特許第5977365号(P5977365)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977365
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】ブリキ表面の不動態化方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 11/34 20060101AFI20160817BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   C25D11/34 B
   C23C28/00 C
【請求項の数】16
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-551567(P2014-551567)
(86)(22)【出願日】2012年12月31日
(65)【公表番号】特表2015-503679(P2015-503679A)
(43)【公表日】2015年2月2日
(86)【国際出願番号】EP2012077108
(87)【国際公開番号】WO2013104530
(87)【国際公開日】20130718
【審査請求日】2014年8月29日
(31)【優先権主張番号】102012000414.1
(32)【優先日】2012年1月12日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513213841
【氏名又は名称】ティッセンクルップ ラッセルシュタイン ゲー エム ベー ハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サウワー,ライナー
(72)【発明者】
【氏名】マルマン,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】オーバーホッファー,ヘルムート
(72)【発明者】
【氏名】カスドルフ,タジャーナ
【審査官】 阪野 誠司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−084934(JP,A)
【文献】 特開平08−176885(JP,A)
【文献】 特開平06−228790(JP,A)
【文献】 特開昭61−104099(JP,A)
【文献】 特開2009−249691(JP,A)
【文献】 特開2010−013728(JP,A)
【文献】 特開2011−195941(JP,A)
【文献】 特開2009−287080(JP,A)
【文献】 特開2009−256726(JP,A)
【文献】 特開昭52−092837(JP,A)
【文献】 特公昭50−008691(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 28/00
C25D 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼帯の表面を、コーティングシステムを用いて不動態化する方法であって、
前記鋼帯はコーティングシステムを少なくとも200m/分の帯速度で移動し、
前記鋼帯のスズ被覆後に、酸化物層を形成するためにその表面はまず陽極酸化処理され、前記陽極酸化処理は、0.1秒から1.0秒の陽極酸化時間内で実施され、前記酸化物層は実質的に四価酸化スズ(SnO)で成り、
続いて、チタンを含有するクロム非含有後処理剤の溶液が前記酸化物層に適用され、
前記チタン含有後処理剤の絞り取り、および乾燥処理後、0.5mg/mから2mg/mの質量範囲のチタン質量の前記後処理剤の薄膜が、スズ被覆された前記鋼帯の表面上に存在する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記陽極酸化処理は、塩基性電解質により、電流密度が1.0A/dmから3A/dmにて、前記スズ被膜された鋼帯を電解液槽に通すことで実行される、
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記塩基性電解質は、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩、塩基性アルカリ金属リン酸塩、塩基性有機アルカリ金属塩および塩基性有機アルカリ土類金属塩から選択される、
ことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記電解質は炭酸ナトリウムを含んでいる、
ことを特徴とする請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
前記電解液槽は少なくとも0.2C/dmの電荷密度が達成されるように調整されている
ことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記後処理剤は、(1)アクリル酸塩類の共重合体、(2)ポリエーテル側鎖を有したポリメチルシロキサン類、(3)酸ポリエーテル類、(4)複素環基を有したポリマー類、および(5)二価から四価陽イオンを有した複合金属フッ化物陰イオンとポリマー物質類とを含んだ酸性で水性の液体組成物から選択される、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記後処理剤はジルコニウムを含有している、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記陽極酸化処理後に、前記後処理剤の水溶液または前記後処理剤の即使用可能な溶液が、前記後処理剤を含んだ液槽を通過させることにより塗布される、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記後処理剤は、コーティングされた前記鋼帯の表面から離れて配置され、前記後処理剤を前記鋼帯のコーティングされた表面に噴出する少なくとも1つの穴またはノズルを有した少なくとも1本の管体を介して噴出される、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記後処理剤の溶液は前記鋼帯の両面に塗布される、
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記後処理剤は液体ジェット流の形態でスズ被覆された前記鋼帯の表面に噴出され、前記ジェット流は前記表面の垂線に対して+45°から−45°の角度範囲で前記表面に当てられる、
ことを特徴とする請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
前記鋼帯のスズ被覆および酸化処理された表面に前記後処理剤が塗布された後に、前記後処理剤の溶液は絞りローラによって絞り取られる、
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
スズ被覆された前記鋼帯は前記後処理剤を絞り取った後に乾燥される、
ことを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記後処理剤の絞り取り、および乾燥処理後に、2mg/mから30mg/mの質量範囲の前記後処理剤の薄膜がスズ被覆された前記鋼帯上に存在する、
ことを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記鋼帯のスズ被覆された表面の前記陽極酸化処理は、0.2秒から0.7秒の陽極酸化時間内で実施される、
ことを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
薄型または超薄型鋼板の支持層と、その上に堆積されたスズ層と、チタンを含有するクロム非含有後処理剤の表面層と、を有したスズ被覆された鋼帯または鋼板であって、
前記スズ層と前記後処理剤の前記表面層との間に酸化物層が形成され、前記酸化物層は実質的に四価の酸化スズ(SnO)から成
前記表面層のチタン質量は、0.5mg/mから2mg/mの質量範囲である、
ことを特徴とする鋼帯または鋼板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スズ被覆された鋼帯の陽極(アノード)酸化およびクロム非含有後処理剤によるコーティングシステムを通って、ある帯速度で移動するスズ被覆鋼帯の表面の不動態化(パッシベーション)方法に関する。さらに本発明は、通常はスズ被覆鋼帯の製造においてクロム非含有後処理剤として分散または湿潤の改善のために複合的に結合した遷移金属あるいは有機添加剤と共に使用される薬剤の利用に関する。本発明の別な目的は、薄型または超薄型鋼板で製造される支持層、そこに被覆されるスズ層、およびクロム非含有後処理剤の表面層を備えたスズ被覆鋼帯または鋼板の提供である。
【背景技術】
【0002】
ブリキはその多用途性で経済的であり、環境に優しい材料であり、包装産業において幅広く活用されている。ブリキは0.5mm程度までの厚みの冷間圧延鋼板であり、その鋼板の腐食を防止するために薄いスズ層によりコーティングされている。スズ層は、例えば鋼板上に電気メッキにより堆積される。
【0003】
スズ被覆された鋼板の製造、特に電解式の鋼帯スズ被覆(スズメッキ)システムでは、スズ被覆された鋼板を酸化に対して抵抗性とし、後続の加工プロセス、例えば、食品のためのブリキ包装物の製造において、スズ被覆された鋼板がさらに容易に加工できるよう摩擦係数を低下させるためにコーティングされた鋼板が、化学的または電気化学的に不動態化され、続いて潤滑剤でコーティングされる。大抵の場合にはCr6+を含んだ溶液がこの不動態化に使用される。金属製品の処理におけるクロム含有剤の使用は環境的に有害であるため法律によって規制されるべきであり、特に食品産業での使用が意図される金属製品の場合には当然に規制されるべきである。
【0004】
この理由で、従来にはCr6+を含まない不動態溶液が提案されていた。例えば、DE4205819Aは、金属表面上の耐食層の製造のために水を含まない組成物を開示する。これはシラン化合物と、四価チタンまたは四価ジルコニウムの化合物とをベースとする。
【0005】
EP1002143Aは、鋼帯コーティングシステムでの亜鉛メッキおよび亜鉛合金メッキされた鋼材表面と、アルミおよびアルミ合金のアルカリ不動態化方法を開示する。水溶液でのこの不動態化は、後続のエナメルコーティングのためのベースとして利用できる耐食層を提供する。
