(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ランプボディと前面カバーとで構成されるランプハウジングを有し、前記前面カバーは光源から出射した光を透過させる光透過性部材で構成されている車両用ランプであって、前記ランプハウジングに支持され、駆動されたときに前記前面カバーを振動させて振動音を発生させるための振動装置を備え、前記振動装置はランプを車両に取り付けたときにランプ外部から露見されない位置に延長された前記前面カバーの延在部に当接されていることを特徴とする車両用ランプ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献1においては、ヘッドライトの光源から出射されてヘッドライトカバーを透過する照射光の一部が振動子によって遮光されないように振動子をヘッドライトカバーの光透過領域以外の箇所に配置しているが、ヘッドライトを外から見たときにヘッドライトカバーを透かして振動子が露見することがあり、ヘッドライトの外観上の見栄えが低下することになる。さらに、ヘッドライトカバーをヘッドライトボディ等に対して密封状態に固着した構成のヘッドライトの場合には、振動子をヘッドライトカバーの内側に固定することは組み立てにおいて煩雑な作業が要求されることになり、しかも振動子をヘッドランプから取り出すことが難しいため、メンテナンスの点で不利になるという問題がある。
【0005】
本発明の目的はランプを振動させて発音を行う一方で、ランプの外観上の見栄えを損ねることがなく、さらに振動装置のランプに対する組み付けやメンテナンスを容易にした車両用ランプを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ランプボディと前面カバーとで構成されるランプハウジングを有し、前面カバーは光源から出射した光を透過させる光透過性部材で構成されている車両用ランプであって、ランプハウジングに支持され、駆動されたときに前面カバーを振動させて振動音を発生させるための振動装置を備えており、当該振動装置はランプを車両に取り付けたときにランプ外部から露見されない位置
に延長された前面カバーの延在部に当接されていることを特徴とする。
【0007】
本発明において、好ましく
は、ランプボディは別体に構成されたバックカバーを有し、振動装置は当該バックカバーに支持される。さらに、好ましくは、
延在部の内面には平坦面を有する固定座が一体に設けられ、振動装置は当該平坦面に配設される。この場合、固定座と振動装置の一方に開口が設けられ、この開口に内挿した締結手段により振動装置を固定座に固定することが好ましい。あるいは、
延在部と振動装置の一方に突起部を有し、当該突起部により
延在部と振動装置が当接される。また、振動装置はランプボディに弾性材により支持され、当該弾性材の弾性力により
延在部に弾接される構成としてもよい。また本発明において、振動装置は、例えばコイルとマグネットとを備える電磁振動子で構成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、振動装置によって前面カバーを振動して警報音を発音することが可能である一方、振動装置はランプを車両に取り付けたときにはランプ外部から見て、例えば前面カバーを透して見ても露見されることがないためランプの外観上の見栄えが損なわれることはない。また、振動装置はランプハウジングの外部に延長された延在部に配設され、あるいはランプボディと別体のバックカバーに配設されるので振動装置の着脱が容易であり、メンテナンスが容易になる。さらに、前面カバーに設けた固定座によって振動装置をほぼ全面において前面カバーの内面に当接させ、前面カバーを効果的に振動させることができる。あるいは、振動装置は突起部を介して前面カバーに当接されるので、前面カバーが平坦面でない場合、あるいは一部に平坦面を形成しない場合でも振動装置を確実に前面カバーに当接させることができ前面カバーを好適に振動させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
次に、本発明の実施形態1について図面を参照して説明する。
図1は本発明をヘッドランプに適用した自動車の一部の正面図、
