特許第5977451号(P5977451)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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▶ アクゾ ノーベル ケミカルズ インターナショナル ベスローテン フエンノートシャップの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977451
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】熱硬化樹脂を硬化させるためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20160817BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20160817BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20160817BHJP
   C08F 4/34 20060101ALI20160817BHJP
   C08J 3/24 20060101ALN20160817BHJP
【FI】
   C08L101/00
   C08K5/14
   C08K5/29
   C08F4/34
   !C08J3/24 ZCER
   !C08J3/24CEZ
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-526974(P2015-526974)
(86)(22)【出願日】2013年8月14日
(65)【公表番号】特表2015-524868(P2015-524868A)
(43)【公表日】2015年8月27日
(86)【国際出願番号】EP2013066952
(87)【国際公開番号】WO2014027008
(87)【国際公開日】20140220
【審査請求日】2015年3月16日
(31)【優先権主張番号】12180828.1
(32)【優先日】2012年8月17日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/693,821
(32)【優先日】2012年8月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509131443
【氏名又は名称】アクゾ ノーベル ケミカルズ インターナショナル ベスローテン フエンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel Chemicals International B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】コエルス,フレデリック ウィレム カレル
(72)【発明者】
【氏名】タルマ,オーク ジェラルドゥス
【審査官】 杉江 渉
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭51−028193(JP,A)
【文献】 特開昭51−034985(JP,A)
【文献】 特開昭56−167737(JP,A)
【文献】 特表2015−531018(JP,A)
【文献】 特表2015−505867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K3/00−13/08
C08L1/00−101/14
C08F283/01
C08F290/00−290/14
C08F299/00−299/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化樹脂を硬化させるためのプロセスであって、前記樹脂を、
(i)構造C(R)(R)=N−Rのイミン(但し、式中、
・Rは、水素、ヒドロキシル、1個〜22個の炭素原子を有する直鎖アルキル又は分岐アルキル、3個〜22個の炭素原子を有するシクロアルキル、6個〜15個の炭素原子を有するアリール、及び、7個〜22個の炭素原子を有するアラルキルから選択され、但し、前記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基は、S、O、P及び/又はSiから選択されるヘテロ原子を含有する1つ又はそれ以上の基により必要に応じて置換されていてもよく;
は、C(R)(R)−C(=O)−R、及び−C(R)(R)−C(=S)−Rから選択され、但し、式中、R、R及びRは、水素、1個〜6個の炭素原子を有する直鎖アルキル又は分岐アルキル、3個〜12個の炭素原子を有するシクロアルキル、アリール、アラルキル、1個〜6個の炭素原子を有するアルコキシ、及び、アリールオキシから選択され;
・Rは、1個〜22個の炭素原子を有する直鎖アルキル又は分岐アルキル、3個〜22個の炭素原子を有するシクロアルキル、6個〜15個の炭素原子を有するアリール、及び、7個〜22個の炭素原子を有するアラルキルから選択される)、及び
(ii)メチルイソプロピルケトンペルオキシド
と接触させる工程を含むプロセス。
【請求項2】
が式−C(H)(R)−C(=O)−Rを有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
が水素である、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
