特許第5977312号(P5977312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977312
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】浴室床及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/00 20060101AFI20160817BHJP
   E04H 1/12 20060101ALI20160817BHJP
   E04B 1/682 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   E04F15/00 F
   E04H1/12 301
   E04B1/682 A
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-219290(P2014-219290)
(22)【出願日】2014年10月28日
(62)【分割の表示】特願2011-25139(P2011-25139)の分割
【原出願日】2011年2月8日
(65)【公開番号】特開2015-42839(P2015-42839A)
(43)【公開日】2015年3月5日
【審査請求日】2014年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222495
【氏名又は名称】東リ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】特許業務法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松川 尭彦
(72)【発明者】
【氏名】高岡 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】南 雅文
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−077608(JP,A)
【文献】 特開平09−111220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00−15/16
E04B 1/682
E04H 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存浴室床の下地と、既存浴室の壁面と、前記下地上に接着剤層を介して施工された浴室用床シートと、を備え、
前記接着剤層が、防黴剤を含有し、
弾性を有するシーリング材が、前記浴室用床シートの側面及び接着剤層の側面と、前記下地表面と、前記壁面とで形成される隙間に充填され、
前記浴室用床シート側の前記シーリング材の角隅部が、前記浴室用床シートの端部表面に載り上げられ、且つ、その角隅部の先端部が尖った状態で前記浴室用床シートの端部表面に接着されており、
前記浴室用床シートが、発泡層を含む樹脂製のシートであり、
前記隙間の幅が、2〜10mmである、ことを特徴とする浴室床。
【請求項2】
前記シーリング材が、変性シリコーン系シーリング材である、請求項1に記載の浴室床。
【請求項3】
前記下地表面が、平坦状である、請求項1または2に記載の浴室床。
【請求項4】
前記浴室用床シートの表面に溝部が形成されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の浴室床。
【請求項5】
既存浴室の下地上に、防黴剤を含有する接着剤を塗布して接着剤層を形成する工程と、
前記接着剤層上に、発泡層を含む樹脂製の浴室用床シートを施工する工程と、
浴室用床シート側面及び接着剤層の側面と、下地表面と、壁面とで形成される入隅部に弾性を有するシーリング材を充填する工程と、を有する、ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の浴室床の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室床及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一戸建てやマンション等の住宅、老人保健施設、介護福祉施設、病院等の施設で、リフォームが盛んに行われている。
これらの建物においては、部屋や廊下だけでなく浴室のリフォームも求められている。特に、古い建物の浴室の床はタイル張りになっていることが多いため、入浴者が滑り易く、また、冬場は表面温度が低くなるためにヒートショックを引き起こす原因ともなっている。
【0003】
このような問題を解決するための手段として、例えば、特許文献1に示すような浴室用洗い場床が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
この浴室用洗い場床は、基材の上に設けられた表面材と、基材と表面材との間に設けられたクッション材と、壁パネルと表面材の縁部との間を塞ぐシール部とを備えている。
具体的には、上記浴室用洗い場床は、FRP等の硬質な材料で形成された基材11の上に、FRP等の硬質性を有する表面材30を設け、これらの間にウレタン等の発泡体等のクッション材20が形成されている。
また、壁パネル80と表面材30の縁部32との間を水密的に塞ぐ目的でシール部50が設けられている。当該シール部50は、表面材30の外側端部と壁パネル80との間に形成される隙間に沿って表面材30の周囲に施工されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−248890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の浴室用洗い場床において、シール部の幅が狭い場合、水密性が不充分となり、表面材側面と壁パネルとの隙間から水が浸入する場合がある。隙間から浸入した水は、表面材裏面又はクッション材裏面と、基材表面との間にまで浸透して、黴や臭気の発生の原因となる。
