特許第5977491号(P5977491)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977491
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20160817BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20160817BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   B60C11/03 300C
   B60C11/12 C
   B60C11/13 A
   B60C11/03 300E
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-167804(P2011-167804)
(22)【出願日】2011年7月29日
(65)【公開番号】特開2013-32029(P2013-32029A)
(43)【公開日】2013年2月14日
【審査請求日】2014年5月27日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】林 直宏
【審査官】 柳楽 隆昌
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−120174(JP,A)
【文献】 特開平03−182811(JP,A)
【文献】 特開平08−067112(JP,A)
【文献】 特開2010−143377(JP,A)
【文献】 特開平11−208220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
B60C 11/12
B60C 11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ接地面を有するトレッド部を備えるタイヤであって、
前記タイヤ接地面には、タイヤ周方向に沿って延びる周方向溝及びトレッド幅方向に沿って延びる幅方向溝によって区画される大ブロックが設けられており、
前記大ブロックの接地面には、前記トレッド幅方向に沿って延びる複数の幅方向サイプが設けられており、
前記大ブロックは、前記複数の幅方向サイプによって、3以上の中ブロックに区画されており、
前記3以上の中ブロックは、前記タイヤ周方向の両端に設けられる端ブロックと、前記端ブロックの間に挟まれる1以上の中央ブロックとを含み、
前記タイヤ周方向において、前記中央ブロックの長さは、前記端ブロックの長さよりも長く、
前記幅方向溝の溝底には、前記タイヤ周方向において前記端ブロックに接するタイバーが設けられており、
前記大ブロックの接地面には、前記タイヤ周方向に沿って延びる周方向サイプが設けられており、
前記周方向サイプは、前記タイヤ周方向に対して平行な第1サイプ平行部及び第2サイプ平行部と、前記第1サイプ平行部と前記第2サイプ平行部との間を連結するとともに前記タイヤ周方向に対して傾斜するサイプ傾斜部とを有しており、
前記端ブロックと前記中央ブロックとの間には、前記第1サイプ平行部に開口する幅方向サイプと、前記サイプ傾斜部と前記第2サイプ平行部との交点よりも前記第1サイプ平行部寄りの前記サイプ傾斜部に開口する幅方向サイプとによって区画された小ブロックが形成され、該小ブロックの前記周方向サイプ側の側面は、一部が前記第1サイプ平行部に面し、他部が前記サイプ傾斜部に面しており、
タイヤ径方向において、前記大ブロックの接地面から前記タイバーまでの深さDtは、前記幅方向サイプの深さDsよりも浅く、
前記タイヤ径方向において、前記サイプ傾斜部の深さDc2は、前記サイプ平行部の深さDc1よりも浅く、
タイヤ径方向における深さの関係は、Dc1>Dc2>Ds>Dtである
ことを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記タイヤ周方向において、前記中央ブロックの長さは端ブロックの長さの105%以上、125%以下であり、
タイヤ径方向において、前記大ブロックの接地面から前記タイバーまでの深さDtは、前記幅方向サイプの深さDsの75%以上、かつ、95%以下であることを特徴とする請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記大ブロックは、前記複数の幅方向サイプによって、前記3以上の中ブロックと1以上の前記小ブロックとに区画されており、
前記タイヤ周方向における前記1以上の小ブロックの両側に、前記中ブロックが隣接し、
