(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施の形態は、(A)ポリアミド樹脂と、(B)(i)分岐状構造を有し、かつ(ii)フェノール性水酸基を分子内に3個以上含有する結晶性フェノール化合物と、を含むポリアミド樹脂組成物に係る。
以下、前記ポリアミド樹脂組成物の各構成要素について詳細に説明する。
【0009】
[(A)ポリアミド樹脂]
ポリアミドとは、主鎖に−CO−NH−(アミド)結合を有する高分子化合物を意味する。以下に制限されないが、例えば、(a)ラクタムの開環重合で得られるポリアミド、(b)ω−アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド、(c)ジアミン及びジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミド、並びにこれらの共重合物などが挙げられる。ポリアミドとしては、1種で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0010】
以下、本実施の形態における(A)ポリアミド樹脂の原料について説明する。
前記(a)のラクタムは、以下に制限されないが、例えば、ピロリドン、カプロラクタム、ウンデカラクタムやドデカラクタムなどが挙げられる。
一方、前記(b)のω−アミノカルボン酸として、以下に制限されないが、例えば、上記ラクタムの水による開環化合物であるω−アミノ脂肪酸などが挙げられる。
なお、前記ラクタム又はω−アミノカルボン酸として、それぞれ2種以上の単量体を併用して縮合させてもよい。
続いて、前記(c)のジアミン(単量体)としては、以下に制限されないが、例えば、ヘキサメチレンジアミンやペンタメチレンジアミン等の直鎖状の脂肪族ジアミン;2−メチルペンタンジアミンや2−エチルヘキサメチレンジアミン等の分岐型の脂肪族ジアミン;p−フェニレンジアミンやm−フェニレンジアミン等の芳香族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、シクロペンタンジアミンやシクロオクタンジアミン等の脂環式ジアミンなどが挙げられる。他方、前記(c)のジカルボン酸(単量体)としては、以下に制限されないが、例えば、アジピン酸、ピメリン酸やセバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸;フタル酸やイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸などが挙げられる。上記した単量体としてのジアミン及びジカルボン酸は、それぞれ1種単独又は2種以上の併用により縮合させてもよい。
【0011】
ポリアミドとしては、以下に制限されないが、例えば、ポリアミド4(ポリα−ピロリドン)、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド56(ポリペンタメチレンアジパミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610(ポリヘキサメチレンセバカミド)、ポリアミド612(ポリヘキサメチレンドデカミド)、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナンメチレンテレフタルアミド)、及びポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、並びにこれらを構成成分として含む共重合ポリアミドが挙げられる。
上記で列挙したポリアミドの中でも、ポリマー鎖中の炭素数/窒素数の比(C/Nの比)として、5を超えるものが、耐熱エージング性の観点より好ましい。かかる条件を具備する好ましいポリアミドとして、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6T、ポリアミド6I及びポリアミド9T、並びにこれらを構成成分として含む共重合ポリアミドからなる群より選択された1種以上が挙げられる。なお、前記C/Nの比として、より好ましくは5を超えて15以下であり、さらに好ましくは5を超えて12以下である。
共重合物であるポリアミドとしては、以下に制限されないが、例えば、ヘキサメチレンアジパミド及びヘキサメチレンテレフタルアミドの共重合物、ヘキサメチレンアジパミド及びヘキサメチレンイソフタルアミドの共重合物、並びにヘキサメチレンテレフタルアミド及び2−メチルペンタンジアミンテレフタルアミドの共重合物が挙げられる。
【0012】
本実施の形態で用いられるポリアミドの融点は、200〜280℃であることが好ましい。融点は、耐熱性の観点から200℃以上であり、耐熱エージング性の観点から280℃以下である。より好ましくは、210〜270℃であり、さらに好ましくは、240〜270℃である。
