【実施例】
【0036】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<材料と方法>
(1)試薬
細胞培養の培地としては、50mM 2-メルカプトエタノール(2-ME)(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)、2mM L-グルタミン(Gibco BRL, Grand Island, NY)、100U/mlペニシリン(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)、100μg/ml ストレプトマイシン(Invitrogen)、および10% 非動化牛胎児血清(FCS)(Hyclone, Logan, Utah)で補完したRPMI1640ベースの完全培地(CCM)を用いた。
【0037】
組換えヒトGM-CSFは、PeproTech(Rocky Hill, NJ)から、組換えヒトIL-4は、Biosource International(Camarillo, CA)から、組換えヒトTGF-β1は、R&D Systems(Minneapolis, MN)から、それぞれ購入した。
【0038】
トール様受容体(TLR)の特異的な刺激物として、LPS(026:B6)をSigma-Aldrichから、PGNをFluka(Buchs SG、スイス)から、ポリ(I:C)をAmersham Biosciences(Piscataway, NJ)から、それぞれ購入した。
【0039】
APC結合抗CD1aモノクローナル抗体(HI149)は、BD PharMingen(San Diego, CA)から、APC結合抗CD14抗体(HCD14)は、Biolegend(San Diego, CA)から、抗E-カドヘリン抗体(HECD-1)は、Takara-bio(Shiga, Japan)から、FITC結合抗サイトケラチン抗体(CK-3-6-H5)は、Miltenyi Biotec(Auburn, CA)から、FITC結合抗DC-SIGN抗体は、R&D Systemsから、抗ランゲリン抗体(DCGM4)およびPE結合抗ランゲリン抗体(DCGM4)は、Immunotech(Marseille, France)から、それぞれ購入した。
【0040】
Alexa Fluor(R)488結合抗TLR4抗体(HTA125)は、eBioscience(San Diego, CA)から購入した。FITC結合ヤギ抗マウスIgG抗体およびPE結合ヤギ抗マウスIgG抗体は、Beckman Coulter(Fullerton, CA)から購入した。
【0041】
(2)末梢血単核球の分離と培養、およびヒト表皮ケラチノ細胞の培養
末梢血単核球由来のランゲルハンス細胞様細胞は、以下の修正を加えた文献(Takeuchi, J. et al., Biochem Biophys Res Commun Jul 4;306(3):674-679, 2003)記載の方法に従って得た。具体的には、CD14陽性末梢血単核球は、ヒト単球濃縮キット(StemCellテクノロジーズ、バンクーバー、CA)を使用して、健常人ボランティアの末梢血から単離した。末梢血単核球由来樹状細胞を得るために、CD14陽性末梢血単核球を、100ng/mlのGM-CSF及び10ng/mlのIL-4を添加したCCMで培養し、ランゲルハンス細胞様細胞を得るために、CD14陽性末梢血単核球を100ng/mlのGM-CSF、10ng/mlのIL-4、および10ng/mlのTGF-β1を0日目に添加しCCMで培養した。
【0042】
ヒト表皮ケラチノ細胞(クラボウ、大阪、日本)は、KC培地(EpiLfe-KG2、クラボウ)で維持し、その後、培養したケラチノ細胞を、24ウェル培養プレートに播種し、コンフレントになるまでさらに培養した。
【0043】
末梢血単核球由来のランゲルハンス細胞様細胞は、100ng/mlのGM-CSFで補完したCCM中、1×10
5細胞/mlの濃度で、ポリカーボネート膜有りまたは無しのケラチノ細胞培養プレート上に播種した。
【0044】
