特許第5977310号(P5977310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5977310デューティーサイクルコントローラーを有する信号受信器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977310
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】デューティーサイクルコントローラーを有する信号受信器
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/26 20060101AFI20160817BHJP
   H03B 5/30 20060101ALI20160817BHJP
   H03B 5/32 20060101ALI20160817BHJP
   H03B 5/02 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   H04B1/26 J
   H03B5/30 Z
   H03B5/32 Z
   H03B5/02 D
   H04B1/26 C
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-215993(P2014-215993)
(22)【出願日】2014年10月23日
(65)【公開番号】特開2015-89122(P2015-89122A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2014年10月23日
(31)【優先権主張番号】13191280.0
(32)【優先日】2013年11月1日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】アルノー・カサグランデ
(72)【発明者】
【氏名】カルロス・ヴェラスケス
(72)【発明者】
【氏名】エミール・ツェルヴェガー
【審査官】 佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−049899(JP,A)
【文献】 特開平09−081261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/26
H03B 5/02
H03B 5/30
H03B 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁的信号を受信するアンテナ(12)と、
前記アンテナ(12)が受信した信号を増幅する少なくとも1つの低雑音増幅器(14)と、
所定のデューティーサイクルで発振信号(50)を生成するために、基準共振器(22)を有する少なくとも1つのMEMS又は水晶発振器(20)と、
中間信号(40)を生成するために、前記低雑音増幅器(14)によって増幅された信号を前記発振信号(50)と混合するためのミキサー(16)と、
前記中間信号(40)をフィルタリングするバンドパスフィルター(18)と
フィルタリングされた前記中間信号(40)のスペクトル解析を行い、フィルタリングされた前記中間信号(40)の前記スペクトル解析に応じて前記発振信号(50)の前記デューティーサイクルを変更するために、前記MEMS又は水晶発振器(20)につながれ前記バンドパスフィルター(18)の出力(19)に連結するデューティーサイクルコントローラー(30)と
を有する信号受信器(10)であって、
前記デューティーサイクルは、前記発振信号のオン時間及びオフ時間の比によって定められ、これによって、フィルタリングされた前記中間信号(40)における前記基準共振器(22)を有する前記MEMS又は水晶発振器(20)からの少なくとも1つの高調波成分(42)の振幅が最小にされ
前記デューティーサイクルコントローラー(30)は、フィルタリングされた前記中間信号(40)の選択された高調波成分(42)の大きさを測定する測定ユニット(32)と、前記測定ユニット(32)に連結し、選択された前記高調波成分(42)の測定された大きさに応答してデューティーサイクル変更信号を生成するように動作可能な制御ユニット(34)と、前記高調波成分(42)の測定された大きさを少なくとも一時的に記憶するメモリー(36)とを有するとともに、
前記制御ユニット(34)は、前記デューティーサイクル変更信号を生成するために、実際に測定された高調波成分(42)の大きさを以前に記憶した高調波成分(42)の大きさと比較するように動作可能であ
ことを特徴とする信号受信器(10)
【請求項2】
前記デューティーサイクルコントローラー(30)に連結又は内蔵されるデューティーサイクル変更器(26)をさらに有し、
前記デューティーサイクル変更器(26)は、前記制御ユニット(34)から得られた前記デューティーサイクル変更信号に応答して前記発振信号(50)の前記デューティーサイクルを増加させるか又は減少させるように動作可能である
