(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977237
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】埋め込み可能な血液ポンプ
(51)【国際特許分類】
A61M 1/10 20060101AFI20160817BHJP
【FI】
A61M1/10 115
【請求項の数】23
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-524979(P2013-524979)
(86)(22)【出願日】2011年8月18日
(65)【公表番号】特表2013-536021(P2013-536021A)
(43)【公表日】2013年9月19日
(86)【国際出願番号】US2011048259
(87)【国際公開番号】WO2012024493
(87)【国際公開日】20120223
【審査請求日】2014年7月11日
(31)【優先権主張番号】61/375,504
(32)【優先日】2010年8月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501356215
【氏名又は名称】ソーラテック コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ケビン ボウルクエ
【審査官】
寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2006/137496(WO,A1)
【文献】
特開平03−088996(JP,A)
【文献】
特表2000−510929(JP,A)
【文献】
特表2011−530315(JP,A)
【文献】
特開2003−093500(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0021683(US,A1)
【文献】
国際公開第2010/015836(WO,A1)
【文献】
特開平04−148095(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/036815(WO,A2)
【文献】
特表2002−512333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋め込み可能な血液ポンプであって、前記埋め込み可能な血液ポンプは、
注入開口部と前記注入開口部からある角度に方向付けられた流出開口部とを画定しているハウジングと、
血液を運ぶための血流導管を画定している前記ハウジング内の隔壁であって、前記血流導管は、前記ハウジングの前記注入開口部と前記流出開口部との間に延在する隔壁と、
固定子と回転子とを含む回転モーターであって、前記固定子は、前記回転子と相互作用するように構成されたコイルを含み、前記血流導管が前記固定子を通って延在するように、前記固定子が前記ハウジング内で前記隔壁の周りに円周状に配置されている、回転モーターと
を含み、
前記固定子は、前記回転子の少なくとも一部の周りに円周状に配置されており、前記固定子は、前記血流導管が前記回転子に到達する前に前記固定子を通って延在するように、前記回転子に対して位置付けられており、前記回転子は、回転の回転子軸の周りを回転し、前記回転子は、前記回転子を駆動するための回転子磁石を含み、前記回転子磁石は、前記回転子の磁気浮遊のための永久磁極を含み、前記固定子は、回転の前記回転子軸に対して垂直な軸に沿って前記回転子磁石に重なる磁極片を含む、埋め込み可能な血液ポンプ。
【請求項2】
前記ハウジング内で前記隔壁の周りに配置された制御用電子部品をさらに含み、前記制御用電子部品は、前記注入開口部と前記固定子との間に配置されている、請求項1に記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
【請求項3】
前記回転子は、1つだけの磁気モーメントを有している、請求項1から2のいずれか1項に記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
【請求項4】
前記固定子は、前記回転子を駆動するための第1のコイルと、前記回転子の半径方向の位置を制御するための第2のコイルとを含み、前記第1のコイルおよび前記第2のコイルは、前記固定子の第1の磁極片に巻き付けられている、請求項1から3のいずれか1項に記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
【請求項5】
前記ハウジングは、螺旋状部分を画定しており、前記螺旋状部分は、使用時に、血液が前記螺旋状部分に到達する前に前記固定子を介して前記血流導管内を流れるように配置されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
【請求項6】
前記ハウジングは、前記注入開口部を画定している第1の面と、前記第1の面に向き合った第2の面と、前記第1の面から前記第2の面に延在する周辺側壁とを有し、
前記ハウジングは、前記第2の面から前記周辺側壁への丸みを帯びた移行部を含み、前記ハウジングは、前記第1の面から延在し、かつ、前記注入開口部と液通している注入カニューラをさらに含み、前記流出開口部は、前記第2の面および前記周辺側壁のうちの少なくとも1つにおいて画定されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
【請求項7】
前記ハウジングは、回転の前記回転子軸に対して垂直方向よりも回転の前記回転子軸に対して平行方向に短い、請求項6に記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
【請求項8】
前記固定子に対する前記回転子の軸方向の位置を制御するように構成された受動的磁気制御システムと、
前記回転子を前記血流導管内で半径方向中心に位置させるように構成された能動的電磁制御システムと
をさらに含み、
前記ハウジング内で前記隔壁の周りに配置された前記能動的電磁制御システムを制御するように構成された制御用電子部品をさらに含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
【請求項9】
前記固定子に対する前記回転子の半径方向位置および軸方向位置のうちの少なくとも1つを制御するための磁気制御システムを含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
【請求項10】
前記固定子は、前記回転子の軸方向位置および半径方向位置を制御するように動作可能な磁気浮上構成部品を含み、前記回転子は、前記血流導管内に配置されており、前記回転子は、前記固定子の磁気浮上構成部品の少なくとも一部を通じて前記注入開口部から血液を汲み上げるように動作可能なインペラを含む、請求項1から9のいずれか1項に記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
【請求項11】
血液ポンプを製作する方法であって、前記方法は、
パック型ハウジング内で内部隔壁の周りに円周状にモーター固定子と制御用電子部品とを組み入れることであって、前記内部隔壁は、前記ハウジングの注入開口部から流出開口部に延在する内部血流導管を画定しており、前記固定子は、前記内部血流導管が前記モーター固定子を通じて延在するようにハウジング内に組み入れられる、ことと、
