特許第5977266号(P5977266)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977266
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】パターン転写方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 7/26 20060101AFI20160817BHJP
【FI】
   G11B7/26 531
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-557328(P2013-557328)
(86)(22)【出願日】2012年2月10日
(86)【国際出願番号】JP2012053097
(87)【国際公開番号】WO2013118289
(87)【国際公開日】20130815
【審査請求日】2014年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】特許業務法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田切 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】神野 智施
【審査官】 中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−260307(JP,A)
【文献】 特開2007−287329(JP,A)
【文献】 特開2011−076691(JP,A)
【文献】 特開2010−118114(JP,A)
【文献】 特開2003−203402(JP,A)
【文献】 特開平10−283682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタンパの凹凸面のパターンをベース材の被転写面に転写するパターン転写方法であって、
第1ガラス転移温度を有する第1紫外線硬化樹脂を前記スタンパの凹凸面上に塗布し塗布膜を得て、前記塗布膜の露出主面を介して紫外線照射して前記塗布膜を硬化させて、前記第1紫外線硬化樹脂からなる転写層を形成する転写ステップと、
第1ガラス転移温度よりも低い第2ガラス転移温度を有する第2紫外線硬化樹脂からなる中間層を介在させて、記転写層と前記被転写面とを貼り合わせて前記転写層と前記中間層からなるスペーサ層を、前記転写層及び前記中間層に対して紫外線を照射することな形成する貼着ステップと、
前記転写層から前記スタンパを剥離する剥離ステップと、を含むことを特徴とするパターン転写方法。
【請求項2】
前記中間層は、前記第2紫外線硬化樹脂に紫外線照射されることにより、粘着性を保つ硬化状態に形成されていることを特徴とする請求項1記載のパターン転写方法。
【請求項3】
前記剥離ステップ後に露出した前記転写層の主面を前記被転写面として、前記転写ステップ、前記貼着ステップ及び前記剥離ステップの一連を少なくとも1回繰り返すことを特徴とする請求項1記載のパターン転写方法。
【請求項4】
前記剥離ステップ後に、前記転写層へ紫外線照射するステップを含むことを特徴とする請求項1記載のパターン転写方法。
【請求項5】
前記貼着ステップは、減圧下にて実行されることを特徴とする請求項1記載のパターン転写方法。
【請求項6】
前記貼着ステップの前に、前記第2紫外線硬化樹脂を前記ベース材の前記被転写面上に塗布し塗布膜を得て、前記塗布膜の露出主面を介して紫外線照射して前記塗布膜を硬化させて、前記中間層を前記ベース材の前記被転写面上に形成するステップを含むことを特徴とする請求項1又は2記載のパターン転写方法。
【請求項7】
前記貼着ステップの前に、前記第2紫外線硬化樹脂を前記スタンパの前記転写層上に塗布し塗布膜を得て、前記塗布膜の露出主面を介して紫外線照射して前記塗布膜を硬化させて、前記中間層を前記スタンパの前記転写層上に形成するステップを含むことを特徴とする請求項1、2又は6記載のパターン転写方法。
【請求項8】
前記ベース材は前記被転写面にベース凹凸面が形成された基板であることを特徴とする請求項1記載のパターン転写方法。
【請求項9】
前記スタンパは金属スタンパであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1に記載のパターン転写方法。
【請求項10】
前記第1紫外線硬化樹脂の前記第1ガラス転移温度が100℃以上であることを特徴とする請求項1記載のパターン転写方法。
