特許第5977300号(P5977300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5977300冷却制御装置、電子機器、冷却制御方法、および、コンピュータ・プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977300
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】冷却制御装置、電子機器、冷却制御方法、および、コンピュータ・プログラム
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20160817BHJP
   H01L 23/467 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   H05K7/20 J
   H01L23/46 C
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-195184(P2014-195184)
(22)【出願日】2014年9月25日
(65)【公開番号】特開2016-66725(P2016-66725A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2014年9月25日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】江藤 ジュン
【審査官】 遠藤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/010617(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H01L 23/467
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作時に発熱する発熱部の消費電力に関する情報を取得する発熱部電力取得部と、
前記発熱部から伝達される熱を放熱するヒートシンクを流通する風を発生させるファンの動作により前記ヒートシンクに吸入される空気の温度(ヒートシンク吸気温度)に関する情報を取得するヒートシンク吸気温度取得部と、
前記消費電力に関する情報と、前記ヒートシンク吸気温度に関する情報と、前記発熱部に許容される温度の上限値として定められた温度上限値とに基づいて、前記ファンの動作を制御するファン制御部と、
を備えた冷却制御装置。
【請求項2】
前記ファン制御部は、前記消費電力に関する情報と、前記ヒートシンク吸気温度に関する情報と、前記温度上限値とに基づいて、前記ヒートシンクに要求される性能(必要放熱性能)を表す情報を算出し、算出した情報に基づいて、前記ファンの動作を制御することを特徴とする請求項1に記載の冷却制御装置。
【請求項3】
前記発熱部電力取得部は、前記発熱部についてその時点までに計測された消費電力に基づいて、前記消費電力に関する情報を算出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷却制御装置。
【請求項4】
動作時に発熱する発熱部と、
前記発熱部から伝達される熱を放熱するヒートシンクと、
前記ヒートシンクを流通する風を発生させるファンと、
前記発熱部の消費電力を計測する電力計測部と、
前記ファンの動作により前記ヒートシンクに吸入される空気の温度(ヒートシンク吸気温度)を計測する温度計測部と、
前記電力計測部により計測された消費電力および前記温度計測部により計測されたヒートシンク吸気温度に基づいて動作する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の冷却制御装置と、
を備えた電子機器。
【請求項5】
動作時に発熱する発熱部の消費電力に関する情報を取得し、
前記発熱部から伝達される熱を放熱するヒートシンクを流通する風を発生させるファンの動作により前記ヒートシンクに吸入される空気の温度(ヒートシンク吸気温度)に関する情報を取得し、
前記消費電力に関する情報と、前記ヒートシンク吸気温度に関する情報と、前記発熱部に許容される温度の上限値として定められた温度上限値とに基づいて、前記ファンの動作を制御する冷却制御方法。
【請求項6】
動作時に発熱する発熱部の消費電力に関する情報を取得する発熱部電力取得ステップと、
前記発熱部から伝達される熱を放熱するヒートシンクを流通する風を発生させるファンの動作により前記ヒートシンクに吸入される空気の温度(ヒートシンク吸気温度)に関する情報を取得するヒートシンク吸気温度取得ステップと、
