特許第5977638号(P5977638)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5977638
(24)【登録日】2016年7月29日
(45)【発行日】2016年8月24日
(54)【発明の名称】設備機器制御システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/02 20060101AFI20160817BHJP
【FI】
   F24F11/02 103D
   F24F11/02 Z
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-221094(P2012-221094)
(22)【出願日】2012年10月3日
(65)【公開番号】特開2014-74520(P2014-74520A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】村田 裕志
(72)【発明者】
【氏名】長尾 泰司
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅人
(72)【発明者】
【氏名】三浦 眞由美
【審査官】 岡澤 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開平4−281145(JP,A)
【文献】 特開平4−263731(JP,A)
【文献】 特開平5−26495(JP,A)
【文献】 特開昭61−165542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主設定操作者が操作可能であり、制御対象空間の居住者が操作不可能なように設置された主設定機と、
制御対象空間の居住者が操作可能なように設置された個別設定機と、
制御対象空間の設備機器の設定変更操作を前記主設定機に限定する主設定機限定モードが選択されている状態では前記個別設定機による設定変更操作を無効とし、前記設備機器の設定変更操作を前記主設定機に限定しない非主設定機限定モードが選択されている状態では前記個別設定機による設定変更操作を有効にし、設定変更操作が有効な前記個別設定機または前記主設定機からの設定に応じて前記設備機器を制御する制御手段と、
非主設定機限定モードにおいて前記個別設定機で最終的に設定された設定を記憶する設定記憶手段と、
主設定機限定モードでの前記主設定機の最終設定操作からの経過時間Tを測定する時間測定手段と、
主設定機限定モードから非主設定機限定モードに切り替えられたときに経過時間Tに応じて実行すべき設定状態決定方法の規定を予め記憶する規定記憶手段と、
主設定機限定モードから非主設定機限定モードに切り替えられたときに、経過時間Tと前記設定状態決定方法の規定に応じて前記設備機器の設定状態を決定する設定操作手段とを備えることを特徴とする設備機器制御システム。
【請求項2】
請求項1記載の設備機器制御システムにおいて、
前記設定状態決定方法の規定は、経過時間Tが、主設定機限定モードへの切り替えが設備機器を一旦標準状態に設定するためだけの切り替えか否かを判断するために予め規定された時間T1未満の場合、直前の主設定機限定モードで設定された設定状態を維持し、この主設定機限定モードより前の非主設定機限定モードで最終的に設定された設定状態を破棄するという規定であることを特徴とする設備機器制御システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の設備機器制御システムにおいて、
前記設定状態決定方法の規定は、経過時間Tが、主設定機限定モードへの切り替えが設備機器を強制的な管埋状態に維持するための切り替えか否かを判断するために予め規定された時間T2以上の場合、直前の主設定機限定モードより前の非主設定機限定モードで最終的に設定された設定状態に戻し、主設定機限定モードで設定された設定状態を破棄するという規定であることを特徴とする設備機器制御システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の設備機器制御システムにおいて、
前記設定状態決定方法の規定は、経過時間Tが、居住者側の事情が変化したか否かを判断するために予め規定された時間T3以上の場合、直前の主設定機限定モードで設定された設定状態とこの主設定機限定モードより前の非主設定機限定モードで最終的に設定された設定状態の中間的な設定状態にするという規定であることを特徴とする設備機器制御システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の設備機器制御システムにおいて、
さらに、主設定操作者が操作可能であり、制御対象空間の居住者が操作不可能なように設置された切替操作手段を備え、