ポリアミドの融点は、JIS−K7121に準じて測定できる。測定装置としては、例えば、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSC(商品名)などが挙げられる。
【0013】
本実施の形態で用いられるポリアミドの末端基としては、一般にアミノ基、又はカルボキシル基が存在する。本実施の形態におけるこれらの末端基の比は、アミノ基濃度/カルボキシル基濃度として、好ましくは9/1〜1/9であり、より好ましくは6/4〜1/9、さらに好ましくは5/5〜1/9である。上記した範囲内の場合、ポリアミド樹脂組成物の機械的強度を一層向上させることができる。
前記末端のアミノ基の濃度は、好ましくは10〜100μmol/gであり、より好ましくは15〜80μmol/gであり、さらに好ましくは30〜80μmol/gである。末端アミノ基の濃度が上記した範囲内の場合、機械的強度を有意に向上させることができる。
ここで、本明細書における末端アミノ基及び末端カルボキシル基の濃度の測定方法としては、
1H−NMRにより測定される、各末端基に対応した特性シグナルの積分値によって求めることができる。
【0014】
さらに、本実施の形態で用いられるポリアミド樹脂の末端基を別途調整してもよい。かかる調整方法としては、公知の方法を用いることができる。以下に制限されないが、例えば末端調整剤を用いる方法が挙げられる。具体例として、ポリアミド樹脂の重合時に所定の末端濃度となるように、モノアミン化合物、ジアミン化合物、モノカルボン酸化合物及びジカルボン酸化合物よりなる群から選択される1種以上を添加することができる。これらの成分の溶媒への添加時期については、末端調整剤として本来の機能を果たす限り特に制限されず、例えば、上記したポリアミド樹脂の原料を溶媒に添加する際があり得る。
前記モノアミン化合物としては、以下に制限されないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン及びジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン及びナフチルアミン等の芳香族モノアミン、並びにこれらの任意の混合物などが挙げられる。中でも、反応性、沸点、封止末端の安定性や価格などの観点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン及びアニリンが好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記ジアミン化合物は、上述した例示をそのまま引用できる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記モノカルボン酸化合物としては、以下に制限されないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸及びイソブチル酸などの脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸などの脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸及びフェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸が挙げられる。本実施の形態では、これらのカルボン酸化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記ジカルボン酸化合物としては、以下に制限されないが、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸及びスベリン酸などの脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、ジフェニルメタン−4,4'−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4'−ジカルボン酸及び4,4'−ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から誘導される単位(ユニット)が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
[(B)結晶性フェノール化合物]
本実施の形態においては、(B)結晶性フェノール化合物は、次の(i)、(ii)を満足するものである。
(i)分岐状構造を有する
(ii)フェノール性水酸基を分子内に3個以上含有する
前記(i)、(ii)を満足することによって、耐熱エージング性が向上する。
前記(i)、(ii)を満足する結晶性フェノールを含有する本実施の形態は、さらに、引張強度、耐衝撃性も優れ、流動性も向上したものとなる。
【0016】
前記(i)の分岐状構造は、特に制限されるものではなく、3級炭素を含むもの、4級炭素を含むもののいずれでもよい。
前記フェノール性水酸基の数の上限は、特に制限されるものではないが、耐衝撃性、流動性の観点から10以下が好ましく、8以下がより好ましい。