前記消費電力に関する情報と、前記ヒートシンク吸気温度に関する情報と、前記発熱部に許容される温度の上限値として定められた温度上限値とに基づいて、前記ファンの動作を制御するファン制御ステップと、
をコンピュータ装置に実行させるコンピュータ・プログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器における発熱部品を冷却する冷却機構を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器には、通電により発熱する発熱部品を冷却する冷却機構が設けられる。一般的な冷却機構として、発熱部品から伝達される熱を放熱するヒートシンクを設けるものがある。また、そのような冷却機構として、ヒートシンクの放熱能力を高めるために、ヒートシンクを流通する風を発生させるファンを有するものがある。
【0003】
ところで、上述した発熱部品は、電子機器の利用状況により、その消費電力は大きな幅で変動する。そこで、発熱部品の温度に基づいてファンの動作を制御する冷却制御方法がよく知られている。一般的には、発熱部品の温度が高くなるとファンの回転数を上げ、温度が低くなるとファンの回転数を下げる制御が行われる。
【0004】
また、ファンの動作を制御する関連技術が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された関連技術は、コンピュータシステムの稼働部を冷却する複数の冷却ファンを有する。また、この関連技術は、各冷却ファンが稼働部に与える供給冷却量をあらかじめ記憶しておく。そして、この関連技術は、稼働部の温度に関する情報に基づいて、稼働部に必要とされる必要冷却量を算出する。そして、この関連技術は、稼働部の必要冷却量と、各冷却ファンの供給冷却量とに基づいて、各冷却ファンの回転数を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−235696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した一般的なファン制御方法および特許文献1に記載された関連技術には、以下の課題がある。
【0007】
発熱部品の温度に基づきファンの動作を制御する一般的な方法では、発熱部品の温度上昇に応じてファンの回転数を上げると発熱部品の温度が下がるため、ファンの回転数を下げることになる。ところが、発熱部品に対する負荷が高い利用状況下では、ファンの回転数が下がると発熱部品の温度が再度上がり、ファンの回転数を再度上げる制御が必要となる。このように、発熱部品の温度が上下すると、ファンの回転数を上げる制御が多くなり、ファンの電力使用の面で非効率的である。特に、発熱部品の温度に上限値を設けて温度に基づく冷却制御を行う場合、発熱部品の温度が上限値に近いマージン領域では、そのような非効率な電力使用が顕著となる。
【0008】
また、特許文献1に記載された関連技術は、ヒートシンクを備えておらず、ヒートシンクを考慮せずにファンの回転数を決定している。そのため、この関連技術を、ヒートシンクを用いて発熱部品を冷却する冷却機構に対して適用しても、ファンの消費電力を十分に抑制できない。
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、ヒートシンクを用いて発熱部品を冷却する冷却機構におけるファンの消費電力を、より十分に抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の冷却制御装置は、動作時に発熱する発熱部の消費電力に関する情報を取得する発熱部電力取得部と、前記発熱部から伝達される熱を放熱するヒートシンクを流通する風を発生させるファンの動作により前記ヒートシンクに吸入される空気の温度(ヒートシンク吸気温度)に関する情報を取得するヒートシンク吸気温度取得部と、前記消費電力に関する情報と、前記ヒートシンク吸気温度に関する情報とに基づいて、前記ファンの動作を制御するファン制御部と、を備える。
【0011】
また、本発明の電子機器は、動作時に発熱する発熱部と、前記発熱部から伝達される熱を放熱するヒートシンクと、前記ヒートシンクを流通する風を発生させるファンと、前記発熱部の消費電力を計測する電力計測部と、前記ファンの動作により前記ヒートシンクに吸入される空気の温度(ヒートシンク吸気温度)を計測する温度計測部と、前記電力計測部により計測された消費電力および前記温度計測部により計測されたヒートシンク吸気温度に基づいて動作する上述の冷却制御装置とを備える。
【0012】
