(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977495
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】ひげぜんまいのトルクを測定するための装置
(51)【国際特許分類】
G04D 7/10 20060101AFI20160817BHJP
G04B 17/06 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
G04D7/10
G04B17/06 Z
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-186784(P2011-186784)
(22)【出願日】2011年8月30日
(65)【公開番号】特開2012-53044(P2012-53044A)
(43)【公開日】2012年3月15日
【審査請求日】2014年6月27日
(31)【優先権主張番号】10405156.0
(32)【優先日】2010年8月31日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーク セルッティ
【審査官】
榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第02128723(EP,A1)
【文献】
米国特許第02384520(US,A)
【文献】
西独国特許第00921320(DE,B)
【文献】
特開平10−111190(JP,A)
【文献】
特開昭51−081160(JP,A)
【文献】
特開昭57−000536(JP,A)
【文献】
特開昭59−142429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04D 1/02
G04D 7/10
G04B 17/06
G04B 17/32
G01L 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
てん輪−ひげぜんまい振動子のためのひげぜんまい(5)の、トルクの動的または静的測定のための装置であって、
その上に座部が配置される心棒(2)と、
前記心棒(2)に関連付けられた、基準要素(1)、基準のはずみ車、またはひげぜんまいと、
前記心棒(2)を枢動させるための枢動手段(3、4)と、
前記ひげぜんまい(5)の外側端部を、前記心棒(2)に対して固定したままにするための手段と、
前記座部の一部分の上に設けられた弾性要素(2b)と、
前記弾性要素(2b)上に作用する手段(7)とを備え、
前記ひげぜんまい(5)の前記内側端部が、ひげ玉(5a)に固定されることと、前記心棒(2)の前記座部の直径が、前記ひげ玉(5a)の軸方向開口の壁部との摩擦による駆動連結を可能にする寸法であることと、前記手段(7)の作用の下で、前記駆動連結を形成する前記座部の前記一部分の断面を前記ひげ玉(5a)の前記軸方向開口の寸法より大きい寸法からより小さい寸法にするように、前記弾性要素(2b)が形成されることとを特徴とする装置。
【請求項2】
前記座部が、前記弾性要素(2b)を形成するために少なくとも1つの直径方向の溝を有する、前記心棒の上方部分(2a)内に形成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記座部が、前記心棒(2)の上方部分(2a)内に形成され、前記部分(2a)の前記断面が、この座部と前記心棒(2)の端部との間で縮小され、前記座部へのアクセスをもたらす、請求項1または2のいずれか一項に記載の装置。
【請求項4】