【0007】
一方、水の浸入を防止するためにシール部の幅を広くした場合、露出しているシール部が目立ち、浴室の美観を損ねて意匠性の低下を招く場合がある。一般的にシール部構成するシール材は、白色や灰色の外観を示しているので、表面材の色調と異なるとシール部の存在が必要以上に強調されてしまう場合がある。
【0008】
意匠性の低下を防止するためにシール部の幅を制限すると、水密性も制限されることとなり、表面材裏面に水が浸入しやすくなる。
また、従来の浴室用洗い場床は、FRPのような硬質性を有する表面材を用いるのが一般的であり、このような表面材は柔軟性がないため、ある程度の厚みがないと破損しやすい。強度を保持するために表面材を厚くすると、表面材側面と壁パネルとの隙間のシール部の厚みも厚くなるために、水が表面材の裏面まで到達し難くなる。
【0009】
しかし、既存の下地を残したまま、その上に樹脂製のシートを施工して床面にリフォームを施す場合、リフォーム後の床面高さが高くなり過ぎないように、比較的厚みが薄いシートを用いる必要がある。また、厚みを薄くすることにより、シートの柔軟性が向上してリフォーム時の施工性を向上させることができる。
この場合、シート側面と壁パネルとの間に形成される隙間の深さが浅くなり、この隙間に充填されるシール部の厚みが薄くなるために、シート縁部と、壁パネルとの間から浸入した水がシート裏面に比較的到達し易くなってしまう。
また、リフォームに用いるシートの厚みが薄いと、表面にかかった湯の温度が裏面まで伝わり易くなり、シート裏面の温度が比較的高くなる傾向にある。このため、シート裏面では、シート縁部と、壁パネルとの間から侵入した水と、高い温度とで、黴が発生する条件が整い、浴室シート裏面に黴が発生・増殖し易くなり、また、臭気を発生し易くなるという問題があった。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、浴室の意匠性を向上させ、且つ、黴や臭気の発生を防止することができる浴室床及びその施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る浴室床は、既存浴室床の下地と、既存浴室の壁面と、前記下地上に接着剤層を介して施工された浴室用床シートと、を備え、前記接着剤層が、防黴剤を含有し、弾性を有するシーリング材が、前記浴室用床シートの側面及び接着剤層の側面と、下地表面と、前記壁面とで形成される隙間に充填され前記浴室用床シート側の前記シーリング材の角隅部が、前記浴室用床シートの端部表面に載り上げられ、且つ、その角隅部の先端部が尖った状態で前記浴室用床シートの端部表面に接着されており、前記浴室用床シートが、発泡層を含む樹脂製のシートであり、前記隙間の幅が、2〜10mmである。
【0012】
かかる構成によれば、浴室の意匠性を向上させ、且つ、黴や臭気の発生を防止することができる浴室床を提供することができる。
【0013】
さらに、樹脂製の浴室用床シートは熱によって平面方向に寸法変化する場合があるが、シーリング材が弾性を有するので、シーリング材がその変化を吸収して、前記側面とシーリング材の間に隙間が生じることを防止できる。
【0015】
また、本発明に係る浴室床は、浴室用床シート側の前記シーリング材の角隅部が、前記浴室用床シートの端部表面に載り上げられ、且つ、前記浴室用床シートの表面と前記シーリング材の角隅部の表面がなだらかな面とされているので、浴室用床シートが上方向への捲れることを防止できる上、下地と浴室用床シートとの間への水の浸入をより効果的に防止することができる。
【0016】
また、本発明に係る浴室床は、浴室用床シートの側面及び接着剤層の側面と、下地表面と、前記壁面とで形成される入隅部がシーリング材によって被覆されているので、水密性をより向上させることができる。
【0017】
本発明の好ましい浴室床は、前記シーリング材が、変性シリコーン系シーリング材である。また、本発明の好ましい浴室床は、前記浴室用床シートの表面に溝部が形成されている。
【0018】
また、本発明は、既存浴室の下地上に、防黴剤を含有する接着剤を塗布して接着剤層を形成する工程と、前記接着剤層上に、発泡層を含む樹脂製の浴室用床シートを施工する工程と、浴室用床シート側面及び接着剤層の側面と、下地表面と、壁面とで形成される入隅部に弾性を有するシーリング材を充填する工程とを有する上記浴室床の施工方法であることを特徴とする。
【0019】
かかる構成によれば、上記浴室床を簡易に施工することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、浴室の意匠性を向上させ、且つ、黴や臭気の発生を防止することができる浴室床を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の浴室床の第1実施形態の縦断面図である。
図2】本発明の浴室床の第1実施形態の平面図である。
図3】浴室用床シートの平面図である。
図4】浴室用床シートの平面図である。
図5】浴室用床シートの平面拡大図である。
図6】本発明の浴室床の一つの実施形態の縦断面拡大図である。
図7】本発明の浴室床の他の実施形態の縦断面拡大図である。
図8】本発明の浴室床の他の実施形態の平面図である。
図9】本発明の浴室床の他の実施形態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、各図において、各部材又は各部の長さ、厚み、及び大きさは、実際のものとは異なっていることに留意されたい。
【0023】
図1は、本発明に係る浴室床の第1実施形態の縦断面図であり、図2は、浴室床シート1の表面に対して垂線方向から見た平面図である。
図1、及び、図2に示すように、本発明に係る浴室床は、浴室用床シート1、接着剤層6、シーリング材7、下地8、及び、浴室壁面9から構成される。また、図2においては、さらに、浴槽11、及び、排水口12が図示されている。
