(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記湾曲管の前記挿入方向の基端側内であって前記軟性部口金よりも前記挿入方向の前方に、前記湾曲部の湾曲方向に加え該湾曲方向とは異なる方向にも湾曲自在な弾性部材が設けられており、
前記弾性部材は、複数の前記湾曲駒の内、前記挿入方向における最も後方に位置する湾曲駒と、該湾曲駒の前方に位置する湾曲駒とに係止されて位置していることを特徴とする請求項4に記載の挿入機器。
前記弾性部材は、前記最も後方に位置する湾曲駒と該湾曲駒の前方に位置する前記湾曲駒との少なくとも一方に固定されていることを特徴とする請求項5に記載の挿入機器。
複数の前記湾曲駒の内、前記挿入方向における最も後方に位置する湾曲駒は、前記湾曲部の湾曲方向に加え該湾曲方向とは異なる方向にも湾曲自在な弾性部材から構成されていることを特徴とする請求項4に記載の挿入機器。
【背景技術】
【0002】
近年、被検体内に挿入される挿入機器、例えば内視鏡は、医療分野及び工業用分野において広く利用されている。医療分野において用いられる内視鏡は、細長い挿入部を被検体となる体腔内に挿入することによって、体腔内の臓器を観察したり、必要に応じて内視鏡が具備する処置具の挿通チャンネル内に挿入した処置具を用いて各種処置をしたりすることができる。
【0003】
また、工業用分野において用いられる内視鏡は、内視鏡の細長い挿入部をジェットエンジン内や、工場の配管等の被検体内に挿入することによって、被検体内の被検部位の傷及び腐蝕等の観察や各種処置等の検査を行うことができる。
【0004】
ここで、内視鏡の挿入部に、例えば複数方向に湾曲自在な湾曲部が設けられた構成が周知である。湾曲部は、管路内の屈曲部における挿入部の進行性を向上させる他、挿入部において、湾曲部よりも挿入方向の先端側(以下、単に先端側と称す)に位置する先端部に設けられた観察光学系の観察方向を可変させる。
【0005】
通常、内視鏡の挿入部に設けられた湾曲部は、ステンレス等の金属から構成された複数の湾曲駒が挿入部の挿入方向に沿って連結されることによって、例えば上下の2方向または上下左右の4方向に湾曲自在となるよう構成された湾曲管を有している。
【0006】
このような構成を有する湾曲管においては、例えば湾曲駒の内、最も先端側に位置する湾曲駒に対し挿入方向の先端(以下、単に先端と称す)が固定された挿入部内に挿通された2本または4本のワイヤのいずれかが操作部から牽引操作されることにより、上下または上下左右のいずれかの方向に湾曲自在となっている。
【0007】
ここで、従来の内視鏡においては、湾曲駒間の連結にリベットが用いられた構成が周知である。また、挿入部の小径化を図る目的により、湾曲部が2方向のみに湾曲するよう湾曲駒間がリベットにより連結された構成も周知である。
【0008】
しかしながら、2方向のみに湾曲する湾曲部を有する内視鏡では、挿入部が被検体内に接触することにより湾曲部に対して非湾曲方向、例えば湾曲方向とは直交する方向から応力が付与されてしまうと、該応力がリベット連結部に付与されてしまい、該連結部が破損する可能性があった。尚、この問題は、挿入部の小径化を図る程、湾曲駒におけるリベットによって連結される連結部が径方向において薄くなるためより顕著となる。
【0009】
また、以上の問題は、湾曲管を既知の4方向に湾曲自在な構成とすれば解決できるが、この構成では、湾曲方向が増えた分リベットやワイヤを保持するワイヤガイドが増えてしまい、湾曲管内部の空間が狭くなるため内部に設けられる部材の充填率が低くなってしまい、湾曲部の細径化が難しくなってしまう。
【0010】
このような問題に鑑み、特許文献1には、湾曲管に複数の湾曲駒を用いるのではなく、1本の弾性部材であるコイルパイプの内周面に節状部材が挿入方向に沿って等間隔に取り付けられ、節状部材の径方向の内側にワイヤガイドが設けられた湾曲管の構成が開示されている。
【0011】