前記タイヤ周方向において、前記小ブロックの長さは、前記中ブロックの長さよりも短いことを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1対のビードコアと、1対のビードコア間に跨るトロイダル形状を有するカーカス層とを備えるタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1対のビードコアと、1対のビードコア間に跨るトロイダル形状を有するカーカス層と、カーカス層に隣接して配置されるベルト層と、ビードコア、カーカス層及びベルト層を被覆するゴム層とを備えるタイヤが知られている。
【0003】
タイヤは、ビードコアを有するビード部と、タイヤ接地面を有するトレッド部と、タイヤの側面を形成するサイドウォール部と、サイドウォール部とトレッド部との間に跨って設けられるショルダー部とを備える。
【0004】
タイヤ接地面には、タイヤ周方向に沿って延びる周方向溝及びトレッド幅方向に沿って延びる幅方向溝によって区画される大ブロックが設けられる。大ブロックには、トレッド幅方向に沿って延びる幅方向サイプが設けられる。
【0005】
また、大ブロックの耐久性能の低下を抑制しながら、氷雪性能を高めるために、大ブロックに設けられる幅方向サイプの数を増やすことが検討されている。例えば、間隔が狭い1対の幅方向サイプによって、大ブロックを複数の中ブロックに区画する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。なお、1対の幅方向サイプの間に設けられる部位を小ブロックと称することもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−120174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した技術では、大ブロックの耐久性能の低下抑制について、一定の効果が得られるものの、さらに、大ブロックの耐久性能の低下抑制が望まれている。
【0008】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、幅方向サイプの数を増やした場合であっても、大ブロックの耐久性能の低下をさらに抑制することを可能とするタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。本発明の特徴は、タイヤ接地面を有するトレッド部を備えるタイヤであって、前記タイヤ接地面には、タイヤ周方向に沿って延びる周方向溝及びトレッド幅方向に沿って延びる幅方向溝によって区画される大ブロックが設けられており、前記大ブロックの接地面には、前記トレッド幅方向に沿って延びる複数の幅方向サイプが設けられており、前記大ブロックは、前記複数の幅方向サイプによって、3以上の中ブロックに区画されており、前記3以上の中ブロックは、前記タイヤ周方向の両端に設けられる端ブロックと、前記端ブロックの間に挟まれる1以上の中央ブロックとを含み、前記タイヤ周方向において、前記中央ブロックの長さは、前記端ブロックの長さよりも長く、前記幅方向溝の溝底には、前記タイヤ周方向において前記端ブロックに接するタイバーが設けられることを要旨とする。
【0010】
本発明の特徴によれば、中央ブロックの長さは、端ブロックの長さよりも長いため、中央ブロックは、端ブロックよりも倒れ込みにくい。すなわち、中央ブロックの剛性が向上する。幅方向溝の溝底には、タイヤ周方向において端ブロックに接するタイバーが設けられる。タイバーは、タイヤ周方向において端ブロックを支持するため、端ブロックの倒れ込みを抑制できる。中央ブロック及び端ブロックの倒れ込みが抑制できるため、大ブロック全体として、ブロック剛性が向上する。従って、幅方向サイプの数が増えた場合であっても、大ブロックの耐久性能の低下をさらに抑制することができる。
【0011】
タイヤ径方向において、前記大ブロックの接地面から前記タイバーまでの深さは、前記幅方向サイプの深さよりも浅くてもよい。
【0012】
前記大ブロックは、前記複数の幅方向サイプによって、前記3以上の中ブロックと1以上の小ブロックとに区画されており、前記タイヤ周方向における前記1以上の小ブロックの両側に、前記中ブロックが隣接し、前記タイヤ周方向において、前記小ブロックの長さは、前記中ブロックの長さよりも短くてもよい。
【0013】