前記心棒(2)の枢動軸が、垂直であり、前記枢動手段が、前記心棒(2)の前記底端部が内部に係合される軸受(3)を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記枢動手段が、第2の軸受を備える、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記第2の軸受が、空気軸受(4)である、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記座部の前記断面を前記ひげ玉(5a)の前記軸方向開口の寸法より小さい寸法にするために、前記弾性要素(2b)上に作用する前記手段(7)が、締付けピンサを備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記ひげ玉(5a)が、前記ひげぜんまい(5)と一体に製作された、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記ひげぜんまい(5)が、以下の材料、すなわちシリコン、酸化シリコン膜を有するシリコン、クウォーツ、ダイヤモンドのうちの1つで製作される、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記ひげぜんまい(5)の前記外側端部が、前記ひげぜんまい(5)が内部にエッチングされた前記材料のウエハ(5b)に固定され、このウエハ(5b)が、フレーム(B)に固定される、請求項1から9の一項に記載の装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の装置を用いてひげぜんまいのトルクを測定するための方法であって、以下の、
前記装置が、測定されるべき前記ひげぜんまい(5)の下に配置されるステップと、
前記心棒(2)の上方部分(2a)の直径が、前記手段(7)の前記作用によって縮小されるステップと、
前記心棒(2)の前記上方部分(2a)が、前記ひげ玉(5a)の前記軸方向開口を通して挿入されるステップと、
前記手段(7)の前記作用が緩められるステップと、
前記心棒(2)が、前記基準のはずみ車(1)から解放されるステップと、
前記心棒‐はずみ車‐ひげぜんまいアセンブリが振動させられるステップと、
前記装置の振動数が測定されるステップと、
前記心棒(2)が停止されるステップと、
前記心棒(2)の前記上方部分(2a)の直径が、前記手段(7)の前記作用によって縮小されるステップと、
前記心棒(2)が、前記ひげ玉(5a)から引き抜かれるステップとを含む方法。
【請求項12】
前記ひげぜんまい(5)の前記外側端部が、このひげぜんまい(5)がエッチングされた材料で製作されたウエハ(5b)に固定され、このウエハ(5b)が、フレーム(B)に固定される、請求項11に記載のひげぜんまい(5)のトルクを測定するための方法。
【請求項13】
前記ウエハ(5b)が、いくつかのひげぜんまい(5)を備える、請求項11または12のいずれか一項に記載のひげぜんまい(5)のトルクを測定するための方法。
【請求項14】
前記心棒(2)が、前記ひげ玉(5a)から引き抜かれると、前記装置が、前記シリコンウエハ(5b)からエッチングされた次のひげぜんまい(5)へと動かされる、請求項13に記載のひげぜんまい(5)のトルクを測定するための方法。
【請求項15】
前記はずみ車(1)の慣性を決定する事前ステップも含む、請求項11から14のいずれか一項に記載のひげぜんまい(5)のトルクを測定するための方法。
【請求項16】
ロボットにより適用される、請求項11から15のいずれか一項に記載のひげぜんまい(5)のトルクを測定するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、てん輪−ひげぜんまい振動子用のひげぜんまいのトルクを測定するための装置に関し、この装置は、心棒と、前記心棒に関連付けられるひげぜんまいまたははずみ車など基準要素と、前記心棒を枢動させるための枢動手段と、この心棒上に配置され、その直径が、前記ひげぜんまいの内側端部に固定されたひげ玉の軸方向開口の壁部との摩擦により駆動連結を可能にする寸法である座部と、前記ひげぜんまいの外側端部を測定中に前記心棒に対して固定したままにするための手段とを備える。
【背景技術】
【0002】
ひげぜんまいを製造するための方法の不正確さおよび幾何学的なばらつきはわずかであるが、通常1%である目標値に対してひげぜんまいのトルクのばらつきを生じる。これは、Invar(登録商標)、Elinvar(登録商標)、またはParachrom(登録商標)合金など金属合金線で製作される、アルキメデススパイラルタイプのひげぜんまい、および、微細加工方法によりシリコン、ダイヤモンド、またはクウォーツウエハから得られるひげぜんまいの両方において観察される。
【0003】