このような湾曲管の構成によれば、湾曲管を構成する部品の点数を減らすことができる他、湾曲部全体が弾性部材によって構成されていることから、被検体内から湾曲部に対し複数方向から応力が付与されたとしても該付与される応力を緩和することができるため、湾曲管の破損を防止することができる。
【0012】
また、特許文献2には、先端側に一定の加重が付与されると湾曲される弾性体が、挿入方向における先端部と湾曲部の間に設けられた構成が開示されている。
【0013】
このような構成によれば、挿入部の挿入性を向上させることができる他、先端部に被検体内から応力が付与されても弾性体により応力が湾曲部へと伝達されないため、湾曲管が破損するのを防ぐことができる。
【0014】
しかしながら、特許文献1に開示された構成においては、湾曲管がコイルパイプから構成されていることから潰れ強度が弱く、工業用分野に用いられる内視鏡の挿入部が挿入される被検体は、上述したように硬質部材が殆どであることから、湾曲部が被検体内から応力を受けると潰れやすいといった問題があった。
【0015】
また、特許文献2に開示された構成においては、先端部に応力が付与された場合には、上述したように湾曲管へ付与される応力を緩和することができるものの、湾曲部に直接湾曲方向とは直交する方向から応力が付与された場合、弾性体は応力を緩和することができず湾曲部が破損してしまう場合があった。
【0016】
このような問題に鑑み、特許文献3には、湾曲管と、該湾曲管よりも挿入方向の基端側(以下、単に基端側と称す)に位置する細長な軟性部(以下、蛇管と称す)との境、または蛇管の根元に、湾曲管の湾曲方向とは異なる方向、即ち、非湾曲方向に湾曲するコイルバネが設けられた構成が開示されている。
【0017】
このような構成によれば、被検体内から湾曲部に直接、湾曲方向とは直交する方向から応力が付与されたとしても、コイルバネにより、湾曲駒間を連結する連結部への応力を分散することができるため、湾曲部の強度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。尚、以下に示す実施の形態において、挿入機器は、内視鏡を例に挙げて説明する。
【0027】
(第1実施の形態)
図1は、本実施の形態の内視鏡を具備する内視鏡システムを示す斜視図である。
【0028】
図1に示すように、内視鏡システム1は、内視鏡2と装置本体6とを具備して主要部が構成されている。
【0029】
内視鏡2は、被検体内に挿入される細長な挿入部10と、該挿入部10の挿入方向Sの基端(以下、単に基端と称す)に連設された操作部4と、該操作部4から延出されたユニバーサルコード5とを具備して主要部が構成されている。
【0030】
挿入部10は、先端側から順に、先端部11と、該先端部11の基端に連設された、例えば上下方向に湾曲自在に構成された湾曲部12と、該湾曲部12の基端に連設された、可撓性を有する長尺な軟性部である蛇管13とを有して主要部が構成されている。
【0031】
操作部4には、湾曲部12を湾曲操作する湾曲操作レバー4sが設けられている。湾曲部12は、湾曲操作レバー4sの回動操作に応じて、後述するワイヤ50(
図2参照)を介して、例えば上方向または下方向に湾曲する構成となっている。尚、湾曲部12の湾曲方向は、上下方向に限定されず左右方向であっても構わない。
【0032】
また、操作部4には、湾曲操作レバー4sの他、撮像動作を指示するスイッチ等が設けられている。さらには、操作部4内には、後述するライトガイド18(
図2参照)を介して、先端部11の先端面から被検体内に照明光を供給する発光素子等の光源や、後述するワイヤ50が巻回されるプーリ等が設けられている。
【0033】
ユニバーサルコード5の延出端に、装置本体6が接続されている。ユニバーサルコード5内には、装置本体6から延出されその先端が先端部11内に設けられた後述する撮像素子16(
図2参照)に接続される信号ケーブル21(
図2参照)や、操作部4内に設けられた発光素子に電力を供給する装置本体6から延出された電線等が挿通されている。
【0034】