ことを特徴とする請求項に記載の信号受信器(10)。
【請求項3】
前記デューティーサイクルコントローラー(30)は、前記アンテナ(12)が電磁的信号を受信した時に、少なくとも一時的に非活性化されることができる
ことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の信号受信器(10)。
【請求項4】
請求項1〜のいずれかに記載の信号受信器(10)のフィルタリングされた中間信号(40)における前記基準共振器(22)を有する前記MEMS又は水晶発振器(20)からの少なくとも1つの高調波成分(42)を抑制する方法であって、
アンテナ(12)によって電磁的信号を受信するステップと、
少なくとも1つの低雑音増幅器(14)によって受信した前記信号を増幅するステップと、
基準共振器(22)を有する少なくとも1つのMEMS又は水晶発振器(20)によって発振信号(50)を生成するステップと、
中間信号(40)を生成するために、前記低雑音増幅器(14)によって増幅された信号を前記発振信号(50)と混合するステップと、
バンドパスフィルター(18)によって、前記中間信号(40)をフィルタリングするステップと、
フィルタリングされた前記中間信号(40)のスペクトル解析を行うステップと、
前記MEMS又は水晶発振器(20)に連結し前記バンドパスフィルター(18)の出力(19)に連結するデューティーサイクルコントローラー(30)によって、フィルタリングされた前記中間信号(40)のスペクトル解析に応答して、前記発振信号(50)の前記デューティーサイクルを変更するステップとを有し、
前記デューティーサイクルは、前記発振信号のオン時間及びオフ時間の比によって定められ、
これによって、フィルタリングされた前記中間信号(40)における前記基準共振器(22)を有する前記MEMS又は水晶発振器(20)からの少なくとも1つの高調波成分(42)の振幅が最小にされる
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
前記基準共振器(22)を有する前記MEMS又は水晶発振器(20)からの選択された高調波成分(42)の振幅が、フィルタリングされた前記中間信号(40)における最小に達するまで、前記発振信号(50)のデューティーサイクルは、所定の別々のステップにおいて減少又は増加される
ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項6】
フィルタリングされた前記中間信号(40)における前記高調波成分(42)の振幅が測定され、メモリー(36)に少なくとも一時的に記憶される
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記発振信号(50)のデューティーサイクルは、フィルタリングされた前記中間信号(40)における前記高調波成分(42)の、実際に測定された振幅(42)と、以前に記憶した振幅(42)との間の比較に依存して減少又は増加される
ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記アンテナ(12)が電磁的信号を受信した時々において、前記発振信号(50)のデューティーサイクルは一定に保たれる
ことを特徴とする請求項4〜7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号受信器の分野に関し、より詳細には、無線周波数信号用受信器に関する。本発明は、さらに、信号受信器の中間信号における基準共振器を有する発振器からの少なくとも1つの高調波成分を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁的信号の伝送、特に無線周波数信号の伝送においては、適切な受信器が必要である。
【0003】
例として、図1には、従来の受信器の設計図を示した。信号受信器1は、電磁的信号を受信するアンテナ12を有する。アンテナ12は、低雑音増幅器(LNA)14に接続しており、これは、アンテナ12が受信した信号を増幅するように構成している。LNAは、さらに、増幅された受信信号を、局所的発振器又は水晶発振器20によって提供される発振信号50と混合するためにミキサー16に接続している。ミキサー16の出力はバンドパスフィルター18に接続され、ミキサー16のダウン変換された中間信号40がフィルタリングされる。図1に、中間信号40のスペクトルを、周波数(f)に対する振幅又はパワー(p)として示す。
【0004】