なお、図2において、浴室用床シート1の四辺のうち、浴室壁面9に隣接する三辺101aにおいては、浴室用床シート1と浴室壁面9との隙間が、図5を用いて後述する本実施形態のシーリング材7により充填されている。また、排水口12側の一辺101bにおいては、図6を用いて後述するシーリング材7の形態と同様の形態で下地8上に施工されている。
【0024】
(浴室用床シート)
浴室用床シート1は、浴室の下地8上に施工され、浴室の意匠性を向上させる部材である。浴室用床シート1としては、浴室の下地8上に施工可能なものであれば特に限定されないが、例えば、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂等の樹脂製のシートが挙げられる。
また、上記浴室用床シート1の表面形状は特に限定されず、例えば、平滑な形状、凹凸を有する形状が挙げられる。入浴者が滑って転倒する危険を回避することができる、いわゆる防滑性を有する点で、凹凸を有する形状が好ましい。また、樹脂製のシートのような柔軟性を有するシートで形成することにより、浴室用床シート1をFRPなどで形成された既存の下地8を残したまま、その上にリフォームを施すことが可能となる。
【0025】
図3は、本実施形態の浴室床に用いられる浴室用床シート1の1つの例を示す平面図であり、図4は、同浴室用床シート1の他の例を示す平面図である。図3及び図4は、浴室用床シート1の平面の一部分だけを表しており、実際の浴室用床シート1は、両図で表されたユニット2U(3つの大突部が並設された1つの集合部)の配置パターンが繰り返して形成されている。
【0026】
図3及び図4の浴室用床シート1は、ユニット2Uの配置パターンが異なっていることを除いて、その余の構成については同様である。従って、本実施形態に例示される浴室用床シート1の各構成要素を説明するに当たって、主として図3の浴室用床シート1を基準にして説明する。
図5は、1つのユニットの拡大平面図である。
【0027】
なお、本明細書において、入浴者の身体の一部分(膝など)が乗ったときに入浴者が痛みを感じ難くできることを「防痛性」という場合がある。
【0028】
本実施形態において例示する浴室用床シート1は、図3及び図4に示すように、シート本体1aと、シート本体1aの表面から上方に突出された複数の大突部2を有する。また、図5に示すように、各大突部2の表面2aには、表面2aから上方に突出した複数の小突起31,32が設けられている。なお、図3及び図4においては、小突起31,32の図示が省略されている。複数の小突起31,32は、それぞれ同形同大でもよいし、立体的な相似形でもよいし、或いは、異形でもよい。複数の小突起31,32は、大突部2の表面2aに不規則に設けられていてもよいが、大突部2の表面2aの略全体又は一部の領域に、規則的に(例えば、所定の間隔を開けて)設けられていることが好ましい。
本実施形態の浴室用床シート1は、その平面形状が床タイルのように矩形状又は多角形状に形成されていてもよいし、長尺状シートに形成されていてもよい。長尺状に形成された浴室用床シート1は、通常、ロールに巻かれて保管・運搬に供される。
【0029】
シート本体1aは、本実施形態の浴室用床シート1を構成する基本的な部材であり、そのシート本体1aの表面に、大突部2及び小突起31,32が形成されている。
シート本体1aは、簡易に保管・運搬できる上、施工時に浴室内に容易に搬入できるため、ロールに巻き取ることができるような柔軟性を有することが好ましい。シート本体1aは、防痛性を高めるため適度なクッション性を有し、さらに、浴室におけるヒートショックの低減及び温感を高めるため断熱性を有することが好ましいことから、発泡層を含むことが好ましい。
シート本体1aは、その全体が発泡層で形成されていてもよいが、シート本体1aの表面に潰れにくい大突部2及び小突起31,32を形成するために、非発泡の表層を有することが好ましい。
【0030】
図5に示すように、1つの大突部2は、その平面形状が長方形に形成されているが、その長辺及び短辺の比率は特に限定されない。図示例では、大突部2の長辺は、短辺の約3倍の長さである。このような比率の大突部2を3つ並設させてなる、1つのユニット2Uは、その平面形状が略正方形となる。前記平面略正方形状のユニット2Uは、それを規則的に配置させる場合に好適である。
具体的な大突部2の寸法は、例えば、長辺が15mm〜35mmであり、短辺が5mm〜12mmである。
なお、本明細書において、平面形状とは、床シートの表面に対して垂線方向からその表面を見たときの形状を意味する。
【0031】
大突部2の断面における表面2aの形状は、上方に膨らむ弧状であることが好ましい。このような弧状の表面2aを有する大突部2は、その表面2aに付着した水が弧状の傾斜面に沿って落下していくことによって、容易に溝部4へと導かれる。ただし、前記大突部2の断面における表面2aの形状とは、短辺と平行な直線で大突部2を切断したときの小突起を除く大突部2の表面2aの輪郭をいう。
弧状の表面2aを有する大突部2は、その短辺方向中央部が最も高い部分となっている。
前記最も高い部分における大突部2の突出高さは、上記溝部4の深さに相当する。
【0032】
図5に示すように、各大突部2の表面2aには複数の小突起31,32が間隔を開けて突設されている。
複数の小突起31,32の平面形状は、それぞれ特に限定されず、例えば、平面円形状;平面楕円形状;平面矩形状、平面三角形状、平面六角形状などの平面多角形状;平面星形状などが挙げられる。
【0033】
上記小突起31,32の突出高さは、小突起31,32の最も高い部分と大突部2の表面との高低差をいう。また、複数の小突起31,32の突出高さが異なっている場合には、前記小突起31,32の突出高さは、複数の小突起31,32の突出高さの平均値に相当する。
上記小突起31,32の突出高さは、好ましくは0.09mm〜0.20mmであり、より好ましくは0.10mm〜0.15mmであり、さらに好ましくは0.11mm〜0.14mmである。