主設定操作者が前記切替操作手段を操作することによりモードの切り替えが行なわれることを特徴とする設備機器制御システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の設備機器制御システムにおいて、
さらに、主設定機限定モードが選択されているときに前記個別設定機による設定変更操作が無効になっていることを居住者が認識できるように情報提示する提示手段を備えることを特徴とする設備機器制御システム。
【請求項7】
制御対象空間の設備機器の設定変更操作を主設定操作者が操作可能で制御対象空間の居住者が操作不可能な主設定機に限定する主設定機限定モードが選択されている状態では、制御対象空間の居住者が操作可能な個別設定機による設定変更操作を無効とし、前記設備機器の設定変更操作を前記主設定機に限定しない非主設定機限定モードが選択されている状態では、前記個別設定機による設定変更操作を有効にする切り替えステップと、
設定変更操作が有効な前記個別設定機または前記主設定機からの設定に応じて前記設備機器を制御する制御ステップと、
非主設定機限定モードにおいて前記個別設定機で最終的に設定された設定を記憶する設定記憶ステップと、
主設定機限定モードにおいて前記主設定機の最終設定操作からの経過時間Tを測定する時間測定ステップと、
主設定機限定モードから非主設定機限定モードに切り替えられたときに、経過時間Tと規定記憶手段に予め記憶された設定状態決定方法の規定に応じて前記設備機器の設定状態を決定する設定操作ステップとを備えることを特徴とする設備機器制御方法。
【請求項8】
請求項7記載の設備機器制御方法において、
前記設定状態決定方法の規定は、経過時間Tが、主設定機限定モードへの切り替えが設備機器を一旦標準状態に設定するためだけの切り替えか否かを判断するために予め規定された時間T1未満の場合、直前の主設定機限定モードで設定された設定状態を維持し、この主設定機限定モードより前の非主設定機限定モードで最終的に設定された設定状態を破棄するという規定であることを特徴とする設備機器制御方法。
【請求項9】
請求項7または8記載の設備機器制御方法において、
前記設定状態決定方法の規定は、経過時間Tが、主設定機限定モードへの切り替えが設備機器を強制的な管埋状態に維持するための切り替えか否かを判断するために予め規定された時間T2以上の場合、直前の主設定機限定モードより前の非主設定機限定モードで最終的に設定された設定状態に戻し、主設定機限定モードで設定された設定状態を破棄するという規定であることを特徴とする設備機器制御方法。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれか1項に記載の設備機器制御方法において、
前記設定状態決定方法の規定は、経過時間Tが、居住者側の事情が変化したか否かを判断するために予め規定された時間T3以上の場合、直前の主設定機限定モードで設定された設定状態とこの主設定機限定モードより前の非主設定機限定モードで最終的に設定された設定状態の中間的な設定状態にするという規定であることを特徴とする設備機器制御方法。
【請求項11】
請求項7乃至10のいずれか1項に記載の設備機器制御方法において、
前記切り替えステップは、主設定操作者が操作可能で制御対象空間の居住者が操作不可能なように設置された切替操作手段を主設定操作者が操作したことに応じて、モードの切り替えを行なうことを特徴とする設備機器制御方法。
【請求項12】
請求項7乃至11のいずれか1項に記載の設備機器制御方法において、
さらに、主設定機限定モードが選択されているときに前記個別設定機による設定変更操作が無効になっていることを居住者が認識できるように情報提示する提示ステップを備えることを特徴とする設備機器制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機や照明などの設備機器を制御する設備機器制御システムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物内の広域エリアの操作に使用される主設定機と、個別エリアの操作に使用される個別設定機を備え、両方の設定機が同一の設備機器を操作可能なようにする計装が実用されている。例えば図5の例では、個別ゾーン5−1,5−2に設けられた全ての設備機器4−1,4−2は、中央監視装置3に設けられた主設定機1からの発停信号に応じて一括して操作される。また、管理者は、主設定機1を使って個別ゾーン単位で設備機器4−1,4−2を操作することも可能である。また、個別ゾーン5−1,5−2の各設備機器4−1,4−2は、建物の入口付近の壁面に設けられた個別設定機2−1,2−2からの発停信号に応じて個別ゾーン単位で操作される。
【0003】