てん輪−ひげぜんまい振動子に必要な動作の精度は、1日に数秒のオーダーであり、これは数十ppmの精度を表す。てん輪−ひげぜんまい振動子の振動数は、てん輪のリムに対してその位置を調整することができる、たとえばナットまたは錘など様々な手段によって調整することができ、それによりてん輪の慣性が修正される。調整の範囲は、通常100秒/日であるが、これは、てん輪とひげぜんまいを自由に結合することにより正確な動作を得るには不十分である。
【0004】
そのため、ひげぜんまいとてん輪を結合させる前に、組合せまたは対合として知られる方法を用いて、ひげぜんまいおよび/またはてん輪の特徴を測定することが必要である。以下で説明するように、従来技術において知られる組合せ方法は満足なものではなく、特に、たとえばシリコンなど、可塑変形の範囲を示さない材料で製作されるひげぜんまいにとって、満足なものではない。
【0005】
ひげぜんまいおよびてん輪を備える腕時計の機械的振動システムの固有振動数fは、f=(1/2π)√(C/I)であり、ここでCは、ひげぜんまいのトルクであり、Iは、(てん輪の慣性モーメントと等しい一次近似としての)振動システム全体の慣性モーメントである。てん輪およびひげぜんまいは、1日に少なくとも2分から5分、したがって1%の桁の精度で、求められる固有振動数が得られるように較正することができる。次いで、たとえば調節器を用いて、あるいは、てん輪によって形成されるはずみ車に対して径方向軸に沿って動かすことができるナット、ねじ、または錘手段により、慣性が調整可能なてん輪の慣性を調整するための手段を用いて、腕時計の微細な調節が行われる。
【0006】
非特許文献1によれば、所与の振動数のてん輪−ひげぜんまい振動子を形成するためにひげぜんまいとてん輪を組み合わせる、3つの方法がある。
・うなりまたは位相の変化による比較、ならびにてん輪の慣性および/またはひげぜんまいの有効長の調整を伴う、基準のてん輪−ひげぜんまいに対するてん輪−ひげぜんまい振動子の動作の比較測定。
・てん輪−ひげぜんまい振動子の振動数とクウォーツなど高精度の振動子との比較、および上記のような調整。
・1組のひげぜんまいおよび1組のてん輪を複数の等級に分類し、目標振動数と比べて2分/日の最大差を有する所与の振動数のてん輪−ひげぜんまい振動子を得るために、対応する等級のひげぜんまいとてん輪を組み合わせること。
【0007】
特許文献1または特許文献2に記載されるような、ひげぜんまいのトルクを測定する静的方法、および、特に特許文献3または特許文献4に記載されるような動的方法の、2つの測定方法がある。
【0008】
これらの測定は、フライス盤(特許文献4)もしくはレーザ(特許文献5)を用いて材料を除去することにより、または特許文献3のようにひげぜんまいの長さを調整することにより、てん輪の慣性を修正することによって振動数を調整するため、あるいは、特に非特許文献2においてP.L.Gagnebinが述べるように、ひげぜんまいのトルクおよびてん輪の慣性に応じてひげぜんまいおよびてん輪を等級分けするために用いることができる。
【0009】
この手順は、てん輪およびひげぜんまいを基準との比較測定によって等級分けすること、ならびに、てん輪を対応する等級のひげぜんまいに結合させることである。ひげぜんまいのトルクを測定するための1つの選択肢は、ひげぜんまいの内側端部を、所定の慣性のはずみ車(てん輪)に関連付けられた心棒上にねじ切りされたひげ玉に固定すること、およびこの振動子の結果的な振動数を測定することであり、それにより、ひげぜんまいのトルクを動的測定により決定することが可能になり、てん輪の慣性がわかる。この測定動作の後に、ひげぜんまいを基準のてん輪から取り外さなければならない。
【0010】
上述の特許文献1または特許文献2のように、試験されるひげぜんまいのトルクを基準のひげぜんまいのトルクと比較することによる、静的測定を実行することも可能である。
【0011】