前記結晶性フェノールにおいて、前記(i)、(ii)以外の構造については、特に制限はない。
【0017】
前記(i)、(ii)を満足する化合物としては、以下に制限されないが、例えば、ビス(3,4−ジヒドロキシ−6−メチルフェニル)フェニルメタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)−4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルメタン、2,2−ビス[4−ヒドロキシ−3,5−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)フェニル]プロパン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α,α',α'−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン等が挙げられる。
耐熱エージング性の点から、好ましい結晶性フェノール化合物としては、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス[4−ヒドロキシ−3,5−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)フェニル]プロパン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α,α',α'−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパンであり、より好ましくは、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α,α',α'−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレンである。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、フェノール性水酸基のオルト位の炭素がメチル基、t−ブチル基などのアルキル基で置換されていないことが、ポリアミド樹脂組成物の耐熱エージング性の観点から好ましい。
【0018】
結晶性フェノール化合物の融点は、特に制限されるものではないが、加工時の熱安定性の観点から、200℃以上350℃以下であることが好ましい。より好ましくは230℃以上350℃以下、さらに好ましくは230℃以上320℃以下である。
結晶性フェノール化合物の融点は例えば、ISO 3146のキャピラリーチューブ法によって測定できる。
【0019】
結晶性フェノール化合物は、ポリアミド樹脂組成物の耐熱エージング性の向上に、より一層の効果を発揮するという観点から、分子中の酸素元素の質量割合が、10%以上20%以下であることが好ましい。より好ましくは、10%以上18%以下、さらに好ましくは、12%以上18%以下である。
【0020】
本実施の形態において、ポリアミド樹脂組成物中の結晶性フェノール化合物の含有量は、ポリアミド樹脂組成物100質量%に対して、好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜10質量%であり、さらに好ましくは、1〜8質量%である。上記の範囲内の場合、耐熱エージング性を一層向上させることができる。
【0021】
[(C)銅塩、アルカリ及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物]
本実施の形態においては、銅塩、アルカリ及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物を含有してもよい。かかる銅塩、アルカリ及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、以下に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
<銅塩>
銅塩としては、以下に制限されないが、例えば、ハロゲン化銅(ヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅など)、酢酸銅、プロピオン酸銅、安息香酸銅、アジピン酸銅、テレフタル酸銅、イソフタル酸銅、サリチル酸銅、ニコチン酸銅及びステアリン酸銅、並びにエチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤に銅の配位した銅錯塩が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記で列挙した銅塩の中でも、好ましくはヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅及び酢酸銅よりなる群から選択される1種以上であり、より好ましくはヨウ化銅及び/又は酢酸銅である。かかる好ましい銅塩を用いた場合、耐熱エージング性が一層向上し、且つ押出時のスクリューやシリンダー部の金属腐食(以下、単に「金属腐食」ともいう)を抑制可能なポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