そして、主設定機、個別設定機というハードウェア設備に対して、主設定機、個別設定機の区別なく最新の操作に応じて設備機器が設定される後優先方式が採用されている。図6(A)は主設定機限定モードにおける設備運転の例を示す図、図6(B)は個別設定機限定モードにおける設備運転の例を示す図、図6(C)は後優先モードにおける設備運転の例を示す図である。主設定機限定モードでは、例えば個別ゾーン5−1の設備機器4−1を操作しようとする場合、主設定機1からの操作のみが受け付けられる。個別設定機限定モードでは、設備機器4−1を操作しようとする場合、個別設定機2−1からの操作のみが受け付けられる。後優先モードでは、最新の操作に応じて設備機器4−1が設定される。
【0004】
後優先方式については、例えば上位装置からの設定値およびワイヤレス送信器からの設定値を空調設備への入力とする場合などに利用されることが、特に知られている(特許文献1参照)。後優先方式では、設定行為者による最新の状況判断に基づく設定が採用されるので、状況が時々刻々変化する建物エリアにおいては、シンプルでありながら合理的な方式である。
【0005】
主設定機と個別設定機の両方の設定機が同一の設備機器を操作可能なように計装するということは、両者で異なる設定が行なわれたときには、どちらか一方の設定は却下されなければならない。このような設定の競合において、どちらも要望レベルの設定であれば、要望が却下された側の事情で重大な事態が発生することはない。しかし、優先順位に差がある場合、例えば優先順位の高い義務的要求に基づく設定と優先順位の低い要求に基づく設定とが競合するときに、後優先方式の場合、優先順位の高い義務的要求に基づく設定の方が維持できなくなる可能性がある。そのような場合、重大な事態が発生することもあり得る。以下に、優先順位の高い義務的要求に基づく設定と優先順位の低い要求に基づく設定の事例を示す。
【0006】
[優先順位の高い義務的要求に基づく設定]
(a)安全衛生管埋の観点から、一定の時間帯は空調の温度、風量を快適側に維持する。(b)安全衛生管埋の観点から、一定の時間帯は照明の照度を高い側に維持する。
(c)電力デマンド対応という観点から、一定の時間帯は使用電力を抑える側に維持する。
(d)改正省エネ法対応という観点から、一定の期間は使用電力を抑える側に維持する。
【0007】
[優先順位の低い要求に基づく設定]
(e)重要顧客に接客時は、応接室の空調の温度、風量を快適側に維持する。
(f)環境の影響を受けやすい物性を用いた作業時には、作業エリアの温度、風量を作業に適した環境に維持する。この場合、使用電力を抑える側になることもあり得る。
(g)荷物搬送時には、足場が暗くなりやすい通路の照明を点灯状態に維持する。
(h)居住者の感覚で積極的に省エネルギーに協力しようと感じている時は、空調の温度、風量を省エネルギー側に維持する。
【0008】
主設定機と個別設定機を備える以上、設定の競合は避けられないが、シンプルな計装という利点を極力失うことなく、上記の問題の発生確率を低減することが求められる。
上記の設定の競合の問題については、ユーザ、時刻、季節等によって、主設定機から個別設定機に対して、制御を禁止したい運転項目を任意に設定することが可能な集中制御型空気調和システムが知られている(特許文献2参照)。
また、主設定機のような別途部品なしで個別設定機の遠隔操作の有効/無効設定を実行できる空調機のリモコン装置および空調機システムが知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平09−303847号公報
【特許文献2】特開平10−148381号公報
【特許文献3】特開2004−294029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2、特許文献3に開示された技術を採用すると、以下のような問題点があった。すなわち、設備機器の設定変更操作を主設定機に限定しない非主設定機限定モード→設備機器の設定変更操作を主設定機に限定する主設定機限定モード→非主設定機限定モードというモード切り替えが行なわれたとき、例えば非主設定機限定モードにおいて室内温度を25℃にするという設定が個別設定機からなされ、主設定機限定モードにおいて室内温度を28℃にするという設定が主設定機からなされ、さらに非主設定機限定モードに切り替えられたときに、室内温度を25℃に戻すか28℃に維持するかのどちらが妥当か、という問題である。
【0011】