図2はそのII−II線拡大縦断面図である。ヘッドランプHLは、前面を開口した容器状をしたランプボディ11と、このランプボディ11の前面開口に取着された光透過性の樹脂からなる前面カバー12とでランプハウジング1が構成されている。このランプハウジング1内には光源を含むランプユニット2が内装されており、点灯したときに光源から出射した光を前記前面カバー12を透して前方に照射する。このヘッドランプHLは自動車CARの車体パネルB例えばトランクリッドやフェンダー等と、前部バンパーBPとの間に設けられた開口内に配設されている。
【0011】
図2はランプハウジング1内に内装された2つのランプユニット2の一方を示している。このランプユニット2は、ここではプロジェクタ型のランプユニットとして構成されており、詳細については省略するが、回転楕円面を基礎としたリフレクタ22と、このリフレクタ22内に配設された光源、例えばLED(発光ダイオード)21と、リフレクタ22で反射されたLED21からの光を前方に向けて照射する照射レンズ23とを含んで構成されている。前記LED21、リフレクタ22、照射レンズ23はベース体24によって一体化されている。また、前記ランプハウジング1内には、ヘッドランプHLを外部から見たときに前記前面カバー12を透してランプハウジング1内の不要な箇所が露見しないようにして外観上の見栄えを改善するための疑似リフレクタ(エクステンション)13が内装されている。
【0012】
前記前面カバー12の下縁部はヘッドランプHLを外部から見たときに露見することがないように、すなわち
図1からも判るように前記エクステンション13あるいは自動車の前部バンパーBPによって覆い隠されるようにランプハウジング1の下側位置にまで下方に向けて平板状に延長されており、この延長された部分は本発明における延在部14として構成されている。この延在部14の背面、すなわち前記前面カバー12の内面に連続された側の面の一部には、振動装置3が一体的に固定されている。この振動装置3は電磁振動子で構成されており、通電されたときの電磁作用によって自身が振動し、これと一体に前記前面カバー12の延在部14ないし前面カバー12全体を振動させ、当該前面カバー12を発音板として機能させて所要の警報音を発生させるものである。
【0013】
図3(a),(b)にそれぞれ外観図と縦断面図を示すように、電磁振動子3は円筒容器状をしたボディ31の内部に配設した筒状コア31aの周囲に駆動コイル32を巻回している。また、ボディ31の開口部に円環板状をしたバネ板33の外周縁部を取着し、このバネ板33の内周縁部に振動板34を取着している。この振動板34の内面には前記筒状コア31aの筒内、すなわち駆動コイル32内に進入配置された円柱状のマグネット(永久磁石)35が一体に取着されている。さらに、前記ボディ31の外周面の2箇所に外径方向に突出したタブ片36を一体に有しており、このタブ片36にはネジを挿通するための挿通穴36aが開口されている。前記コイル32にはハーネスH3が接続されており、前記ボディ31を貫通して外部に引き出されている。
【0014】
この電磁振動子3はハーネスH3を通して駆動コイル32に交流電流を印加することにより、駆動コイル32によって生じる交番磁界とマグネット35の磁界とでマグネット35が筒状コア31aの筒軸方向に往復移動され、これと一体の振動板34はバネ板33を撓めながら板厚方向に往復移動、すなわち振動されるものである。このマグネット35及び振動板34の振動はボディ51に伝達される。
【0015】
図4は
図2の要部の拡大図である。前記電磁振動子3はタブ片36を利用し、挿通穴36aを挿通させたネジ41により前面カバー12の前記延在部14の内面に固定される。このとき、所要寸法のカラー42を介在させることで、電磁振動子3のボディ31の前面は延在部14の背面に密接した状態に当接されて固定されている。また、
図2に示したように、前記電磁振動子3に接続されているハーネスH3は前記ランプハウジング1に内装されているランプ制御ユニット5に電気接続されている。このランプ制御ユニット5は発音制御部51と点灯制御部52を内装したものであり、ハーネスH1により自動車の中央制御ユニット(図示せず)に接続されている。また、ハーネスH2により点灯制御部52が前記ランプユニット2に接続され、この点灯制御部52により前記ランプユニット2を点灯制御する。さらに、ハーネスH3により発音制御部51が前記電磁振動子3に接続され、この発音制御部51により前記電磁振動子3の発音動作を制御する。