磁気的に浮上される回転子に担持されるインペラ・ブレードが前記注入開口部から見て前記磁気的に浮上される回転子の下流にあるように、かつ、使用時に、前記インペラが前記固定子を通じて前記注入開口部から前記流出開口部に血液を汲み上げるように、前記内部血流導管内で磁気的に浮上され、かつ、前記固定子に取り囲まれている回転子を配置することであって、前記血液は、前記磁気的に浮上される回転子に到達する前に前記固定子を通って前記血流導管内を流れる、ことと
を含み、
前記磁気的に浮上される回転子は、回転の回転子軸の周りを回転し、前記磁気的に浮上される回転子は、前記磁気的に浮上される回転子を駆動するための回転子磁石を含み、前記固定子は、回転の前記回転子軸に対して垂直な軸に沿って前記回転子磁石に重なる磁極片を含む、方法。
【請求項12】
前記ハウジングは、前記注入開口部を画定している第1の面を含み、端部キャップを前記ハウジングの周辺側壁に係合することをさらに含み、前記端部キャップは、第2の面を含み、渦巻部の少なくとも一部を画定し、流出開口部の少なくとも一部を画定する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記コイルの少なくとも一部は、前記回転子の上流に配置されている、請求項1から10のいずれか1項に記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
【請求項14】
前記固定子は、地鉄を含み、前記地鉄は、前記血流導管が前記地鉄を通じて延在するように、前記ハウジング内に配置され、かつ、前記隔壁の周りに延在する、請求項1から10、13のいずれか1項に記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
【請求項15】
前記回転子は、中央の穴を画定し、使用時に、血液が前記回転子の前記中央の穴を通じて流れる、請求項1から10、13、14のいずれか1項に記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
【請求項16】
前記回転子は、回転の軸を有し、前記固定子は、前記回転の軸の周りで離間された磁極片を含む、請求項1から10、13から15のいずれか1項に記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
【請求項17】
前記回転子は、回転の軸を有し、前記固定子は、前記回転の軸の周りで離間された磁極片を含み、前記磁極片は、前記回転の軸に沿って軸方向位置に延在し、前記磁極片は、前記回転子の一部と重なり合う、請求項1に記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
【請求項18】
前記固定子は、地鉄と、前記隔壁の周りに間隔を置いて配置された磁極片とを含み、前記地鉄は、前記隔壁の周りに延在し、前記地鉄は、強磁性素材のほぼ平坦な円盤として形成されている、請求項1から10、13から17のいずれか1項に記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
【請求項19】
埋め込み可能な血液ポンプであって、前記埋め込み可能な血液ポンプは、
注入開口部と流出開口部とを画定しているハウジングと、
血流導管を画定している前記ハウジング内の隔壁であって、前記血流導管は、前記ハウジングの前記注入開口部と前記流出開口部との間に延在する、隔壁と、
固定子と回転子とを含む回転モーターであって、前記血流導管が前記固定子を通じて延在するように、前記固定子が前記ハウジング内で前記隔壁の周りに円周状に配置されており、前記固定子は、前記回転子の少なくとも一部の周りに円周状に配置されており、前記固定子は、使用時に、血液が前記回転子に到達する前に前記固定子を通じて前記血流導管内を流れるように前記回転子に対して位置付けられており、前記回転子は、回転の回転子軸の周りを回転し、前記回転子は、前記回転子を駆動するための回転子磁石を含み、前記回転子磁石は、前記回転子の磁気浮遊のための永久磁極を含み、前記固定子は、回転の前記回転子軸に対して垂直な軸に沿って前記回転子磁石に重なる磁極片を含む、回転モーターと、
前記固定子に対する前記回転子の軸方向の位置を制御するように構成された受動的磁気制御システムと、
前記回転子を前記血流導管内で半径方向中心に位置させるように構成された能動的電磁制御システムと
を含む、埋め込み可能な血液ポンプ。
【請求項20】
埋め込み可能な血液ポンプであって、前記埋め込み可能な血液ポンプは、
注入開口部と前記注入開口部からある角度に方向付けられた流出開口部とを画定しているハウジングと、
血液を運ぶための血流導管を画定している前記ハウジング内の隔壁であって、前記血流導管は、前記ハウジングの前記注入開口部と前記流出開口部との間に延在する、隔壁と、
固定子と回転子とを含む回転モーターであって、前記固定子は、前記回転子と相互作用するように構成されたコイルを含み、前記血流導管が前記固定子を通じて延在するように、前記固定子が前記ハウジング内で前記隔壁の周りに円周状に配置されており、前記固定子は、前記回転子の少なくとも一部の周りに円周状に配置されており、前記固定子は、前記血流導管が前記回転子に到達する前に前記固定子を通って延在するように前記回転子に対して位置付けられており、前記回転子は、前記回転子の磁気浮上のための永久磁極を有している、回転モーターと
を含み、
前記埋め込み可能な血液ポンプは、前記ハウジング内に配置された地鉄を含み、前記地鉄は、使用時に、血液が前記コイルに到達する前に前記地鉄を通じて前記血流導管内を流れるように、位置付けられている、埋め込み可能な血液ポンプ。
【請求項21】
埋め込み可能な血液ポンプであって、前記埋め込み可能な血液ポンプは、
注入開口部と流出開口部とを画定しているハウジングと、
血流導管を画定している前記ハウジング内の隔壁であって、前記血流導管は、前記ハウジングの前記注入開口部と前記流出開口部との間に延在する、隔壁と、
固定子と回転子とを含む回転モーターであって、前記血流導管が前記固定子を通じて延在するように、前記固定子が前記ハウジング内で前記隔壁の周りに円周状に配置されており、前記固定子は、前記回転子の少なくとも一部の周りに円周状に配置されており、前記固定子は、使用時に、前記血液が前記回転子に到達する前に前記固定子を通じて前記血流導管内を流れるように前記回転子に対して位置付けられており、前記回転子は、回転の回転子軸の周りを回転し、前記回転子は、前記回転子を駆動するための回転子磁石を含み、前記回転子磁石は、前記回転子の磁気浮遊のための永久磁極を含み、前記固定子は、回転の前記回転子軸に対して垂直な軸に沿って前記回転子磁石に重なる磁極片を含む、回転モーターと、
前記固定子に対する前記回転子の軸方向の位置を制御するように構成された受動的磁気制御システムと、
前記回転子を前記血流導管内で半径方向中心に位置させるように構成された能動的電磁制御システムと
を含む、埋め込み可能な血液ポンプ。
【請求項22】
埋め込み可能な血液ポンプであって、前記埋め込み可能な血液ポンプは、
注入開口部と流出開口部とを画定しているハウジングと、