銅塩を用いる場合、ポリアミド樹脂組成物中の銅塩の含有量は、ポリアミド樹脂組成物100質量%に対して、好ましくは0.01〜0.2質量%であり、より好ましくは0.02〜0.15質量%である。上記範囲内の場合、耐熱エージング性が一層向上するとともに、銅の析出や金属腐食を抑制することができる。
また、耐熱エージング性を向上させる観点から、ポリアミド樹脂組成物全量に対し、銅元素の含有濃度として、好ましくは20〜1000ppmであり、より好ましくは100〜500ppmであり、さらに好ましくは150〜300ppmである。
【0022】
<アルカリ及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物>
アルカリ及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、以下に制限されないが、例えば、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム及び塩化ナトリウム、並びにこれらの混合物が挙げられる。中でも、耐熱エージング性の向上及び金属腐食の抑制という観点から、好ましくはヨウ化カリウム及び臭化カリウム、並びにこれらの混合物であり、より好ましくはヨウ化カリウムである。
アルカリ及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物を用いる場合、ポリアミド樹脂組成物中のアルカリ及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物の含有量は、ポリアミド樹脂組成物100質量%に対して、好ましくは0.05〜5質量%であり、より好ましくは0.2〜2質量%である。上記の範囲内の場合、耐熱エージング性が一層向上するとともに、銅の析出や金属腐食を抑制することができる。
上記で説明してきた(C)銅塩、アルカリ及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物の成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、中でも、銅塩とアルカリ及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物との混合物が好適である。
銅塩とアルカリ及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物との割合は、ポリアミド樹脂組成物全体において、ハロゲンと銅とのモル比(ハロゲン/銅)が2〜50となるように、ポリアミド樹脂組成物に含有させることが好ましく、より好ましくは10〜40であり、さらに好ましくは15〜30である。上記した範囲内の場合、耐熱エージング性を一層向上させることができる。尚、ここでいうハロゲンは、銅塩としてハロゲン化銅を使用した場合、ハロゲン化銅に由来するハロゲンと、アルカリ及びアルカリ土類金属のハロゲン化物に由来するハロゲンの合計を意味する。
上記のハロゲン/銅が2以上である場合、銅の析出及び金属腐食を抑制することができるため好適である。一方、上記のハロゲン/銅が50以下である場合、耐熱性、靭性などの機械的な物性を殆ど損なうことなく、成形機のスクリュー等の腐食を防止できるため、好適である。
ポリアミド樹脂組成物中の銅塩とアルカリ及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物との混合物の含有量は、ポリアミド樹脂組成物100質量%に対して、好ましくは0.01〜1質量%であり、より好ましくは0.1〜1質量%である。上記の範囲内の場合、耐熱エージング性を一層向上させることができることができる。
【0023】
[(D)無機充填材]
本実施の形態においては、無機充填材を含有してもよい。かかる無機充填材としては、以下に制限されないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ケイ酸カルシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ガラスフレーク、タルク、カオリン、マイカ、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸一水素カルシウム、ウォラストナイト、シリカ、ゼオライト、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、黄銅、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄、フッ化カルシウム、雲母、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母、クレー及びアパタイトが挙げられる。