【0034】
上記小突起31,32の最大幅は、小突起31,32が平面円形状の場合には、その直径であり、小突起31,32が平面円形状以外の平面形状の場合には、その平面形状の最大幅をいう。また、複数の小突起31,32の最大幅が異なっている場合には、前記小突起31,32の最大幅は、複数の小突起31,32の最大幅の平均値に相当する。
上記小突起31,32の平面形状における最大幅は、好ましくは0.40mm〜1.20mmであり、より好ましくは0.45mm〜1.20mmであり、さらに好ましくは0.45mm〜1.05mmである。
【0035】
上記小突起31,32の形成間隔は、隣接する小突起31,32の平面形状における重心間の長さをいう。例えば、小突起31,32が平面円形状である場合には、隣接する小突起31,32の中心を直線で結んだ長さであり、小突起31,32が平面円形状以外の平面形状の場合には、隣接する小突起31,32の平面形状の重心を直線で結んだ長さであり、小突起31,32が平面円形状とそれ以外の平面形状の混在である場合には、その中心と重心を直線で結んだ長さである。また、各小突起31,32の形成間隔が異なっている場合には、前記小突起31,32の形成間隔は、その平均値に相当する。
上記複数の小突起31,32の形成間隔は、好ましくは0.75mm〜1.20mmであり、より好ましくは0.87mm〜1.10mmであり、さらに好ましくは0.87を超え1.10mm以下である。
【0036】
このような小突起31,32を有する浴室用床シートは、防滑性、防痛性及び防汚性に優れている。
【0037】
複数の小突起31,32の配置パターンは、特に限定されない。例えば、図4及び図5に示される大突部2においては、複数の小突起31,32が複数列且つ多段に規則的に配置されている。複数の小突起31,32が多段に且つ規則的に配置されることによって、入浴者の足裏が略均一に小突起31,32に当たるので、防滑性に優れた浴室用床シート1を構成できる。
【0038】
複数の小突起31,32は、大きさ及び形状が異なっていてもよいし、大きさ及び形状の少なくとも何れか一方が異なっていてもよい。
図5において例示される浴室用床シート1は、形状が同じで且つ大きさが異なる、つまり、立体的な相似形の2種類の小突起31,32が交互に列設されている。以下、この立体的な相似形の2種類の小突起31,32を、それぞれ第1小突起31及び第2小突起32という場合がある。
もっとも、小突起は、3種類以上であってもよい。このように、大きさが異なる小突起を設けることによって、入浴者の足裏の複雑な凹凸に対して接触し得る小突起が多くなり、さらに防滑性に優れた浴室用床シート1を構成できる。
【0039】
上記浴室用床シート1の厚みは、2〜4mmであることが好ましい。浴室用床シート1の厚みが2mmより薄いと、床材としての強度が不足するおそれがある。
一方、浴室用床シート1の厚みが4mmより厚いと、柔軟性が乏しいため、狭い浴室内で施工する際に作業性に劣るおそれがある。また、リフォームの際に、既存の浴室床材上に浴室用床シート1を施工した場合、リフォーム後の浴室床面の高さが高くなりすぎると、浴室の扉と浴室床面とが接触して扉の開閉の妨げとなるおそれがあり、また、床に段差を生じて、入浴者が躓くおそれがある。
上記浴室用床シート1の厚みを4mm以下とすることで、リフォーム後の床面高さの変動が支障の出ない範囲に抑えられる上、リフォーム後の美観も保つことができる。
【0040】
本実施形態に用いられる浴室用床シート1は、上述した構成であるので、防滑性に優れ、入浴者が痛みを感じ難く、さらに、汚れを除去し易い。また、ブラシなどを用いた汚れの除去も容易であり、入浴者が痛みを感じることもない。さらに、大突部の表面に付着した水を溝部から凹部を通じて排出することができる。かかる浴室用床シートは、長時間、大突部の表面に水が残存しないので、汚れや水垢の付着及びカビの発生を防止できる。
【0041】
(接着剤層)
接着剤層6は、浴室用床シート1と下地8との間に存在し、浴室用床シート1を下地8上に接着し、且つ、防黴剤を含有することにより黴や臭気の発生を防止する層である。
【0042】
上記接着剤層6は、防黴剤を含有する接着剤を浴室用床シート1の裏面、または、下地8の表面に塗布し、下地8上に浴室用床シート1を施工して、接着剤を経時的に硬化させることにより形成される。
【0043】
上記接着剤としては、防黴剤を含有し、下地8と浴室用床シート1とを接着することができるものであれば特に限定されないが、例えば、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ポリ酢酸ビニル系接着剤、尿素樹脂系接着剤、シリコーン系接着剤、変性シリコーン系接着剤及び、ゴム系接着剤が挙げられる。なかでも、耐水性、及び、接着性に優れる点で、エポキシ系接着剤が好ましい。
【0044】
上記接着剤層6は、防黴剤を含有するものである。上記防黴剤としては、黴の発生を防止することができれば特に限定されないが、例えば、ベンゾイミダゾール系防黴剤、ドデシルグアニジン塩酸塩、N−(フルオロジクロロメチルチオ)−フタルイミド、N−ラウリル−β−アラニン等が挙げられる。なかでも、防黴効果に優れる点で、ベンゾイミダゾール系防黴剤が好ましい。
【0045】
上記防黴剤の含有量は、接着剤100重量%に対して、0.01〜0.30重量%であることが好ましい。0.02〜0.15重量%であることがより好ましく、0.03〜0.07重量%であることがさらに好ましい。
防黴剤の含有量が余りに少ないと、防黴効果が得られないおそれがある。また、防黴剤の含有量が一定量を超えると防黴効果が飽和するので、防黴剤の含有量が余りに多いと、経済性に劣るおそれがある。
【0046】
上記接着剤は、上述した成分の他に、可塑剤、酸化防止剤、防腐剤、紫外線吸収剤、粘度調節剤、顔料、溶媒等の添加剤を適宜含有していてもよい。
【0047】
(シーリング材)