血液を運ぶための血流導管を画定している前記ハウジング内の隔壁であって、前記血流導管は、前記ハウジングの前記注入開口部と前記流出開口部との間に延在する、隔壁と、
固定子と回転子とを含む回転モーターであって、前記血流導管が前記固定子を通じて延在するように、前記固定子が前記ハウジング内で前記隔壁の周りに円周状に配置されており、前記固定子は、前記回転子の少なくとも一部の周りに円周状に配置されており、前記固定子は、前記血流導管が前記回転子に到達する前に前記固定子を通って延在するように前記回転子に対して位置付けられており、前記回転子は、前記回転子の磁気浮上のための永久磁極を有している、回転モーターと
を含み、
前記固定子は、地鉄を含み、
前記固定子は、前記隔壁の周りに間隔を置いて配置された磁極片を含み、前記磁極片のそれぞれはL字型であり、
前記磁極片のそれぞれは、前記地鉄と接触して前記地鉄から延在する第1の脚を有しており、前記磁極片のそれぞれは、前記第1の脚から前記隔壁の方向に延在する第2の脚を有している、埋め込み可能な血液ポンプ。
【請求項23】
埋め込み可能な血液ポンプであって、前記埋め込み可能な血液ポンプは、
注入開口部と流出開口部を画定しているハウジングと、
血流導管を画定している前記ハウジング内の隔壁であって、前記血流導管は、前記ハウジングの前記注入開口部と前記流出開口部との間に延在する、隔壁と、
固定子と回転子とを含む回転モーターであって、前記血流導管が前記固定子を通じて延在するように、前記固定子が前記ハウジング内で前記隔壁の周りに円周状に配置されており、前記固定子は、前記回転子の少なくとも一部の周りに円周状に配置されており、前記固定子は、使用時に、前記血液が前記回転子に到達する前に前記固定子を通じて前記血流導管内を流れるように、前記回転子に対して位置付けられており、前記回転子は、回転の回転子軸の周りを回転し、前記回転子は、前記回転子を駆動するための回転子磁石を含み、前記回転子磁石は、前記回転子の磁気浮遊のための永久磁極を含み、前記固定子は、回転の前記回転子軸に対して垂直な軸に沿って前記回転子磁石に重なる磁極片を含む、回転モーターと、
前記回転子の磁気浮上のためのラジアル軸受として作用するように構成された能動的電磁制御システムと
を含む、埋め込み可能な血液ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願について
本願は2010年8月20日出願の「埋め込み可能な血液ポンプ」と題する2010年8月に出願された米国仮出願第61/375,504に関する優先権及びその他のすべての利権を主張するものである。上記出願は、参照されることにより、その全文が本明細書に組み入れられるものとする。
分野
本発明は埋め込み可能な血液ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
VADと略称される補助人工心臓は患者の心臓が十分な血液循環を行うことができない場合に短期及び長期の両方の応用に用いられる埋め込み可能な血液ポンプである。例えば、心臓病を患っている患者は、心臓移植を待機する間VADを用いることができる。別の例としては、患者は心臓手術からの回復中にVADを用いることができる。このように、VADは弱った心臓を補ったり、あるいは、通常の心臓機能を効果的に代行することができる。VADは患者の体内に埋め込むことができ、その患者の体外の電気的動力源から動力を供給することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
1つの一般的な態様においては、埋め込み可能な血液ポンプは1つのハウジングと1つの血流導管を含んでいる。ハウジング内部で、上記血液ポンプは上記血流導管近くに配置された固定子と磁気的に制御される回転子を含んでいる。
【0004】
別の一般的な態様で、埋め込み可能な血液ポンプは1つの注入開口部と1つの注出開口部を規定するハウジングを含んでいる。上記ハウジング内においては、隔壁が上記ハウジングの注入開口部と注出開口部の間に広がっている血流導管を規定している。上記血液ポンプは1つの固定子と1つの回転子を含む回転モーターを有している。上記固定子はハウジング内で上記隔壁の周りに円周状に配置されていて、これにより内側の血流導管がその固定子を通じて延びている。
【0005】
別の一般的な態様で、埋め込み可能な血液ポンプは注入開口部が形成されている第一の面と周辺側壁と上記第1の面と向き合った第2の面を有するパック(ホッケーの球)型ハウジングを含んでいる。この血液ポンプはそのハウジングの注入開口部と注出開口部間に延在する内部血流導管が形成されている内部隔壁を有している。このパック型ハウジングは上記第1の面から上記第2の面に至る厚みを有しており、その厚みは上記周辺側壁の向き合っている部分間のハウジングの巾より小さい。この血液ポンプは固定子と回転子を有するモーターも有している。固定子は血流導管の周りに円周状にハウジング内に配置されており、上記回転子の軸方向位置及び半径方向位置を制御するように操作できる磁気的浮上用部品を含んでいる。回転子は上記内部血流導管内に配置されており、固定子の上記磁気的浮上用部品の少なくとも一部を通じて血液を注入開口部から注出開口部に汲み出すように操作できるインペラを含んでいる。
【0006】
上記の態様の実施例は以下の特徴の1つあるいは複数を含んでいてもよい。例えば、固定子は回転子の少なくとも一部の周りに円周状に配置されていて、使用時に血液が血流導管内で上記回転子に到達する前に固定子を通過して流れるように配置されている。その回転子は回転子を磁気的に浮上させるための永久磁極を有している。受動的な磁気的制御システムを構成して固定子に対する回転子の軸方向位置を制御すると同時に、能動的電磁制御システムを構成して上記回転子を内部血流導管内で半径方向中心に位置させる。電磁制御システムは固定子に対する回転子の半径方向位置と軸方向位置のうちの少なくとも1つを制御し、上記電磁制御システムは上記ハウジング内で上記隔壁の周りに配置された制御用電子部品を有している。
【0007】
上記制御用電子部品は注入開口部と固定子の間に配置されている。この制御用電子部品は上記能動的な磁気的制御システムを制御するように構成することができる。回転子は磁気モーメントを1つだけ有している。固定子は回転子を駆動させるための第1のコイルと、回転子の半径方向位置を制御するための第2のコイルを有しており、これら第1のコイルと第2のコイルは固定子の第一の磁極片の周りに配置されている。ハウジングは注入開口部が形成されている第一の面とその第1の面に向き合った第2の面、及びその第1の面から第2の面に延びる周辺側壁を有している。ハウジングは上記第2の面から上記周辺側壁方向への丸みを帯びた移行部を有している。ハウジングには螺旋状部分が形成されており、この結果、使用時に、血液がその螺旋状部分に到達する前に血流導管内で固定子を通じて流れるようになっている。この螺旋状部分は固定子と第2の面の間に配置されている。このハウジングは、上記第2の面を含んでおり、上記螺旋状部分の少なくとも一部を形成すると同時に上記注出部の少なくとも一部を形成しているキャップを含むこともできる。このキャップはハウジングの周辺側壁と係合される。ハウジングは上記第1の面から延びており上記注入開口部と液通している注入カニューラも含んでいる。この注入カニューラは患者の心臓に挿入することができる。上記第2の面及び/又は周辺側壁に注出開口部が形成されている。ハウジングの第1の面と第2の面間での厚みはそのハウジングの巾より小さい。
