光ピーク面積を用いて検量線からSN38濃度を算出した。PK Solutions薬物動態学ソフトウェアを用いてデータからの薬物動態学的パラメータを算出した。結果が
図8に示されている。
【0167】
実施例37
N−クロロメチルカルバメートでのペプチドチオールへの結合
【化45】
実施例30のN−クロロメチルカルバメート(0.1μmol)をチオール含有ペプチド(0.1μmol)の1.0mLのトリフルオロ酢酸(TFA)中の溶液に添加する。2時間後、5mLのエチルエーテルの添加により生成物を析出させ、遠心分離により回収する。析出物をエーテルで3回洗浄し、乾燥させる。これをアセテート緩衝液、pH5に溶解し、1−g BondElut C18カートリッジに充填する。カートリッジを0.1%TFAを含有する水中のメタノールの段階的な勾配で洗浄して精製した生成物を溶離させる。
【0168】
実施例38
N−アルコキシメチルカルバメートでのペプチドチオールへの結合
【化46】
実施例31のN−アルコキシメチルカルバメート(0.1μmol)をチオール含有ペプチド(0.1μmol)の1.0mLのトリフルオロ酢酸(TFA)中の溶液に添加する。2時間後、5mLのエチルエーテルの添加により生成物を析出させ、遠心分離により回収する。析出物をエーテルで3回洗浄し、乾燥させる。これをアセテート緩衝液、pH5に溶解し、1−g BondElut C18カートリッジに充填する。カートリッジを0.1%TFAを含有する水中のメタノールの段階的な勾配で洗浄して精製した生成物を溶離させる。
【0169】
実施例39
アジド−リンカーグルタチオンの調製
【化47】
O−[1−(メタンスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−N−[4−(ジエチルカルボキサミド)フェニル]−N−メトキシメチルカルバメート(50mg)を、還元グルタチオン(50mg)の1.0mLのトリフルオロ酢酸(TFA)中の溶液に添加した。2時間後、生成物を5mLのエチルエーテルの添加により析出させ、回収し、乾燥させた。析出物を5mLの10mM酢酸ナトリウム緩衝液、pH5に溶解し、1−g BondElut C18カートリッジに充填した。カートリッジを10mLの水/0.1%TFAで洗浄して過剰量のグルタチオンを除去し、続いて、10mLの1:1メタノール/水/0.1%TFAで洗浄して生成物を溶離した。生成物含有溶出液をロータリーエバポレータで乾燥するまで蒸発させた。
【0170】
実施例40
チオール−結合ペプチドの共役
【化48】
実施例37または38のチオール−結合ペプチドアジド(1.5当量)およびDBCO−活性化ポリエチレングリコール(PEG−DBCO)(1当量)の水性緩衝液中の溶液をUV分光法により監視する。トリアゾールの形成に際して、301nmでのDBCOの特徴的な吸光度が失われる。次いで、反応混合物を10mM酢酸ナトリウム、pH5.0に対して透析(10kDaカットオフメンブラン)して過剰量のアジドを除去する。
【0171】
実施例41
PEG−共役化グルタチオン
【化49】
40−kDa直鎖mPEG−DBCO(100mg、2.5μmol)の2.5mLの10mM酢酸ナトリウム緩衝液、pH5.0中の溶液をS−[N−(4−ジエチル−カルボキサミド)フェニルN−(6−アジド−1−(フェニルスルホニル)メチル)ヘキシルオキシ−カルボニル)アミノエチル]グルタチオン(メタノール中に65mg/mL;60μL)の溶液と混合し、これを周囲温度で16時間保持し、次いで、水中で平衡化させたPD−10カラム(GE Health Sciences)を通した。巨大分子を含有するカラムからの流出物を回収し、蒸発させた。
【0172】
実施例42
ラットにおける4−arm PEG−SN38共役体の薬物動態学(実験2)
361nm(ε=22,500M
−1cm
−1)でのUV吸光度による測定で1mMの最終SN−38濃度をもたらすよう、実施例42の4−arm PEG−SN38共役体を10mM酢酸ナトリウム、pH5.0に溶解させることにより投薬溶液を調製した。投薬溶液を0.2μmシリンジフィルタを用いて無菌ろ過し、凍結させた。
【0173】
サンプルを、カニューレ処置したオスのスプラーグドーリーラットに100μL/100g体重で静脈注射により投与した。化合物当たり1匹のラットを全時間経過について用いた。血液サンプルを0、1、2、4、8、12、24、48、72および120時間で回収した。血清を分離し、凍結させた。ラット血清サンプルを氷上で解凍した。N