装置本体6は、先端部11内に設けられた後述する撮像素子16によって撮像された内視鏡画像を表示するモニタ6aを具備している。
【0035】
また、装置本体6の内部には、画像処理用のCPUや、処理画像を記録する記録装置等の電気部品や、電源を供給するバッテリユニット等が設けられている。尚、バッテリの電力は、モニタ6aや、先端部11内の撮像素子16、操作部4内に設けられた発光素子、上述した電気部品等に供給される。
次に、挿入部10の先端側の内部の構成について、
図2を用いて説明する。
図2は、
図1中のII-II線に沿う挿入部の先端側の断面図である。
【0036】
図2に示すように、先端部11は、該先端部11を構成する複数の内蔵物を覆う、例えば金属や樹脂等から構成されたカバー部材7を具備している。カバー部材7の内部には、複数の内蔵物が接着剤20等によって固定されて設けられている。
【0037】
具体的には、カバー部材7の内部において、先端側には、レンズ枠8によって保持された複数のレンズ9が、最も先端側に位置するレンズが先端部11の先端面から露出するよう設けられている。
【0038】
また、レンズ枠8の基端側の外周には、素子枠14の先端側の外周が固定されており、素子枠14の基端側の内部には、プリズム15が固定されており、さらに、プリズム15の出射面には、撮像素子16が固定されている。よって、複数のレンズ9に入光された被検体内の像は、プリズム15を介して撮像素子16に入光されて撮像される。
【0039】
撮像素子16に、電気基板17が電気的に接続されており、該電気基板17に、装置本体6からユニバーサルコード5、操作部4、挿入部10内に挿通された信号ケーブル21の先端が電気的に接続されている。尚、信号ケーブル21の先端と電気基板17との固定部位は、樹脂等の充填剤19によって覆われている。
【0040】
このことにより、撮像素子16によって撮像された被検部位の像は、信号ケーブル21を介して装置本体6へと伝送され、装置本体6内のCPUによって画像処理された後、モニタ6aに内視鏡画像として表示される。
【0041】
また、カバー部材7の内部には、操作部4内に設けられた発光素子から発光された光を、先端部11の先端面まで伝送する、挿入部10内に挿通されたライトガイド18の先端側も挿通されている。
【0042】
湾曲部12は、複数の筒状の湾曲駒32が挿入方向Sに沿って、隣り合う湾曲駒32の腕部同士が重なった部位をリベット34により上下方向に回動自在となるよう連結されて構成された湾曲管と、複数の湾曲駒32の外周を被覆する被覆部材である軟性チューブ部材30とを具備して主要部が構成されている。尚、軟性チューブ部材30は、弾性変形自在な部材、例えばゴムから構成されている。また、以下、リベット34によって連結された隣り合う湾曲駒32の腕部が重なった部位を連結部と称す。
【0043】
湾曲管は、先端側の部位、即ち、複数の湾曲駒32の内、最も挿入方向Sの前方(以下、単に前方と称す)に位置する湾曲駒32fの先端側が、カバー部材7の基端7k内に、接着剤等を介して嵌合固定されている。
【0044】
また、軟性チューブ部材30の先端30sは、カバー部材7の基端7kに非接着で突き当てられた状態において、湾曲駒32fの外周に対し糸巻き接着31によって固定されている。
【0045】
また、湾曲部12内には、湾曲部12を上下方向に湾曲させる、挿入部10内に挿通されたループ状のワイヤ50の先端側が挿通されている。尚、ワイヤ50の挿入方向Sの先端(以下、単に先端と称す)は、例えば、カバー部材7の基端7kの外周に、湾曲部12の周方向に沿って部分円弧状に形成された図示しない溝に固定されている。
【0046】
尚、ワイヤ50は、ループ状に限定されず、2本のワイヤから構成されていても構わない。また、ワイヤ50の先端は、湾曲駒32fに固定されていても構わない。さらに、ワイヤ50の基端側は、操作部4内に設けられた図示しないプーリ等に巻回されている。
【0047】
また、ワイヤ50は、湾曲部12内においては、複数の湾曲駒32の内、特定の湾曲駒32に形成されたワイヤ受け部材33によって周方向に180°ずれた状態でそれぞれ支持されている。