【0006】
大抵の場合、これら文献は、自動車産業で使用する溶融亜鉛メッキ薄板材料および他の溶融亜鉛メッキ鋼材部分のアルミ含有表面および亜鉛含有表面の不動態化に関する。一方、十分に満足できる結果をもたらすようなブリキのクロム酸塩非含有不動態化に実際に使用できる方法は未だ提供されていない。
【0007】
EP1270764Aは、鋼板表面上の合金層と、合金層が3.0%以上の表面積で露出するように合金層に堆積されているスズ層と、PとSiを含み、0.5から100mg/mまたは250mg/mのフィルム質量が露出した、合金層とスズ層の上に堆積されたフィルムと、を含んだ表面処理されたブリキを開示する。
【0008】
ブリキのためのクロム非含有後処理剤はUS2009/0155621A1と、そこで言及されている文献内で解説されている。
【0009】
食品容器(ブリキ缶)を製造するためにコーティングされた鋼板が使用されるときには、自動車産業での使用が意図される物質に関する条件と比べて異なる耐酸化性に関する条件が発生するため、コーティングされた金属表面の不動態化の条件が必要となる。特に、この場合の不動態化は、コーティングされた鋼板またはそれで製造された食品容器の保管中、保護用エナメルでコーティングされるまで、さらには保存食品が消費されるまで、酸化スズ層の非常に強力な成長を防止しなければならない。さらに不動態化はコーティングされた金属面の変色を防止しなければならない。例えば、このような変色は、硫黄含有物質を収容するブリキ缶が消毒されるとき発生する。なぜなら、十分に不動態化されていなければ、硫黄はコーティングされた鋼材表面のスズと化学反応するからである。包装容器の表面の艶消し変色(マーブリング)または金色変色を見て、消費者は中身が着色されていると考えるかもしれない。エナメル接着に関する問題も硫黄との化学反応のために発生するかも知れないが、これら諸問題はコーティングされた鋼板の不動態化で回避できる。さらに不動態化は、食品で充填された後に、食品に含まれる酸類、例えばメルカプトアミノカルボン酸の陰イオン、例えばシステインやメチオニンに対してエナメル金属容器が抵抗性を有することを保証しなければならない。もし不動態化が十分でなければ、缶容器内のこのような酸の陰イオンは容器の内側コーティングを剥離させる可能性がある。
【0010】
鋼帯のスズ被覆システムでのブリキの伝統的な製造において、スズ被覆後に冷間圧延された薄型または超薄型鋼板は、まずスズの融点以上の温度への加熱によって溶融処理され、続いて水槽内で急冷処理される。その後に、スズ被覆鋼板をクロム酸塩の溶液で処理し、それを最終的に脱塩水(純水)で洗浄し、加熱乾燥させることによる不動態化処理が続く。その後、セバシン酸ジオクチル(DOS)またはクエン酸アセチルトリブチル(ATBC)で静電潤滑処理する。表面に吸着されるクロム酸塩は、スズ表面での=Sn=O基および=Sn−OH基との化学反応によってCr3+に還元される。また、ときに、電気化学的陰極(カソード)不動態化の場合にはクロム金属に還元される。Cr3+はCr3+水酸化物として析出する。ブリキ表面の洗浄と乾燥後には、不動態化層はCr6+イオンを含まなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】DE4205819A
【特許文献2】EP1002143A
【特許文献3】EP1270764A
【特許文献4】US2009/0155621A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
これに基づき、本発明は、スズコーティングで被覆された鋼帯の表面を、クロムを使用せずに不動態化するための方法を利用可能にすることを課題としている。これら鋼帯はコーティングシステムを通って帯速度で移動する。この方法は、高速帯速度であっても鋼帯表面の効率的な不動態化を可能にするものである。さらに、改善されたエナメルコーティングの接着性と、食品に含まれる酸類、特に硫黄を含むアミノ酸類に対する抵抗性とを同時に達成させるものでなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これら課題は、請求項1の特徴を備えた方法および請求項17の特徴を備えたスズ被覆された鋼板または鋼帯により解決される。好適な実施態様は従属請求項において記載されている。
【0014】
本発明の方法においては、スズ被覆鋼帯の溶融および急冷後でクロム非含有後処理剤での処理前に、スズ表面の陽極酸化が実行される。本発明は、クロム非含有後処理剤での後処理による鋼帯のスズ被覆表面の不動態化自体は、表面を完全および永久的に腐食および変色(マーブリング)から保護するのに不十分であるという知識をさらに発展させたものである。特にクロム非含有後処理剤はスズ被覆鋼帯を硫黄との化学反応から完全に保護しないことが確認されている。驚くべきことに、クロム非含有後処理剤による後処理前にまず陽極酸化によってスズ被覆鋼帯表面が脱活性化されれば、スズ被覆鋼帯表面の腐食および硫黄との化学反応に対する抵抗性は相当程度に増強されることが確認された。ナノメートル範囲の層厚の酸化物層が陽極酸化によってスズ被覆鋼帯表面に創出される。この酸化物層は実質的に四価の酸化スズ(SnO)の層であり、これは二価の酸化スズ(SnO)よりも相当に不活性である。クロム非含有後処理剤の薄い表面層がこの酸化物層に堆積されたら、スズ被覆鋼帯表面は腐食および硫黄との化学反応から完全および効果的に保護されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の方法は実施例を利用して以下でさらに詳細に説明されている。