非主設定機限定モードと主設定機限定モードのどちらの設定を採用するかを判断することは管理者にとって煩わしい作業であり、また設備機器の設定状態を決定するに際して管理者が設定を誤る可能性もある。また、複数の管埋者がいる場合、管理者によって設備機器の状態設定の仕方が異なる可能性があるので、空調機や照明などの設備機器の設定状態に居住者が不快感を抱く可能性がある。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、非主設定機限定モード→主設定機限定モード→非主設定機限定モードというモード切り替えが実施されたときに、管埋者側の煩わしさや管理者の勘違いによる設定の誤り、あるいは居住者側にとっての不透明感(管埋者の場当たり的な設定という印象)を低減することができる設備機器制御システムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の設備機器制御システムは、主設定操作者が操作可能であり、制御対象空間の居住者が操作不可能なように設置された主設定機と、制御対象空間の居住者が操作可能なように設置された個別設定機と、制御対象空間の設備機器の設定変更操作を前記主設定機に限定する主設定機限定モードが選択されている状態では前記個別設定機による設定変更操作を無効とし、前記設備機器の設定変更操作を前記主設定機に限定しない非主設定機限定モードが選択されている状態では前記個別設定機による設定変更操作を有効にし、設定変更操作が有効な前記個別設定機または前記主設定機からの設定に応じて前記設備機器を制御する制御手段と、非主設定機限定モードにおいて前記個別設定機で最終的に設定された設定を記憶する設定記憶手段と、主設定機限定モードでの前記主設定機の最終設定操作からの経過時間Tを測定する時間測定手段と、主設定機限定モードから非主設定機限定モードに切り替えられたときに経過時間Tに応じて実行すべき設定状態決定方法の規定を予め記憶する規定記憶手段と、主設定機限定モードから非主設定機限定モードに切り替えられたときに、経過時間Tと前記設定状態決定方法の規定に応じて前記設備機器の設定状態を決定する設定操作手段とを備えることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の設備機器制御システムの1構成例において、前記設定状態決定方法の規定は、経過時間Tが、主設定機限定モードへの切り替えが設備機器を一旦標準状態に設定するためだけの切り替えか否かを判断するために予め規定された時間T1未満の場合、直前の主設定機限定モードで設定された設定状態を維持し、この主設定機限定モードより前の非主設定機限定モードで最終的に設定された設定状態を破棄するという規定である。
また、本発明の設備機器制御システムの1構成例において、前記設定状態決定方法の規定は、経過時間Tが、主設定機限定モードへの切り替えが設備機器を強制的な管埋状態に維持するための切り替えか否かを判断するために予め規定された時間T2以上の場合、直前の主設定機限定モードより前の非主設定機限定モードで最終的に設定された設定状態に戻し、主設定機限定モードで設定された設定状態を破棄するという規定である。
また、本発明の設備機器制御システムの1構成例において、前記設定状態決定方法の規定は、経過時間Tが、居住者側の事情が変化したか否かを判断するために予め規定された時間T3以上の場合、直前の主設定機限定モードで設定された設定状態とこの主設定機限定モードより前の非主設定機限定モードで最終的に設定された設定状態の中間的な設定状態にするという規定である。
【0015】
また、本発明の設備機器制御システムの1構成例は、さらに、主設定操作者が操作可能であり、制御対象空間の居住者が操作不可能なように設置された切替操作手段を備え、主設定操作者が前記切替操作手段を操作することによりモードの切り替えが行なわれることを特徴とするものである。
また、本発明の設備機器制御システムの1構成例は、さらに、主設定機限定モードが選択されているときに前記個別設定機による設定変更操作が無効になっていることを居住者が認識できるように情報提示する提示手段を備えることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の設備機器制御方法は、制御対象空間の設備機器の設定変更操作を主設定操作者が操作可能で制御対象空間の居住者が操作不可能な主設定機に限定する主設定機限定モードが選択されている状態では、制御対象空間の居住者が操作可能な個別設定機による設定変更操作を無効とし、前記設備機器の設定変更操作を前記主設定機に限定しない非主設定機限定モードが選択されている状態では、前記個別設定機による設定変更操作を有効にする切り替えステップと、設定変更操作が有効な前記個別設定機または前記主設定機からの設定に応じて前記設備機器を制御する制御ステップと、非主設定機限定モードにおいて前記個別設定機で最終的に設定された設定を記憶する設定記憶ステップと、主設定機限定モードにおいて前記主設定機の最終設定操作からの経過時間Tを測定する時間測定ステップと、主設定機限定モードから非主設定機限定モードに切り替えられたときに、経過時間Tと規定記憶手段に予め記憶された設定状態決定方法の規定に応じて前記設備機器の設定状態を決定する設定操作ステップとを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、制御手段と設定記憶手段と時間測定手段と規定記憶手段と設定操作手段とを設けることにより、非主設定