【請求項11】
前記第2紫外線硬化樹脂の前記第2ガラス転移温度が50℃以下であり且つ前記第2紫外線硬化樹脂の弾性率が100MPa以下であることを特徴とする請求項1記載のパターン転写方法。
【請求項12】
前記中間層よりも薄く前記転写層が形成されることを特徴とする請求項1記載のパターン転写方法。
【請求項13】
スタンパの凹凸を被転写面に転写するパターン転写方法であって、
第1紫外線硬化樹脂を前記スタンパの凹凸面上に塗布し塗布膜を得て、前記塗布膜の露出主面を介して紫外線照射して前記塗布膜を硬化させて、転写層を形成する転写ステップと、
粘着性を有する中間層を介して前記転写層と前記被転写面とを貼り合わせて、前記転写層と前記中間層からなるスペーサ層を、紫外線を照射することなく形成する貼着ステップと、
前記転写層から前記スタンパを剥離する剥離ステップと、を含むことを特徴とするパターン転写方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタンパの凹凸面をベース材に転写するパターン転写方法に関し、特に、記録層を2層以上有する多層光ディスクの製造方法に用い得るパターン転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多層光ディスクとしてデジタル多用途ディスク(DVD)及びブルーレイディスク(BD)が知られている。
【0003】
BDでは基板(1.1mm厚)上のL0記録層とL1記録層の2層で記憶容量が最大50Gバイトを有するのに対し、BDの拡張仕様であるBDXL(登録商標)の多層光ディスクでは、100Gバイトと128Gバイトの2種類の記憶容量を持つものが市販されている。BDは記録層1層で記憶容量が25Gバイト、2層(L0,L1記録層)で50Gバイトであるが、BDXLでは記録層が3層と4層の2種類があり、3層タイプ(L0〜L2記録層)の記憶容量は100Gバイト、4層タイプ(L0〜L3記録層)記憶容量は128Gバイトである。
【0004】
それぞれ記録層には凹凸である案内用グルーブ(又はピット)が形成されており、記録層間に挟まれるスペーサ層は、隣接記録層からの信号が干渉しないように層分離し且つ、浅い記録層はより深くの記録層へレーザ光を透過し又は反射光を透過する機能を担う。よって、スペーサ層の厚さは例えば10〜20μm程度から選択され、スペーサ層の形成すなわちパターン転写には厳しい膜厚誤差精度が要求されている。かかる膜厚誤差精度を達成するためにパターン転写には金属スタンパと紫外線硬化樹脂を用いたフォトポリマー(所謂2P)法などが広く用いられる(特許文献1〜4、参照)。
【0005】
例えば2P法を用いるBDの再生専用2層光ディスク製造における転写方法では、金属スタンパを使用して2層の記録層の間にある紫外線硬化樹脂のスペーサ層を形成する場合、透明基板側から紫外線(UV)を照射して紫外線硬化樹脂をスペーサ層として硬化させている。金属スタンパは紫外線を透過しないからである。また、BDの再生専用ディスクの場合、基板側の反射層が半透過膜なので、基板側からの紫外線で紫外線硬化樹脂スペーサ層が形成できる。
【0006】
一方、BDの記録型光ディスクの場合は、記録層の紫外線透過率が低い故に基板を透過して紫外線硬化樹脂を十分硬化させることができない。その為、記録型多層光ディスクのスペーサ層形成すなわちスペーサ層転写方法では、金属スタンパの代わりに透明な樹脂スタンパなどを使用して、透明スタンパ側からUV照射してスペーサ層を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−004808号公報
【特許文献2】特開2007−095248号公報
【特許文献3】特開2009−277265号公報
【特許文献4】特開2009−170084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示の技術においては、スペーサ層の形成に紫外線硬化型粘着シートを使用し、当該粘着シートを過熱した金属スタンパ及び基板で挟み基板側からUV照射しているので、透過率の低い記録層では紫外線硬化型粘着シートを硬化させることができず、記録型多層光ディスクに適応できない。また、紫外線硬化型粘着シートを使用しているので、コスト高になるという問題がある。
【0009】
特許文献2に開示の技術においては、紫外線硬化樹脂を真空中で透明樹脂スタンパと基板で挟み貼り合せて透明樹脂スタンパ側からUV照射してスペーサ層を転写しているので、透明樹脂スタンパを使用する故にコスト高になる。