【0016】
この実施形態1によれば、ランプ制御ユニット5の発音制御部51により電磁振動子3を駆動すると、前記したようにマグネット35が振動板34とともに振動され、この振動はボディ31に伝達され、さらに前面カバー12の延在部14から前面カバー12のほぼ全体に伝達され、前面カバー12が振動して警報音が発音されることになる。この電磁振動子3はヘッドランプHLを外部から観察したときにエクステンション13やバンパーBPによって覆い隠されており、前面カバー12を透して露見されることがないため、電磁振動子3が露見することによるヘッドランプHLの外観上の見栄えの低下が防止される。また、この電磁振動子3の取付位置はランプユニット2から出射された光の光路内を外れた位置であるので、ヘッドランプHLの光照射の配光に影響を与えることがないのは言うまでもない。その一方で、電磁振動子3を固定している前面カバー12の延在部14はランプハウジング1の外部に露呈された状態であるので、前面カバー12に対して電磁振動子3を着脱すること、すなわち延在部14に対して電磁振動子3を固定し、取り外すことは可能かつ容易であり、電磁振動子3の組付け及びメンテナンスは容易である。
【0017】
図5は実施形態1の変形例の断面図であり、ここでは電磁振動子3を延在部14の前面に当接させている。電磁振動子3を延在部14に固定する構成は
図4と全く同じであるので詳細な説明は省略する。このように延在部14の前面に当接させても、ランプ制御ユニット5の発音制御部51により電磁振動子3を駆動すると、
図3に示したマグネット35が振動板34とともに振動され、この振動はボディ31に伝達され、さらに延在部14から前面カバー12のほぼ全体に伝達され、前面カバー12が振動して警報音が発音されることになる。また、このように電磁振動子3を延在部14に当接させても、電磁振動子3はエクステンション13やバンパーBPによって覆い隠されて外部から露見されることがないのでヘッドランプHLの外観上の見栄えが低下することもない。
【0018】
(実施形態2)
実施形態1では前面カバー12の延在部14をランプハウジング1の外部に延在させて電磁振動子3を固定しているが、電磁振動子3をランプハウジング1の内部に配設してもよい。すなわち、
図2に仮想線で示すように、ランプボディ11の前面開口の下縁部11aを下方にまで延長した構成とし、この下縁部11aに対向して前面カバー12の延在部14を設けるようにするのである。
図6はこれを実現するための実施形態2の要部の拡大図であり、前記前面カバー12の下縁部を下方に平板状に延長して延在部14を形成している構成は実施形態1と同じであるが、ランプボディ11の前面開口の下縁部11aも前記延在部に沿うように下方に延長している。そして、この下縁部11aの一部に取付穴110を開口するとともに、この取付穴110にバックカバー111を着脱可能に設けている。このバックカバー111は取着されたときに周縁のフランジ縁111aがランプボディ11に設けた凹溝部11bに内挿され、当該凹溝部11bに嵌入されているパッキン114によって前記取付穴110を防水している。そして、前記電磁振動子3は前記バックカバー111の内面に固定される。ここでは、バックカバー111の内面に適宜の長さのボス112を立設し、電磁振動子3のボディ31に設けたタブ片36を利用してネジ113で固定している。ボス112の長さを適切に設定することで電磁振動子3の振動板34とバックカバー111の前面との間に振動を許容するための微小間隔を保持することができ、かつその一方でボディ31の前面を前面カバー12の延在部14の内面に密接する。実施形態1と同様に電磁振動子3に接続されているハーネスH3はランプハウジング1の内部を延長されて前記ランプ制御ユニット5に電気接続されている。
【0019】