前記大ブロックの接地面には、前記タイヤ周方向に沿って延びる周方向サイプが設けられており、前記周方向サイプは、前記タイヤ周方向と平行なサイプ平行部と、前記タイヤ周方向に対して傾斜するサイプ傾斜部とを有しており、前記タイヤ径方向において、前記サイプ傾斜部の深さは、前記サイプ平行部の深さよりも浅くてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、幅方向サイプの数を増やした場合であっても、大ブロックの耐久性能の低下をさらに抑制することを可能とするタイヤを提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、第1実施形態に係るタイヤのトレッドパターン展開図である。
図2図2は、第1実施形態に係る大ブロック100の斜視図である。
図3図3は、第1実施形態に係る大ブロック100の平面図である。
図4図4は、図3のA−A線における断面図である。
図5図5は、第1実施形態の変形例に係る大ブロック100の平面図である。
図6図6は、図5のB−B線における断面図である。
図7図7は、第2実施形態に係るタイヤのトレッド部1の平面展開図である。
図8図8は、第2実施形態に係る大ブロック101の平面図である。
図9図9(a)は、第2実施形態に係る大ブロック101の部分斜視図である。図9(b)は、図9(a)のC−C線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るタイヤの一例について、図面を参照しながら説明する。具体的には、(1)第1実施形態、(2)第2実施形態、(3)比較評価、(4)その他実施形態、について説明する。
【0017】
以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。図面は模式的なのものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることを留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0018】
(1)第1実施形態
(1.1)トレッドパターンの構成
本実施形態に係るタイヤのトレッド部1の概略構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係るタイヤのトレッド部1の平面展開図である。図2は、第1実施形態に係るタイヤの大ブロック100の斜視図である。
【0019】
本実施形態に係るタイヤは、タイヤ接地面を有するトレッド部1を備える。図1に示されるように、本実施形態に係るタイヤは、大ブロック100、トレッド端ブロック130、周方向溝(周方向主溝200及び周方向細溝250)、幅方向溝300及びトレッド端幅方向溝350をトレッド部1に備える。
【0020】
大ブロック100は、タイヤ接地面に設けられる。大ブロック100は、周方向溝及び幅方向溝300によって区画される。複数の大ブロック100は、タイヤ周方向に並ぶ。従って、複数の大ブロック100によって、ブロック列が形成される。
【0021】
大ブロック100の接地面100aには、トレッド幅方向に沿って延びる複数の幅方向サイプ60が設けられる。幅方向サイプ60は、周方向溝に連通する。具体的には、幅方向サイプ60は、周方向主溝200及び周方向細溝250に連通する。幅方向サイプ60は、いわゆるオープンサイプである。
【0022】
大ブロック100は、複数の幅方向サイプ60によって、3以上の中ブロック20に区画されている。具体的には、大ブロック100は、3つの中ブロック20に区画されている。3つの中ブロック20は、端ブロック30と、中央ブロック40とを含む。
【0023】
端ブロック30は、大ブロック100のタイヤ周方向の両端に設けられる。従って、端ブロック30は、タイヤ周方向において幅方向溝300に隣接する。端ブロック30の数は、2つである。中央ブロック40は、端ブロック30の間に挟まれる。本実施形態において、中央ブロック40は、タイヤ周方向において端ブロック30に隣接する。
【0024】
トレッド端ブロック130は、トレッド幅方向において、トレッド部1の最も外側に設けられる。トレッド端ブロック130は、周方向主溝200とトレッド端幅方向溝350とによって区画される。複数のトレッド端ブロック130は、タイヤ周方向に並ぶ。従って、複数のトレッド端ブロック130によって、ブロック列が形成される。
【0025】
周方向主溝200は、タイヤ周方向に沿って延びる。本実施形態において、周方向主溝200は、4本設けられる。タイヤ赤道線CLの近くに設けられる2本の周方向主溝200は、トレッド幅方向において大ブロック100に挟まれる。タイヤ赤道線CLの近くに設けられる2本の周方向主溝200は、トレッド幅方向において、大ブロック100及びトレッド端ブロック130に挟まれる。
【0026】
