特許第5977608号(P5977608)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5977608サーベイメータを用いて測定した値を放射性物質濃度に換算する相関シートの作成方法及び該シートを用いた放射性セシウム濃度の簡易分析方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977608
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】サーベイメータを用いて測定した値を放射性物質濃度に換算する相関シートの作成方法及び該シートを用いた放射性セシウム濃度の簡易分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/17 20060101AFI20160817BHJP
   G01T 1/167 20060101ALI20160817BHJP
   G01T 1/16 20060101ALI20160817BHJP
   G01T 7/00 20060101ALI20160817BHJP
【FI】
   G01T1/17 E
   G01T1/167 C
   G01T1/16 A
   G01T7/00 C
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-161505(P2012-161505)
(22)【出願日】2012年7月20日
(65)【公開番号】特開2014-20995(P2014-20995A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年7月3日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1. 平成24年1月23日発行、第21回環境地質学シンポジウムの論文集、第17−22頁、地質汚染−医療地質−社会地質学会 2. 平成24年1月24日開催、第21回環境地質学シンポジウム 3. 平成24年2月10日開催、技術説明会(千葉県白井市役所) 4. 平成24年2月10日開催、技術説明会(千葉県野田市役所) 5. 平成24年3月16日開催、技術プレゼンテーション(千葉県野田市役所) 6. 平成24年3月21日開催、一般財団法人日本ガス機器検査協会理事長主催の技術説明会 7. 平成24年3月23日開催、技術プレゼンテーション(千葉県野田市役所) 8. 平成24年4月14日配布、配布先:株式会社錢高組 9. 平成24年5月31日開催、技術プレゼンテーション(千葉県柏市役所) 10.平成24年6月12日開催、技術プレゼンテーション(千葉県野田市役所) 11.平成24年6月14日発行、第18回 地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会 講演集が収録されているCD−ROM,第486−487頁、社団法人土壌環境センター 12.平成24年6月14日開催、第18回 地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会 13.平成24年7月4日開催、技術プレゼンテーション(エバークリーン株式会社)
(73)【特許権者】
【識別番号】000170646
【氏名又は名称】国土防災技術株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515164974
【氏名又は名称】株式会社環境地質研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(72)【発明者】
【氏名】成澤 昇
(72)【発明者】
【氏名】氏家 亨
(72)【発明者】
【氏名】山村 充
【審査官】 青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−317338(JP,A)
【文献】 特開2008−224442(JP,A)
【文献】 特開2011−174812(JP,A)
【文献】 特開2008−256722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T1/00−1/16、1/167−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーベイメータによる測定値(μSv/h/kg)から放射性セシウム濃度(Bq/kg)を求めるための相関シートの作成方法であって、
鉛によって構成された遮蔽体内に前記サーベイメータを設置し、遮蔽体内のバックグラウンド値(μSv/h)を測定し、
次いで、測定対象物が入った試料容器を前記遮蔽体内の前記サーベイメータに近接設置して該サーベイメータによって前記測定対象物の放射線量(μSv/h)を測定し、その測定結果から前記バックグラウンド値を差し引いた値を、前記測定対象物の重量よりkg換算して前記サーベイメータによる測定値(μSv/h/kg)とし、
複数の前記測定対象物についてゲルマニウム半導体検出器によって測定した放射性セシウム濃度値(Bq/kg)と前記サーベイメータによって測定した前記測定値(μSv/h/kg)とを、前記放射性セシウム濃度値を縦軸又は横軸に、前記測定値を横軸又は縦軸にしてプロットし、プロットした値から回帰直線または回帰曲線を求めることで作成された前記放射性セシウム濃度値と前記測定値との相関を示すグラフからなる相関シートを得ることを特徴とするサーベイメータによる測定値から放射性セシウム濃度値を求める相関シートの作成方法
【請求項2】
前記測定対象物の種類毎に作成されていることを特徴とする請求項1記載のサーベイメータによる測定値から放射性セシウム濃度値を求める相関シートの作成方法
【請求項3】