【0016】
ステップ1
本発明の方法の第1ステップでは、冷間圧延された鋼帯(薄鋼板または超薄鋼板)の電気化学スズ被覆が鋼帯スズメッキシステムで実行される。鋼帯は電解槽を通常は200m/分から750m/分の範囲の帯速度で移動し、スズで電解式にコーティングされる。続いて鋼帯は、スズコーティングをその上に溶融するため、導電的または誘導的(または導電的及び誘導的にも)にスズの融点(232℃)以上の温度にまで加熱される。次に移動した鋼帯は水槽内で急冷される。スズ被覆された鋼帯は、スズ表面の陽極酸化による方法の第2ステップにこの新鮮表面を備えて到達する。
【0017】
ステップ2
本発明の方法の第2ステップにおいて、陽極酸化はソーダ溶液内、すなわち炭酸ナトリウム溶液内で実行される。スズ被覆鋼板は帯速度で移動し、ソーダ電解槽内の陽極として接続される。ソーダ水溶液は電解質として作用する。ソーダ溶液内の炭酸ナトリウム濃度は、好適には1質量%から10質量%、特には2質量%から8質量%、好適には3質量%から7質量%、さらに好適には4質量%から6質量%、特に好適には約5質量%である。
【0018】
電解による陽極酸化のための装置は、好適には垂直タンクを有する電解液浸漬槽を含む。垂直タンクの底部近辺には、スズ被覆鋼帯を逆進させる逆進ローラが提供されている。垂直タンクは電解液で満たされる。電位がスズ被覆鋼帯と、垂直タンク内の対電極(例えば鋼陰極)との間に印加される。電荷Qは、1A/dmから3A/dmの電流密度で、好適には0.2Cと2Cの間、さらに好適には0.2Cと0.6Cの間である。
【0019】
陽極酸化時間は電気化学酸化槽(電解液槽)内でのスズ被覆鋼帯の滞留時間に対応する。これは電解液槽の長さまたはその充填量、陽極長および帯速度で決定され、典型的な帯速度では、好適には0.1秒から1秒の範囲であり、特に好適には0.1秒から0.7秒の範囲であり、さらに好適には0.15秒から0.5秒の範囲であり、理想的には約0.2秒である。陽極酸化時間は、帯速度に応じて、本発明に適した値に充填量を介して設定できる。
【0020】
電解液槽内の鋼帯と対電極との間の間隔は被覆システムに応じて設定できる。例えば、3cmから15cmの範囲、好適には5cmから10cmの範囲、特に好適には約10cmとすることができる。
【0021】
電気化学酸化槽の温度は、好適には30℃から60℃、さらに好適には35℃から50℃、特に好適には約45℃である。
【0022】
電流密度は1.0A/dmから3A/dm、好適には1.3A/dmから2.8A/dm、さらに好適には2A/dmから2.6A/dm、特に好適には約2.4A/dmに設定される。この場合の全電荷は0.2Cと0.6Cとの間、好適には、例えば0.48Cである。対応する電荷密度(処理対象の鋼帯の面積に対するもの)は0.2C/dmから0.6C/dmの範囲である。
【0023】
ステップ3
方法の第3ステップでは、蒸留されているか完全に脱塩された水によるスズ被覆され酸化された鋼帯の完全な洗浄処理と、その後の乾燥処理が実行される。この乾燥処理は、例えば熱風で実施できる。しかし、吸水性溶剤での乾燥とその後の冷気噴出器または好適には熱風噴出器による乾燥、IRラジエタ、誘導加熱または抵抗加熱等の対流空気を伴わない乾燥システムによる乾燥、あるいは冷気噴出器または好適には熱風噴出器のみによる乾燥であってもこの目的に適している。
【0024】
ステップ4
方法の第4ステップでは、スズ被覆され酸化された鋼帯の後処理剤でのコーティングが実行される。
【0025】
このため、後処理剤の溶液、好適には水溶液、有機溶剤液、または後処理剤の調剤の即利用性形態物が、帯速度で移動する鋼帯に噴霧される。後処理剤の1.5%から10%の水溶液が好適であることが証明されている。好適には、その後に後処理剤の溶液は絞りローラで絞り取られ、乾燥される。後処理剤の薄膜は絞り処理および乾燥処理後にも被覆金属帯の表面に残留する。この薄膜の質量は一般的に2mg/mから30mg/mである。
【0026】
後処理剤は、例えば、被覆金属帯表面から所定間隔あけて、鋼帯移動方向を横断するように配置され、後処理剤を被覆鋼帯表面に到達させる穴またはノズルを備えた管状体を介して噴霧される。後処理剤を金属帯の両面に吹き付け、または噴霧するために、好適には、そのような穴を備えた少なくとも1つの管状体が鋼帯の各面に配置される。好適には、管状体と、スズ被覆され陽極的に酸化された鋼帯との間の距離は調節され、鋼帯の移動方向に対する穴またはノズルの位置は、噴霧液体処理剤が鋼帯の表面に垂直にあたり、または鋼帯の表面の略垂直線に対して少なくとも±45°の範囲、好適には±15°の範囲内であたるように選択される。
【0027】