機限定モード→主設定機限定モード→非主設定機限定モードというモード切り替えが実施されたときに、主設定機限定モードでの主設定機の最終設定操作からの経過時間Tと規定記憶手段に予め記憶された設定状態決定方法の規定に応じて設備機器の設定状態を決定するので、管埋者側の煩わしさや、管理者の勘違いによる設定の誤り、あるいは居住者側にとっての不透明感(管埋者の場当たり的な設定という印象)を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る設備機器制御システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る設備機器制御システムの動作を説明するフローチャートである。
図3】本発明の第2の実施の形態に係る設備機器制御システムの構成を示すブロック図である。
図4】本発明の第3の実施の形態に係る設備機器制御システムの構成を示すブロック図である。
図5】主設定機および個別設定機の操作範囲を説明する図である。
図6】主設定機限定モード、個別設定機限定モードおよび後優先モードにおける設備運転の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[発明の原理]
発明者は、非主設定機限定モード(個別設定機限定モードまたは後優先モード)→主設定機限定モード→非主設定機限定モードというモード切り替えにおいて、主設定機限定モードでの最終設定操作からの経過時間に応じて設備機器の設定状態の戻し方を自動決定するという方法に想到した。これにより、管埋者側の煩わしさや勘違いによる誤り、あるいは居住者側にとっての不透明感(管埋者の場当たり的な設定という印象)を低減することができる。
【0020】
[第1の実施の形態]
朝の空調開始時の設定値リセット(一斉リセット)、終業時刻の照明・空調の一時的OFF(一斉OFF)のように、個別設定によりランダムな状態になったものを一旦標準状態に設定したい場合、管埋者は主設定機限定モードで標準状態(例えば終業時なら空調も照明もOFF)に設定した後に、すぐに非主設定機限定モードに切替えて居住者の判断(例えば残業者の空調や照明の必要性判断)に任せる行動を取る。
【0021】
そこで、本実施の形態では、主設定機限定モードでの最終設定操作からの経過時間が短い時間(設定変更後にモード切り替えが行なえる程度の時間であり、例えば3分未満)の場合は、主設定機限定モードで設定された設定状態を維持する。非主設定機限定モードで最終的に設定された設定状態は破棄する。
【0022】
図1は本実施の形態に係る設備機器制御システムの構成を示すブロック図である。設備機器制御システムは、主設定操作者が操作可能であり、制御対象空間の居住者が操作不可能なように設置された主設定機1と、制御対象空間の居住者が操作可能なように設置された個別設定機2と、主設定操作者が操作可能であり、制御対象空間の居住者が操作不可能なように設置された切替操作部6と、主設定操作者が切替操作部6を操作することにより主設定機限定モードが選択されている状態では個別設定機2による設定変更操作を無効とし、主設定操作者が切替操作部6を操作することにより非主設定機限定モード(個別設定機限定モードまたは後優先モード)が選択されている状態では個別設定機2による設定変更操作を有効にする制御部7と、主設定機限定モードが選択されているときに個別設定機2による設定変更操作が無効になっていることを居住者が認識できるように情報提示する提示部8と、非主設定機限定モードにおいて個別設定機2で最終的に設定された設定を記憶する設定記憶部9と、主設定機限定モードでの最終設定操作からの経過時間Tを測定する時間測定部10と、主設定機限定モードから非主設定機限定モードに切り替えられたときに経過時間Tに応じて実行すべき設定状態決定方法の規定を予め記憶する規定記憶部11と、主設定機限定モードから非主設定機限定モードに切り替えられたときに、経過時間Tと設定状態決定方法の規定に応じて設備機器4の設定状態を決定する設定操作部12とを備えている。
【0023】
制御部7と設定記憶部9と時間測定部10と規定記憶部11と設定操作部12とは、例えば図5に示した中央監視装置3に設けられる。
主設定機1と切替操作部6とを制御対象空間の居住者が操作不可能なように設置する方法としては、主設定機1と切替操作部6とを居住者の入室が禁止になっている中央監視室に設置するか、主設定機1と切替操作部6の操作にパスワードが必要なようにする等の方法がある。
【0024】
次に、本実施の形態の設備機器制御システムの動作を図2を用いて説明する。ここでは、管理者によって切替操作部6が操作され、非主設定機限定モードが選択されているものとする。非主設定機限定モードが選択されている場合(図2ステップS1においてYES)、設定操作部12は、時間測定部10によって測定される経過時間Tを確認するが(ステップS2,S4,S6)、ここではT=0とする。このため、ステップS2,S4,S6において全て判定NOとなるので、ステップS8に進む。