前記サーベイメータの種類毎に作成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のサーベイメータによる測定値から放射性セシウム濃度値を求める相関シートの作成方法
【請求項4】
前記試料容器の種類毎に作成されていることを特徴とする請求項1〜3記載のサーベイメータによる測定値から放射性セシウム濃度値を求める相関シートの作成方法
【請求項5】
前記試料容器としてU−8容器を用いることにより、前記試料容器は、公定法であるゲルマニウム半導体検出器での測定にそのまま流用が可能であることを特徴とする請求項1〜4記載のサーベイメータによる測定値から放射性セシウム濃度値を求める相関シートの作成方法
【請求項6】
放射性セシウム濃度を確認したい濃度確認対象物について、サーベイメータを用いて放射性セシウム濃度を簡易分析するための簡易分析方法であって、
鉛によって構成された遮蔽体の中で、請求項1〜5のいずれかに記載のサーベイメータによる測定値から放射性セシウム濃度値を求める相関シートの作成方法で相関シートを作成した際に使用したものと同じサーベイメータを用いて遮蔽体内のバックグラウンド値を測定する工程と、
請求項1〜5のいずれかに記載のサーベイメータによる測定値から放射性セシウム濃度値を求める相関シートの作成方法で相関シートを作成した際に使用したものと同じ試料容器に入れた前記濃度確認対象物を、前記遮蔽体内の前記サーベイメータに近接設置して測定した値(μSv/h)から、前記バックグラウンド値(μSv/h)を差し引いた値を求め、その値を前記濃度確認対象物の重量よりkg換算して前記サーベイメータによる測定値(μSv/h/kg)を得る工程と、
請求項1〜5のいずれかに記載のサーベイメータによる測定値から放射性セシウム濃度値を求める相関シートの作成方法で得られた相関シートを用いて、前記測定値を放射性セシウム濃度に換算する工程とを備えることを特徴とするサーベイメータを用いた放射性セシウム濃度の簡易分析方法。
【請求項7】
前記遮蔽体は、複数に分割された鉛ブロックにより構成されることを特徴とする請求項6記載のサーベイメータを用いた放射性セシウム濃度の簡易分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーベイメータを用いて測定した値を放射性物質濃度に換算する相関シート及び該シートを用いた放射性セシウム濃度の簡易分析方法に関し、詳しくは、一般的に市販されているサーベイメータを用いて測定した値(μSv/h)を、放射性セシウム濃度(Bq/kg)に換算するために用いる相関シート、及び相関シートによって、サーベイメータを用いて測定した値(μSv/h)から放射性セシウム濃度(Bq/kg)を簡易で迅速に、高精度に算定できる放射性セシウム濃度分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平成23年3月11日に発生した東日本大震災に伴い、東京電力福島第一原子力発電所から大量の放射性物質が広範囲に放出された。中でも、放射性セシウム(Cs)は、東日本広域の土壌に沈着している状況が明らかとなっている。放射性セシウムは比較的半減期が長く(Cs134約2年、Cs137約30年)、また、食品へ取り込まれ蓄積する傾向があることなどから、長期にわたり周辺環境及び人々の健康に影響を与えると懸念されている。
【0003】
除染が必要な範囲は極めて広大で、人々の健康への影響を最小限にするためには、汚染状況調査を迅速に行い、除染を効率的に実施することが重要である。
【0004】
現在、廃棄物処理や、食品の出荷制限など、国によって定められた暫定基準値は放射性セシウム濃度によって定められており、放射性セシウム濃度(Bq/kg)の測定には、主にゲルマニウム半導体検出器やNaIシンチレーション式ガンマ線スペクトロメータなどのガンマ線スペクトロメータが用いられている。
【0005】
ガンマ線スペクトロメータは、放射性物質の種類によってガンマ線のエネルギー(eV)が異なることを利用し、ガンマ線スペクトルを測定することで、ガンマ線を出す放射性物質の種類毎の濃度(Bq/kg)を測定するものである。
【0006】
ゲルマニウム半導体検出器やNaIシンチレーション式ガンマ線スペクトロメータの測定手法は、分解能に優れているため定量精度は高いが、大型で冷却に液体窒素が必要となること等から、現場分析には不向きな特徴を有し、基本的には室内(分析室)での分析となる。また、迅速とは言えない一定の時間を要し、測定機器、それに付随するシステム、ソフト等が非常に高額なため、試料1検体あたりの分析費用も高額となっている。
【0007】
一方、現場の状況や測定の対象によっては、迅速に、且つ現場にて、土壌等の放射性物質濃度(Bq/kg)を求められる場面が多く存在する。
【0008】
放射性物質に汚染されている廃棄物は、国の規定により、8000Bq/kg以上の放射性物質汚染廃棄物は国に廃棄を依頼しなければならない。広大な地域で排出される膨大な廃棄物を、業者はそのつど分析機関に送り、一定の時間後にその結果を得てから、その廃棄物を適切な処理へ移行しなければならず、行き場のない廃棄物が溜まる一方で迅速に処理できないという現状である。
【0009】
また、農作物を出荷する農家においては、農作物を作付けし、時間と費用をかけて収穫した後、出荷する際に放射性物質濃度を測定し、出荷基準値を満たすかどうか判断している。これは、農地の放射性物質量の測定に時間も費用もかかるため、作付け前に全ての農地における放射性物質量を測定することができず、農地自体、作物栽培が可能であるかどうか判断ができずに、見切り発車するしかない現状があるからである。隣の農地、または同じ敷地内であっても、場所によって土壌の放射性物質量は異なるため、作物によっては、出荷時に基準値を満たしていないことが判明し、出荷できなくなるものも出てくる。もし、費用も高額でなく、簡易に農地の放射性物質量を測定することができれば、農地の広い範囲において放射性物質量が判明し、その数値を基に、作物の種類ごとに異なる放射性物質移行係数を計算することにより、農地によって育てられる作物をある程度予想することができ、無駄な生産が減少するであろう。