通常、局所的発振器又は水晶発振器20は、水晶共振器のような基準共振器22を有する信号生成器24を利用する。これによって、十分に定まった、幾分安定した基準周波数信号が提供される。例として、典型的な水晶振動子の用途では、基準共振器22を備えた信号生成器24は、26MHzの基準周波数で動作する。一般的には、局所的発振器20は、さらに、高周波発振信号を供給するために信号生成器24とミキサー16の間に接続されるPLLユニット(図1に図示しない)を有する。無線周波数伝送の場合には、信号受信器1は、例えば、Bluetooth規格の範囲で動作する。この場合、したがって、26MHzで動作する水晶ベースの基準共振器22を有する信号生成器24を利用することによって2.4GHz帯で動作するこの場合、基準共振器22に基づいた発振器20の周波数の第93、第94及び第95次高調波が、バンドパスフィルター18の帯域41と一致することがある。
【0005】
基準共振器に基づいた発振器のこれらの高調波成分42を弱めて減衰させることができたとしても、アンテナが受信した電磁的信号、より詳細には、ミキサー16によるダウン変換の後に受信した中間信号40が、未だ厳しく摂動することがある。この問題は、信号受信器が単一の集積回路に実装される場合に、さらに支配的になる。
【0006】
高感度復調器を備えたFSK無線周波数信号用の別の従来の受信器が、米国特許出願US 2012/0164966 A1に記載されている。
【0007】
米国特許出願US 2012/0046005 A1は、発振器のデューティーサイクル制御を伴う無線通信デバイスについて記載している。このデバイスは、デューティーサイクルを規制するための整調送信パス及び受信パスを同時に動作させることを必要とする。これは、短所である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明は、特に、無線周波数信号を受信するための、改善された信号受信器を提供することを目的とし、これにおいて、基準共振器を有する発振器からの高調波の影響を有効に減衰させたり、完全になくしたりすることができる。この解決策は、スペース及びコストについて、幾分効率的であるべきである。さらに、この解決策は、信号受信器及びその様々な部品の一般的な動作及び機能に影響しない必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、信号受信器、特に、無線周波数信号の受信器に関する。この信号受信器は、電磁的信号を受信するアンテナを有する。さらに、信号受信器は、アンテナが受信した信号を増幅する少なくとも1つの低雑音増幅器(LNA)を有する。したがって、アンテナは、低雑音増幅器に直接相互接続されていてもよい。また、信号受信器は、所定のデューティーサイクルを有する発振信号を生成するために、基準共振器を有する信号生成器を有する少なくとも1つの結晶又はMEMS発振器を有する。
【0010】
通常、MEMS又は水晶発振器は、幾分正確な周波数で電気信号を作るために、振動するMEMS又は圧電材料の振動する結晶の機械的共振を使用する電子的発振回路である。基準共振器は、MEMS共振器であってもよく、あるいは電子的な用途で一般に使用されている水晶結晶を有することもできる。MEMS又は水晶発振器、すなわち、電子的発振回路は、所定のデューティーサイクルを有する発振信号を生成するように構成する。デューティーサイクルは、発振信号のオン時間及びオフ時間の比を定める。通常、発振信号は、矩形パルスのシーケンスの特徴を有するが、ミキサーによって処理することができる他の適切な波形の特徴を有していてもよい。
【0011】
また、信号受信器は、さらに、LNAから得られた増幅された受信信号を、MEMS又は水晶発振器から得られた発振信号と混合するミキサーを有する。これによって、中間的な信号、すなわち、ダウン変換信号を生成する。さらに、結晶又はMEMS発振器は、ミキサーに発振信号を供給するために、出力でPLLユニットを有することができる。また、ミキサーは様々な異なる方法で実装されていてもよい。例えば、ミキサーは、いくつか挙げると、サブサンプリングミキサー、ギルバートセル又は受動ミキサーを有していたり、これらとして実装されたりしていてもよい。ミキサーは、局所的発振器又はMEMS又は水晶発振器から発振信号を、また、LNAから増幅された信号を受信信号として受信する。その後、ミキサーは、ミキサーによって提供される中間信号をフィルタリングするように構成するバンドパスフィルターによってさらに処理される出力において中間信号を提供し生成する。
【0012】
信号受信器は、さらに、MEMS又は水晶発振器に連結しバンドパスフィルターの出力にさらに連結するデューティーサイクルコントローラーを有する。バンドパスフィルターの出力にデューティーサイクルコントローラーを接続することによって、デューティーサイクルコントローラーは、バンドパスフィルターの出力で得られるフィルタリングされた中間信号のスペクトルを解析することができる。このスペクトル解析に応答して、デューティーサイクルコントローラーは、発振信号のデューティーサイクルを変更するように動作可能である。この変更は、MEMS又は水晶発振器へのデューティーサイクルコントローラーの連結によって行うことができる。
