特許第5977541号(P5977541)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977541
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】走査型眼底撮像装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20160817BHJP
   A61B 3/12 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   A61B3/10 R
   A61B3/12 E
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-47668(P2012-47668)
(22)【出願日】2012年3月5日
(65)【公開番号】特開2013-180163(P2013-180163A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2015年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082670
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 民雄
(72)【発明者】
【氏名】原 広志
(72)【発明者】
【氏名】沖川 滋
【審査官】 宮川 哲伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−225965(JP,A)
【文献】 特開2012−213490(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/125698(WO,A1)
【文献】 特開昭60−132536(JP,A)
【文献】 特開平06−148525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 − 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の眼底に照射スポット光を照射しつつ前記眼底を走査する眼底走査光学系と、前記照射スポット光を受像して受像信号を出力する受像光学系と、該受像光学系からの受像信号を用いて眼底像を構築する眼底像構築部とを有し、前記眼底走査光学系は前記眼底を垂直方向と水平方向とに走査する走査ミラーを有し、該走査ミラーはミラー駆動回路により往動方向と復動方向との間で往復振動され、前記眼底走査光学系の光路からオフセットされた位置でかつ前記眼底と共役な面内に画像を取り込むためのピクセルクロックの発生間隔を調整するマスクが設けられ、前記眼底像構築部は、前記マスクの像を用いて前記走査ミラーの振れ角度に対する前記画像の取り込み間隔を調整することを特徴とする走査型眼底撮像装置。
【請求項2】
前記眼底像構築部は、前記走査ミラーの往動方向の走査による眼底像と前記走査ミラーの復動方向の走査による眼底像とが合成されたフレーム画像を構築する前に予め前記マスクの像を含む複数個の眼底像を取得して、前記画像の取り込み間隔を調整することを特徴とする請求項1に記載の走査型眼底撮像装置。
【請求項3】
被検眼の眼底に照射スポット光を照射しつつ前記眼底を走査する眼底走査光学系と、前記照射スポット光による反射スポット光を受像して受像信号を出力する受像光学系と、前記受像光学系からの受像信号を用いて眼底像を構築する眼底像構築部とを有する走査型眼底撮像装置に用いる眼底撮像方法であって、
前記眼底走査光学系は前記眼底を走査すべく往復振動される走査ミラーを有し、前記眼底走査光学系の光路オフセットされた位置に画像を取り込むためのピクセルクロックの発生間隔を調整するマスクを設け、該マスクの像を用いて前記走査ミラーの振れ角度に対する前記画像の取り込み間隔を調整することを特徴とする眼底撮像方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照射スポット光により眼底を走査しながら眼底各部位からの照射スポット光による反射スポット光を受光することにより眼底像を構築する走査型眼底撮像装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、照射スポット光により眼底を走査しながら眼底各部位からの照射スポット光による反射スポット光を受光することにより眼底像を構築する走査型眼底撮像装置(SLO)が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この走査型眼底撮像装置には、照射スポット光により眼底を走査するミラーを有し、このミラーを往復動させ、ミラーの往動時とミラーの復動時とに眼底像を捕捉して、高解像度の眼底像を高速で構築するものが知られている。