また、本発明の冷却制御方法は、動作時に発熱する発熱部の消費電力に関する情報を取得し、前記発熱部から伝達される熱を放熱するヒートシンクを流通する風を発生させるファンの動作により前記ヒートシンクに吸入される空気の温度(ヒートシンク吸気温度)に関する情報を取得し、前記消費電力に関する情報と、前記ヒートシンク吸気温度に関する情報とに基づいて、前記ファンの動作を制御する。
【0013】
また、本発明のコンピュータ・プログラムは、動作時に発熱する発熱部の消費電力に関する情報を取得する発熱部電力取得ステップと、前記発熱部から伝達される熱を放熱するヒートシンクを流通する風を発生させるファンの動作により前記ヒートシンクに吸入される空気の温度(ヒートシンク吸気温度)に関する情報を取得するヒートシンク吸気温度取得ステップと、前記消費電力に関する情報と、前記ヒートシンク吸気温度に関する情報とに基づいて、前記ファンの動作を制御するファン制御ステップと、をコンピュータ装置に実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、ヒートシンクを用いて発熱部品を冷却する冷却機構におけるファンの消費電力を、より十分に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施の形態としての電子機器の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1の実施の形態としての電子機器のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】本発明の第1の実施の形態における冷却制御装置の機能ブロック図である。
図4】本発明の第1の実施の形態における冷却制御装置の動作を示すフローチャートである。
図5】本発明の第2の実施の形態としての電子機器の構成を示す図である。
図6】本発明の第2の実施の形態における冷却制御装置の機能ブロック図である。
図7】本発明の第2の実施の形態における冷却制御装置の動作を示すフローチャートである。
図8】本発明の第2の実施の形態の効果を説明する模式図である。
図9】本発明の第2の実施の形態の効果を説明する他の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態としての電子機器1の構成を図1に示す。図1において、電子機器1は、冷却制御装置10と、発熱部30と、ヒートシンク40と、ファン50と、電力計測部60と、温度計測部70とを含む。
【0018】
次に、電子機器1のハードウェア構成の一例を図2に示す。図2において、冷却制御装置10は、集積回路100によって構成可能である。この場合、集積回路100は、プロセッサ101と、メモリ102と、ファン50に接続する接続インタフェース103と、電力計測部60に接続する接続インタフェース104と、温度計測部70に接続する接続インタフェース105とを有する。
【0019】
発熱部30は、電子機器1の部品の1つであり、電子機器1の動作時に通電により発熱する。
【0020】
ヒートシンク40は、発熱部30から伝えられる熱を放熱する。例えば、ヒートシンク40は、伝熱部材401と、複数の放熱部材402とによって構成可能である。この場合、伝熱部材401は、発熱部30の発熱面に配設され、発熱部30からの熱を放熱部材402に伝える。また、複数の放熱部材402は、伝熱部材401から伝えられる熱を、周囲の空気との熱交換により放熱する。なお、伝熱部材401および放熱部材402の形状や配列は、図2に示す形態に限定されない。
【0021】
ファン50は、ファン部501と、駆動制御部502とによって構成可能である。ファン部501は、駆動制御部502によって駆動されると、風を発生する。例えば、ファン部501は、モータと、モータの回転により回転する回転軸と、回転軸に放射状に結合された複数の羽根とからなり、回転により風を発生するよう構成されていてもよい。また、その場合、駆動制御部502は、外部からの制御情報に基づいて、ファン部501の回転数を調整するよう構成されていてもよい。また、ファン50は、駆動されることにより発生する風がヒートシンク40の放熱部材402間を流通する位置に配置される。
【0022】
電力計測部60は、電力センサによって構成可能である。電力計測部60は、発熱部30で消費される電力を計測するよう配設される。電力計測部60は、計測した電力を示す情報を、冷却制御装置10に対して出力する。
【0023】