がアルコキシ基であり、かつ、Rがアルキル基である、請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
がエトキシ基である、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
がメチル基である、請求項4又は5に記載のプロセス。
【請求項7】
が、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、t−アミル、シクロヘキシル及びヒドロキシエチルから選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記樹脂が100重量部の樹脂あたり0.5重量部〜2重量部のイミンの量で前記イミンと接触させられる、請求項1から7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記樹脂が100重量部の樹脂あたり1重量部〜2重量部のイミンの量で前記メチルイソプロピルケトンペルオキシドと接触させられる、請求項1から8のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化樹脂を硬化させるためのプロセスに関連する。
【背景技術】
【0002】
そのような樹脂は従来、酸化剤(例えば、過酸化物)と、促進剤としての可溶性の遷移金属イオン錯体とを含むレドックス系を使用して硬化させられる。促進剤は、酸化剤の活性をより低い温度において増大させるために、かつ、その結果として、硬化速度を速めるために役立つ。
【0003】
典型的な促進剤は遷移金属の塩又は錯体を含む。この目的のための最も頻繁に使用されている遷移金属がコバルトである。しかしながら、その毒性を考慮した場合、法律は、コバルトの量を減らすことを求めている。
【0004】
結果として、Co非含有の促進剤を提供することが望まれている。そのようなCo非含有促進剤系を開示する文書の例として、国際公開第2008/003492号、同第2008/003793号及び同第2008/003500号が挙げられる。これらの文書による促進剤系において使用される金属は、Coに代わって、Mn、Cu、Fe及びTiである。
【0005】
しかしながら、金属非含有の促進剤系を提供することが一層より望ましいと思われる。
【0006】
そのような系が従来において、米国特許第4,042,646号に記載されており、この系では、β−アミノ−α,β−不飽和ケトンが、ヒドロペルオキシ(−OOH)基を含有する過酸化物との組合せで促進剤として使用される。前記特許に開示される過酸化物には、ケトンペルオキシド及びヒドロペルオキシドが含まれる。開示されたケトンペルオキシドがメチルエチルケトンペルオキシド及びメチルイソブチルケトンペルオキシドである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2008/003492号
【特許文献2】国際公開第2008/003793号
【特許文献3】国際公開第2008/003500号
【特許文献4】米国特許第4,042,646号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この促進系は商業的適用に決してたどり着かなかった。その理由は十中八九は、性能が満足の行くものではないということであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
今回、そのような金属非含有系がメチルイソプロピルケトンペルオキシドの使用によってさらに改善され得ることが見出されている。
【0010】
したがって、本発明は、熱硬化樹脂を硬化させるためのプロセスであって、前記樹脂を(i)構造C(R)(R)=N−Rのイミン及び(ii)メチルイソプロピルケトンペルオキシドと接触させる工程を含むプロセスに関連する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のプロセスにおいて使用されることになる上記イミンは、下記のように定義される一般式C(R)(R)=N−Rを有する:
は、水素、ヒドロキシル、1個〜22個の炭素原子を有する直鎖アルキル又は分岐アルキル、3個〜22個の炭素原子を有するシクロアルキル、6個〜15個の炭素原子を有するアリール、及び、7個〜22個の炭素原子を有するアラルキルから選択され、但し、前記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基は、S、O、P及び/又はSiから選択されるヘテロ原子を含有する1つ又はそれ以上の基により必要に応じて置換されていてもよい;
は、−C(R)(R)−C(=O)−R、−C(R)(R)−C(=S)−R及び−C(R)(R)−C(=N)−Rから選択され、但し、式中、R、R及びRは、水素、1個〜6個の炭素原子を有する直鎖アルキル又は分岐アルキル、3個〜12個の炭素原子を有するシクロアルキル、アリール、アラルキル、1個〜6個の炭素原子を有するアルコキシ、及び、アリールオキシから選択される;
は、1個〜22個の炭素原子を有する直鎖アルキル又は分岐アルキル、3個〜22個の炭素原子を有するシクロアルキル、6個〜15個の炭素原子を有するアリール、及び、7個〜22個の炭素原子を有するアラルキルから選択される。
【0012】
好ましい実施形態において、Rが−C(H)(R)−C(=O)−Rであるイミンが使用される。より好ましくは、Rが−CH−C(=O)−Rである。