【0004】
この種の走査型眼底撮像装置では、照射スポット光により眼底を走査するミラーと眼底像としてのフレーム画像を構築する画像構築部との動作タイミングを合わせるために、ミラー駆動回路から出力される同期信号をトリガー信号に用いて、眼底像の取り込み開始タイミングを決定している。
【0005】
この種の走査型眼底撮像装置では、ミラーの往動により取り込む眼底像とミラーの復動により取り込む眼底像とのミラー面上でのタイミングを合わせるために、ミラーの往動により取り込む眼底像の取り込み開始タイミング信号とミラーの復動により取り込む眼底像の取り込み開始タイミング信号とをミラーの振動の一周期に対して電気的に半周期ずらして生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−212103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、そのミラー駆動回路の同期信号を発生する回路は、例えば、抵抗とコイルとからなる発振器から構成されている。その発振器は、その電気的特性が環境温度により変化するという温度特性を有しており、ミラーの振動周期に対して同期信号の生成周期が温度によって変化する。
【0008】
このため、ミラーの振動周期が機械的に安定していて時間的に一定であるとしても、このミラーの振動に基づいてミラー駆動回路から出力される同期信号は、時間的に変動する。
従って、ある温度において、ミラーの振れ角度位置と同期信号の発生位置とを一対一に対応づけて調整していたとしても、温度が変化するとミラーの振れ角度位置と同期信号の発生位置との対応関係が変化する。
【0009】
このため、ミラーの往動方向の画像の振れ角度に対する取り込み開始タイミングと、ミラーの復動方向の振れ角度に対する画像の取り込み開始タイミングとがずれ、往動方向の走査の画像取り込み終端位置と復動方向の走査の画像取り込み開始位置とを電気的なタイミング調整のみにより一致させることはできないという不都合があり、往動方向の走査による眼底像と復動方向の走査による眼底像とを合成してフレーム画像を構築すると、フレーム画像が不連続となる。
【0010】
また、走査ミラーの振れ角度の最大位置近傍で走査ミラーの変位速度が遅くなるので、画像を取り込むためのピクセルクロックの間隔を調整するという工夫を何ら行わなければ、ミラーの振れ角度に起因する画像の収差が発生する。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、特に、ミラーの振れ角度に起因する画像の収差を除去して高解像度のフレーム画像を構築することが可能な走査型眼底撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の走査型眼底撮像装置は、被検眼の眼底に照射スポット光を照射しつつ眼底を走査する眼底走査光学系と、照射スポット光を受像して受像信号を出力する受像光学系と、受像光学系からの受像信号を用いて眼底像を構築する眼底像構築部とを有し、眼底走査光学系は眼底を垂直方向と水平方向とに走査する走査ミラーを有し、走査ミラーはミラー駆動回路により往動方向と復動方向との間で往復振動され、眼底走査光学系の光路からオフセットされた位置で眼底と共役な面の位置に、ピクセルクロックの発生間隔を調整するマスクが設けられ、眼底像構築部は、マスクの像を用いて走査ミラーの振れ角度に対する画像の取り込み間隔を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ミラーの振れ角度に起因する収差を除去して高解像度のフレーム画像を構築することが可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は本発明に係る走査型眼底撮像装置の光学系の一例を示す説明図である。