温度計測部70は、温度センサによって構成可能である。温度計測部70は、ヒートシンク40に吸入される空気の温度(ヒートシンク吸気温度)を計測可能な位置に配設される。例えば、ファン50からヒートシンク40に対して空気が送出される場合、温度計測部70は、ファン50およびヒートシンク40の間に配設されてもよい。温度計測部70は、計測したヒートシンク吸気温度を示す情報を、冷却制御装置10に対して出力する。
【0024】
次に、冷却制御装置10の機能ブロックについて、図3を参照して説明する。図3に示すように、冷却制御装置10は、発熱部電力取得部11と、ヒートシンク吸気温度取得部12と、ファン制御部13とを含む。例えば、発熱部電力取得部11は、接続インタフェース104と、メモリ102に記憶されたコンピュータ・プログラムを実行するプロセッサ101とによって構成される。また、ヒートシンク吸気温度取得部12は、接続インタフェース105と、メモリ102に記憶されたコンピュータ・プログラムを実行するプロセッサ101とによって構成される。また、ファン制御部13は、接続インタフェース103と、メモリ102に記憶されたコンピュータ・プログラムを実行するプロセッサ101とによって構成される。なお、電子機器1およびその各部のハードウェア構成は、上述の構成に限定されない。
【0025】
発熱部電力取得部11は、電力計測部60から電力を表す情報を受信し、受信した情報に基づいて、発熱部30の消費電力に関する情報を取得する。例えば、発熱部電力取得部11は、消費電力に関する情報として、電力計測部60から受信される情報の示す値をそのまま適用してもよい。なお、発熱部電力取得部11は、電力計測部60からの情報を、リアルタイムで受信するようにしてもよい。
【0026】
ヒートシンク吸気温度取得部12は、温度計測部70から、温度を表す情報を受信し、受信した情報に基づいて、ヒートシンク吸気温度に関する情報を取得する。例えば、ヒートシンク吸気温度取得部12は、ヒートシンク吸気温度に関する情報として、ヒートシンク吸気温度取得部12から受信される情報の示す値をそのまま適用してもよい。なお、ヒートシンク吸気温度取得部12は、温度計測部70からの情報を、リアルタイムで受信するようにしてもよい。
【0027】
ファン制御部13は、消費電力に関する情報と、ヒートシンク吸気温度に関する情報とに基づいて、ファン50の動作を制御する。例えば、上述のように、ファン50が回転により風を発生する構成である場合、ファン制御部13は、これらの情報に基づいてファン50の回転数を決定し、決定に基づく制御情報を、ファン50の駆動制御部502に対して送信してもよい。なお、ファン制御部13が決定する情報は回転数に限らず、風量を表す情報など、ファン50により発生する風の強さや量などを調節可能なその他の情報であってもよい。
【0028】
以上のように構成された電子機器1における冷却制御動作を、図4を参照して説明する。
【0029】
図4では、まず、発熱部電力取得部11は、電力計測部60から電力を表す情報を受信し、受信した情報に基づいて、発熱部30の消費電力に関する情報を取得する(ステップS1)。
【0030】
次に、ヒートシンク吸気温度取得部12は、温度計測部70から温度を表す情報を受信し、受信した情報に基づいて、ヒートシンク吸気温度に関する情報を取得する(ステップS2)。
【0031】
次に、ファン制御部13は、ステップS1で得られた消費電力に関する情報と、ステップS2で得られたヒートシンク吸気温度に関する情報とに基づいて、ファン50の動作を制御する(ステップS3)。
【0032】
ステップS1〜S3の動作を、電子機器1は繰り返す。以上で、電子機器1の動作の説明を終了する。
【0033】
次に、本発明の第1の実施の形態の効果について述べる。
【0034】
本発明の第1の実施の形態としての電子機器および冷却制御装置は、ヒートシンクを用いて発熱部品を冷却する冷却機構におけるファンの消費電力を、より十分に抑制することができる。
【0035】
その理由は、発熱部電力取得部が、電子機器の動作時に発熱する発熱部の消費電力に関する情報を取得し、ヒートシンク吸気温度取得部が、ファンの動作によりヒートシンクに吸入されるヒートシンク吸気温度に関する情報を取得するからである。そして、ファン制御部が、消費電力に関する情報と、ヒートシンク吸気温度に関する情報とに基づいて、ファンの動作を制御するからである。
【0036】
これにより、本実施の形態は、発熱部の消費電力に基づいて、ヒートシンクへの吸気温度を考慮して、ファンの動作を制御することになる。その結果、本実施の形態は、ヒートシンクおよびファンを用いた冷却機構において、単に発熱部の温度に基づく場合と比較して、効率よくファンの消費電力を抑制可能となる。