周方向細溝250は、タイヤ周方向に沿って延びる。本実施形態において、周方向細溝250は、3つ設けられる。トレッド幅方向において中央に位置する周方向細溝250は、タイヤ赤道線CL上に設けられる。周方向細溝250のトレッド幅方向において、大ブロック100に隣接する。
【0027】
トレッド幅方向における周方向主溝200の長さをWaとする。トレッド幅方向における周方向細溝250の長さをWcとする。Wcは、Waよりも短い。トレッド幅方向において、周方向細溝250を挟んで隣接する大ブロック100どうしがタイヤの転動時に接触可能に、Wcを設定することが好ましい。
【0028】
なお、JATMA(日本自動車タイヤ協会)、TRA(The Tire and Rim Association Inc.)、ETRATO(The European Tire and Rim Technical Organization)等の各国の規格によって定められた規定内圧及び規定荷重時において、タイヤの転動時に大ブロック100どうしが接触すればよい。
【0029】
幅方向溝300は、トレッド幅方向に沿って延びる。幅方向溝300は、大ブロック100を区画する。従って、幅方向溝300のタイヤ周方向において、大ブロック100に隣接する。
【0030】
幅方向溝300の溝底には、タイバー150が設けられる。タイバー150は、タイヤ周方向において端ブロック30に接する。タイバー150は、一の大ブロック100のタイヤ周方向における側面105と、一の大ブロック100にタイヤ周方向において隣接する他の大ブロック100のタイヤ周方向における側面105とを連結する。タイバー150は、タイヤ径方向に面する上面150aを有する。
【0031】
トレッド端幅方向溝350は、トレッド幅方向に沿って延びる。トレッド端幅方向溝350は、トレッド端ブロック130を区画する。従って、トレッド端幅方向溝350のタイヤ周方向において、大ブロック100に隣接する。
【0032】
複数の大ブロック100によって形成されるブロック列は、周方向細溝250を挟んで、1組のブロック列を構成する。本実施形態では、トレッド部1に1組のブロック列が、3つ設けられる。すなわち、トレッド幅方向における中央に1組のブロック列からなるセンターブロック列が設けられる。センターブロック列は、タイヤ赤道線CL上に設けられる。周方向主溝200を挟んで、センターブロック列に隣接し、1組のブロック列からなるセカンドブロック列が設けられる。トレッド端ブロック130によって形成されるブロック列は、周方向主溝200を挟んで、セカンドブロック列に隣接する。
【0033】
(1.2)大ブロック100の構成
大ブロック100の概略構成について、図1から図4を参照しながら説明する。図3は、本実施形態に係る大ブロック100の平面図である。すなわち、トレッド面視における大ブロック100の平面図である。図4は、図3のA−A線における断面図である。具体的には、図4は、大ブロック100のトレッド幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面図である。
【0034】
本実施形態において、大ブロック100は、端ブロック30と中央ブロック40とによって構成される。図3に示されるように、タイヤ周方向における大ブロック100の長さをLとする。タイヤ周方向における端ブロック30の長さL1とする。タイヤ周方向における中央ブロック40の長さL2とする。L2は、L1よりも長い。L2は、L1の105%以上、かつ、L1の125%以下であることが好ましい。L2がL1の105%以上であれば、中央ブロック40のブロック剛性がより高まるため、大ブロック100のブロック剛性を向上できる。L2がL1の125%よりも長いと、タイヤのタイヤ周方向における長さに対してサイプの数が大きく減ってしまい、氷雪性能が低下する。
【0035】
図4に示されるように、タイヤ径方向における大ブロック100の接地面100aからタイバー150までの深さをDtとする。Dtは、大ブロック100の接地面100aからタイバー150の上面150aまでのタイヤ径方向に沿った高さである。なお、タイヤ径方向において、タイバー150の上面150aの高さが変化する場合、Dtは、接地面100aからタイヤ径方向において最も外側の上面150aの位置までの長さである。従って、タイヤ径方向において、タイバー150の上面150aの高さは、周方向主溝200の溝底200aよりも高い。
【0036】
幅方向サイプ60の深さをDsとする。Dsは、幅方向サイプ60の溝底から接地面100aまでのタイヤ径方向に沿った高さである。
【0037】