【0010】
しかし、一般的に普及されており、現場で簡易に使用できる測定器は、サーベイメータが主となっており、主に空間放射線量率の測定(μSv/h)や、表面汚染密度の測定(Bq/cm)をその利用目的としているため、サーベイメータでは、放射性物質濃度(Bq/kg)の値は測定できない。
【0011】
厚生労働省ホームページに掲載されている“除染等業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガイドライン”(非特許文献1)には、除染等業務に労働者を従事させる際に、汚染土壌等が基準値(1万Bq/kg又は50万Bq/kg)を超えるかどうかを判定し、必要となる放射線防護措置を決定するために実施する方法として、サーベイメータで測定したSv値(μSv/h)をBq値(Bq/kg)へ換算する計算方法が示されている。
【0012】
しかし、上記の計算方法は、使用するサーベイメータや、周辺環境など、現場によって様々に異なる要素がある中、一定の計算方法を用いているために、異なる要素による影響を排除できずに、求めた放射性セシウム濃度値の精度に欠けるという問題がある。
【0013】
この方法は、放射性物質濃度が1万Bq/kgや50万Bq/kgをしきい値として分析対象物を区分するための指標の一つとして計算するのであれば、概ね充分な判断材料となりえると考えられている。しかし、例えば、上述した廃棄物の処理等において、ゲルマニウム半導体検出器を使って精密検査をする必要があるかないかを判断するための簡易検査(スクリーニング分析)に公的に使用することは認められていない。
【0014】
サーベイメータによって測定した値で、放射性セシウム濃度を高精度に算定することができれば、スクリーニング分析として使用が認められ、放射性セシウム濃度を測定する必要がある処理が滞ることなく行なうことができ、その分析に高額な費用もかからないと考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】厚生労働省ホームページ、“除染等業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガイドライン”、[平成24年6月29日検索]、インターネットURL:http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/120118-01.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前記したように、現場で使用できるサーベイメータによって測定できるSv値(μSv/h)のBq値(Bq/kg)への換算は、安易に計算できるものではなく、計算式を用いて換算したとしても、精度に欠ける。サーベイメータによる測定値は再現性が低く簡単に変化するし、バックグラウンドの問題などから、正確性に欠けるといった問題が残る。単純に、バックグラウンド値を予め測定し、その値を対象物の測定値から差し引いて、バックグラウンドの影響を受けていない値を求めようとしても、バックグラウンドの値が高い値であると測定値に誤差が出てしまう可能性があり、精密さに欠ける。
【0017】
本発明者は、測定時のバックグラウンドの問題を解決するために、持ち運び可能な鉛の遮蔽物でサーベイメータならびに測定試料を覆い、放射線量(μSv/h)を測定することとした。
【0018】
また、サーベイメータの指示値(μSv/h)が、サーベイメータの放射線指向特性、測定対象物を充填する試料容器の形状・大きさ、サーベイメータと試料の配置関係等によって異なる点に着目し、再現性がある測定方法を見出した。そして、試料容器を特定し、サーベイメータと試料の配置を特定することで、サーベイメータの種類ごとに、μSv/h値をBq/kgに換算できる検量線を作成し、対象試料の放射性物質濃度(Bq/kg)を、既存のサーベイメータを用いて簡易に、高精度で算定することを可能とした。
【0019】
そこで、本発明は、一般的に市販されているサーベイメータを用いて測定した値(μSv/h)を、放射性セシウム濃度(Bq/kg)に換算するために用いる相関シート、及び相関シートによって、サーベイメータを用いて測定した値(μSv/h)から放射性セシウム濃度(Bq/kg)を簡易で迅速に、高精度に算定できる放射性セシウム濃度分析方法を提供することを課題とする。
【0020】
また本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題は以下の各発明によって解決される。
【0022】
1.
サーベイメータによる測定値(μSv/h/kg)から放射性セシウム濃度(Bq/kg)を求めるための相関シートの作成方法であって、
鉛によって構成された遮蔽体内に前記サーベイメータを設置し、遮蔽体内のバックグラウンド値(μSv/h)を測定し、
次いで、測定対象物が入った試料容器を前記遮蔽体内の前記サーベイメータに近接設置して該サーベイメータによって前記測定対象物の放射線量(μSv/h)を測定し、その測定結果から前記バックグラウンド値を差し引いた値を、前記測定対象物の重量よりkg換算して前記サーベイメータによる測定値(μSv/h/kg)とし、
複数の前記測定対象物についてゲルマニウム半導体検出器によって測定した放射性セシウム濃度値(Bq/kg)と前記サーベイメータによって測定した前記測定値(μSv/h/kg)とを、前記放射性セシウム濃度値を縦軸又は横軸に、前記測定値を横軸又は縦軸にしてプロットし、プロットした値から回帰直線または回帰曲線を求めることで作成された前記放射性セシウム濃度値と前記測定値との相関を示すグラフからなる相関シートを得ることを特徴とするサーベイメータによる測定値から放射性セシウム濃度値を求める相関シートの作成方法
【0023】
2.