【0010】
特許文献3及び4に開示の金属スタンパを使用した多層光ディスク作製方法においては、基板側からUV照射してスペーサ層形成をしているので、透過率の低い記録層では多層構造としたとき紫外線硬化樹脂を硬化することができず、記録型多層光ディスクに適応できない。
【0011】
特許文献2に開示のように、ガラスなどの透明スタンパを使用した場合は透明スタンパ側からUV照射可能だが、繰り返し使用可能な高強度の透明スタンパを作製するのはコストが掛かり現実的ではない。さらに、透明樹脂スタンパは使い捨てなので、透明樹脂スタンパの作製の工数及び材料費が余分にかかりコスト高となってしてしまう問題がある。
【0012】
そこで本発明は、上述した問題に鑑みなされたもので、2層以上の記録層などの転写層を光ディスクの基板などのベース材へ簡素な工程で転写することができるパターン転写方法を提供することが課題の一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によるパターン転写方法は、スタンパの凹凸面のパターンをベース材の被転写面に転写するパターン転写方法であって、
第1ガラス転移温度を有する第1紫外線硬化樹脂を前記スタンパの凹凸面上に塗布し塗布膜を得て、前記塗布膜の露出主面を介して紫外線照射して前記塗布膜を硬化させて、前記第1紫外線硬化樹脂からなる転写層を形成する転写ステップと、
第1ガラス転移温度よりも低い第2ガラス転移温度を有する第2紫外線硬化樹脂からなる中間層を介在させて、前記転写層と前記被転写面とを貼り合わせる貼着ステップと、
前記転写層から前記スタンパを剥離する剥離ステップと、を含むことを特徴とする。
【0014】
上記の本発明の構成によれば、簡素な工程で2層以上の転写層をベース材へ転写することができ、ホログラム積層体のパターン転写方法や、有機EL素子の製造方法における有機EL層の転写方法などに応用できる。例えば、多層光ディスク製造方法において、記録層の透過率に影響されずにパターン転写が可能となり、また、紫外線硬化型粘着シートや透明スタンパなど別部材を作成してこれを用いるプロセスの工程数を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のパターン転写方法の一例の実施形態としての2層光ディスクの製造方法により製造される光ディスクの概略部分断面図である。
図2】本発明の実施形態の片面2層光ディスクの製造過程における基板とその上に形成された構造物を示す断面図である。
図3】本発明の他の実施形態の片面2層光ディスクの製造過程における基板とその上に形成された構造物を示す断面図である。
図4】本発明の他の実施形態の片面2層光ディスクの製造過程における基板とその上に形成された構造物を示す断面図である。
図5】実施例の片面2層光ディスクの既記録の第2記録層L1からの再生信号のジッタ(Jitter)のガラス転移温度Tg(℃)に対する依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明のパターン転写方法の一例の実施形態としての片面2層光ディスクのBDとその製造方法を、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1は、本発明の製造方法によって製造される片面2層光ディスクの断面図である。
【0018】
この片面2層光ディスクは、基板1上に、第1層目の記録層L0、中間層2、転写層3、第2層目の記録層L1、カバー層4が順次に積層された構成を有する。基板1に形成された第1層目の記録層L0には案内用グルーブ又はピットが形成され、その上には、合計厚さ25μmを有するスペーサ層である中間層2及び転写層3が積層されている。転写層3には同様の案内用グルーブ又はピットを有する第2層目の記録層L1が形成されている。第2層目の記録層L1上には、光ディスクの保護を目的としたカバー層4が形成されている。
【0019】
情報信号の記録再生は、例えば、レーザ光がカバー層4を通じて片側から2つの記録層にそれぞれ集光されることによって行われる。第1層目の記録層L0は対物レンズ(図示せず)によって集束されたレーザ光によって、第2層目の記録層L1は対物レンズによって集束されたレーザ光によって、各々片側から記録再生を行うため、第1層目の記録層L0と第2層目の記録層L1の間にあるスペーサ層の中間層2及び転写層3は、光透過性を有している必要がある。
【0020】