【0025】
制御部7は、非主設定機限定モードが選択されている状態において、居住者によって個別設定機2が操作されると(ステップS8においてYES)、個別設定機2から入力された設定(例えば室内温度を25℃にする設定)に応じて設備機器4(本実施の形態では空調機)を制御する(ステップS9)。そして、設定記憶部9は、個別設定機2から入力された設定を記憶する(ステップS10)。
【0026】
こうして、例えば管理者からの指示により設備機器制御システムの動作が終了するか(ステップS11においてYES)、主設定機限定モードに切り替えられるまで(ステップS12においてYES)、ステップS8〜S10の処理が繰り返し実行される。設定記憶部9の記憶内容は個別設定機2が操作される度に更新されるので、設定記憶部9には、個別設定機2で最終的に設定された設定が常に記憶されていることになる。
【0027】
次に、管理者によって切替操作部6が操作され、主設定機限定モードが選択されると(ステップS12においてYES)、制御部7は、個別設定機2による設定変更操作が無効になっていることを提示部8を通じて居住者に通知する(ステップS13)。
【0028】
制御部7は、主設定機限定モードが選択されている状態において、管理者によって主設定機1が操作されると(ステップS14においてYES)、主設定機1から入力された設定(例えば室内温度を27℃にする設定)に応じて設備機器4を制御する(ステップS15)。そして、時間測定部10は、経過時間Tの測定を開始する(ステップS16)。
【0029】
こうして、例えば管理者からの指示により設備機器制御システムの動作が終了するか(ステップS17においてYES)、非主設定機限定モードに切り替えられるまで(ステップS1においてYES)、ステップS14〜S16の処理が繰り返し実行される。
この繰り返しの中で、管理者によって主設定機1が操作され、別の設定変更(例えば室内温度を28℃にする設定が行なわれると、時間測定部10は、経過時間T=0に一旦リセットして、経過時間Tの測定を再度開始する(ステップS16)。
【0030】
次に、管理者によって切替操作部6が操作され、非主設定機限定モードが選択されると(ステップS1においてYES)、設定操作部12は、経過時間Tと規定記憶部11に予め記憶されている規定に応じて、設備機器4に対する設定を決定する。本実施の形態では、経過時間Tが、主設定機限定モードへの切り替えが設備機器4を一旦標準状態に設定するためだけの切り替えか否かを判断するために予め規定された時間T1(例えば3分)未満の場合(0<T<T1)、直前の主設定機限定モードで設定された設定状態を維持し、この主設定機限定モードより前の非主設定機限定モードで最終的に設定された設定状態を破棄するという規定が、規定記憶部11に予め記憶されているものとする。つまり、経過時間Tが0より大きく時間T1未満であれば、主設定機限定モードへの切り替えが設備機器4を一旦標準状態に設定するためだけの切り替えであると判断することになる。
【0031】
設定操作部12は、経過時間Tが例えば2分59秒で時間T1未満の場合(ステップS2においてYES)、規定記憶部11の規定に従って、設備機器4の状態を直前の主設定機限定モードで設定された設定状態(室内温度を28℃にする設定)に維持し(ステップS3)、この主設定機限定モードより前の非主設定機限定モードで最終的に設定された設定状態(室内温度を25℃にする設定)については採用しない。こうして、非主設定機限定モードへの切り替えに際して、主設定機1で最終的に設定された設定状態を維持し、個別設定機2による設定変更が可能な状態へと移行する。
非主設定機限定モードが選択されている状態での動作(ステップS8〜S10)は、上記のとおりである。
【0032】
以上のように、本実施の形態では、非主設定機限定モード→主設定機限定モード→非主設定機限定モードというモード切り替えが実施されたときに、主設定機限定モードでの最終設定操作からの経過時間Tが予め規定された時間T1未満の場合は主設定機限定モードで設定された設定状態を維持するので、管埋者側の煩わしさや、管理者の勘違いによる設定の誤り、あるいは居住者側にとっての不透明感(管埋者の場当たり的な設定という印象)を低減することができる。
【0033】
[第2の実施の形態]
電力デマンドに対応する省エネルギー重視の時間限定的な空調設定値変更や、就業環境規制を遵守するための快適性重視の時間限定的な空調設定値変更のように、限られた時間であっても、強制的な設定値を継続的に維持しなければならない場合、管埋者は、主設定機限定モードで強制的管埋状態(例えば冷房時の省エネルギー重視のために室内温度を28℃程度にするといった状態)に設定した後に、すぐに非主設定機限定モードに切替えて居住者の判断(例えば残業者の空調や照明の必要性判断)に任せる行動を取ることはない。逆に言えば、継続的な維持の必要性がなくなった場合は、個別設定機による居住者側の設定が規制される必要性がなくなったということになる。