前記測定対象物の種類毎に作成されていることを特徴とする請求項1記載のサーベイメータによる測定値から放射性セシウム濃度値を求める相関シートの作成方法
【0024】
3.
前記サーベイメータの種類毎に作成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のサーベイメータによる測定値から放射性セシウム濃度値を求める相関シートの作成方法
【0025】
4.
前記試料容器の種類毎に作成されていることを特徴とする請求項1〜3記載のサーベイメータによる測定値から放射性セシウム濃度値を求める相関シートの作成方法
【0026】
5.
前記試料容器としてU−8容器を用いることにより、前記試料容器は、公定法であるゲルマニウム半導体検出器での測定にそのまま流用が可能であることを特徴とする請求項1〜4記載のサーベイメータによる測定値から放射性セシウム濃度値を求める相関シートの作成方法
【0027】
6.
放射性セシウム濃度を確認したい濃度確認対象物について、サーベイメータを用いて放射性セシウム濃度を簡易分析するための簡易分析方法であって、
鉛によって構成された遮蔽体の中で、請求項1〜5のいずれかに記載のサーベイメータによる測定値から放射性セシウム濃度値を求める相関シートの作成方法で相関シートを作成した際に使用したものと同じサーベイメータを用いて遮蔽体内のバックグラウンド値を測定する工程と、
請求項1〜5のいずれかに記載のサーベイメータによる測定値から放射性セシウム濃度値を求める相関シートの作成方法で相関シートを作成した際に使用したものと同じ試料容器に入れた前記濃度確認対象物を、前記遮蔽体内の前記サーベイメータに近接設置して測定した値(μSv/h)から、前記バックグラウンド値(μSv/h)を差し引いた値を求め、その値を前記濃度確認対象物の重量よりkg換算して前記サーベイメータによる測定値(μSv/h/kg)を得る工程と、
請求項1〜5のいずれかに記載のサーベイメータによる測定値から放射性セシウム濃度値を求める相関シートの作成方法で得られた相関シートを用いて、前記測定値を放射性セシウム濃度に換算する工程とを備えることを特徴とするサーベイメータを用いた放射性セシウム濃度の簡易分析方法。
【0028】
7.
前記遮蔽体は、複数に分割された鉛ブロックにより構成されることを特徴とする前記6記載のサーベイメータを用いた放射性セシウム濃度の簡易分析方法。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、一般的に市販されているサーベイメータを用いて測定した値(μSv/h)を、放射性セシウム濃度(Bq/kg)に換算するために用いる相関シート、及び相関シートによって、サーベイメータを用いて測定した値(μSv/h)から放射性セシウム濃度(Bq/kg)を簡易で迅速に、高精度に算定できる放射性セシウム濃度分析方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明において好ましく用いられる試料容器の一例を示す斜視図
図2】本発明において好ましく用いられる上部開放状態の遮蔽体の斜視図
図3】遮蔽体内にサーベイメータを設置した状態を示す平面図
図4】(a)はサーベイメータに試料容器を設置する際に好ましく用いられる補助具を示す斜視図、(b)は使用状態を示す側面図
図5】サーベイメータの一例を示す平面図
図6】上部に蓋をした測定状態の遮蔽体の斜視図
図7】遮蔽体内のサーベイメータに試料容器を設置した状態を示す平面図
図8】本発明に係る相関シートの一例を示す図
図9】本発明に係る相関シートの相関検量線がサーベイメータの種類によって異なることを示す図
図10】本発明に係る相関シートの相関検量線が試料容器の種類によって異なることを示す図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0032】
サーベイメータは、一般に市販されて入手も容易であり、コンパクトで携帯性に優れる測定器が使用でき、例えばクリアパレス社製A2700(商品名「Mr.Gamma」)、堀場製作所社製PA−1000(商品名「Radi」)等がある。
【0033】
測定対象物(濃度確認対象物)は測定のために試料容器に充填される。試料容器が変われば、相関シートにおけるBq/kg−Sv/h/kgの相関検量線の傾きが変化すると予測されるため、本発明に係る相関シートの作成の際及び放射性セシウム濃度の簡易分析を行う際、分析誤差の影響を排除するためにも、測定対象物(濃度確認対象物)を充填する試料容器はいずれも同一の容器(同一サイズ、同一規格)を用いる。
【0034】