この実施形態2の構成では、電磁振動子3を駆動したときにはボディ31に伝達されたマグネット35及び振動板34の振動は前面カバー12の延在部14から前面カバー12のほぼ全体に伝達されることになり、前面カバー12が振動して警報音が発音されることになる。同時に電磁振動子3に生じた振動はバックカバー111を介してランプボディ11に伝達され、ランプボディ11を振動して警報音が発音される。これにより、ヘッドランプHLの全体を振動させ、レベルの高い発音が可能になる。また、電磁振動子3はヘッドランプHLを外部から観察したときにエクステンション13とバンパーBPによって覆い隠され、前面カバー12を透してランプの外部に露見されることがないため、ヘッドランプHLの外観が損なわれることはない。さらに、電磁振動子3はバックカバー111に対して取着し、バックカバー111はランプボディ11に対して着脱可能であるので、電磁振動子3をランプハウジング1に対して着脱することは容易であり、電磁振動子3の組付け及びメンテナンスも容易である。また、電磁振動子3はランプハウジング1内に内装されているので防水性に優れており、電磁振動子3の耐水性を向上する上でも有効である。
【0020】
(実施形態3)
ここで、前面カバー12に設ける延在部14は、
図7の実施形態3に示すように、エクステンション13の下側領域でかつランプボディ11の下面の上側に沿った領域において前面カバー12の下縁部の一部を後方に向けて平板状に延長させた構成の延在部14Aであってもよい。この場合にはランプボディ11の下面の延在部14Aに対向する領域に取付穴110を開口し、この取付穴110を塞ぐバックカバー111を着脱可能に設け、このバックカバー111に電磁振動子3を支持させるようにしてもよい。バックカバー111に対する電磁振動子3の支持構造は
図6に示した実施形態2の構造と同じで良く、バックカバー111を取付穴110に装着したときに電磁振動子3のボディ31が延在部14Aに密接されるようにすればよい。このようにしても実施形態2と同様にエクステンション13やバンパーBPによって電磁振動子3が前面カバー12を透して露見されることがないのでヘッドランプHLの外観を損ねることなく警報の発音が可能であり、かつランプハウジング1に対する電磁振動子3の着脱が容易であり、メンテナンスも容易である。また、前記延在部14Aの点描した領域を光を透過しない非透明カバーとして構成し、この非透明にした延在部14Aによって電磁振動子3が前面カバー12を透して外部に露見しないようにしてもよく、この場合にはエクステンション13を省略することが可能である。
【0021】
(実施形態4)
あるいは、
図8の実施形態4に示すように、エクステンション13の下側領域において前面カバー12の下縁寄りの一部を後方に向けて矩形状に凹ませた形状とし、その後方に向けて延長した平板状の下側の部分を延在部14Bとして構成してもよい。そして、この延在部14Bに対向する領域においてランプボディ11の下面に取付穴110を開口し、この取付穴110を塞ぐバックカバー111を着脱可能に設け、このバックカバー111に電磁振動子3を支持させている。バックカバー111に対する電磁振動子3の支持構造は実施形態3と同じで良く、バックカバー111を取付穴110に装着したときに電磁振動子3のボディ31が延在部に密接される。また、ここでも前記延在部14Bの点描した領域を光を透過しない非透明カバーとして構成し、この非透明にした延在部14Bによって電磁振動子3が前面カバー12を透して外部に露見しないようにしている。この実施形態4では、延在部14Bによって電磁振動子3が前面カバー12を透して露見されることがないのでヘッドランプHLの外観を損ねることはなく、また電磁振動子3によって警報の発音が可能であり、かつ実施形態3と同様に電磁振動子3のメンテナンスも容易である。
【0022】
なお、実施形態2,3,4では、バックカバー111に電磁振動子3のみを支持させているが、
図9に示すようにバックカバー111の外面電磁振動子3を駆動させるための発音制御部51を収容支持するようにしてもよい。この収容支持構造として、ここでは発音制御部51を構成している回路基板を適宜な樹脂115によって埋設した構成が取られている。電磁振動子3はバックカバー111の一部を貫通して発音制御部51に接続され、発音制御部51に接続されているハーネスH3は樹脂115から引き出されて前記したランプ制御ユニット5あるいは自動車に搭載している中央制御ユニット(図示せず)に電気接続されている。このように発音制御部51を電磁振動子3及びバックカバー111と一体にしてサブユニット化することで発音のための装置構体をランプ制御ユニット5とは別構成にでき、ランプ制御ユニット5の構成を簡略化することが可能になるとともに、ランプ制御ユニット5の汎用化が可能になり、警報を発音するための発音装置、すなわち振動装置を備えていない自動車への振動装置のオプション(追加装備)が容易になる。