【0013】
一層より好ましいものが、Rがアルコキシであり、かつ、Rがアルキルであるイミンである。最も好ましくは、Rがエトキシであり、かつ、Rがメチルである。これらのイミンは下記の式を有する:
【化1】
【0014】
上記式における好ましいR基が、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、t−アミル及びシクロヘキシル並びにヒドロキシエチルである。
【0015】
が−CH−C(=O)−Rであるイミンは、下記の式に従ってケチミン−エナミンの互変異性及びケト−エノールの互変異性を受ける:
【化2】
【0016】
これらの好ましいイミンの合成は何年にもわたって公知であり、それらは一般に、対応するβ−ジケトン又はβ−ケトエステルをアンモニア又は第一級アミンと反応させることによって容易に合成される。別のプロセスとして、それらはまた、β−アセチレン性ケトンをアンモニア、第一級アミン又はヒドロキシルアミンと反応させることによって得ることができる。
【0017】
上記イミンは好ましくは、100重量部の樹脂に基づいて0.01〜10重量部(pbw)の量で、より好ましくは0.1〜5pbwの量で、最も好ましくは0.5〜2pbwの量で本発明によるプロセスにおいて使用される。
【0018】
本発明のプロセスにおいて使用されることになる過酸化物はメチルイソプロピルケトンペルオキシドである。この過酸化物は下記の式を有することができる:
【化3】
(式中、Rはメチルであり、かつ、Rはイソプロピルである)
又は
【化4】
(式中、R及びRはメチルであり、かつ、R及びRはイソプロピルである)。
【0019】
第1の式は、いわゆるタイプ4のケトンペルオキシドを反映する;第2の式は、いわゆるタイプ3のケトンペルオキシドを反映する。両方のタイプが一般に、過酸化水素に加えて、過酸化物配合物に存在する。
【0020】
上記過酸化物は好ましくは、100重量部の樹脂に基づいて0.1〜10重量部(pbw)の量で、より好ましくは0.5〜5pbwの量で、最も好ましくは1〜2pbwの量で本発明のプロセスにおいて使用される。
【0021】
本発明のプロセスに従って硬化させられる好適な熱硬化樹脂には、不飽和ポリエステル(UP)樹脂、ビニルエステル樹脂、(メタ)アクリラート樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、及び、UP樹脂とエポキシ樹脂との組合せ、又は、異なるUP樹脂の組合せのようなそれらの組合せが含まれる。好ましい樹脂が、(メタ)アクリラート樹脂、UP樹脂及びビニルエステル樹脂である。本出願との関連において、用語「不飽和ポリエステル樹脂」及び用語「UP樹脂」は、不飽和ポリエステル樹脂とエチレン性不飽和モノマー化合物との組合せを示す。用語「(メタ)アクリラート樹脂」は、アクリラート樹脂又はメタクリラート樹脂とエチレン性不飽和モノマー化合物との組合せを示す。上記で定義されるような様々なUP樹脂及びアクリラート樹脂が一般的な慣行であり、また、市販されている。
【0022】
本発明のプロセスによって硬化させられる好適なUP樹脂が、いわゆるオルト樹脂、イソ樹脂、iso−npg樹脂及びジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂である。そのような樹脂の例として、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、アリル系樹脂、ビニル系樹脂及びエポキシ型樹脂、ビスフェノールA樹脂、テレフタル酸樹脂、並びに、ハイブリッド型樹脂が挙げられる。
【0023】
ビニルエステル樹脂には、アクリラート樹脂、例えば、メタクリラート、ジアクリラート、ジメタクリラート及びそれらのオリゴマーに基づくアクリラート樹脂が含まれる。
【0024】
アクリラート樹脂には、アクリラート、メタクリラート、ジアクリラート及びジメタクリラート、並びに、それらのオリゴマーが含まれる。
【0025】
不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂はモノマーを含有する場合がある。好適なモノマーの例として、エチレン性不飽和モノマー化合物が挙げられ、例えば、スチレン、及び、α−メチルスチレンのようなスチレン誘導体、ビニルトルエン、インデン、ジビニルベンゼン、ビニルピロリドン、ビニルシロキサン、ビニルカプロラクタム、スチルベン、しかし、同様に、ジアリルフタラート、ジベンジリデンアセトン、アリルベンゼン、メチルメタクリラート、メチルアクリラート、(メタ)アクリル酸、ジアクリラート、ジメタクリラート、アクリルアミド系化合物;ビニルアセタート、トリアリルシアヌラート、トリアリルイソシアヌラート、光学用途のために使用されるアリル化合物(例えば、(ジ)エチレングリコールジアリルカルボナートなど)、クロロスチレン、tert−ブチルスチレン、tert−ブチルアクリラート、ブタンジオールジメタクリラート、並びに、それらの混合物などが挙げられる。
【0026】