RT-PCRまたは電子顕微鏡解析を実施するために、得られた細胞を抗ランゲリン抗体で染色し、ランゲリン陽性細胞を、ラット抗マウスIgGマイクロビーズ(Miltenyi Biotec, Auburn, CA)と磁気細胞分離装置(MACS; Miltenyi Biotec)を用いて純化した。いくつかの実験では、3日間培養したランゲルハンス細胞様細胞を、100ng/mlのGM-CSFで補完したCCM中、1×10
5細胞/mlの濃度で、ヒトE-cad-Fc(Nagaoka, M. et al., BMC Dev Biol 10:60, 2010)でコートした24ウェルプレート(CelagixRes.Ltd.、japan)に播種し、さらに3日間培養して、ラングリン陽性かつDC-SIGN陰性の単核球由来ランゲルハンス細胞(moLCs)を得た。
【0045】
(3)フローサイトメトリー分析
細胞は、関連する抗体を含む2%FCSおよび0.01Mアジ化ナトリウムを含むPBSで、30分間氷上で染色し、2回洗浄し、PBSベースの培地に再懸濁した。二次染色のために、2回洗浄した後、細胞を30分間適切な二次抗体とインキュベートし、PBSベースの培地に再懸濁した。サイトケラチンとTLR3の細胞内染色のために、氷上で20分間、Cytofix/Cytoperm溶液(BD Biosciences社、カリフォルニア州マウンテンビュー)を用いて、細胞の固定および透過を行った。Perm/Wash溶液(BD Biosciences社)で2回洗浄後、非特異的結合を防ぐために、細胞を30分間、AB血清と共にインキュベートし、さらに暗所において氷上で30分間、FITC結合抗サイトケラチン抗体または抗TLR3抗体とインキュベートした。抗サイトケラチン抗体で染色した細胞をPBSベースの培地に再懸濁した。TLR3の二次染色のために、2回洗浄した後、細胞を暗所において氷上で30分間、PE結合二次抗マウスIgGとインキュベートし、PBSベースの培地に再懸濁した。染色した細胞は、その後、FlowJoソフトウェア(TreeStar、オレゴン州アッシュランド)を使用してFACSCantoII(BD Biosciences社)で分析した。生細胞は、細胞内染色を除き、ヨウ化プロピジウムゲーティングでゲートした。
【0046】
(4)E-カドヘリン分子の阻害
3日間培養したランゲルハンス細胞様細胞とケラチノ細胞との直接の細胞間相互作用を阻害するために、24ウェル培養プレート上の表皮ケラチノ細胞を、200μlの0.2mg/ml抗E-カドヘリン抗体で37℃1時間前処理した後、3日間培養したランゲルハンス細胞様細胞を播種した。
【0047】
(5)電子顕微鏡観察
2.5%グルタルアルデヒドを含有した0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.3)と1%四酸化オスミウムを含有した0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.3)で細胞を固定した。試料は、エタノールで段階的に脱水し、Epoxn-812樹脂(TAAB Lab、Berk、UK)で包埋した。ultra-microbome(Leica, Solms, Germany)を用いて切片を作製し、酢酸ウラニルとクエン酸鉛で染色し、電子顕微鏡(JEOL-1010; Nihon-Denshi, Tokyo, Japan)で観察した。
【0048】
(6)RT-PCR
それぞれの細胞調製物の3x10
5細胞から、Rneasy Kit(QIAGEN, Hilden, Germany)を用いて全RNAを抽出し、一本鎖DNAは文献(Yagi, Y. et al.,Immunology 130:597-607, 2010)に従って合成した。トール様受容体およびハウスキーピング遺伝子であるグリセロアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)の転写産物をPCR反応で増幅した。プライマーセットは以下の通りである。
【0049】
