特許第5977275号(P5977275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977275
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】分岐路認識装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/60 20060101AFI20160817BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   G06T7/60 200J
   G08G1/16 C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-26593(P2014-26593)
(22)【出願日】2014年2月14日
(65)【公開番号】特開2015-153161(P2015-153161A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2015年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社日本自動車部品総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】川嵜 直輝
(72)【発明者】
【氏名】熊野 俊也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】高藤 哲哉
【審査官】 ▲広▼島 明芳
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−232467(JP,A)
【文献】 特開2013−097738(JP,A)
【文献】 特開2014−021051(JP,A)
【文献】 特開2011−192164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/60
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載カメラ(10)で取得した車両周囲の画像から画像処理により白線候補を抽出する白線候補抽出手段(21)と、
前記白線候補の白線らしさの確信度を算出する確信度算出手段(22,23)と、
前記確信度算出手段が算出した確信度に基づき、認識する白線を選択する白線選択手段(24)と、
前記白線選択手段によって選択された白線に関する特徴に基づき、分岐路の有無を判定する分岐路判定手段(25)と、
を備え、
前記分岐路判定手段(25)は、前記白線選択手段(24)によって選択された白線に関する特徴として、車線が複合線ではないこと、車線が実線であること、車線が急カーブではないこと、左右の車線の平行度の変動が設定値よりも大きいこと、または車線の曲率の変動量が設定値よりも大きいこと、のうちの二つ以上の特徴による確信度を統合した確信度を算出し、その算出した確信度に基づき、分岐路の有無を判定すること
を特徴とする分岐路認識装置(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の分岐路認識装置(1)において、
前記分岐路判定手段(25)は、算出した確信度が所定値以上である場合には分岐路が存在すると判定し、算出した確信度が所定値未満である場合には分岐路が存在しないと判定すること
を特徴とする分岐路認識装置(1)。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の分岐路認識装置(1)において、
前記分岐路判定手段(25)による判定結果を出力する判定結果出力手段(25)を備えること
を特徴とする分岐路認識装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の分岐を精度良く認識する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自車両の推定軌跡との平行度に着目して、平行度の低い方の車線を車線分岐と検出する技術が記載されている。
また、特許文献2には、車線幅の変化で分岐判定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−331389号公報(第17頁)
【特許文献2】特開2000−105898号公報(第14〜16頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された技術では、分岐路でない車線、特に複合線のような白線が複数本存在して道路形状の推定が困難である場合に、平行度や曲率が大きく変動するために、分岐路として誤認識することがあり、進路形状の推定精度が良くないという問題があった。
【0005】
また、特許文献2に記載された技術では、単に一つの特徴でもって分岐判定するため、分岐路でない車線を分岐路と誤認識することがあり、進路形状の推定精度が良くないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、分岐路を精度良く認識する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の分岐路認識装置によれば、車載カメラで取得した車両周囲の画像から画像処理により白線候補を抽出し、前記白線候補の白線らしさの確信度を算出し、算出した確信度に基づき、認識する白線を選択し、選択された白線に関する特徴として、車線が複合線ではないこと、車線が実線であること、車線が急カーブではないこと、左右の車線の平行度の変動が設定値よりも大きいこと、または車線の曲率の変動量が設定値よりも大きいこと、のうちの何れか一つの特徴による確信度または二つ以上の特徴による確信度を統合した確信度を算出し、その算出した確信度に基づき、分岐路の有無を判定するので、分岐路を精度良く認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】分岐路認識装置の概略の構成を表す機能ブロック図である。