これらの中でも、強度及び剛性を増大させる観点から、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスフレーク、タルク、カオリン、マイカ、炭酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム、ウォラストナイト、シリカ、カーボンナノチューブ、グラファイト、フッ化カルシウム、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母、クレー及びアパタイトが好ましい。また、より好ましくは、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、及びクレー及び窒化珪素である。上記した無機充填材は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
前記ガラス繊維や炭素繊維のうち、優れた機械的特性をポリアミド樹脂組成物に付与できるという観点から、数平均繊維径が3〜30μmであって、且つ前記樹脂組成物において、重量平均繊維長が100〜750μmであり、重量平均繊維長と数平均繊維径とのアスペクト比(重量平均繊維長を数平均繊維径で除した値)が10〜100であるものがさらに好ましい。
前記ウォラストナイトのうち、優れた機械的特性をポリアミド樹脂組成物に付与できるという観点から、数平均繊維径が3〜30μmであって、且つ前記樹脂組成物において、重量平均繊維長が10〜500μmであり、前記アスペクト比が3〜100であるものがさらに好ましい。
前記タルク、マイカ、カオリン及び窒化珪素のうち、優れた機械的特性をポリアミド樹脂組成物に付与できるという観点から、数平均繊維径が0.1〜3μmであるものがさらに好ましい。
ここで、本明細書における数平均繊維径及び重量平均繊維長は、ポリアミド樹脂組成物を電気炉に入れて、含まれる有機物を焼却処理し、残渣分から、例えば100本以上の無機充填材を任意に選択し、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、これらの無機充填材の繊維径を測定することにより数平均繊維径を測定するとともに、倍率1000倍でのSEM写真を用いて繊維長を計測することにより重量平均繊維長を求める。
【0025】
前記無機充填材を、シランカップリング剤などにより表面処理してもよい。前記シランカップリング剤としては、特に制限されないが、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランやN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランやγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類;エポキシシラン類;ビニルシラン類が挙げられる。中でも、上記の列挙成分から選択される1種以上であることが好ましく、アミノシラン類がより好ましい。
【0026】
前記ガラス繊維や炭素繊維については、さらに集束剤として、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物、ポリウレタン樹脂、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩、並びにカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体を含む共重合体などを含んでもよい。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、ポリアミド樹脂組成物の機械的強度の観点から、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物及びポリウレタン樹脂、並びにこれらの組み合わせが好ましく、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体及びポリウレタン樹脂、並びにこれらの組み合わせがより好ましい。
ガラス繊維や炭素繊維は、上記の集束剤を、公知のガラス繊維や炭素繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーターなどの公知の方法を用いて、ガラス繊維や炭素繊維に付与して製造した繊維ストランドを乾燥することによって連続的に反応させて得られる。前記繊維ストランドをロービングとしてそのまま使用してもよく、さらに切断工程を得て、チョップドガラスストランドとして使用してもよい。かかる集束剤は、ガラス繊維又は炭素繊維100質量%に対し、固形分率として0.2〜3質量%相当を付与(添加)することが好ましく、より好ましくは0.3〜2質量%付与(添加)する。ガラス繊維や炭素繊維の集束を維持する観点から、集束剤の添加量が、ガラス繊維又は炭素繊維100質量%に対し、固形分率として0.2質量%以上であることが好ましい。一方、ポリアミド樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、3質量%以下であることが好ましい。また、ストランドの乾燥は切断工程後に行ってもよく、又はストランドを乾燥した後に切断してもよい。