(メタ)アクリラート反応性希釈剤の好適な例として、下記のものが挙げられる:PEG200ジ(メタ)アクリラート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、2,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート及びその異性体、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、グリセロールジ(メタ)アクリラート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリラート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリラート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリラート、PPG250ジ(メタ)アクリラート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリラート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリラート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリラート、グリシジル(メタ)アクリラート、(ビス)マレイミド類、(ビス)シトラコンイミド類、(ビス)イタコンイミド類、及び、それらの混合物。
【0027】
樹脂におけるエチレン性不飽和モノマーの量は、不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂の重量に基づいて、好ましくは少なくとも0.1wt%であり、より好ましくは少なくとも1wt%であり、最も好ましくは少なくとも5wt%である。エチレン性不飽和モノマーの量は好ましくは50wt%以下であり、より好ましくは40wt%以下であり、最も好ましくは35wt%以下である。
【0028】
本発明によるプロセスは、上記過酸化物及び上記イミンを上記樹脂と接触させる工程を伴う。これらの化合物は、どのような順序であれ、互いに加えることができる。1つの実施形態において、樹脂をイミンによる促進化前処理に供することができ、硬化が、過酸化物をその直後に加えるか、或いは、数日後、数週間後又は数ヶ月後に加えるかのどちらかによって行われる。過酸化物及びイミンを(ほぼ)同時に加えることもまた可能である。
【0029】
使用されることになる上記イミンが室温で固体であるときには、樹脂へのその添加の前に当該イミンを融解するか、又は、当該イミンを好適な溶媒に溶解することが好ましい。好適な溶媒の例として、ホワイトスピリット、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、リン酸ジブチル、リン酸トリエチル、メチルエチルケトン、エチルプロキシトール(ethyl proxytol)が挙げられる。
【0030】
過酸化物は好ましくは、好適な鈍化剤に希釈される樹脂に加えられる。これらの配合物において使用することができる鈍化剤は、従来型タイプのものであり、好ましくは、アルカノール、シクロアルカノール、アルキレングリコール、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、環状エーテル置換アルコール、環状アミド、エステル、ケトン、芳香族溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、及び、それらの混合物から選択される。
【0031】
本発明のプロセスの期間中に存在してもよい他の化合物が、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物、リン含有化合物、1,3−ジケトン、窒素含有塩基及び還元剤である。
【0032】
1,3−ジケトンの例として、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン及びジベンゾイルメタン、並びに、アセトアセタート類、例えば、ジエチルアセトアセトアミド、ジメチルアセトアセトアミド、ジプロピルアセトアセトアミド、ジブチルアセトアセトアミド、メチルアセトアセタート、エチルアセトアセタート、プロピルアセトアセタート及びブチルアセトアセタートなどが挙げられる。
【0033】
アルカリ金属化合物又はアルカリ性金属(alkaline metal)化合物の例として、アルカリ金属又はアルカリ性金属のカルボン酸塩、例えば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の2−エチルヘキサン酸塩、オクタン酸塩、ノナン酸塩、ヘプタン酸塩、ネオデカン酸塩及びナフテン酸塩などが挙げられる。好ましいアルカリ金属がKである。
【0034】
リン含有化合物の例として、式P(R)及び式P(R)=Oを有するリン化合物(但し、式中、それぞれのRは独立して、水素、1個〜10個の炭素原子を有するアルキル基、及び、1個〜10個の炭素原子を有するアルコキシ基から選択される)が挙げられる。好ましくは、少なくとも2つのR基がアルキル基又はアルコキシ基のどちらかから選択される。好適なリン含有化合物の具体的な例として、リン酸ジエチル、リン酸ジブチル、リン酸トリブチル、リン酸トリエチル(TEP)、亜リン酸ジブチル及びリン酸トリエチルが挙げられる。
【0035】
窒素含有塩基の例として、トリエチルアミン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン又はN,N−ジメチル−p−トルイジン(DMPT)のような第三級アミン、1,2−(ジメチルアミン)エタンのようなポリアミン、ジエチルアミンのような第二級アミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン又はモノエタノールアミンのようなエトキシル化アミン、及び、ビピリジンのような芳香族アミンが挙げられる。