図2】車両における車載カメラの位置を表す説明図である。
図3】画像処理装置の概略の機能構成を示す機能ブロック図である。
図4】分岐路認識処理を示すフローチャートである。
図5】(a)は平行度変動算出処理を説明する説明図であり、(b)は曲率変動算出処理を説明する説明図であり、(c)は複合線らしさ算出処理を説明する説明図であり、(d)は実線・破線尤度算出処理を説明する説明図であり、(e)は急カーブらしさ算出処理を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施形態を図面とともに説明する。なお、本発明は下記実施形態に限定されるものではなく、様々な態様にて実施することが可能である。
[1.分岐路認識装置1の構成の説明]
分岐路認識装置1は、図1に示すように、車両周囲の画像を取得する車載カメラ10と、車載カメラ10で取得した車両周囲の画像を画像処理する画像処理装置20と、を備えている。
【0010】
[1.1.車載カメラ10の構成の説明]
車載カメラ10はCCDカメラで構成され、図2に示すように、車両の中央前部に設置されてその前方を連続して撮影する。
【0011】
[1.2.画像処理装置20の構成の説明]
画像処理装置20は、CPU、ROM、RAM、EEPROM、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)等を備えた周知のマイクロコンピュータ上で実行される処理として実現され、図3に示すように、各DSPが、白線候補算出部21、白線特徴算出部22、白線特徴統合部23、制御目標白線選択処理部24、分岐路判定部25、として機能する。
【0012】
白線候補算出部21は、車載カメラ10で取得した画像から画像処理により道路上の白線候補を算出する機能を有する。具体的には、車載カメラ10で取得した画像から、公知の画像処理であるパターンマッチング、直線抽出ハフ変換処理における投票数(実線・破線判定結果)などにより、道路上の白線らしきもの(白線候補)を算出する。なお、白線候補は、1フレームの画像において複数抽出される場合もある。
【0013】
なお、白線候補算出部21は、白線候補抽出手段に該当する。
白線特徴算出部22は、白線候補算出部21で抽出した白線候補について、白線らしさの確信度を算出する機能を有する。なお、確信度は、0.01〜1の範囲内で設定される数値(尤度)であって、(1)線種(複合線)パターン判定処理、(2)実線(投票数)判定処理、(3)直進性判定処理、(4)コントラスト強度判定処理、(5)コントラスト顕著判定処理、(6)白線内部の模様のなさ判定処理、(7)横断歩道からの遠さ判定処理、(8)路面からの輝度の高さ判定処理、(9)物標からの遠さ判定処理、の各処理ごとに設定する。よって、1つの白線候補について、複数の確信度が設定される。
【0014】
白線特徴統合部23は、上記(1)〜(9)の各処理においてそれぞれ算出されて出力される確信度を乗算して統合することにより白線らしさを示す尤度を出力する機能を有する。この白線特徴統合部23における統合処理は、ベイズ推定のフレームワークに基づき、確信度の乗算による統合から判定する。
【0015】
なお、白線特徴算出部22および白線特徴統合部23は、確信度算出手段に該当する。
制御目標白線選択処理部24は、白線特徴統合部23が出力する尤度のうち最大の尤度を有する白線候補を道路上の白線として選択する機能を有する。この制御目標白線選択処理部24では、特徴として、自車にとって最内側の実線であること、分岐路判定時の外側線でないこと、左右白線のペアの車線らしさが高いこと、などを用いる。白線特徴統合部23では、白線候補に対して「白線らしさ」が統合された尤度として出力されるので、制御目標白線選択処理部24では、その統合された尤度が最大となっている白線を道路上の白線として選択するのである。
【0016】
なお、制御目標白線選択処理部24は、白線選択手段に該当する。
分岐路判定部25は、後述する分岐路認識処理を実行することにより、制御目標白線選択処理部24によって選択された白線に関する特徴から分岐路の確信度を算出し、その算出した確信度に基づき分岐路の有無を判定する機能を有するDSPである。この分岐路判定部25では、特徴として、(1)車線が複合線ではないこと、(2)車線が実線であること、(3)車線が急カーブではないこと、(4)左右の車線の平行度の変動が設定値よりも大きいこと、(5)車線の曲率の変動量が設定値よりも大きいこと、を用い、上記(1)〜(5)の特徴のうちの何れか一つの特徴による尤度または二つ以上の特徴による尤度を統合した尤度(統合尤度)を算出し、その算出した尤度に基づき、分岐路の有無を判定する。
【0017】
なお、分岐路判定部25は、分岐路判定手段に該当する。
[2.分岐路認識処理の説明]
次に、画像処理装置20の分岐路判定部25が実行する分岐路認識処理を、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0018】
本処理は、自車両の走行中、所定時間ごとに繰り返し実行される。
まず、最初のステップS110では、平行度を算出する。具体的には、分岐路判定部25が、制御目標白線選択処理部24によって選択された白線の平行度を算出する。その後、S120に移行する。
【0019】
S120では、曲率を算出する。具体的には、分岐路判定部25が、制御目標白線選択処理部24によって選択された白線の曲率を算出する。その後、S130に移行する。
S130では、平行度変動の尤度を算出する。具体的には、分岐路判定部25が、S110で算出した左右の車線の平行度についてその変動を算出し、算出した平行度の変動についてその尤度を算出する。より具体的には、図5(a)に示すテーブルを参照して平行度の変動の尤度を算出する。ここでは、左右の車線の平行度の変動が小さい場合には尤度を0.5とし、左右の車線の平行度の変動が大きい場合には尤度を0.1とする。なお、この0.5という値は、平行度の変動が小さい場合に分岐判定を抑制する機能を発揮するために設定される値であり、0.1という値は、他の複数のIPが強い確信で分岐と判定した場合にのみ、分岐抑制を覆すために設定される値である。その後、S140に移行する。