【0037】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態では、本発明の電子機器に情報処理装置を適用し、本発明における発熱部にCPU(Central Processing Unit)を適用した例について説明する。なお、本実施の形態の説明において参照する各図面において、本発明の第1の実施の形態と同一の構成および同様に動作するステップには同一の符号を付して本実施の形態における詳細な説明を省略する。
【0038】
まず、本発明の第2の実施の形態としての情報処理装置2の構成を図5に示す。図5において、情報処理装置2は、冷却制御装置20と、CPU35と、ヒートシンク40と、ファン50と、電力計測部60と、温度計測部70とを含む。また、情報処理装置2を構成する各部は、図2を参照して説明した本発明の第1の実施の形態と同様のハードウェア要素によって構成可能である。
【0039】
冷却制御装置20は、本発明の第1の実施の形態における冷却制御装置10と同様に、集積回路100によって構成可能である。
【0040】
CPU35は、情報処理装置2の動作時に通電により発熱する。また、CPU35は、情報処理装置2の筐体内部に設けられた基板90上に配設される。
【0041】
ヒートシンク40は、本発明の第1の実施の形態と同様に伝熱部材401と、複数の放熱部材402とによって構成可能である。本実施の形態では、伝熱部材401は、CPU35の発熱面に配設される。
【0042】
ファン50は、本発明の第1の実施の形態と同様に、ファン部501と、駆動制御部502とによって構成可能である。本実施の形態では、ファン部501は、回転により風を発生するものとする。また、駆動制御部502は、外部からの制御信号に基づいて、ファン部501の回転数を調整可能であるものとする。また、ファン50は、ファン部501の回転により発生する風がヒートシンク40の放熱部材402間を流通する位置に配設される。なお、図5には、ファン50により発生する風がヒートシンク40に向かって送出される例を示しているが、ファン50により発生する風向きを限定するものではない。例えば、ファン50は、ヒートシンク40から空気を吸引する向きの風を発生することにより、ヒートシンク40の放熱部材402間を風が流通するようにしてもよい。
【0043】
電力計測部60は、本発明の第1の実施の形態と同様に電力センサによって構成可能である。本実施の形態では、電力計測部60は、CPU35内に設けられているものとする。電力計測部60は、CPU35で消費される電力を計測し、冷却制御装置20に対して出力する。
【0044】
温度計測部70は、本発明の第1の実施の形態と同様に温度センサによって構成可能である。例えば、ファン50からヒートシンク40に向かって空気が送出される場合、温度計測部70は、ヒートシンク40およびファン50の間に配置される。そして、温度計測部70は、ヒートシンク40に吸入される空気の温度を計測し、冷却制御装置20に対して出力する。
【0045】
次に、冷却制御装置20の機能ブロックについて、図6を参照して説明する。図6に示すように、冷却制御装置20は、本発明の第1の実施の形態としての冷却制御装置10に対して、発熱部電力取得部11に替えて発熱部電力取得部21と、ファン制御部13に替えてファン制御部23とを備える点が異なる。
【0046】
発熱部電力取得部21は、電力計測部60から電力を表す情報を受信する。そして、発熱部電力取得部21は、消費電力に関する情報として、その時点までに電力計測部60から受信された値に基づく値を算出する。例えば、発熱部電力取得部21は、その時点までに電力計測部60から受信された値を平均化する処理を行ってもよい。そして、発熱部電力取得部21は、平均化処理により算出される値を、消費電力に関する情報としてもよい。例えば、発熱部電力取得部21は、そのような平均化処理として、例えば、次式(1)により指数移動平均値を求めてもよい。
【0047】
ここで、定数αは、消費電力値を平滑化する平滑化係数であり、0<α≦1である。αは、ファン50の回転数の急激な上昇を抑制するために事前に定められる。また、現在の電力値とは、電力計測部60から得られた直近の電力値を示す。
【0048】
ファン制御部23は、消費電力を平均化処理した情報と、ヒートシンク吸気温度に関する情報と、CPU35に許容される温度上限値とに基づいて、必要放熱性能を表す情報を算出する。必要放熱性能とは、ヒートシンク40に要求される性能をいうものとする。そのような必要放熱性能は、ヒートシンク40に必要な熱抵抗を表す情報であってもよい。例えば、ファン制御部23は、次式(2)を用いて、必要放熱性能を算出してもよい。
【0049】