本実施形態において、Dtは、Dsよりも浅い。すなわち、タイバー150の上面150aよりも、幅方向サイプ60の溝底の方が、タイヤ径方向において内側に位置する。Dtは、Dsの75%以上、かつ、Dsの95%以下が好ましい。DtがDsの75%以上であれば、端ブロック30と中央ブロック40とを区画する幅方向サイプ60の溝底に歪みが集中することを抑制できる。その結果、幅方向サイプ60の溝底にクラックが発生しにくくなるため、大ブロック100の耐久性能の低下をさらに抑制できる。加えて、幅方向溝300の溝体積を確保することができる。これにより、雪柱せん断力効果を効果的に得ることができるため、雪上性能を向上できる。DtがDsの95%以下であれば、タイバー150が端ブロック30を支持するため、端ブロック30の倒れ込みを抑制できる。その結果、大ブロック100のブロック剛性が向上するため、幅方向サイプ60の数が増えても、大ブロック100の耐久性能の低下をさらに抑制できる。
【0038】
(1.3)作用効果
本実施形態に係るタイヤによれば、大ブロック100は、複数の幅方向サイプ60によって、3つの中ブロック20に区画されており、3つの中ブロック20は、タイヤ周方向の両端に設けられる端ブロック30と、端ブロック30の間に挟まれる中央ブロック40とを含み、タイヤ周方向において、中央ブロック40の長さであるL2は、端ブロック30の長さであるL1よりも長い。このため、中央ブロック40は、端ブロック30よりも倒れ込みにくい。すなわち、中央ブロック40のブロック剛性が向上する。幅方向溝300の溝底には、タイヤ周方向において端ブロック30に接するタイバー150が設けられる。タイバー150は、タイヤ周方向において端ブロック30を支持するため、端ブロック30の倒れ込みを抑制できる。中央ブロック40及び端ブロック30の倒れ込みが抑制できるため、大ブロック100全体として、ブロック剛性が向上する。従って、幅方向サイプ60が大ブロック100に2つ形成されていても、大ブロックの耐久性能の低下を抑制することができる。
【0039】
本実施形態に係るタイヤによれば、タイヤ径方向における大ブロック100の接地面100aからタイバー150までの深さDtは、幅方向サイプ60の深さDsよりも浅い。これにより、端ブロック30のブロック剛性が向上するため、大ブロックの耐久性能の低下をさらに抑制することができる。
【0040】
(1.4)変形例
本実施形態に係る変形例について、図5及び図6を参照しながら説明する。図5は、本実施形態の変形例に係る大ブロック100の平面図である。すなわち、トレッド面視における大ブロック100の平面図である。図6は、図5のB−B線における断面図である。具体的には、図5は、大ブロック100のトレッド幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面図である。なお、上述した実施形態と同様の部分は、適宜省略する。
【0041】
図5に示されるように、変形例に係る大ブロック100は、複数の幅方向サイプ60によって、3以上の中ブロック20と1以上の小ブロック50とに区画される。具体的には、大ブロック100は、3つの中ブロック20と2つの小ブロック50とに区画される。タイヤ周方向における小ブロック50の両側に中ブロック20が隣接する。具体的には、タイヤ周方向における小ブロック50の一方側には、端ブロック30が隣接する。タイヤ周方向における小ブロック50の他方側には、中央ブロック40が隣接する。
【0042】
タイヤ周方向における小ブロック50の長さをL3とする。L3は、L1及びL2よりも短い。すなわち、小ブロック50の長さL1は、中ブロック20の長さL1及びL2よりも短い。小ブロック50の長さL3を短くすることによって、大ブロック100の長さを長くすることなく、端ブロック30及び中央ブロック40の長さを確保することができる。従って、幅方向サイプ60の数が増えても端ブロック30及び中央ブロック40のブロック剛性を確保できる。
【0043】
大ブロック100を中ブロック20と小ブロック50とに区画するため、大ブロック100には、複数の幅方向サイプ60が形成される。すなわち、幅方向サイプ60の数を増やすことができる。小ブロック50は、端ブロック30及び中央ブロック40に隣接するため、小ブロック50は、倒れ込みが抑制される。その結果、幅方向サイプ60の数を増やしても、大ブロック100全体として、ブロック剛性の低下を抑制できるため、大ブロックの耐久性能の低下をさらに抑制することができる。
【0044】
図6に示されるように、本変形例においても、タイヤ径方向における大ブロック100の接地面100aからタイバー150までの深さDtは、幅方向サイプ60の深さDsよりも浅い。これにより、端ブロック30のブロック剛性が向上するため、大ブロックの耐久性能の低下をさらに抑制することができる。
