【実施例】
【0023】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0024】
<固形天然ゴムの製造>
天然ゴムラテックスとして、パラゴムノキからタッピングにて採液したフィールドラテックスに、アンモニアを0.5質量%添加したものを使用した。まず、天然ゴムラテックスを、回転するドラムの外周面に吹き付けて、乾燥させた。ドラムの回転速度は、約1rpm(1分間に約1回転)であり、ドラムの外周面は、予め約180℃に加熱されている。吹き付けられた天然ゴムラテックスの液滴は、ドラムの回転と共に乾燥しながら互いに結着して、シート状に固形化される。次に、ドラムが約3/4回転したところで、形成されたシートを、ドラムの外周面から剥離した。このように、天然ゴムラテックスの吹き付け→乾燥→固形天然ゴムシートの剥離、という一連の工程を繰り返して、固形天然ゴムを製造した。得られた固形天然ゴム中の窒素含有量を、Perkin Elmer社製「2400II 全自動元素分析装置(CHNS/O)」により測定したところ、0.7質量%であった。
【0025】
<天然ゴム組成物の調製および架橋物の製造>
(1)補強材無しの場合
[実施例1]
まず、製造した固形天然ゴムを用い、JIS K6352(2005)の5.1の表1に規定される標準配合に従って、天然ゴム組成物を調製した。すなわち、固形天然ゴム100質量部と、酸化亜鉛2種(堺化学工業(株)製)6質量部と、加工助剤のステアリン酸(花王(株)製「ルナック(登録商標)S30」)0.5質量部と、加硫促進剤(三新化学工業(株)製「サンセラー(登録商標)NS−G」)0.7質量部と、硫黄(鶴見化学工業(株)製「サルファックスT−10」)3.5質量部と、をロールを用いて混練して、天然ゴム組成物を調製した。調製した天然ゴム組成物を、実施例1の組成物とした。
【0026】
次に、実施例1の組成物を160℃±0.3℃下で架橋して、架橋時間に対するトルクの変化(架橋曲線)を測定した。測定は、(株)東洋精機製作所製のロータレス式レオメータ試験機を使用して、JIS K6300−2(2001)に準じて行った。振幅角度は1°とした。
【0027】
これとは別に、実施例1の組成物を、140℃下、四種類の時間(20分、30分、40分、60分)で架橋して、架橋物を製造した。そして、得られた架橋物から、JIS K 6251(2010)に規定されるダンベル状5号形の試験片を作製し、同JISに規定される引張試験を行った。
【0028】
[比較例1−1]
製造した固形天然ゴムに代えて、従来の方法により製造された固形天然ゴム「RSS#3」を素練りしたものを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1−1の組成物を調製した。使用した固形天然ゴム中の窒素含有量は、0.5質量%であった。そして、比較例1−1の組成物を、実施例1と同様に160℃±0.3℃下で架橋して、架橋時間に対するトルクの変化を測定した。また、比較例1−1の組成物を、140℃下、実施例1と同じ四種類の時間で架橋して、架橋物を製造した。そして、実施例1と同様に、得られた架橋物の引張試験を行った。
【0029】
[比較例1−2]
製造した固形天然ゴムに代えて、従来の方法により製造された固形天然ゴム「CV(Constant Viscosity)50」を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1−2の組成物を調製した。使用した固形天然ゴム中の窒素含有量は、0.5質量%であった。そして、比較例1−2の組成物を、実施例1と同様に160℃±0.3℃下で架橋して、架橋時間に対するトルクの変化を測定した。また、比較例1−2の組成物を、140℃下、実施例1と同じ四種類の時間で架橋して、架橋物を製造した。そして、実施例1と同様に、得られた架橋物の引張試験を行った。
【0030】
(2)補強材有りの場合
[実施例2]