図2図2は照射スポット光による眼底の走査状態を模式的に示す説明図である。
図3図3は回転駆動機構の一例を示す斜視図である。
図4図4は照射スポット光の偏光軸の所定角度毎に取得された眼底像を示す説明図である。
図5図5図4に示す眼底像を重ね合わせ処理することにより構成された重ね合わせ眼底画像を示す説明図である。
図6図6図1に眼底像構築部の要部構成を示すブロック図である。
図7図7図1に示すレゾナントミラーの変位角度と角速度との関係を示す説明図である。
図8図8は垂直同期信号のずれによって生じる往動方向の走査による画像取り込み終端位置と復動方向の走査による画像取り込み開始位置とのずれを示す説明図である。
図9図9図8の走査により取得される眼底像の乱れを示す説明図である。
図10図10は眼底走査光学系に設けられたマスクの形状を示す平面図であって、眼底と共役な位置に設けられているマスクを走査している状態を示す説明図である。
図11図10のマスクの走査によって得られたマスク像を示す部分拡大図である。
図12図12は眼底走査光学系の光路からオフセットされた位置で眼底と共役な面内に設けられたマスクを走査している状態を示す平面図である。
図13図13図12に示すマスク走査により取得された黒線状部像の説明図であって、ピクセルクロック信号の発生間隔調整前の画像を示す説明図である。
図14図14図12に示すマスク走査により取得された黒線状部像の説明図であって、ピクセルクロック信号の発生間隔調整後の画像を示す説明図である。
図15図15はシステムクロック信号とピクセルクロック信号とADC出力データと画像メモリへの書き込みデータとのタイミングを示すタイミングチャートである。
図16図16は発生間隔調整前のピクセルクロック信号と発生間隔調整後のピクセルクロック信号とを対比して示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0015】
以下に、本発明に係る走査型眼底撮像装置の光学系の構成及び作用の概要を説明した後、本発明に係る走査型眼底撮像装置の実施例の詳細構成について説明する。
(走査型眼底撮像装置の構成及び作用の概要)
図1において、1は眼底走査光学系、2は共用光学系、3は受像光学系、4は眼底像構築部である。その眼底走査光学系1は、レーザ光源部5を有する。レーザ光源部5は、レーザ光源6と、このレーザ光源6から出射されたレーザ光Pを集光してコリメート光束に変換するコリメートレンズ7と、偏光板8とを有する。
【0016】
偏光板8はレーザ光源部5から出射されたレーザ光のうち特定方向に振動する直線偏光(P偏光)のレーザ光を通過させる機能を有する。
共用光学系2は、眼底走査光学系1と受像光学系3とに共用され、ビームスプリッタ9と、スキャナ10と、1/2波長板11と、リレーレンズ12と、反射ミラー13と、合焦レンズ14と、対物レンズ15とを有する。スキャナ10は、例えばレゾナントミラー10aと、ガルバノミラー10bとから構成されている。
【0017】
そのビームスプリッタ9は、偏光板8、後述する偏光板19と協働して、直線偏光を有するレーザ光Pを通過させかつこのレーザ光Pの直線偏光の方向と平行な方向の直線偏光を有する反射光の通過を阻止ししかもレーザ光Pの直線偏光の方向と直交する方向の直線偏光を有する反射スポット光の通過を許可する偏光ビームスプリッタ部として機能する。
【0018】
スキャナ10は、後述する照射スポット光SPにより被検眼Eの眼底Efを図2に示すように走査する役割を果たす。その図2において、Epは乳頭、Ebは血管、Eoは黄斑部を示し、VHはレーザスポット光SPによる垂直方向の走査、HVはレーザスポット光SPによる水平方向の走査を示している。
【0019】
そのレゾナントミラー10aは、眼底Efの垂直方向の走査に用いられ、ガルバノミラー10bは眼底Efの水平方向の走査に用いられる。
1/2波長板11は、P偏光のレーザー光Pの偏光軸を回転させる役割を果たし、1/2波長板11をθ度回転させると、P偏光のレーザ光Pの偏光軸が2θ度回転する。
【0020】
図3はその1/2波長板11の回転駆動機構を示し、その図3において、16はギアドステッピングモータ、17は小径ギア、18は大径ギア、18’はその大径ギア18の回転軸である。1/2波長板11は、回転軸18’に取り付けられ、小径ギア17、大径ギア18により回転される。