後処理剤をスズ被覆鋼帯の表面に噴霧する代用手段として、浸漬プロセスの適用も可能である。
【0028】
噴霧した処理剤を絞り取るため、好適には鋼帯移動方向で管状体の後に2対の絞りローラが配置される。鋼帯移動方向の管状体からの第1対の絞りローラの距離は、例えば、20cmから100cmである。絞り取り後、後処理溶液の数個の分子の層だけがスズ被覆鋼帯表面に残る。溶液の単分子層のみが残ることもあり得る。
【0029】
絞りローラによって絞り取られた溶液は供給タンクに収集され、そこから、オプションで余分な後処理溶液がポンプによって調製ステップに送られ、再利用される。
【0030】
以下で定義される薬剤が後処理剤として使用できる。Ti/Zr含有後処理剤の利用はその代表として説明されている。Henkel KGaAから入手できる物質(例えば、登録商品名Granodine1456)がTi/Zr含有後処理剤として使用される。それは、0.5mgTi/mから2mgTi/m、好適には0.8mgTi/mから1.5mgTi/m、特に好適には約1mgTi/mの乾燥層質量の溶液として、スズ被覆され、酸化された鋼帯表面に適用される。
【0031】
ステップ5
第5ステップとして、乾燥ステップが再び実施される。その乾燥温度(鋼帯温度)は30℃から95℃の範囲であり、好適には35℃から60℃の範囲である。乾燥時間は帯速度に応じて設定される。ステップ3で示される乾燥装置がこの場合にも利用できる。
【0032】
説明されている方法は次のように構成された層構造を備えたスズ被覆鋼板を提供する。支持層として底部には、冷間圧延された、特に0.5mmから3mm(薄型)または0.5mm未満(超薄型)までの薄型または超薄型鋼板が存在する。例えば電解式に堆積されたスズ層が鋼板上に次層として形成される。一般的にスズ量は0.1g/mから11.2g/mであるが、個別の場合では0.1g/m未満または11.2g/mより大きくてもよい。支持材料およびスズの如何なる合金層もここでは特別中間層として考慮外とされる。スズ層の上には、数nmの厚みの陽極酸化により製造された酸化層が形成される。これは実質的に四価の酸化スズで成る。酸化スズ層の厚みは約2nmから10nmの間で可変である。後処理およびその後の乾燥処理によって薄い酸化物層上に堆積された後処理剤層が、表面層として酸化物層上に形成される。乾燥状態の後処理剤の質量(乾燥膜質量)は、好適には2mg/mから30mg/mである。
【0033】
本発明に従って製造され、後処理された鋼板は複数のシートパネルに分割されるか、コイル状に巻き取られる。例えばスズ缶メーカ等のエンドユーザは、一般的に鋼板には、例えば缶保護用エナメルまたはエポキシ樹脂エナメルであるエナメル層が提供される。従来のブリキ材料と比べて、エナメル加工された鋼板は、例えばスズ缶である成型物となるように深絞り成型によって加工される。本発明の処理に従った処理で製造された層構造は、例えば、メルカプト基含有アミノ酸類の存在によって、エナメル接着性の改善およびエナメル剥落の減少に貢献する。
【0034】
陽極的に酸化されたブリキの表面の後処理のために本発明の方法で使用するのに適した物質は、スズ面に接着できるものであり、同時にその後のスズ面のエナメル加工において利用されるエナメル層の湿潤化を許容する特性を有していなければならない。システイン試験(7.22g/LのNaHPO・2HOと1g/Lのシステインとを含む3.65g/LのKHPOの溶液内での121℃、90分間のエナメル加工されたブリキの無菌処理)で崩壊しないように、エナメル膜の乾燥後に、陽極的に酸化されたスズ面の官能基とエナメル面の官能基との間の接着仲介分子による接着は十分に強力でなければならない。さらに、後処理に使用される物質はクロム非含有であり、有機溶媒を追加せずに使用可能でなければならず、あるいは蒸留水中で溶解性でなければならない。なぜなら、溶解補助物の使用は排気中に高濃度の溶剤を生産し、溶剤の除去には高価な純化システムを必要とするからである。
【0035】
実際には、好適にはエナメル内での顔料の分散を向上させるか、例えばエナメルの湿潤化及び/又は金属面に対する接着性を改善するための添加物として使用される物質は、後処理剤として特に適した物質であることが証明されている。このような処理剤はアクリル酸塩の共重合体類、ポリエーテル側鎖を有したポリメチルシロキサン類、酸ポリエーテル類、および複素環基を有したポリマー類から選択される。しかし、例えば自動車産業において、板状金属の腐食防止剤として使用される物質、例えばボンデライト剤またはパーカライジング剤も有利に使用できる。このような物質は、二価から四価の陽イオンを含んだ複合金属フッ化物陰イオンを含む酸性で水性の液状組成物類およびポリマー物質から選択される。
【0036】
アクリル酸塩の共重合体類以外に、以下の物質が本発明の方法のための後処理剤として特に適していることが判明している。
【0037】
a)DIN(ドイツ工業規格)53491で屈折率が1.456から1.466であり、20℃においてDIN51757で密度が1.09から1.13g/cmである有機的に改質されたポリシロキサン(“EFKA3580”として商業的に入手可能);
【0038】