【0045】
(2)第2実施形態
(2.1)トレッドパターンの構成
本実施形態に係るタイヤのトレッド部1の概略構成について、図7及び図8を参照しながら説明する。図7は、第2実施形態に係るタイヤのトレッド部1の平面展開図である。上述した第1実施形態及びその変形例と同様の部分は、適宜省略する。
【0046】
本実施形態に係るタイヤは、大ブロック101、周方向主溝200、幅方向溝300をトレッド部1に備える。大ブロック101は、周方向主溝200及び幅方向溝300によって区画される。複数の大ブロック101は、タイヤ周方向に並ぶ。従って、複数の大ブロック101によって、ブロック列が形成される。本実施形態において、ブロック列は、センターブロック列及び一対のセカンドブロック列が設けられる。センターブロック列は、タイヤ赤道線CL上に設けられる。セカンドブロック列は、トレッド幅方向において、周方向主溝200を挟んで、センターブロック列に隣接する。
【0047】
幅方向溝300は、大ブロック101のトレッド幅方向における一方側の側面に開口し、他方側の側面には開口しない。大ブロック101のトレッド幅方向における一方側の側面に開口される幅方向溝300と、大ブロック101のトレッド幅方向における他方側の側面に開口される幅方向溝300とのタイヤ周方向における位置は互いにずれている。
【0048】
上述した第1実施形態では、トレッド幅方向において、タイバー150の長さは、幅方向溝300の長さと等しかった。本実施形態において、トレッド幅方向におけるタイバー150の長さは、幅方向溝300の長さより短い。
【0049】
その他の構成は、上述した実施形態と同様である。
【0050】
(2.2)大ブロック101の構成
大ブロック101の概略構成について、図8及び図9を参照しながら説明する。図8は、第2実施形態に係る大ブロック101の平面図である。すなわち、トレッド面視における大ブロック101の平面図である。図9(a)は、第2実施形態に係る大ブロック101の部分斜視図である。図9(b)は、図9(a)のC−C線における断面図である。C−C線は、周方向サイプ80に沿った線である。
【0051】
本実施形態に係る大ブロック101の接地面101aには、周方向サイプ80が設けられている。周方向サイプ80は、タイヤ周方向に沿って延びる。大ブロック101の形状は、上述した第1実施形態の大ブロック100がトレッド幅方向に隣接した形状である。具体的には、トレッド幅方向に隣接した一対の大ブロック100が周方向サイプ80を挟んで隣接している。さらに、一対の大ブロック100がタイヤ周方向にずれている。従って、一方の大ブロック100の中央ブロック40は、他方の大ブロック100の端ブロック30に周方向サイプ80を挟んで隣接する。
【0052】
周方向サイプ80は、サイプ平行部80aとサイプ傾斜部80bとを有する。サイプ平行部80aは、タイヤ周方向と平行である。サイプ傾斜部80bは、タイヤ周方向に対して傾斜する。
【0053】
大ブロック101の接地面101aには、補助幅方向サイプ65が設けられている。補助幅方向サイプ65は、トレッド幅方向に延びる。補助幅方向サイプ65は、端ブロック30に設けられている。補助幅方向サイプ65は、一方の周方向主溝200にのみ連通する。
【0054】
タイヤ周方向において、連通サイプ90及びタイバー150を挟んで、大ブロック101どうしが隣接する。連通サイプ90は、トレッド幅方向において一方側に設けられる幅方向溝300と他方側に設けられる幅方向溝300とに連通する。
【0055】
図9(a)及び図9(b)に示されるように、サイプ傾斜部80bの溝底には、タイヤ径方向において突出する突部85が設けられる。
【0056】
図9(b)に示されるように、タイヤ径方向におけるサイプ平行部80aの深さをDc1とする。Dc1は、大ブロック101の接地面101aからサイプ平行部80aの溝底までのタイヤ径方向に沿った高さである。タイヤ径方向におけるサイプ傾斜部80bの深さをDc2とする。Dc2は、大ブロック101の接地面101aから突部85までのタイヤ径方向に沿った高さである。サイプ傾斜部80bの溝底には、突部85が設けられるため、タイヤ径方向において、サイプ傾斜部80bの深さは、サイプ平行部80aの深さよりも浅い。
【0057】
本実施形態において、タイヤ径方向における深さの関係は、Dc1>Dc2>Ds>Dtとなっている。すなわち、サイプ平行部80aの深さは、サイプ傾斜部80bの深さよりも深い。サイプ傾斜部80bの深さは、幅方向サイプ60の深さよりも深い。幅方向サイプ60の深さは、タイヤ径方向における大ブロック100の接地面100aからタイバー150までの深さよりも深い。