【0021】
そのギアドステッピングモータ16は、1/2波長板11を所定角度毎にステップ回転させる役割を有し、ここでは、15度毎に1/2波長板11を回転させると共に、その15度の回転毎に角度タイミング信号を眼底像構築部4に出力する。
【0022】
合焦レンズ14、対物レンズ15は被検眼Eの眼底Efに照射スポット光SPを形成する合焦光学系としての役割を果たす。眼底Efからの反射スポット光は対物レンズ15により集光され、合焦レンズ14、反射ミラー13、リレーレンズ12、1/2波長板11、スキャナ10を経てビームスプリッタ9に導かれる。
【0023】
眼底Efからの反射スポット光には、眼底Efの複屈折性により、P偏光成分の光の他、S偏光成分の光が含まれている。その眼底Efからの反射スポット光は、ビームスプリッタ9により反射されて、受像光学系3に導かれる。
【0024】
受像光学系3は、偏光板19と、結像レンズ20と、共焦点絞り21と、受像器22とを備えている。偏光板19はP偏光に対して直交する直線偏光としてのS偏光の光を透過させる役割を果たす。その受像器22はS偏光の反射スポット光を受像し、その受像信号は後述する画像処理部23に入力される。
【0025】
その共焦点絞り21は、眼底Efが合焦状態にあるときに、被検眼Eの眼底Efと共役位置に配置され、その被検眼Eの角膜Ecはスキャナ10の間の光路上の点Q1’と共役とされている。また、眼底Efは共用光学系2の光路上の点Q1”と共役とされ、眼底Efの眼底像は点Q1”含む面内にいったん空中結像される。
【0026】
眼底像構築部4は、画像処理部23と、記憶部24と、操作部25とから概略構成されている。画像処理部23には、角度タイミング信号に基づいて1/2波長板11の所定角度毎(15度毎)に図4に示す1枚の眼底像Ef’を取得し、この眼底像Ef’を記憶部24に記憶する処理を行う。
【0027】
ついで、画像処理部23は、例えば、角度タイミング信号の個数をカウントして、1/2波長板11の90度の回転毎に、図5に示す1枚の重ね合わせ眼底画像Ef”を構築する。
【0028】
例えば、図4(a)〜図4(f)は、1/2波長板11をθ=15度ずつ回転(偏光軸を30度ずつ回転)させることにより取得された合計6枚の眼底像Ef’を示す模式図である。
【0029】
この図4(a)ないし図4(f)において、網点の密度が高い部分は、眼底像Ef’のうち輝度の低い部分であり、網点の密度が低い部分は、眼底像Ef’のうち輝度の高い部分である。
【0030】
この図4(a)〜図4(f)で示すように、眼底Efの複屈折性により、1枚毎の眼底像Ef’には輝度ムラが存在している。照射スポット光SPの偏光軸の回転によって、眼底像Ef’の各部位の輝度ムラの状態が変化する。
【0031】
画像処理部23は、角度タイミング信号の個数をカウントして、偏光軸の180度回転に対応する1/2波長板11の回転角度毎に記憶部24から各眼底像Ef’を読み出し、これらの図4(a)〜図4(f)に示す眼底像Ef’を重ね合わせて、図5に示す輝度ムラ及びゴーストの除去された1枚の重ね合わせ眼底画像Ef”を構築する。
【0032】
(実施例の詳細)
走査ミラー10は、図6に示すように、ミラー駆動回路30によって駆動される。このミラー駆動回路30は、レゾナントミラー駆動回路30aと、ガルバノミラー駆動回路30bとからなる。
【0033】
レゾナントミラー10aは、例えば、そのレゾナントミラー駆動回路30aによって1秒間に4000回往復振動される。すなわち、レゾナントミラー10aの振動周波数は4KHzであり、照射スポット光SPは垂直方向に往復走査される。なお、レゾナントミラー10aの構造については、例えば、特表2009−541784号公報を参照されたい。
【0034】
図7は、そのレゾナントミラー10aの駆動の一周期に相当するレゾナントミラー10aの変位角度と角速度との関係を示す説明図であり、縦軸はそのレゾナントミラー10aの変位角度であり、横軸は時間である。
【0035】
この図7では、レゾナントミラー10aの正の最大振れ角度位置を時間軸の「0」として、レゾナントミラー10aが元の最大振れ角度位置に戻るまでの時間を「T」として、その1/2Tの時間がレゾナントミラー10aの負の最大振れ角度位置として示されている。