【0027】
ポリアミド樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、ポリアミド樹脂組成物100質量%に対して、好ましくは0.1〜60質量%であり、より好ましくは5〜60質量%である。上記の範囲内の場合、機械的強度、剛性、耐衝撃性及び耐熱エージング性を一層向上させることができることができる。
【0028】
[ポリアミド樹脂組成物に含まれうる他の成分]
前記した成分の他に、本実施の形態の効果を損なわない範囲で、必要に応じてさらに他の成分を添加してもよい。
以下に制限されないが、例えば、フェノール系熱安定剤(前記(B)の結晶性フェノール化合物を除く)、リン系熱安定剤、アミン系熱安定剤、硫黄系熱安定剤、紫外線吸収剤、光劣化防止剤、可塑剤、滑剤、離型剤、核剤、難燃剤、着色剤、染色剤や顔料などを添加してもよいし、他の熱可塑性樹脂を混合してもよい。ここで、上記した他の成分はそれぞれ性質が大きく異なるため、各成分についての、本実施の形態の効果をほとんど損なわない好適な含有率は様々である。そして、当業者であれば、上記した他の成分ごとの好適な含有率は容易に設定可能である。
【0029】
[ポリアミド樹脂組成物の製造方法]
本実施の形態において、ポリアミド樹脂組成物を製造する方法は、以下に制限されないが、単軸又は多軸の押出機によってポリアミド樹脂を溶融させた状態で混練する方法を用いることができる。無機充填材を用いる場合、上流側供給口と下流側供給口とを備えた二軸押出機を使用し、上流側供給口からポリアミド樹脂、安定剤、酸化鉄(II)を含む化合物を供給して溶融させた後、下流側供給口から無機充填材を供給して溶融混練する方法を用いることが好ましい。また、ガラス繊維や炭素繊維などのロービングを用いる場合も、公知の方法で複合することができる。
【0030】
[ポリアミド樹脂組成物の成形体]
本実施の形態のポリアミド樹脂組成物は、特に制限されることなく、例えば、射出成形による各種部品の成形体として利用できる。
これらの各種部品は、例えば、自動車用、機械工業用、電気・電子用、産業資材用、工業材料用、日用・家庭品用として好適に使用できる。
本実施の形態のポリアミド樹脂組成物は耐熱エージング性に優れるため、エアインテークマニホールド、インタークーラーインレット、エキゾーストパイプカバー、インナーブッシュ、ベアリングリテーナー、エンジンマウント、エンジンヘッドカバー、リゾネーター及びスロットルボディ、チェーンカバー、サーモスタットハウジング、アウトレットパイプ、ラジエータータンク、オイルネーター及びデリバリーパイプ等の自動車エンジンルームの部品に特に好適に使用できる。
【実施例】
【0031】
以下、本実施の形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施の形態はこれらの実施例のみに制限されるものではない。
実施例及び比較例で使用した原料は以下のとおりである。
【0032】
[原料]
(1)ポリアミド樹脂
1−1.ポリアミド66(以下、「PA66」と略記する)
商品名:レオナ(登録商標)1300(旭化成ケミカルズ社製、融点:260℃)
1−2.ポリアミド66/6T(以下、「PA66/6T」と略記する)
商品名:アーレン(登録商標)C2000(三井化学社製、融点:310℃)
【0033】
(2)分岐状結晶性フェノール化合物
2−1.トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(以下、「CP−1」と略記する)
商品名:「AVライトBIP−PHBZ」(旭有機材工業社製、融点:250℃)
フェノール性水酸基は分子内に3個であり、フェノール性水酸基のオルト位はアルキル基で置換されておらず、分子中の酸素元素の質量割合は16.4%である。
【0034】
2−2.1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(以下、「CP−2」と略記する)
商品名:AVライトTEP−DF(旭有機材工業社製、融点:310℃)
フェノール性水酸基は分子内に4個であり、フェノール性水酸基のオルト位はアルキル基で置換されておらず、分子中の酸素元素の質量割合は16.1%である。
【0035】
2−3.α,α,α',α'−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン(以下、「CP−3」と略記する)
商品名:AVライトTEP−TPA(旭有機材工業社製、融点:270℃)
フェノール性水酸基は分子内に4個であり、フェノール性水酸基のオルト位はアルキル基で置換されておらず、分子中の酸素元素の質量割合は13.5%である。
【0036】