【0020】
S140では、曲率変動の尤度を算出する。具体的には、分岐路判定部25が、S120で算出した白線の曲率についてその変動を算出し、算出した曲率の変動についてその尤度を算出する。より具体的には、図5(b)に示すテーブルを参照して白線の曲率変動の尤度を算出する。ここでは、白線の曲率変動が設定値よりも小さい場合には尤度を0.5とし、白線の曲率変動が設定値よりも大きい場合には尤度を0.1とする。なお、この0.5という値は、白線の曲率変動が小さい場合に分岐判定を抑制する機能を発揮するために設定される値であり、0.1という値は、他の複数のIPが強い確信で分岐と判定した場合にのみ、分岐抑制を覆すために設定される値である。その後、S150に移行する。
【0021】
S150では、複合線の尤度を算出する。具体的には、分岐路判定部25が、制御目標白線選択処理部24によって選択された白線について複合線らしさの尤度を算出する。より具体的には、図5(c)に示すテーブルを参照して複合線らしさの尤度を算出する。ここでは、複合線らしさが設定値よりも小さい場合には尤度を0.5とし、複合線らしさが設定値よりも大きい場合には尤度を0.1とする。なお、この0.5という値は、複合線らしさが小さい場合に分岐判定を抑制する機能を発揮するために設定される値であり、0.1という値は、他の複数のIPが強い確信で分岐と判定した場合にのみ、分岐抑制を覆すために設定される値である。その後、S160に移行する。
【0022】
S160では、実線・破線の尤度を算出する。具体的には、分岐路判定部25が、制御目標白線選択処理部24によって選択された白線について実線・破線であることの尤度を算出する。より具体的には、図5(d)に示すテーブルを参照して破線らしさの尤度を算出する。ここでは、破線らしさが設定値よりも小さい場合には尤度を0.5とし、破線らしさが設定値よりも大きい場合には尤度を0.1とする。なお、この0.5という値は、破線らしさが小さい場合に分岐判定を抑制する機能を発揮するために設定される値であり、0.1という値は、他の複数のIPが強い確信で分岐と判定した場合にのみ、分岐抑制を覆すために設定される値である。その後、S170に移行する。
【0023】
S170では、道路形状情報(カーブ)の尤度を算出する。具体的には、分岐路判定部25が、制御目標白線選択処理部24によって選択された白線について急カーブであることの尤度を算出する。より具体的には、図5(e)に示すテーブルを参照して急カーブらしさの尤度を算出する。ここでは、急カーブらしさが設定値よりも小さい場合には尤度を0.5とし、急カーブらしさが設定値よりも大きい場合には尤度を0.1とする。なお、この0.5という値は、急カーブらしさが小さい場合に分岐判定を抑制する機能を発揮するために設定される値であり、0.1という値は、他の複数のIPが強い確信で分岐と判定した場合にのみ、分岐抑制を覆すために設定される値である。その後、S180に移行する。
【0024】
S180では、統合尤度を算出する。具体的には、分岐路判定部25が、S130で算出した平行度変動の尤度、S140で算出した曲率変動の尤度、S150で算出した複合線の尤度、S160で算出した実線・破線の尤度、S170で算出した急カーブの尤度を乗算して統合することで統合尤度を算出する。その後、S190に移行する。
【0025】
S190では、分岐統合尤度が所定値以上であるか否かを判断する。具体的には、分岐路判定部25が、S180で算出した統合尤度が所定値としての50%以上であるか否かを判断する。統合尤度が50%以上であると判断された場合には(S190:YES)、S210に移行する。一方、統合尤度が50%未満であると判断された場合には(S190:NO)、S200に移行する。
【0026】
S200では、通常検出を行う。具体的には、S190で統合尤度が50%未満であると判断されたことを受けて、分岐路判定部25が、この白線候補を白線として検出する通常検出を行う。その後、S220に移行する。
【0027】
S210では、白線候補を除外する。具体的には、S190で統合尤度が50%以上であると判断されたことを受けて、分岐路判定部25が、この白線候補を除外する。つまり、分岐路であると判定する。その後、S220に移行する。
【0028】
S220では、検出結果を出力する。具体的には、分岐路判定部25が、S200からS220に移行した場合には、当該白線候補を白線として検出した旨を検出結果として出力し、一方、S210からS220に移行した場合には、当該白線候補を除外して分岐路と判定した旨を検出結果として出力する。なお、この処理により、分岐路判定部25は判定結果出力手段に該当する。その後、本処理を終了する。
【0029】
[3.実施形態の効果]
本実施形態の分岐路認識装置1によれば、分岐路判定部25が、制御目標白線選択処理部24によって選択された白線に関する特徴であり、(1)車線が複合線ではないこと、(2)車線が実線であること、(3)車線が急カーブではないこと、(4)左右の車線の平行度の変動が設定値よりも大きいこと、(5)車線の曲率の変動量が設定値よりも大きいこと、を用い、上記(1)〜(5)の特徴のうちの何れか一つの特徴による尤度または二つ以上の特徴による尤度を統合した尤度(統合尤度)を算出し、その算出した尤度に基づき、分岐路の有無を判定するので、分岐路を精度良く認識することができる。
【符号の説明】
【0030】
1…分岐路認識装置、10…車載カメラ、20…画像処理装置、21…白線候補算出部、22…白線特徴算出部、23…白線特徴統合部、24…制御目標白線選択処理部、25…分岐路判定部。
図1
図2
図3
図4
図5