【0048】
このことにより、操作部4の湾曲操作レバー4sが回動操作されると、挿入部10内において180°ずれて上下に挿通されたワイヤ50のいずれか牽引されることにより湾曲部12は上方向または下方向のいずれかに湾曲する。
【0049】
尚、ワイヤ50は、挿入部10内において、湾曲部12が非湾曲状態においても後方へ引っ張られた状態において挿入部10内に挿通されている。
【0050】
ここで、湾曲管は、基端側の部位、即ち、複数の湾曲駒32の内、最も挿入方向Sの後方(以下、単に後方と称す)に位置する湾曲駒32kの基端側の外周32kgが、蛇管13の先端に固定された筒状の軟性部口金(以下、単に口金と称す)40の後述する内周面40snに回動自在に嵌合している。このことにより、湾曲部12と蛇管13とは接続されている。
【0051】
蛇管13は、樹脂層53と、該樹脂層53の外周に被覆された金属等の素線が編み込まれることにより形成されたブレード層54と、該ブレード層54の外周に被覆された樹脂層55との3層によりチューブ状に形成された外皮52から構成されている。
【0052】
また、外皮52の先端側の内周には、口金40の基端側部位40kが固定されている。具体的には、口金40は、中央部位40mと、該中央部位40mの基端に連設されるとともに中央部位40mよりも挿入部10の径方向Rにおいて小径に形成された基端側部位40kと、中央部位40mの先端に連設されるとともに外径が径方向Rにおいて中央部位40mよりも小径な先端側部位40sとを具備して主要部が構成されている。
【0053】
よって、外皮52は、口金40の基端側部位40kに対し、該基端側部位40kの基端に樹脂層53の先端が突き当たり、基端側部位40kの外周にブレード層54の先端側が被覆されて例えば溶着され、さらに中央部位40mの基端にブレード層54及び樹脂層55の先端が突き当たった状態で樹脂層55の外周が水密的に固定されることにより、口金40に一体的に固定されている。
【0054】
先端側部位40sの外周面40sgには、軟性チューブ部材30の基端側が被覆されている。軟性チューブ部材30の基端30kは、中央部位40mの先端に突き当たった状態で、糸巻き接着等によって水密的に固定されている。
【0055】
尚、軟性チューブ部材30は、上述したように先端30s及び基端30kは接着固定されているが、その他の挿入方向Sに沿った部位は、湾曲駒32の外周に対して非接着にて被覆されているのみである。
【0056】
また、軟性チューブ部材30の基端側が口金40の先端側部位40sの外周面40sgに固定されており、口金40の基端側部位40kの外周に外皮52の先端側が固定されていることから、蛇管13が捩り操作されると、軟性チューブ部材30は、当然、蛇管13と同じ方向に捩られる。
【0057】
また、軟性チューブ部材30の先端30sは、湾曲駒32fに固定されており、湾曲駒32fは、カバー部材7の基端7kに固定されていることから、蛇管13が捩り操作されると、軟性チューブ部材30を介して、当然、先端部11も蛇管13と同じ方向に捩られる。
【0058】
尚、湾曲駒32kの基端側の外周32kgが口金40の内周面40snに回動自在に嵌合していることから、軟性チューブ部材30が捩られた際、湾曲駒32kが捩られてしまうことがない。
【0059】
また、上述したように、軟性チューブ部材30は、先端30s以外は、湾曲駒32の外周に対して非接着であり、湾曲駒32kは、先端側部位40sの内周面40snに回動自在に嵌入していることから、蛇管13が捩られたとしても、複数の湾曲駒32は湾曲駒32fが軟性チューブ部材30の先端に固定されているため多少は捩られるが大きく捩られてしまうことは無い。
【0060】
また、捩られた軟性チューブ部材30及び多少は捩られた複数の湾曲駒32は、軟性チューブ部材30が弾性部材から構成されていることにより、蛇管13の捩り操作が終われば、軟性チューブ部材30の弾性復元力により蛇管13とともに捩られた状態から元の非捩り状態へと戻る。よって、湾曲部12内の内蔵物が捩られたままの状態となってしまうことがない。