2−4.ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン(以下、「CP−4」と略記する)
商品名:AVライトBIP−BZ(旭有機材工業社製)
フェノール性水酸基は分子内に2個である。
【0037】
(3)直鎖状結晶性フェノール化合物
2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール(以下、「CP−5」と略記する)
商品名:AVライト3PC(旭有機材工業社製)
分岐構造を有さない。フェノール性水酸基は分子内に3個である。
【0038】
(4)フェノールノボラック(以下、「PN」と略記する)
商品名:AVライトPAPS−PN4(旭有機材工業社製、軟化点:111℃)
直鎖状構造のフェノール樹脂である。
【0039】
(5)ヨウ化銅(以下、「CuI」と略記する)(和光純薬工業社製)
(6)ヨウ化カリウム(以下、「KI」と略記する)(和光純薬工業社製)
(7)ガラス繊維(以下、「GF」と略記する)
商品名:ECS 03T−275H(日本電気硝子社製)
【0040】
[測定方法及び評価方法]
以下では、実施例及び比較例で行った測定方法及び評価方法について説明する。
<ポリアミドの融点>
ポリアミドの融点は、JIS−K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSC(商品名)を用いて測定した。
【0041】
<結晶性フェノール化合物の融点>
結晶性フェノール化合物の融点は、ISO 3146のキャピラリーチューブ法によって測定した。
【0042】
<引張強度>
実施例及び比較例で得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを、射出成形機(PS−40E:日精樹脂株式会社製)を用いて、ISO 3167に準拠し、多目的試験片A型の成形片を成形した。その際、射出及び保圧の時間25秒、冷却時間15秒、金型温度80℃(上記のポリアミド樹脂のうち、PA66/6Tでは120℃)、溶融樹脂温度290℃(前記ポリアミド樹脂のうち、PA66/6Tでは320℃)に設定した。得られた多目的試験片(A型)を用いて、ISO 527に準拠しつつ引張速度5mm/分で引張試験を行い、引張強度を測定した。引張強度が高い程、機械的強度に優れることを示す。
【0043】
<熱老化後の引張強度>(耐熱エージング性)
前記多目的試験片(A型)を、熱風循環式オーブン内で、200℃で所定時間(250時間、500時間、1,000時間後)熱老化させた。23℃で24時間以上冷却した後、ISO 527に準拠しつつ引張速度5mm/分で引張試験を行い、熱老化後の引張強度を測定した。また、熱老化前の引張強度に対する強度保持率を算出した。熱老化後の引張強度が高い程、特に耐熱エージング性に優れることを示す。
【0044】
<シャルピー衝撃強度>
前記多目的試験片(A型)を切削して使用し、厚さ80mm×巾10mm×長さ4mmの試験片を用いて、ISO 179に準拠し、ノッチ付きシャルピー衝撃強度を測定した。シャルピー衝撃強度が高い程、耐衝撃性に優れることを示す。
【0045】
<荷重たわみ温度>
前記多目的試験片(A型)を切削して使用し、厚さ80mm×巾10mm×長さ4mmの試験片を用いて、ISO 75に準拠し、応力1.80MPaの条件下、フラットワイズ法で荷重たわみ温度を測定した。荷重たわみ温度が高い程、耐熱性に優れることを示す。
【0046】
<スパイラルフロー長>
実施例及び比較例で得られたポリアミド樹脂組成物ペレットを、射出成形機[IS−100GN:東芝機械株式会社製]を用いて、射出+保圧時間10秒、冷却時間15秒、金型温度を80℃、溶融樹脂温度290℃に設定し、射出速度を100mm/s、射出圧力を100MPaにて、巾10mm、厚さ1.0mmのスパイラルフロー金型にて成形し、その流動長を測定した。スパイラルフロー長が大きい程、流動性に優れることを示す。
【0047】
[実施例1〜3、比較例1〜3]
押出機の上流側から1番目のバレルに上流側供給口を有する、L/D(押出機のシリンダーの長さ/押出機のシリンダー径)=48(バレル数:12)の二軸押出機[ZSK−26MC:コペリオン社製(ドイツ)]を用いた。前記二軸押出機において、上流側供給口からダイまでを280℃、スクリュー回転数250rpm、及び吐出量20kg/時間に設定した。かかる条件下で、下記表1の上部に記載された割合となるように、上流側供給口より上記のポリアミド樹脂(PA)、結晶性フェノール化合物、フェノールノボラックをそれぞれ供給した。そして、これらを溶融混練することで樹脂組成物のペレットを製造した。得られた樹脂組成物のペレットの水分が800ppm以下になるように乾燥した後、溶融樹脂温度290℃、金型温度80℃で成形し、引張強度、熱老化後(250時間後及び500時間後)の引張強度を評価した。これらの評価(計数)結果などを下記表1に記載した。
【表1】
【0048】