スペーサ層の中間層2及び転写層3は、それぞれ異なるガラス転移温度を有する紫外線硬化樹脂から成膜される。中間層2は、第1ガラス転移温度よりも低い第2ガラス転移温度を有する第2紫外線硬化樹脂からなる紫外線硬化樹脂から成膜される。転写層3は比較的高い第1ガラス転移温度を有する第1紫外線硬化樹脂からなる。転写層3用の第1紫外線硬化樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が高い方が転写性及び剥離性が良い傾向があり、例えば、ガラス転移温度が100℃以上のものの使用が望ましい。中間層2は比較的低い第2ガラス転移温度を有する第2紫外線硬化樹脂から形成される。中間層2用の第2紫外線硬化樹脂は、ディスク完成後の反りを少なくするためにガラス転移温度が低くさらに弾性率も低いものが望まれる。例えば、はガラス転移温度が50℃以下、弾性率が100Mpa以下のものが望ましい。中間層2は少なくとも第1ガラス転移温度よりも低い第2ガラス転移温度を有する第2紫外線硬化樹脂から形成されることが好ましい。
【0021】
基板1の材料としては、ガラスなど無機材料またはポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂もしくはアクリル系樹脂等の樹脂材料を使用できるが、コスト等の点を考慮すると、樹脂材料を使用することが好ましい。
【0022】
スペーサ層(中間層2及び転写層3)を挟む第1層目の記録層L0及び第2層目の記録層L1は、光ディスクが再生専用型である場合には、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銀合金、アルミニウム(Al)またはアルミニウム合金等からなる反射膜が形成される。光ディスクが追記型である場合には、例えば、反射膜と有機若しくは無機材料からなる記録膜とを順次積層した記録層が構成される。光ディスクが書き換え可能型である場合には、例えば、反射膜、下層誘電体膜、相変化記録膜及び上層誘電体膜を順次積層した記録層が構成される。有機材料の成膜にはスピンコート法など湿式塗布法が用いられ、無機材料の成膜にはスパッタ法など乾式塗布法が用いられる。
【0023】
カバー層4は75μm程度の厚さを有し、カバー層4としては、例えば、接着層とポリカーボネートシート、紫外線硬化樹脂、または紫外線硬化樹脂とポリカーボネートシートを用いることができる。例えば、厚さ15μmを有する紫外線硬化樹脂層と厚さ60μmを有するポリカーボネートシートとから構成できる。
【0024】
かかるBD2層光ディスクの作製ステップを図2に従って説明する。
【0025】
まず、図2Aに示す金属スタンパ11を作製する。例えば、マスタリングステップにて電子ビーム描画法とRIE(Reactive Ion Etching)処理とを併用する技術を用いて、マスタ基板を作成し、それにニッケルを蒸着した後、メッキ法により成長させて、ニッケル製の金属スタンパ11を作製できる。金属スタンパ11には、記録層として基板に転写すべき案内用グルーブ又はピットの反転形状bpS(以下、単にスタンパ凹凸面という)が形成されている。金属スタンパにはニッケルが一般的に用いられているが、特に限定するものではない。
【0026】
図2Bに示すように、金属スタンパとの転写性及び剥離性の良好な第1紫外線硬化樹脂(液状)を、所定の厚さとなるような分量でスタンパ凹凸面bpSに薄くスピンコートした後に塗布膜を得て、この塗布膜の露出主面を介して紫外線照射して該塗布膜を完全硬化させる。紫外線硬化樹脂が完全に硬化していないと、ピットやグルーブの転写が不完全となり、記録再生特性が悪化し、さらに金属スタンパとの剥離も困難となる。このように、完全硬化した第1紫外線硬化樹脂からなる転写層3をスタンパ凹凸面上に形成する(転写ステップ)。完全硬化させることによって、転写層3に第2層目の凹凸面bp1が完成する。
【0027】
一方、図2Cに示す片面2層光ディスクの透明な基板1を用意する。基板1は、主面に第1層目の記録層として転写すべき案内用グルーブ又はピット(所謂、ベース凹凸面bp0)が形成された透明円盤である。例えば上記の金属スタンパ11と同一の金属スタンパを成形機に装着し、射出成形法(インジェクション法)で金属スタンパのパターン(ベース凹凸面bp0)が転写された例えばポリカーボネート製の基板1を作製する。基板1の成形方法は、限定されないが、例えば、射出成形法の他、紫外線硬化樹脂を使うフォトポリマー法(2P法)を用いベース凹凸面bp0を形成することもできる。
【0028】