特許文献6は、ひげ玉をもたないひげぜんまいを用いて動作するように設計された、心棒上に弾性要素を有する計測装置に関する。このシステム(その発明者の名から以下で「Kiesewetterシステム」と呼ぶ)は、端部がスピンドルに直接固定されるひげぜんまい用に設計され、非常に特定の例においてのみ動作する。このシステムは、てん輪心棒に直接取り付けられた、ひげ玉をもたないひげぜんまいの計測を可能にすることを目的とする。このシステムは、標準的なてん輪心棒とともに使用することはできない。さらに、ひげぜんまいを心棒に直接取り付けることには問題が伴うので、このシステムは、時計製作における実際的な用途が見出されなかった。具体的には、この取付けは、溶接によって行われる。ただし、こうしてぜんまいの端部を心棒に直接溶接することは、ひげぜんまいが心出しされ平坦になるように、完璧な制御の下で行われなければならない。この溶接は、機械的に堅固でなければならないが、これはそのような構成に保証される堅固さからは程遠い。さらに、このひげぜんまいは取り外すことができないが、問題が生じた場合にてん輪−ひげぜんまい全体を交換しなければならなくなるので、それは禁止される。たとえば、衝撃の後に枢動部が損傷を受けた場合、心棒のみを交換するのではなく、様々な要素を取り外した後にアセンブリを交換することが必要となり、これはかなりの超過コストを伴う。
【0012】
したがってKiesewetterシステムは、スピンドルに直接取り付けられるひげぜんまいのみを用いて動作するが、挟むことによりスピンドルに固定することを可能にする要素がひげ玉上に設けられないので、このひげぜんまいを、ひげ玉を備えるひげぜんまいでそのまま転置することはできない。そのような要素がひげ玉に加えられるとすれば、てん輪‐ひげぜんまい振動子の製造を意図するてん輪の心棒もまた、修正されなければならない。
【0013】
さらに、挟むこと/締付けることには、ブレードを損傷する危険性があり、てん輪−ひげぜんまい振動子を形成するためには、ひげぜんまいの内側端部がてん輪の心棒に固定されるべきであるので、この原理は、シリコンなどもろい材料で製作されたひげぜんまいに適用することが難しい。したがって、ひげぜんまいのための唯一の知られた組立て方法は、ボンディング(外側端部をスタッドに固定すること)である。
【0014】
Kiesewetterシステムにおいて用いられる心棒は、少なくとも3つの部品、すなわちてん輪を有する心棒自体、ばね8、および締付けコーン7のアセンブリであり、これらは、ひげぜんまいが心棒に固定されるたびに動かされる。このことは、バランス上の欠陥(枢動軸に対する重心の移動)を生じ、それが測定を妨げるおそれがある。
【0015】
さらに、シリコンなど、弾性変形の範囲をもたない材料で製作されるひげぜんまいの場合、ひげ玉は通常、ひげぜんまいとともに1つの部片として製作されるので、ひげぜんまいのねじ切りおよび取外しは、特にひげ玉において破損の危険性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第2,384,520号
【特許文献2】欧州特許2128723号
【特許文献3】仏国特許1502464号
【特許文献4】スイス国特許690874号
【特許文献5】スイス国特許609196号
【特許文献6】ドイツ特許出願公開1523801号
【特許文献7】欧州特許1422436号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】「Theorie d’horlogerie」(「時計製作理論」)(Reymondin et al.、Simonin、1998年)
【非特許文献2】P.L.Gagnebin、Congres Suisse de Chronometrie(スイス時間測定法会議)の文書(1966年、321頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、特に、上述のKiesewetterシステムの多くの欠点をなくすことであり、上述の破損の危険性を少なくとも部分的に是正することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
したがって、本発明の主題は、請求項1に記載の、てん輪‐ひげぜんまい振動子のためのひげぜんまいのトルクを測定するための装置である。
【0020】
好ましくは、この装置は、てん輪‐ひげぜんまい振動子のためのひげぜんまいのトルクを動的に測定するために使用され、前記心棒は、所定の慣性のはずみ車に固定される。
【0021】
本発明は、測定されるべきひげぜんまいが、シリコン、ダイヤモンド、またはクウォーツなど、弾性変形の範囲をもたない材料で製作されるひげぜんまいであるときに、特に有用である。