【0061】
また、先端側部位40sの内周面40snには、上述したように、湾曲駒32kの基端側が回動自在に嵌合している。即ち、湾曲駒32kの外周32kgは、内周面40snに対して非接着にて嵌合している。尚、湾曲駒32kの外周32kgと内周面40snとの間は、必ずしも密着している必要は無く、間隙が形成されていても構わない。
【0062】
さらに、中央部位40mの内周面40mnには、蛇管13内においてワイヤ50の外周を被覆する既知のガイドシース51の先端が、ロウ付け、溶接等により固定されたガイドシース口金(以下、単に口金と称す)58の外周58gが回動自在に嵌合している。即ち、口金58の外周58gは、内周面40mnに対して非接着にて嵌合している。よって、蛇管13が捩られたとしても口金58が捩られることは無い。
【0063】
尚、口金58の外周58gと内周面40mnとの間は、必ずしも密着している必要は無く、間隙が形成されていても構わない。
【0064】
口金58の先端58sは、湾曲駒32kの基端32kkに非接着にて突き当たっており、基端58kは、中央部位40mと基端側部位40kとの径の違いにより内周面に形成された段部40dに突き当たって係止されている。
【0065】
ここで、ワイヤ50は、先端がカバー部材7の基端7kに固定されているとともに湾曲部12が非湾曲状態においても後方へ引っ張られた状態において挿入部10内に挿通されており、さらにワイヤ50の引っ張り力により湾曲管が後方に引っ張られていることから、湾曲駒32kの基端32kkは、段部40dに基端58kが係止された口金58の先端58sに対して後方への押圧力を以て当接している。
【0066】
このことにより、内周面40snに対して湾曲駒32kの基端側の外周32kgが非接着にて回動自在に嵌合し、また、内周面40mnに対して口金58の外周58gが非接着にて回動自在に嵌合していたとしても、口金40から、口金58及び湾曲駒32kが前方に抜けてしまうことが防止されている。即ち、蛇管13から湾曲部12が抜けてしまうことが防止されている。
【0067】
即ち、湾曲駒32k及び口金58は、ワイヤ50の張力のみにより、口金40に対して固定されている。
【0068】
このように、本実施の形態においては、口金40の内周面40snに対して、湾曲駒32kの外周32kgは、非接着にて回動自在に嵌合していると示した。
【0069】
このことによれば、挿入部10の細径化を図るため、湾曲部12が2方向に湾曲する構成であり、各湾曲駒32の連結部が薄く形成された構成において、湾曲部12の湾曲方向とは異なる方向の観察を行うに際し、例えば左右方向の観察を行うに際し、蛇管13を90°捩った際、先端部11が被検体に引っ掛かり、先端部11は捻れずに湾曲部12に回転トルクが付与されたとしても、湾曲駒32kの外周32kgに対して口金40は単に回転するのみとなることから、湾曲駒32kと口金40との嵌合部にて回転トルクが吸収される。
【0070】
このため、湾曲駒32kに付与される回転トルクを緩和することができることから、回転トルクが複数の湾曲駒32に伝達され難くなる。
【0071】
よって、回転トルクの付与により、湾曲駒32同士を挿入方向Sに沿って連結するリベット34による湾曲駒32間の連結部が破損してしまうことを防ぐことができる。
【0072】
また、本実施の形態においては、口金40の内周面40mnに対して、口金58の外周58gは、非接着にて回動自在に嵌合していると示した。
【0073】
このことによれば、湾曲部12の湾曲方向とは異なる方向の観察を行うに際し、例えば左右方向の観察を行うに際し、蛇管13を90°捩った際、先端部11が被検体に引っ掛かり、先端部11は捻れずに湾曲部12に回転トルクが付与されたとしても、口金58に対して口金40は単に回転するのみとなる。
【0074】
尚、仮に口金58が捻れてしまったとしても、口金58には、内部にワイヤ50が挿通されたガイドシース51の先端が固定されていることから、ワイヤ50の上述した後方への牽引力により捩られる前の状態に即座に戻ることができる。