【0036】
レゾナントミラー駆動回路30aは、例えば、抵抗とコイルとからなる発振器を備えている。この発振器は、レゾナントミラー10aの一振動周期毎に垂直同期信号SYNCを出力する。その図7においては、レゾナントミラー10aの正の最大振れ角度位置近傍に対応する時間軸の位置で、垂直同期信号SYNCが出力されるものとして示されている。
【0037】
レゾナントミラー10aは、周辺からの制御を受けずに往復動をしていて、外部の周辺機器や周辺回路へ動作状態を知らせる手段として、ある特定の振れ角に達したタイミングで垂直同期信号SYNCを出力する。こうして図2に示す矢印A1〜Anで示すように、眼底Efにおいて、照射スポット光SPにより、往動方向の走査が実行される。
【0038】
その垂直同期信号SYNCの周期は、発振器の抵抗温度特性のため、レゾナントミラー10aの機械的な振動周期が一定であるとしても、環境温度によって変化する。しかし、ここでは、説明の便宜のため、その垂直同期信号SYNCの周期は、環境温度が一定であるとして説明する。
【0039】
その垂直同期信号SYNCは、図6に示すように、カラムカウンター31とピクセルクロック生成回路32とに入力される。カラムカウンター31は、垂直同期信号SYNCの個数をカウントして垂直同期信号SYNCの1/2周期毎にガルバノミラー駆動回路30bへ位置信号を出力すると共に、合成同期信号生成回路33と書き込みアドレス生成回路34とに水平同期信号SYNC’とを出力する。なお、水平同期信号SYNC’が出力されるときには、レゾナントミラー10aは機械的に復動方向に回動している。
【0040】
ガルバノミラー10bは、カラムカウンター31に垂直同期信号SYNCが入力されて位置信号が更新される都度、水平方向に所定角度回動される。また、このとき、レゾナントミラー10aは復動方向に回動されているので、図2に示す矢印B1〜Bnで示すように、眼底Efにおいて、照射スポット光SPにより、復動方向の走査が実行される。カラムカウンター31は、各列に対応され、ロウカウンター35は各列の画素に対応されている。
【0041】
なお、レゾナントミラー10aはその最大振れ角度近傍では角速度が減速されるため、その変位角度曲線Q1はサインカーブに似た形状となる。
【0042】
ピクセルクロック生成回路32は、垂直同期信号SYNCに基づいてタイミング信号としてのピクセルクロック信号PLをロウカウンター35とアナログデジタル変換回路(ADC)36とに出力する。
【0043】
ここでは、そのピクセルクロック信号PLは、1536個とされ、このピクセルクロック信号PLの個数は、画素のドット数に対応している。すなわち、後述する画像メモリの0から1535個の番地に対応している。
【0044】
そのピクセルクロック信号PLの発生開始位置は、垂直同期信号SYNC、水平同期信号SYNC’から所定時間位置とされて、レゾナントミラー10aの変位角度曲線Q1がリニアに変化する位置とされている。なお、そのピクセルクロック信号PLの発生開始位置は、例えば、システムクロック信号を用いて決定され、このシステムクロック信号の周波数はピクセルクロックの周波数よりも数倍程度大きい。
【0045】
ロウカウンター35はピクセルクロック信号PLの個数をカウントして、そのカウント信号を書き込みアドレス生成回路34と、合成同期信号生成回路33とに向かって出力する。書き込みアドレス生成回路34はピクセルクロック信号PLの入力の都度書き込み制御信号WLを調停回路37に向かって出力する。
【0046】
調停回路37は、書き込み・読み出し・停止制御調整を行う機能を有し、この調停回路37には、読み出しアドレス生成回路38から読み出し制御信号RLが入力される。調停回路37は、画像メモリ39にアドレス(番地)信号とR/W信号とを出力する。
【0047】
アナログデジタル変換回路(ADC)36には、受像器22から受像信号が入力され、ピクセルクロック信号PLの入力の都度、受像信号をアナログ・デジタル変換する。そのデジタルデータは画像メモリ39に入力され、この画像メモリ39のピクセルクロック信号PLに対応する番地にデジタルデータが書き込まれる。すなわち、各列の各行にドット単位の画素情報が書き込まれる。
【0048】