【0022】
本発明がより具体的にしかし排他的にではなく意図するシリコンひげぜんまいの製造は、マイクロエレクトロニクス構成要素の製造用と同じフォトリソグラフィー技術を用いる。樹脂マスクが、シリコンウエハの表面上に形成され、構成要素の幾何学形状を規定する。次に、ディープエッチングを用いて、マスクによって保護されない場所の材料を除去して、単一レベル上(構成要素の厚さ全体上と同じ)または複数のレベル上のいずれかに、構成要素を製作する。次いで、このひげぜんまいを通常の単一金属のてん輪と結合させることにより、熱補正されたてん輪−ひげぜんまい振動子、すなわち特許文献7に記載されるような、熱に伴う動作のばらつきをほとんどまたはまったく示さない振動子を製作することを可能にするように、ひげぜんまいの結果的な熱係数を得るために、熱酸化を実施してシリコンを酸化シリコン層で覆う。次いでこのひげぜんまいは、計測および等級分けされる。
【0023】
好ましくはひげぜんまいが基準のてん輪に結合された後にその振動数を測定することにより実行される、それぞれのひげぜんまいのトルクの点検は、ひげぜんまいが、シリコンウエハに依然固定されたままである間に、測定装置の振動心棒に対する固定点に固定されたままである間に、またはひげぜんまいがウエハから取り外された後にも、実行できることが有利である。
【0024】
理想的な状況は、ひげぜんまいがエッチングされたシリコンウエハにひげぜんまいが依然取り付けられている間に、振動数を測定することにより、測定、すなわち静的または好ましくは動的測定を実行できることである。ただしこれは、測定を行うために用いられる手段に関する制約を課す。通常直径150mmのウエハ(6インチウエハ)上でこの測定を行うためには、適用を単純にするために、機械的測定手段がウエハの1つの同じ面上にあることが有利である。
【0025】
添付の図面は、本発明の主題である測定装置の一実施形態を概略的に例として示す。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】ひげぜんまいが取り付けられた状態にある測定装置を示す、
図1と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明による測定装置は、好ましくは、基準のてん輪を備え、このてん輪は、心棒2に取り付けられた所定の慣性のはずみ車1を備え、心棒2の底端部は、軸受3内に載る。この装置は、ひげぜんまいのトルクの動的測定用に設計されている。図示しない変形形態によれば、はずみ車1の代わりに、心棒2を所定のトルクの基準のひげぜんまいに結合させることができ、それにより、精度がより低いトルクの静的測定を行うことが可能になる。
【0028】
第2の枢動部4を、たとえばはずみ車1のすぐ上に配置される空気軸受によって設けることができる。第2の枢動部はまた、シリコンウエハ5b内にエッチングされ依然固定されており、測定装置が取り付けられるフレームBに固定されるひげぜんまい5のみによって設けることができる。この変形形態は、品質係数を低下させるが、振動数測定中に得られる精度は組合せを実行するのに十分なままであることを、試験が示している。
【0029】
ひげぜんまい5は、好ましくは、ひげ玉5aとともにシリコンウエハ5b内にエッチングされ、ひげ玉5aは、ひげぜんまい5の内側端部とともに1つの部片として製作され、座部として働く心棒2の上方部分2aに係合するために、軸方向開口を備える。
【0030】
はずみ車1の上方にある心棒2の部分2aは、直径方向で分割され、弾性要素2bを構成する。2つの直径方向の分割部は、
図3に示すように構成される90°の角度をそれらの間で形成することが有利である。弾性要素2bは、締付けピンサ7と結合される。ピンサ7は、心棒2の上方部分2aの断面を、前記ひげ玉5aの軸方向開口の寸法より大きい寸法から小さい寸法へと変えることを可能にし、それにより、ひげぜんまいが心棒2の部分2aに取り付けられるとき、およびそこから分離されるときに、ひげ玉およびひげぜんまいに機械的に応力を加えないことを可能にし、シリコンが弱さにより破損することを防止する。
【0031】
上記の測定装置の振動数は、光学手段8により既知のやり方で測定することができることが有利である。振動数の測定は、本発明の部分を形成せず、本発明を理解するために必要ではないので説明しない。