このため、試料容器は、測定に支障がなく、誰でも容易に入手可能であり、サイズが規格によって一定である市販の容器を用いることが好ましく、特に食材保存用途等として家庭でも一般に用いられている合成樹脂(ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、アクリル等)製の蓋付き容器を好ましく用いることができる。図1にはこの蓋付き容器からなる試料容器1を示している。蓋1aは容器本体1bに対してねじ込み式のものが特に好ましい。
【0035】
試料容器1の大きさは各測定時に統一されていれば特に制限はないが、サーベイメータによる測定時に、後述する遮蔽体をできる限りコンパクトにできると共に、その遮蔽体内に設置されるサーベイメータに容易に近接設置させることができるようにする観点から、U−8容器(容量100ml、径56mm、高さ68mm)や、100〜250ml程度の容量をもつ市販のポリエチレン容器等を用いることが好ましい。大きさが統一されることで、各測定時の測定対象物(濃度確認対象物)の量をほぼ均一化できる。
【0036】
これらU−8容器等であれば、サーベイメータの幅とほぼ同一幅もしくはそれよりも小幅となるため、遮蔽体が無駄に大型化することはない。
【0037】
また、試料容器1として市販の容器を用いることは、測定依頼元が簡単に準備でき、測定対象物(濃度確認対象物)を別の容器に移し変えることなくそのまま放射線測定ができる利点がある。
【0038】
さらに、試料容器1としてU−8容器を用いれば、求められた放射性セシウム濃度の値が、国で定める放射性物質濃度暫定基準値付近の値を示すことでさらに正確な分析が必要になった場合、試料容器1を移し変えることなく、そのままゲルマニウム半導体検出器による分析を行なう分析機関に送ることができる。測定対象物(濃度確認対象物)を別の容器を移し変えることは、試料容器1内の測定対象物に含まれる放射性物質が不均一に存在していた場合、移し変え時に高い放射線を発する部位が取り除かれてしまったり、容器内での放射性物質の分布状況が変化することにより、分析の再現性がとれなくなる可能性があるため好ましくない。
【0039】
本発明において、サーベイメータによる測定の際、測定器によってはバックグラウンド値(外部環境からの放射線の値)が高い値の場合、測定結果に誤差が出る可能性があるため、外部環境からの放射線の影響を排除するために全周囲を鉛で完全に遮蔽した状態で行う。
【0040】
鉛は重量物であるため、測定対象物(濃度確認対象物)を採取した現場で容易に測定できるようにするため、複数に分割された鉛ブロックを用いることが好ましい。図2は、複数の鉛ブロック2を箱状に積み上げることにより構成された遮蔽体3を示している。ここでは遮蔽体3の上方に配置される2つの鉛ブロック2、2を取り外して上方が開放された状態(測定前の状態)を示している。このように遮蔽体3を複数に分割された鉛ブロック2によって構成することで、遮蔽体3の現場への運搬が容易となり、また、遮蔽体3を現場で組立て及び分解可能とすることができ、作業性が良好となる。
【0041】
一般にバックグラウンド値を1/100にするために必要な鉛の厚さは、4.5cm程度とされているため、本発明においては厚さ5cm程度の鉛ブロック2を好ましく使用することができ、具体的な鉛ブロック2の一例を挙げると、10cm×20cm×5cmのものが挙げられる。図2ではこの鉛ブロック2を10個組合せることにより遮蔽体3を構成している。鉛の厚さは、測定地点におけるバックグラウンド値に応じて調整することも可能である。
【0042】
なお、図2に示したように、複数の鉛ブロック2によって遮蔽体3を構成する場合、少なくとも遮蔽体3の蓋として使用する部分の鉛ブロック2には、簡単に持ち上げられるように取っ手2aを設けておくことが好ましい。
【0043】
サーベイメータ4は、図3に示すように、上方が開放された状態の遮蔽体3内に検出センサーが配置される部位4aが上向きとなるように配置される。測定対象物(濃度確認対象物)の測定時は、この検出センサーが配置される部位4aに、測定対象物が充填された試料容器1を設置する。
【0044】
一般にサーベイメータ4には指向性があるため、測定対象物(濃度確認対象物)が充填された試料容器1は、その指向性に応じた位置、具体的には検出センサーが配置される部位4aに近接して設置する。これにより放射性物質から発せられる放射線が測定対象物(濃度確認対象物)に自己吸収されてしまうなどして、位置関係によって測定値がその都度変化してしまうことを防ぐことができる。
【0045】
なお、近接して設置するとは、試料容器1の底面を検出センサーが配置される部位4aに密接させて設置する場合のみならず、試料容器1の底面が該部位4aに非接触となるように設置する場合も含む。
【0046】
サーベイメータ4による放射線量の測定は、得られる値にばらつきがあることが一般的に知られており、間隔をあけて数回行い、その平均値を放射線量値とすることが好ましい。
【0047】