【0034】
そこで、本実施の形態では、主設定機限定モードでの最終設定操作からの経過時間が長い時間(管埋された状態が継続したと言える程度の時間であり、例えば3分以上)の場合は、非主設定機限定モードで最終的に設定された設定状態に戻す。主設定機限定モードで設定された設定状態は破棄する。
【0035】
図3は本実施の形態に係る設備機器制御システムの構成を示すブロック図であり、図1と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態の設備機器制御システムの構成は第1の実施の形態と同様であるが、規定記憶部11aに記憶されている規定が異なる。本実施の形態では、経過時間Tが、主設定機限定モードへの切り替えが設備機器4を強制的な管埋状態に維持するための切り替えか否かを判断するために予め規定された時間T2(T1≦T2で、例えば3分)以上の場合(T≧T2)、直前の主設定機限定モードより前の非主設定機限定モードで最終的に設定された設定状態に戻し、主設定機限定モードで設定された設定状態を破棄するという規定が、規定記憶部11aに予め記憶されているものとする。この場合、経過時間Tが時間T2以上であれば、主設定機限定モードへの切り替えが設備機器4を強制的な管埋状態に維持するための切り替えであると判断することになる。
【0036】
次に、本実施の形態の設備機器制御システムの動作を図2を用いて説明する。ここでは、管理者によって切替操作部6が操作され、非主設定機限定モードが選択されているものとする。非主設定機限定モードが選択されている状態での動作(図2ステップS8〜S10)は、第1の実施の形態で説明したとおりである。
【0037】
次に、管理者によって切替操作部6が操作され、主設定機限定モードが選択されると(ステップS12においてYES)、制御部7は、個別設定機2による設定変更操作が無効になっていることを提示部8を通じて居住者に通知する(ステップS13)。主設定機限定モードが選択されている状態での動作(ステップS14〜S16)は、第1の実施の形態で説明したとおりである。
【0038】
次に、管理者によって切替操作部6が操作され、非主設定機限定モードが選択されると(ステップS1においてYES)、設定操作部12は、経過時間Tと規定記憶部11aに予め記憶されている規定に応じて、設備機器4に対する設定を決定する。
設定操作部12は、経過時間Tが例えば3分以上で時間T2以上場合(ステップS4においてYES)、規定記憶部11aの規定に従って、設備機器4の状態を設定記憶部9に記憶された設定状態(室内温度を25℃にする設定)に戻し(ステップS5)、直前の主設定機限定モードで設定された設定状態を破棄する。こうして、非主設定機限定モードへの切り替えに際して、個別設定機2で最終的に設定された設定状態に戻し、個別設定機2による設定変更が可能な状態へと移行する。
【0039】
以上のように、本実施の形態では、非主設定機限定モード→主設定機限定モード→非主設定機限定モードというモード切り替えが実施されたときに、主設定機限定モードでの最終設定操作からの経過時間Tが予め規定された時間T2以上の場合は設定記憶部9に記憶された設定状態に戻すので、管埋者側の煩わしさや、管理者の勘違いによる設定の誤り、あるいは居住者側にとっての不透明感(管埋者の場当たり的な設定という印象)を低減することができる。
【0040】
[第3の実施の形態]
第2の実施の形態において、経過時間Tが特別に長くなった場合、居住者側の要求に基づく設定の事情も変化している可能性がある。高価な状態検出機能を用いても判断が難しいので、中間的な設定状態で居住者の判断に任せれば、居住者から苦情が出る可能性を低減することができ、かつ管理者が設定した管埋状態からかけ離れた不要な状態になることも緩和することができる。
【0041】
そこで、本実施の形態では、主設定機限定モードでの最終設定操作からの経過時間が特に長い時間(居住者側の事情・状況が変化し得ると考えられる程度の時間であり、例えば4時間以上)の場合は、主設定機限定モードで設定された設定状態と非主設定限定モードで最終的に設定された設定状態の中間的な設定状態にする。
【0042】
図4は本実施の形態に係る設備機器制御システムの構成を示すブロック図であり、図1と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態の設備機器制御システムの構成は第1の実施の形態と同様であるが、規定記憶部11bに記憶されている規定が異なる。本実施の形態では、経過時間Tが、居住者側の事情が変化したか否かを判断するために予め規定された時間T3(T1≦T2<T3で、例えば4時間)以上の場合(T≧T3)、直前の主設定機限定モードで設定された設定状態とこの主設定機限定モードより前の非主設定機限定モードで最終的に設定された設定状態の中間的な設定状態にするという規定が、規定記憶部11bに予め記憶されているものとする。この場合、経過時間Tが時間T3以上であれば、居住者側の事情が変化したと判断することになる。