【0036】
還元剤の例として、アスコルビン酸、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム(SFS)、グルコース及びフルクトースのような還元糖、シュウ酸、ホスフィン類、ホスフィト類、有機ニトリル又は無機ニトリル、有機スルフィト又は無機スルフィト、有機スルフィド又は無機スルフィド、メルカプタン及びアルデヒド、並びに、それらの混合物が挙げられる。アスコルビン酸(本明細書におけるそのような用語はL−アスコルビン酸及びD−アスコルビン酸を包含する)が、好ましい還元剤である。
【0037】
本発明によるラジカル硬化性組成物に存在してもよい必要に応じて使用される添加物が、フィラー、繊維、顔料、ラジカル抑制剤、難燃剤及び助触媒である。
【0038】
好ましい実施形態において、ラジカル硬化性組成物はフィラー及び/又は強化繊維を含む。強化繊維の例として、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維(例えば、Twaron(登録商標))及び天然繊維(例えば、ジュート、ケナフ、工業用アサ、亜麻(リネン)、ラミーなど)が挙げられる。フィラーの例として、石英、砂、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、チョーク、水酸化カルシウム、粘土、二酸化チタン及び石灰が挙げられる。
【0039】
難燃剤には、ハロゲン含有難燃剤及びリン含有難燃剤の両方が含まれる。ラジカル抑制剤の例には、下記のものが含まれる:2−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール、2,4,6−トリス−ジメチルアミノメチルフェノール、4,4’−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、6,6’−ジ−t−ブチル−2,2’−メチレン、ジ−p−クレゾール、ヒドロキノン、2−メチルヒドロキノン、2−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,6−ジメチルヒドロキノン、2,3,5−トリメチルヒドロキノン、カテコール、4−t−ブチルカテコール、4,6−ジ−t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、2,3,5,6−テトラクロロ−1,4−ベンゾキノン、メチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、ナフトキノン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オール(TEMPOL)、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オン(TEMPON)、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−カルボキシル−ピペリジン(4−カルボキシ−TEMPO)、1−オキシル−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン、1−オキシル−2,2,5,5−テトラメチル−3カルボキシルピロリジン(3−カルボキシ−PROXYL)、アルミニウム−N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、フェノチアジン、及び、それらの組合せ。
【0040】
遷移金属化合物(例えば、Co、Cu、Mn、V又はFeの化合物など)を樹脂に加えることが可能であるが、本発明のプロセスをそのような化合物の非存在下で行うことが好ましい。これらの金属の1つ又はそれ以上が存在すると思われるならば、それらは好ましくは、0.02mmol/kg樹脂〜10mmol/kg樹脂の(金属として計算される)量で、より好ましくは0.10mmol/kg樹脂〜5mmol/kg樹脂の(金属として計算される)量で、最も好ましくは0.25mmol/kg樹脂〜2mmol/kg樹脂の(金属として計算される)量で存在する。
【0041】
樹脂、過酸化物及びイミンが組み合わされているとき、これらの化合物は混合され、分散される。硬化プロセスを、−15℃から250℃までのどのような温度においてでも行うことができる。好ましくは、硬化プロセスは、様々な適用において一般に使用される周囲温度で行われ、例えば、ハンド・レイアップ、スプレーアップ、フィラメントワインディング、レジントランスファー成形、コーティング(例えば、ゲルコートコーティング及び標準的コーティング)、ボタン製造、遠心注型、波形シート又は平坦パネル、リライニング(relining)系、及び、コンパウンド注入によるキッチンシンクなどにおいて一般に使用される周囲温度で行われる。しかしながら、硬化プロセスはまた、SMC技術、BMC技術、引抜き技術及び同様な技術において使用することができ、但し、この場合、それらについては、180℃までの温度が使用され、より好ましくは150℃までの温度が使用され、最も好ましくは100℃までの温度が使用される。
【0042】