b1)DIN51757で密度が1.20から1.30g/cmであり、DIN53402で酸値が270から310mgKOH/gの酸ポリエーテルの化学組成を有したポリマー[EFKA8512];
【0039】
b2)ジメチルエタノールアミンで中和されているフルオロカーボン残基で改質されたポリアクリル酸塩であって、59質量%から61質量%の活性物質を含んだ水溶液は20℃にてDIN51757で1.04から1.06g/cmの濃度を有し、DIN53491で屈折率は1.420から1.440であり、DIN53402で酸値が50から70mgKOH/gであるもの[EFKA3570];
【0040】
b3)水中で38質量%から42質量%の活性物質の含有量において、DIN51757で密度が1.02から1.06g/cmであり、DIN16945でアミン数が22から28mgKOH/gである改質ポリアクリル酸塩[EFKA4560];
【0041】
c)以下を含んだポリマー:
i)下記の化学構造を有した0から80mol%の1以上のポリマーであって、
【化1】

、R、RおよびRは同じかまたは異なっており、Hまたはアルキルである;
ii)下記の化学構造を有した0から70mol%の1以上のモノマーであって、
【化2】

、RおよびRは同じかまたは異なっており、Hまたはアルキルであり、Rはアルキルまたは置換アルキルであり、アルキル基Rは−O−基によって分断されていてもよい;
iii)少なくとも1つの基本環に窒素原子を有した複素環基を含んでいるか、重合後に内部にそのような複素環基が存在する5から50mol%の1以上のモノマー;
iv)架橋または結合のために反応性である0%から10mol%の1以上のモノマー;および
v)上記の(i)から(iv)に入らない0%から20mol%の1以上のモノマーであって、(i)のモノマーと、アクリル酸塩基を含んだモノマーとの量は少なくとも20mol%であるもの、およびその有機塩;または
【0042】
d)水とオプションの溶剤以外に以下の成分を含んだ酸性で水性の液状組成物:
(A)中心原子としてチタン、ジルコニウム、ハフニウム、ケイ素、アルミ、及び/又はホウ素;およびオプションのイオン化可能な水素原子及び/又はオプションの1以上の酸素原子を有するフルオロメタレート陰イオン;
(B)1以上の二価から四価、特に二価及び/又は四価のコバルト、マグネシウム、マンガン、亜鉛、ニッケル、スズ、銅、ジルコニウム、鉄及び/又はストロンチウムの陽イオン;
(C)リン含有無機オキシアニオン及び/又は亜リン酸陰イオン;および
(D)1以上の水溶性及び/又は水中分散性有機ポリマー及び/又はポリマー形成樹脂。
【0043】
好適には、物質(d)は、水に加えて以下の成分を含んだ酸性で水性の液状組成物である:
(A)それぞれ(i)少なくとも4個のフッ素原子、(ii)チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ケイ素、アルミ、およびホウ素から選択される金属元素の少なくとも1個の原子、並びに、オプションで、(iii)イオン化が可能な水素原子、及び/又は、オプションで、(iv)1以上の酸素原子で成るフルオロメタレート陰イオン類;
(B)成分(A)内の陽イオン総数と、陰イオン数の比が少なくとも1:5であり、3:1を超えない範囲である、コバルト、マグネシウム、マンガン、亜鉛、ニッケル、スズ、銅、ジルコニウム、鉄及び/又はストロンチウムの1以上の二価から四価、特に二価及び/又は四価の陽イオン;
(C)リン含有無機オキシアニオン及び/又は亜リン酸塩の陰イオン;および、
(D)1以上の水溶性及び/又は水中分散性有機ポリマー及び/又はポリマー形成樹脂であって、それら成分の量は、組成物内の有機ポリマーおよびポリマー形成樹脂の固形物量と、成分(A)の固形物量の比が1:2から3:1の範囲に存在するもの。
【0044】
特に、物質(d)は、金属面の処理のために実質的に六価クロム及び/又はフェリシアン化物を含まない酸性で水性の液状組成物であり、1.0%を超えず、好適には0.0002%を超えない六価クロムとフェリシアン化物を含み、水以外に以下の成分を含む:
(A)少なくとも0.010mol/kgのフルオロメタレート陰イオンであって、これら陰イオンはそれぞれ、(i)少なくとも4個のフッ素原子、(ii)チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ケイ素、アルミ、およびホウ素から選択される金属元素の少なくとも1個の原子、及び、オプションで、(iii)イオン化可能水素原子、及び/又はオプションで、(iv)1以上の酸素原子で成るもの;
(B)成分(A)内の陽イオン総数と陰イオン数の比が少なくとも1:5であり、3:1を超えない範囲である、コバルト、マグネシウム、マンガン、亜鉛、ニッケル、スズ、銅、ジルコニウム、鉄及び/又はストロンチウムの二価から四価、特に1以上の二価及び/又は四価の陽イオン;
(C)少なくとも0.015mol P/kg、好適には少なくとも0.030mol P/kgのリン含有無機オキシアニオン及び/又は亜リン酸塩の陰イオン、および、