【0013】
発振信号のデューティーサイクルの変更によって、フィルタリングされた中間信号における基準共振器を有する信号生成器を有する発振器からの高調波周波数を減衰させたり変更させたりすることができる。したがって、発振信号の波形を選択的に変更することによって、そのフーリエスペクトル及びミキサーの出力を変更することができる。この方法によって、バンドパスフィルターの関心事の帯域と一致する特定の高調波は、発振信号の周波数を変更せずに、フィルタリングされた中間信号において減衰させることができる。したがって、発振信号のデューティーサイクルの変更は、信号受信器の信号混合にも、一般的なふるまいや動作に対しても、まったく影響を与えない。発振信号のデューティーサイクルの変更は、主として発振信号の変わるフーリエスペクトルにおいて反映され、中間信号における基準共振器を有する発振器からの周波数の高調波の大きさの可変な分布をもたらす。
【0014】
別の一実施形態によると、デューティーサイクルコントローラーは、フィルタリングされた中間信号に基準共振器を有する発振器の少なくとも1つの高調波成分の振幅を最小にするように構成する。例えば、信号受信器の関心事の帯域が2.4GHz帯である場合、デューティーサイクルコントローラーは、MEMS又は水晶発振器の発振信号のデューティーサイクルが構成され変更されるように動作可能である。これは、例えば、MEMS又は水晶発振器からの26MHzの基準周波数の高調波は、フィルタリングされた中間信号において少なくとも減衰させられたり抑制される。例えば、26MHzの基準周波数の第93、第94及び第95次の高調波は、2.418GHz、2.444GHz及び2.470GHzであり、これは、フィルタリングされた中間信号において有効に減衰されたり減じられることがある。この方法によって、ミキサーの基準共振器のダウンストリームがある発振器からの高調波の影響を、補償ないし完全に抑制することができる。
【0015】
別の一実施形態によると、デューティーサイクルコントローラーは、フィルタリングされた中間信号の選択された高調波成分の大きさを測定するために測定ユニットを有する。測定ユニットは、バンドパスフィルターの出力に、通常接続され連結される。デューティーサイクルコントローラー、MEMS又は水晶発振器、及びミキサー及び/又はバンドパスフィルターによって提供される規制ループは、基準共振器を有する発振器からの基準周波数の選択された高調波を抑制するように動作可能であり、測定ユニットは、基準共振器を有する発振器からの高調波と一致するフィルタリングされた中間信号の所定の高調波成分の大きさ、よって、その振幅を測定するように構成していてもよい。
【0016】
例えば、測定ユニットは、もっぱら基準周波数の第93、第94又は第95次高調波の大きさないし振幅を排他的に検出し検出するように構成していてもよい。フィルタリングされた中間信号の他の周波数成分は、デューティーサイクルコントローラーにとってはもはや関心事ではない。上述の周波数及び特定の高調波は、例示的にのみ示したものであって、本出願の範囲を特定の無線周波数帯に制限するように解釈するべきではない。一般的には、デューティーサイクルコントローラーを有する信号受信器は、MEMS又は水晶発振器の種々様々な異なる高調波及び基準周波数で動作可能である。
【0017】
別の一実施形態によれば、デューティーサイクルコントローラーは、測定ユニットに連結し、選択された高調波成分の測定された大きさに応じてデューティーサイクル変更信号を生成するように動作可能な制御ユニットを有する。通常、制御ユニットは、選択された高調波成分の実際に測定された大きさないし振幅を、所定の値と、又は信号受信器の動作時に動的に決定されていてもよい可変値とのいずれかと比較するように動作することができる。デューティーサイクル変更信号は、制御ユニットによって生成されたものであり、デューティーサイクル、したがって、MEMS又は水晶発振器の発振信号のオン時間及びオフ時間の間の関係を、増加又は減少させるように機能する。
【0018】
付加的に又は代替的に、制御ユニットは、デューティーサイクルのみを変更するのではなく、デューティーサイクルの変更と組み合わさり、発振信号の波形を変更するように動作することができる。この方法によって、フィルタリングされた中間信号における高調波の構成を、様々な異なる方法で変更することができる。
【0019】
更なる別の一実施形態において、信号受信器は、さらに、デューティーサイクルコントローラーに連結ないし内蔵されるデューティーサイクル変更器を有する。デューティーサイクル変更器は、制御ユニットから得られたデューティーサイクル変更信号に応じて発振信号のデューティーサイクルを増加又は減少させるように特に動作可能である。すなわち、デューティーサイクル変更器は、デューティーサイクルコントローラーの制御ユニットによって生成されるデューティーサイクル変更信号を処理するように動作可能である。デューティーサイクル変更信号がデューティーサイクルを増加させることを指示する場合、デューティーサイクル変更器は、例えば、所定の別々のステップによって、デューティーサイクルを増加させるように動作可能である。