GAPDHセンス, 5’-GCC TCA AGA TCA TCA GCA ATG C-3’(配列番号:1); GAPDHアンチセンス, 5’-ATG CCA GTG AGC TTC CCG TTC-3’(配列番号:2); TLR2センス, 5’-CCC TGG GCA GTC TTG AAC ATT-3’(配列番号:3); TLR2アンチセンス, 5’-GCC TCC GGA TTG TTA ACG TTT-3’(配列番号:4); TLR3センス, 5’-AGG ATT GGG TCT GGG AAC AT-3’(配列番号:5); TLR3アンチセンス, 5’-CTG GAA TCT CCT CAA GGA AAA C-3’(配列番号:6); TLR4センス, 5’-TGG TGT CCC AGC ACT TCA TC-3’(配列番号:7); TLR4アンチセンス, 5’-CTG CAT ATC TAG TGC ACC ATG G-3’(配列番号:8)
35サイクルのPCRの後、PCR産物をアガロース電気泳動で分離し、UV光源を用いた臭化エチジウム染色で可視化した。
【0050】
(7)ELISAによるサイトカイン産生の測定
培養上清中のサイトカインの産生は、ヒトIL-12p70、TNF-α、およびIL-10(R&D Systems)、並びにヒトIL-12p40(Biolegend)につき、ELISAキットで測定した。
【0051】
<結果>
(1)ランゲリンとDC-SIGNを発現するランゲルハンス細胞様細胞のTGF-β1による誘導の解析
ランゲルハンス細胞様細胞は、インビトロにおいて、GM-CSF、IL-4、およびTGF-β1と伴に培養することにより、単核球から得ることができる(Geissmann, F. et al., J Exp Med 187:961-966, 1998)。しかしながら、表皮ランゲルハンス細胞とは対照的に、ランゲルハンス細胞様細胞は、ランゲリンとDC-SIGNを発現する(
図1)。これらのデータは、単核球がランゲルハンス細胞様細胞に分化することができるが、ランゲルハンス細胞に分化するにはさらなる分化因子が必要となることを示唆する。皮膚から新鮮分離されたランゲルハンス細胞はランゲリンとE-カドヘリンを発現するが、E-カドヘリンは表皮ケラチノ細胞でも発現することが報告されている(Tang, A. et al., Nature 361:82-85, 1993)。実際、E-カドヘリンは、ヒト表皮ケラチノ細胞で発現する(
図2A)。30%以上のサイトケラチン陽性ケラチノ細胞は、自然にE-カドヘリンを発現する(
図2A)。次に、IL-4とGM-CSFにより誘導された単核球由来樹状細胞(moDCs)における、E-カドヘリンの発現を解析した。moDCsは、E-カドヘリンを発現しない(
図2B)。TGF-β1は、moDCs上にE-カドヘリンの発現を誘導することが知られている(Geissmann, F. et al.,J Exp Med 187:961-966, 1998)。それゆえ、単核球のランゲルハンス細胞様細胞への分化におけるE-カドヘリンの発現を調査した。単核球をTGF-β1と伴に培養すると、培養当初から、E-カドヘリンがランゲルハンス細胞様細胞上で誘導され、そのピークのレベルは、10ng/mlで観察された(
図2C)。さらに、GM-CSF、IL-4、および10ng/mlのTGF-β1と伴に培養した単核球上のE-カドヘリンの発現は、培養開始後、徐々に増加し、培養3日頃に十分になった(
図2D)。単核球をIL-4とGM-CSFと伴に4日以上培養した後では、E-カドヘリン陽性細胞がもはやTGF-β1の添加によって誘導されないことには留意されたい(
図2E)。さらに、新鮮分離された母乳マクロファージが自然にGM-CSFを生産し、外因性のIL-4の存在下で樹状細胞に分化するという従来の知見(Ichikawa, M. et al., Immunology 108:189-195, 2003)に基づき、母乳マクロファージをIL-4および様々な濃度のTGF-β1で刺激した。しかしながら、E-カドヘリンの発現は検出されなかった(
図2F)。これらの知見は、E-カドヘリンの発現においては、樹状細胞分化のごく初期の段階からTGF-β1刺激が必要であり、一旦細胞が樹状細胞への分化段階に入ると、TGF-β1によって細胞がE-カドヘリンを発現しなくなることを示唆する。
【0052】
(2)E-カドヘリン陽性ケラチノ細胞によるランゲルハンス細胞分化の誘導の解析