実施例1の組成物を調製した材料に、さらに、補強材のカーボンブラック(HAF)35質量部を加えて、実施例2の組成物を調製した。この場合、酸化亜鉛2種の配合量を5質量部、ステアリン酸の配合量を2質量部、硫黄の配合量を2.25質量部に、変更した。本配合も、JIS K6352(2005)の5.1の表1に規定される標準配合に従うものである。そして、実施例1と同様に、実施例2の組成物を架橋して、架橋曲線の測定および架橋物の引張試験を行った。
【0031】
[比較例2−1]
比較例1−1の組成物を調製した材料に、さらに、補強材のカーボンブラック(HAF)35質量部を加えて、比較例2−1の組成物を調製した。この場合、実施例2と同様に、酸化亜鉛2種の配合量を5質量部、ステアリン酸の配合量を2質量部、硫黄の配合量を2.25質量部に、変更した。そして、比較例1−1と同様に、比較例2−1の組成物を架橋して、架橋曲線の測定および架橋物の引張試験を行った。
【0032】
[比較例2−2]
比較例1−2の組成物を調製した材料に、さらに、補強材のカーボンブラック(HAF)35質量部を加えて、比較例2−2の組成物を調製した。この場合、実施例2と同様に、酸化亜鉛2種の配合量を5質量部、ステアリン酸の配合量を2質量部、硫黄の配合量を2.25質量部に、変更した。そして、比較例1−2と同様に、比較例2−2の組成物を架橋して、架橋曲線の測定および架橋物の引張試験を行った。
【0033】
<架橋特性の評価>
まず、補強材を含まない組成物の架橋特性について説明する。
図1に、補強材無しの各組成物を架橋した場合の架橋曲線を示す。
図1に示す架橋曲線からわかるように、本発明の固形天然ゴムを用いた実施例1の組成物を架橋した場合、従来の固形天然ゴムを用いた比較例1−1、1−2の組成物を架橋した場合と比較して、トルクの上昇が速くなり、かつ、トルクの最大値も大きくなった。このことは、t
c(10)に対して最大トルク値をプロットした
図2のグラフからも明らかである。ここで、t
c(10)は、10%架橋時間(架橋開始点)である。
図2に示すように、実施例1の組成物を架橋した場合において、t
c(10)が最も短くなり、かつ、最大トルク値が最も大きくなった。これより、実施例1の組成物の架橋速度は、比較例1−1、1−2の組成物の架橋速度よりも、大きいことがわかる。また、実施例1の架橋物の架橋密度は、比較例1−1、1−2の架橋物の架橋密度よりも、大きいことがわかる。
【0034】
次に、補強材を含む組成物の架橋特性について説明する。
図3に、補強材有りの各組成物を架橋した場合の架橋曲線を示す。
図4に、補強材有りの各組成物を架橋した場合のt
c(10)に対して最大トルク値をプロットしたグラフを示す。
図3、
図4からわかるように、補強材を含む場合においても、本発明の固形天然ゴムを用いた実施例2の組成物を架橋した場合、従来の固形天然ゴムを用いた比較例2−1、2−2の組成物を架橋した場合と比較して、トルクの上昇が速くなった。換言すると、t
c(10)が短くなった。一方、実施例2の組成物を架橋した場合のトルクの最大値は、比較例2−2よりは大きくなったが、比較例2−1との間に差は見られなかった。これは、カーボンブラックによる補強性が発現されたためと考えられる。
【0035】
以上より、本発明の固形天然ゴムは、架橋特性に優れることが確認された。すなわち、本発明の固形天然ゴムを用いると、架橋速度が大きくなり、架橋密度が大きい架橋物を製造できることが確認された。
【0036】
<引張特性の評価>
図5に、補強材無しの各架橋物における架橋時間と100%伸び引張応力(100%モジュラス)との関係を示す。
図6に、補強材有りの各架橋物における架橋時間と100%モジュラスとの関係を示す。
【0037】
図5、
図6に示すように、補強材の有無に関わらず、実施例1、2の架橋物においては、架橋時間が短くても、100%モジュラスが大きくなった。また、同じ架橋時間で比較した場合、実施例1の架橋物は比較例1−1、1−2の架橋物よりも、実施例2の架橋物は比較例2−1、2−2の架橋物よりも、100%モジュラスが大きくなった。このように、本発明の固形天然ゴムを用いると、架橋時間が短くても、強度が大きい架橋物を得られることが確認された。