【0023】
(実施形態5)
図10は前面カバー12に延在部を設けることが難しいヘッドランプに適用した実施形態5の概略断面図である。ヘッドランプHLのサイズ等に制約を受けて前面カバー12の一部延在部を形成することが難しい場合には、自動車に配備したときにバンパーBPおよびエクステンション13によって外部に露見しない部分の前面カバー12の内面に電磁振動子3を固定する。前面カバー12は自動車の車体形状に合わせて三次元的に湾曲されている場合が殆どであるので、このような湾曲した前面カバー12の内面に電磁振動子3を直接固定すると、平坦面に形成されている電磁振動子3のボディ31の前面を前面カバー12の内面に密接することが難しくなり、両者が密接していないと電磁振動子3の振動が前面カバー12に効率良く伝達せず、発音効率も低下する。例えば、前面カバー12が傾斜していると電磁振動子3のボディ31の円周一部が片当たり状態で前面カバー12の内面に当接されることになり、この片当たりした部分はボディ31における振動振幅が小さいことが多いため、電磁振動子3から前面カバー12への振動伝達の効率が低くなる。そこで、実施形態5では前面カバー12の湾曲した内面に内方に向けて固定座15を一体に形成し、この固定座15に電磁振動子3を固定している。
【0024】
図11は固定座15の概略斜視図であり、
図12は固定座15に電磁振動子3を固定した状態の断面図である。固定座15は前面カバー12の内面の一部に内面側から見て十字型をした十字壁151を立設し、この十字壁151の頂面(後面)を平坦に形成したものである。前記十字壁151の頂面は周辺部が高く形成されて中央側との境界に段部152が形成されており、電磁振動子3のボディ31の前面を十字壁151の平坦な頂面に当接させたときに前記段部152で電磁振動子3の外周壁の位置決めを行うようになっている。また、前記十字壁151の頂面の中央位置にはネジ穴153が開口されるとともに、十字壁151の1つの壁の頂面には回転止め穴154が開口されている。
【0025】
一方、電磁振動子3は実施形態1〜4の電磁振動子3と殆ど同じ構造であるが、実施形態1〜4で示したようなタブ片36を備えていない代わりに、中心位置に円筒状に形成したマグネット35と、このマグネット35の中心穴35aと同心のネジ挿通穴34aを有する振動板34を備えている。そして、ネジ挿通穴34aを挿通させたネジ43を前記ボディ31に貫通した締結穴31cを通した上で前記十字壁151の頂面のネジ穴153に螺合させ、このネジ43によって電磁振動子3を固定用シート15に固定している。また、電磁振動子のボディの前面の一部には回転止め突起31bが形成されており、前記十字壁151に設けられた回転止め穴154に嵌入させて電磁振動子3が回転されないようになっている。
【0026】
この実施形態5によれば前面カバー12の湾曲した内面に電磁振動子3を固定しても、固定座15によって電磁振動子3と前面カバー12とを密着させることができ、電磁振動子3の振動を効率良く前面カバー12に伝達して発音効果を高めることができる。また、電磁振動子3に設けた開口、すなわちマグネット中心穴35a,ネジ挿通穴34a,締結穴31cを挿通させた1本のネジ43で電磁振動子3を固定座15に固定することができ、固定に際しての作業性を改善することができるとともに部品点数を削減して低コスト化が可能になる。さらに、ここでは
図10に示したように、前記ランプボディ11の背面の一部に取付穴110を開口し、これを塞ぐ着脱可能なバックカバー111を設けているので、バックカバー111を取り外すことで電磁振動子3の固定や取り外しが可能であり、電磁振動子3のメンテナンスは容易である。また、エクステンション13やバンパーBPによって電磁振動子3が前面カバー12を透して露見されることがないのでヘッドランプHLの外観を損ねることないことは言うまでもない。なお、マグネット35にネジ挿通穴35aを開けているが、このネジ挿通穴35aはマグネット35の中心位置にあるため、回転対称の磁界となりマグネット35は均一に振動することができ、振動板34も均一に振動されることになる。