【0075】
このことによれば、口金58が大幅に捻れてしまうことがないため、口金58に固定されたガイドシース51内に挿通されたワイヤ50も大幅に捻れてしまうことがないことから、ワイヤ50の破損を防ぐことができる。
【0076】
尚、軟性チューブ部材30の先端30sは湾曲駒32fに固定されているとともに、ワイヤ50は湾曲駒32のワイヤ受け部材33に保持されていることから、先端部11が被検体内に引っ掛かっているかを問わず蛇管13を捩れば、ワイヤ50は湾曲部12内において多少は捻れるが、上述したように口金40に対して口金58が回転する構成とすれば、ワイヤ50は大幅に捻れてしまうことがない。
【0077】
また、口金58の先端58sは、湾曲駒32kの基端32kkに非接着にて突き当たっていることから、口金58が捩られてしまったとしても回転トルクが口金58から湾曲駒32kに付与されてしまうことがない。
【0078】
また、湾曲部12は、上下の2方向に湾曲する構成であることから、4方向に湾曲する構成に比べ、湾曲部12の細径化を図ることができる。さらに、湾曲部12と蛇管13との接続に固定ビス等を用いる必要がないことから、細径化を図っても接続部位内の空間を大きく確保することができる。
【0079】
以上から、湾曲部12に付与される回転トルクを緩和することができるとともに、挿入部10の細径化を実現できる構成を有する内視鏡2を提供することができる。
【0080】
(第2実施の形態)
図3は、本実施の形態の内視鏡の挿入部における湾曲部と蛇管との接続部位を拡大して示す部分断面図、
図4は、
図3のコイル部材の先端が湾曲駒に対して固定され、基端が最後方の湾曲駒に非接着にて係止された変形例を示す部分断面図、
図5は、
図3のコイル部材の先端及び基端が湾曲駒に対して非接着にて係止された変形例を示す部分断面図である。
【0081】
この第2実施の形態の内視鏡の構成は、上述した
図1、
図2に示した第1実施の形態の内視鏡と比して、湾曲部の基端側内に弾性部材が設けられている点が異なる。よって、この相違点のみを説明し、第1実施の形態と同様の構成には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0082】
図3に示すように、湾曲部12の基端側内に、湾曲部12の湾曲方向に加え、該湾曲方向とは異なる方向にも湾曲自在な弾性部材、例えばスプリング状のコイル部材60が設けられている。尚、弾性部材はスプリング状のコイル部材に限定されず、平コイルを螺旋状に巻いたコイル部材であっても構わない。
【0083】
具体的には、コイル部材60は、挿入方向Sにおいて、湾曲駒32kと、該湾曲駒32kの1つ前方に位置する湾曲駒32iとの間において、湾曲駒32k及び湾曲駒32i内に挿入されており、先端の外周が湾曲駒32iに係止されるとともに基端の外周が湾曲駒32kに係止されて位置している。
【0084】
より具体的には、コイル部材60の先端の外周が、湾曲駒32iに非接着にて回動自在に係止されているとともに、基端の外周が、湾曲駒32kに溶接、接着剤、ロウ付け、半田付け等によって固定されていることにより、コイル部材60は、口金40よりも前方、即ち、湾曲駒32kと口金40との嵌合部位よりも前方に位置している。
【0085】
尚、
図4に示すように、コイル部材60の先端の外周が、湾曲駒32iに形成された段差32idに溶接、接着剤、ロウ付け、半田付け等により固定され、基端の外周が、湾曲駒32kに非接着にて回動自在に係止された構成であっても構わない。即ち、コイル部材60は、
図3に示すように基端が固定されていても構わないし、
図4に示すように先端が固定されていても構わないし、図示しないが先端及び基端が固定されていても構わない。
【0086】
また、
図5に示すように、コイル部材60の先端の外周が、湾曲駒32iに形成された段差32idに非接着にて回動自在に係止され、基端の外周が、湾曲駒32kに形成された段差32kdに非接着にて回動自在に係止された構成であっても構わない。