シーリング材7は、浴室用床シート1側面及び接着剤層の側面と、下地8の表面とで形成される入隅部を被覆し、浴室用床シート1を下地8上に固定し、且つ、下地8と浴室床シート1との間への水の浸入を防止する部材である。
【0048】
図6(a)は、本発明に係る浴室床の縦断面拡大図である。図6(a)において、浴室用床シート側面1b及びその下方に連設される接着剤層6の側面6aと、下地表面8aとで形成される入隅部5が、シーリング材7により被覆されており、且つ、側面1b、側面6aと、下地表面8aと、浴室壁面9とで形成される隙間が、シーリング材7で充填されている。図6(a)に示すように、本発明に係る浴室床のシーリング材7は、その表面7eが浴室壁面9に接する頂点7fが最も高く、浴室用床シート1の表面1cとの接点7gがもっとも低く、表面7eが頂点7fから接点7gに向かって傾斜するように設けることが望ましい。表面7eに傾斜を設けることによって、壁面9に付着した水を傾斜に沿って浴室用床シート1の表面1c上に流し込み、浴室床面の傾斜に沿って効果的に排水することができる。
【0049】
図6(a)に示すように、上記シーリング材7の幅7L1は、シーリング材7の下面7aの浴室用床シート1側の角隅部7bと、浴室壁面側の角隅部7cとの距離である。つまり、符号7L1は、前記隙間の幅である。
本発明に係る浴室床を構成するシーリング材7は、幅7L1が、2〜10mmである。上記幅7L1が2mmより小さいと、水密性が不十分となり、下地8と接着剤層6との間、または、接着剤層6と浴室用床シート1との間に水が浸入して黴や臭気が発生しやすくなる。
一方、上記幅7L1が10mmを超えると表面7eの露出部分が大きくなりすぎてシール材7が目立ち、浴室の美観を損ねて意匠性を低下させるおそれがある。
従って、上記幅7L1は、3〜8mmであることが好ましい。
【0050】
また、シーリング材7の高さ7H1は、下地表面8aと、頂点7fとの距離である。
上記高さ7H1は、施工される浴室用床シート1の高さに応じて適宜設定されるが、1〜10mmであることが好ましい。
上記高さ7H1が余りに高いと、浴室床面の周囲に露出している表面7eの面積が大きくなるのでシーリング材7が目立ち、浴室の美観を損ねて意匠性を低下させるおそれがある。
上記高さ7H1が余りに低いと、水密性を十分に発揮できず、浴室用床シート1と壁面9との間に形成される隙間から水が浸入して黴や臭気が発生するおそれがある。
また、図6(a)に示すように、上記シーリング材7は、浴室用床シート1よりも高いことが望ましい。
シーリング材7が浴室床シート1よりも低いと、シーリング材7の表面7eを頂点7fから接点7g向かって傾斜する構成とすることができず、表面7e上に水が溜まりやすくなる。表面7e上に水が溜まると、下地8と浴室床シート1との間に水が浸入しやすくなるので、黴や臭気が発生するおそれがある。また、後述するように、シーリング材7上面の浴室用床シート1側の角隅部7dが浴室用床シート1の表面1cに載り上げている構成とすることができず、浴室用床シート1の上方向への捲れを防止し、下地8と浴室用床シート1との間への水の浸入を防止するという効果を発揮できないおそれがある。
さらに、上記高さ7H1と浴室用床シート1の表面1cの高さとの差7H2は、1〜6mmであることが好ましく、2〜4mmであることがより好ましい。
上記高さの差7H2が余りに大きいと、浴室床面の周囲に施工されたシーリング材7が目立ち、浴室の美観を損ねて意匠性を低下させるおそれがある。
上記高さの差7H2が余りに小さいと、シーリング材7の上に水が留まり、下地8と浴室床シート1との間に水が浸入しやすくなるおそれがある。
【0051】
図6(a)に示すように、シーリング材7は、シーリング材7上面の浴室用床シート1側の角隅部7dが浴室用床シート1の表面1cに載り上げていることが好ましい。さらに、前記浴室用床シート1側の角隅部7dの先端は尖っており、その状態で前記角隅部7dは、シート1の表面1cに接着されている。かかる構成によると、シーリング材7の角隅部7dによって表面1cの端部が封止されるので、浴室用床シート1の上方向への捲れを防止することができる上、下地8と浴室用床シート1との間への水の浸入をより効果的に防止することができる。
また、上記角隅部7dの表面1cへの載り上げ幅7L2は、シーリング材7の表面7eと浴室用床シート1の表面1cとの接点7gと、浴室用床シート1の上の角部1eとの距離で表される。
上記載り上げ幅7L2は、0.1〜1.0mmであることが好ましい。
載り上げ幅7L2が余りに小さいと、浴室用床シート1の捲れ防止効果や、水の浸入を防止する効果を十分に発揮できないおそれがある。
また、上記載り上げ幅7L2が余りに大きいと、シーリング材が目立ち、浴室の美観を損ねて意匠性を低下させるおそれがある。
ここで、シーリング材7の施工方法を概略説明する。上述のように、シーリング材7の角隅部7dが浴室用床シート1の表面1cに載り上げている構成とする場合、角隅部7dの幅が小さいので、表面1c上にマスキングテープを貼付して、シーリング材7を塗布することにより形成する方法を好適に用いることができる。上記マスキングテープは、シーリング材7の施工前に、角隅部7dが載り上げる部分を除いて表面1c上に貼付され、シーリング材7が施工された後に剥離除去される。
上述の施工方法において、上記載り上げ幅7L2が余りに大きいと、マスキングテープの剥離除去の際に、マスキングテープ端部と接していた剥離除去後のシーリング材7の端部が、上方向に突起(バリ)を生じるおそれがある。
このような突起が生じると、浴室床の美観を損ねるばかりでなく、突起が水の流れを止めることにより、シーリング材7の表面7e上に水が溜まりやすくなる。表面7e上に水が溜まることにより、下地8と浴室床シート1との間に水が浸入し易くして、黴や臭気を発生させる原因となるおそれがある。
また、上記突起に入浴者の足や掃除用のブラシ、スポンジ等が接触することにより、シーリング材7が捲れ易くなるおそれがある。