【0027】
この実施形態5では電磁振動子3のマグネット側からネジ43を貫通状態に挿通させて固定座15に固定しているが、変形例として
図13に示すように前面カバー12の前面側から固定座15の頂面に向けて凹穴17を設け、この凹穴17の底面に設けた開口、すなわちネジ挿通穴17aを挿通させたネジ44を電磁振動子3のボディ31に前面側から螺合することにより電磁振動子3を固定座15に固定するようにしてもよい。このようにすれば、マグネット35を中心穴35aを有する円筒状に形成する必要はなく、実施形態1〜4のような汎用型の電磁振動子を使用することが可能になる。
【0028】
なお、実施形態5においては、前記ネジ43,44を前面カバー12と同じまたは近似の材料、例えば前面カバー12をポリカーボネートで構成した場合にはネジ43,44を同じポリカーボネートで構成することにより、ネジ43,44と前面カバー12の振動共振周波数を同じにし、電磁振動子3から前面カバー12への振動伝達効率を高めることができる。
【0029】
(実施形態6)
前記各実施形態1〜5では電磁振動子3を前面カバー12の内面に密接させている例であるが、本発明における当接とは電磁振動子3の振動が前面カバー12に効果的に伝達される状態を意味しているので、振動伝達が効果的に行われるのであれば必ずしも電磁振動子の全面が前面カバーに密接していなくても良く、その一部において接触していてもよい。実施形態6はその一例であり、
図14に示すように、電磁振動子3のボディ31の表面に複数個の突起部、ここでは半球に近い形状をした同じ高さ寸法の3つの突起部16を円周方向の3箇所に配設している。この3箇所はボディ31に発生する振動の振幅が可及的に大きくなる領域に配設する。また、この突起部16はボディ31と一体に形成することが好ましいが、別体に形成したものを接着等によって一体化してもよい。
【0030】
このように構成した電磁振動子3を、
図15の断面図に示すように、自動車に配備したときに外部に露呈されない部分の前面カバー12の一部に設けたボス部12aを利用してネジ113により固定する。このとき電磁振動子3とボス部12aとの間にゴム等の緩衝材からなるワッシャ37を介在させることが好ましい。このようにして電磁振動子3を前面カバー12に固定することにより、前面カバー12の内面が湾曲している等して平面ではない場合でも、ネジ113の締結に伴って電磁振動子3はワッシャ37を弾性変形させながら前面カバー12の内面に倣って傾いた状態となり、電磁振動子3に設けた3つの突起部16がそれぞれの先端において前面カバー12の内面に当接した状態になる。したがって、電磁振動子3のボディ31は突起部16において確実に前面カバー12の内面に当接した状態で固定され、電磁振動子3から前面カバー12に振動が効果的に伝達されることになる。このことは前面カバー12の内面が波状をした面の場合、あるいは一部に傾斜面部が存在しているような複雑形状の面の場合、さらには内面が粗い面状態の場合でも同様であり、突起部37が確実に内面に当接されることになる。
【0031】
ここで、前面カバー12の内面の湾曲の程度や傾斜部分の角度が顕著な形状の場合には、当該内面の状態に合わせて電磁振動子3に形成する複数の突起部16の高さ寸法をそれぞれ相違させてもよい。また、突起部16は必ずしも3つ設ける必要はなく、2つあるいは1つであってもよい。いずれの場合でも、電磁振動子3が傾いた状態で固定された場合でも電磁振動子3と前面カバー12は当該突起部37において確実に当接され、しかもこの突起部16を電磁振動子3のボディ31の振動振幅が大きな位置に配設することにより、電磁振動子3のボディ31が前面カバー12の内面に片当たりした場合に比較して電磁振動子3の振動を効果的に前面カバー12に伝達することができ、前面カバー12での発音効果を高めることができる。
【0032】
この実施形態6は、電磁振動子3と前面カバー12との間に突起部が介在されていればよいので、