【0087】
尚、コイル部材60の先端及び基端を、各湾曲駒32i及び32kの段差32id、32kdに係止させたのは、
図5に示す構成においては、コイル部材60の先端及び基端を固定しないため、段差32id、32kdに係止させないとコイル部材60が挿入方向Sに移動してしまい、コイル部材60の位置が規定できないためである。
【0088】
また、コイル部材60内には、上述したワイヤ50、ライトガイド18、信号ケーブル21の他、各種部材が挿通されている。
【0089】
尚、その他の構成は、上述した第1実施の形態と同じである。
【0090】
このような構成によれば、被検体内に先端部11が引っ掛かった状態において蛇管13が捩られた際の湾曲部12に付与される回転トルクを上述した第1実施の形態と同様に緩和させることができるとともに、湾曲部12に直接湾曲方向とは直交する方向から応力が付与された場合であっても、湾曲方向とは異なる方向に湾曲自在なコイル部材60が応力を吸収してくれるため、各湾曲駒32間の連結部が破損してしまうことを防止することができる。尚、その他の効果は、上述した第1実施の形態と同じである。
【0091】
(第3実施の形態)
図6は、本実施の形態の内視鏡の挿入部における湾曲部と蛇管との接続部位を拡大して示す部分平面図、
図7は、
図6中のVII-VII線に沿う接続部位の断面図である。
【0092】
この第3実施の形態の内視鏡の構成は、上述した
図1、
図2に示した第1実施の形態の内視鏡と比して、複数の湾曲駒の内、最も後方に位置する湾曲駒が弾性部材から構成されている点が異なる。よって、この相違点のみを説明し、第1実施の形態と同様の構成には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0093】
図6、
図7に示すように、本実施の形態においては、複数の湾曲駒32の内、最も後方に位置する湾曲駒32k’は、湾曲部12の湾曲方向に加え、該湾曲方向とは異なる方向にも湾曲自在な弾性部材である金属パイプから構成されている。
【0094】
具体的には、金属パイプは、弾性変形可能な形状記憶合金等から構成されているとともに、湾曲部12の周方向において湾曲方向とは90°異なる各位置、即ち、湾曲駒32間を連結するリベット34が固定される周方向の位置に、それぞれ挿入方向Sにおいて所定の間隔を有するよう複数のスリット70が左右にて挿入方向Sにおいて位相がずれるよう複数形成されている。このことにより、湾曲駒32k’は、湾曲方向とは直交する方向に湾曲自在となっている。
【0095】
また、本実施の形態においては、湾曲駒32k’の基端側の外周面32k’gが、口金40の先端側部位40sの内周面40snに回動自在に嵌合している。
【0096】
尚、その他の構成は、上述した第1実施の形態と同じである。
【0097】
このような構成によれば、被検体内に先端部11が引っ掛かった状態において蛇管13が捩られた際の湾曲部12に付与される回転トルクを上述した第1実施の形態と同様に、外周面32k’gが内周面40snに回動自在なことにより緩和させることができるとともに、湾曲部12に直接湾曲方向とは直交する方向から応力が付与された場合であっても、湾曲方向とは異なる方向に湾曲自在な湾曲駒32k’が応力を吸収してくれるため、各湾曲駒32の連結部が破損してしまうことを防止することができる。尚、その他の効果は、上述した第1実施の形態と同じである。
【0098】
尚、上述した第1〜第3実施の形態においては、挿入機器は内視鏡2を例に挙げて示したが、これに限らず、被検体内に挿入される挿入部を有し、該挿入部に湾曲部が設けられた構成であれば内視鏡に限定されないことは勿論である。
【0099】
また、上述した第1〜第3実施の形態においては、湾曲管は、複数の湾曲駒32が連結されたものを例に挙げて示したが、これに限らず、非接続方式の湾曲管、例えば細長な筒状の弾性部材にスリットが形成された湾曲管にも適用可能なことは云うまでもない。