さらに、シーリング材7を形成する樹脂が硬い場合、上記突起も硬くなるために、入浴者が踏んだ際に、痛みを感じるおそれがある。また、樹脂が柔らかい場合であっても、入浴者が踏んだ際に、足の裏に不快感を生じさせるおそれがある。
【0052】
上記シーリング材7は、図6(a)に示される入隅部5に施工可能であり、当該入隅部5を水密的に防ぐことができれば特に限定されないが、例えば、1成分型シリコーン系シーリング材、1成分型変性シリコーン系シーリング材、2成分型シリコーン系シーリング材、2成分型変性シリコーン系シーリング材、2成分型エポキシ系シーリング材、2成分型ポリサルファイド系シーリング材、1成分型ポリウレタン系シーリング材、2成分型ポリウレタン系シーリング材などが挙げられる。
なかでも、耐傷付き性、耐久性に優れる点、浴室用床シート1が軟質塩化ビニル樹脂で形成されている場合に、当該浴室床シート1との接着性に優れる点、FRP、モルタル、ステンレス等の様々な下地上に施工可能で、且つ施工後に剥離し難い点で、1成分型変性シリコーン系シーリング材、2成分型変性シリコーン系シーリング材、及び、2成分型エポキシ系シーリング材が好ましい。
【0053】
上記シーリング材7は、黴の発生によるシーリング材7の汚れの防止が可能となる点で、防黴剤を含有することが好ましい。上記防黴剤としては、上述した接着剤層に含有される防黴剤と同様のものを用いることができる。
【0054】
上記シーリング材7の表面7eの形状は特に限定されないが、図6(a)に示すように、平面であることが好ましい。表面7eの形状が平面であると、シーリング材7上に載った水を傾斜に沿って流す際に表面7e上に滞留しにくくなる上、シーリング材7表面の汚れが付着した場合、ブラシやスポンジ等の掃除用具で容易に落とすことができる。
また、上記表面7eは、平面に限らず、図6(b)に示すように、断面視上方向に盛り上がった形状であってもよいし、図6(c)に示すように、断面視下方向に窪んだ形状であってもよい。シーリング材7を盛り上がった形状や窪んだ形状とする場合、表面7eの凹凸は、水が表面7e上に滞留せず、掃除用具が接触できる程度に留めることが好ましい。
【0055】
(下地)
下地8は、その上に接着剤層6を介して浴室用床シート1が施工される部材である。上記下地8としては、浴室の下地に用いることができれば特に限定されないが、例えば、モルタル下地、コンクリート下地、FRP下地、タイル張り下地、セラミック下地等が挙げられる。
【0056】
以下、浴室床の施工方法について説明する。本実施形態の浴室床の施工方法は、下地8上に、防黴剤を含有する接着剤を塗布して接着剤層6を形成する工程と、上記接着剤層6上に浴室用床シート1を施工する工程と、浴室用床シート1側面及び接着剤層6の側面と、下地表面8aとで形成される入隅部5にシーリング材7を充填する工程とを有する。
【0057】
まず、下地8上に、防黴剤を含有する接着剤を塗布する。上記接着剤を塗布する方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、下地8上に接着剤を流し、櫛刷毛等の接着剤塗布具を用いて下地8上に塗り広げる方法が挙げられる。これにより、下地8上に接着剤層6が形成される。
【0058】
次に、上記接着剤層6上に、上記シーリング材7の幅7L1が所望の範囲になるように予め切断しておいた浴室用床シート1を、接着剤が固化する前に施工する。施工された浴室用床シート1は、経時的に接着剤が固化すると、接着剤層6を介して下地8上に接着される。また、これにより、浴室用床シート1の側面1b及び接着剤層6の側面6aと、下地表面8aとで幅7L1で入隅部5が形成される。
【0059】
次に、このように形成された入隅部5にシーリング材7を充填する。上記シーリング材7を入隅部5に充填する方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、ペースト状のシーリング材7が充填された、先端にノズルを有するカートリッジを用意し、上記カートリッジ先端のノズルからシーリング材7を排出させながら当該ノズルを入隅部に沿って移動させ、シーリング材7を高さ7H1が所望の高さになるように塗布する方法が挙げられる。このとき、シーリング材7の表面7eの形状が平面となり、シーリング材7上面の浴室用床シート1側の角隅部7dが、浴室用床シート1の表面1cに載り上げるように充填することが好ましい
【0060】
シーリング材7を角隅部7bに充填した後に、充填時の形状を保ったまま、経時的に硬化させることにより、シーリングが完了する。
以上説明した施工方法によって浴室床が完成する。
【0061】
なお、本発明の施工方法は、さらに、入隅部5に充填されたシーリング材7を整形する工程を有していてもよい。上記シーリング材7を整形する方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、シーリング材7の表面を、ヘラ等の工具を用いて表面を平滑にする方法が挙げられる。この工程により、シーリング材7の表面7eの形状が整えられ、高さ7H1を容易に所望の高さとすることができる。また、シーリング材7の表面7eの形状を平面とすることや、浴室用床シート1の表面1c上に7L2の幅で角隅部7dを形成することが容易となる上、浴室の美観を向上させることができるため、意匠性に優れる。
【0062】
以上説明した浴室床及びその施工方法によれば、下地8と、上記下地8上に接着剤層6を介して施工された浴室用床シート1とを備え、上記浴室用床シート1側面及び接着剤層6の側面と、下地表面とで形成される入隅部がシーリング材7により被覆されているので、水密性に優れ、浴室用床シート1裏面への水の浸入を防止することが可能となる。上記シーリング材7の幅は、2〜10mmであるので、水密性と浴室床面の意匠性とを両立することができる。
また、上記接着剤層6は、防黴剤を含有するので、黴や臭気の発生を効果的に防止することが可能である。加えて、以上説明した浴室床及びその施工方法においては、水密性が保たれているために、例え水が浸入しても少量なので、黴や臭気の発生を防ぐことが出来る。