【0008】
別の一般的な態様で、患者の体内にパック型血液ポンプ・ハウジングを挿入するステップを含む方法が提供される。この血液ポンプは、その血液ポンプの固定子に近接したハウジングの第1の平坦面に形成された開口部がその患者の心臓に向き合うように挿入される。さらに、この血液ポンプは、その血液ポンプのインペラに近接したそのハウジングの第2の丸みを帯びた面がその患者の心臓とは反対側に向くように挿入される。上記第1の面は、ハウジングの第2の面がその患者の心臓とは反対側に向くようにしてその患者の心臓の一部分に向き合うように配置される。いくつかの実施例では、上記方法はそのハウジングの注入カニューラをその患者の心臓に挿入するステップを含んでいる。
【0009】
別の一般的な態様において、血液ポンプを製作する工程はモーター固定子と制御用電子部品を内部隔壁の周りに円周状にのパック型ハウジング内で組み合わせるステップを含んでいる。この内部隔壁はそのハウジングの注入開口部から注出開口部まで延びている内部血流導管を形成している。上記固定子はその内部血流導管が上記モーター固定子を通じて延びるようにそのハウジング内に組み入れられる。その内部血流導管内には磁気的に浮上される回転子が配置されている。この回転子は上記固定子によって取り囲まれており、その回転子によって担持されているインペラ・ブレードが注入開口部から見て固定子の下流に配置されている。使用時には、このインペラがその固定子を通じて注入開口部から注出開口部に血液を汲み上げる。
【0010】
実施例においては、以下の1つあるいは複数の特徴を含むことができる。例えば、上記固定子は1つだけの磁気モーメントを有している。この固定子は少なくとも1つの回転子駆動用の第1のコイルと、少なくとも1つの回転子の半径方向の位置を制御するための第2のコイルを含んでおり、それら少なくとも1つの第1のコイルと少なくとも1つの第2のコイルが固定子の第1の極片に巻きつけられている。このハウジングは注入開口部を形成する第1の面を含んでおり、さらに、端部キャップをハウジングの周辺側壁と係合させるようになっており、このキャップは螺旋状部分の少なくとも一部を形成すると同時に注出開口部の少なくとも一部を形成する第2の面を含んでいる。このハウジングは上記第2の面から上記周辺側壁への丸みを帯びた移行部を含んでいる。さらに、ハウジングは上記第1の面から延び注入開口部と液通している注入カニューラを含んでいる。そのハウジングの上記第1の面と第2の面の間の厚みはハウジングの巾より小さい。
【0011】
別の一般的な態様で、血液を汲み上げる方法は、血液ポンプ装置の遠心ポンプ・インペラを磁気的に回転させて、血液を患者の心臓からその血液ポンプ装置のハウジングの注入開口部を通じ、さらにそのハウジングの注出開口部を通じて、そのハウジング内の固定子内部の内部血流導管内に吸引するステップが含まれている。この方法は内部血流導管内でインペラの半径方向位置を選択的に制御するステップを含んでいる。
【0012】
以下に1つあるいは複数の実施例の詳細を添付図面を参照して説明する。その他の特徴も以下の説明と図面及び請求項を参照すれば明らかになるであろう。
好ましい実施形態において、本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
注入開口部と流出開口部を画定しているハウジングと、
前記ハウジング内で血流導管を画定しており、前記血流導管が前記ハウジングの前記注入開口部と前記流出開口部の間に延在している隔壁と、そして
固定子と回転子を含んでいる回転モーターとで構成され、前記固定子が前記ハウジング内で前記隔壁周りに円周状に配置されて前記内部血流導管が前記固定子を通じて延びている
埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目2)
前記固定子が前記回転子の少なくとも一部の周りに円周状に配置されており、使用時に、血液が前記血液導管内部で前記回転子に到達する前に前記固定子を通じて流れることを特徴とする、項目1記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目3)
前記回転子が前記回転子を磁気的に浮上させるための永久磁極を有していることを特徴とする、前記項目のいずれか1項記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目4)
さらに、前記ハウジング内で前記隔壁の周り配置された制御用電子部品を含んでいる、前記項目1から3のいずれか1項記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目5)
前記制御用電子部品が前記注入開口部と前記固定子の間に配置されていることを特徴とする、項目4記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目6)
前記固定子が1つだけの磁気モーメントを有していることを特徴とする、前記項目1から5のいずれか1項記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目7)
前記固定子が前記固定子を駆動させるための第1のコイルと前記回転子の半径方向の位置を制御するための第2のコイルを有しており、前記第1のコイルと前記第2のコイルが前記固定子の第1の磁極片に巻き付けられていることを特徴とする、前記項目1から6のいずれか1項記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目8)
前記ハウジングが螺旋状部分を画定しており、その位置の結果として使用時に、血液が前記螺旋状部分に到達する前に固定子を介して前記血流導管内を流れるようになっていることを特徴とする、前記項目1から7のいずれか1項記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目9)
前記ハウジングが前記注入開口部を画定している第1の面と、前記第1の面に向き合った第2の面と、そして、前記第1の面から前記第2の面に延びている周辺側壁を有しており、前記ハウジングが前記第2の面から前記周辺側壁への丸みを帯びた移行部を有していることを特徴とする、前記項目1から8のいずれか1項記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目10)
さらに、前記第1の面から延び前記注入開口部と液通している注入カニューラを含んでいる、項目9記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目11)
前記注入開口部が前記第2の面と前記周辺側壁のうちの少なくとも1つに画定されていることを特徴とする、項目9又は10のいずれかに記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目12)
前記第1の面と前記第2の間での前記ハウジングの厚みが前記ハウジングの巾より小さいことを特徴とする、項目9から項目11のいずれかに記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目13)