次に、ケラチノ細胞がmoLCsの生成のための、さらなる分化刺激を与えることができるか調査した。DC-SIGN陽性ランゲリン陽性のランゲルハンス細胞様細胞を、E-カドヘリンを発現したケラチノ細胞の単層上で培養した。3日間培養した末梢血単核球由来のE-カドヘリン陽性ランゲルハンス細胞様細胞を、E-カドヘリン陽性ケラチノ細胞と、100ng/mlのGM-CSF存在下で2〜3日培養することにより、DC-SIGN陰性かつ増大されたランゲリン陽性のmoLCsを生成することができた(
図3A)。対照的に、単核球(
図3B、左パネル)や十分に分化した樹状細胞を、E-カドヘリン陽性ケラチノ細胞(
図3B、右パネル)と培養することによっては、ランゲリン陽性細胞を検出することはできなかった。ケラチノ細胞との共培養により、ランゲルハンス細胞様細胞における減少したDC-SIGNの発現が観察された。GM-CSF、IL-4、およびTGF-β1と3日間培養したランゲルハンス細胞様細胞上のDC-SIGNの発現(
図3C)は、ケラチノ細胞と共培養すると、徐々にバックグラウンドレベルに減少した(
図3D)。ケラチノ細胞との3日間の共培養によって、moLCs上にDC-SIGNの発現は観察されなかった。ランゲルハンス細胞分化におけるケラチノ細胞の影響は、分化段階に依存していた。5日間分化させたランゲルハンス細胞様細胞上のDC-SIGNの発現は、E-カドヘリン陽性ケラチノ細胞との共培養により減少しなかったことから、ランゲルハンス細胞分化におけるケラチノ細胞の影響は、分化段階に依存していた(
図3E)。これらのデータは、ケラチノ細胞が、単核球由来のランゲルハンス細胞の分化に必要であり、そしてそれが分化段階に依存することを示し、そして、皮膚における異なる部分が、moDCsやmoLCsの生成に必要な異なる分化因子を提供していることを示唆する。
【0053】
(3)ランゲルハンス細胞分化におけるE-カドヘリン相互作用の必要性の解析
次に、ケラチノ細胞上のE-カドヘリンが、ランゲリン陽性moLCsの誘導にとって決定的要因となっているか否か調査した。細胞同士が直接接触するのを防ぐために、分離されたウェルから成るトランスウェルシステムで、3日間培養したランゲルハンス細胞様細胞とE-カドヘリン陽性ケラチノ細胞をインキュベートした。トランスウェルシステムにおいてケラチノ細胞と共培養したランゲルハンス細胞様細胞は、DC-SIGNの発現が減少せず、moLCsに分化しなかった(
図4A)。従って、可溶性因子ではなく、細胞同士の接触が、ランゲルハンス細胞の分化に必要である。E-カドヘリンは、ランゲルハンス細胞とケラチノ細胞の相互作用を仲介することが示されてきている。E-カドヘリン相互作用が、ランゲルハンス細胞の分化に必要であるか調査した。ケラチノ細胞を抗ヒトE-カドヘリン抗体で前処理すると、ランゲリン陽性かつDC-SIGN陰性のmoLCsの誘導が阻害された(
図4B)。これらの結果は、E-カドヘリン相互作用が、単核球由来のランゲルハンス細胞の分化に必要であることを強く示唆する。
【0054】
次に、E-カドヘリンがそれ自体で、ランゲルハンス細胞分化を誘導できるか調査した。ランゲルハンス細胞様細胞は、ヒトE-カドヘリンでコートしたプレート上で培養したところ、プレートにコートした精製ヒトE-カドヘリンの刺激により、顕著に増大されたランゲリン陽性かつDC-SIGN陰性のmoLCsを生成することができた(
図4C)。同様に、ランゲルハンス細胞様細胞を、プレートにコートしたマウスE-カドヘリンと培養すると、ランゲリン陽性かつDC-SIGN陰性のmoLCsが強く誘導された(
図4D)。さらに、3日間培養したランゲルハンス細胞様細胞をE-カドヘリン特異的抗体で30分間前処理すると、プレートにコートした精製ヒトE-カドヘリンの3日間の刺激による、ランゲリン陽性かつDC-SIGN陰性のmoLCsへの分化が完全に停止した。一方、アイソタイプを適合させた抗体では、分化への影響はなかった(
図4E)。これらのデータは、ケラチノ細胞上のE-カドヘリンが単核球由来のランゲルハンス細胞の最終的な分化に必要であることを強く示唆する。
【0055】
(4)moLCsの表現型と特徴の解析