【0020】
デューティーサイクル変更信号がデューティーサイクルを減少させることを指示する場合、デューティーサイクル変更器は、これに応じて、発振信号のデューティーサイクルを減少させる。また、デューティーサイクル変更器もMEMS又は水晶発振器内に実装されていてもよく、あるいはこれに属していてもよい。したがって、デューティーサイクル変更器は、基準共振器を有する発振器からの基準周波数に基づく発振信号を生成するように動作可能であるMEMS又は水晶発振器の電子的発振回路の内蔵部品又はこれとは別個の部品であることができる。
【0021】
更なる別の一実施形態においてデューティーサイクルコントローラーは、さらに、フィルタリングされた中間信号の選択された高調波成分の測定された大きさを少なくとも一時的に記憶するために、メモリー又は何らかの記憶空間を有する。このメモリーによって、バンドパスフィルターの出力の選択された高調波成分の以前に測定された大きさを記憶することができる。これによって、同じ高調波成分の実際に測定された大きさと比較することができる。この方法によって、変更されたデューティーサイクルの影響を直接モニタリングし評価することができる。メモリーが様々なメモリーセルを有し、これによって、高調波成分の連続的に測定された大きさの時間的なシーケンスを記憶することが可能になるということを想起することができる。一連の多数の高調波成分の全体をメモリーに記憶することも想起することができる。
【0022】
付加的又は代替的に、メモリーは、さらに、一種の参照テーブルを記憶するように機能する。この参照テーブルにおいて、選択された高調波成分のどの様々な大きさが所定のデューティーサイクルに直接割り当てられる。この方法によって、制御ユニットは、選択された高調波成分の特定の大きさの測定に応じて所定のデューティーサイクルを選択するように構成することができる。
【0023】
更なる別の一実施形態において、制御ユニットは、実際に測定された高調波成分の大きさを、フィルタリングされた中間信号の以前に記憶した高調波成分の大きさと比較するように動作可能である。これによって、デューティーサイクル変更信号を生成する。制御ユニットは、実際に測定された高調波成分を、単一又は一連の以前に記憶した高調波成分と比較する。
【0024】
制御ユニットは、この比較を連続的に実行してもよい。制御ユニットは、小さいが別々のステップでデューティーサイクルを変更し、かつこの変更の結果をモニタリングするように動作可能である。初期の変更が、フィルタリングされた中間信号における高調波成分の所望の抑制をもたらす場合、後のステップにおいて、デューティーサイクルが同じ方法で繰り返し変更される。フィルタリングされた中間信号の高調波成分の振幅が増加することを制御ユニットが検出するまで、この規制ループが継続し得る。その後、デューティーサイクルコントローラーは、以前に選択されたデューティーサイクルに戻る。制御ユニットは、このような信号比較制御ループにおいて永久に動作している。
【0025】
別の一実施形態によれば、特にアンテナがさらに信号受信器によってさらに処理される電磁的信号を受信する場合、デューティーサイクルコントローラーは少なくとも一時的に非活性化することができる。この実施例において、発振信号のデューティーサイクルの変更は、信号受信器がアイドル状態である場合、又は信号受信器がいずれの電磁的信号も実際に受信しない場合においてのみ行われる。デューティーサイクルコントローラーを選択的に非活性化又は活性化することによって、信号受信器のエネルギー使用量を縮小とすることができる。また、受信した電磁的信号を処理するための信号受信器の性能は、デューティーサイクル規制ループによって影響を受けず又は摂動しない。デューティーサイクル規制ループは、デューティーサイクルコントローラーによって通常実装され、MEMS又は水晶発振器、ミキサー及びバンドパスフィルターによって典型的に実装される。
【0026】
本発明の別の態様は、さらに、上記のような信号受信器のフィルタリングされた中間信号における基準共振器を有する発振器からの少なくとも1つの高調波成分を抑制する方法に関する。アンテナによって電磁的信号を受信するステップと、少なくとも1つの低雑音増幅器によって受信した前記信号を増幅するステップと、基準共振器を有する少なくとも1つのMEMS又は水晶発振器によって発振信号を生成するステップと、中間信号を生成するために、増幅された前記受信信号を前記発振信号と混合するステップと、バンドパスフィルターによって、前記中間信号をフィルタリングするステップと、フィルタリングされた前記中間信号のスペクトル解析を行うステップと、前記MEMS又は水晶発振器に連結し前記バンドパスフィルターの出力に連結するデューティーサイクルコントローラーによって、フィルタリングされた前記中間信号のスペクトル解析に応答して、前記発振信号の前記デューティーサイクルを変更するステップとを有し、前記デューティーサイクルは、前記発振信号のオン時間及びオフ時間の比によって定められ、これによって、フィルタリングされた前記中間信号における前記基準共振器を有する前記MEMS又は水晶発振器からの少なくとも1つの高調波成分の振幅が最小にされる。