さらに、前記回転子の前記固定子に対する軸方向の位置を制御するように構成された受動的磁気制御システムと、
前記回転子を前記内部血流導管内で半径方向中心に位置させるように構成された能動的電磁制御システム、
とを含んでいる前記項目1から12のいずれか1項記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目14)
さらに、上記ハウジング内に前記隔壁の周り配置された前記能動的電磁制御システムを制御するように構成された制御用電子部品を含んでいる、項目12記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目15)
前記回転子の前記固定子に対する半径方向位置と軸方向位置のうちの少なくとも1つを制御するための磁気制御システムを含んでいる、前記項目1から14のいずれか1項記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目16)
前記ハウジングがパック型であることを特徴とする、前記項目1から15のいずれか1項記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目17)
前記固定子が前記回転子の軸方向位置と半径方向位置を制御するように作動できる磁気浮上構成部品を含んでいることを特徴とする、前記項目1から16のいずれか1項記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目18)
前記回転子が前記内部血流導管内に配置されており、前記固定子の磁気浮上用構成部品の少なくとも一部を通じて前記注入開口部から前記流出開口部に血液を汲み出すように作動できるインペラを含んでいることを特徴とする、項目17記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目19)
注入開口部と流出開口部を画定しているハウジングと、
前記ハウジング内で血流導管を画定しており、前記血流導管が前記ハウジングの前記注入開口部と前記流出開口部の間に延在している隔壁と、
固定子と回転子を含んでおり、前記固定子が前記ハウジング内で前記隔壁の周りに円周状に配置されていて前記血流導管が前記固定子を通じて延びているモーターと、
前記回転子の前記固定子に対する軸方向の位置を制御するように構成された受動的磁気制御システムと、そして、
前記内部血流導管内で、前記回転子を半径方向中心に位置させるように構成された能動的電磁制御システム、とで構成される埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目20)
さらに、前記ハウジング内で前記隔壁の周りに配置された、前記能動的電磁制御システムを制御するように構成された制御用電子部品を含んでいる、項目19記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目21)
前記制御用電子部品が前記注入開口部と前記固定子の間に配置されていることを特徴とする、項目19又は20に記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目22)
前記固定子が1つだけの磁気モーメントを有していることを特徴とする、項目19−21のいずれか1項に記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目23)
前記固定子が前記回転子を駆動するための第1のコイルと前記回転子の半径方向位置を制御するための第2のコイルを含んでおり、前記第1のコイルと前記第2のコイルが前記固定子の第1の磁極片に巻き付けられていることを特徴とする、項目19−21のいずれか1項記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目24)
前記ハウジングがさらに前記注入開口部を画定する第1の面と前記第1の面に向き合う第2の面と前記第1の面から前記第2の面に延びる周辺側壁を有しており、前記ハウジングが前記第2の面から前記周辺側壁へ丸みを帯びた移行部を含んでいることを特徴とする、項目19−21のいずれか1項記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目25)
さらに、前記第1の面から延び、前記注入開口部と液通している注入カニューラを含んでいることを特徴とする、項目24記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目26)
前記流出開口部が前記第2の面と前記周辺側壁のうちの少なくとも1つに画定されていることを特徴とする、項目24又は25に記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目27)
前記第1の面と前記第2の面との間での前記ハウジングの厚みが前記ハウジングの巾より小さいことを特徴とする、項目24−26のいずれか1項記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目28)
注入開口部と流出開口部を画定しているハウジングと、
前記ハウジング内で血流導管を画定しており、前記血流導管が前記ハウジングの前記注入開口部と前記流出開口部の間に延在している隔壁と、
固定子と回転子を含んでおり、前記固定子が前記ハウジング内で前記隔壁の周りに円周状に配置されていて前記血流導管が前記固定子を通じて延びているモーターと、そして
前記回転子の前記固定子に対する半径方向位置と軸方向位置のうちの少なくとも1つを制御するための磁気制御システムで、前記ハウジング内で前記隔壁周りに配置された制御用電子部品を有している磁気制御システム、とで構成される埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目29)
前記回転子が1つだけの磁気モーメントを有していることを特徴とする、項目28記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目30)
前記固定子が前記回転子を駆動するための第1のコイルと前記回転子の半径方向位置を制御するための第2のコイルを有しており、前記第1及び第2のコイルが前記固定子の第1の磁極片に巻き付けられていることを特徴とする、項目28又は29記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目31)
前記ハウジングがさらに前記注入開口部と画定する第1の面と、前記第1の面と向き合った第2の面と、そして、前記第1の面から前記第2の面に延びている周辺側面を含んでおり、上記ハウジングが前記第2の面から前記周辺側壁への丸みを帯びた移行部を含んでいることを特徴とする、項目28−30のいずれか1項記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目32)
さらに、前記第1の面から延び、前記注入開口部と液通している注入カニューラを含んでいることを特徴とする、項目31記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目33)