図16に示すように、突起部16Aを前面カバー12の内面に配設してもよい。特に、前面カバー12は透明材料を金型成形によって製造することが多いので突起部16Aは前面カバー12と一体に容易に形成することができる。しかも当該前面カバー12の内面の湾曲や傾斜の状態に対応させて1つないし3つの突起部16Aの高さ寸法を適切に形成することで、これら3つの突起部16Aの先端を電磁振動子3の表面に対して確実に当接させることが可能になる。特に、3つの突起部16Aを形成する場合には、これらの突起部16Aの先端を結んで形成される平面を所望の方向となるように設計し、かつ電磁振動子3を固定するためのボス部12aもこれに合わせた高さ寸法に形成すればよい。この場合には電磁振動子3の表面を各突起部16Aに接触させた状態でボス部12aにおいて固定することができるので、緩衝材からなるワッシャ37は不要となる。また、このように前面カバー12に突起部16Aを形成すれば、電磁振動子3に何ら加工を施すことなく実施形態1〜4で用いた電磁振動子をそのまま利用することができる。
【0033】
(実施形態7)
図17は実施形態7の断面図である。この実施形態7では前面カバー12の下縁部に鉛直方向に伸びる平板状の延在部14を設け、この延在部14の内面に電磁振動子3を弾性力をもって弾接させた構成である。
図17(a)はランプボディ11に前面カバー12を取着する前の状態を示しており、前記前面カバー12の延在部14に対応する位置のランプボディ11の下側内面に支持枠17を設けており、この支持枠17にL字型をしたバネ板45の下側辺45aの端部を嵌入支持させている。また、前記バネ板45の上側辺45bには電磁振動子3を固定支持している。この電磁振動子3の固定に際しては実施形態1〜4,6のように電磁振動子3に設けたタブ片36を利用すればよい。前記バネ板45は下側辺45aと上側辺45bとの角度は90度よりも大きくされており、この状態では電磁振動子3はランプボディ11の前面開口よりも前方に移動された位置にある。
【0034】
そして、
図17(b)に示すように、前面カバー12をランプボディ11に取着すると、電磁振動子3はボディ31の前面が前面カバー12の延在部14の内面に当接され、さらに後方に向けて移動される。このとき、バネ板45は上側辺45bが後方に向けて弾性変形された状態になるため、このバネ板45の弾性反発力によって電磁振動子3は前方に向けて付勢され、延在部14の内面に弾接されることになる。そのため、電磁振動子3は延在部14の内面に密接した状態が保持されることになり、電磁振動子3の振動は延在部14に伝達されて前面カバー12での発音が行われるとともに、電磁振動子3から前面カバー12への振動の伝達効率を高めることが可能になる。なお、前記バネ板5は前面カバー12をランプボディ11に取着したときに発音装置が前面カバー12の内面に密接すればよいので、前記した下側片45aと上側片45bの角度は90度よりも小さくてもよく、要は上側片45bが前面カバー12側に傾いた角度になっていればよい。この実施形態7では実施形態5,6のようにランプボディ11の背面に設けたバックカバー111を利用して電磁振動子3の着脱が可能であり、したがってメンテナンスは容易である。
【0035】
この実施形態7において電磁振動子3を弾接させる位置において前面カバー12に延在部を形成する余裕がなく、しかも前面カバー12の内面が湾曲しているような場合には、実施形態5と同様に頂面を平坦面とした固定座15を前面カバー12に一体に設け、固定座15に電磁振動子3を弾接させるようにすればよい。あるいは、実施形態6と同様に電磁振動子3のボディ31の表面や前面カバー12の内面に1つないし3つの突起部16、16Aを形成しておき、この突起部を介して電磁振動子3面を前面カバー12の内面に弾接させるようにしてもよい。いずれの場合でも、前面カバー12の内面が湾曲していても電磁振動子3の表面を確実に当該前面カバー12の内面に当接させることができ、前面カバー12を効果的に振動させて発音させることができる。
【0036】
前記各実施形態はランプハウジングを構成している光透過性の前面カバーに適用しているが、本発明における前面カバーは光源から出射した光を透過して照射させる機能を有するものであれば、光源から出射した光を集光して照射するためのいわゆるレンズと称されるものであってもよい。