その画像メモリ39に記憶されたデジタルデータはPCインターフェース(画像ボード)40を介して画像処理部23としてのパーソナルコンピュータに入力される。そのパーソナルコンピュータには、表示モニタ26が接続され、眼底像Ef’が操作部25の操作に応じて表示される。
【0049】
合成同期信号生成回路33は、カラムカウンター31からの水平同期信号SYNC’の個数とロウカウンター35からのピクセルクロック信号PLとに基づいてフレーム画像を構築するための合成用同期信号SYNC”をPCインターフェース40に出力する。
【0050】
これにより、図2に示すように、眼底Efが垂直方向(カラム方向)に往復走査されつつ、水平方向(ロウ方向)に走査されて、1枚の眼底像Ef’が記憶部24に取り込まれることになる。
【0051】
その図2に示すように、環境温度が一定の場合には、垂直同期信号SYNCの周期が一定であるので、図7に示すレゾナントミラー10aの往動方向の振れ角度位置に対応する画像取り込み開始タイミング信号PL’とレゾナントミラー10aの復動方向の振れ角度位置に対応する画像取り込み開始タイミング信号PL”とは時間的に変動しない。
【0052】
このため、往動方向の走査による画像取り込み終端位置Qfと復動方向の走査による画像取り込み開始位置Qsとが揃っている(往動方向の走査による画像取り込み開始位置Q’sと復動方向の走査による画像取り込み終端位置Q’fとが揃っている)。
【0053】
しかしながら、環境温度が変動すると、垂直同期信号SYNCの周期が変換するので、レゾナントミラー10aの往動方向の振れ角度位置に対応する画像取り込み開始タイミングとレゾナントミラー10aの復動方向の振れ角度位置に対応する画像取り込み開始タイミングとが時間的に変化し、図8に示すように、往動方向の走査による画像取り込み終端位置Qfと復動方向の走査による画像取り込み開始位置Qsとが不揃いとなる。
【0054】
その結果、往動方向の走査による眼底像と復動方向の走査による眼底像とを合成してフレーム画像としての眼底像Ef’を構築した場合に、往動方向の走査による画像と復動方向の走査による画像とにずれが生じ、図9に示すように、不連続なフレーム画像となる。
【0055】
この実施例では、図1に示すように、眼底走査光学系1の光路の眼底Efと共役な点Q1”の位置に、往動方向の走査による画像取り込み終端位置Qfと復動方向の走査による画像取り込み開始位置Qsとを揃えるためのマスク41と、ピクセルクロックPLの発生間隔を調整するためのマスク42とが設けられている。
【0056】
(マスク41の説明)
マスク41は、図10に示すように、正方形状の開口41aを有し、その開口41aの周縁に垂直方向に等間隔の櫛歯部41bが形成されている。このマスク部41aは黒色であり、往動方向の走査による画像と復動方向の走査による画像とを合成すると、図11に示すように、櫛歯部41bがずれた黒色の櫛歯像41b’が得られる。
【0057】
この図11には、往動方向の走査Ai、Ai+1により取得された櫛歯像41b’と復動方向の走査Biにより取得された櫛歯像Biとが示され、画像取り込みタイミングのずれによって、往動方向の走査により取得された櫛歯像41b’と復動方向の走査により取得された画像とがずれた状態が示されている。
なお、符合41b”は正方形の開口41aの縦方向の周辺部の輪郭を構成する輪郭像を示す。
【0058】
眼底像構築部4は、櫛歯像41b’を用いてレゾナントミラー10aの往動方向の振れ角度位置に対応する画像取り込み開始タイミングとレゾナントミラー10aの復動方向の振れ角度位置に対応する画像取り込み開始タイミングとを調整する。
【0059】
眼底像構築部4は、眼底像Efを構築する前に予め櫛歯像41b’を含む複数個の眼底像Ef’を取得して、画像取り込み開始タイミングを調整しても良いし、櫛歯像41b’を用いて相関係数が最大となる櫛歯の位置を計算し、画像取り込み開始タイミングを決定しても良い。
【0060】
眼底像構築部4は、マスク像としての櫛歯像41b’を含む眼底像Ef’をトリミングすることにより櫛歯像41b’を除去する構成としても良い。