硬化した組成物は、硬さをさらに最適化するために硬化後の処理に供することができる。そのような硬化後の処理が一般には、40℃〜180℃の範囲の温度で30分間〜15時間行われる。
【0043】
硬化した組成物には、海洋用途、化学的固着、屋根材、建築、リライニング、パイプ及びタンク、床材、風車の羽根、積層品などを含めて、様々な用途において使用が見出される。
【実施例】
【0044】
下記の物質を下記の実施例において使用した:
Palatal P6−オルトフタル酸系不飽和ポリエステル樹脂(前身のDSMの樹脂)
Butanox(登録商標)P50−メチルイソプロピルケトンペルオキシド(フタル酸ジメチルにおける50wt%;前身のAkzoNobel)
Butanox(登録商標)M50−活性酸素含有量が8.9wt%であるメチルエチルケトンペルオキシド(フタル酸ジメチルにおける50wt%;前身のAkzoNobel)
Trigonox(登録商標)233−メチルイソブチルケトンペルオキシド(イソドデカンにおける50wt%;前身のAkzoNobel)
イミン1−4−(n−ブチルアミノ)−3−ペンテン−2−オン
イミン2−エチル−3−(n−ブチルアミノ)−2−ブテノアート
イミン3−3−(n−ブチルアミノ)−N,N−ジエチル−2−ブテンアミド
【化5】
【0045】
硬化性組成物を、表1〜表3に列記されるように、100phrの樹脂、1phrの促進剤及び2phrの過酸化物を混合することによって調製した。促進剤は、上記で示されるイミンの1つであった。
【0046】
組成物を20℃で硬化させた。
【0047】
組成物の硬化を、the Society of Plastic Instituteの方法(分析法F/77.1;Akzo Nobel Polymer Chemicalsから入手可能)によって分析した。
【0048】
この方法は、ピーク発熱、ピーク到達時間及びゲル化時間の測定を伴う。
【0049】
この方法に従って、樹脂、過酸化物及び促進剤を含む混合物の20gを試験管の中に注ぎ、熱電対を、囲いを貫いて試験管の中心に設置した。その後、このガラス管を20℃で維持される環境調節室に置き、時間−温度曲線を測定した。曲線から、下記のパラメーターを計算した:
ゲル化時間(GT)=実験開始から浴温度を5.5℃超えるまでの間に経過した時間(分単位)。
ピーク発熱到達時間(TTP)=実験開始から、ピーク発熱に達したときまでの間に経過した時間。
ピーク発熱(PE)=達した最大温度。
【0050】
ショアーD硬度を標準的方法のASTM D2240によって求めた。
【0051】
また、最終的な硬化した樹脂の色も評価した。
【0052】
結果が表1〜表3に示される。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
これらのデータは、これらの系の最も良い硬化挙動が、他のケトンペルオキシドと比較して、メチルイソプロピルケトンペルオキシドを使用することによって得られることを示す。
本願発明には以下の態様が含まれる。
[1]
熱硬化樹脂を硬化させるためのプロセスであって、前記樹脂を、
(i)構造C(R)(R)=N−Rのイミン(但し、式中、
・Rは、水素、ヒドロキシル、1個〜22個の炭素原子を有する直鎖アルキル又は分岐アルキル、3個〜22個の炭素原子を有するシクロアルキル、6個〜15個の炭素原子を有するアリール、及び、7個〜22個の炭素原子を有するアラルキルから選択され、但し、前記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基は、S、O、P及び/又はSiから選択されるヘテロ原子を含有する1つ又はそれ以上の基により必要に応じて置換されていてもよく;
・Rは、C(R)(R)−C(=O)−R、−C(R)(R)−C(=S)−R及び−C(R)(R)−C(=N)−R4から選択され、但し、式中、R、R及びRは、水素、1個〜6個の炭素原子を有する直鎖アルキル又は分岐アルキル、3個〜12個の炭素原子を有するシクロアルキル、アリール、アラルキル、1個〜6個の炭素原子を有するアルコキシ、及び、アリールオキシから選択され;
・Rは、1個〜22個の炭素原子を有する直鎖アルキル又は分岐アルキル、3個〜22個の炭素原子を有するシクロアルキル、6個〜15個の炭素原子を有するアリール、及び、7個〜22個の炭素原子を有するアラルキルから選択される)、及び
(ii)メチルイソプロピルケトンペルオキシド
と接触させる工程を含むプロセス。
[2]
が式−C(H)(R)−C(=O)−Rを有する、上記[1]に記載のプロセス。
[3]
が水素である、上記[1]又は[2]に記載のプロセス。
[4]
がアルコキシ基であり、かつ、Rがアルキル基である、上記[1]から[3]のいずれか一項に記載のプロセス。
[5]
がエトキシ基である、上記[4]に記載のプロセス。
[6]
がメチル基である、上記[4]又は[5]に記載のプロセス。
[7]
が、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、t−アミル、シクロヘキシル及びヒドロキシエチルから選択される、上記[1]から[6]のいずれか一項に記載のプロセス。
[8]
前記樹脂が100重量部の樹脂あたり0.5重量部〜2重量部のイミンの量で前記イミンと接触させられる、上記[1]から[7]のいずれか一項に記載のプロセス。
[9]
前記樹脂が100重量部の樹脂あたり1重量部〜2重量部のイミンの量で前記メチルイソプロピルケトンペルオキシドと接触させられる、上記[1]から[8]のいずれか一項に記載のプロセス。