また、測定時の試料容器1はサーベイメータ4の検出センサーに対して常に一定の位置関係に置かれることが望ましいため、遮蔽体3内において試料容器1をサーベイメータ4に対して一定位置に近接して位置決めするための補助具を用いることも好ましい。
【0048】
図4は、蓋付き容器である試料容器1に用いることができる補助具5の一例を示している。この補助具5は、内径が試料容器1の容器本体1bの外径よりも大きく、蓋1aの外径よりも小さい環状支持部5aと、この環状支持部5aを支える2本の脚部5b、5bとからなっている。2本の脚部5b、5bは、その間にサーベイメータ4を配置可能となるように離間していると共に、その高さは、環状支持部5aによって試料容器1が支持された際に該試料容器1の底面がサーベイメータ4の表面(検出センサーが配置される部位4a)に対して一定の離間距離で近接するように形成されている。
【0049】
この補助具5を、環状支持部5aの中心がサーベイメータ4の検出センサーが配置される部位4aと一致するように遮蔽体3内に配置した後、環状支持部5aに試料容器1を装着すると、容器本体1bは挿通するが、蓋1aは挿通しないためこの環状支持部5aによって蓋1aの部分が下側から支持される。これにより試料容器1をサーベイメータ4の検出センサーの真上の常に一定高さに位置決めして近接して配置させることができる。
【0050】
特に、サーベイメータ4の種類によっては、その表面形状が平坦でないことにより検出センサーの表面に常に一定位置で安定に近接設置できなくなる場合も想定されるが、この補助具5を用いることで、このような事態を回避することができる。
【0051】
本発明に係る相関シートは、複数の測定対象物について、ゲルマニウム半導体検出器によって測定した放射性セシウム濃度値(Bq/kg)とサーベイメータ4によって測定された放射線量の測定値(μSv/h/kg)とを、いずれか一方を縦軸、他方を横軸にとってプロットし、プロットした値から回帰直線または回帰曲線を求めることで作成された放射性セシウム濃度値(Bq/kg)と放射線量の測定値(μSv/h/kg)との相関を示すグラフからなる。
【0052】
複数の測定対象物とは、同一種類の測定対象物の試料を複数採取することを意味し、例えば測定対象物が土壌である場合、性状が類似し、放射性セシウム濃度が異なる複数の試料を採取する。採取する試料の数は3検体以上必要だが、相関シートの高精度化の観点から10検体以上とすることが好ましい。
【0053】
なお、本発明において、相関シートの「シート」とは、放射性セシウム濃度値と放射線量の測定値との相関関係を、回帰直線または回帰曲線や、二次元的に視認可能に表示したものを指し、紙、フィルム等のシート状物のみならず、データ化されることにより、モニタ画面を有するデスクトップ型、ノート型、タブレット型等のパソコンやその他の携帯端末のモニタ画面上に表示されるものであってもよい。
【0054】
次に、測定対象物が土壌である場合の具体的な相関シートの作成手順の一例について説明する。ここでは試料容器1として、ポリプロピレン製の蓋付きのU−8容器を使用した。
【0055】
(1)測定対象物である土壌を採取し、試料容器1に充填する(試料No.1)。このときの土壌の重量(g)を測定したところ、155.7gであった。土壌の含水率は約30%であった。
【0056】
(2)図2に示すように、複数の鉛ブロック2を箱状に積み上げ、上部開放状態の遮蔽体3を構成する。
【0057】
(3)次いで、図3に示すように、サーベイメータ4をその中に設置する。このとき試料容器1は設置しない。ここではサーベイメータ4として、図5に示すクリアパレス社製A2700(商品名「Mr.Gamma」)を用いた。図5において、+の部位が検出センサーが配置される部位4aであり、遮蔽体3内においてこの検出センサーが配置される部位4aが真上を向くように設置する。
【0058】
(4)サーベイメータ4を設置したら、空の試料容器を簡易式測定器4の検出センサーが配置される部位4aの真上に位置するように近接して設置し、上部開放状態の遮蔽体3の上部を取っ手2a付きの鉛ブロック2で蓋をして、サーベイメータ4の全周囲を図6に示すように完全に遮蔽し、この状態で遮蔽体内のバックグラウンド値を測定する。ここでは、バックグラウンド値は0.002μSv/hであった。
【0059】
(5)バックグランド値の測定後、蓋部分となる鉛ブロック2を取り外し、図7に示すように、土壌が充填された試料容器1の中心が、遮蔽体3内に設置されているサーベイメータ4の検出センサーが配置される部位4aの真上に位置するように近接して設置する。このとき、図示しないが図4に示した補助具5を用いてもよい。
【0060】
(6)次に、再び取っ手2a付きの鉛ブロック2で遮蔽体3に蓋をして、サーベイメータ4によって試料容器1内の土壌の放射線量を測定する。測定の結果、土壌の放射線量値は0.088μSv/hであった。
【0061】