【0058】
タイヤ径方向における深さの関係は、上述した関係に限られず、適宜変更可能である。例えば、サイプ傾斜部80bの深さは、幅方向サイプ60の深さよりも浅くてもよい。
【0059】
(2.3)作用効果
サイプ傾斜部80bは、サイプ平行部80aに比べると、タイヤ周方向に対して傾きを有するため、タイヤ周方向に開きやすい。本実施形態に係るタイヤによれば、タイヤ径方向において、サイプ傾斜部80bの深さは、サイプ平行部80aの深さよりも浅い。これにより、サイプ傾斜部80bは、サイプ平行部80aよりも開くにくくなるため、大ブロック101のブロック剛性を向上できる。
【0060】
周方向サイプ80は、サイプ平行部80aだけでなく、サイプ傾斜部80bも有するため、大ブロック101は、タイヤ周方向に沿ったエッジ成分だけでなく、トレッド幅方向に沿ったエッジ成分を有する。従って、氷雪性能が向上する
【0061】
(3)比較評価
本発明に係るタイヤの効果を確かめるために、氷上性能及びブロック耐久性能について評価を行った。なお、本発明は、以下の実施例に限定されないことは、もちろんである。
【0062】
(3.1)実施例及び比較例
氷上性能及びブロック耐久性能能の評価にあたり、表1に示される実施例及び比較例に係るタイヤを用いた。
【0063】
比較例1では、幅方向サイプを2本設けた。幅方向サイプによって、大ブロックを中央ブロック、端ブロックに区画した。中央ブロックの長さL2が、端ブロックの長さL1よりも短くなるように、幅方向サイプを設けた。比較例1では、タイバーを設けなかった。
【0064】
比較例2では、幅方向サイプを4本設けた。幅方向サイプによって、大ブロックを中央ブロック、端ブロック、小ブロックに区画した。中央ブロックの長さL2が、端ブロックの長さL1と等しくなるように、幅方向サイプを設けた。比較例2では、タイバーを設けなかった。
【0065】
比較例3では、幅方向サイプを4本設けた。幅方向サイプによって、大ブロックを中央ブロック、端ブロック、小ブロックに区画した。中央ブロックの長さL2が、端ブロックの長さL1よりも大きくなるように、幅方向サイプを設けた。比較例3では、タイバーを設けなかった。
【0066】
比較例4では、幅方向サイプを4本設けた。幅方向サイプによって、大ブロックを中央ブロック、端ブロック、小ブロックに区画した。中央ブロックの長さL2が、端ブロックの長さL1と等しくなるように、幅方向サイプを設けた。比較例4では、タイバーを設けた。接地面からタイバーまでの深さDtが、幅方向サイプの深さDsよりも深くなるように設けた。
【0067】
実施例1では、幅方向サイプを4本設けた。幅方向サイプによって、大ブロックを中央ブロック、端ブロック、小ブロックに区画した。中央ブロックの長さL2が、端ブロックの長さL1よりも大きくなるように、幅方向サイプを設けた。実施例1では、タイバーを設けた。接地面からタイバーまでの深さDtが、幅方向サイプの深さDsよりも深くなるように設けた。
【0068】
実施例2では、幅方向サイプを4本設けた。幅方向サイプによって、大ブロックを中央ブロック、端ブロック、小ブロックに区画した。中央ブロックの長さL2が、端ブロックの長さL1よりも大きくなるように、幅方向サイプを設けた。実施例2では、タイバーを設けた。接地面からタイバーまでの深さDtが、幅方向サイプの深さDsよりも浅くなるように設けた。
【0069】
各タイヤとも、タイヤサイズは、11R22.5のものを用いた。トレッドパターンは、上述した実施例及び比較例の違いを除いて、図1に示されたトレッドパターンと同様のものを用いた。
【0070】
(3.2)氷上性能
各タイヤが装着された車両を、氷路面において、停止状態から急加速させた。車両が、所定距離走行するまでの時間を用いて、氷上性能を評価した。比較例1の数値を基準(100)とし、その他の数値を指数で表示した。結果を表1に示す。数値が大きいほど、氷上性能に優れている。
【0071】
(3.3)ブロック耐久性能
ブロック耐久性能は、各タイヤが装着された車両を所定距離走行させた。ブロックの摩耗率が40%になった時点において、幅方向サイプの溝底にクラックが発生しているか目視にて確認した。クラックの発生率により、ブロック耐久性能を評価した。結果を表1に示す。比較例1を基準として、クラックの発生率に応じて、「◎」、「○」、「△」、「×」で評価した。「◎」、「○」、「△」、「×」の順にクラックの発生率が高い。すなわち、「◎」、「○」、「△」、「×」の順に、ブロック耐久性能が低くなる。なお、「◎」及び「○」は、比較例1よりもクラックが発生していない。「△」は、比較例1と同じ程度クラックが発生している。「×」は、比較例1よりもクラックが発生している。