図2Dに示すように、同一の金属スタンパのベース凹凸面bp0が転写された基板1のパターン面上に複数層をスパッタ法で所定の記録膜などを積層し、第1層目の記録層L0を成膜する。
【0029】
図2Eに示すように、基板1の第1層目の記録層L0上に上記中間層用の第2紫外線硬化樹脂(液状)を、所定の厚さとなるような分量でスピンコート法で塗布する。そして、塗布膜を得て、この塗布膜の露出主面を介して紫外線照射して第2紫外線硬化樹脂をその表面が粘着性を保つ程度の硬化状態まで硬化させて、中間層2を基板1の被転写面(第1層目の記録層L0)上に形成する(中間層形成ステップ)。なお、完全硬化状態でも表面に粘着性を有する第2紫外線硬化樹脂材料を用いて中間層2を形成しても良い。
【0030】
次に、図2Fに示すように、基板1上に形成した中間層2上に金属スタンパ11上に形成した転写層3を密着させ、紫外線光の照射なく、スペーサ層(接合した中間層2と転写層3)を形成する。このように、中間層2を介在させて、金属スタンパ11の転写層3側と基板1の第1層目の記録層L0(ベース材の被転写面)側とを貼り合わせる(貼着ステップ)。金属スタンパ11を基板1へ貼着させる貼着ステップは、中間層2と転写層3の界面への気泡の混入を減少させるために、減圧下で実行されても良い。
【0031】
図2Gに示すように、金属スタンパ11を紫外線硬化樹脂からなるスペーサ層の転写層3から剥離する(剥離ステップ)。金属スタンパ11を除去すると、第2層目の凹凸面bp1が露出する。剥離性の良い第1紫外線硬化樹脂を転写層3に用いているため、転写層3は基板側に残り、金属スタンパのみ剥離することが可能である。
【0032】
このように本実施形態では、金属スタンパ側にあらかじめ転写層3となる第1紫外線硬化樹脂の層を形成しておき、さらに基板にも接着機能をもたせた第2紫外線硬化樹脂による中間層2を形成して密着させる事により、透過率の低い記録層と金属スタンパ11の組み合わせでも転写層3と中間層2形成が可能となる。
【0033】
転写層3用と中間層2用の第1及び2紫外線硬化樹脂はそれぞれ必要な性質が異なるため、それぞれ最適な材料を選定すべきである。転写用の第1紫外線硬化樹脂は金属スタンパとの剥離性が良く、さらに転写性も良好となるようにガラス転移温度が高い材料を使用する。中間層2用の第2紫外線硬化樹脂はディスクの反りが少なく、転写層3と密着するように、ガラス転移温度及び弾性率の低い材料を使用する。
【0034】
図2Hに示すように、金属スタンパ剥離後に、転写層3側から紫外線を再度照射し、中間層2用の紫外線硬化樹脂を完全硬化させるステップを実行してもよい。使用する記録層との組み合わせによっては、中間層2の硬化が不足すると記録再生特性に影響があることが考えられるため、中間層2の硬化度を上げるために紫外線再照射ステップを設けても良い。中間層2の硬化度が十分である場合、かかる紫外線再照射ステップを省くこともできる。中間層2よりも薄く転写層3が形成されていれば、硬化が促進される故に中間層2のための紫外線再照射ステップの照射時間を短縮できる。
【0035】
図2Iに示すように、転写された基板1の第2層目の凹凸面bp1上に複数層をスパッタ法で所定の記録膜などを積層し、第2層目の記録層L1を成膜する。
【0036】
図2Jに示すように、第2層目の記録層L1上にカバー層4を形成すれば、片面2層光ディスクのBDが完成する。
【0037】
なお、3層以上の記録層を有する更なる多層光ディスクも、図2A図2Bに示す金属スタンパ11を用いるステップと、図2Jに示すカバー層形成ステップに代えて、第2層目の記録層L1上に更なる中間層2を形成するステップ(図2E図2I)を繰り返すことによって製造することができる。すなわち、多層光ディスクは、剥離ステップにて得られた転写層3を基板1の被転写面側として、転写ステップ、中間層形成ステップ、貼着ステップ及び剥離ステップの一連を少なくとも1回繰り返すことによって製造することができる。
【0038】
図2に示す実施形態では、第2紫外線硬化樹脂を基板1の被転写面(記録層L0)上に塗布し、第2紫外線硬化樹脂側からUV照射して硬化させて、中間層2を基板1の被転写面上に形成して、金属スタンパ11と貼り合せを行ったが、転写層3の形成された金属スタンパ側に中間層2用の紫外線硬化樹脂を重ねて、基板と貼り合せても良い。
【0039】