【0032】
ひげぜんまい5のひげ玉5aを受けるように設計された、心棒2の上方部分2aの座部は、ひげぜんまい5を心棒2に沿って正確に位置決めすることを可能にするための軸受表面2cを備えることが有利である。好ましくは、心棒2の上方部分2aは、ひげ玉5aの軸方向開口との係合をより容易にするために、その上方端部に円錐部分を有する。
【0033】
したがって、Kiesewetterシステムと比較すると、このシステムは大幅に単純であり、心棒はより少ない要素を有する。ひげ玉を心棒に固定するために広く動くことは、Kiesewetterシステムの作り付けの動く要素(ばねおよびコーン)を、てん輪のバランスを変化させない心棒上に配置される弾性要素で有利に置き換えることが可能になる。
【0034】
さらに、直径を縮小および拡大するステップを逆転することは、いくつかの重要な結果をもたらす。具体的には、ひげ玉−ひげぜんまいアセンブリを装置に固定するために心棒の直径を拡大することは、
Kiesewetterシステムの心棒上の、測定ごとおよびひげぜんまいごとに異なる可能性がある、さらなるおよび制御不可能なバランス上の欠陥をもたらす作り付けの可動部品を除去すること、
Kiesewatterシステムでは不可能である、ひげ玉が作り付けられたひげぜんまいを心棒に固定すること、
Kiesewetterシステムの場合の、無視できない機械的ストレスおよび歪みを伴う機械的運動の代わりに、摩擦のみによってひげぜんまいおよびそのひげ玉を駆動することを可能にする。
【0035】
1つの例示的実施形態では、締付けピンサ7は、心棒の直径を、その端部にて30%以上減少することを可能にする。たとえば、ひげ玉の軸方向開口の直径は、0.5mmであり、点検装置の分割された心棒の外側直径は、0.6mmである。締付けピンサ7は、この直径を0.4mmに縮小することを可能にし、および心棒2の部分2aを、摩擦なくしてひげ玉5の軸方向開口を通して挿入することを可能にする。締付けピンサ7が緩められるときに、弾性要素2bによって生み出される力は、純粋に径方向であるので、ひげ玉5aの破損の危険性は極度に低い。締付けピンサ7を緩めた後のひげぜんまい5のひげ玉5aの摩擦による連結は、測定を可能にするために必要な摩擦力よりも数桁大きい。
【0036】
上記装置を用いてひげぜんまいのトルクを測定するための典型的な順序は、以下のやり方で進めることができる。
測定装置が、測定されるべきひげぜんまい5の下に配置される、
軸2の部分2aの直径が、締付けピンサ7により縮小される、
心棒2の部分2aは、ひげ玉5aの軸方向開口を通して挿入される、
締付けピンサ7が緩められる、
心棒2が、基準のはずみ車1から解放される、
心棒−はずみ車−ひげぜんまいアセンブリが振動させられる、
振動数が測定される、
心棒2が停止される、
心棒2の部分2aの直径が、締付けピンサ7により縮小される、
心棒2が、ひげ玉5aから引き抜かれる
測定装置が、次の測定を行うことができるように、シリコンウエハ5b内にエッチングされた隣のひげぜんまい5へと移動する。
【0037】
当然、いくつかのステップを同時に実行することができる。
【0038】
測定装置は、3つの線形自由度(3DDL)を有するロボットにより動かすことができることが有利である。一例を挙げると、シリコンウエハ5bのひげぜんまいは、10mm離間され、ひげぜんまい5の外径は、8mmである。この装置は、1枚の同じウエハ上に製作された(通常175個のひげぜんまいが直径150mmのウエハ上に製作される)すべてのひげぜんまいのトルクを測定すること可能にする。
【0039】
ひげぜんまい5は当然、ひげぜんまい5をウエハ5bに結合させる、外部付属部品によって保持されることが有利である。これにより、その凹地点を固定し続けることが可能になる。ひげぜんまいが測定のためにウエハ5bから取り外される場合、ひげぜんまいの外側端部の取付け点を固定するための手段を設けなくてはならない。
【符号の説明】
【0040】
1 はずみ車
2 心棒
2a 心棒の上方部分
2b 弾性要素
2c 軸受表面
3 枢動手段
4 駆動手段
5 ひげぜんまい
5a ひげ玉
5b ウエハ
7 締付ピンサ
8 光学手段
B フレーム