なお、この実施例では、図7において、垂直同期信号SYNCから所定時間をおいて、ピクセルクロック生成回路32からあたかもピクセルクロックPLが出力されているかのように描かれているが、これは、説明の便宜のために、画像メモリ39に入力されるタイミング信号として描いたものであって、垂直同期信号SYNCをトリガーとして一定時間間隔でピクセルクロック生成回路32からピクセルクロックPLを出力させ、ピクセルクロックPLを所定個数カウントした時点から画像メモリ39に画像情報を書き込むことを意味しており、画像メモリ39への復動方向の画像情報の書き込み開始タイミングをマスクにより調整することを意味する。
【0061】
(マスク42の説明)
マスク42は、図10図12に示すように、正方形状の反射鏡面42aを有する。なお、レゾナントミラー10aの往動方向の振れ角度位置に対応する画像取り込み開始タイミングとレゾナントミラー10aの復動方向の振れ角度位置に対応する画像取り込み開始タイミングとを調整する必要がない場合には、マスク41に櫛歯部41bを形成していなくとも良い。
【0062】
マスク42には、その反射鏡面42aを横切る方向に延びる複数個の黒線状部42bが等間隔に形成されている。レゾナントミラー10aによる走査は、図12に示すように、この黒線状部42bに対して直交する方向に行われる。
【0063】
このマスク42は、図1に示すように、眼底走査光学系1の光路からオフセットされた位置でかつ眼底Efと共役な面内に配置されている。ガルバノミラー10bはこのマスク42を走査する際には、眼底Efを走査するときの基準設定角度に対して所定角度オフセットされる。このガルバノミラー10bのオフセットには、適宜の手段を用いることができる。
【0064】
ピクセルクロックPLの発生間隔が等間隔であるとすると、レゾナントミラー10aの最大振れ角近傍では、レゾナントミラー10aの角速度が遅くなるので、黒線状部42bを横切る速度が遅くなり、黒線状部42bを横切った際に取得されるドット数が多くなる。
【0065】
その一方、レゾナントミラー10aの最大振れ角近傍と最大振れ角近傍との間の中間部分では、レゾナントミラー10aの角速度が速くなるので、黒線状部42bを横切った際に取得されるドット数が相対的に少なくなる。また、レゾナントミラー10aの最大振れ角近傍と最大振れ角近傍との間の中間部分では、レゾナントミラー10aの角速度はリニアとみなすことができる。
【0066】
従って、ピクセルクロックPLの発生間隔を等間隔として黒線状部42bの画像を構築すると、図13に示すように、レゾナントミラー10aの最大振れ角近傍では垂直方向(縦方向)に間延びした黒線状部像42b’が得られ、レゾナントミラー10aの最大振れ角とレゾナントミラー10aの最大振れ角との間の中間部分では、垂直方向(縦方向)に縮んだ黒線状部像42b’が得られる。
【0067】
そこで、眼底像構築部4は、図13に示す黒線状部像42b’を解析して、レゾナントミラー10aの最大振れ角近傍では図16に示すように、ピクセルクロックPLの発生間隔THが中間部分の発生間隔THよりも大きくなるように調整する。
【0068】
図15は、そのシステムクロック信号とピクセルクロック信号PLとアナログデジタル変換回路(ADC)36の出力データと画像メモリ39への書き込みタイミングとの関係を示しており、所定個数のシステムクロック信号に対して画像メモリ39に書き込まれるドットの個数(画素の個数)がレゾナントミラー10aの最大振れ角近傍では少なくなり、これに対して、レゾナントミラー10aの最大振れ角と最大振れ角との間の中間部分では、所定個数のシステムクロック信号に対して画像メモリ39に書き込まれるドットの個数(画素の個数)が相対的に多くなるので、図14に示すように、レゾナントミラー10aの最大振れ角近傍から最大振れ角近傍の間で、同一の幅を有する黒線状部像42b’が取得される。
【0069】
このマスク42による画像取り込み間隔の調整は、例えば、工場出荷時、眼底撮像装置の修理時に行い、画像取り込み間隔の調整後、ガルバノミラー10bは眼底走査を実行するための基準角度位置に設定される。
【符号の説明】
【0070】
1…眼底走査光学系
3…受像光学系
4…眼底像構築部
10…走査ミラー(スキャナ)
22…受像器
30…ミラー駆動回路
42…マスク
42a…反射鏡面
42b…黒線状部
E…被検眼
Ef…眼底
SP…照射スポット光
SYNC…垂直同期信号
SYNC’…水平同期信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16