(D)少なくとも0.10%、好適には少なくとも0.20%の水溶性(またはさらに水溶性)及び/又は水中分散性(またはさらに分散性)である有機ポリマー及び/又はポリマー形成樹脂であり、この成分の量は、組成物内の有機ポリマーおよびポリマー形成樹脂の固形物量と成分(A)の固形物量の比が1:2から3:1の範囲となるように選択されたもの。
【0045】
好適には、成分(d)は二水素ヘキサフルオロチタネート(2−)と有機ポリマーを含む。特に好適なものは成分Granodine1456である。
【0046】
ポリマー(D)は、共重合体の少なくとも一部が、欧州特許公開番号EP0319017A2の請求項1および従属請求項でさらに正確に特定された下記の化学構造を有している共重合材料を含んだポリマー化合物でよい。
【化3】
【0047】
例えばこのポリマーは、次のように調製できる。
【0048】
プラスチック製のフラスコが400mLのPropasol P(米国コネチカット州ダンベリーのUnion Carbide Corp.(ユニオンカーバイド社)から入手できるプロポキシ化プロパン溶剤)および160gの樹脂M(Maruzen Oil(丸善石油)から入手できるポリビニルフェノール、MW=5000)で満たされる。400mLの脱イオン水中の263.3gのN−メチルグルカミンのスラリーが加えられ、その混合物は撹拌しながら60℃から65℃に熱せられる。続いて、100.2mLの37%ホルムアルデヒドが1時間から1時間半かけて加えられる。その後、混合物は90℃に加熱され、6時間保持される。冷却後に、混合物は脱イオン水で9.6質量%の固形物に希釈される。調製された溶液のpHは9.1であり、溶液はN−メチルグルカミン誘導体を含む。
【0049】
また、欧州特許公開番号EP0319016A2の請求項1と従属請求項によるポリフェノール誘導体も適している。
【化4】
【0050】
このようなポリマーは、例えば以下のように調製できる。
【0051】
平均分子量が約2400であり、R、R13、R14とWがHであり、Rが−CHであり、Yがアルキルアミン残基あるいはアルキルアンモニウム残基である上記化学構造(EP0319016A2の化学式Iおよびその定義を参照)の80gの樹脂が高速ミキサーを使用して1リットルのプラスチックフラスコ内で160mLのPropasol P(米国コネチカット州ダンベリーのUnion Carbide Corp.(ユニオンカーバイド社)から入手できるプロポキオシル化プロパノール溶剤)内でゆっくり溶解される。プラスチックフラスコにはパドル撹拌器、環流濃縮器、および窒素フラッシュ装置が装着されている。続いて、53.5gの2−(メチルアミノ)エタノールと160mLの脱イオン水が樹脂溶液に加えられる。注意深い60℃への加熱が開始される。60℃に到達したら、50mLの37%ホルムアルデヒドの水中への追加が開始され、この追加は1時間続けられる。別の25mLのPropasol Pが加えられ、反応混合物は60℃で1.5時間保持される。温度は80℃に上昇され、その温度で1.75時間保持される。反応混合物は室温にまで冷却され、21.8gの75%HPOと、続いて960mLの脱イオン水が加えられる。オプションで、追加の中和ステップを必要としないアミン酸化物が、0.75molの30%H(85g)を反応混合物に加えることで形成される。反応混合物は一晩撹拌され、その後に960mLの脱イオン水で希釈される。このオプションステップで水溶性アミン酸化物の樹脂が得られ、水中安定性のための中和処理は必要としない。
【0052】
複合的に結合した遷移金属を含んだ好適後処理剤は、例えば、Granodineシリーズの製品であり、これらは、複合的結合した遷移金属(Ti、Mn、Zr)を含有する水溶液であり、オプションでシランを含む。チタン及び/又はジルコニウム含有後処理剤は特に適していることが判明した。例えばGranodineシリーズ(製造元:Henkel)またはGardobondシリーズ(製造元:Chemetall)の製品、特に“Granodine1456”と“Gardobond X4707”である。これらチタンおよびジルコニウム含有製品は好適には本発明の方法において後処理剤として計量され、絞り処理および乾燥処理後に、チタン質量(乾燥質量)で0.5mg/mから2mg/m、特に約1.0mg/mが処理されたブリキ表面に存在する。典型的にはこのために、1.5%から10%のこの後処理剤の水溶液が使用され、水溶液内のチタン成分量は好適には0.2g/Lから1.2g/Lであり、特に好適には0.2g/Lから0.5g/Lである。
【0053】
成分(a)から(c)は、EFKA ChemicalsまたはEFKA Additivesによって開発され、現在はBASF SEから入手可能である。これら製品は、US5688858A、EP0311157A1(12ページ行45から13ページ行36および実施例)、US5399294A、EP0438836A1(欄10、行42から行57および実施例)、US5882393A、WO97/26984A1(20ページ行4から行20および実施例)、US2004063828A、WO02/057004A1(11ページ行1から行6および実施例)、US2004236007A、WO03/033603A1(20ページ行1から行23および実施例)、US2009234062A、WO2004/045755A2(21ページ行2から行13および実施例)、US2007293692AおよびWO2005/085261A1(14ページ行1から行25および実施例)、特にそれらの独立請求項で詳細に説明されている。