【0063】
本発明の浴室床は、防黴剤を含有する接着剤層6を有し、接着剤層6の側面6a及びその上に連設される浴室用床シート1の側面1bと、下地表面8aとで形成される入隅部5が幅2〜10mmのシーリング材により被覆されているので、水密性に優れ、浴室床面の意匠性に優れ、黴や臭気を防止するという、浴室床に必要な3つの効果を全て奏することができる。
また、厚みが薄い樹脂製等の浴室用床シート1を下地8上に施工した場合、上記効果が特に顕著となる。
【0064】
また、浴室壁面9と、接着剤層6の側面6a及びその上に連設される浴室床シート1の側面1bとの隙間に弾性を有するシーリング材7を充填することで、水密性をより向上させることができる。
樹脂製のシートを浴室用床シート1として用いた場合は、湯の熱により浴室用床シート1が平面方向に伸び、温度が下がると縮むことにより、平面方向に寸法変化する場合がある。
このような場合であっても、充填されたシーリング材7が弾性を有すると、寸法変化を吸収し、浴室用床シート1とシーリング材9との間に隙間が発生しないので、当該隙間からの水の侵入を効果的に防止することができる。
特に、シーリング材7として変性シリコーン系シーリング剤を用いた場合は、高い弾性と柔軟性を示すので、上述の効果が顕著である。
【0065】
図7に、本発明の浴室床の第2実施形態を示す。上記の第1実施形態では、浴室壁面9を備え、上記浴室壁面9と、浴室用床シート1との隙間が、シーリング材7により充填される構成を示したが、本実施形態では、シーリング材7の施工の態様が第1実施形態と異なる。
【0066】
図7は、本発明に係る浴室床の第2実施形態の縦断面拡大図である。 本実施形態において、シーリング材7の幅7L1は、図7(a)に示すように、シーリング材7の下面7aの浴室用床シート1側の角隅部7bと、浴室壁面側の角隅部(裾)7cとの距離である。
本実施形態において、幅7L1の範囲は、上述した第1実施形態と同様である。このため、本実施形態においても、本発明の浴室床は、第1実施形態と同様に、浴室の意匠性を向上させ、且つ、水密性に優れ、黴や臭気の発生を防止することができるという効果を奏することができる。
【0067】
本実施形態の浴室床は、図7(a)に示すように、浴室壁面9と、浴室壁面9から離間して施工されたシーリング材7と、下地面8aとによって、排水路10が形成された構成となっている。
上記構成とすることにより、浴室床上に浴室用床シート1を施工するだけで簡易に排水路10を形成して浴室床の乾燥速度を速めることができ、これにより黴や臭気の発生を、より効果的に防止することができる。
【0068】
図7(a)において示される排水路10の幅10Lは、浴室床の縦断面図において、シーリング材7の排水路10側の裾7c(10a)と、浴室壁面9及び下地8により形成される入隅部10bとの距離である。
上記幅10Lは、10〜50mmであることが好ましく、20〜40mmであることがより好ましい。
上記幅10Lが余りに広いと、排水路10内に水滴が形成され、水が流れ難いおそれがある。上記幅10Lが余りに狭いと、排水路10の水の容量が少なくなり排水路としての機能を十分に発揮できず、また、排水路内に付着した汚れを掃除により除去することが困難となるおそれがある。
【0069】
図7(a)において示される、本実施形態のシーリング材7の高さ、すなわち、上記排水路10の高さ10Hは、浴室床の縦断面図において、シーリング材7の頂点7fと、下地8の表面8aとの距離である。
上記高さ10Hは、1〜10mmであることが好ましく、2〜4mmであることがより好ましい。
上記高さ10Hが余りに高いと、浴室床面の周囲に露出しているシーリング材7が目立ち、浴室の美観を損ねて意匠性を低下させるおそれがあり、また、排水路内に付着した汚れを掃除により除去することが困難となるおそれがある。
上記高さ10Hが余りに低いと、水密性を十分に発揮できず、浴室用床シート1と壁面9との間に形成される隙間から水が浸入して黴や臭気が発生するおそれがあり、また、排水路10の水の容量が少なくなりわずかな流量で水が溢れるので、排水路としての機能を十分に発揮できないおそれがある。
【0070】
また、図7(a)に示すように、上記シーリング材7の高さ7H1が、接着層6と浴室用床シート1を合わせた高さよりも高くして、シーリング材7上面の浴室用床シート1側の角隅部7dが浴室用床シート1の表面1cに載り上げている構成とすることが望ましい。
このような構成とすることにより、浴室用床シート1の端部が上方向への捲れることを防ぎ、下地8と浴室用床シート1との間への水の浸入をより効果的に防止するという効果を発揮することができる。
さらに、上記高さ7H1と浴室用床シート1の表面1cの高さとの差7H2は、本実施形態においては、1〜4mmであることが好ましく、2〜3mmであることがより好ましい。
上記高さの差7H2が余りに大きいと、浴室床面の周囲に施工されたシーリング材7が目立ち、浴室の美観を損ねて意匠性を低下させるおそれがあり、また、浴室用床シート1の周囲をシーリング材7で土手の様に囲い込むことにより、浴室用床シート1上に水を溜めてしまい、水の乾燥を遅らせ、黴や臭気が発生しやすくなるおそれがある。
上記高さの差7H2が余りに小さいと、浴室用床シート1の表面1cに載り上げている角隅部7dの厚みが薄くなり、浴室用床シート1の端部が上方向への捲れることを防止できなくなるおそれがある。
【0071】
図7(a)に示すように、本実施形態の浴室床のシーリング材7の表面7eは、頂点7fから角隅部(裾)7cに向かって傾斜するように設けることが望ましい。表面7eに傾斜を設けることによって、浴室用床シート1上の水を、表面1cから、排水路10に向かって、傾斜に沿って効率よく流し込むことができる。
【0072】
また、上記表面7eは、図7(a)に示すように、頂点7fから角隅部(裾)7cにかけて、断面視略平面形状であってもよいし、図7(b)に示すように、断面視下方向に窪んだ形状であってもよいし、図7(c)に示すように、断面視上方向に盛り上がった形状であってもよい。