前記注入開口部が前記第2の面と前記周辺側面のうちのいずれか1つに画定されていることを特徴とする、項目31又は32記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目34)
前記第1の面と前記第2の間での前記ハウジングの厚みが前記ハウジングの巾より小さいことを特徴とする、項目31−33のいずれか1項記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目35)
前記血液ポンプの固定子に近接した前記ハウジングの第1の平坦面に画定された開口部が患者の心臓に向き合い、そして、前記血液ポンプのインペラに近接した前記ハウジングの第2の丸みを帯びた面がその患者の心臓とは反対側に向くようにパック型血液ポンプ・ハウジングを患者の体内に挿入するステップと、
前記パック型血液ポンプと接触するその患者の他の組織の刺激を少なくとも部分的には回避するために前記ハウジングの前記第2の面を心臓とは反対側を向くように第一面を患者の心臓の一部分に配置するステップと、を含む方法。
(項目36)
さらに、前記ハウジングの注入カニューラを患者の心臓に挿入するステップを含む、項目35記載の方法。
(項目37)
注入開口部と周辺側壁と前記第1の面に向き合った第2の面と内部血流導管を画定している内部隔壁を有するパック型ハウジングで、前記内部血流導管が前記ハウジングの前記注入開口部と流出開口部との間に延在していて、前記パック型ハウジングの第一面から第二面の厚みが前記周辺側壁の向き合った部分のあいだのハウジングの巾より小さいことを特徴とするハウジングと、
固定子と回転子を有するモーターで、前記固定子が前記ハウジング内で前記血流導管の周りに円周状に配置されており、さらに、前記ローターの軸方向位置と半径位置を制御するように作動できる磁気浮上用構成部品を含んでおり、前記回転子が前記内部血流導管内に配置されていて、前記固定子の磁気浮上構成部品の少なくとも一部を通じて前記注入開口部から前記流出開口部に血液を汲み上げるように作動できるインペラを含んでいることを特徴とするモーター、とで構成される埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目38)
さらに、前記ハウジング内で前記血流導管の周囲に配置された制御用電子部品を含んでいる、項目37記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目39)
前記回転子が1つだけの磁気モーメントを有していることを特徴とする、項目37又は38記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目40)
前記固定子が前記回転子を駆動するための少なくとも1つの第1のコイルと前記回転子の半径方向の位置を制御するための少なくとも1つの第2のコイルを含んでおり、前記少なくとも1つの第1のコイルと前記少なくとも1つの第2のコイルが前記固定子の第1の磁極片に巻き付けられていることを特徴とする、項目37−39のいずれか1項記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目41)
前記ハウジングが前記回転子と前記第2の面の間に配置される螺旋状部分を画定していることを特徴とする、項目37−40のいずれか1項記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目42)
前記ハウジングが前記第2の面から前記周辺側壁への丸みを帯びた移行部を含んでいることを特徴とする、項目37−41のいずれか1項記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目43)
さらに、前記第1の面から延びており、前記注入開口部と液通している注入カニューラを含んでいる、項目37−42のいずれか1項記載の以下血液ポンプ。
(項目44)
前記流出開口部が前記第2の面と前記周辺側壁のうちの少なくとも1つに画定されていることを特徴とする、項目37−43のいずれか1項記載の埋め込み可能な血液ポンプ。
(項目45)
血液ポンプを製作する方法において、
パック型ハウジング内で内部隔壁の周りに円周状にモーター固定子と制御用電子部品を組み入れ、前記内部隔壁が前記ハウジングの注入開口部から流出開口部に延在している内部血流導管を画定しており、前記固定子が前記内部血流導管が前記モーター固定子を通じて延びるようにハウジング内に組み入れられるステップと、
前記回転子に担持されるインペラ・ブレードが前記注入開口部から見て前記回転子の下流にあるようにし、さらに、使用時に、前記インペラがブが前記固定子を通じて前記注入開口部から流出開口部に血液を汲み上げるように前記内部血流導管内で磁気的に浮上されおよび前記固定子に取り囲まれている回転子を配置するステップ、とで構成される方法。
(項目46)
前記回転子が1つだけの磁気モーメントを有していることを特徴とする、項目45記載の方法。
(項目47)
前記固定子が前記回転子を駆動するための少なくとも1つの第1のコイルと前記回転子の半径方向位置を制御するための少なくとも1つの第2のコイルを含んでおり、前記少なくとも1つの第1のコイルと前記少なくとも1つの第2のコイルが前記固定子の第1の磁極片に巻き付けられていることを特徴とする、項目45又は46記載の方法。
(項目48)
前記ハウジングが前記注入開口部を画定している第1の面を含んでおり、さらに、端部キャップを前記ハウジングの周辺側壁に係合するステップを含んでいて、前記端部キャップが第2の面を含んでおり、渦巻部の少なくとも一部を画定し、及び注出部の少なくとも一部を画定する
含んでいることを特徴とする、項目45−47のいずれか1項記載の方法。
(項目49)
前記ハウジングが前記第2の面から前記周辺側壁への丸みを帯びた移行部を含んでいることを特徴とする、項目48記載の方法。
(項目50)
前記ハウジングがさらに前記第1の面から延び前記注入開口部と液通している注入カニューラを含んでいることを特徴とする、項目48又は49記載の方法。
(項目51)
前記第1の面と前記第2の面の間での前記ハウジングの厚みが、前記ハウジングの巾より小さいことを特徴とする、項目48−50のいずれか1項記載の方法。
(項目52)
血液を汲み上げる方法において、
前記血液ポンプ装置のハウジングの注入開口部を通じて患者の心臓から前記ハウジング内の固定子内の内部血流導管内に、さらに、前記内部血流導管を通じ、そして前記ハウジングの流出開口部を通じて血を吸引するために、血液ポンプ装置の遠心ポンプ・インペラ
を磁気的に回転させるステップと、そして