【0043】
次に、本実施の形態の設備機器制御システムの動作を図2を用いて説明する。ここでは、管理者によって切替操作部6が操作され、非主設定機限定モードが選択されているものとする。非主設定機限定モードが選択されている状態での動作(図2ステップS8〜S10)は、第1の実施の形態で説明したとおりである。
【0044】
次に、管理者によって切替操作部6が操作され、主設定機限定モードが選択されると(ステップS12においてYES)、制御部7は、個別設定機2による設定変更操作が無効になっていることを提示部8を通じて居住者に通知する(ステップS13)。主設定機限定モードが選択されている状態での動作(ステップS14〜S16)は、第1の実施の形態で説明したとおりである。
【0045】
次に、管理者によって切替操作部6が操作され、非主設定機限定モードが選択されると(ステップS1においてYES)、設定操作部12は、経過時間Tと規定記憶部11bに予め記憶されている規定に応じて、設備機器4に対する設定を決定する。
設定操作部12は、経過時間Tが例えば4時間以上で時間T3以上場合(ステップS6においてYES)、規定記憶部11bの規定に従って、設備機器4の状態を直前の主設定機限定モードで設定された設定状態(室内温度を28℃にする設定)と設定記憶部9に記憶された設定状態(室内温度を25℃にする設定)の中間的な設定状態(例えば室内温度を28℃と25℃の平均値である26.5℃にする設定)にする(ステップS7)。こうして、非主設定機限定モードへの切り替えに際して、主設定機1で設定された設定状態と個別設定機2で最終的に設定された設定状態の中間的な設定状態にし、個別設定機2による設定変更が可能な状態へと移行する。
【0046】
以上のように、本実施の形態では、非主設定機限定モード→主設定機限定モード→非主設定機限定モードというモード切り替えが実施されたときに、主設定機限定モードでの最終設定操作からの経過時間Tが予め規定された時間T3以上の場合は主設定機限定モードで設定された設定状態と設定記憶部9に記憶された設定状態の中間的な設定状態にするので、管埋者側の煩わしさや、管理者の勘違いによる設定の誤り、あるいは居住者側にとっての不透明感(管埋者の場当たり的な設定という印象)を低減することができる。
【0047】
なお、設定操作部12は、時間T3をM分間経過したという計測結果に基づき、次式のように設備機器4の設定値SPが100分の間で徐々に変化するというような設定にしてもよい(ステップS7)。
SP={SP2×M+SP1×(100−M)}/100 ・・・(1)
式(1)におけるSP1は主設定機限定モードで設定された設定値、SP2は非主設定機限定モードで最終的に設定され設定記憶部9に記憶された設定値である。
【0048】
第1〜第3の実施の形態における経過時間Tと設定の関係を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
なお、第1〜第3の実施の形態を適宜組み合わせてもよいことは言うまでもない。また、第1〜第3の実施の形態では、非主設定機限定モードにおいて個別設定機2のみを操作する場合について説明しているが、非主設定機限定モードが、個別設定機2のみに設定変更操作を限定する個別設定機限定モードではなく、後優先モードである場合には、非主設定機限定モードにおいて主設定機1から設定変更操作を行なうことも可能である。この場合、主設定機1から入力された設定に応じて制御部7は設備機器4を制御するが、この主設定機1から入力された設定が設定記憶部9に記憶されることはない。後優先モードについては、上記で説明したとおりである。
【0051】
第1〜第3の実施の形態で説明した中央監視装置(制御部7と設定記憶部9と時間測定部10と規定記憶部11と設定操作部12)は、CPU、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って第1〜第3の実施の形態で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、主設定機と個別設定機を使って空調機や照明などの設備機器を操作する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1…主設定機、2…個別設定機、4…設備機器、6…切替操作部、7…制御部、8…提示部、9…設定記憶部、10…時間測定部、11,11a,11b…規定記憶部、12…設定操作部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6