いくつかの研究により、ヒト皮膚から生成したランゲルハンス細胞がTLR4を発現せず、TLR2もほとんどあるいは全く発現しないことを示している(Takeuchi, J. et al., Biochem Biophys Res Commun Jul 4;306(3):674-679, 2003、van der Aar, A. M. et al., J Immunol 178:1986-1990, 2007)。E-カドヘリンにより分化されたmoLCsのTLR発現を調査した。ランゲリン陽性かつDC-SIGN陰性のmoLCsは、フローサイトメトリーにより測定したところ、TLR4を発現せず、TLR2とTLR3の発現はわずかであった(
図5A)。同様のデータは、RT-PCR分析によるmRNAレベルの測定により得られた(
図5B)。さらに、電子顕微鏡解析により、培養したmoLCsにおいてバーベック顆粒(Birbeck granules)が明確に示され、これはmoLCsのランゲルハンス細胞表現型を支持する(
図5C)。さらに、これらのmoLCsは、成熟マーカーであるCD83を発現しなかった(
図5D)。従って、E-カドヘリンが誘導したmoLCsは、皮膚ランゲルハンス細胞と同様の表現型を持っている。
【0056】
(5)moLCsにおけるTLRアゴニスト刺激の影響の解析
ランゲルハンス細胞様細胞と樹状細胞とでは、様々な刺激に対するサイトカイン分泌プロファイルが異なることがよく知られている(Renn, C. N. et al., J Immunol 177:298-305, 2006)。そこで、同じ単核球から得てE-カドヘリンで誘導したmoLCsとmoDCsとを、既知のTLRアゴニスト(TLR2に対してはPGN、TLR3に対してはpoly(I:C)、TLR4に対してはLPS)で刺激し、それぞれの刺激に対するサイトカイン産生をELISAにより測定した。moDCsはいくつかの炎症性サイトカインを分泌した。しかしながら、PGNとpoly(I:C)に応答したIL12p40、TNF-α、およびIL-10の放出はごくわずかであり、LPSには応答しなかった(
図6A)。poly(I:C)刺激により、IL-12p70を生産しなかったことには留意すべきである。これらの結果は、先のTLR発現データを支持するものであり、moLCsがTLR2、TLR4、およびTLR3のリガンドに応答しないことを示すものである。
【0057】
次に、TLRリガンドで処理したE-カドヘリン誘導moLCsにおける、ランゲリン、DC-SIGN、E-カドヘリン、CD83、およびTLR4の発現を調査した。ランゲリンとE-カドヘリンの発現は、活性化したmoLCs(特に、PGNやpoly(I:C)で処理されたもの)では下方制御されていたが、LPSではそうではなかった。一方、リガンド刺激により、CD83とDC-SIGNが発現した(
図6B)。重要なことに、TLR4もまた、moLCsのPGNやpoly(I:C)による刺激により発現した(
図6C)。さらに、末梢血単核球由来のランゲリン陽性moLCsをFACSAria-IIによりソートしたところ、ランゲリンおよびE-カドヘリンの発現は消失していた。しかしながら、ソートしたmoLCs上において、DC-SIGNおよびTLR4は、上方制御されたCD83とともに発現した(
図6D)。さらに、ソートしたmoLCsやpoly(I:C)で刺激したmoLCsは、ヒトE-カドヘリンでコートしたプレートで共培養してもランゲリン陽性細胞にならなかった(
図6E)。これらの知見は、病原体の進入によるTLRシグナル伝達を通じて、または、機械的な分離により、表皮ランゲルハンス細胞が不可逆的に表皮樹状細胞に変化すること、そして、一旦、ランゲルハンス細胞がE-カドヘリンを失うと、オリジナルの表皮ランゲルハンス細胞を回復させることができないことを示唆する。
【0058】
(6)moLCs上のE-カドヘリンのクロスリンクによる影響の解析
最後に、moLCsの活性化における、E-カドヘリンのクロスリンクの影響を調査した。純化したmoLCsを、抗E-カドヘリン抗体でコートしたプレート上で1〜3日間インキュベートし、ランゲリン陽性細胞上のDC-SIGN、TLR4、およびCD83の発現を追跡した。
図7Aに示す通り、DC-SIGN、TLR4、およびCD83は、E-カドヘリンのクロスリンク後、1〜3日間は変化しなかった。また、このクロスリンクは、moLCsによるIL-12p40およびTNF-αの分泌を非常に弱く刺激した(
図7B)。これら知見は、moLCsが、E-カドヘリンのクロスリンクを通じてではなく、TLRシグナル伝達を通じて活性化されることを示唆する。