前記内部血流導管内で前記インペラの半径方向位置を選択的に制御するステップ、とで構成される方法。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、患者の体内に埋め込まれた血液ポンプの使用時の位置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1及び4−11を参照して説明すると、パック型ハウジング110を有する左心室補助血液ポンプ100が患者の体内に埋め込まれており、上記パック型ハウジング110の第1の面111は患者の心臓Hに向けられており、パック型ハウジング110の第2の面113は心臓Hとは反対側を向いている。パック型ハウジング110の第1の面111は心臓Hの左心室L.V内に延びている注入カニューラ112を含んでいる。ハウジング110の第2の面113は血液ポンプ100と接触するその患者の横隔膜などの他の組織を刺激するのを防ぐための面取りされた端部114を有している。図示されている形状のパック型ハウジング110をコンパクトな形で構成するために、ポンプ100の固定子120と電子部品130をハウジングの流入側に第1の面111に向けて配置させ、ポンプ100の回転子140を上記第2の面113に沿って配置させる。固定子120、電子部品130、及び回転子140をこのように配置することで、例えば、
図2、4及び6−9に示してあるように、回転子140の輪郭に沿って端部114を面取りすることができる。
【0015】
図2を参照して説明すると、血液ポンプ100は血流導管103を形成しているハウジング110内に隔壁115を含んでいる。血流導管103は上記注入カニューラ112の注入開口部101から固定子120を通じてハウジング110によって形成される注出開口部105に延びている。上記回転子140は血流導管103内に配置されている。固定子120は回転子140の第1の部分140aの周りに円周状、例えば、永久磁石141の周りに配置されている。また、固定子120は回転子140に対して、使用時に、血液が回転子140に到達する前に固定子120を通じて血流導管103内部を流れるように配置される。永久磁石141は永久N磁極Nと永久S磁極Sを有しており、回転子140を受動的及び能動的に浮上させたり回転子140を回転させたりする。回転子140はインペラ・ブレード143を含む第2の部分140bも有している。インペラ・ブレード143は血流導管の螺旋状部分107内に配置されており、その結果インペラ・ブレード143がハウジング110の第2の面113に近接して配置されている。
【0016】
パック型ハウジング110はさらに上記第1の面111と取り外し可能なキャップ118との間に延在する周辺側壁116を含んでいる。図に示されているように、この周辺側壁116は周辺側壁116の向かい合った部分間の巾Wを有する中空環状円筒部を有している。ハウジング110の第1の面111と第2の面113間の厚みTは巾Wより小さくなっている。厚みTは約0.5インチから約1.5インチの範囲で、巾Wは約1インチから約4インチの範囲である。例えば、巾Wを約2インチ、そして厚みTを約1インチとすることができる。
【0017】
周辺側壁116は内部区画117を含んでおり、この内部区画117は隔壁115と血流導管103を取り囲んでいて、固定子120と電子部品130はその内部区画117内部の隔壁115の周りに配置されている。取り外し可能なキャップ118は第2の面113と面取りされた端部114を含み、注入開口部105を形成している。取り外し可能なキャップ118は周辺側壁116とネジ式で係合して、キャップ118を周辺側壁116との係合状態で密封できるようになっている。キャップ118は内部面118aを含んでいて、この内部面118aは注入開口部105と液通している螺旋状部分107を形成している。
【0018】
内部区画117内部で、電子部品130は第1の面111に近接して配置されており、固定子120は第1の面111から見て電子部品130の反対側に電子部品130に近接して配置されている。電子部品130は回路盤131とその回路盤131上に担持された固定子120に対する電源供給を制御することでポンプ100の作動を制御するための種々の構成部品133を含んでいる。ハウジング110は内部区画117内のスペースを効率的に使用するために上記第1の面111に全体としては平行に回路盤131を内部区画117に受け入れられるように構成されている。この回路盤は隔壁115に向けて半径方向内側に、そして、周辺側壁116に向けて半径方向外側にも延びている。例えば、上記内部区画117は通常は回路盤131を内部に収容するのに必要な以上のサイズではなく、さらに、熱放散、材料膨張、注封材料、及び/又は回路盤131を取り付ける際に用いられるその他の構成要素のためのスペース以上のサイズにはしない。従って、第一面111に隣接するハウジング110の外の部形状は全体としては回路盤131の形状と基本的には同じで、その外部寸法は回路盤131の寸法と比較してそれほど大きくない。
【0019】
さらに
図2と
図3を参照して説明すると、固定子120は一枚の地鉄121と隔壁115の周りに間隔を置いて配置された極片123a-123fを含んでいる。地鉄121は隔壁115の周りに延びており、磁束を誘導するための鋼鉄などの強磁性素材の全体としては平坦な円盤として形成されている。地鉄(back iron)121は制御用電子部品130の傍らに配置されていて、極片123a-123fのための基板を提供している。
【0020】
極片123a-123fのそれぞれはL字型で、回転子140を回転させるための電磁場を発生するための駆動コイル125を有している。例えば、磁極片123aは地鉄121と接触して、その地鉄121から第2の面113の方向に延びる第1の脚124aを有している。磁極片123aは上記第1の脚124aから回転子140の永久磁石141の位置に近接する隔壁115の方向に延びる第2の脚124bも有している。極片123a-123fのそれぞれは、回転子140の半径方向位置を制御するための電磁場を発生する浮上コイル127も有している。
【0021】
駆動コイル125と浮上コイル127のそれぞれは磁極片123a-123fの周りに複数回巻きつけられた伝導体を含んでいる。具体的に言うと、駆動コイル125のそれぞれは例えば磁極片123dあと123eなどのような磁極片123のうちの2つの近接したのに周りに巻き付けられており、各浮上コイル127は1つの磁極片の周りに巻き付けられている。駆動コイル125と浮上コイル127は極片123の第1の脚の周りに巻き付けられており、使用時にコイル125及び127を通じて電流を送ることによって発生される磁束が磁極片123の第1及び第2の脚と地鉄121を通じて誘導される。固定子120の駆動コイル125と浮上コイル127は相互に向き合った対として配置されており、永久磁石141の永久磁極N及び永久磁極Sと相互作用する電磁場を発生させることによって回転子を駆動すると同時に回転子140を半径方向に浮上させるように制御される。固定子120が駆動コイル125及び浮上コイル127の両方を含んでいるので、受動的及び能動的磁力だけを用いて回転子140を浮上させるのにたった1つの固定子が必要なだけである。この構成の永久磁石141はただ1つの磁気モーメントを有するだけで一体的な永久磁気体141でつくられている。例えば、固定子120は米国特許第6,351,048号に記載されているように制御される。この特許は、本明細書で触れたので、その内容全体が本明細書に組み込まれる。制御用電子部品130と固定子120はケーブル119(
図1参照)経由でリモート電源から電力を受け取る。
【0022】