ε−(2,4−ジニトロフェニル)−L−リシンの0.25mg/mL溶液の60μLアリコートを180μLの解凍した血清サンプルの各々に添加した。2.5μLの2M酢酸をこれらのサンプルの100μLアリコートに添加し、続いて、300μLのメタノールを析出した血清タンパク質に添加した。サンプルを氷上に1時間放置し、14,000rpmで遠心分離した。各サンプルの別個の100μLアリコートに、50μLの200mM Et
3Nを添加し、アリコートを37℃のインキュベータに一晩(約16時間)入れて、PEGからSN38を加水分解した。検量線を、40μMにラット血清(Sigma−Aldrich)中に希釈し、上記と同一の手法に従って処置したR=フェニルスルホニルである共役体のストック溶液から準備した。サンプルおよび標準を、H
2O中にアセトニトリルの0〜100%勾配と0.1%TFAとを用いるJupiter C4 400A 5uカラムでのShimadzu HPLCで、10分間にわたって、SN38共役体および総遊離SN38について分析した。SN38を、380nm/515nmの励起/放射で設定した蛍光検出器で検出した。サンプル濃度を、Excel(Microsoft)を用いる検量線への適合によって判定した。PKパラメータをPK solutionsソフトウェア(Summit PK)を用いて算出した。実験の結果が
図9に示されている。
【0174】
実施例43
放出の動態学
本発明の共役体からの薬物の放出速度は、HPLCなどのクロマトグラフィ法を含む当該技術分野において公知である方法によって容易に判定することが可能である。例えば、蛍光マーカーが薬物に対するモデル系として用いられる場合、遊離された蛍光化合物に起因する蛍光は、共役体により放射される蛍光と比して容易に判定される。
【0175】
本発明の共役体からの薬物のインビボ放出は、共役体の薬物動態学を同一サイズの非放出性共役体の薬物動態学と比して判定することにより計測され得る。小分子薬物に関して、放出される薬物は、すべてのモデル系の血漿から事実上直ぐにクリアランスされ、従って、血漿中の遊離薬物濃度の計測は基本的に無視可能であり、系の無処置の共役体のクリアランスを比較する場合に、共役体自体の濃度を計測して放出速度を算出する必要性があるのみである。このようなデータは、本発明の高分子量共役体に対してより好ましいクリアランス速度を示すために、マウスと比してラットにおいて入手することが好ましい。
【0176】
より詳細には、共役体を、ラットなどのモデル対象に例えば静脈内投与によって投与し、血液サンプルを定期的に採取し、血漿を単離する。次いで、時間に応じた血漿中の共役体レベルを判定する。これは、クロマトグラフィによる分離(例えば、UV、蛍光または質量分析検出と組み合わせた除タンパク後のHPLC分析)によって行っても、適切な場合には、ELISA、生理活性または蛍光などの直接アッセイによって行ってもよい。上記のとおり、巨大分子共役体は単一コンパートメントモデルに準拠しており、本発明の共役体は以下の2つのメカニズム、すなわち、共役体からの薬物の放出、および、無処置の共役体のクリアランス(例えば、腎臓ろ過)の一方により血漿から消失する可能性がある。血漿からの放出性共役体の損失速度は、それ故、薬物の放出による損失の速度と共役体のクリアランスによる損失の速度との和である。対照的に、非放出性共役体の損失速度は、薬物は放出されないため、単に血漿からの共役体のクリアランス速度である。それ故、本発明の共役体からの薬物の放出速度は、放出性共役体の損失速度と対応する非放出性共役体の損失速度とにおける差として算出することが可能である。これは、速度における差を直接的に得ることにより行うことも、
図9aおよび9bに示されているとおり、ln(R/N)(式中、Rは放出性共役体の濃度であり、Nは非放出性共役体の濃度である)対時間のプロットの傾きから算出することも可能である。パネルaに示されているとおり、生データは単に、種々の共役体の濃度の対数(ln)、および、時間に応じた安定な共役体の対数(ln)を示す。パネルbは、上記の計算により得られる種々の放出性共役体の放出速度における差を示す。当然ながら、安定な共役体はゼロ放出速度を示すが、一方で、サンプル共役体における放出のためのトリガの種々の実施形態の薬物の放出速度が示されている。
【0177】
図10は、トリガのインビトロおよびインビボ性質に応じた速度定数の変動が同一のパターンに従うことを示す。