(7)その後、同じ土壌の放射線量を、1分半ごとに3回、上記(6)と同様の方法で測定を行う。測定結果はそれぞれ0.080、0.086、0.084μSv/hであった。
【0062】
(8)上記(6)及び(7)で測定した計4回分の放射線量値の平均値を求める。平均値は0.085μSv/hであった。
【0063】
(9)上記(8)で求めた土壌の平均放射線量値から、上記(4)で測定した遮蔽体内のバックグラウンド値をマイナスして、バックグラウンドの影響を受けていない土壌の放射線量値を求める。その結果、0.083Sv/hであった。
【0064】
(10)上記(9)で求めた土壌の放射線量値を、上記(1)で測定した土壌の重量に基づいて土壌の放射線量をkg当たりの放射線量に換算し、これをサーベイメータ4による測定値とする。換算後の測定値は、0.53μSv/h/kgであった。
【0065】
(11)同じ土壌試料を試料容器1ごと、分析機関においてゲルマニウム半導体検出器を用いて分析を行い、Cs134とCs137の分析値の合計から、放射性セシウム濃度(Bq/kg)を求める。この放射性セシウム濃度は6053Bq/kgであった。
【0066】
(12)上記と同様の方法によってさらにそれぞれ異なる11検体の土壌(試料No.2〜12)を同様に採取して、それぞれ放射性セシウム濃度(Bq/kg)とkg換算した放射線量の測定値(μSv/h/kg)を得る。試料No.2〜12の土壌は、含水率20〜40%の範囲であった。サーベイメータ4、ゲルマニウム半導体検出器による測定結果を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
(13)各測定結果によるデータを、放射性セシウム濃度(Bq/kg)を縦軸とし、放射線量の測定値(μSv/h/kg)を横軸としてそれぞれプロットし、プロットした値から、回帰直線を得た。また、その際の決定係数はR=0.9877であった。結果を図8に示す。この図8のグラフが本発明に係る相関シートである。
【0069】
このようにして得られた相関シートは、放射性セシウム濃度を確認したい濃度確認対象物について、その放射線量を相関シートの作成時と同じ試料容器及びサーベイメータを用いて測定し、それにより得られた測定値(μSv/h/kg)を相関シートに当てはめるだけで、迅速に放射線セシウム濃度(Bq/kg)に換算でき、その濃度確認対象物の放射線セシウム濃度を知ることができる。
【0070】
これにより、例えば、前述の放射性物質汚染廃棄物の廃棄処理方法の基準値8000Bq/kgに対して、対象廃棄物が8000Bq/kgより大きいか小さいか、あるいは8000Bq/kg付近の値を示すかどうかを迅速に知ることができ、その結果、次に取るべき対応として国に廃棄を依頼するか否か、又は、さらにゲルマニウム半導体検出器による精密分析をする必要があるか否かを迅速に判断することができる。
【0071】
なお、使用するサーベイメータの種類(メーカー、機種)毎に測定値は若干異なるため、相関シートはサーベイメータの種類毎にそれぞれ作成される。
【0072】
また、以上は測定対象物(濃度確認対象物)が土壌の場合であるが、その他、農作物等であってもよい。この場合、相関シートは測定対象物(濃度確認対象物)の種類毎にそれぞれ専用の相関シートとして作成される。
【0073】
さらに、使用する試料容器の種類(容量、形状、樹脂素材)毎に測定値は若干異なるため、相関シートは試料容器の種類毎にそれぞれ作成される。
【0074】
さらにまた、土壌など、水分を含む測定対象物であって、対象物ごとに、含水率に大きな差がある測定対象物の場合、含水率によって放射線測定器による測定値のkg重量換算値が変化するため、相関シートを若干補正する必要がでてくる。そのため、土壌などを対象に相関シートを作成する場合、または作成した相関シートを使用する際は、含水率をある程度限定する必要があると考える。
【0075】
上記(11)の手順は、サーベイメータ4によって測定を行う前に予め行ってもよく、例えば上記(1)の次の手順として行うようにしてもよい。
【0076】
次に、本発明に係るサーベイメータを用いた放射性セシウム濃度の簡易分析方法について説明する。ここでも放射性セシウム濃度を確認したい濃度確認対象物は、相関シートの作成手順における測定対象物と同様に土壌とした。
【0077】
(a)図6に示すように鉛によって構成された遮蔽体3の中で、相関シート作成時と同じ種類(同一メーカー、同一機種)のサーベイメータ4を用い、遮蔽体内バックグラウンド値を測定する。この工程は、相関シートを作成する際の手順である上記(2)〜(4)と同一の手順で行うことができる。
【0078】
(b)次に、相関シートを作成した際に使用したものと同じ試料容器1(同一規格、同一サイズ)に充填した、放射性セシウム濃度を確認したい濃度確認対象物である土壌の、kg当たりに換算した放射線量の測定値(μSv/h/kg)を求める。この測定値(μSv/h/kg)を求める手順は、上記(5)〜(10)と同一の手順で行うことができる。