なかでも、断面視略平面形状であることが好ましい。
表面7eが断面視下方向に窪んだ形状であると、シーリング材7の強度が弱くなり、破損し易くなるおそれがあり、また、角隅部(裾)7c付近が薄くなるため、上方向に捲れ易くなるためにシーリング材7が剥離し、下地表面8aが透けて視認されるために意匠性を損ねるおそれがある。
一方、表面7eが断面視上方向に盛り上がった形状であると、シーリング材7が目立ち、美観を損ねるおそれがある。
【0073】
ここで、図8は、本実施形態の浴室床を浴室床シート1の表面に対して垂線方向から見た平面図である。図8においては、浴室の一部を浴槽11が占め、残りの部分に浴室床用シート1が敷設され、浴室床用シート1の周囲にシーリング材7が施工されている。また、シーリング材7は、浴室壁面9から離間して施工されており、排水路10を形成している。浴室床シート1上の水は、排水路10に流れ込み、浴室に設けられた傾斜に沿って排水路10を流れ、排水溝12から排水される。
図8に示すように、本実施形態の浴室床に用いられる浴室床シート1の平面形状は、四隅の角部1dが角取りされた形状であることが好ましい。
角部1dが角取りされた形状であると、浴室用床シート1の角部1dが入浴者の足や掃除用ブラシに接触することにより当該角部が上方向に捲られ難くなり、浴室用床シート1の剥れをさらに効果的に防止することができる。
【0074】
本実施形態のその他の構成は、第1実施形態とほぼ同じであり、本実施形態が第1実施形態と共通する要素には共通符号を付して説明を割愛する。
【0075】
なお、本発明は上記の実施形態に限らず、種々の変更・変形が可能である。
【0076】
例えば、上記の第2実施形態では、浴室用床シート1が一枚で下地8の表面8aの殆どを被覆している例を示したが、これに限らず、図9に示すように、浴室用床シート1が下地8の表面8a上に一定の間隔を空けて複数枚施工されている、いわゆる一部敷きの構成としてもよい。
【0077】
かかる構成によると、複数枚施工された浴室用シート1間に排水路13が形成されることにより排水速度を速め、浴室床の乾燥速度を更に速めることができ、これにより黴や臭気の発生を、より効果的に防止することができる。
【実施例】
【0078】
以下、本発明の実施例を示す。ただし、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0079】
(実施例1)
モルタルの下地上に接着剤として、エポキシ系接着剤(東リ株式会社製、商品名「バスナセメントEPO」(登録商標))を塗布した。この接着剤は、防黴剤としてベンゾイミダゾール系防黴剤を含有し、その含有量は、接着剤100重量%に対して0.1重量%であった。
【0080】
接着剤を塗布した下地上に、塩化ビニル樹脂製の浴室用床シート(東リ株式会社製、商品名「バスナフローレ」(登録商標))を敷設し、乾燥させることにより接着剤層を形成した。
【0081】
浴室用床シート側面及び接着剤層の側面と、下地表面とで形成される入隅部に、変性シリコーン系シーリング材(東リ株式会社製、商品名「バスナシールSS」)を充填し、ヘラにより表面を平面状に整形した後乾燥固化させた。浴室壁面と、浴室用床シートとの隙間は、シーリング材により充填された。シーリング材の幅は、5mmであった。
【0082】
このようにして施工した実施例1の浴室床は、水密性に優れ、且つ、防黴性能に優れていたので、黴や臭気の発生が見られなかった。
また、シーリング材の幅が特定されているので、浴室の美観を損ねることがなく、意匠性に優れていた。
【0083】
(実施例2)
防黴剤の含有量を、接着剤100重量%に対して0.2重量%としたこと以外は実施例1と同様にして浴室床を施工した。
【0084】
このようにして施工した実施例2の浴室床は、水密性に優れ、且つ、防黴性能に優れていたので、黴や臭気の発生が見られなかった。
また、シーリング材の幅が特定されているので、浴室の美観を損ねることがなく、意匠性に優れていた。
【0085】
(実施例3)
シーリング材を浴室壁面から離間して施工し、浴室用床シートの平面形状を、角部が角取りされた形状である構成としたこと以外は実施例1と同様にして浴室床を施工した。
【0086】
このようにして施工した実施例3の浴室床は、水密性に優れ、且つ、防黴性能に優れていた。
さらに、浴室壁面と、シーリング材と、下地面とで排水路が簡易に形成され、浴室床の乾燥速度を速めることができたので、黴や臭気の発生をより効果的に防止することができたため、黴や臭気の発生が見られなかった。
また、シーリング材の幅が特定されているので、浴室の美観を損ねることがなく、意匠性に優れていた。
【0087】
(実施例4)
防黴剤の含有量を、接着剤100重量%に対して0.2重量%としたこと以外は実施例3と同様にして浴室床を施工した。
【0088】
このようにして施工した実施例4の浴室床は、水密性に優れ、且つ、防黴性能に優れていた。
さらに、浴室壁面と、シーリング材と、下地面とで排水路が簡易に形成され、浴室床の乾燥速度を速めることができたので、黴や臭気の発生をより効果的に防止することができたため、黴や臭気の発生が見られなかった。
また、シーリング材の幅が特定されているので、浴室の美観を損ねることがなく、意匠性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の浴室床は、一般住宅、マンション、老人保健施設、介護福祉施設、病院などの浴室に施工される。
【符号の説明】
【0090】
1…浴室用床シート、2…大突部、2a…大突部の表面(上面)、2U…ユニット、31及び32…小突起、4…溝部、5…入隅部、6…接着剤層、7…シーリング材、8…下地、9…浴室壁面、10…排水溝、11…浴槽、12…排水口、13…排水溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9