【0027】
MEMS又は水晶発振器によって生成される発振信号のデューティーサイクルの変更によって、中間信号における高調波成分の分布を、バンドパスフィルターの関心事の帯域における選択された高調波成分の寄与を有効に抑制するために、遠くに変更することができる。
【0028】
一般的には、少なくとも1つの高調波成分を抑制する方法は、上記のような信号受信器によって実行される。この点では、信号受信器に関連して上記したいずれの特徴及び利点も、基準共振器を有するMEMS又は水晶発振器の少なくとも1つの高調波成分を抑制する方法に同様に適用することができ、逆も適用することができる。
【0029】
更なる一実施形態によると、フィルタリングされた中間信号における基準共振器を有するMEMS又は水晶発振器の少なくとも1つの高調波成分の振幅を最小限にするために、発振信号のデューティーサイクルがデューティーサイクルコントローラーによって変更される。ここにおいて、デューティーサイクルコントローラーは、通常、最適なデューティーサイクルを見つけて特定するように動作可能な制御ループの一部である。これによって、フィルタリングされた中間信号の又はその中の選択された高調波成分を最小化する。デューティーサイクルコントローラーは、様々な方法で、実装され動作することができる。
【0030】
更なる一実施形態において、基準共振器を有するMEMS又は水晶発振器の選択された高調波成分の振幅が、フィルタリングされた中間信号における最小に達するまで、発振信号のデューティーサイクルは所定の別々のステップで減少又は増加される。関心事の高調波成分は、予め決められていてもよく、又は信号受信器の様々なセッティングによって選択することができる。抑制される高調波成分の選択は、バンドパスフィルターの選択された帯域及び帯域幅に基づくことができる。
【0031】
通常、バンドパスフィルターの帯域に入る基準共振器を有するMEMS又は水晶発振器の高調波成分の1つだけでなくすべてが、上記の方法によって抑制されることになる。少なくとも1つの選択された高調波成分、又はいくつかの選択された高調波成分の最小の振幅を見つけるために、デューティーサイクルコントローラーは、デフォルトで、少なくとも小さいが別々のステップで所与のデューティーサイクルを変更してもよい。その後、この初期のデューティーサイクル変更の影響は、フィルタリングされた中間信号においてモニタリングされる。選択された高調波成分の振幅が増加する場合、デューティーサイクル変更は実行中のステップにおいて逆にされる。
【0032】
例えば、基準共振器を有するMEMS又は水晶発振器の選択された高調波成分の振幅が、最小に達するまで、デューティーサイクルを低くしたり増加させたりしてもよい。最適なデューティーサイクルは、標準化されたデジタル信号処理装置を利用する規制ループの実装により得ることができる。
【0033】
更なる一実施形態によると、フィルタリングされた中間信号における高調波成分の振幅が測定され、メモリーに少なくとも一時的に記憶される。メモリーは、通常、デューティーサイクルコントローラーにおいて位置する。デューティーサイクルコントローラーがクロックされるので、メモリーは、後のクロックタイムで得られる少なくとも1つ又は少数の連続的に測定される振幅を記憶するように構成するシフトレジスターを有することができる。メモリーの利用によって、選択された高調波成分の実際に測定される振幅は、以前に記憶した振幅と比較することができる。
【0034】
この比較は、デューティーサイクルが、選択された高調波成分の振幅を減少させるように以前に変更されたかどうかを示す。高調波成分の振幅が減少することが比較によって明らかになった場合、デューティーサイクルは最小に到達するまで同じ方向に変更される。比較によって高調波成分の振幅が増加することが明らかになった場合、デューティーサイクル変更の方向が変更、すなわち、逆転される。
【0035】
この方法において、そして、更なる一実施形態によると、発振信号のデューティーサイクルは、フィルタリングされた中間信号における高調波成分の実際に測定される振幅と以前に記憶した振幅との比較に依存して、減少又は増加される。
【0036】
別の一実施形態によると、アンテナが信号受信器によってさらに処理される電磁的信号を実際に受信すると、発振信号のデューティーサイクルは一定に保たれる。この方法によって、デューティーサイクルコントローラーを少なくとも一時的に非活性化される。これによって、発振信号のデューティーサイクル変更に起因する信号受信器の信号処理のエネルギーを節約しいかなる摂動をも回避される。