【0054】
BASF SFからの次の製品が好適である:EFKA3570、EFKA3580、EFKA4560、およびEFKA8512。特にEFKA4560が好適である。
【0055】
N−複素環基を有したアクリル酸塩含有薬剤、例えばEFKA4560が後処理剤に特に適していることが判明している。これら薬剤は上記で定義された成分(c)に対応する。
【0056】
それらは、例えば以下のように調製できる。
【0057】
2.84gのビニルトルエン、4.55gのイソブチルメタクリレート、7.36gのエチルへキシルアクリレート、5.20gのヒドロキシエチルメタクリレート、1.80gのポリエチレングリコールモノメタクリレート(分子量が約400)、および0.44gのジ−tert−ブチル過酸化物が、重合化に適し、かつ、還流濃縮器が装備された反応フラスコ内で、9.86gのキシレンと4.93gのメトキシプロピルアセテートに溶解される。重合化は、撹拌しつつ、不活性ガスを供給しながら混合物の沸点で実行された。重合化の終わりに、9.79gのイソフォロンジイソシアネートが、16.58gのイソブチルアセテートおよび16.58gのメトキシプロピルアセテートに溶解され、遊離NCO残基は3.60gのポリエチレングリコールモノメタクリレート(分子量が約400)および4.51gの1−(3−アミノプロピル)イミダゾールと反応された。
【0058】
固形分はブチルアセテートで40質量%に調整された。
【0059】
同様に、11.94gのキシレンと5.97gのメトキシプロピルアセテートに溶解された、3.54gのビニルトルエン、5.69gのイソボルニルメタクリレート、9.20gの2−エチルヘキシルメタクリレート、7.15gのヒドロキシエチルメタクリレートおよび1.28gのジ−tert−ブチル過酸化物が重合化された。
【0060】
続いて、20.36gのブチルアセテートと20.36gのメトキシプロピルアセテートに溶解された12.23gのイソフォロンジイソシアネートが加えられた。遊離NCO残基は、11.34gのN−メチルピロリドン内で、4.50gのポリエチレングリコールモノメタクリレート(分子量が約400)および3.78gの3−アミノ−1,2,4−トリアゾールと反応された。
【0061】
固形分はブチルアクリレートで40質量%に調整された。
【0062】
本発明の上述の方法に従って、これら物質は非希釈形態あるいは水溶液形態でスズ被覆鋼帯に噴霧され、続いてオプションで絞り処理され、乾燥される。乾燥膜は2mg/mから15mg/mの範囲の質量であり、好適には例えばEFKA4560では2mg/mから10mg/mが適用質量として適している。
【0063】
後処理剤によって、潤滑剤でコーティングされる前に、その保管時の被覆金属帯面の(さらなる)酸化亜鉛の蓄積は大きく減少させることができる。同時に、本発明に従った後処理剤での陽極酸化されたスズ被覆鋼帯面の処理で、エナメル接着性の改善が図られる。本発明により処理されたブリキ面は、エナメルで非常に容易にコーティングできることが証明された。
【0064】
本発明に従ったブリキの陽極酸化およびクロム非含有後処理剤の適用による処理の結果、食品内に存在し、例えばアミノ酸システインまたはメチオニンから誘導される硫黄含有物質が、本発明に従って後で適用されるエナメルコーティング層および不活性物を通過してスズ表面にまで拡散できなくなり、醜い変色部(黄色または茶色変色)を発生させない。この変色部は、実質的に硫化スズの形成によるものであり、極端な場合には、ブリキに対するエナメルの接着を劣化させ、エナメルコーティングの剥離をもたらす。
【0065】
本発明により処理されたブリキのサンプルは、無処理ブリキよりも明確に摩擦力が小さい場合もあり、個々の物質では、DOSでの従来のブリキ処理よりも低い摩擦係数を得ることさえも可能である。
【0066】
比較実験の結果の完全な検証で、陽極酸化によるブリキ表面の不動態化のための本発明の方法と、本発明で使用される後処理剤でのコーティングによって、酸化と変色(硫化物阻害活性)に対する抵抗性および摩擦に関する最良の結果が得られる。その結果は、従来から知られているクロム含有後処理剤によるブリキの不動態化の品質に匹敵するものである。
【0067】
物質EFKA3580、EFKA4560、EFKA8512、およびEFKA3570は、低い摩擦係数、酸化抵抗性(酸化スズの少蓄積)、および変色抵抗性(硫化物阻害活性)の特性に関して非常に良好な結果をもたらす。この点で、EFKA4560は好適な後処理剤であることが判明している。変色抵抗性およびエナメル接着性に関して、Granodineシリーズ(特にGranodine1456)とGardobondシリーズ(特にGardobond X4707)のチタン含有後処理剤は非常に有利な結果を示す。しかし、場合によっては従来から既に知られた他のクロム非含有後処理剤でも本発明の方法の実施に適している。本発明の方法は、融解スズ層を備えたブリキと、スズ層が融解堆積されていないブリキの両方で利用できる。