表1より、分岐状構造を有し、分子内にフェノール性水酸基を3個以上有する結晶性フェノールを使用した実施例1〜3は、機械的強度(引張強度)が優れ、実施例1〜3を、分岐状構造を有するが、分子内にフェノール性水酸基を2個有する結晶性フェノール化合物を使用した比較例1、分子内にフェノール性水酸基を3個有するが、直鎖状構造である結晶性フェノール化合物を使用した比較例2、直鎖状構造であるフェノールノボラックを使用した比較例3と対比すると、耐エージング性(引張強度)が優れることが分かる。上記の結果より、ポリアミド樹脂組成物のうち、分岐状構造を有し、分子内にフェノール性水酸基を3個以上有する結晶性フェノール化合物が、当該ポリアミド樹脂組成物の耐熱エージング性の向上に効果的に寄与し、また機械的強度(引張強度)にも優れることを見出した。
【0049】
[実施例4〜6、比較例4〜6]
押出機の上流側から1番目のバレルに上流側供給口を有し、且つ9番目のバレルに下流側供給口を有する、L/D(押出機のシリンダーの長さ/押出機のシリンダー径)=48(バレル数:12)の二軸押出機[ZSK−26MC:コペリオン社製(ドイツ)]を用いた。前記二軸押出機において、上流側供給口からダイまでを290℃、スクリュー回転数250rpm、及び吐出量25kg/時間に設定した。かかる条件下で、下記表2の上部に記載された割合となるように、上流側供給口より上記のポリアミド樹脂(PA)、結晶性フェノール化合物、フェノールノボラックをそれぞれ供給し、下流側供給口よりGFを供給した。そして、これらを溶融混練することで樹脂組成物のペレットを製造した。得られた樹脂組成物のペレットの水分が800ppm以下になるように乾燥した後、溶融樹脂温度290℃、金型温度80℃で成形し、引張強度、熱老化後(250時間後及び500時間後)の引張強度、シャルピー衝撃試験及び荷重たわみ温度を評価した。これらの評価(計数)結果などを下記表2に記載した。
【表2】
【0050】
表2より、分岐状構造を有し、分子内にフェノール性水酸基を3個以上有する結晶性フェノール化合物を使用した実施例4〜6は、機械的強度(引張強度)、シャルピー衝撃試験及び荷重たわみ温度がバランス良く優れ、実施例4〜6を、前記結晶性フェノール化合物を使用していない比較例4〜6と対比すると、耐熱エージング性(引張強度)が優れることが分かる。
【0051】
[実施例7〜9、比較例7〜10]
押出機の上流側から1番目のバレルに上流側供給口を有し、且つ9番目のバレルに下流側供給口を有する、L/D(押出機のシリンダーの長さ/押出機のシリンダー径)=48(バレル数:12)の二軸押出機[ZSK−26MC:コペリオン社製(ドイツ)]を用いた。前記二軸押出機において、上流側供給口からダイまでを290℃、スクリュー回転数250rpm、及び吐出量25kg/時間に設定した。かかる条件下で、下記表3の上部に記載された割合となるように、上流側供給口より上記のポリアミド樹脂(PA)、結晶性フェノール化合物、フェノールノボラック、CuI及びKIをそれぞれ供給し、下流側供給口よりGFを供給した。そして、これらを溶融混練することで樹脂組成物のペレットを製造した。得られた樹脂組成物のペレットの水分が800ppm以下になるように乾燥した後、溶融樹脂温度290℃、金型温度80℃で成形し、引張強度、熱老化後(500時間後及び1000時間後)の引張強度、シャルピー衝撃試験、荷重たわみ温度及びスパイラルフロー長を評価した。これらの評価(計数)結果などを下記表3に記載した。
【表3】
【0052】
表3より、分岐状構造を有し、分子内にフェノール性水酸基を3個以上有する結晶性フェノール化合物を使用した実施例7〜9は、機械的強度(引張強度)、シャルピー衝撃試験及び荷重たわみ温度がバランス良く優れ、実施例7〜9を前記結晶性フェノール化合物を使用していない比較例7〜10と対比すると、銅塩とハロゲン化合物を併用したケースにおいても、耐熱エージング特性についてはより一層の向上し、流動性も向上することが分かる。
【0053】
[実施例10〜12、比較例11及び12]
前記二軸押出機を、上流側供給口からダイまでを330℃に設定し、下記表4の上部に記載された割合になるようにした以外は、実施例4と同様にして溶融混練することで樹脂組成物のペレットを製造した。得られた樹脂組成物を溶融樹脂温度320℃、金型温度120℃で成形し、引張強度、熱老化後(500時間後及び1000時間後)の引張強度を評価した。これらの評価(計数)結果などを下記表4に記載した。
【表4】
【0054】
表4より、PA66/6Tを使用した場合も、分岐状構造を有し、分子内にフェノール性水酸基を3個以上有する結晶性フェノール化合物を使用することで、耐熱エージング性に優れることが分かる。
以上のことから、本実施の形態を採ることにより、ポリアミド樹脂組成物の耐熱エージング性を顕著に向上させることができ、さらには機械的強度(引張強度)や耐衝撃性も優れ、流動性も向上するため、自動車部品や各種電子部品などに好適に適用可能な熱安定性のポリアミド樹脂組成物が得られることを見出した。