ここで、温度上限値は、CPU35に許容される温度の上限値である。温度上限値は、CPU35の種類によって事前に定められている。
【0050】
また、ファン制御部23は、必要放熱性能に基づいて、ファン50の動作を制御する。例えば、上述のように、ファン50が回転により風を発生する構成である場合、ファン制御部23は、必要放熱性能に基づいて必要となるファン50の回転数(必要ファン回転数)を決定する。そして、ファン制御部23は、必要ファン回転数を表す制御情報を、ファン50の駆動制御部502に対して送信する。例えば、ファン制御部23は、必要ファン回転数を、次式(3)を用いて求めてもよい。
【0051】
ここで、定数x、y、zは、ヒートシンク40の熱抵抗特性を決める値である。これらの定数は、ヒートシンク40の種類によって事前に値が定められる。ファン制御部23は、x、y、zを定めてこの式(3)を用いることにより、必要放熱性能から必要ファン回転数を求めることができる。
【0052】
以上のように構成された情報処理装置2における冷却制御動作を、図7を参照して説明する。
【0053】
図7では、まず、発熱部電力取得部21は、電力計測部60から、CPU35の消費電力を表す情報を受信する(ステップS11)。
【0054】
次に、発熱部電力取得部21は、この時点までに発熱部電力取得部21から受信した消費電力値に基づいて、消費電力に関する情報を算出する(ステップS12)。例えば、前述のように、発熱部電力取得部21は、式(1)を用いて指数移動平均値を求めることにより、平均化処理を行ってもよい。
【0055】
次に、ヒートシンク吸気温度取得部12は、温度計測部70から、ヒートシンク吸気温度を表す情報を取得する(ステップS13)。
【0056】
次に、ファン制御部23は、ステップS12で算出したCPU35の消費電力に関する情報と、ステップS13で得られたヒートシンク吸気温度に関する情報と、CPU35の温度上限値とに基づいて、ヒートシンク40の必要放熱性能を算出する(ステップS14)。例えば、前述のように、ファン制御部23は、式(2)を用いて必要放熱性能を算出してもよい。
【0057】
次に、ファン制御部23は、ステップS14で算出した必要放熱性能に基づいて、必要ファン回転数を決定する(ステップS15)。例えば、前述のように、ファン制御部23は、式(3)を用いて必要ファン回転数を算出してもよい。
【0058】
次に、ファン制御部23は、ステップS15で決定した必要ファン回転数に基づく制御情報を、ファン50に対して送出する(ステップS16)。
【0059】
ステップS11〜S16の動作を、情報処理装置2は繰り返す。以上で、情報処理装置2の動作の説明を終了する。
【0060】
次に、本発明の第2の実施の形態の効果について述べる。
【0061】
本発明の第2の実施の形態としての情報処理装置および冷却制御装置は、ヒートシンクを用いてCPUを冷却する冷却機構におけるファンの消費電力を、より十分に抑制することができる。
【0062】
その理由は、本発明の第1の実施の形態と同様の構成に加えて、発熱部電力取得部が、その時点までに得られたCPUの消費電力に基づいて、消費電力を表す情報を算出するからである。例えば、発熱部電力取得部は、その時点までに得られたCPUの消費電力を、事前に定めておいた定数を含む計算式で平均化した値を算出するからである。そして、ファン制御部が、CPUのその時点までの消費電力に基づく値と、ヒートシンク吸気温度と、CPUに定められた温度上限値とに基づいて、ヒートシンクに必要とされる必要放熱性能を算出するからである。そして、ファン制御部が、算出した必要放熱性能を、事前に定めておいた定数を含む計算式に適用することにより、必要ファン回転数を決定し、ファンの回転数を制御するからである。
【0063】
このような本実施の形態の効果を図8および図9を用いて説明する。図8において、横軸は、時間経過を示す。また、縦軸は、ファンの回転数またはCPU温度を示す。また、実線の矢印は、本実施の形態におけるCPU温度の時間変化を模式的に示す。また、破線の矢印は、CPU温度に基づきファン回転数を制御する一般的な手法を用いた場合のCPU温度の時間変化を模式的に示す。また、実線の二重線の矢印は、本実施の形態におけるファン回転数の時間変化を模式的に示す。また、破線の二重線の矢印は、一般的な制御手法を用いた場合のファン回転数の時間変化を模式的に示す。図8に示すように、一般的な制御手法では、CPUの温度が高くなるとファンの回転数が上がり、CPU温度が下がる。そして、CPU温度が下がるとファンの回転数が下がり、CPU温度が再度上がる。このように、一般的な制御手法では、CPUの温度が上下し、ファンの回転数が上下する。これに対して、本実施の形態は、上限値に近いCPU温度を保つようファン回転数を安定させることができる。