【0037】
下記では、図面を参照しながら本発明の様々な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、従来技術において知られている従来の信号受信器を示す。
図2図2は、本発明に係る信号受信器の概略ブロック図を示す。
図3図3は、信号受信器のMEMS又は水晶発振器の少なくとも1つの高調波成分を抑制するために、図2に示す信号受信器によって実行可能な方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図2は、本発明に係る信号受信器10の概略ブロック図を示す。信号受信器10は、通常、無線周波数信号を受信するように実装されるものであり、例えば約2.4GHzである搬送周波数で動作するアンテナ12を有する。アンテナ12が受信した信号は、低雑音増幅器(LNA)14において増幅される。増幅された信号は、周波数変換される。より詳細には、MEMS又は水晶発振器20によって提供される発振信号50を介してミキサー16においてダウン変換される。ミキサー16の出力は、バンドパスフィルター18の入力につながり、これによって、信号受信器10においてさらに処理するために、中間信号40に関心事の帯域41を選ぶことができる。
【0040】
MEMS又は水晶発振器20は、基準共振器22にロックされる信号生成器24を有する。基準共振器22は、MEMS共振器であることができ、又は水晶結晶によって実装してもよく、あるいは通常、数MHzの範囲、例えば、26MHzの、一定で、幾分安定した基準周波数を信号生成器24によって提供するような同様な共振器であってもよい。信号生成器24は、概して正弦波波形を有する信号を生成するように動作可能である。信号生成器24は、さらに、後述するようなデューティーサイクル変更器26に接続される。これは、信号生成器24からの信号に基づいて、例えば、オン時間51及びオフ時間52の交互のシーケンスの特徴を有する矩形波形を有する発振信号50を生成する。オン時間51及びオフ時間52の長さの関係によって、発振信号50のデューティーサイクルが決まる。さらに、結晶又はMEMS発振器20は、ミキサー用に、より高い周波数を有する発振信号を供給するために、デューティーサイクル乗算器26とミキサー16の間にPLLユニット(図2に図示せず)を有することができる。
【0041】
通常、発振信号50の周波数の高調波は、デューティーサイクル及び発振信号50の波形に強く依存する。したがって、フィルタリングされた中間信号40の選択された帯域41が、基準共振器22を有するMEMS又は水晶発振器20からの周波数の少なくとも1つの高調波成分と一致する場合、対応する成分42が、フィルタリングされた中間信号40の関心事の帯域41において摂動として現われる。
【0042】
フィルタリングされた中間信号40における基準共振器を有するMEMS又は水晶発振器からの周波数の選択された高調波成分の寄与及び配分を抑制するために、受信器10は、さらに、バンドパスフィルター18の出力19とつながったデューティーサイクルコントローラー30を有する。デューティーサイクルコントローラー30は、フィルタリングされた中間信号40のスペクトルを測定し解析するように動作可能である。デューティーサイクルコントローラー30は、基準共振器22を有するMEMS又は水晶発振器20からの周波数の選択された高調波成分42の振幅ないし大きさを決定し測定するのに特に適している。
【0043】
このために、デューティーサイクルコントローラー30は、フィルタリングされた中間信号40の選択された高調波成分42の大きさないし振幅を決定し測定するために、測定ユニット32を有する。この測定に依存して、デューティーサイクルコントローラー30の制御ユニット34は、MEMS又は水晶発振器20から導かれた発振信号50のデューティーサイクルを変更するように動作可能である。このために、デューティーサイクルコントローラー30の制御ユニット34は、MEMS又は水晶発振器20において実装され信号生成器24から信号を受信するデューティーサイクル変更器26と連結ないし相互接続している。
【0044】
対応するデューティーサイクル変更信号を制御ユニット34から受信すると、デューティーサイクル変更器26は、発振信号50のデューティーサイクルを変更するように動作可能である。デューティーサイクルの変更は別々のステップで行われていてもよい。例えば、発振信号50の所与又はデフォルトのデューティーサイクルが、別々のステップによって増加されてもよい。その後、次のステップにおいて、デューティーサイクルコントローラー30、より具体的には、その測定ユニット32は、フィルタリングされた中間信号40における選択された高調波成分42の振幅ないし大きさのいずれの変化をもモニタリングするように動作可能である。