【0079】
(c)その後、上記(b)で得られた測定値(μSv/h/kg)を、土壌用の相関シートに当てはめ、放射性セシウム濃度(Bq/kg)を換算して求める。
【0080】
なお、相関シートを参照した結果の放射性セシウム濃度(Bq/kg)の換算値が8000Bq/kg近辺である場合、万全を期すため上記(a)〜(c)の手順を複数回繰り返し行うことが好ましい。
【0081】
このように、本発明に係る簡易分析方法によれば、上記(a)〜(c)の工程を経るだけで、サーベイメータの測定値から放射性セシウム濃度を極めて迅速に確認することができる。このため、サーベイメータの利便性を生かして、例えば農地(田畑、水田、牧草地等)の土壌を採取してその場でサーベイメータによって放射線量の測定値(μSv/h/kg)を求め、それを相関シートと対比するだけで、そのつど分析機関に依頼する必要なく現場で放射性セシウム濃度を確認することが可能となる。
【0082】
また、測定開始から放射性セシウム濃度の算定までに要する時間は10分程度で済み、極めて迅速な放射性セシウム濃度の確認が可能である。
【0083】
さらに、測定に要するコストは、試料容器、サーベイメータ、遮蔽体、解析ソフトのみのコストで済むため、大幅なコスト削減が可能であり、極めて経済的である。
【0084】
しかも、コストが大幅に削減されることで、それだけ数多くの試料を分析することが可能となる。例えば農地の土壌の放射性セシウム濃度を確認したい場合、従来のように分析機関に分析依頼するとなると、費用も時間もかかるために極めて少量(少数箇所)の土壌の分析しか行うことができず、農家にとっては本当に作物栽培が可能であるのかどうかの大きな不安要因となっていたが、本発明に係る相関シート及びこれを用いた簡易分析方法によれば、迅速且つ極めて低コストに放射性セシウム濃度の確認が行なえるため、広い農地であっても数多くの箇所において試料を採取することによりきめ細かい測定が可能となり、農家にとっての不安要因を払拭することができる。
【0085】
また、上記(1)〜(13)と同様の方法で、堀場製作所社製PA−1000(商品名「Radi」)を用いて相関シートを作成し、サーベイメータごとの相関検量線の違いを評価した。
【0086】
試料には、上記(1)〜(13)で用いた12検体の土壌、各約150gを用いた。
【0087】
各放射線量測定値(μSv/h)と、計算によって求めた放射線量測定値(μSv/h/kg)、ゲルマニウム半導体検出器による同じ試料の放射性セシウム濃度(Bq/kg)の測定結果を、表2に示す。
【0088】
【表2】
【0089】
表2の結果に基づき、相関シートを作成した。結果を図9に示す。
【0090】
測定したデータから計算した決定係数はR=0.9824であった。
【0091】
図9より、測定方法や試料容器を限定したとしても、サーベイメータの種類によって、相関シートの検量線の傾きが変化することが確認できた。
【0092】
また、ブランク試料の10回測定の標準偏差から算出された定量下限値は、クリアパレス社製A2700にて800Bq/kg、堀場製作所社製PA−1000で800Bq/kgであり、スクリーニングを目的とする簡易分析法として十分な精度を有すると考えられる。
【0093】
さらに、上記(1)〜(13)と同様の方法において、試料容器を容量250ml、幅95mm、奥行き88mm、高さ30mmのアクリル製容器に変更し、放射線量の測定を4回から3回と変更した以外は同様の方法で、堀場製作所社製PA−1000(商品名「Radi」)のサーベイメータを用い、土壌(試料No.13〜24)を測定対象物として相関シートを作成し、試料容器ごとの相関検量線の違いを評価した。
【0094】
試料には、12検体の土壌、各200gを用いた。各土壌の含水率は20〜40%の範囲であった。
【0095】
各放射線量測定値(μSv/h)と、計算によって求めた放射線量測定値(μSv/h/kg)、ゲルマニウム半導体検出器による同じ試料の放射性セシウム濃度(Bq/kg)の測定結果を、表3に示す。
【0096】
【表3】
【0097】
表3の結果に基づき、相関シートを作成した。結果を図10に示す。
【0098】
測定したデータから計算した決定係数はR=0.9923であった。
【0099】
図10図9と比較することにより、測定方法やサーベイメータを限定したとしても、試料容器の種類によって、相関シートの検量線の傾きが変化することが確認できた。
【符号の説明】
【0100】
1:試料容器
1a:蓋
1b:容器本体
2:鉛ブロック
2a:取っ手
3:遮蔽体
4:サーベイメータ
4a:検出センサーが配置される部位
5:補助具
5a:環状支持部
5b:脚部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10