【0072】
(3.4)結果
【表1】
【0073】
表1に示されるように、比較例1に比べて、実施例1、2及び比較例2〜4は、氷上性能は向上している。これは、幅方向サイプの数が増えたことにより、エッジ効果が高まったためである。
【0074】
実施例1及び実施例2では、比較例1〜4に比べて、ブロック耐久性能が優れている。これは、中央ブロックの長さを端ブロックの長さよりも長くすることによって、中央ブロックのブロック剛性が向上したためである。加えて、端ブロックは、タイバーによって支持されるため、端ブロックのブロック剛性が確保できたためである。これらによって、大ブロックのブロック剛性が向上したため、ブロック耐久性能が向上している。
【0075】
実施例2では、接地面からタイバーまでの深さDtが、幅方向サイプの深さDsよりも浅くなるため、幅方向サイプの倒れ込みがさらに抑制される。従って、端ブロックのブロック剛性をさらに確保できるため、ブロック耐久性能が向上している。
【0076】
実施例1及び実施例2では、ブロック耐久性能が向上しているため、幅方向サイプの数が増えた場合であっても、大ブロックの耐久性能の低下を抑制することができる。
【0077】
(4)その他実施形態
本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。本発明はここでは記載していない様々な実施形態を含む。
【0078】
例えば、上述したタイヤでは、幅方向サイプ60によって、大ブロック100は、3つの中ブロック20に区画されていたが、これに限られない。幅方向サイプ60によって、大ブロック100は、4つ以上の中ブロック20に区画されてもよい。従って、例えば、大ブロック100は、2つの端ブロック30と2つの中央ブロック40に区画されてもよい。この場合、端ブロック30と中央ブロック40との間に小ブロック50が設けられてもよいし、中央ブロック40と中央ブロック40との間に小ブロック50が設けられてもよい。
【0079】
幅方向サイプ60は、直線上であったが、これに限られない。幅方向サイプ60は、ジグザグ状にトレッド幅方向に沿って延びてもよい。また、幅方向サイプ60の深さDsは、同一であったが、各幅方向サイプ60において、異なっていてもよい。
【0080】
なお、本発明において、サイプとは、ブロックが接地したときに閉じることが可能な溝幅をもつものである。具体的には、サイプは、1.5mm以下の溝幅をもつ。ただし、TBRタイヤといった大型のバスやトラックに用いられるタイヤにおいては、サイプの溝幅は、1.5mm以上であっても良い。
【0081】
なお、JATMA(日本自動車タイヤ協会)、TRA(The Tire and Rim Association Inc.)、ETRATO(The European Tire and Rim Technical Organization)等の各国の規格によって定められた規定内圧及び規定荷重時において、ブロックが接地したときにサイプが閉じることができればよい。
【0082】
なお、タイヤ周方向又はトレッド幅方向に沿って延びるとは、タイヤ周方向又はトレッド幅方向と平行に延びなくてもよい。タイヤ周方向又はトレッド幅方向に向かって延びればよい。
【0083】
本発明に係るタイヤは、空気入りタイヤであっても良いし、ゴムが充填されたタイヤであっても良い。また、アルゴン等の希ガスが入れられた空気以外の気体入りタイヤであっても良い。
【0084】
上述した実施形態及び変更例は、本発明の効果を損なわない範囲において、それぞれの特徴を適宜組み合わせて用いることができる。
【0085】
このように、本発明の技術的範囲は本明細書の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0086】
1…トレッド部、 20…中ブロック、 30…端ブロック、 40…中央ブロック、 50…小ブロック、 60…幅方向サイプ、 65…補助幅方向サイプ、 80…周方向サイプ、 80a…サイプ平行部、 80b…サイプ傾斜部、 85…突部、 90…連通サイプ、 100,101…大ブロック、 100a,101a…接地面、 105…(大ブロックの)側面、 130…トレッド端ブロック、 150…タイバー、 150a…(タイバーの)上面、 200…周方向主溝、 250…周方向細溝、 300…幅方向溝、 350…トレッド端幅方向溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9