【0045】
高調波成分42の大きさないし振幅が減少すると、高調波成分42の振幅ないし大きさの最小値に到達するまで、デューティーサイクルが同じ方向にさらに変更される。デューティーサイクルの初期の増加が、フィルタリングされた中間信号40における高調波成分42の大きさないし振幅の増加をもたらす場合には、実行しているステップにおいてデューティーサイクルが減少し、そして結局、フィルタリングされた中間信号40の高調波成分42の大きさないし振幅の最小値に到達するまでの続く各ステップにおいても減少する。
【0046】
フィルタリングされた中間信号40の高調波成分42の、実際に測定された大きさないし振幅と、以前に存在した大きさ又は振幅とを比較するために、デューティーサイクルコントローラー30はメモリー36を有する。メモリー36は、様々な異なる方法で実装することができる。メモリー36は、フィルタリングされた中間信号40の選択された高調波成分42の実際に測定された振幅ないし大きさ、そして結局、いくつかの以前に測定した振幅ないし大きさを一時的に記憶することを可能にするシフトレジスターを有することができる。したがって、メモリー36は、実際に測定された高調波成分42を以前に記憶した高調波成分と比較することを可能にする。これによって、実際の又は以前のデューティーサイクルの変更によって、フィルタリングされた中間信号40における選択された高調波成分42の更なる抑制及び減少がもたらされたかどうかを決めることができる。
【0047】
この方法によって、デューティーサイクルコントローラー30、MEMS又は水晶発振器20、ミキサー16及びバンドパスフィルター18が、規制ループを形成する。それとは別に、フィルタリングされた中間信号40の高調波成分42を抑制する他の制御方式が実装されることも想起することができる。一般に、メモリー36は、参照テーブルを有し、これによって、フィルタリングされた中間信号40の高調波成分42の大きさ又は他の特性の実際の定量的な測定に応じて、所定のデューティーサイクルを選択することもできる。
【0048】
図3のフローチャートにおいて、フィルタリングされた中間信号40における高調波成分42を抑制する方法を例示的に示した。第1のステップ100において、少なくとも1つの選択されたスペクトル成分、すなわち、フィルタリングされた中間信号40の関心事の帯域41と一致する単一又はいくつかの高調波成分42は、通常、デューティーサイクルコントローラー30の測定ユニット32によって、実際に測定され解析される。次に、これらの大きさ、すなわち、実際に測定され解析されたスペクトル成分42の振幅は、続くステップ102において、メモリー36に記憶される。その後、ステップ104において、水晶発振器20によって生成された発振信号50のデューティーサイクルが、通常所定の方法によって、及び/又は別々のステップにおいて、変更される。
【0049】
その後のステップ106において、スペクトル成分、すなわち、フィルタリングされた中間信号40の選択された高調波成分42の大きさないし振幅が、再び測定される。その後、測定された振幅ないし大きさが、その後のステップ108において、メモリー36に繰り返し記憶される。その後、実際に記憶された振幅ないし大きさが、対応するスペクトル成分の一又はいくつかの以前に記憶された振幅ないし大きさと、すなわち、フィルタリングされた中間信号40の以前に測定された高調波成分42と比較される。
【0050】
ステップ110で実行されるこの比較の後、本方法は、ステップ104に戻り、発振信号50のデューティーサイクルを再び変更する。この変更は、比較の出力に依存する。選択された高調波成分42の抑制が改善されたことが比較によって明らかになった場合、デューティーサイクルが以前と同じ方法で変更される。選択された高調波成分42の抑制が悪くなった場合、デューティーサイクルが、反対に変化させられ変更される。
【0051】
特に図示していないが、本方法は、特に、アンテナ12が電磁的信号を実際に受信して、信号受信器10によって更に処理される時々において、デューティーサイクル変更を非活性化するために動作可能である。したがって、信号受信器がスタンバイモードである場合又は信号受信器が実質的にアイドル状態である場合のみにおいて排他的に、上記のようなデューティーサイクル変更手続きを実行するように意図されている。
【0052】
さらに、デューティーサイクルコントローラー30の様々な部品及びMEMS又は水晶発振器20の様々な部品の図示は、デューティーサイクルコントローラー及びMEMS又は水晶発振器のオペラビリティ及び機能性が反映されたものであるのにすぎない。例えば、デューティーサイクルコントローラーの測定ユニット32、制御ユニット34及びメモリー36は、単一及び共通の集積回路において実装されていてもよい。また、同じことをMEMS又は水晶発振器20の内部構造にも言える。
図1
図2
図3