例えば、図3に示す更なる実施形態では、図2Eに示す基板1上の中間層2の形成に代えて、図3E’に示すように、金属スタンパ11上の完成された転写層3上に上記中間層用の第2紫外線硬化樹脂(液状)を、所定の厚さとなるような分量でスピンコート法で塗布して、塗布膜を得て、この塗布膜の露出主面を介して紫外線照射して第2紫外線硬化樹脂をその表面が粘着性を保つ程度の硬化状態まで硬化させて、中間層2を金属スタンパ11側に形成する(中間層形成ステップ)。なお、図3において、図2に示す図と同一の部材についての動作は、同一の部材番号を付して細部の説明は省略する。
【0040】
そして、図3Fに示すように、基板1上に形成した第1層目の記録層L0上に金属スタンパ11上に形成した中間層2を密着させ、紫外線光の照射なく、スペーサ層(接合した中間層2と転写層3)を形成する。このようにしても、中間層2を介在させて、金属スタンパ11の転写層3側と基板1の第1層目の記録層L0(ベース材の被転写面)側とを貼り合わせることができる(貼着ステップ)。金属スタンパ11側に中間層2を形成することにより、紫外線硬化樹脂の塗布ステップ(装置)を1箇所にまとめる事ができる故に、装置設備の設計上の自由度が上がる。
【0041】
さらに、図4に示す他の更なる実施形態では、図2Eに示す基板1上の中間層2の形成に加えて、図4E’に示すように、金属スタンパ11上の完成された転写層3上に上記中間層用の第2紫外線硬化樹脂(液状)を、所定の厚さとなるような分量でスピンコート法で塗布して、第2紫外線硬化樹脂からUV照射して表面が粘着性を保つ程度の硬化状態まで硬化させて、予め中間層2を金属スタンパ11側に形成する(中間層形成ステップ)。なお、図4において、図2に示す図と同一の部材についての動作は、同一の部材番号を付して細部の説明は省略する。
【0042】
そして、図4Fに示すように、基板1上に形成した中間層2上に、金属スタンパ11上に予め形成した中間層2を密着させ、紫外線光の照射なく、スペーサ層(接合した中間層2と転写層3)を形成する。このようにしても、中間層2を介在させて、金属スタンパ11の転写層3側と基板1の第1層目の記録層L0(ベース材の被転写面)側とを貼り合わせることができる(貼着ステップ)。
【0043】
これら実施形態によれば、金属スタンパに予め薄く形成した転写層を、中間層側からのUV照射で降下した中間層を介して、基板と貼り合せることにより、スペーサ層(接合した中間層と転写層)を形成することができるので、記録層を2層以上有する光ディスクを、透明スタンパなど材料を無駄に用いることなく、少ないプロセスで、安価に製造することができる。
【実施例】
【0044】
実施例として図2に示す形態の追記型2層光ディスクを作成し、評価した。作成した追記型2層光ディスクの仕様を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
第1記録層L0及び第2記録層L0の各膜は適宜、DCスパッタ、RFスパッタで成膜した。L0層とL1層のBiGeN記録膜の組成は窒化度を調整して光学定数を最適化した。転写層及び中間層はそれぞれ所定の紫外線硬化樹脂をスピンコート法によって塗布し、紫外線を露光して硬化させた。
【0047】
転写層(第1紫外線硬化樹脂)及び中間層(第2紫外線硬化樹脂)は紫外線硬化樹脂のアクリル系樹脂Sample A〜Hを用意して作製した。表2にSample A〜Hのガラス転移温度Tg(℃)を示す。中間層をガラス転移温度の低いSample Hで成膜し、転写層をSample A〜Hでそれぞれ成膜した。
【0048】
【表2】
【0049】
このようにして作製した片面2層光ディスクを評価した。評価システムのパラメーターと記録再生の評価条件を表3に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
評価はパイオニア株式会社製ディスク評価装置で行った。記憶容量は、各記録層で25GBであった。ジッタ(Jitter)はリミットイコライザを用いて等化し、Data to Clockで評価した。L0層とL1層の記録には、それぞれのマルチパルスの長さを最適化した。また、記録ストラテジはBDのWhite Paperに依った。
【0052】
Sample A〜Hからなる既記録の第2記録層L1からの再生信号のジッタ(Jitter)のガラス転移温度Tg(℃)に対する依存性の結果を、上記の表2及び図5に示す。
【0053】
ガラス転移温度が高い転写層(第1紫外線硬化樹脂)を有する光ディスクほど良好なジッタの低下が確認できた。
【符号の説明】
【0054】
1 基板
L0 第1層目の記録層
2 中間層
3 転写層
L1 第2層目の記録層
4 カバー層
bp0 ベース凹凸面
bp1 第2層目の凹凸面
bpS スタンパ凹凸面
11 金属スタンパ
図1
図2
図3
図4
図5