【0064】
また、図9において、横軸は、CPU消費電力を示す。また、縦軸は、ファン回転数を示す。また、実線の矢印は、本実施の形態のCPU消費電力に対するファン回転数変化を模式的に示す。また、一点鎖線の矢印は、CPU温度に基づきファンの回転数を直線方式で制御する一般的な手法を用いた場合の、CPU消費電力に対するファン回転数変化を模式的に示す。なお、直線方式とは、CPU温度に対するファン回転数を直線的に変動させる制御をいう。また、破線の矢印は、CPU温度に基づきファン回転数を階段方式で制御する一般的な手法を用いた場合の、CPU消費電力に対するファン回転数変化を模式的に示す。なお、階段方式とは、CPU温度に対するファン回転数を階段状に変動させる制御をいう。図9に示すように、本実施の形態は、領域Aについて、CPU温度に基づく直線方式の一般的な制御手法よりもファンを低回転にすることができる。また、本実施の形態は、領域Bについて、CPU温度に基づく階段方式の一般的な制御手法よりもファンを低回転にすることができる。そして、ファンの消費電力はファン回転数に比例することから、本実施の形態は、一般的な制御手法に比べてファンの消費電力を低減させることができる。
【0065】
なお、本実施の形態において、本発明の発熱部にCPUを適用し、本発明の電子機器として情報処理装置を適用した例を中心に説明した。この他、本実施の形態は、本発明の発熱部として、CPUに限らず、情報処理装置における他の集積回路を適用しても同様の効果を奏する。また、本実施の形態は、情報処理装置に限らず、通電により発熱する部品をヒートシンクにより冷却する他の電子機器にも適用可能である。
【0066】
また、本実施の形態において、発熱部電力取得部が、その時点までに得られたCPUの消費電力に基づいて、その指数移動平均値を算出する例を中心に説明した。これに限らず、発熱部電力取得部は、その時点までに得られたCPUの消費電力に基づくその他の値を算出してもよい。
【0067】
また、上述した本発明の各実施の形態において、ファンが、ヒートシンクに対して風を送出する例を中心に説明したが、ファンの風向きを限定するものではない。また、温度計測部が、ファンおよびヒートシンクの間に配設される例を中心に説明したが、これに限らず、ヒートシンクに吸入される空気の温度を計測可能な位置に配設されればよい。
【0068】
また、上述した本発明の各実施の形態において、ファン制御部が、ファンの回転数を決定して制御する例を中心に説明した。これに限らず、ファン制御部は、ファンの動作を制御可能な情報であれば、ファン回転数以外の情報を決定してその動作を制御してもよい。
【0069】
また、上述した本発明の各実施の形態において、冷却制御装置の各機能ブロックが、メモリに記憶されたコンピュータ・プログラムを実行するプロセッサによって実現される例を中心に説明した。その他、各機能ブロックの一部、全部、または、それらの組み合わせが専用のハードウェアにより実現されていてもよい。
【0070】
また、上述した本発明の各実施の形態において、情報受信装置の機能ブロックは、複数の装置に分散されて実現されてもよい。
【0071】
また、上述した本発明の各実施の形態において、各フローチャートを参照して説明した冷却制御装置の動作を、本発明のコンピュータ・プログラムとしてコンピュータの記憶装置(記憶媒体)に格納しておいてもよい。そして、係るコンピュータ・プログラムを当該CPUが読み出して実行するようにしてもよい。そして、このような場合において、本発明は、係るコンピュータ・プログラムのコードあるいは記憶媒体によって構成される。
【0072】
また、上述した各実施の形態は、適宜組み合わせて実施されることが可能である。
【0073】
また、本発明は、上述した各実施の形態に限定されず、様々な態様で実施されることが可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 電子機器
2 情報処理装置
10、20 冷却制御装置
11、21 発熱部電力取得部
12 ヒートシンク吸気温度取得部
13、23 ファン制御部
30 発熱部
35 CPU
40 ヒートシンク
50 ファン
60 電力計測部
70 温度計測部
100 集積回路
101 プロセッサ
102 メモリ
103 接続インタフェース
104 接続インタフェース
105 接続インタフェース
401 伝熱部材
402 放熱部材
501 ファン部
502 駆動制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9