回転子140はその永久磁石141が注入開口部100のの周りの位置でインペラ・ブレードの上流に位置するように、ハウジング110内に配置される。永久磁石141は磁極片123の第2の脚124bに近接した血流導管103内に受け入れられ、永久磁石141と磁極片123の強磁性素材との相互作用を通じて受動的な軸方向センタリング力を提供する。回転子140の永久磁石141と隔壁115は、回転子140が隔壁115内で中心に位置されると、永久磁石141と隔壁115との間に空隙108を形成する。この空隙108は約0.2ミリメートルから約2ミリメートルの範囲であってよい。例えば、空隙108は約1ミリメートルである。永久磁石141の永久磁極Nと永久磁極Sは回転子140と固定子120間に永続的な磁気的吸引力を提供し、この力が固定子120内に概して中心化された回転子140を維持する傾向があり、回転子140が第1の面111あるいは第2の面113の方向に動くのを抑える傾向がある受動的な磁気吸引力として作用する。空隙108がより小さくなると、永久磁石141と固定子120間の磁気的な吸引力がより大きくなり、従って、空隙108の大きさは、永久磁石141が回転子140が隔壁115やキャップ118の内面118aに接触するのを制限するのに十分な程度の強さを有する受動的な軸方向センタリング力を提供できるように調整される。回転子140は第2の面113に向き合ったインペラ・ブレード143の端部を覆う覆い145も含んでおり、この覆い145は血流を螺旋状部分107に向かわせるのに役立つ。この覆い145とキャップ118の内面118aが、回転子140が固定子120によって浮上されると、覆い145と内面118aの間に空隙109を形成する。この空隙109は約0.2ミリメートルから約2ミリメートルの間の範囲である。例えば、空隙109は約1ミリメートルである。
【0023】
血液が血流導管103を通じて流れると、その血液は永久磁石141を通じて形成されている中央の穴141aを通じて流れる。血液は回転子140と隔壁115との間の空隙108を通じて、さらに、覆い145とキャップ118の内面108aの間の空隙109を通じて流れる。空隙108及び109は血液が滞留すると起きる可能性がある凝固形成を制限するのに十分な血流をもたらすのに必要な大きさを持っている。また、空隙108及び109はポンプ100を通じて流れる際に血液が傷められないように、血液細胞に対する圧力を制限するのに十分な大きさも有している。血液細胞に対する圧力を制限するように空隙108及び109の大きさを調整した結果として、空隙108と109は有意な流体力学による懸濁効果を起こすのには大き過ぎる。つまり、血液は空隙108及び109内で軸受作用は発揮しないので、回転子が磁力によってのみ浮上される。
【0024】
上に述べたように、回転子140は浮上コイル127の能動的制御によって半径方向に浮上し、回転子140は永久磁石141と固定子120の受動的な相互作用によって軸方向に浮上されるので、第2の面113の周りに回転子を浮上させる構成部品は必要としない。回転子を浮上させるためのすべての構成要素(つまり、浮上コイル127と磁極片123)を固定子120内に組み込んだので、キャップ118をインペラ・ブレード141と螺旋状部分107の形状に合わせることが可能になる。さらに、回転子浮上用の構成要素のすべてを固定子120内に組み込んだので、区画117からキャップ118に延びる電気コネクタの必要がなくなり、これによって、キャップを簡単に取り付けたり取り外したりできるようになり、ポンプを故障させる要因が一掃される。
【0025】
使用時には、固定子120の駆動コイル125が磁極片123を通じて電磁場を発生させ、回転子140の磁極N及び磁極Sを選択的に吸引したり反撥したりして、回転子140を固定子120内で回転させる。回転子140が回転すると、インペラ・ブレード143が血液を螺旋状部分107内に押し込み、そして血液が注出開口部105から排出される。さらに、回転子が注入開口部101を通じてポンプ100内に血液を吸い込む。回転子140のインペラ・ブレード143の回転によって血液が血液ポンプ内に吸い込まれると、血液が注入開口部101を通じて流れ、さらに電子部品130と固定子120を通じて回転子140の方向に血液が流れる。血液は永久磁石141の穴141aを通じて流れ、さらにインペラ・ブレード143と覆い145と永久磁石141の間を通って、螺旋状部分107内に流れ込む。血液はまた回転子140の周りを流れ、空隙108と、覆い145とキャップ118の内面118aの間の空隙109を通じて流れる。血液は注出開口部105を通じて螺旋状部分107から出ていく。
【0026】
多数の実施例について上に説明した。しかし、ここに権利請求されている発明の精神と範囲から逸脱せずにいろいろな修正が可能であることは分かるであろう。例えば、スナップフィット係合方式や接着剤あるいは溶接などを含めて、異なった取り付け機構あるいは技術を用いて、キャップ118を周辺側壁116と係合させることができる。さらに、キャップ118が注出開口部105と面取りされた端部114を形成している場合について述べたが、注入開口部105及び/又は面取りされた端部114は周辺側壁116あるいは周辺側壁116とキャップ118の両方で形成することもできる。同様に、隔壁115をキャップ118の一部として形成することも出来る。
【0027】
さらに、回転子140は2つ以上の永久磁石を含むこともできる。磁極片123の数と構成も変えることができる。制御電子部品130の作動は固定子の磁極片及び回転子の永久磁石の数と位置に合わせて選択することが出来る。また、キャップ118を接着剤、溶接、スナップフィット、シュリンクフィットなどのその他の技術や構造を用いて周辺側壁と係合させることが可能である。同様に、第1の面111を周辺側壁116とは別個の素材でつくることも可能であり、第1の面111は注入カニューラ112を含めて、制御用電子部品130と固定子120を内部区画117内に取り付けた後、溶接などの方法で周辺側壁116に取り付けることも出来る。覆い145は省略することもできるし、オプションとして、その他の制御装置で代替させて望ましいポンプ効率を達成することも可能である。別のオプションとして、制御用電子部品130を患者の腹部に埋め込まれた別個のハウジングなどポンプ100外に配置することができるし、患者の体外に配置することも可能である。
【0028】
いくつかの実施例で、ハウジング110の寸法は上に述べたものと比較してより大きく、あるいはより小さくすることも可能である。同様に、ハウジング110の巾Wの厚みTに対する比率は上に述べた数値と違っていてもよい。例えば、巾Wは厚みTの約1.1倍から約5倍の範囲であってもよい。さらに、回転子140の永久磁石141は2つ以上のN及びS磁極対を含むことも出来る。周辺側壁116と隔壁115は環状断面を有する円筒として図示されているが、その一方あるいは両方を楕円形あるいはその他の不規則形状の断面を有するように形成することもできる。同様に、周辺側壁116をテーパー加工して、ハウジングの第1の面111から第2の面113へWの巾が一定ではないようにすることもできる。
【0029】
上に述べたように、いくつかの実施例で、血液ポンプ100を病気や手術及び/又はその他の措置からの回復期間中などの移行期に心臓を補助するために用いることができる。その他の実施例で、血液ポンプ100を用いて、患者の大動脈弁が手術のために封止された場合など、患者の心臓の機能を基本的には永続的なベースで部分的あるいは完全に代替させることも可能である。
【0030】
従って、その他の実施形態も以下の請求項に述べられている範囲内にある。